提督のある気まぐれのお陰で鎮守府が大惨事になったお話。
此れはシリアスはないです。あってはならないのですよ!そんなのは!
(今となっては完全なるフリです......)
此れはある変人の提督が過ごす日常の話です。
ですが変人が過ごす日常は普通の”日常,,では無いことは確定的に明らかです。
そんな提督に振り回されていく艦娘達に注目していってください。
すみません、シリアス無しでは話が作れない病にかかりました。
すみません......コメディだけじゃ、ダメだった...すみません...。
シリアスはないと言ったな......あれはう...え、待ってなにやめて包丁は振り回すものじゃなくて野菜やら何やらを...ぎゃー!
(すみません、話の都合上、少々シリアスを混ぜ込む形になってしまいました、そういうのが嫌いな方は見ないように、よろしくお願い致します)
[chapter: 0 プロローグ]
提督「.........よし、何か楽しい事をしたい!」
ある日の提督は突然こんな一言を言う。
奇怪な事にこの提督は”楽しい,,の範囲が広く、広く、広過ぎるのだ。
その正に唯の”気まぐれ,,によって鎮守府は徐々に、徐々にある大惨事を引き起こしてしまう。
其れはその”大惨事,,に至る過程、その結果の話である。
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[chapter: 1 未来の話をしよう.....えっ、面倒くさいからカット?あっ、はい......]
提督「暇だーー!」
机に顔を突っ伏しながら話す男は、白の軍服を身に纏う、
中肉中背のきっちりとした外見をしていた。が.........凄いとしか言えない程......何というか......
”変人,,なのである。
仕事も、外見もしっかりとしているのに”変人,,とは如何なものかと思うのだが......
実際に今までの大騒動は全てこの男の所為なのだ。例えば.........
ある夏の出来事。
鎮守府は夏にしか起こらない、ある”問題,,に悩まされていた。
提督「......暑い...」
夏は暑い。此れは誰もが知っている周知の事実だが、扇風機然り、クーラー然り。
起動しなければ涼しくはならない。そう、今の状況である。
人間はある程度、水は飲まなくとも生きてはいける、だが其れは適度な気温であるなら、という条件を満たしている場合ならばだ。
提督「.........どっか行こう...」
提督室を抜け、提督は、
暑さを紛らわせる為にその汗に浸る体を起こし、ゆっくりと足を進める。
が、歩けば歩く程その暑さは体全身を蝕んでいく。辛い、それだけならば良いのだが。
人はあまり熱さには強くない。
其れを証拠に。
提督らしきもの「...............」
......倒れていた。廊下の真ん中に。
良く言えば、ぐったりと。悪く言えばまるで干物の様に干からびていた。
だが、艦娘の全員は横目で見ながら誰も助けようとはしない。
何故ならばこういうのが日常茶飯事だからだ、この人間にとっては。
もう、日常にまで組み込まれるのは流石としか言いようがないだろう。
だが、少なからず助ける者も居た。
時雨「.........またか...この提督は......」
『提督』
が蔑称になっている気がするのだが気のせいだろうか。
そんな事を思いながら提督は時雨に抱き抱えられる。
時雨「.........何回言ったのか分からないけど......何でそんな所で寝ていたの?」
提督「......暑くて、死んでました、まる。」
時雨「......そうかい」
時雨をふと見る。......やはり時雨にも滝の様な汗が服に染み込んでおり、
自分と同じ様な状態にいるのが分かる。だから、だからこそ提督はある質問をしてみた。
提督「あの、時雨。ちょっと質問して良い?」
時雨「?......良いけど?」
提督「今、この状況で”あって欲しい,,と思う”施設,,ってある?」
時雨「............」
...難しい話だ。実質、今の状況だと欲しいのは沢山ある。
施設ともなるとその選択肢は自ずと絞られてくるものだが......。
.........思いついた。しかしこれは......
時雨「.........一応だけど......」
提督「......うん?」
時雨「室内プール?」
......プールか。
悩みどころだな...作れる“状態ならば”作れるだろうが......。
.........よし......!
提督「.........分かった!」
時雨「......えっ?」
提督はガバッと時雨から体を離し、真っ直ぐに立ち上がる。
提督「作ってやろうじゃないか!!プール!!」
時雨「え、ええええ!?」
提督はさっきまでの様子が嘘の様に工廠へと向かっていった。
時雨はその光景を見て唖然としていた。
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提督「妖精さん達!!集、合!」
妖精「何なのだー?」
妖精2「祭り事?」
妖精3「はたまた喧嘩事?」
提督「全部違う!!皆にはある事を頼みたいんだ!!」
ふよふよと妖精と呼ばれる者達は提督の元へと駆けつける。
妖精といえば、小人を思い浮かべる人達も居るだろう。だが彼女らは違う。
容姿は全員10歳ぐらいの少女、幼女では無い、断じて。決して彼女達の前で幼女発言をしたらもう言いたくない程酷い事をされたというわけではないので悪しからず。
話を戻すが、大体服装は色々あるが基本的には白のワンピースである。
そして皆、”性格が確立していない,,
妖精とは存在すらまだ確立していない子供の”興味や幻想,,から生まれる存在と言われている。
その為、”自身,,という認識すら曖昧であり名前すらないのだ。
妖精「うおー!やってやろうじゃねえか!」
妖精2「何を?」
妖精「知らない」
妖精3「.........zzz......はっ!?」
と、この様に自由奔放だ。しかし彼女達も存在している。
だから知恵や感情は成長する訳だ。
そんなある程度成長した妖精にのみ、
この様に軍の仕事に就いてもらう様な仕組みになっているらしい。
そしてもう一つ、この妖精にはある特定の共通点がある。其れは.........
妖精「とにかく今は!」
妖精2「取り敢えず!」
妖精3「せぇ〜の!」
妖精達「「「ぎゅぅぅぅぅぅーー!!!!」」」
ーー初めて見る”異性,,を無条件で好きになる事ーー
此れは妖精の本能らしく。
実際、発生するのは勝手にするのだが”繁殖,,は別の様で、
昔、妖精は数が増えにくい種族だった、と言われている。
だからこそ、その壁を越える為進化した結果が......
