「司令官、星が見つかりました。」
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(需要があり次第書いていきます。)
はっきりいってこの10万字の中での敵は基本的には雑魚です。大体次の10万字から本格的に英傑達が出てきます。
司令官という言葉で艦これかな?と反応した人は、残念ながらこのssは艦これとは無関係ですので、悪しからず……
しばらくの間、敵が無能かつヴィクトルが強運ですが、それは序盤のみです。
所々日本語がおかしくなってるのは見返してないからです。すいません。
スペースオペラという今流行りではないジャンルでやっていきます。
設定としては国盗りゲームみたいなものです。
ほぼキャラのセリフとナレーションで書きます。
情景描写を含めたバージョンも同時に書きますがカットした物を出していきます。
尚、書き手は宇宙に関する知識はあまりないので、無理な設定が多々あります。
尚、この世界の宇宙には技術的に侵入不可の場所があります。例えるならばSins of a solar empireの様に、惑星の周囲と、惑星と惑星とを結ぶ細い航路のみしか艦船は通れません。
そして日付から惑星間の最短移動時間は求められないよう到着した直ぐその日からの記述ではなく、出来事が起きたその日からの記述になります。
銀英伝の影響があります。
開始日2015/6/12
※飛ばして読んでも大丈夫です。
遂に人類は宇宙への進出を果たした。恒星と恒星の間を飛び交い、星雲と星雲の間までも飛び交うようになった。しかしこれは単に宇宙黄金時代の始まりを迎えているのではなく、宇宙群雄割拠時代の到来となった。
星間連合議会特別全権大使兼星間連合議会軍統合作戦本部本部長兼宇宙艦隊総司令官ヴィクトル・アイゼンハワーを中心としてこの群雄割拠時代は進んでいく。
「我こそは全宇宙の正統なる支配者である。」
彼らつまりヴィクトルのみならず宇宙に存在する全ての英傑はこの言葉を胸に刻み、ただ前進、前進をしていき、双方が傷つけ合い、のし上がっていくのである。英傑達の所属する政治体制は異なれど、英傑達各々は自己を支配者たらしめんとする信念は固く、固ければ固い程、ぶつかり合う。
ヴィクトルを中心に物語が動いていくが、勿論、他の英傑達も物語を動かしていく重要な人物である。
ここで少しヴィクトルの生まれる前の世界についてというより、物心が付いた頃より前の状況について記しておこうと思う。
西暦3007年、その頃の人類は4つの陣営に分かれて戦火を交えることは無かったが、寸前であった。
1つはヤーチョウゴンロウリエンメン(Asia Co prosperity Federation)である。彼らはアジアつまりユーラシア大陸のほぼ全域を含めた連盟であり、常にある二つの陣営の衝突を静観していた。
2つ目はアフリカインディペンデントカントリーズである。彼らはアフリカ大陸を全域を領土とし、ある連合と対立していた。
3つ目はアメリカンズである。彼らは聞けば分かる通りアメリカ全域である。そしてアフリカインディペンデントカントリーズとの経済戦争をしていた。
4つ目は極南政府であった。範囲はオーストラリア、南極であった。彼らは完全に鎖国体制でありどの勢力にも味方をしなかった。
そして、経済戦争でアメリカンズ資源の面で敗北をしそうなのを見兼ねて、アジア共栄連盟がアフリカインディペンデントカントリーズに肩入れし、アメリカンズを経済的に潰しに掛かった所でアメリカンズ側が一つのミサイルをアフリカインディペンデントカントリーズに打った事で後に言われるザ ヘル ウォーが開始された。この戦争は長く、戦争当事者に勝者は居なかった。世界各地には人類生存不可能地域が続出し、それは極南政府も間逃れはしなかった。とはいっても極南政府は戦争に参加した訳ではなく、流れ弾を食らったのであった。完全に誤発射であったらしい、これに対しアメリカンズは正式に謝罪し、極南政府は被害を受けたものの反撃はしなかった。当事の極南政府代表は好戦派を上手く抑えて無闇な開戦をしなかった事で極南のメディアはこれを評価した。
そしてこの戦争で初の宇宙空間での戦闘であった。宇宙空間とはいえ、太陽系全域戦闘空間にしたわけではなく、地球の外縁と言うのが適切だろう。最初は攻撃衛星による攻撃のみであったが、衛星に対する為に航宙戦闘機の開発が進み、そしてそれを飛ばす為の宇宙ステーションを更に高性能化した物など宇宙に関してこの人類の科学はここで多少の進歩を見せた。
そして戦争は泥沼化し、そしてどんどんと殺戮を繰り返し既に戦争の始まる前の3分の1にまで人口は減っていた。極南政府以外の勢力はもう疲労しきっており遂に停戦し、極南政府に全人類を託したのであった。
この時地球は既に生存可能圏が極南政府の領土のみで全人類が暮らすには不可能であった。そこで極南政府は移民計画を出したのである。移民船を作り宇宙に我々の生存可能な惑星を見つける事にしたのであった。
そしてその移民船の一隻にヴィクトルは乗るのであった。
そして人類が怒涛の歴史を過ごす時はヴィクトルが星を発見する所から始まった。
エメ「司令官、星が見つかりました。」
植民船の艦長室には秘書官の女性一人とその植民船艦長の男性が一人。ただし、男性の方はほぼ死人みたいな物であるから数に入れる必要は無い。
