艦娘たちとご飯。
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大淀さんと提督
横須賀鎮守府
季節は木枯らし吹き荒れる冬。足先までしびれるような寒さに、さすがの大淀も顔をしかめる。
「ハァ…」
もう何度とついたか分からない、白い溜息。それを見るたびに冬なんだなぁ、と確認させられる。
ストーブをつけようか。しかしここに着任したばかりの提督も確かどてらを持って、執務室に籠っていた。上司がつけていないストーブを階級が下の者がどうしてつけれようか。いや、つけれるはずなどなかった。
「ハァ…」
やはり白い息が漏れる。少し気分が憂鬱になる。早く書類を終わらせて、布団に籠ろう。そう思い書類を書くペースを早めて、10分ほど経過したぐらいのことだった。
コンコン
この鎮守府には今、私と提督しかいない。どう考えても提督だろう。上着を脱ぎ、制服で応対する。やはり寒い。
「はい…提督さん?ご用件はなんでしょうか?」
少しトーンが低くなったか。心の中で反省しつつ、応対する。
「あ…大淀さん。すいませんいきなりおしかけて…実は先ほど実家からフグが送られてきたんです。なんでも着任祝いだとか。よければ一緒に食べませんか?」
河豚。なんと素晴らしい響なのだろうか。鍋にしてもよし。揚げてもよし。刺身でもよし。おまけにひれ酒という選択肢もある。冬の河豚は産卵期。白子などは筆舌に尽くしがたいほど美味しい。
「い、いいのでしょうか?私もご相伴に預かって?」
心が完全に河豚の気分になる。上官の前なので礼を弁えようとするも、思わず顔がゆるむ。これはいけない。昔、兵学校に入る前にお祝いとして、河豚を食べたことがある。幼かった時に食べたご馳走。過大評価かわからないが、すごくおいしかった思い出がある。しかし逆に言えば、それぐらいしか経験がないのだ。それほど日本近海で取れる河豚は高価なのである。
「ええ、どうやら一緒にいる娘さんと一緒に食べなさいと…大目に持ってきてくれたみたいですね。1人じゃ食べきらないんです。お願いしてもいいですか?」
「わかりました。それでは有難く、ご相伴に預からさせていただきます。」
――――
食堂の席に座る。大きい食堂に私一人とは、慣れないものだ。とりあえず手持無沙汰なので…ちょうどいい、提督と話そう。
「提督さんのご両親ってなにをなされているんですか?」
「えーと…近くの漁師から魚を買って町のほうに売ったり…まぁ、卸売りみたいなもの…ですかねぇ…」
なるほど、それならば何となく合点がいく。河豚を安く買って、そのまま提督あてに送ったのだろう。なんとなくうらやましく思った。
静かな食堂に油の爆ぜる音が。音は小さいものの、二人とも無言だったので随分と大きく聞こえた。
しかしながらこの匂いは卑怯だ。昼を軽く済ませ、空だった胃が限界を迎える。それを紛らわすために緑茶を啜る。油の爆ぜる音が終わった。いよいよ食べれるのか。胸が高鳴る。
「はい、河豚をから揚げにしてみました。どうぞ。」
少し茶色ががった物体。かぐわしい匂いが鼻腔に広がる。まだ揚げたてなのか、じゅうじゅうと音が鳴っている。私には魅惑の旋律にしか聞こえなかった。箸で持ち上げ、一口。
サクッ
先ず感じるは薄い衣。サクサクと軽い感じ、河豚の旨みを吸っているのか、それだけでも十二分においしい。
「フゥ…ハフ…」
口の中が火傷しそうなほど熱い。自然と口が冷たい空気を欲した。それから感じる、河豚の出汁。鰹節や煮干しなどと同じように、味覚に伝わる旨いという感覚が、激流のように押し寄せてくる。
それから、この河豚自体の食感である。緩く噛めば押し戻されるような錯覚に陥ってしまうかのように反発してくる。かといって強く噛みしめると、白身魚のようにホロホロと崩れてしまう。それでいて白身魚特有の魚臭さが全くないのである。
上等な鶏肉と上等な白身魚のいいとこどり。まさにそんな感じなのである。
ましてやから揚げ。衣に包まれた河豚は旨みをすべて中に閉じ込めた。これを旨いといわずして、何が旨いのか。そう思った。
「お…おいしいです…」
思わず顔が綻ぶ。きっと私はすごくいい笑顔なのだろう。鏡を見なくてもよくわかる。
「そうですか…よかった。 まだまだ料理は一杯ありますよ?これで満足されては困りますねぇ…」
どうやらまだまだ続くらしい。今はこの人数の少なさに感謝しながら、ありがたくいただくとしよう。
外に雪が降る中、小さな宴は静かに始まった。
横須賀鎮守府敷地内
「ハァ…疲れた…お偉いさんはホンっと頭硬いんだから…」