妖精達「「「ぎゅぅぅぅぅぅ!!!」」」
......此れだ。
では分かりにくいと思うので、説明を。
妖精3人は一人、提督の頭に。二人目は提督の胸に。3人目は提督の背中に飛び乗っている。
言っていなかったがこの子達は産まれた時点で”完成,,している。
そのため体は大人と同じなのだ。つまり逆合法ロ......げふんげふん。
なので年の割には発育が良い。普通だったら男は本能をむき出しにするがこの提督は違う。
寧ろ......
提督「息苦しい。やめて」
何も感じない。
隠しているのではない。ただ、何も感じないのだ。
其れには理由があるのだが......何とも馬鹿らしいので割愛する。
妖精「むう....ご主人は釣れませんな...?」
妖精2「そうですなー」
妖精3「そ、ん、な、こ、と、より、おうどん、食べ、たい」
提督「.........早く聞いてくれ」
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妖精「プールですかな?」
妖精2「プール......!其れは至高の遊び場......!」
妖精3「キャッキャウフフする場所ですかな?......胸が踊るぜ!」
提督「いや......違うよ?」
提督は今までの事を妖精達に話し、プール作りを提案していた。
まぁ、其れを聞いた妖精達は安定の反応だったが......。
しかし、妖精達はその後に気難しい様な表情をした。
妖精「ですが......出来るかどうかは分かりませんな〜?」
妖精2「ですな!ですな!」
妖精3「......プールといえば焼きそば!」
......気難しい表情をしていた。
提督「まぁ、とにかく出来るだけ早く作りたいんだが......何日ぐらい掛かる?普通は」
妖精「......一週間ぐらいですね......」
妖精2「.........ゴクリ」
妖精3「いや......かき氷もいいですな〜」
提督「一週間だな!?.........一週間か......」
一週間。
普通ならば早過ぎるぐらいである、どんな建築方法をしているのか逆に教えて欲しい......。
だが......
提督(多分、皆、耐えきれないよな......)
最近は夏の暑さが異常なまでに上がっている。
ちなみに耐えきれないと思った理由はあの廊下の真ん中にぶっ倒れていたとき、
横目で見ながら通り過ぎていった艦娘全員が滝の様な汗を掻いていたためだ。
勿論、時雨も含めて。
あの様な状態が一週間も続くとなると、体調不良になる者も出てくる可能性がある。
艦娘というのは痛みには強い抵抗があるが環境には弱いらしいのだ。
そうなると.........
提督「妖精さん......三日程で出来ないだろうか」
妖精「ええ〜!ブラックだ〜ブラック鎮守府だ〜!」
妖精2「略してブラ鎮ですかな?」
妖精3「ああ、でも西瓜もいいな......」
.........少し自分でも無理な事言ったかもな......
.........!!いや、もしかしたら!!
一瞬にして提督達の周りには、不穏な空気が漂う。
提督「もし......」
心臓の鼓動が響く。
提督「もし......三日でしてくれたら......」
此れは提督の一世一代の大博打である。
この時、雰囲気で伝わる緊張からなのか、妖精も流石に少し身構える。
妖精「.........なんですか?」
提督「”俺の体、自由に使ってくれ,,!!」
妖精三人「「「ほえ!???!??」」」
前にも言ったが妖精は最初に認識した異性を、強制的に好きになる。
其れは、確かにその一人一人によって好きの加減は違うがこの三人は言葉で表すならば。
『溺愛』
の部類に入る。溺愛と言っても”狂愛,,には至らないが。
つまりそんな彼女らに、好きな人の体を自由に使って良いなど。
もはや天国と言ったとしても然程差異はないだろう。
妖精達は、提督のその魅惑の提案を頭で認識し、数度頭の中で噛み締めた後、直ぐ身嗜みを整える。
そして瞬時に。
妖精「「「やります!!三日後ですか!?”三日,,もあるんですか!?」」」
提督「いや.......早く出来るのならそれに越した事はないけど......」
妖精「「「なら、”翌日,,まで待っていて下さい!!」」」
提督「えっ!?別にそこまで......!」
提督が言い終わるまでに妖精達はおよそ人には、認識できない速度で走り去る。
その三人の立っていた床は、生憎強固な石で出来たはずのものなのだが.........
提督「何だ......この”クレーター,,は.........」
.........惚れられるのは光栄この上ないのだが......一つだけ言える。
提督「.........恐い...」
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提督「本当にやるとは......」
翌日。
外を眺めると大々的に天幕の掛かったある建物が出来上がっていた。
外見としては、特に何かしらの変化もない、其処ら中にある様な、そんな。
けれどただ一つ、其処には仰々しく飾られている天幕が設置されていた。
その天幕には。
『夏の暑さも吹き飛ばす!!最高で快適な室内プール!!』
.........もうちょい、言葉、考えようぜ。
胡散臭い......。
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外に出てみると、駆逐艦の子達がその珍しさに惹かれたのか、
まるで目の前に大好きな料理があるのを知って興奮している、まだ物心が完全についていない頃の状態になっている。
まぁ、良く考えれば分かるだろう。どんな者でも知らないものには少なからず警戒心が芽生えるものだが、あんな大々的な物は。
ーー俺ぐらいしか作らないし、しかも、当たり前だしーー
遠くからその賑やかな光景を目に焼き付けていると、トントン。と
背中を軽く叩かれる。その周辺にと視線を向けると.........
時雨「.........本当に作ったんだ...」
.........時雨が居た。
時雨は半分、呆れ顔で、半分、彼に向けての悲しみの満ちた表情を向ける。
其れに一瞬、母の様な慈愛が感じられた。
提督「.........まぁ、ね」
その代わり、妖精さん達に体を好き放題されるという、オマケ付きだが。
時雨「......これってさ、僕が提案した翌日に出来たよね?」
提督「.........そうだね」
時雨「じゃあ、つまり......此れは妖精さん達が頑張った、謂わゆる結晶って奴だ」
提督「.........ソウダネー」
時雨「......でもね、僕には気になることがあるんだ......」
時雨はぐっと提督の体に可憐で麗しい女体を近づける。
その体には僅かながらの汗が含まれており、特に鎖骨に掛かる汗が異常なまでに彼女の歳では有り得ないほどの妖艶さを覚えた。
時雨「妖精さん達は気紛れなのに、急に提督に頼まれても”1日だけで済むわけが無い,,
.........だからさ、提督......もしかして、何か妖精さん達と”約束事,,でもしたんじゃないの......?」
提督「そ、そんな訳ないにキマッテルジャアないですか?」
時雨「ふーん?」
時雨は数秒間、まるで品定めでもするかの様な視線を向ける。
正直、そう言う視線は生憎と言って良いほど向けられ慣れているものではあるのだが......
