提督「鎮守府無理すぎ」
提督は鎮守府を出ていきます。
もう俺は限界です。
キャラ崩壊多め。
*艦娘は提督のことが…。
とある鎮守府のトイレにて…。
提督「はぁ」
提督「絶対やめてやるよ」
提督「くそが…」
俺が何をやめたいかだって?
そんなの決まってるじゃないか。提督をやめたいんだよ、こんな安月給のクソ仕事やってられるか!
だが薄給ということは、俺が提督をやめたい直接的な理由じゃない。
俺が提督をやめたい理由…。それは…。
吹雪「ほら、司令官。報告書です」
提督「おぉ、ありがとう…」
吹雪「あ、それとこれから睦月ちゃん、夕立ちゃんと事務所に行かないとなんでー、車出してもらっていいですか?」
提督「え…。今日も撮影があるのか?」
吹雪「…は? なに言ってるんですか? そんなの当り前じゃないですか」
提督「そ、そうか…」
吹雪「…で、車出してもらえるんですよね?」
提督「え…あぁ…」
吹雪「それじゃあ、よろしくお願いしますね」
お分かりいただけただろうか? これは俺の鎮守府での日常だ。
事務所、撮影…意味が分からないって? あぁ、俺も分からないさ! だけどな、突然海から現れた深海棲艦っていう化け物に絶望していた人類を救ってくれたのは、あいつら艦娘っていう奴でさ…。俺なんて海軍に属してたのに、なーんも出来なかったんだぜ? 陸の上から指揮を飛ばすだけ! 必死で戦ってたのはあいつらだよ…。
それで深海棲艦との戦いが落ち着いてきたら、メディアがあいつらをめちゃくちゃ取り上げたんだよ。悔しいけど、あいつら容姿端麗な奴しかいねえじゃん?
単刀直入に言うとさ…。あいつら読者モデルとか、アイドルとか…スター扱いされてるってわけよ。
俺も最初は嬉しかったさ。あいつらもなんだかんだ言って嬉しそうだったし、なにしろ謙虚だったんだよ…あの時は。
今じゃ、見る影もないくらいに天狗になっちまったしな…。
陽炎「ねー司令官? 今度〇〇雑誌っていうのに私たち陽炎型の写真が載るんだけどさー? しばらく鎮守府留守にしてもいいよね? 撮影に時間を要するんだって」
提督「えぇ!? お前たちは戦力なんだぞ!? そんなの困るんだが」
不知火「大丈夫じゃないですか?」
初風「そうよ。しばらくって言ったって、一週間くらいだし」
提督「いやいやそれは…」
浜風「…もうこっちは大丈夫って先方に言ってるんです! 何とかしてください」
磯風「そうだ。何とかしてくれ」
提督「」
結局陽炎型はそう言って撮影会に行ってしまうし、というか俺が車で送る羽目になったし…。なぁにこれ?
金剛「ヘーイ、テイトクー! 今日の出撃なんですが、ワタシ達は行けないネ」
榛名「金剛お姉さまと比叡お姉さまは、テレビショーに呼ばれてるみたいです。私と霧島も何かのプロモーションを撮るとかで…」
提督「何かってなんだよ!? そこが重要だろうが!!」
霧島「いかがわしいものではないですから、ご安心を」
比叡「あと一時間くらいしたら始まっちゃいます! 早く車を出してくださいよ、司令!」
提督「」
俺は車を出した。
そしてそのうち俺は艦娘たちから呼ばれるようになった。
「アッシー君(笑)」と。
車の送迎だけじゃない。
「あの、お腹がすいたんですケド…。ご飯まだですか?」
「ねー、私たちが撮影で使う服さー、洗っといてくれたー?」
「アッシー君(笑)! 車よろしく~」
「なんで入渠施設使えないの? 撮影で疲れてるんだけど~? お風呂入りたいんですけど~?」
召使かな?
「…本当、ドンくさいですよね。あなたw」
「司令官みたいなオジサンがさー、私たちみたいな美少女といれること自体、幸せなことなんだからねw」
「感謝してくださいよ? 私たちみたいな素敵な娘に囲われてるんですからw」
「あ、でもでも~。提督に恋愛対象に見られたら、マジ勘弁だよねw」
「それもそうだわw」
ドッ(笑)!!!!!
もう悪口だよね、これ? やめていいよね、これ?