エメ「昼寝というお仕事中失礼します。星です」
ヴィクトル「あれは、何だね。趣味で作った3DCGの地球か?茶色を消せ、茶色を。お前は地球を見たこと無いだろうが、厳しく言うぞ。茶色を……」
エメ「新たな星を発見しました。」
ヴィクトル「本当にか……い、今すぐ調査を、調査をするんだ!」
エメ「了解しました。直ぐにスキャニングします。」
彼女はすぐさま自分のデスクにあるコンソールを弄り出した。
エメ「ふぅ…………」
艦長室の壁ついている正面パネルに惑星の情報が出される。
彼女の方は結果を見てホッとし、一方彼は発狂し舞い踊っていた。
ヴィクトル「ふぉぉぉおぉおおおぉお!!!!!」
そして一旦彼は落ち着き業務に戻る。
ヴィクトル「他の植民船への連絡は?」
エメ「いえ、まだしておりませんが……兼ねてからの計画を実行しますか?」
ヴィクトル「あぁ、実行だ。ルッツにもこの事を伝えてくれ。そんでこの星を我が国家の入植拠点とする。今すぐクリスタルとメタルの採掘して旗艦を作るのだ。」
エメ「それが司令官、いえ閣下。アーティファクトがこの惑星にはあるようです。そのアーティファクトの効果は建造の速度を25%上げる事が可能になるようです。」
ヴィクトル「ほう、それではあまり急いで作る必要はないな、と言いたいところだが今は時間が惜しいんだ。」
エメ「やはり、そうですか。では旗艦が完成するまでに偵察船2隻を他の惑星へ派遣なさって完成したらその旗艦で他の惑星を植民なさるのですね。」
ヴィクトル「まず偵察船aはこの小惑星群に、そしてBはこの火山惑星へ、早急に向かわせろ。そして国家民生研究所を2つ建造、その次に火山惑星の入植技術の取得に努めるんだ。」
エメ「了解しました……それでは司令、行きましょうか。」
ヴィクトル「あぁ、総員退艦せよ。」
所変わり、惑星ナハの植民拠点に艦隊司令部を置き、建築ラッシュが始まっていた、そして艦隊司令部司令室ではゆっくりとコーヒータイムを謳歌する司令官と秘書がいた。ただしコーヒータイムを謳歌してるのは司令官だけである。
しかしここで凶報が入る。
エメ「司令、偵察船aが所属不明の艦隊と接触以降通信が途絶えました。」
ヴィクトル「ふーん、所属不明ということは植民艦隊以外の我々にとって未知の存在がいるか、または……」
エメ「類推するのは後にして、どうしましょうか?」
ヴィクトル「そろそろ第一艦隊が完成次第、そいつらを派遣してその小惑星群を奪え、aからの報告によれば、数が多いだけで個々の技術力は大したこともないようだ。第一艦隊だけで十分だろう。」
エメ「それでは早速派遣させます。それと……」
ヴィクトル「ん、なんだい。」
エメ「コーヒー、ブラック飲んでないんですね。」
ヴィクトル「たまにはな。」
エメ「まぁ、見栄も程々にして下さいね。」
ヴィクトル「見栄じゃない。なんで二十代後半にもなってるのにブラックを飲むのが見栄なんだよ。」
エメ「人前ではブラックで誰も居ない時はあまーいカフェモカなのに」
ヴィクトル「うっさい。さっさと指令を出してこい。」
エメ「出しました。司令が無駄口叩いてる間に」
ヴィクトル「じゃ、あれだ、あれをしろ。」
エメ「あれ?」
ヴィクトル「あれだよ。あれ……あれ?なんだっけ。」
エメ「こりゃ、私が司令やった方がいいかもね。」
そして時を動かし2月15日第一艦隊ナハ拠点では、これまでの暇を清算するような忙しさに見舞われていた。
ユリ「無能、起きろ。」
クン「やだ。」
ユリ「皆仕事してる。起きろ。」
クン「やだ。」
それから数十分後
ユリ「起きろ。」
クン「やだ。」
それからまた数十分後
ユリ「無能」
クン「…………」
士官「あのぉ、準備整えました。それだけを伝えに来ました。それでは失礼します……」
ユリ「……」
クン「……」
ユリ「起きろ。」
クン「フルネーム言えたらいいよ。」
ユリ「クン・イブラヒム・ビン・モハメド・ラーマン。」
クン「ざんねーん。惜しい。」
それからまた数十分
ユリ「クン・イブラヒム・ビン・ムハメド・ラーマン。」
クン「正解。それじゃ、行きますか。」
ユリ「モハメドとムハメドはほぼ同じなのに……」
クン「まぁ、無能と言うのをやめたらちゃんと言うことは聞くよ。」
ユリ「無能。」
これはただ単に彼が無能という訳ではなく、一切艦隊に関する仕事しかせず事務処理は秘書であるユリ・タナカに任せっきりである為に勝手に言ってるだけである。お陰で他の部下にも無能と呼ばれる始末である。
2月15日遂に第一艦隊は宇宙へと旅立っていった。
その後日、ヴィクトルは植民艦隊嘗ての民政担当官で現惑星ナハ首相ルッツ・ドムブロウスキーとあるレストランで密談をしていた。
ルッツ「数ヶ月ぶりだな。こうやって面と面向かって話すのは。」
ヴィクトル「いやぁ……全くだ。偉くなると、忙しくなるもんだね。」
ルッツ「君が私の所に星の発見を聞かされた時は遂にと思ったよ。長かったな。」
ヴィクトル「学生時代の時の方が長く感じたけどな。」
ルッツ「それで、こうやって会ったんだ。遂に議会の発足の時なんだろう?」
ヴィクトル「そうだ。実はまだ一般には流してないが、居住可能惑星がこのアゾレス銀河には我々が認知している一つの小惑星帯を除いて他にもあるみたいだ。」
ルッツ「そうか星間連合議会が遂に出来るのか……」
ヴィクトル「ん?なんだそれは?」
