花陽「幼馴染と兄と」凛「時々お姉ちゃん」
今回は、初期設定ではいたはずの花陽の兄と凛の姉が登場し、花陽と凛と関わる物語です。
初めましての方は初めまして、これまでの作品を読んでくださっている方はどうも、ギョタンです。
今回も、まさかのきょうだい話……。一応コメで「読んでみたい」との声があったので、もう一作やってみたいと思います。
今回は、なかなかのパンドラの箱と言われる花陽の兄……と凛の姉を勝手にイメージさせて書かせてもらいます……。
設定がごちゃごちゃになったら申し訳ありません……。
??「おう、久しぶりだな」
??「まったく、ぜんっぜん連絡寄越さないってどうゆうことよ。結構心配してたのよ?」
??「ごめんごめん……。で、今度の連休になったら、俺いったん、家に戻るつもりなんだけど、恋(れん)はどうするつもりなんだ?」
恋「え? そりゃ、凛やお母さんに会いに戻るつもりだけど……陽向(ひなた)はどうなのよ。花陽ちゃんや、そっちのお母さんとちゃんとお話してきなさいよね」
陽向「あー。でも、花陽は思春期だし。兄とあんまり話とかしたくないと思うんだけど……」
恋「また、そんなこと言って……花陽ちゃんもきっとあなたに会いたがってるわよ?」
陽向「そうなのかね~……恋はいいよな~。女で、俺そういうのまったくわからないから」
恋「知らないわよ……。でも、まあ、意外よね。凛と花陽ちゃんがスクールアイドルで活躍してるなんて」
陽向「ああ、そうだな……」
花陽「ただいまー」
花陽母「花陽、おかえり~。今日は練習ちょっと遅めに終わったのね」
花陽「うん、明日から連休だから、練習はお休みの代わりにちょっと長めにしたの」
花陽母「そうなの。ご飯、用意するから、手を洗って待っててね~」
アイドル研究部に入り、μ’sとして活動するようになってからもうそれなりの時間が経つ。
今ではただテレビで活躍を見るだけだったアイドルという存在に、自分から近づいていっているなんて、ちょっと夢みたいな話。
花陽母「あ、そうだー」
花陽「ん?」
花陽母「明日の夜、陽向が帰ってくるんだけど……」
花陽「え!? お兄ちゃん帰ってくるの?」
花陽母「ええ。恋ちゃんと一緒に帰ってくるみたいよ。せっかくだし、凛ちゃんと迎える準備でもしてあげたら?」
花陽「う、うんっ! 後で凛ちゃんと電話して話しあってみるね!」
それから、お母さんと二人でご飯を食べ、自分の部屋に戻り、凛ちゃんへと電話をかける。
二回ほど、音が鳴ったあとに私をこれまで何度も元気づけてくれた明るい声が聞こえてきた。
凛『あ! かよちん、どうしたの?』
花陽「うん、あのね。凛ちゃん、実は明日の夜、陽向お兄ちゃんと、恋お姉ちゃんが帰ってくるらしいの」
凛『あ、凛知ってるよー! かよちんと一緒に駅までお迎えでもしようかなと思ってたんだ!』
花陽「そうなんだ。私も同じだよ」
凛『えーと、確か恋お姉ちゃんは夕方の5時くらいに最寄りの駅に着くって言ってたにゃ!』
花陽「そうなんだ。じゃあ、凛ちゃん、それまで一緒に遊ぶ?」
凛『もっちろん! かよちんとならどこでも行くにゃー! 明日かよちんの家に迎えに行くからね!』
花陽「ふふっ。じゃあ、凛ちゃん、またね」
凛『うん。バイバーイ』
私の兄こと、小泉陽向お兄ちゃんは現在、大学三年生で一人暮らしをしている。どちらかと言うと優しいお兄ちゃんで、昔、色々な子から
仲良し兄妹と言われたことも何度かあった。
凛ちゃんのお姉ちゃんの星空恋お姉ちゃんも陽向お兄ちゃんと同い年で、陽向お兄ちゃんとは違う大学に行ってるけど、仲良しにしている……と聞いたことがある。
二人の関係は私と凛ちゃんと同じように幼馴染で、近所でも割と有名な二人組だった。私や凛ちゃんを交えて四人で遊んだこともある。
