瞳に映るは何の色?
彼は俊志、彼を1つだけ言うとすると「無個性な人間」どこにでもいる人間。
そんな人間の、愛と成長の物語。
さて、あまりSSをかき慣れてない人間の作品のため、漢字などがごちゃごちゃのため、指摘してくださるとありがたいです!
[chapter1 親不孝者の出会い ]
「ありがとうございましたー!」
最後のお客に私は少し張りのある声で感謝を述べた。
カウンセラーになるために社会福祉士学科の大学に入ったが、父が酒乱で風俗に駆け込むことが多くなった上、母が鬱病、糖尿病を患い、高校生の時には両親が戸籍上離婚した。別に大学の授業料を払ってもらうつもりもあまりなかったが、どっちの親に入ったとしても老後は養ってくれと両親にしつこく言われ続けて嫌になってしまった。親が嫌になった私は今現在、アパートの一室を借り、学生のときに取った危険物取扱者乙四の資格で、ガソリンスタンドの店員をやっていた。
「ヨモギ先輩、最後の方が帰りました。」
と私がレジの方へ行きながらそう言うと
「そうか…」
この人はこのガソスタに勤務している私の先輩だ、悪い人ではないんだが、私に対しては少しあたりが強かったり嫌味を言ったりしているのが印象的だ。
それも当たり前だ、傍から見れば…いや、どこから見ても私は親に対して恩を返さない親不孝者だ。この先輩は親が大好きで、親の家業を継ぐために大学に入り、職業が決まり次第このバイトを辞めるらしい。
「悪いが、お前みたいな擦れた上に逃げるやつは嫌いだね。その思考で散々後悔するがいいさ」
そうヨモギ先輩が私にそう言った。
「いいんですよ、今更後悔はしてません…自分が裕福になる為だけに子を育てる人は…私は好きませんでしたから…」
私がそう言うと
「そんなの当たり前だろ!親に尽くすのは子の勤めだぞ!産んだ人の気持ちを何故考えない…!鼻からスイカを出すほどの痛みを…」
その言葉の続きを私は聞き飽きた上にもう聞きたくなかったので、遮るように私は
「もういいでしょう!?貴方がしたいのはなんですか!?ただ私に嫌味を言いたいだけなんですか?それとも…」
と、言葉が詰まってしまった。
「それとも…なんだ…?言ってみろよ…」
彼はそう私に問うと、更に追い打ちをかけるように言い始めた
「…だろ…?そうなんだろ?お前には常識ってのか備わってないから俺の言葉が皮肉や嫌味にしか聞こえないんだろ…?自分一人で生きてきたって思ってるやつほど醜い者はいないな…」
「一人で生きてきたなんてこれっぽっちも思ってないですよ!」
「本当かな…?」
すると私は母に言われた事を思い出した。
「そんな事言ったら私のほうが辛かったんだからね、ほんとに今の子供は逃げグセがついてて嫌になるね。あと、老後は養って貰うからね。誰がアンタを育てたと思ってんの?とにかくさっさと稼いでよ〜」
思い出す度に苛立ちが込み上げた…殆どの私の世話は祖母がしてくれたため、正直アンタに世話をしてもらったつもりは殆ど無い気持ちでいっぱいだった…いや、これは私が子供の思考がとれないからなんだろう…
そう考えていると先輩が
「お前は絶対に後悔するからな。その腐った性格じゃ地獄に落ちるし社会的に死ぬよ、今のうちに懺悔でもしときな」
「後悔は…すると思います。どんな事をしたとしても…両親は両親なので…」
「お前は…貫き通す意志がない…俊志…なんて名前がついているのにも関わらずにだ…美しくない人間なんだな…」
「私が美しかった事なんて…無いですよ」
そう二人で話していると、バイトリーダーのスミレさんがきた。
「ちょっとちょっとぉ〜なぁに暗い話してんのよぉ〜…あなたもあなたでちょっとは言い返しなさいよ!そんなんじゃすぐ負けちゃうわよ〜それに、そんな思考だと貴方じゃこのまま自殺しそうだわ。カウンセラーになるために、A県からこのI県に来たんでしょ?ならもっとシャキっとして!!…ね?というか…ヨモギ!まぁだそんな事言ってるの!?この子の前ではその事は禁句だって分かってるでしょ!」
「…親には感謝するのが常識だろ…?それに、俺は社会的に普通だと考えたことを言ったまでだよ。」
「確かに親には感謝すべきなのかもしれない、でも貴方は自分の固定概念を相手に押し付けてるだけよ。今じゃもう常識的な倫理観でさえも固定概念になりつつある世界なのよ。互いに認めなきゃいけないの!分かった!?」
「チッ…」
「スミレさん…別にそんな…それにこれは私が世間に慣れてない上に、親不孝なだけですよ。」