ルッツ「私のグループで決めていたナハを一時首都星とした人類の唯一宇宙を勢力とする偉大なの政府の名前だよ。」
ヴィクトル「星間連合議会……良い名だ!」
ルッツ「そうだろう。それでだ、政府の名前の話は置いておいて。」
ヴィクトル「なんだい。」
ルッツ「君の転属を命じる。」
ヴィクトル「念願の時か……」
ルッツ「貴官は本時刻より星間連合議会軍統合作戦本部本部長、宇宙艦隊総司令官に任ずる。そして特別全権大使の兼任を言い渡す。」
この時が星間連合議会発足の瞬間であった。
ヴィクトル「我々こそが全宇宙の」
ルッツ「正統なる支配者である。」
ヴィクトル「ふっ……」
ルッツ「辞令は追ってだす。じゃ、いい加減何か頼まないと追い出されるから何か食べようか……」
ヴィクトル「私はコーヒーだけでいい。」
ルッツ「じゃ、私は……チーズインハンバーグにしようかな……」
そして食事をしながら今までの事を語り合い、食事が終わると解散した。
所変わって首相官邸も多忙の最中にあった。
ルッツ「準備は出来たか?」
カメラマン「はい。それでは3…2…」
ルッツ「我々、人類は一生のうちに人類史最大の悲哀を与えた戦争から将来の世代を救い、基本的人権を改めて確認し、正義と条約から生ずる基本的人権を守る義務を確立し、一層大きな自由の中で人類の発展と調和を遂行し全人類の経済的及び社会的発展を促進する為にここで新たな組織に惑星ナハが所属し、これらの目的を達成する為に努力を我々全人類は惜しまずにする事を誓う。その名は星間連合議会である。ここに全人類が星間連合議会の構成員であることを宣誓す。」
テレビの声「以上が、ルッツ首相の緊急発表でした。次のトピックです……」
ヴィクトル「名前、変わったぞ。」
エメ「星間連合議会軍ですか。長い名前ですね。」
ヴィクトル「まぁ、そういう事は気にしたら負けだぞ、そんな事言ったら、私の肩書きを言ってみろ。」
エメ「長いのでやめておきます。」
ヴィクトル「星間連合議会議長だな〜、遂にルッツは……」
エメ「まぁ、現在所属する惑星がこのナハのみですものね。」
ヴィクトル「だがこれからどんどん増えていくぞ。我々の手でな。」
エメ「植民船では暇でしたが……今でさえ忙しいのに更に忙しくなりそうですね。」
ヴィクトル「あぁ……」
エメ「これからは総司令官とお呼びした方がいいですか?」
ヴィクトル「いいよ、面倒だろうから司令官のままで……」
そして首相官邸からのテレビ中継を終えたルッツは次期ナハ首相の選定に入っていた。
ルッツ「……元々私の派閥の者を入れてもいいのだが、全員多忙過ぎるし、重職に付いてる者ばかりだ。誰か能力があって暇そうな者は……」
アドリアン「是非、私がと言いたい所だが、私も忙しいんだ。多分未来永劫な。」
彼は星間連合議会社会開発理事会理事長アドリアン・プーキシンで、主に初期段階都市基盤の開発をし、ある程度の段階まで成長したら星間連合議会の正規構成員にさせるのを任務とする。要は惑星の子守りである。星間連合議会軍が領土を増やしていく以上その仕事はなくならない。
バルトロ「勿論、私もだ。」
バルトロ・フィチーニ星間連合議会貿易開発理事会理事長は将来到来とされるであろう星間貿易をより効率の良く平等にする事を維持させる重要な人物の一人である。
ウェイ「ですが、誰かがやらないといけません。今の状態では選挙は無理ですから……まだこの星は幾つかの政党が発足したばかりですし。」
チュン・ウェイ選挙管理理事会理事長であり、将来各惑星が不平等な選挙制度を採用するのを防ぐ、謂わば惑星のお目付役である。
今はこの場には居ないが、他にも星間連合議会の組織は存在しており各トップは全てルッツの派閥で構成されている。
ルッツ「こいつもだめ……こいつも、こいつも……」
知らぬ間にプロフィールの紙だけで部屋の床が埋まるほどの量を見ていたが、最適な人物は今の所見つかってない。
ウェイ「ではこの方は……」
ルッツ「……まぁ、これくらいで妥協しとくか、どうせ一時のトップだ。その時が来たらチュンに教えを請いに来て選挙を行うだろうからな……」
アドリアン「それじゃ、軽い休憩が取れたから職務に戻らせてもらう。」
ルッツ「いやぁ、休憩の時間なのにわざわざ来てくれてすまない。ありがとう。」
バルトロ「そういえば早速、アドリアンには仕事が来そうですな。」
アドリアン「あぁ、そうだ。小惑星帯の都市開発の仕事がそろそろ来る。」
ルッツ「上手く第一艦隊がやってくれればの話だがな……」
そして所と時が移り、小惑星帯に第一艦隊が到着した所から始まる。
無能「さて、こっからは私が指揮をしよう。」
ユリ「普通なら最初から最後までやれよ。」
無能「無能は普通じゃないからできませーん。」
ユリ「ガキか。」
無能「取り敢えず戦闘艇を出して索敵させておけ。見つかるまでここで待機。」
ユリ「了解。」
無能「なぁ?」
ユリ「……」
無能「なぁ?」
ユリ「……」
無能「なぁ?ちょっとお姉さん?」
ユリ「はぁ……私は貴方と違って仕事をしてて忙しいんです。なんですか?」
無能「暇。」
ユリ「……殴っていいですか?」
無能「ぼ、暴力はんたーい!」
ユリ「はぁ……構ってやればいいんですね。」
無能「そうだよ。陣形再編成だってとっくのとうに終わらせて、兵員交替のレギュレーションも指示して、何もする事が無くて暇なんだぁ。」