すきっ腹を抱え、大きくため息を吐くのは、後の泊地監視長になる中将である。
どうも海軍に小さな派閥ができたらしい。そのせいか会議は難航。昼までに終わるはずの会議が、3時頃まで延びてしまった。冗談じゃない。
何とかなし崩しに終わらせたものの、やはり時間が掛かってしまった。こちとら中将といえど末端の末端で、権力抗争などは自分には関係のないことだった。
しかし、腹がさみしい。胃が悲しそうにうめき声をあげる。思わず顔を顰める。
(しかし今から自分で飯を作るってのも…うーん…)
めんどくさくてきっとおいしいものは作れないだろう。何となくそう思っていた。
「…久々に外食でもするかな…ってことはあそこしかないか。」
鎮守府内に建つこじんまりとした平屋、目当ての店はここにある。
昼は食事処、夜は居酒屋と二つの顔を持つ
食事処「鳳翔」
暖簾をかき分け、戸を開ける
「やぁ鳳翔さん、ちょっと微妙な時間だけど…やってます?」
「あら提督さん。…えぇ、大丈夫ですよ。お好きなところに」
そういわれたので鳳翔さんの前のカウンターに座る。相変わらず落ち着く。何なのだろう、この不思議な気持ちは。
「何になさいますか?」
基本鳳翔さんの料理はなんでも旨い。和食はほとんど鳳翔さんに教えてもらったようなものだ。だから私はここでは決まったものを食べない。
「日替わりで。」
鳳翔さんはニッコリ笑い作業に取り掛かる。ここに通い始めてから昼の部は日替わりしか食べていない。日替わりとはいうものの、鳳翔さんの店では一番おいしく出来たものが、その日の日替わりとなる。
だから、日替わり。
クツクツと静かに煮える音が聞こえる。ぷんと匂いが広がる。いけない、腹が暴走し始めた。ぐぅと腹がなる。やはり男でも幾分かこっぱずかしいものである。あぁ鳳翔さんが笑ってる。早く、早く食べたい。
「はい、お待ちどうさま。肉じゃが定食です。」
お盆に乗るのは大ぶりの皿に盛られた肉じゃが。大盛りの白いご飯。味噌汁に…お新香。
先ずはご飯を一口放り込む。二三噛みしめ味噌汁を啜る。これだけでも十分美味い。やはり出汁が違うのだろうか?到底追いつけないなぁ、と確認させられるようで悔しい。
しかし私の腹はまだまだ食物を求めている。早く喰わせろと。
まぁ、待て早まるな。胃よ。メインはこれからだ。ここでせっかちになってはいけない。ゆっくり肉じゃがの皿から大ぶりのじゃがいもをつまむ。
出汁を吸ってるのか、黄金色に光っている。宝石のようだ。完全に目を奪われていた。
丸ごとじゃがいもを放り込む。ゆっくり、ゆっくり噛みしめる。
思わずため息が出る。じゃがいもが牛肉、出汁、野菜のいいところを全部吸っている。それでいてほこほこと、じゃがいもの長所も見事に活かしている。
かといって肉や野菜が引き立て役なのか、と言われるとそうでもない。エース級の選手が、喧嘩することなくチーム全体を引っ張ってるような感じである。
その昔、東郷平八郎がビーフシチューと似せて作らせたのがこの肉じゃがである。肉じゃがのレシピを作ったシェフは、間違いなく天才だ。まさかここまで美味しいものになるなんて、誰も思いはしないだろう。
じゃがいものくせに、ご飯にあう。何故だ。炭水化物と炭水化物の合わないコンビのはずなのに、どうして。あぁ止まらない。止まらない。食欲が歯止めが利かなくなっている
まずいと思い、箸休めにお新香を食べ、味噌汁を啜る。しかし逆効果だったのかドンドンご飯が減っていく。まさに悪循環。
気づいたら肉じゃがを2/3程残したまま、ご飯を一杯食べてしまった。ええい、米を寄越せ。
「おかわり…お願いします…」
相変わらず鳳翔さんはニコニコと微笑みながらご飯をよそってくれる。もはや恥ずかしいなどの感情などは投げ捨ててしまった。
今はただ、飯を食べる。食べる。食べる。
瞬く間に完食してしまった。
「ふぅ…ご馳走様です。鳳翔さん。」
「はい。また夜にでも来てください。」
言葉少なめに店を出る。心地いい満腹。にじみ出る幸せ。旨い飯を食べることは、人をこれだけ幸せにしてくれる。
その幸せを噛みしめながら、ゆったりと港を歩く。今ぐらいは書類のことなど忘れよう。
眼前に広がる青を眺めながら、ぼうっと帰路についた。
―夜―
ひょう と風を切り裂く音、たん と的に吸い込まれる音、先ほどから単調ながら何十、何百とこの行為を繰り返している。さすがに射すぎたか、気づいたらどっぷり日が暮れて、夜中になっていた。
赤城はふうと息をつく。どっと汗が出てきた、最近調子がいいせいか、弓を射るといつの間にか日が暮れていることがしばしばある。