提督 (艦娘の人達以外の視線にはね......)
其れは艦娘達以外の話である。
時雨「ま?良いけどね......?そんな事になっても僕には関係のない話だし?」
ほっ、と溜息を吐く。
けれど時雨の心境は其処まで安心できるぐらいでは無かった。
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時雨(......プールか...)
生憎、当たり前の事だが、提督が嘘を吐いているのは分かった。
まぁ.........起こってしまったのは仕方のない事だし、誰がこんな状況にしたのかは.....僕だから。
けれど。
時雨(提督の馬鹿......!其処までやらなくてもいいのに)
提督は時雨の観点から見ると”馬鹿正直な変人,,である。
提督は昔から、皆からこうである、こうなんだ、と言われるとひとまず其れを全て実行してしまう。
そして、散々皆を振り回した後、ちゃんと反省してそのお詫びにと”ご褒美,,もくれてしまう、
そんな人間なのだ。
だが何故今回の様に、また同じ様なことを繰り返すのか、其れは大抵”他人の願望,,か”他人の悩み,,を叶えたい、救ってやりたいという、とても甘ったるい考えからだ。
実際、前にした事例は今まで一度も繰り返していない、”自分からした事,,は。
だが”他人から自分がした事,,は何回も繰り返してしてしまう、そして毎度、必ずこういうのだ。
提督「あっはははは!!!また”自分で,,やっちゃった!!」
.........と。
......提督は馬鹿だ。
いつもいつも図々しくて仕方がない。鬱陶しくて仕方がない。
寂しがり屋で、お調子者で、けれど私達を物として扱おうとはしなかった。
私達は兵器なのに。
陰で泣いていた時もあった、皆の前で笑っていた時もあった、誰かに怒っていた時もあった、
.........拗ねていたこともあったか。
......提督は子供の様に感情の起伏に富んでいて、衝動に身を任せ、結果、私達を振り回す。
けれど誰も、嫌う事は無かった。誰も提督を恨む事は無かった。
だから、だからこそ私は。
【だからこそ”好き,,なのだ】
ーー私は提督の笑い顔が好きでーー
ーー私は提督の声が好きでーー
ーー私は提督の背中が好きでーー
ーー私は提督の瞳が好きでーー
そして何より。
ーー”彼,,だけが好きでーー
抱き締めたい。
抱き締められたい。
ずっと一緒に居たい。
ずっと一緒に居てほしい。
もっと貴方を見つめていたい。
もっと私を見つめて欲しい。
ーー私を選んで欲しいーー
時雨「......けれど......」
提督はアレでも、まだ勘は人一倍鋭い。
一から物事の内容を言われれば半分以上は分かるぐらいに。
時雨「気づいているんだろうな......」
多分、提督は己に向けられている、限りなく多い好意を、認識している。
そして、彼は前にも言った様に“馬鹿正直”だ。彼は愚直なまでにその好意の渦を、
真っ正面から受け止めようとするのだろう。そして何時かは自滅に己を追い込むまで考え、考え、考え抜くのだ。
失礼のない様に、第一に相手の事“だけ”を思って。
時雨「けどね、提督。提督の思っているより、皆は貴方の事が好きで好きで仕方がないんだ、
だから君は、そのやり方だったら彼女達の愛を受け止め切れないかもよ......?」
彼の為だから、彼女達は闘う。
彼が笑ってくれるから、彼女達は闘う。
けれど其れは全て彼の為。
もし、提督。君が彼女達の琴線に触れてしまったら......どうなるか、僕にも分からないからね?
ーー勿論、僕も含めて......だけどね......♪ーー
時雨は僅かに恍惚の笑みを浮かべる。
しかし、まだ其処には闇は現れてはいない。
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提督「って、あたりまえか」
何が、当たり前なのか。其れは、恐らくこの一つの可能性からだと思う。
一つ、考えてみる。
もし、自分が艦娘達などの様に、海上で活動する者達がわざわざプールまで来て、泳ぎたいと思うだろうか。
答えは、否だ。
確かにその様な者達は、海が好きだから、水が好きだから、だからプールも行く。
なんて人も居るだろう。
だが、反面、自分達は散々、仕事で水なんて浴びるんだからプールなんで行きたくない。という人は居るのだ。
そしてこの鎮守府では大半の艦娘達はその後者らしい。
まぁ、分からないでもない。でもそれだと......
提督「妖精さん達......ただ、無償で働いただけになってしまう.....のが普通なんだが」
商売でも交渉であっても、どちらにも得する、つまり利益を生み出さなければ成立はしない。
だが、これに関しては......
提督「此れは...妖精さん達には無条件に利益を得るんだよな......」
そう、此れは商売や交渉でもない。
謂わゆる“例外”というやつで、妖精さん達には艦娘達がプールで満足気に遊び、士気を高揚させる効果が見えたとしても、其れは“ついで”の利益であり、“求めている”利益ではない。
だから別に、艦娘達が遊ばなくとも妖精さん達にとっては既に利益を得る条件を満たしている為に、其処に意味は無いのだ。
提督「やっぱ、辞めていた方が良かったのかな......」
妖精「何がですかな?」
提督「んー?.........ああ、実はね.........うおわ!?」
その声の先には......三人の妖精の内の一人が其処にいた。満面の笑みの中で。
......聞かれたのだろうか?あ、聞かれたね。握り拳が彼女の片腕に出現しているもの......