「いいのいいの!!この世で親孝行するのもいいけどそれは正直個人の自由、そして、私は親孝行するべき人のは親が素晴らしく生きている事をいつまでも思ってやれる子どもだよ!お互いのことを愛してないとできないの!さ、さっさと店じまいするわよ」
「は、はい」
スミレさんがそう言うと、ガソリンスタンドのゴミ片付けや明日のシフトなどを確認して、すべての仕事が終わった。挨拶をして私はバイクに乗り、ヘルメットを被り、エンジンをふかし、道路へでた。
最近来たばっかりせいもあるのだろうか…Aよりも外が明るい…そのせいか、こころなしか落ち着くことができない…アパートはある程度木が多いところを選んだが、どうにも落ち着かない…そういえば、私の友人は元気だろうか…あいつは今頃エアガンをいじっているだろうな…
そんな他愛もないことを考えながら、アパートについた。
虫もこの地方だと多い場所で少し古いため、安く買う事ができたので、それ程家賃は気にすることはなかった。
「疲れたな…はぁ…今日は…晩飯どうしよう…そういや昨日作ったカレーが残ってたな…それにするか…」
私はそうぶつぶつ独り言をいってテーブルに皿に盛ったカレーをテーブルに置いて、あぐらをかいた。
疲れた…高校生以来、私は疲れやすくなっていた。ボーッとしていると、私の目の前に、携帯型のゲーム機が置いてあった。
友人とよく遊んでいた頃を思い出した。
私がやるゲームは基本的に皆でやるか、横スクロールのアクションゲームだった。
ここにあるゲームのほとんどが皆でやるゲームだったため、あまりやる気にはならなかった。
さ、さっさと飯を食って明日の授業の為に準備して終わろう…寝る時間にはまだまだ余裕があるが、早めにやってしまうのもいいだろう…
そう考えながらカレーを食べ、さっさと皿を洗い、シャワーを浴びるために下着とタオルを取ると…
ドガシャァァァァン
と、轟音が外から聞こえた。
ここら辺だとよく変な音は頻繁に聞こえる。
それに私の部屋は上からの音が凄まじい…ほぼ毎日上からは女性の喘ぐ声が聞こえる…私はジャズを流して寝ている人間だったので気にしないようにしようと思えばできるが、次の日起きるのが辛くなる…取り敢えず轟音が聞こえた所へ向かうと、私は目を疑った。
人だ…女性が倒れている…
あたりを見回し、恐る恐るその女性に近づくと
関節の色々な箇所からはオイルのようなものがこぼれていたため、すぐにアンドロイドだと気付いた。…頭も取れてたり足も切断されている箇所があり、他にも臭いがした…これは…この臭いは…なんだろうか…それを後から察した私はとてつもない吐き気がした。
これは…この臭いは…恐らく
「精…液…」
自分の口から出た声が信じられなかった。
というより信じたくないの方が正しいのだろう
心を落ち着かせ、色々な箇所を見ると、何処かで見たことあるような服装をしていた…
この人の様な形をしたものの正体を私は覚えていた。
中学生から高校生の頃、歌やトーク等で有名になった合成音声ソフトのキャラクター。
結月ゆかりだった。
だが、今現在、VOICEROID、Cebio、VOCALOID等というくくりで彼女等を語る者はもうこの世には居ない…
何故ならもう、彼女等の声は「売り物」
つまり、アンドロイドの声でしかない。
そして、その感情が豊かなAIが、今ここで、自殺をはかり、その事後に出会った。とりあえず私は彼女のパーツを全て取り、急いで私の部屋へ戻った。
彼女は何を思ったのだろう…何か…大雑把ではあるが、辛いことがあったのは間違いないだろう…今はとりあえず、この子にこびりついている汚れを取らなくては…
「うっ…」
凄まじい臭いがきた…猫のフンなどで悪臭には慣れていたつもりだったが、それとはまた別だ…同じ動物…人の汚物…恐らく他の人の精子もついているらしい…とてつもない臭いが何重にも重なって鼻に襲いかかる。
その上、この子には片目がなかった。
風俗のバイトの子だろうか…それにしてもこの子のマスターは何処に居るのだろうか…どっちにしろまずこの子をどうにかしなくては…
私はまず彼女の体に付いている汚れをとった。
パーツや修理方法はまだ良くわからないので、彼女の髪を綺麗にして私は明日の大学のために寝た。
翌朝
ジリリリと目覚まし時計がけたたましい音をあげた。今の時代の人間の殆どはスマホのアラームで解決できるらしいが、私にはそれが無理だった。
いつも私は目覚めが悪い…私の部屋を見ると相変わらず質素な部屋が朝を迎えてくれた。
舌打ちをし、顔を洗い、卵かけご飯を食べ、バイクをふかした。
ここらの景色は朝だとすごくきれいだ。
そこには風山公園が目に入る。