花陽「ふふっ……ちょっと楽しみかな……。お兄ちゃん、花陽がスクールアイドルやってるって知ったら驚くかな?」
~次の日~
凛「か~よちん! おっはよー!」
花陽「凛ちゃん、おはよう。じゃあ、今日はどこに行こっか?」
凛「凛はかよちんが行くならどこでもいーよ?」
花陽「うーん……A-RISEの新作グッズの発売日はまだだし、アイドルショップに行くのも……。じゃあ、今日は適当に歩いてみる?」
凛「そうするにゃ!」
凛ちゃんと二人で、近くのアクセサリーショップや、雑貨屋を見て回る。こんなことは今までも何度かあったが、今までよりももっと面白い。
なぜなら、凛ちゃんが『女の子らしく』あることに、自信を持ってきてくれたからだ。
以前まではかわいいのは似合わないと言って、私とはちょっと対照的な服装を着たりする凛ちゃんだったけど、もう凛ちゃんがそう言ったことに、怯えることはないと思う。
凛「ねぇねぇ、かよちん! これ、すっごくかわいいよ!」
花陽「ほんとだね。凛ちゃん一回つけてみる?」
凛「うんっ!」
そんなことをしていると、あっという間に時間が過ぎ、お兄ちゃん達が帰ってくる時間が迫っていた。
花陽「うわっ! もうこんな時間だよ、凛ちゃん! 急ぐ?」
凛「よぅし! 駅までレッツ・ゴー!」
~駅付近~
真姫「あら、二人とも、こんなところで会うなんて奇遇ね」
花陽「あれ? 真姫ちゃんどうしたの?」
真姫「いや、実は、ことりから、駅前に美味しいスイーツがあるって聞いて……ちょっと気になったから買ってみようかなって……」
凛「真姫ちゃん、顔が赤いにゃ~」
真姫「う、うるさいわねっ……、ところで、凛たちは何してるの?」
花陽「あのね、実は今日、私のお兄ちゃんと」
凛「凛のお姉ちゃんが帰ってくるんだにゃー!」
真姫「え? 二人とも、一人っ子じゃなかったの?」
花陽「うぅん、違うんだよ~」
真姫「えぇぇ……初耳よ。そんなの」
凛「う~ん、凛たち、あんまりそういうの気にしないタイプだから!」
真姫「そういう問題なのかしら……?」
花陽「ふふっ……あともうちょっとでここに来ると思うんだけど……」
凛「あ! 恋お姉ちゃん達だ! おーい!!」
凛ちゃんが手を振ると、向こうも気づいたらしく、恋お姉ちゃん達が手を振り返しながら近づいてくる。
久しぶりにあう、二人は以前見たよりもさらに大人な雰囲気を漂わせていた。
恋「凛、ただいま~。花陽ちゃんもお迎えありがとね!」
花陽「は、はいっ!」
陽向「……花陽、ただいま」
花陽「うんっ。お兄ちゃんおかえりなさい」
恋「ね? 言ったでしょ。花陽ちゃんは待ってくれてるって」
陽向「あーもう! うるせーな……」
凛「恋お姉ちゃん、相変わらず陽向お兄ちゃんには厳しいにゃ~」
恋「まぁ、私がいないとコイツはだめだめだからね~……ってあれ? 凛、この子は?」
真姫「あ、は、初めまして。凛と花陽の同級生の西木野真姫って言います」
恋お姉ちゃんが声をかけた途端、真姫ちゃんはすぐに挨拶をする。ちょっと人見知りなところが真姫ちゃんっぽくてかわいい。
恋「真姫ちゃんね。よろしく」
陽向「あー……なんだ。こういう時って、何て言えばいいんだ? 恋」
恋「よろしくでいいでしょうが」
陽向「いやだってこの子めちゃくちゃキレイじゃん」
真姫「あう……」
恋「ほら、アンタがそんなこと言うから……真姫ちゃんごめんね」
真姫「あ、いいんです……」
凛「陽向お兄ちゃんはぜんっぜん変わってないにゃ~」
恋「凛、さっき言い忘れてたけどまだその話し方してたのね。あんたもかわってないわよ……。でも、凛がそんな女の子らしい服装着て迎えに来てくれるなんて……」
凛「あ、うーんと……これは……えへへ」