.........此れは後々から弁明をした方がいいだろう、と提督は苦い顔をしながら、顔を横へと向けた。
その行動は幸か不幸か、其れにより提督は妖精と一緒に居たある人物を見つけることが出来た。
提督「あれ?北上?」
北上「おっす〜提督。相変わらずしけた顔してんねー」
提督「此れは元々だ!」
ヘラヘラとしながら冗談を投げかけるこの少女は、北上。
球磨型三番艦で艦種としては、軽巡洋艦に位置付いているのだが改良に改良を進めた結果、
重雷装巡洋艦へと変わった、ドウシテコウナッタ。
なので、正確には「北上」、ではなく「北上改二」である。
北上「ともあれ、提督?なんか〜妖精さん達と、このプール建てるために約束でもしたんだってね?頑張るね〜提督も」
提督「......えっ?なんで、北上が...」
北上「なんでって、そりゃあ......この妖精さんに聞いたんだよ?なんか、自慢してきたからさ」
そうか、それはそうだ。
自分自身がその約束を他言しない様にしても、妖精さんが黙る必要性は何処にもない。
しかも、人の口には戸が立てられないと言われる様に人の噂は、どんな広い場所でも、鎮守府でも、1日足らずで広まってしまうのだ。
.........まさか。嫌な予感がする。というか、思いついた時点で結果が分かった。
けれど聞かなくてはならないだろう......提督は妖精の方に近づき、その結果がもう分かりきっている、“あの”懸念を口にした。
提督「妖精さん......青葉には話した?」
妖精「.........話したですかな?」
ちっくしょぉぉおお.........。
提督は二人の目の前で、土下座に似た格好になりながら、地に這いつくばる。
無様な格好だが、この時には提督自身、そんな考えは無かった。
とにかく、後々から面倒ごとに巻き込まれるのが確定的になった事に、嘆きたかっただけなのだから。
妖精「ふっふーん!なのですかな!」
北上「何で急にドヤ顔を....」
妖精「こういう時はドヤれ!と、提督に言われましたかな?」
北上「.........自分自身で己を辱めてちゃあ、世話ないね...」
提督は、暫く起き上がる事はなかった。
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提督がうずくまったのを、北上と一緒に二人で対処し自らの自室へと帰らせた後、
妖精は自分の住処への帰路へと向かっていた。
妖精1「.........ただいまー」
妖精2「おかえりー?おかえりー!」
妖精3「いけっ!そこだー、ジャパネ○「やめろ?消される。」「アッハイ」
......と言っても工廠の中ではあるが、
だがしかし、野宿をするより、断然良い。テレビもあるし、明かりもある。
そしてフカフカの、まるでシャボン玉の様な柔らかな肌触りの布団もある。
これ程の贅沢はない。
妖精2「そういえばー?“お兄ちゃん”はどうだったの?」
妖精3「そうだー、お兄ちゃんはどうしたんだー!人質を返せー!」
妖精1「人質ってなんだ!......元気だったよ?お兄ちゃん」
妖精3「ならば、よし!」
妖精2「終わり良ければ全てダメ!...あれ?なんか違う...」
妖精達は、実は提督が居ない時は”お兄ちゃん”と呼んでいる。
理由としては、呼びやすいから、らしい。
だが、その呼び方が彼女達の容姿に相まって、
艦娘達の嫉妬の増幅を促しているのは、確定的に明らかなのだが。
妖精2「.........ねぇー、“ミィーア” ミィーアはさ?提督の事をどう思うの?」
何の前触れもなく、彼女は静かに聴く。自分の内なる気持ちを胸に。
ミィーア「......急に本名を......。.........好きだよ?本気で。心の底から」
・妖精1→ミィーアに変更
ミィーア「私達のこの感情はさ、偽物かもだけど......私が好きって思えてるなら、本物なんだと思うんだ......あはは、少し臭いかな...?」
妖精2「......うん、くっさいね。かなり臭かったよ」
ーー羨ましいーー
ミィーア「そこまで言う......?」
妖精2「でも私もそう思うよ......うん......私も......」
ーー妬ましいよーー
ミィーア「.........突然...どうしたの?こんな話して......」
ミィーアは尋ねる。
今まで一度も見たことがなかったのだ。
こんな、彼女の姿は。
何かを知ろうとして、何かを分かろうとする。
そんな姿を彼女は見たことがなかった。
今では馬鹿だったと思う。
どんな者でも誰かを好きになれば、其の者を自分のものにしたくなる。
一生、寄り添って添い遂げたい。
苦しみも、辛さも、楽しさも、色んな事を。
彼と共有したい。
重くてもいいのだ。
皆から軽いと思われて、彼を好きではないんだと言われるよりかはマシで。
そんな当たり前の感情が、心が彼女にはあったんだと、今更ながらミィーアは知った。
妖精2「......いいや!べっつに〜?何でもないよー!」
彼女はわざと戯ける。
その行動がミィーアには、とても悲しく思えた。
あの憂いを含んだ瞳が、あの微かに震えていた体が凄く愛らしく感じられた。
私は阿保だ。彼女が何故、あんな事を言ったのか私には分からない。
意図を分かったけれど、理由が分からない。
こんなんじゃあ、“姉”失格だ。
ミィーアは彼女の体を静かに抱きしめる。
分からない、分からないけれど、きっと分かる日が来るのだ。
妹の気持ち一つ、分からないで何が男を落とすというのだろう。
そんなの、無理に決まっている。
ミィーアは妹を強く抱きしめる。
その時、彼女の心は暖かな気持ちに包まれた。
ミィーア「.........ゴメンね」
自然と彼女の口から出た言葉。
どうしてこんな事を言ったのか自分でも分からない、しかしその理由はすぐに分かる。
妖精2「そんな優しくしないでよ〜泣いちゃうよ?」
彼女は少し身を震わせる。
それに伴い頬は紅潮し、目尻には涙が。
妖精2「泣くなんて......あり......得ない...から......」
その瞬間、彼女は姉の体を強く掴み返し、そして。
妖精2「.........っ...!......っ、ひぐっ...!」
小さく泣き出した。
ポロポロとまるで水滴が一粒一粒滑らかに落ちる様に。
分かった、かも知れない、多分羨ましかったんだ。
妹も、“偽物かもしれない”この感情と闘っていたんだ。
そして分かっていた、私がこんな風にこの感情を受け入れていたんだと。
無理だった、不可能だった。
姉の様に、なるのは無理で。
紛い物かもしれない気持ちが、果たして“愛”と言えるのか?