ユリ「もうちょっと、大人らしい喋り方をしてくだされば、罵る事は少なくなるものの……てか一番の大仕事の事務処理は私に任すんですか?」
無能「そうだよ。だってそんな仕事に対する力なんて尉官の頃に使い切っちゃったもの。」
ユリ「はぁ……で何すればいいんですか?」
無能「えーとねぇ……」
ユリ「脱衣系はダメですからね。」
無能「えぇー、じゃどうしようかなぁ。」
ユリ「散々脱がせてきたのにまだ足りないのかこの無能は……」
無能「それじゃあね、これ。」
ユリ「なになに……鬼ごっこ?」
無能「そうだよ。この艦全てを使った鬼ごっこだよ。」
ユリ「いつまでやるつもりなんだ。こんな全長700以上もある艦の中で鬼ごっこなんて……しかもどうせ男子トイレに逃げ込むんでしょ。」
無能「そんな事しないよぉ。」
ユリ「取り敢えず、却下。もっと有意義な遊びあるんじゃないですか?」
無能「分かったよぉ……戦術シュミレーターをやって言うんだろう。」
ユリ「それならいいです。」
無能「はぁ……結局勉強みたいな事するのか。」
ユリ「ちゃんとご褒美勝ったらあげますから。」
無能「わーい。」
ユリ「はぁ……またなんかあげなきゃいけないのか……」
二人は顔を向かい合わせて喋っていたが、各々のコンソールに視点を移した。
無能(さーて、取り敢えず移動しながら索敵だ。)
ユリ(単なる秘書が敵うわけないじゃないですか。索敵開始。)
無能(よし、どうやら敵が我々に気付いたようだな。その偵察機は無視して我々はそのまま前進だ。それと偵察に出してた戦闘艇も帰投しろ。)
ユリ(うーん、この方向で移動してるのならここに着けば敵の真横に出られるかな。)
無能(敵は恐らく我々の前面以外に布陣してくるだろうから。取り敢えずこの方向のまま進んで敵の索敵網から出たら取り敢えず天頂方向に移動して、この時間に下に行けば、敵の後方に出て上手くこちらから先制攻撃出来る筈、陣形を変えるのは索敵網から出たらにしよう。)
ユリ(しかし、ここはあえて敵の前面以外に出ようとするのではなく前面に出た方がいいかな。もしかしたらこれは罠かもしれない。)
無能(さて……そろそろかな。な、なに!)
ユリ(あっ、こっ、ここから敵に遭遇する!ちょうど良い。全艦z軸方向に回転して敵を下から突進しつつ砲撃を開始!)
無能(あらら、下を取られたか。にしてももう撃ち始めちゃったか。まだ射程圏に入ってないのに。まぁ、いっか。我々はこのまま前進しろ。次の指示は頃合いが来たらだす。)
ユリ(うーん、どうしよう。多分敵はある程度離れたら回頭してこちらに向かってくるから……)
無能(よし、ここら辺だな。全艦-z軸回転だ。このまま我々が敵の下に出る。そして今度はさっきとは違って距離が近いから、我々の時みたいに射程圏に入ってないという事はないだろう。)
ユリ(うーん、近すぎる。これはもう大人しく砲撃戦に突入するしかないな。敵の陣形は鶴翼だから、素直に紡錘陣形かな。)
無能(違うんだな、ユリ。これは鶴翼陣形ではないんだよ。艦隊を二分して各々が雁行陣をしているだけなんだ。目的は……)
ユリ(よし、このまま突撃!)
無能(掛かった。全艦回頭しこの部分の艦はここのポイントに集中、この辺りの艦はここだな。)
ユリ(これじゃ、進めない。クロスファイア地点に突っ込む事になる……しかも包囲されて側面から攻撃も受けてる。)
無能(終わった……後は寝てるか……)
ユリ「終わったー。」
無能「さぁ、終わったからご褒美頂戴。」
ユリ「はいはい……それでどの服を着ればいいんですか?」
無能「これ。」
ユリ「一体、こんないかがわしい服どっから手に入れてくるんだか……」
そして敵を発見した所までを動かす。
ユリ「どうやらこのようになっているようです。」
無能「誘き出す必要があるね。それとも数に物を言わせて艦隊を分けて倒させに行くか。それだとあまり芸がない。なんとか敵の兵力を一箇所に集めようとしなきゃなぁ……」
ユリ「ではどっかの施設破壊してみます?そしたら敵もこちらに来るでしょうし。」
無能「……出来れば再建設は面倒くさいだろうし、金も使うから避けたいけどさっさと終わらせたいからいっか。よし採用。」
ユリ「一番重要そうな居住コロニーはやめといて二番目に重要な資源採掘施設を狙ってみてはどうでしょう。」
無能「うん、そうだね。全艦この位置に移動。目的施設が射程圏に入り次第砲撃開始。」
ユリ「さて、動きはどうやらあったようですね。続々と施設を守る為に寄ってきます。」
無能「まぁ、そうだろうな。でも私だったらそのままそこにいて待ち伏せした方がいいと思うんだけどな。数の不利は相手だって分かってるだろうに。」
ユリ「どうやら砲撃開始したようですね。どんどん施設が壊れていきます。」
無能「これで壊れなかったら、一目散で逃げないとね。」
ユリ「なんでですか?」
無能「そんな硬い装甲を持ってる船が敵にはあるって事になるだろ。」
ユリ「あぁ、そうですね。」
無能「どうやら大体集まったみたいだな敵も、射程ギリギリの所で全艦急回頭して敵に砲撃するぞ。」
ユリ「……今です!」
無能「全艦回頭し、砲撃開始!このまま敵が包囲するのを防ぐ為にこちらは中から押し返せ。」
ユリ「どうやら、勝った様ですね。」
無能「元々、数の問題だ。こちらの方が艦数は多い、それゆえ押し返すのも早い。」
また舞台は変わりナハに凶報が入る。
それは第一艦隊出発の数日後の事であった。