花陽「凛ちゃん頑張ったもんね~」
本当に恋お姉ちゃんの表情は嬉しそうだった。
恋お姉ちゃんは、昔は凛ちゃんとは正反対なくらい、髪が長く、服装も女の子らしいものを好んでいた。そして、凛ちゃんの本当の気持ちを理解していた人でもある。
恋「似合ってるわよ」
凛「うん! 恋お姉ちゃんありがと~」
真姫「あ、あのっ。おじゃましちゃ悪いですし、私はこれで帰りますね」
花陽「あ、真姫ちゃん!」
真姫ちゃんは気を利かせてくれたんだろうか……。だとすると、お礼も言わなきゃいけないし、居心地が悪いと感じさせてしまったことも謝らなくては……。
そんなことを考えているうちに、真姫ちゃんはいなくなってしまっていた。
陽向「さて、家に帰るか……」
恋「そうね……ふぁっ……眠い」
凛「恋お姉ちゃん達は今日は、凛の家に集合だよ?」
陽向「そうなのか? 花陽」
花陽「うんっ。凛ちゃんのお母さんが料理作ってくれてるんだって」
陽向「何か申し訳ないな……」
~道中~
凛「あ、そうだ! 恋お姉ちゃん達聞いて聞いて! 凛達、実はスクールアイドルやってるの!!」
恋「え?」
陽向「……」
恋「あー。凛、その……知ってるのよ」
花陽「え!?」
陽向「大学で、スクールアイドル好きのやつがいてな。ソイツからすすめられたのがたまたまμ’sで……」
恋「まさか、凛や花陽ちゃんの姿を見るとは思ってなくてね」
花陽「わわ、私達そんな有名になってたの?!」
凛「かよちん! これはひょっとすると……」
りんぱな「「A-RISEにも勝てるかも……!!」」
花陽「あー、ダメダメ! そんなの考えるのまだ早いよ~」
凛「そうだね~」
恋「ほんと、あんた達仲いいわね~……」
陽向「何で俺の方を向く」
恋「べっつに~。でも、凛はおいといて、花陽ちゃん、よかったね。小さい頃からの憧れだったもんね、アイドル」
花陽「はい! もう私、嬉しくて嬉しくて……」
凛「かよちん、とってもがんばり屋さんなんだよ?」
陽向「小さい頃は、アイドルがテレビに出てきたらリモコンをマイク代わりにして歌ってたくらいだもんな」
花陽「お、お兄ちゃん恥ずかしいからやめてよ……」
陽向「ごめんごめん」
凛「そろそろ凛の家に着くよー!」
~到着~
凛「お母さん、ただいま~!」
凛母「あら、おかえり。花陽ちゃんもいらっしゃい。でも、やっぱり、今日の主役は、恋と陽向くんね」
恋「お母さん、久しぶり。元気そうで安心よ」
陽向「お久しぶりです。今日はすみません、お邪魔してしまって……」
凛母「いいのよ~。なんてったって陽向くんは……あっ、これは内緒にしとかないとね」
恋「……」
陽向「?」
凛「お母さん、今日は何作ったの?」
凛母「まぁまぁ、それは見てからのお楽しみよ」
~しばらくして~
凛母「はい、おまたせ!」
凛「うわぁ~! すっごい豪華だにゃー!」
陽向「ほ、本当にこんなに豪華なものを……すみません」
凛母「ふふっ、いいのよ。遠慮しない遠慮しない」
恋「じゃあ、食べますか……」
花陽「いただきまーす!!」
~食事中~
花陽「……」パクパク
陽向「というより、花陽は本当にご飯好きだな。変わってないな」
花陽「お兄ちゃん、一人暮らしだけど、食生活とかは大丈夫なの?」
恋「全然ダメよ。コンビニのパンが昼食っていうのが基本らしいわ」
陽向「別に言わなくてもいいだろ」
恋「知らないわよ。花陽ちゃんがせっかく心配してくれてるのに……」
凛「陽向お兄ちゃんはパン派だもんね~」
花陽「お米の方がいいよ? お兄ちゃん」
陽向「あ~、そうだな……たまには自炊してみるか」
凛母「ふふっ、陽向くん、自炊しなくてもうちの恋に作ってもらえばいいんじゃない?」
恋「は、はぁ!? お母さん何言ってるのよ!」
陽向「はは、遠慮しておきます」