答えは、否だ。
けれど姉は違った。
偽物でも紛い物でも、好きなら本物なのだと。
彼女はそんな風に考えられなかった、だからこそ嫉妬した、だからこそ悔しかった。
ーーだからこそ羨ましかったーー
ミィーア「............」
妖精2「............」
彼女達の周りに静寂が包み込む。しかし決して息苦しくはない。
ずっと抱えていた思いを吐き出せたのだ。むしろ清々しかった。
......ゆっくりと離れる二人。
そして同時に、彼女達は笑った。
嬉しい、するとその感情と同時にミィーアの脳内は一緒にある考えを示していた。
ミィーア「......ちょっといい?」
妖精2「?どうしたのさ?」
ミィーア「.........好きなんだよね?お兄ちゃんの事」
妖精2「......ん......///」
ミィーア「ならさ、三人で共有しようよ!」
妖精2「!!?」
それは彼女にとって、とても得をする話だった。
確かに自分一人で独占する事は出来ないが、大好きな姉妹と一緒にいれるし、
そして何よりお兄ちゃんがイル。
その提案は凄く魅力的だった。でも.........なんて展開はない!
案の定、彼女は、
妖精2「......良いよ!やろう!」
乗ってしまった。
......うん、まぁ、裏山けしからんのは...もう......いかんね!
ミィーア「あれ?三人と言えば.....」
妖精2「......あいつは......」
......コホン......二人が辺りを見渡すと、
妖精3「.........すぅ...すぅ...」
小さな寝息をたてながら、眠る無邪気な妹の姿を見つける。
そんな癒される光景に、二人は小さく笑みを浮かべ、眠りについた。
ーーー
ーー
ー
妖精3「はぁ...急にあんな話しないでよ......」
妖精3「柄じゃないよ......」
月の光がまばらに辺りを照らす夜中、彼女は目を覚ましていた。
足裏に触れる草の感触が少し気持ち良く思えた。
妖精3「私も......素直なら......認められてるなら...!」
彼女は両手を力強く握り締める。
その眼には、自分に対する悲哀、そして侮蔑が。
皆、彼の前では演じている。“愛されたいが為に”
其れは彼もわかっている事だし、ここにいる皆なら全員が知っている事だ。
けれど、彼女達は唯一、“演技を辞めた”二人。
愛されたい、しかし愛されたいのならば、演技なんてやめてしまえと、そう思った二人。
確かにそうなのかも知れない。
嘘を嘘で塗り固めても、其れは絶対に“真実”になんてならない。
わかっているのだ、わかっているのだ...!だけど......!
妖精3「怖いんだよ...!嫌われるよ...!」
“素を出すのが怖い”
もしかしたら周りから嫌われるのかも知れない、もしかしたら皆に受け入れられないかも知れない、
“彼に好かれなくなるかも知れない”
彼女は常日頃から言うなら“馬鹿の振り”をしている。
まぁ、振りを、だが。
其れは今までに感じていたある感情を隠す為だ。
ーー妬みや嫌悪ーー
確かに当たり前だと思う。
息の合わない人を嫌うのは普通だし、色んな理由で人を嫌うのは当然の事。
しかし、彼女の場合、それは。
“彼に触れたり、話したりしている者”
に限定される。
例えそれが、家族や親友達であっても。
消えろ、
失せろ、
触れるな、
口を開くな、
目を向けるな、
やめろ、
辞めろ、
止めろ、
病めろ、
ヤメロ、
どす黒い感情がまるで自分を取り込むかの様に、
苦しい、嫌だ、厭だ、いやだ、イヤだ、イヤダ!!!!!!
素直になるという事は其れを我慢しなくても良いという事。
けれどそれは絶対“彼を傷付ける行為”に発展する。
それが恐い。それがいやだ。
妖精3「......分かんないよ......」
妖精は初めに見た異性を強制的に好きになる。
ならばそれは言い方を変えれば、
【その男性しか愛せれなくなるという事】
傍から聞いたらとても良いことかも知れない。
けれど、それは辛い事でもある。
分からないのだ。どうすれば好きと伝えられる?口に出来る?
彼の近くに居れば胸が苦しい、
でも遠くに彼が消えてしまっても胸が張り裂ける様な感覚を覚える。
分からない、
知らない、
この感情を誰か、
私に教えてくれ。
妖精3「...............」
ひんやりと夜風が体を撫でる様に柔らかく吹く。
それがとても楽しく、そしてとても嫌だった。
何故か二人の事を連想してしまったから。
妖精3「.........ぅ......っ...!」
彼女の悩みは誰にも届けられない。
そう...誰にも。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
提督「.........?...朝か......」
再びの、窓から差す日差し。
何となく彼は昨日より優しい光に感じた。
提督「く......ぁぁぁあぁあ......まだ眠いな......」
すると、トントン。
まるでタイミングを見つけたと言わんばかりに、とても良いタイミングで、
誰かが部屋のドアをノックした。
彼は寝起き早々が為に少しだけうんざりしながらも、
提督「......入っていいよ」
と、了承の言葉。
すると部屋に訪れたのは妖精の二人だった。
ミィーア「......どうも!提督!」
妖精2「......え?僕も?......ど、どうも...提督...さん...」
いつもとは違う態度の二人。
だがあまり提督は気にしなかった。
実際、妖精とはこれといった性格を持っている者は極端に少なく、逆に言えば、
持っているものが珍しいというのが表現としては正しい。
提督は知らないが、なら、この二人は珍しい部類に入るのは確実である。
提督「......?なんか...変わった?」
しかし、一応提督は其れについて触れる事にした。
其れによって彼はとても驚く事にはなるのだが。
ミィーア「...単に言うと。......演技をやめた!」
妖精2「うん、うん。僕もやめた」
ミィーア「だから私達の事ちゃんとした本名で言ってね!ミィーア、“アルム”、“リーリィ”って!」
・妖精2→アルムに変更。
・妖精3→リーリィに変更。
アルム「姉さん、リーリィは分かんないよ。一応まだ...」
ミィーア「あ、そっか。じゃあリーリィは待って!まだ。うん」
......ん?演技?