あの公園は昔の私の近所にある公園によく似ているため、意識しなくても自然と目に入ってしまう…その公園は後に里見動物愛護センターという動物保護施設になったらしい。まぁ…その公園自体は広く、人が全く来なくなったので、動物愛護センターがその公園によく来る私の友人によって公園から愛護センターに建て替えられたとその友人に言われた。
彼は誰よりも動物の事を想っていたため、正直私は驚きはしなかった。
あいつ…今も元気にやってるのかな…
少しばかりそんな事を考えながら物思いに耽ると、私は気持ちを切り替え、今日自分のやることを確認した。
「さて…今日やることを確認するか…」
とりあえず、今日は大学に行って、その後ホームセンターによろう…あの結月ゆかりは純の個体のため…VOICEROIDだったはずだ…
さ、ついた…社会福祉士になるためにここに来たんだ…さ、急いで行くか…
そして席に付いていると授業が始まった。
全授業終了後
さて…さっさとホームセンターに寄って彼女を直そう。
ホームセンターによると色んなAIが売られていた。結月ゆかりのコーナーを見ると、色々なものが売られていた。目があるかどうか見たが、
彼女の目の色をしっかりと見ていなかった…これは…困ったな…あの子は…目の色は何色だっけ…ゆかり…ゆかり…あれ…?そういえば…ゆかりの漢字って縁(えん)ってみどりっても読まなかったっけ…?まずい…記憶が…クソっ…ま、まぁ…とりあえずみどり色の目と説明書…あ、他のパーツも一式買うか…
「すいません、これお願いしま〜す」
と、店員さんを呼ぶと、すこしチャラそうな店員が来た。
「はぁ〜い、あれ…この第1世代よゆかりちゃんのパーツを買う人あの人以外にいるんですね。引っ越しに来たのですか?それとも新しく第1世代の子を購入されたのですか…?」
と、店員さんは少しこちらをにらみながら意味深長ことを言った。
「ん、どういうことです…?」
「あ、いやぁ…その、第1世代のゆかりちゃんのパーツを買う人はここらであの人しか居なくて…あまりお金をかけたくない人で…その上、このゆかりちゃんのパーツは古い物なので、サポートは殆ど受けられないんですよ…」
「ん…?サポート…?」
「あ、はい、サポートとはこの子自身に搭載されている機能のなのですが、主に私達の言うサポートは自己治療、感情の鎮静化、及び自己破壊ですね。マスターに恋をしてマスターを殺してしまう子や前のマスターが好きなVOICEROIDがたくさんいましたので…そのままでいてしまうとマスターが亡くなった後の処理が困るんです。ずっと前のマスターを想って、次にマスターになる人の事を受け入れることができず、言うことの聞かないVOICEROIDがいて、それに苛立った次のマスターがそのVOICEROIDに暴力をふるってしまう事件が多々あったんですよ。なので、恋愛感情を持たない状態にする。
そしてもし恋愛感情を持つようになった場合、しばらくの期間内に膣内射精をすると妊娠する。これを私達の言うサポートになります。なので、このサポートを受けられない個体の子は人間で言う少しばかり情緒が不安定という子や妊娠ができない子になります。あ、安心して下さい、家事等はやらせても大丈夫ですので、今のは気にしないでくださいねぇ〜w合計で8千円ですね〜」
「あ、はい。」
「では、丁度頂戴いたしますねぇ」
そうして金を払って外に出た。
まぁ、ここ最近であまり欲しいものがなかったので、金はある程度溜まっていたので、とくに問題はなくて助かった。
さて…晩飯の材料を買っていくか…
そういえば…彼女にもなにか買っておかなくてはな…と言っても…そこまで私は料理が上手いわけではないが…とりあえず、私が少し得意な料理を作るか…吉野どりの吸い物と、涼拌麺でいいかな…
とりあえず材料を買い、バイクにまたがり、エンジンをふかし、アパートへ向かった。
二人分の料理はあまり作らないが、今回は致し方がないだろう。
こころなしかハンドルが重い…まぁ…それもそうだろうな、彼女のパーツも入ってるのだから…私の心からは何故か高揚感が溢れている…恐らく久しぶりに私の部屋に話せる人がいるからだろうか、私はかなり寂しがり屋であったため人がいると少し嬉しい…それに、人の為に料理をするのはなんだかんだで初めてなのだろう…今までは自分一人で作ってたからなのかもしれないが…私は…ずるいな…
そんな事を考えながら運転していたらアパートへ着いていた。
さて、彼女を治さなくてはな…そう考えてバイクのエンジンを切った。
すると私の部屋の上の階のカナギさんが私の階の側に居た。
何かあったのだろうか…いや…