恋「あんたも遠慮してんじゃないわよ!」
凛「あ、恋お姉ちゃんの顔が真っ赤だにゃ~。さては……かよちん、これは『アレ』ですかにゃー」
花陽「そ、そうかもね……」
恋「……うぅ……」
その後もみんなで楽しく食事を取りながら陽向お兄ちゃんや恋お姉ちゃんから大学であった楽しいことや、新しい発見について色々聞いた。
やはり、大学は高校とは違って少しは自由な環境になるらしいから、本当に色々な活動をやっている人がいるという。中には私達のように、アイ活をしている人もごくたまにいるのだとか……。
食事を食べ終わると、凛ちゃんのお母さんに挨拶をして、陽向お兄ちゃんと家へと向かう帰り道を歩く。
陽向「なぁ、花陽。俺といて大丈夫なのか?」
花陽「え? 何が?」
陽向「いや、お前もそこそこ売れてきてる……というより、ここら辺では有名なアイドルなんだから、夜に男と二人で歩いているところなんか見られたら厄介じゃないか?」
陽向お兄ちゃんの言う事は一理はある。確かに、アイドルにとって恋人絡みのスキャンダルというのは今後の活動に支障が出るほど大きなものとなってしまうからだ。
もし、今お兄ちゃんと二人で歩いているところを見られて、勘違いでもされたら大変なことになってしまうかもしれない。
でも……。
花陽「た、確かに、そうだけど……せっかく帰ってきたんだから……」
陽向「あ、ごめんな。何かややこしい話しちゃって」
花陽「ううん、大丈夫だよ。お兄ちゃんが花陽のこと心配してくれてて、本当に嬉しい」
陽向「……花陽は明るくなったな。前まではちょっと自信なさげな感じだったけど、これもアイドル活動のおかげかな?」
花陽「うん。花陽にとって、μ’sはとても大切な居場所……だから、私、今がすごく楽しいの」
陽向「……よかったな。きっかけを与えてくれた子にも感謝だな……。まぁ、凛にも大きな功績がありそうだが」
花陽「ふふっ。そうだけどね……」
陽向「……。さて、それじゃ、家へと急ぐか。練習で結構鍛えてるんだろ? もしかしたら今なら俺より体力あるんじゃないか?」
そう言い出すと、陽向お兄ちゃんはいきなり家へと全力で走りだした。
花陽「あ! ず、ずるいよぉ~!!」
(いったん凛視点)
かよちん達が、家へと帰ってから恋お姉ちゃんはため息ばかりついている。
もしかしたら、大学で嫌なことでもあったのかもしれない。こういう時は妹として、相談に乗ってあげた方がいいのか、無理に気を遣わず、そのままにしておいたほうがいいのか、悩んでしまう。
恋「はぁ……」
凛「……」
こういう時、穂乃果ちゃんや絵里ちゃんは、普段から家に姉妹がいるから聞きやすいのかもしれない……。でも、凛と恋お姉ちゃんは、普段から家で一緒というわけではないから、妙に距離感があるように感じてしまうn。
恋「……はぁ」
凛「……れ、恋お姉ちゃん、さっきからため息ばかりだね」
恋「あ、凛。ごめんね~。何か今日はしおらしい感じになっちゃうのよ」
凛「……。も、もしかして、陽向お兄ちゃんのこと?」
恋「っ……さ、さぁ、どうかしらねー?」
凛「……恋お姉ちゃん、隠すのが下手にゃ~」
恋「うん……そうよ……。一応、陽向のことで悩んでるのよ……。って、あー!! 何で妹にこんなこと言わないといけないのよ! お風呂入ってくる!!」
そう言い残すと、恋お姉ちゃんは勢い良く、リビングから出て行ってしまった。
予想はできてたが、やはり、恋お姉ちゃんは陽向お兄ちゃんに恋をしている気がする。
幼馴染が結ばれるって言うのは少女漫画ではよくあるシチュエーションだけど……。恋お姉ちゃんにはうまくいってほしい。
凛「……うーん……」
陽向「母さん、ただいま~」
花陽母「お帰り、陽向。元気そうね」
陽向「まぁ……ね」