演技とは何の事だろうか?イマイチ要領の得ない話に提督は疑問を彼女達に投げつける。
提督「え、演技?って?」
ミィーア「へっ?......ああ、今までの態度というか、性格の演技だよ!」
アルム「本当にすみません。長らく嘘をついていて......。でもこれからは自然体で接することが出来ますので改めてよろしくお願いします」
提督「え?え?ちょい待ち、ちょい待ち。え?つまり二人?は?今まで見せていた、俺自身に印象づけていた性格は嘘と?」
アルム「はい...すみません。心の底から...」
提督は困惑していた。
確かに、嘘を突かれていたのは心苦しいが。
何より今彼が困惑している事は、
提督「な、何で、そんな嘘を?理由が無いじゃないか...?」
するとアルムはゆっくりと彼に近づき、弱く、されど力強く抱きしめる。
アルム「......とても好きな相手に、己の素を見せるのは...凄く覚悟がいる事なんですよ?少なくとも、僕自身は......」
その態度、言動の意味から分かる、かなり真っ直ぐな好意。
彼自身、自分が周りの者達に好かれているのは自覚していたが、こんなに真っ直ぐな好意をぶつけてきた者は中々いない。詰まる所提督はその曲がる事のない、針のように真っ直ぐな好意を自分に向けられるのは、はっきり言って慣れてはいなかった。
ミィーア「...私も、ずっと好きです。好きで好きで堪らないです。本当の本当に......」
ミィーアも提督の体に抱きつく。
提督が彼女達の方を向くと、彼女達も其れに伴い顔を上げる。
その顔は、頬が薄い緋色に染まり、眼には少しの涙が浮かび其れが、とても彼には蠱惑的なものに感じた。
其れを見た提督は何となく横に顔を向ける。
あのまま見続けていたら、今までの関係が崩れそうで怖かった。
提督「......好きなんだな?俺が。其れは嘘ではないんだな?」
アルム「はい。其れは未来永劫変わる事ない心情であり感情であり、絶対的なものです」
ミィーア「例え、本能の末に生まれたものでも。今、好きで入られているのならきっと本物ですから」
憂いを帯びた表情をする彼女ら。
その行動の最中、ミィーアは思いついた!と言わんばかりの表情に変わる。
するとミィーアは
ミィーア「うぇーい!」
勢いよくアルムと提督を突き倒した。
二人「「うわっ!!?」」
するとアルムが提督の上に、提督がアルムの下敷きになっていた。
其れによって二人の胸が近づき、互いの鼓動が聞こえるまでに近づいていた。
提督の胸に、何か柔らかな感触があるが...其れについては触れないでおこう...。
アルムは直ぐミィーアの顔を見るが、ミィーアは口の動きだけで、
ミィーア(そ・の・ま・ま・で・い・ろ)
と、口元だけを動かし、伝える。
其れを理解したアルムは直ぐ、提督の方へと向き直す。
......自分とは全く違う、ゴツゴツとした体。少しだけ香る彼の匂いは、癖のある匂いだったが、
彼のものだと思うと、とても良い匂いに感じた。
一方、その頃。
ミィーアはある事が起きるのを待っていた。
ミィーア(あーと...1分くらい♪)
そして1分経つと、ガチャリ。
執務室のドアを開けた一人の人物がいた。
曙「おーい、おきなさいよークソ提督。こんないちいち面倒くさい事しないでも自分で.........って、んえっ!?」
驚くのも無理はない。
側から見たら、ある女性が自分の好きな人を押し倒している光景にしか見えないのだから。
怒りや様々な感情が湧き出たが、一番は。
“妬み”の感情である。
曙「な、な、何をしてんのよ〜!!!!?」
彼女の声は、鎮守府中に響き渡るぐらいの声量だったらしい。
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曙「......で?どうなってるわけ?クソ提督......?」
提督「どうもこうも......見た感じ?っというか......ははっ...」
アルム「......見た感じです」
ミィーア「せやかて!ボノボノ!そうやで!ボノボノ!」
曙「誰がボノボノよ!というか拙いわね!その喋り方、もうちょっと慣れてから使いなさいよ!」
......今の状況が分からない筈なので説明を。
ハーレムじゃ、畜生。
あっ、違うね違う。はいはい。
......ごほん。......なんて言ったらいい?うん?(カンペ読み)
.........あ、はい。今現在、午前7時。形としては提督室の下座に曙が座り、上座に提督が座っている状態だ。ちなみにリーリィとアルムはどうなっているか、リーリィが提督の右腕にしがみついており、アルムは背中に抱き付いてはいるが、提督や姉妹以外の者には人見知りの部分が出てしまうのか、顔をほんの少し出していた。
曙「はぁ......、で?何でこの二人が......」
アルム「......それは......あ、どうぞ姉さん」
ミィーア「どうもどうも......まぁ、勝手にお兄ちゃんの部屋に来て、......お兄ちゃんに抱き付いて、お兄ちゃんを押し倒したんだよ!」
提督「それは語弊がある!言い方を変えろ!?」
語弊は別にないだろというツッコミはやめてね?
うん、実際その通りだし。
曙「まぁ...いいわ。ともかくさっさと動いて、食堂に行くわよ」
この鎮守府では皆で一緒に朝食を食べるのが原則になっている。
理由としては艦娘の交流の促進が一番の理由だが、まぁ...うん。女子と話したいじゃない?
そして良い感じになりたいよね......。無理だけどな。
提督「そうですね...そもそもその原則を作った奴が従わないとか有り得ないですもんね」
ミィーア「なら私も行くー!」
アルム「わ...私も......」
曙「はいはい......というかこの子達こんな性格だったっけ?」
提督「いや、全然違いますよ。何やら演技をやめたとかなんとか...」
曙「ふーん......」
“演技をやめた”
普通ならば意味の分からない一言。
けれど女性だからなのか、同じ者を好いている者同士のシンパシーなのか。
曙は何となく自分が彼女達にとって不利な立場に居るのを直感的に感じた。
しかし、この後。
【さらに艦娘達や妖精達にとって異質な存在が関わるとはまだ彼女達は知らない】
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提督「......ああっと...間宮さん、生姜焼き定食一つ...「私もー!」「わ、私も...//」......はい、定食三つでお願いします......」
間宮「はい♪......相変わらず人気者ですね、提督さんは」
提督「恐縮です...」
間宮「まぁ、そんか私も貴方の事は“大好き”ですよ?」
その単語を口にした瞬間、
ザッ...と。
間宮の方向へと、皆の顔が向く。
その表情は其々だが一番多いのは無表情である。
ヤンデレではない、ヤンデレではないヤンデレでは......な、ない...ないよね?