エメ「あっ、そんな事よりも司令完成、これを見てください。」
ヴィクトル「ん?どうした。」
エメ「そっちのモニターにも写します。これです。」
ヴィクトル「なんで来たんだろうな。ちゃんと植民船は彗星にぶつかって大破って伝えてあるのに、どうして来るかね。」
エメ「ゴミあさりに来たんじゃないんですか?」
ヴィクトル「さて、何とかして我々の存在を察知させないようにしなければ……」
エメ「進行方向は完全にこちらですね。」
ヴィクトル「運が悪いな。なんでよりによって……あっ、そうだ。ボロボロの艦を一隻用意してくれ今すぐに」
エメ「えっ、あ、はい。分かりました。それをどうしましょう?」
ヴィクトル「あのクソスカウターの目の前で自爆させるんだ。」
エメ「あー、最後の生き残り臭を醸し出すんですね。」
ヴィクトル「そうだ。そんで自爆させる前にそのボロっちい艦を仲介して通信しろ、そしていいタイミングで爆破」
エメ「了解しました。多分あと2日で合流しますね。」
ヴィクトル「いやー、良かったよ。念のために偵察衛星あっちこっちに置いといて。もしあのスカウト共に発見されたら、元同胞とは言えども拘留するしかないからなぁ。あっ、そうそう。そん時の通信だけど君がやってね。」
エメ「えっ、私ですか?なんで、そんな演劇みたいな事しなきゃ……」
ヴィクトル「司令は、なーんでも……お見通しなんだよ!」
エメ「うわー、仮にも三十路でその発言は引くわ。きもっ、てなわけで私は嫌ですよ。」
ヴィクトル「えー、だって夜な夜ななんか知らないけど女優の卵チックな事やってるわけでしょ?てか二十代後半だし、そんで鏡を見ながら芝居やって、そんでノートに注意点とか書いてるん……あ!」
エメ「大スキャンダルですねー、部下の私生活を覗くなんて。しかも10歳以上下の女性の私生活をね〜。」
ヴィクトル「まぁ、それは置いといて。私が通信に出たら出たで俺不名誉ぽいじゃん。」
エメ「なんで?」
ヴィクトル「ほら、なーんか知らないけどあいつら艦と共に沈むのが船長とか司令の義務だとかわけわからん事言ってるじゃろ。だからお願い。不名誉なんてやなの。」
エメ「どうせ死ぬんだから関係無いじゃないですか。」
ヴィクトル「それでもいやなの。」
エメ「それじゃ、超過勤務分の給料を上げてください。そんでベースアップもお願いします。」
ヴィクトル「はぁ?なんでだよ。てかお前部下だろ。言うこと聞け。」
エメ「ちっ、自分が上司の立場であった事に気が付いたか。」
ヴィクトル「まぁ、こんな無駄話してる間にどうやらbの方は続々とデータを送ってきてるな。」
エメ「どうやらこちらの方面の方が当たりみたいですね。」
ヴィクトル「あぁ、そうだな。クリスタルの産出地が4つもある惑星が数個、金の産出地がある惑星も数個、取り敢えず第二艦隊が出来上がりしだいbと合流させるんだ。第一艦隊はそのままaの任務を引継ぎそのままその方向へ探索を続けさせろ」
エメ「了解です。ですが植民技術研究のレベルが足りないものがあって、施設への投資が必要かと思われます。」
ヴィクトル「投資しろと言われてもこれでも全てのこの惑星の重力井戸内の研究施設はこれ以上増やせないからな。第一艦隊が小惑星群を入植に成功しないと新たに研究施設が置けないからな。まぁ、やはり待つしかないだろうな。」
エメ「あっ、どうやら第一艦隊が少々手こずっているようですね。」
ヴィクトル「なに?」
エメ「この第一艦隊の司令は物事が順調に進まないと、定時報告がテンプレートみたいなんですよ。」
ヴィクトル「あっ、本当だ。仕方ない……シャトルで向かうか。」
エメ「また、ちょっかい出すんですか?だから彼は進歩しないんですよ。たまには最後まで……」
ヴィクトル「前にもそのチャンスを与えただろ。で結果どうだった?」
エメ「……艦内のトイレ全て故障……」
ヴィクトル「だろ?ほれ、さっさと準備をしてくれ。それとエメ、君はここに残って私の事務処理の代行をしてくれ。」
エメ「はぁ……了解しました。」
ヴィクトル「ついてないなぁ……」
着いたのは第一艦隊が敵艦隊との戦端を開いてから2日目の事であった。
下士官「停船し、所属を述べよ。しからざれば攻撃す。停船し、所属を述べよ。」
ヴィクトル「私の事が分からないのかい。君のトップ、ヴィクトル・アイゼンハワーだよ。」
下士官「こ、これは失礼しました!旗艦にご誘導致しますので従って下さい。」
ヴィクトル「了解した。」
第一艦隊旗艦ローヌの司令室で戦況が映されている画面を睨んでいるクンと机に向かって事務処理をしているユリの所にヴィクトルが来訪してきた。
クン「敬礼。」
クンに続きユリも一旦手を止め、席から立ち上がり敬礼する。
ヴィクトル「あぁ、別にいちいちやらなくても構わないよ。」
クン「それでご用件は?」
ヴィクトル「ん、どうやら戦況が芳しくないと聞いたからね。一旦指揮権を借りて、観戦でもさせておこうかなとでも思ったんだ。」
クン「総司令官の手を煩わせるまでもありません。ここはどうか……」
ヴィクトル「折角、出て来たんだ。逆にやらせない方が失礼とは思わないかい?」
クン「我々だけでも進んでます。大丈夫です。」
ヴィクトル「だーめ、これ以上時間かけると無駄に資材を消費することになる敵の意思を挫き、早期決戦にさせなきゃいけない。だから言うことを聞いてくれ。」
クン「了解しました。」