花陽母「あ、花陽。私は陽向と話したいこといっぱいあるし、先にお風呂入っちゃいなさい」
花陽「う、うん……じゃあ、先にお風呂いただきます」ガチャ
花陽母「どう? 陽向、花陽、変わったと思わない?」
陽向「いや、大学で結構噂になってたし……。まぁ、変わったとは思うよ」
花陽母「ふぅん……兄としてどうなのよ?」
陽向「嬉しいよ。少しは自信持ってくれてるなら」
花陽母「ふふっ。何だかんだ言って妹思いよね~」
陽向「そんなんじゃないよ……でも、個人的に言わせてもらうなら、ちょっとくらい反抗心くらい持ってほしいんだけど……」
花陽母「あら、何それ」
陽向「いや、花陽の反抗期が過ぎてちょっと寂しい」
花陽母「何だかシスコンみたいよ。それ」
陽向「う~ん……。いや、花陽が中学生くらいの時は、確かに多少は衝突があったけど……なんか今の花陽は従順というか何というか……そんな感じ」
花陽母「まぁ、本当の仲良しならたまには喧嘩するって言うもんね」
陽向「そ。この間にちょっと心の距離が空いた感じかなぁ……」
花陽母「それはたぶん、花陽も感じてることよ。あなたから近づいて行ってあげてもいいんじゃない? お兄ちゃんなんだから」
陽向「さすがにそれはマズイって」
花陽母「ふふっ。冗談よ……。ところで、陽向」
陽向「何?」
花陽母「……わかってるわよね?」
陽向「何が?」
花陽母「そりゃあ、もちろん、あなたも大学生なんだから彼女の一人や二人できてるわよね?」
陽向「……いや、できてないよ」
花陽母「そうなの?」
陽向「うん」
花陽母「まぁ、確かに陽向は恋ちゃん以外の女の子を扱うのは苦手そうだもんねぇ」
陽向「何でそこで恋の名前が出てくるんだよ……」
(花陽視点に戻ります)
花陽「ふぅ、気持ちよかったぁ」
お風呂から上がり、パジャマに着替えて、今日あった楽しいことを振り返りながら一息つく。
陽向お兄ちゃんと恋お姉ちゃんが帰ってきてくれて、嬉しい。できるのならこの連休中、また昔みたいに4人で遊んでみたいな……。
そんなことを思っていると、携帯のメール通知音が鳴るのを聞いた。
私は携帯を手に取り、その内容を確認すると、にこちゃんからだった。
件名はなかったけど、その文面は――――
『あんた、今日男と歩いていなかった?』
もしかしたら、にこちゃんに陽向お兄ちゃんと帰っているところを見られたのだと思い、すぐにそのメールに返信をする。
『大丈夫だよ。あの人は花陽のお兄ちゃんだから』
そう送って、しばらく待つと、今度はにこちゃんから電話がかかってきた。
にこ『お兄ちゃん!? あんた、お兄ちゃんいたの?!』
花陽「う、うん、そうだよ。一人暮らししてるんだけど、この連休中の間だけ帰ってきてるの」
にこ『はぁ……心配して、損したような……ってダメダメ! 花陽! わかってると思うけど、にこ達はアイドルなのよ』
花陽「うん、にこちゃん……その先は言わなくても大丈夫だよ?」
にこ『……そう。まぁ、そうね。花陽なら、わかってると思うし……。せっかく、帰ってきたんだから、お兄ちゃんと仲良くするのよ』
花陽「うん。にこちゃん、心配してくれてありがとね」
にこ『べっつに~。にこにーは~、仲間がわる~い男の人と絡んでないか、心配だっただけニコよ?』
花陽「ふふっ。じゃあ、お休み。にこちゃん」
にこ『ん、お休み』
やっぱり、にこちゃんは頼りになる先輩だと思った。もちろん、絵里ちゃんや希ちゃんも頼りにはなるけど、にこちゃんは、ぶっきらぼうに見えて、私達のことをよく見てくれている。
私自身、にこちゃんみたいにはなれないかもしれないけれど、そう言った視野の広さというのを持ってみたいと思ってたり……。
花陽「はぁ……にこちゃんってすごいなぁ」