提督(......帰りたい)
辺りには不穏な空気が流れる。
実際の所、現在何も変化がない人物は今彼の左右にいる彼女達二人と間宮さんだけである。
二人とも、くいくいと彼のズボンを引っ張っている。
その光景はとても和やかな光景のはずなのだが......
提督(これほどまでに、空気の読めない人を見た事があるだろうか...)
和やかなのは和やかだ。
そこだけをくり抜いたら。
しかもその地雷を踏み抜いたのは......
提督(俺だしなー!)
間宮は鎮守府の中で珍しい、“提督を好いていない人物”の一人である。
かといっても、嫌っているわけではない。
ただしかし好きでもないというだけだ。
別にそれはありがたい事この上ない......が。
提督(それでもこんな嫌がらせをするのはやめてほしい...)
彼女にとっては“少しのいじり”なのかもしれない。
しかし、こちらにとっちゃ、
十分な“虐め”にしかならない。
提督(後で......真意を聞こう...)
提督が心の中でそう思った瞬間、誰かが提督の肩を叩いた。
それに伴い、提督が後ろを振り向くと。
そこには、三姉妹の末っ子、リーリィが居た。
リーリィ「お兄ちゃん?少しいい?」
提督「ん?......いいよ?何」
リーリィ「......お兄ちゃんにお客様だよ」
提督はリーリィに耳打ちされた内容について思考を巡らせる。
......今日までにそのような連絡はなかった、上官や元帥殿の訪問や、鎮守府内の内情調査やら
憲兵の直接検査もない筈......じゃあ、なんだ?
提督は不思議に思いながらリーリィにある事を聞く。
提督「妖精さん?......それは“個人的な訪問”かな?“業務的な訪問”かな?」
リーリィ「“個人的な訪問”だよ。後、私の事はこれからリーリィと呼んでね...!」
......よ、いや、リーリィもかいな...。
提督はあまりの情報量の多さに混乱しそうになる。
しかし、今は訪問してくる人間に対して考えなくてはならない、と割り切る。
するとリーリィが少し気になる事を言い放つ。
リーリィ「あ、すんごい多かったよ。一人、大人の女性で、後は全員子供だった」
......はい?
提督は今の一言で完全に頭が混乱した。
......は?は?何もしてないよ?俺なーんもしてないよ?子供達で一人、大人の女性って。
何かしら面倒ごとに絡まれるじゃん!これに関しては何もしてないし、ただ不幸なだけじゃん!何だよ!俺が何したってんだよ!神様!
提督は心の中で自分の運の無さを嘆く。
しかし、この後、彼はそれ以上に“ある事に”より嘆く事になる。
リーリィ「......入れる?」
提督「あ、ああ...もう良いよ。入れて、入れてください......」
リーリィはいつの間にかよじ登っていた提督の体から飛び降り、
凄い速さで玄関の扉へと行き着く。
この間、約2秒である。
遅い?......当たり前だ。
床にクレーターが出来ないように加減して走ったのだから。
リーリィ「どうぞー!」
リーリィが大声を上げて、扉を開く。
その行動には今、不穏な空気を作っている艦娘達に対して、
“さっさと戻れ”
という意味を込めていての行動である。
その甲斐あってか、彼女達は瞬時にその意図を察し、緩和的な空気を創り出す。
その変わり身の早さは“彼に迷惑を掛けたくない”という、とても自己中心的な思考からなのだろか。
そうして少し経つと、その集団が見えた。
すると、提督がその集団を見た瞬間に行った行動をアルムとミィーアは見た。
その時、提督は手に持っていたおぼんを落としたかと思いきや、目をかっ開き、彼女達の手を強く抱き締めたのだ。
その行為に彼女達は瞬間的にその集団を敵視した。
“こいつらは提督の敵だ”と。
提督は体を後ろに向けると、間宮の肩を叩き、こう言った。
提督「自分の事を聞かれても“今日は自分は居ない”と言ってください」
本来、間宮にその言葉を発する理由、ましてや利益は彼女にはない。
けれどこの時、彼女は何が何でも言わなくてはならないという責任感に駆られた。
何かしら理由がある訳ではないそれは、強制的な、そんな“何かを”感じた為だ。
そう、提督は言うと此処から退散する為、足を廊下の方へと進める。
それを見た艦娘達は、提督を引き留めようとするが、
北上「ダメだよ」
北上の一言でその場にいる皆は一斉に動きを止めた。
北上「皆が提督の所に行ったって何の意味もないし、しかも今は客が来るんでしょ?それを優先しなきゃ」
一瞬、彼女達は、何故お前に、という考えが浮かんだが。
素直に従う事にした。
私達は提督に愛しているが、提督に“自分を愛させる”のは違う。
提督の為ならば何だってする、けれど提督にとって“損する事はしない”
それが彼女達の立てた暗黙のルール。
そして、それが。
ーー彼女達にとってもっとも必要なーー
ーー己のーー
ーー“存在理由”ーー
彼女達にとって、提督、いや、彼は手離したくない存在だ。
しかし、彼女達にとって彼は“対等な存在”ではない。
彼女達が下で、彼が上。
それが絶対だし、それは変えることの、変える事が出来ないもの。
......それを人が聞いたら、皆、狂っているというのだろう。
されど、彼女達はそんな事を言われたらこう言うはずだ。
“何が可笑しいの?”