季節は春が過ぎ、本格的に夏を迎えるぐらいになる。そう…あの季節…私たちの誇りが爆撃とともに掻き消された日…船の記憶を引き継ぎ、艦娘として生きながらも、一度たりとも忘れたこともない、あの日を…これからも忘れることはないだろう。
自然と顔が強張り、持っていた弓もギリギリと悲鳴を上げる。今度こそ、私たちが…勝つ…
クゥゥゥ~…
そんな考えも露知らず、胃は限界を迎える。思わず笑ってしまった。やはり体は正直なのだろう。弓を所定の場所へ戻し、遅めの晩御飯でもいただくとしよう。
――― 酒保 明石
酒保 明石…いわば艦娘たちにとってのコンビニみたいなものだ。日用品から飲食物まで幅広く仕入れていて、艦娘たちは大抵ここで買い物を済ます。
「あ、赤城さんいらっしゃいかもー」
この子は秋津洲。現在酒保明石で働いてる、店長の明石さん除くと唯一の店員である。
「こんばんわ秋津洲ちゃん。今日は夜番なの?」
「んー今明石さんが改修作業で忙しいから呼ばれたの!!キャラメルくれるかも!!」
「ふふ…えらいわね…あ、そうそうカップラーメンか袋麺入荷してないかしら?今日晩御飯食べそびれちゃって…」
「あ、わかったかも!!えーっと…これと…これも…あっ、新しく入荷したやつもあるかも!!」
<左端から右端まで三袋ずつ頂くわ(キリッ
<買いすぎかも!?えーっと…全部合わせて5980円かも!!
<あら…結構安上がりね…
<安い…かも??ま、毎度ありー…かも…
―――――食堂
「たまにはこういう…<いかにも>ってゆうの、すごく食べたくなるわよね…フフ…」
グツグツと煮えたぎる湯の中に細くちじれた乾麺を投入する。乾麺がしっかり煮えるまでに、上に載せる具として、明石さんの所で買ったおつまみ用の厚切りチャーシューと申し訳なさげ程度の緑としてホウレンソウをバターで炒め、それから大量のもやし。
少し手を加えるだけで十分に美味しい拉麺ができる。インスタントの最大の強みである。
グツグツと煮える乾麺を湯から取り出し、インスタント麺に付属している味噌スープとともに丼へ投入、いたってシンプルである。
予めて炒めておいた具たちと、生卵を落とす。
ああ、この食欲をそそる匂い。たまらない。濃い味噌の匂いにバターのほのかに甘い香りは最高の組み合わせである。
そして何より、何も食べずに夜遅くまで弓を射っていたせいで空腹という最高のスパイスが、何でもない目の前の料理を最高の料理へと昇華させる。
「頂きます。」
先ずは、大量のもやしをスープにつけ一口。しゃくりしゃくりと歯切れのいい音を立てる。
拉麺と言えばやはりこれがないといけない。中にはチャーシューだけ入っていればいいという人もいるが、そいつは野暮というものだ。味、食感、風味、それぞれに変化をつけないとどんなに良い拉麺でも飽きがきてしまう。だからこその具材なのである。
バターでいためたほうれん草が、味噌に溶け込んでよりマイルドに、香ばしくなる。
そして麺。乾麺だけあって、少し物足りないものがある。しかしこれでいい。これでいいのだ。不完全でこそインスタントは輝くのだ。何回も食べたくなる。この不完全を、猛烈に感じたくなるのだ。
終盤に白身が熱で少し白濁した卵の黄身を割る。これでより一層味はマイルドになり、複雑になる。
ああ、旨い。ありふれた味だが旨い。そんなことを思っているウチにいつの間にか一杯目を完食していた。
さぁ、次の拉麺を作ろう。まだまだ麺は大量にある。
次はニンニクを効かせた野菜炒めを乗せた塩ラーメンなんてどうだろう。
厨房へ向かう赤城の顔は、晴れ晴れとしていた。
泊地監視長の話出てこないからこれだけで話を作ろうと思います。
何回も編集してごめんなさい…
お腹すいたなぁ…(インスタントのカレーうどん装備)
よろしければコメントや批評していただけると嬉しいです。
ん?河豚の調理免許持ってる提督なのか?
同じ孤独のグルメで書いてるので気になった..
小説版に近い感じ何ですかね...?
>>1さん ああ、そう言えばそこの描写足りませんでしたね。すいません。
この提督、ふぐの調理師免許もってます。はい。
>>ラインさん
まさかラインさんからコメントいただけるとは思わなかった…
一応漫画しか持って無いのですが、あくまで主が参考にしてるだけで、孤独のグルメの要素はそんなに出てこないと思います。申し訳ないです…
なるほど……面白いので頑張ってください!
飯テロ期待ですからw
>>ラインさん
いやいや…飯テロできるほどの文才は残念ながらありませんので、どうか生暖かい目で見てやってください(笑)
御託はいいから続きはよ、腹へってきた、昔沖縄で食った河豚思い出したわ。
>>6さん
スンマセンまじスンマセン