そんなことを呟くと、誰かが部屋の扉をノックする音が聞こえた。
陽向「花陽? そう言えば、お前にお土産渡してなかった」
花陽「お土産?」
~リビング~
陽向「というわけで、お土産」
花陽「こ、これって……伝説のあのお店の天むす!?」
陽向「ああ。花陽はご飯が好きだからなぁ……天むすは嫌いか?」
花陽「うぅん。すっごく嬉しい! 食べてみたかったんだぁ~!」
陽向「そっか。喜んでくれるなら買ったかいがあるな……」
花陽「いっただきま~す!」
陽向「……美味いか?」
花陽「うん、とっても美味しいよ! ありがとう、お兄ちゃん!」
その後、私はお兄ちゃんが買ってきてくれた天むすを堪能した後、もう一度部屋に戻った。携帯を確認すると、凛ちゃんからメールが一通届いている。
どうやら、明日のうちに連休中の課題を、一緒に終わらせてしまい、残りは遊ぼうという、実に凛ちゃんらしい提案だった。
私は、そのメールに「もちろん、いいよ」と返信し、その日はのんびりと過ごした。
凛ちゃんが来たのは、朝の10時くらいだった。
凛「か~よちん! 来たよ~!」
花陽「うん、凛ちゃんいらっしゃい! え~と、恋お姉ちゃんも一緒なの?」
恋「うん。花陽ちゃんのお母さんにも、挨拶しておかないとね」
花陽「あ、そうだよね。じゃあ、お二人とも、どうぞ」
二人を家に上げると、それに気づいたのか、お兄ちゃんが下へと降りてきた。
お兄ちゃんは、恋お姉ちゃんがいることに気づくと、すぐさま、上へとまた戻っていく。
恋「何あいつ……」
凛「あはは……。じゃあ、凛とかよちんは、かよちんの部屋で宿題やっとくね」
恋「うん。花陽ちゃん、凛をよろしく」
花陽「あはは……。じゃ、凛ちゃんいこっか」
そう言って、私と凛ちゃんは部屋へと向かった。その時の下の方でお母さんが、恋お姉ちゃんを歓迎するような明るい声を出しているのが聞こえた。
凛ちゃんと私は部屋の中へ入り、まずは、宿題がどれくらい出ているかを確認する。
やはり、連休ということだけあって、いつもよりは少し多めの量になっていた。
凛「う~、やる前から憂鬱だよ~」
花陽「凛ちゃん、頑張ろうね」
凛「でも、かよちんがいるから安心にゃ~」
花陽「うん。それに、両方わからなくても、今日は大学生の二人もいるし、百人力だよ」
凛「その通りにゃ~」
そんな会話をしつつ、宿題を始める。凛ちゃんが行き詰まったら私ができる限り見てみる、というのはいつも通りである。
あとは、ここに真姫ちゃんでもいれば……。
凛「……」
花陽「……」
二人の間で静かに時間が過ぎていく。時計の針が動く音が聞こえてくるほどの静かさだ。
しばらく続けていると、凛ちゃんが明らかに行き詰まった表情をしていた。腕を組んでみたり、頭をひねって考えてみたり、試行錯誤を繰り返している。
花陽「あ、あの、凛ちゃん?」
凛「あ、かよちん。ここの問題なんだけど……」
花陽「え~と……あれ……何だろうこれ」
その問題は、いわゆる発展問題のようなものでかなり難しい英作文の問題だった。
私はどれだけ考えてもわからなかったので、一度、陽向お兄ちゃんを頼ってみることにする。
花陽「お兄ちゃん、ちょっといいかな?」
陽向「ん? 花陽、どうしたんだ?」
花陽「ちょっと宿題で分からないところがあって……教えてくれないかな?」
陽向「あ~……」
恋「あら、面白そうな話をしているわね」
私とお兄ちゃんが話している後ろから、恋お姉ちゃんが話しかけてくる。どうやら、お母さんとの話が一通り終わって、階段をあがってきたところだったようだ。
恋「私も見てあげる。だって、陽向だと頼りないし」
陽向「お、言ったな。だったら、どっちが上手く教えられるか勝負してもいいぜ」
恋「望むところよ」
花陽「あ、あの~二人とも、そこまで燃え上がらなくても……」