と。
そうして暫く経つとその訪問者達が姿をあらわす。
見てみると、やはりリーリィの言った通りだった。
目立つのはやはり『大人の女性』で、見た目だと、お淑やかで慎ましく、まさに美人という言葉が似合う。
そんな外見だった。
すると女性はちょうど近くに居た間宮に対して、聞いた。
?「あの......“楠....晴矢”さんはいらっしゃいませんか...?」
間宮「.....楠......?....ああ......いえ、提督は今は居ませんが...?」
やんわりと否定する間宮。
そうすると、間宮はその女性に今浮上した疑問について聞く事にした。
間宮「......失礼かもしれませんが...提督とはどういったご関係で...?」
その言葉を聞いた瞬間、目の前の女性は口をつぐむ。
それにより辺りには静寂が訪れる。
......まるでそこに何もないかの様に静まり返ったその空間に、単一的で一定な機械音が鳴り響く。
......カチッ、カチッ、カチッ、カチッ。
前にしか進まない時計の秒針が何かを責め立てるかのように音を鳴らす。
.....どんな物事でも停滞はある、そしてその停滞には様々な理由の末に起こる事なのだ。
自己嫌悪、嫉妬、憎悪、そして外からの意図的な行為も。
しかし、停滞は無くてはならないものと思う。
それは己に、自問自答する良い機会でもある。
だが、それと同時にある二つのことに対する決断を迫られる時期でも有るのだ。
“停滞に甘んじそのままでいるか否か”を。
姫萩「......私は“姫萩 雫”(ひめらぎ しずく)です。彼と同じ“孤児院”の出身です」
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ある日、孤児院に一人の男の子が訪ねました。
その子はボロボロで、衣服も土やら砂で薄汚れた、元々まっ白だった筈のシャツと、穴だらけの傷んだジーンズだけでした。
その男の子を見た院長は彼に駆け寄り、ひとまず彼を引き取りました。
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曙「......すみません、お時間を取らせていただいて...」
姫萩「あ、いえ...私ももとよりそのつもりで来たので...」
彼女ーー姫萩 雫のあの一言の後、ひとまず彼の関係について聞き出すことにした。
名目上では、事前連絡無しに対するその理由を問う、簡単な質問の様なものだが...その実、ただの提督と彼女に対する関係を調べる為だった。
それは彼女自身も分かっている様で。
姫萩「...楠...もとい提督さんの話をするんですよね...?」
曙「...名目上は事前連絡無しの訪問に対する理由を聞く事ではありますが...本質はそうですね」
姫萩「...提督さんはとても人に好かれているんですね......」
曙「......少しの間、様々な事をお聞きします。私達は貴女の負担にならぬ様、身体的、精神的な面も考慮し、配慮をしながら質問をさせていただきますが、しかし不快にさせてしまう表現、体調の管理が至らない場合があるかもしれません。そこはご了承頂けるとこちら側にとっても有り難く思います」
姫萩「......なら、もう少し砕けた感じで話してください...そうすれば私にとっても貴女にとっても話しやすいでしょうし」
曙「......はぁ......ったく...」
曙は乱雑に自分の髪の毛を搔き毟る。
面倒くさい......何でこの”3人”は面倒くさいだろうか...!
何で、何で私がこんな...!
姫萩「......それが素なんですね...」
曙「当たり前ですよ!私が大抵、皆の補助をしますし!提督の不始末は大淀さんと一緒に片付けなくちゃならない!もう、苦しいのなんの...!」
姫萩「はは......やっぱり彼が...」
曙は今ある感情を目の前の客人に隠すかの様に前にある机に顔を突っ伏す。
勢いが良すぎた為だろうがそれにより鈍い音が狭い密室に響く。
曙は額に少々の怪我を負ったが、彼女にとってそれは“戒め”だった。
痛みを感じる事が今の曙には必要であり、逃れる為の行動であり、必然的な事だった。
曙「......ところで、何で急に...“貴女”が?」
姫萩「......?、私の事...知ってるの...?」
曙「.....ああ....まぁ...ハイ...」
姫萩「.......別に.....良いかな......実はですね......」
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曙「......くだらないですね......」
姫萩「く、くだらなくても良いじゃないですか!!」
姫萩は勢いよく机に身を寄せる。
曙の顔に姫萩の顔が近づくが、曙はそれを気にせず話を進めていく。
曙「つまり、貴女は、“提督の事が気になったから”無断訪問をした...と...」
姫萩「はい」
曙「というか、これ完全に私欲塗れた...」
姫萩「黙ってください!」
曙「ああー、はいはい」
互いに溜息をついた後、彼女達は同時に顔を上げ、また同時に互いの顔を見つめる。
姫萩「......曙さんって...「あ。曙でいいです」...曙は彼の事好きなんですか?」
曙「え?あ、はい。まぁ、当たり前ですよね」
この時、姫萩は顔にこそ出さなかったがとても驚いていた。
別段特別な理由があった訳ではない、ただ、
“何故か”驚いてしまったのだ。
この行動は本来の彼女ならしない筈だと自分が分かっているみたいに。
すげぇだろ?これまだ過去、なんだぜ......?
あ、妖精2(アルム)が何故妖精1(ミィーア)にあんな事(中盤の話)を言ったのかは後でわかります
そりゃあ時雨も驚くでしょうねw
確かにそうですね......。
ですが此れは”過去,,なので。
本題では此れより凄い奇妙な行動をしまくりです。
......本当に凄いとしか言いようがない程に......。
妖精が提督love勢だと!?
それもう完璧なハーレムですやん
.........ハーレム。
其れは男女隔たりのない世界共通の夢!!
......やめとこう、これ以上は己の意思が耐えきれない。
ですが後、一つだけは言えます。......話の構成上。
妖精、艦娘の他にもう一つの団体が、彼のハーレムの一員となるのです!!
ていうかなっているのです!!
......爆ぜろ!
続きはよ。
妖精さん達までもがLOVE勢だと!?
……最高かよ。
建て過ぎ
はい......何か消そうと思うんですけど......。
自分、どんな時でも妄想が膨らむと書きたくなる性分でして......
文章を作るの下手な癖に話の内容は浮かび上がってしまうんですよね......
とにかく、ご指摘ありがとうございます!何か此れは良いかな?というものは消していきたいと思いますので、引き続きこの作品をご贔屓によろしくお願いします。
すみません。
ご贔屓だと、「前々から贔屓になっているという事」になるので、最後の一文は、
無いものとしてください。
今思った。
あれ?提督、別に変人じゃなくね?
.........と。
......キャラの道を正さねば...!話が繋がらなくなる!
......頑張ろ。