あの場所には昨日はあの結月ゆかりが落ちてきた落下地点だ…それに昨日は不思議と上の階からは女性の声が聞こえない…疑うのは失礼だが、私の中の危険人物として警戒しておこう…
とりあえず声をかけるか…
「あ、カナギさん。どうしたんですか?」
と、私が声をかけると
「ん、いや…とくにはないんだ…う〜ん…いや、聞いておこう。」
「ん、何でしょう?」
「お前、第一世代の結月ゆかりを見つけなかったか…?」
怪しい…というか睨んだ通りだ…恐らくこの人があの彼女をボロボロの状態のままにした人だ…いや…案外そうとも言い切れない…今この状態でこの人が黒と言い切れるほどの情報が一切無い…そしてこの人にあの子を与えるののも、何か嫌な予感がする…俺の嫌な予感は大体あたるし良くない方向に進む…とりあえず…隠し通そう…
「いえ、見ませんでしたが…」
「本当か…?そうか…それをみつけたら教えろ。失くしてたんでな」
「なく…した?」
なにか引っ掛かる言い方だ…別になにが引っ掛かっているというのも分からないが…なにか不快感が私の心にじっとりとくっついてきた。
とりあえず感情を今は断ち切り、その人に見つけたら言うよう伝えておこう…最も、彼女から情報を得るまでは…
「あ、じゃあその子をみつけたら教えますね〜」
「助かる。じゃあな」
彼はそう言うとさっさと上に上がっていった。
焦った…一応念の為、彼女のパーツをバイクの裏に隠しておいて正解だったかもな…あの人にあの子の存在が気づかれないように、しっかりと隠しておかなくては…
そう思いながら急いでバイクに隠してた荷物を取り、部屋に入ってすぐに鍵をかけた。
「はぁ…」
私は安堵して壁に背中を寄せ、ため息をついた。
かなり焦った…心臓の心拍数が凄まじい事になっていた…
「と、とりあえず治してあげなきゃ…」
私は急いで説明書を手にとった。
俺に治せれるだろうか…
助けるよりも心配の方が大きい…
1時間後
彼女が治った。良かった…
入れた方の目はみどり色でもう片方は青色だった…
間違ったか…後で変えないとなぁ…
起動する際には声をかけると、すぐに起動できるらしい。
「ゆかりさん?起きて?」
私がそう声をかけると
「結月ゆかり、起動しました。」
と、彼女が応えてくれた。
そして、応えた瞬間、
「ヒッ…」と小さな声を上げ、一気に後ろに下がった。
すると彼女は立て続けに
「やめてください…いや…いやだ…ごめんなさい!ごめんなさい!どうか…やめて…痛いのは…ヤダ…」
と、怯えた声を上げ続けた。
この状態はまずいな…落ち着かせなければ…
そうだ、この場は安全だという事をしらせよう…
「落ち着いて、大丈夫、落ちてきたときの様子でだいたい察せたから。そういうのはしないよ、それに、そういう精神は持ち合わせていないから。口だけ言ってるだけと信用できないと思うけど…w」
「そ、そうなんですか…?う、うそ…あの人の…貴方も…あの人の命令で…」
「あのひと…?誰のことだい?もしかして上の人のカナギさんのこと…?だったら安心して、俺あの人とはほとんど口聞いてないから…
俺はただ、飛び降りた君を見つけて、修…いや、治療しただけだよ。」
私がそういうと彼女は少し落ち着いた様子をみせた。
あ…体温確認しなきゃ…起動してすぐはこれをしないといけないらしいから…
私がゆっくりと手を取ろうとすると彼女は怯え、私の手をはらった
「ごめんなさい!ごめんなさい!怖い…やだ…いやだ…痛いのは…いや…です…」
「あ、ごめん…そりゃ怖いよね…手に触れるだけだったんだ。コロナがあると怖いから、ほら、体温調節とか、必要じゃない?」
「あ…ごめん…なさい…すいません…手に触れる…だけ…なんですよね…指をもいだり…フレームをへし折ったりするんじゃなくて…ただ…触れようとしただけ…です…よね…?…ごめんなさい…」
私にそう言うと彼女は恐る恐る手を出し、体温を測らせてもらった
これは…重症だな…まぁ…それもそうだろう…なら、安心させなくては…あ…まずいな…食材を冷やさなくては
「ごめんね、ちょっと離れるよ、安心して?食材を冷蔵庫に入れるだけだからさ。」
「は、はい…」
少し彼女から離れた、彼女はずっと下を見ている…というより…重力に逆らえずに頭を垂れているように私にはみえた…これは料理を作るより…彼女を安心させたほうがいいな…幸い明日は休みだ…今日は彼女の相手はしばらくできるだろう…さぁ…何から話そうか…
親不孝者の出会い Fin
さ、ちょっとだけ暗い雰囲気ですね。
これからどうなるのでしょう…w
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