私をそっちのけで、盛り上がっちゃう二人でした。
それから、二人は私の部屋に入り、凛ちゃんと私に色々と勉強を教えてくれた。どういうわけか、ヒートアップのしすぎで、簡単な問題までも教えようと必死だった。
陽向「お、恋。こんな問題も分からないのか?」
恋「わ、分かるわよ! あんたこそ、さっき凡ミスしたでしょうが!」
陽向「い、いや。ケアレスミスだから、うん」
凛「何だか昔に戻った気分だにゃ~」
花陽「そうだね……」
昔も、こんな感じでいつも4人で遊んでた私達……。ちょっとだけだけど、この瞬間がまた来てくれたのは本当に嬉しい。
でも、私は何かお兄ちゃんにしてあげれているのかと思うと……わからなくなる。
小さい頃の私は、気が弱くて自信がなく……凛ちゃんがいない時はいつもお兄ちゃんに励ましてもらっていた。
出来ることなら、何か恩返しをしてあげたい。そう、思った……。
陽向「っていう感じだ。……花陽? お~い、聞いてるか?」
花陽「う、うん! もちろんだよ! さすが、お兄ちゃんだね」
恋「……陽向は勉強だけは出来るもんね~」
陽向「それ以外も出来るよ……料理とか掃除とかは除く」
恋「はぁ……そんな状態でよく一人暮らしするなんて決めたわよね。さっき、おばさんが言ってたけど、本当にびっくりよ」
陽向「なっ……。でもまぁ……一人暮らしの理由は他にあるからな」
恋「へぇ、何よ」
陽向「……それは秘密だ」
凛「あ~! 絶対何か隠してるにゃ!」
陽向「凛にはわからないよ。……たぶん」
凛「バカにされてる……」
陽向「まぁ、課題はこんなところか。そろそろ、俺部屋に戻るわ。こっちも、大学でレポート作らなきゃならないし」
恋「ふぅん……私は花陽ちゃんたちと一緒にいるわ」
陽向「どうぞ、ご勝手に……」
それから、後は課題をほとんど終わらせることに成功し、残りの時間は凛ちゃん、恋お姉ちゃんと一緒に……いわゆるガールズトークで盛り上がった。本当はお兄ちゃんも交えての昔を思い出話とかもやりたかったのもあったんだけど……。
しばらくしてから、凛ちゃんと恋お姉ちゃんは自宅へと帰宅していった。
私は一度だけ携帯画面を見て、小さなため息をつく。
花陽「何かしてあげられないかな……」
その夜、私はこっそり凛ちゃんに電話をかけ、お兄ちゃんと恋お姉ちゃんに何か恩返しをしてあげたいということを告げた。
凛ちゃんは快く返事をしてくれた。……でも、具体的に何をしてあげればいいのかはまだわからない。
そこで、凛ちゃんの提案で、μ'sのメンバーで、こっそり緊急会議を開くことになった。
次の日、私は制服に着替え、いつものあの部室へと向かう。途中で凛ちゃんと出会い、二人で扉を開けた。
そこには既に、穂乃果ちゃんや、海未ちゃん、ことりちゃんがいてくれた。
穂乃果「あ、凛ちゃんに花陽ちゃん! おはよ~!」
海未「おはようございます」
ことり「おはよう♪」
凛「穂乃果ちゃんたち、おっはよーにゃ!!」
花陽「みんな……おはようございます」
それから、しばらく5人で雑談をしていると、後から真姫ちゃん、絵里ちゃん、希ちゃん、にこちゃんといった順で部室へと到着した。
にこちゃんはどうやら、妹たちの面倒でちょっとだけ遅れちゃったみたい。相変わらず、すごい人だなぁ、と思ってしまう。
にこ「んで? 今日呼び出したのはどういうわけがあってなのかしら?」
凛「あのねー!」
花陽「あ、凛ちゃん。私の口で説明するよ……提案したのは私だから」
凛「……うんっ。かよちん、頑張って!」
今回も気になる……。
兄妹ネタってあまり設定でてないからこそ、出来るところもありますよね!
頑張ってください!
ラインさん
いつもありがとうございます~。
頑張りますよ~