確かに容姿の釣り合わない俺はあいつらには不釣り合いだよな。きっとあいつらには、あいつらに相応しい奴らがゴロゴロいるだろうし…。
だから今日、俺は鎮守府を出ていく。
というわけで俺は今、執務室で荷物をまとめているわけだ。こうして部屋を整理していると懐かしいものも幾つか出てくるんだけれど、俺はそれらを段ボール箱にそっとしまう。あぁ、あいつらは今後俺とは道を違えて、もう一緒に入られないのだな…。そう思うと少々寂しさも込み上げてきたが、まぁいいか(笑)。
コンコン
提督「ん?」
山城「失礼するわね…」
山城「!」
山城「…何してるの?」
提督「あ、あぁ…荷物をまとめているんだよ」
山城「…な、なんで?」
提督「あー」
提督「俺さ、提督やめようと思っているんだ」
山城「え!?」
山城「そ、そんな急に…どうして?」
提督(なんかすごい顔で睨んでくるけど…。だ、大丈夫だよな? だってお前らは顔がきれいだし、人間より強いし…)
提督(俺にこだわる理由がない…)
提督「仕事がめんどくさいんだ。それに薄給だし…」
提督「俺もそろそろ仕事を変えたいと思った、それだけさ」
山城「そ、そんな…」
山城はそれだけ呟くと、執務室から出て行ってしまった。ちょっと寂しそうな顔をしていたが…。引き留めないってことはやっぱり、そういうことだよな?
俺は執務室の整理を早めに切り上げられるよう、作業ペースを上げることにした。
食堂にて。
扶桑「あら山城。どうしたのそんなに暗い顔をして? 今日の朝食は…」
山城「扶桑姉さま…」
山城は扶桑の胸に飛び込んだ。そしてものすごい勢いで泣き始めたのだ。扶桑はそれに驚き、あわあわとしている。さらに山城の鳴き声を聞いて、他の艦娘たちも扶桑たちの周りに集まり始めた。
そして皆に宥められ、落ち着いた頃に山城がふと溢したのだ。
山城「提督がいなくなってしまう…」
食堂は阿鼻叫喚に包まれた。
山城が執務室を出て行ってから三十分も満たずに、部屋の外が騒がしくなった。そして何事かと耳を澄ましていたのだが、あまりの雑踏に室外の声があまり聞き取れない。
そしてほんの少し聞き取れた言葉に俺は戦慄した。
「司令官をこ……ろす」
「提督を…めよう」
強い怒気をはらんでいた。語気が荒々しいのが分かる。
そしてそれから察するに、艦娘たちはどうやら俺を××したいようだ。
俺はすぐに執務室の鍵を閉めた。
そしてそれと同時に執務室の扉が激しくノックされ、叫ぶような声が聞こえてきた。
「提督、出てきて!!!」
「司令官! やめるってどういうことですか!?」
俺は耳を塞いだ。
だが無情にも艦娘たちの声は聞こえてくる。
「提督、顔を見せてくださいよ! いきなり辞めるなんて言われても困るんですけど!?」
「司令官! 何があったのです?!」
「こんなの急すぎます! 出てきて!!!」
「そ、そんなの……困るよ!!!」
…それはそうだよな、うん。
そこには妙に納得してしまう俺がいた。
いや、俺が急に辞めると言ったこと(それ自体は揺るがないんだけど…)がそもそもの発端だけどさ、しばらく車の送迎とか鎮守府の生活面(炊事、洗濯、掃除など)は俺が担ってきたわけだし…あいつら艦娘が困るのは確かにそうなんだよな。
…とは言え、俺は心のどこかで安心したというか、諦めがついたというか…。
いやここでさ? もし謝罪とかされて、涙ながらに引き止められたりしたらさ…俺、決意揺らいじゃうと思う。
心のどこかではさ、「提督、行かないで(涙)」みたいなのを期待していたけどさ。現実はそうじゃなかったわけよ、うん。
でも今聞いてみて分かっただろう?
俺が居なくなることで困ることはあるかもしれない…。でも俺自体があいつらにとって特別な存在とかではなかったわけで…要は後任の奴が来たら全て解決するわけよ。
ならさ、ここまで曲がりなりにも一緒にやってきたやつらだ。せめて立つ鳥跡を濁さずでいくか…。
そう考えるや否や俺は立ち上がり、腹から精いっぱいの声で叫んだ。
提督「お前らが心配している事、これからの鎮守府についてだが…すぐに大本営が対応してくれるはずだ! 車の送迎だって、お前らの身の回りの事だって、きっとすぐに対応してくれるさ!」
俺が叫んでいる間、室外の声は先ほどの騒がしさが嘘のようにピタリと静まっていた。それこそ、そこにはもう誰も居ないんじゃないかと錯覚するほどに…。だがそんなことは無かった。
提督「そういうわけで俺は提督を辞める。今までいろいろと世話になったな…! まあ、みんな達者で…!」
続けて俺がそう叫んだ時だ。
一気に艦娘たちの声…いやもう雄たけび、咆哮と言っても過言じゃないくらいの怒号が辺りを支配する。
「意味が分からない…意味が分からないよ!!!」
「提督、まず話をしましょう!? 顔を合わせて、じっくりとお話をしましょう!?」
「ワケの分からないこと言ってないで、さっさと出てきなさい!!!」
「司令官司令官司令官司令官司令官…」
「てええええええええええとくううううううううううううう!!!!」
正直、面食らった。
いや、いやいやいや!? きちんと大本営が対応してくれるって言ったやん!? それ以上、俺に何を求め…。
へ? もしかして、あいつら…。
今日で俺が最後だからって、今までの鬱憤をぶつけようとか考えてるわけじゃないよな!?
