「やっぱ、レトルトカレーはウメェな」

傍らでニュース番組を流しながら、俺はレトルトカレーを食っている。

まぁ、ニュース番組なんて他愛もない内容しか無いし、そもそもニートの俺には関係ない話だが…

『次のニュースです。先日、◯◯県◯◯市の◯◯湾にて、漁船が沈没しました。

沈没のした原因は不明ですが、近隣住民の証言では、漁船が轟音を立て、爆発を起こしたようでした。

爆発後に竜巻が発生し、沈没箇所に接近、そのまま船を飲み込んだそうです』

◯◯市で漁船が沈没だァ？それに爆発が起きたとは…さてはエンジンでも故障したのか…？

ってか沈没した原因が不明って言っても、爆発が原因だろ。

『また、漁船が沈没した際に、海の上に立つ少女の姿を見たという証言が得られました』

海上に立つ女…？ゲームじゃあるまいし、うん？映像があるのか…ってオイ…コイツは…艦娘みてぇな…

「……よし、久々に艦これするか」

そう言い、俺はレトルトの容器を片付け、パソコンの画面に向かい合った。

さて…久々の艦これだ。秘書艦は誰だっけ。

（安価です。お好きな日本艦の駆逐艦娘の名前をコメントに記入してください）

（安価締め切り）

そういや秘書艦は不知火だったなぁ…第二改装もしたし、ケッコンもして…良く分からんが魅力があってなぁ…。

それはそうと、艦これは無理を押した進撃はせず、大破したらすぐに帰還させて…一部の提督からは心配性だの言われような程だが……しかし、眠いな…欠伸も出るようだし…寝よ…

「あっそうだ…PC閉じねぇ…と」

◆

いっけねぇ…PC閉じる前に寝ちまった…って、どこだ？此処。

「暗っ…なんも見えねぇぞ」

痛っ…手を伸ばしてみたが、何かに当たって危うく突指するところだった…光が全く無いせいで距離感が掴めねぇ。

まぁ、声がくぐもって聞こえるから狭いのはわかるけど…良し、状況を整理しようか。まず此処は光が全く見えず、

手を伸ばしたら直ぐに何かに当たる…そして、これはまさか…拉致られたァ？

いやいや…こんなニートを拉致ったって何の利益もないぞ。

「ったく、何があって俺を拉致したン…あ゙？」

なんか声変じゃねぇか…？何だ？ヘリウムガスでも吸ったからか？

…それにしては不自然じゃない声なんだよな…なんかこう、女の声みたいな…

取り敢えずこういうときは自分の名前を呼ぶのがいいってじっちゃんも言ってた。

「えぇと、俺は陽炎型駆逐…ん？待て、おかしい…もう一度、俺は陽炎型駆逐艦……二番、艦の不知火…？」

いやいや…おかしい…何で不知火って…待て名前が思い出せない。…いや、不知火が名前…？なら俺は不知火？

（さて、安価と行きましょう。これから着任する予定の鎮守府はシロか、はたまたクロか、お好きな方をご記入ください）

（投稿ミスはしましたが安価締切です）

俺は不知火でなけりゃそもそも性別が違うだろうが。

なんで俺が不知火になるんだよ…こりゃアレか？…転生ってやつか？

…いやいや、ファンタジーやフィクションじゃあるまいしそんなことは……だが、いやにでも感じる、さっきから感覚がしっかりしてんだよな…

というかまず俺が不知火になったという確証が無いと話にならない。

どうやらここからは出られないようだしな…誰かに開けてもらって、その反応を見て確かめよう。

◆

……暇だ。

ぃや～…流石に暇過ぎる…真っ暗闇のせいで時間も分からんし、それにわざわざ秒単位で時間を数えたりするわけが無いんだからさ…

…まぁ、何となく三日くらいは経ったってことは分かるんだけどさ……足音も何も聞こえないから本当に捨て置かれたんじゃ無いだろうな…

◆

……！

扉が開いた音がした…気がする。

…なんだろうな……二～三週間ここにいるせいで耳が馬鹿になってる気がするんだよな……

ここに来て？…から気持ちに整理をつけようとしたけども、やっぱり自分の名前が思い出せない……っていうか、名前とかの諸々が不知火に置き換わってる…って感じなのか？って事になってる。

それに、肉体に引っ張られてるのか知らないけど、口調がだいたい全部敬語に置き換わって発せられるんだよなぁ……まぁ、なんというか、不知火になってきてるって感じなんかねぇ……

っと、そうだ。

人が来たのかも知れねぇんだ……耳を済ましてよぉく外の音を聞かないと。

それにしても……ほんとにうっすら声は聞こえるんだけど……

一旦呼び替えてみようか……望み薄だけど……。

まぁ、やってみなけりゃ分からねぇからな…しかし、どう言ってやろうかねぇ……。

「すみませんが、どなたか近くにいらっしゃいますでしょうか…」

……やっぱり。

口調が勝手に変換されてるな……あぁもう、嫌になってくる。

「あれ……もしかしてだけど、大淀？…この娘のこと、忘れていたりするんじゃ……？」

「……私としたことが――！申し訳ありません、明石。言い訳にしか聞こえないでしょうが、書類に埋もれて、すっかり忘れていました」

……はぁ？…忘れてただァ？……うっそだろオイ、ンなウッカリがあってたまるか。