ヴィクトル「おい、眠るな。ちゃんと見てろよ。知らぬ間に勝つと確定すると眠るのは分かってるんだ。」
クン「す、すいません。」
ヴィクトル「口で言うのは簡単だ。さぁて、それじゃちゃちゃっとやっちゃうかと思ったら、何だこれは。」
クン「どうやら敵艦隊が増援を呼んだらしくて、先程倒した敵と今いる敵を合計すると我が方の1.5倍の数になります。」
ヴィクトル「そうか、そんで全員小惑星帯に敵は潜り込んで、占領しようにも後背からの攻撃が怖くて出来ないし、その先の航路にも行かせてくれないと……よし分かった。全艦敵の攻撃を避けつつ小惑星帯に接近、そして小惑星帯を盾にして戦闘艇を発進させ、接近戦に持ち込め。」
ユリ「了解。」
ヴィクトル「にしても、これが初陣となるのか。」
クン「敵が増援を送ってくるとは想定してなかったんですけどね。どうやら小規模国家の様だったので。」
ヴィクトル「まぁ、いいさ。」
ユリ「索敵中の戦闘艇が敵艦隊の増援を確認。数凡そ我々の半数。」
ヴィクトル「いっぺんに出してくれば向こうは勝ったのに。いつ頃射程に入る?」
ユリ「凡そ1時間後」
ヴィクトル「はぁ……小惑星帯にまた逃げ込まれたら、時間がかかり過ぎて兵士の疲労も戦況に影響が出るくらいにはなってしまう。取り敢えず速やかに前面の敵を撃滅ないし降伏させ次の敵に備えなければ。」
クン「敵はここを捨てるべきなのに、なんでこんなにも来るんだ。」
ユリ「なんで捨てるんです?」
ヴィクトル「はっきり言って、この小惑星帯の制宙圏は我々が握っている、それなのに敵は可能な限りここで踏ん張ろうとしていて、おそらく各宙域の警備艦隊をここに速やかに送っているんだ。だから各宙域の戦線までの距離は違うからこうやって中途半端な数で来るんだ。私だったらその一歩手前兵力を集結させそこで万全の体制で待ち構えて防ぐけどね。」
クン「長々とご説明感謝します。」
ヴィクトル「さて、このまま行けば間に合うな。」
ユリ「依然として数の上で有利です。」
ヴィクトル「ふぁああ……」
クン「待つ時間、眠たくなる気持ちが分かりましたか?」
ヴィクトル「分かってたまるものか。」
ユリ「総司令官、ここで一つ提案があるのですが、よろしいでしょうか?」
クン「おいおい、総司令官は俺とは違うんだ。そう気楽に提案なんて出来る相手じゃないぞ。」
ヴィクトル「いや、構わないよ。なんだい。」
ユリ「意見具申の許可をしていただきありがとうございます。提案というのは超光速通信の為の専用の艦を作ってはどうでしょうか?そうすればこの様に少々ラグは出るかもしれませんが、わざわざ総司令官が出向かなくても指揮出来る体制を作れるでしょうし。」
ヴィクトル「あぁ、頼んでみるか。いつ超光速通信搭載艦の開発に成功というよりは、施設の小型化に成功するかだな。少しあの施設は大きくからな普通の駆逐艦くらいはあるんじゃないかな。まぁ、それは結構私にとってもありがたいから、是非採用しておくよ。」
そして数分後には正面の敵は半分以下になっていた。
ヴィクトル「もう十分だな。」
ユリ「それでは敵の増援を潰しに掛かりますか?」
ヴィクトル「勿論だ。敵が確認されたのはこの位置だ。おそらく敵艦隊は我々が戦っていたここに来るルートは最短ルートであるこれであろう。だから、一旦我々は目前の敵の索敵範囲外に出て、敵増援のルートに対し、我々は遠回りをしながら敵の側面に出る。これでいいだろう。時間的にも余裕はあるし目前の敵と増援の敵が合流しようとしても時間的には敵は合流出来ないし、むしろ合流してこようとするならこちらとしては最短時間でこの戦いを終わらす事が出来る。わざわざ向こうは戦闘が終わった頃に到着するんだから。」
そしてそれから時が経ち……
ヴィクトル「よし、敵の側面に出ることに成功したな。敵は縦陣形か。お陰で広範囲にダメージを与えられそうだな。艦隊を扇形にして、敵艦隊のあの場所に集中砲火するんだ。」
ユリ「敵が我々に合わせて我々の側面に付こうとしています。」
クン「大丈夫だろ。敵はあのピンポイント射撃をされてる所を無理矢理突破しようとしてるんだ、それに横っ腹を見せてるんだ。数はかなり減っちゃうよ。」
ヴィクトル「その通り。そんなの気にするな。我々も徐々に移動してけば良い。そんで敵さんがこちらの右翼側面に付こうとしてるお陰でずっと側面を見せてくれてる。」
ユリ「今のうちに戦闘艇発進させては?」
ヴィクトル「おっ、忘れてた。出すなら攻撃をほぼ受けてない今のうちか。よし戦闘艇発進。」
ヴィクトル(本当は、パイロット連中やもう少し休ませてやりたかったんだけどなぁ。)
クン「zzz……」
ヴィクトル「勝利を確信したか……起きてくれ。ということであの残飯全て片付けておいてくれ。それくらいは出来るだろ。」
クン「zzz……」
ユリ「おい、無能!」
クン「んがっ!」
ヴィクトル(やはりキツイ性格なんだな。)
ヴィクトル「どうやら増援も確認されてないようだし、多分ここで全戦力を使い切ってここから先は敵は居ないからすんなり行くと思うよ。それじゃ、私は帰るから。」
ユリ「敬礼!」
クン「zzz……」
ヴィクトル「はぁ……」
そして時と場所が変わりナハの総司令官室にて3月21日のことであった。
既に2桁に及ぶ惑星を手にし、第二艦隊が完成し、多少欠点があるものの超光速通信艦が出来た。