そうこう俺が思案していると、扉越しに聞こえていた問いかけに確かな変化が生じる。
最初こそ「開けて」とか「開けてください」と言っていた幾多の声は、「開けろ!!!」という強い口調に変わり、まるで大ブーイングを受けているような錯覚に陥る。
しかも執務室の扉は今にも壊れるんじゃないかというくらいにノック…いやもはや破壊しにかかっていると言っていいくらいに叩かれまくっている。
え? 俺、死ぬんじゃね?
艦娘はその姿さえ人間と変わらねど、有している力は間違いなく人間とは比べられないものだ。かなり昔の話だが、とある鎮守府で艦娘の反乱があった際、そこの指揮官は半殺しにされたらしい。
俺は自分の体が恐怖で震えているのが分かった。
「提督…」
そんな時、喧騒に交じって聞こえたのは優しげな声。その声を発した者は、おそらく扉のかなり近くで囁くように呼び掛けているのだろう。
俺はその声の主の名を呟いた。
提督「時雨…?」
時雨「そうだよ」
時雨の返答を合図に再び静寂が訪れる。
とは言え、苛立ったような、唸るような声はめちゃくちゃ聞こえてくるがな…。
時雨「提督、辞めるっていうのは本当?」
提督「あ、あぁ…本当だ」
時雨「ふーん…」
時雨「なんで?」
提督「え、いやそれは…」
時雨「なんで?」
提督「きゅ、給料も安いし…そろそろ仕事を変えようと思ったんだ…。そ、それだけさ…」
恐怖からか、緊張からか…声が上ずる。
そして俺の消え入るような声を時雨は、いや扉の先にいる艦娘たちはただ黙って聞いていた。恐ろしいくらな静けさが俺の背筋を寒くする。
突然、時雨が言った。
時雨「提督」
時雨「君には失望したよ」
なんて無機質で、なんて冷たい声だろう。こんなにも低い声を時雨は出せたんだな。
時雨「提督」
時雨「そういうことを言って楽しい? 僕たちをからかって楽しい?」
生気を感じさせない…機械が発しているような声は間違いなく俺に語り掛けてきている。
俺は返答など出来なかった。
時雨「…」
時雨「ふーん、黙っちゃうんだね」
時雨「提督はさ、一つ知っておいた方がいいよ」
時雨「君が僕たちにとってどういう存在なのか、どういう風に想われているのか」
時雨「…ね?」
最後の一言は俺の知る時雨の声だった。
そして俺がようやく彼女の言葉に応えようとした時だ。
ザクッ! ザクッ!
鈍い音を響かせながら、扉から突き出すキラリと光るもの。ソレは俺と彼女たちを隔てるものを徐々に削いでいく。
理解が追い付かなかった。それでもソレに目を奪われた俺は否が応でも理解する羽目になった。
時雨が扉に包丁を突きつけ、力いっぱい振り下ろしている。
鋭利な先端が扉を砕き、あちらとこちらが筒抜けになる。
そして俺は見てしまった。
目を見開いた時雨、その後ろに控える艦娘たちの姿。
俺は執務室の窓から飛び出した。
こういうの好き、続きが気になる
誤字報告をします。
× 山城の鳴き声を聞いて
○ 山城の泣き声を聞いて
続き、お待ちしております。
まーこの態度を貫いてたから仕方ないよな(笑)
それで辞めるというのを阻止するのなら、都合のいいアッシーや召使いを逃したくない!と自分勝手な人間関係だと捉えられるんだし。ここは素直に辞めさせるのが君らの世間体に都合良いけどね?
すごく好き。
ここからどう手のひら返すか…。
圧倒的愉悦を感じる。
執筆頑張ってくだち。
こういうのしゅき
がんばるでち!
やるじゃん(やるじゃん)
艦娘達が、自分達の行いを反省する事無く提督を悪者にして病んでったりしたらなんかいやだなぁ。
時雨、吹雪型や陽炎型、金剛型達が提督にとってきた振る舞いを知らない訳ではあるまい?
あと、なんと言うか…やはりこの場は
時雨が安定してますなぁ
うん。
やじゃるん(やるじゃん)
イイゾこれ期待
更新がたのしみです!!
更新がまちどうしいです。
お忙しいでしょうが
楽しみにしています。
こういう内容のモノは好きです!(これお気に入り)無理せず
頑張って下さい!
続き待ってるぞ
異な事を言うねぇ、時雨は
艦娘達は言外に提督を要らないものとしての扱いをしてるんだから、
消えようとすれば喜びこそすれ、文句なんぞ出てくるはずがないのに…
失望された挙句艦娘達の中でどう思われてるかと言われても、ねぇ?
「アッシー君(笑)だろ?」と返されたら何も言えないわけで
さぁて、これで勝手に病まれてもはた迷惑なだけだけど、どうなるのやら…
続き気になるなぁ...
今でも続きを待ってるンゴ
続き待ってます
ツヅキヲ……
続ける気無いなら何で書くんですか?
これで終わりなんじゃないの?