欠点はまずデカイ事、そして高い。もちろんそれだけではなく防壁があるものの少し攻撃を少し受けただけでダメになる。水に弱い、常に点検しなくてはならない。とても熱いから近づけないなど他にもある。
そして便利ではある為第一艦隊にも配備され、第二艦隊にも配備されたが、実際に使用するのがこの時であった。
第二艦隊旗艦司令室より超光速通信艦を仲介してある報告がなされた。
シュエリー「遂にアゾレス銀河の中心に位置するデムテル星系に到着しました。」
リン・シュエリー第二艦隊司令官は現在唯一の女性将官であり、唯一の女性艦隊司令官でもある。彼女は士官学校ではヴィクトルの4歳上で出会いはあるプログラム履修の再履修者専用クラスでクラス全体の飲み会があるのだがシュエリーとヴィクトルはそれに参加しない勢としてお互いを知ったのであった。
この言葉が初の超光速通信艦によって伝えられた言葉であった。その通信は星間連合議会首都星ナハの総司令官室に繋がっていた。
ヴィクトル「おぉ、結構綺麗に聞こえるし、画像にも不調は無いな。」
シュエリー「ただ少し遅れるのはどうしようもないようですね。」
ヴィクトル「こうやって通信出来るということは結構な進歩だ。そして遂に到達したかデムテル星系に。しかしここからが真の本番だ。」
エメ「遂に銀河間航行ですか。」
シュエリー「私がそんな役目をもってしまって大丈夫でしょうか?」
ヴィクトル「折角、研究施設を増設して銀河間のワープが出来る様になったんだ。やるっきゃないだろう。それに今まで進んで通り過ぎた惑星は後続の第三艦隊が移民作業を行う事になってるから、君がやらないといけないんだ。第一艦隊も別方面での移民作業で手一杯だし。」
アダム「了解です……司令官!」
アダム・フェルビーストは第二艦隊司令官の秘書であり控え目な司令官の背中を押す役目をしている。
シュエリー「どうしたのですか?」
アダム「我が艦隊の二倍以上……いやそれ以上の艦隊が突如出現しました!」
ヴィクトル「はぁ、まだ居たのか。この戦力差は不味いな。第二艦隊のシャンタウ銀河遠征は中止だ。一旦最前線基地アムリッツァに転身させろ、そうしないで、もしシャンタウ銀河へのフェーズジャンプを開始するならフェーズジャンプ準備中に撃滅されるぞ。」
シュエリー「了解しました。全艦アムリッツァに撤収してください。それでは艦隊の指揮をしなければならないので、では。」
ヴィクトル「うん。」
そして通信を切るとまた更に情報が出てきた。
アダム「どうやら第一艦隊が過去に遭遇した敵とは別の勢力の様です。」
シュエリー「取り敢えず、今は逃げましょう。」
アダム「敵との距離は大体最大戦速で30分の距離にいます。」
シュエリー「近いわね。この艦に殿を務めます。出来るだけ多くの艦をワープさせるのです。」
アダム「シャトルのご用意もしておきますか?」
シュエリー「当たり前です。全員頃合いなったら逃げるんです。」
アダム「艦長に指示しておきます。」
シュエリー「それでは全艦最大戦速でワープ地点に向かって下さい。」
アダム「全艦最大戦速、目標アムリッツァ方面ワープ地点!」
そしてその頃、総司令室に居た。
ヴィクトル「取り敢えず使節艦でもやっておくか、あの規模の国家とは殴りあいたくはないからな。」
エメ「敵……いいえ、あの艦隊が現れたのはこの地点という事はそこから向こうはあの艦隊の勢力圏。」
ヴィクトル「我々はそれに従い、勢力圏ギリギリの所まで占領するのは必須だな。造艦をもっとしなければ。」
エメ「第一艦隊からの定時報告です。」
ヴィクトル「ほう、こんなに移民が進んでいるのか。こりゃ、社会開発理事会もお忙しいだろうな。そんで第一艦隊はもうここまで進軍もしているのか。順調だな。あとはどこでまたあの勢力と出会うかだ。案外完全に包囲されたりしてるかもな。」
エメ「ありえなくはないですけど、それは避けたいですね。」
ヴィクトル「取り敢えず新勢力と条約を結び次第さっさとシャンタウ銀河に向かわせて新天地開拓進めないと、対抗できないんだよなぁ。」
エメ「第一艦隊から新しい報告書です。」
ヴィクトル「ん?先程定時報告を受けたばかりなんだが、内容は……?!」
エメ「どうかしました?」
ヴィクトル「我惑星ソプデトにて所属不明の艦隊と接触す至急指示下されたし、だってよ。」
エメ「そこにもあの勢力が?」
ヴィクトル「いや、向こうから送って来た艦のデータと第二艦隊の索敵に出たいた戦闘艇が集めた艦の情報を比べるとどうやら別の勢力だ。そして第一艦隊が接敵した艦隊の規模は大した事はない。そんで、もしこれが先遣隊の規模なら本隊も大した事ないだろうが、今は戦力温存と領土を広げていくのだ先だ。避けて通るしかないだろう。飛び地でも仕方ない。第一艦隊には応戦するなと伝えろ。」
エメ「了解です。そして国家民生研究所からの報告で、貿易施設と精錬施設、そして情報通信センターの開発が終了したみたいです。」
ヴィクトル「よろしい。さっそく全ての星に配備しろ。これで今までは純度の低い鉱石だったがこれで高純度の鉱石が手に入り、そして更に貿易宇宙港のお陰でより効率のいい運搬が出来る。」
エメ「あっ、どうやら第二艦隊からの超光速通信が入っています。」
ヴィクトル「上手く逃げ出せたのかな。通信回線を開いてくれ。」
シュエリー「司令、急で申し訳ありませんが、緊急で話してもらいたい相手がいるので、今そちらに切り替えます。」
イフサーン「貴官がヴィクトル・アイゼンハワーかね。」
ヴィクトル「そうですが……」
(こいつ、第二艦隊に遭遇した新勢力か。)
イフサーン「事前に伝達したおく。使節艦は不要である。」
ヴィクトル「なぜです?」
イフサーン「宣戦布告である。」
ヴィクトル「はぁ?!ちょっと待ってください。如何なる理由を以って、我々の領土を踏み荒らそうとしているのか!」
イフサーン「踏み荒らしたのはそちらであろう。我々の国家の方が先に見つけていたのにそれに勝手に入植し、終いにはここまで来るとは何事か!」
ヴィクトル「発見しただけでは意味が無かろうに……」
イフサーン「取り敢えず奪還する事が我らの国家の総意である。其方の勢力はこちらで見極めさせてもらった。ここで素直に無条件するのも良し、応戦するのもまた良し。降伏をするのなら今からこのデムテル星系の恒星が1回自転するまでに降伏受諾の旨を伝えてほしい。それまでは我々も手を出しはしない。ただここで応戦するのならば降伏という選択は消えてもらう。そして勿論、1回自転するまでに応答がない場合でも降伏というのは無しだ。アナトリア星間連合軍総指揮官イフサーン・ナーセルより。以上である。」
シュエリー「敵国からの通信が途切れました。如何いたしましょう。」
ヴィクトル「敵国ってまだそうと決まった訳では……」
エメ「決まった訳ではありますよ。ツイてないですね。」
ヴィクトル「おいおい、そりゃないだろう。ツイてない訳ではないだろう。我々にはまだ新勢力が居るが……」
エメ「協力してくれるかは別です。」
ヴィクトル「そうだ、それは分かっている……取り敢えず今は手を出さず、先程の予定通りアムリッツァに帰投せよ。そのあとの指示は追って出す。そうか一ヶ月か大体。」
シュエリー「了解しました。それでは通信を切ります。」
ヴィクトル「うん。」
エメ「第一艦隊がスンナリと小惑星群を手に入れてつぎの行動に移ってればもう少し領土を広げれたのに……」
ヴィクトル「おいおい、過去嘆いても仕方ないだろう。それに全然戦力が無いわけではないだろう。」
エメ「それは分かってますけど、第一打撃艦隊、第二打撃艦隊だけじゃ……」
ヴィクトル「今現在の財政基盤だとそれだけしか養えん。仕方ないだろう。第一、打撃艦隊だけを養ってる訳じゃない。第一艦隊、第二艦隊つまり移民作業用の艦隊まで養ってるんだ。」
エメ「とは言っても……」
ヴィクトル「そうだな、確かにそれだけではなぁ。まぁ、取り敢えず今はデメテル星系は通れる様にしてもらったんだ。シャンタウ銀河に偵察艦を向かわせて、敵が居ないのなら第二艦隊もそれに追従し、シャンタウ銀河で勢力を広げるんだ。こちらは何とかして新勢力との連合を樹立し対抗する。それしかない。多分だが新勢力はあの大規模勢力の反対側で遠く離れているから存在を知らないだろう。金もクリスタルの鋼材を半分渡してでも連合を組むんだ。いそいで使節艦を向かわせろ。」
エメ「了解しました。」
ヴィクトル「さて、あとは神のみぞ知るか。運任せというのは些か嫌いだな。」
宣戦布告をアナトリア星間連合から受けた当日深夜にも関わらず緊急招集を掛け、星間連合議会総会が行われた。そこにいたのは各惑星の代表が選んだナハ駐在大使と各理事会の理事長らであった。
ここで改めて全ての機構について述べておこう。
まず、アドリアンの社会開発理事会、バルトロの貿易開発理事会、ウェイの選挙管理理事会。そしてアエミリウス・ウルピアーヌスの最高司法裁判所、タチヤマ・マサナリの内務理事会、ルートヴィヒ・ハルシュタインの文化発展理事会、ヴィクトル・アイゼンハワーの星間連合議会軍がある。
そして星間連合議会議長ルッツ・ドムブロウスキーは全ての機構、総会の統括者であり、議長枠は総会選挙で決められている。
その夜分遅くにこれ程の人が星間連合議会ビル招集された。
ルッツ「この夜遅くに集まってくれたことを感謝すると同時に、すまなくも思うだが、この時間になってまで話す事があるという事は非常に重要な事態で有る事は既にお分かりであろう。そして勿論その大切な話とは、事前に説明しておいたアナトリア星間連合の宣戦布告に対しての意思決定だ。我々は一人一票の権利がある。それについて投票を行いたいと思う。」
結果は圧倒的では無いにしろ応戦する側に票が集まった。この結果は事前から既に分かっていた事で、この投票は単に形式に沿っただけであった。なぜこの様な結果になったかと言えば、無条件降伏という条件に耐えられなかった者が大半であり、アナトリア星間連合のイメージ操作が若干行われていたからであろう。
「アナトリア星間連合は連合ではなく一国独裁」
「アナトリア星間連合の辺境は搾取対象」
「アナトリア星間連合は思想の自由が無い」
「アナトリア星間連合で暮らせば監視の目がくる。」
「首都圏は華やかだが、辺境は我々と同じくらい質素だ。」
「生活に不満ばかり持っている。」
などなど他にもあった。
これらの情報はアナトリア星間連合の宣戦布告直後から始まったアナトリア星間連合との交易により得た情報であった。アナトリア星間連合とは民間交易に関しては戦時中でも許可をもらっていて、そもそもこちらには戦時中での敵との貿易を束縛する法は無い。
まぁ、その前に交易出来る権利はあるが交易してもらえるかは別であるのは言うまでもない。取り敢えずやってみようというチャレンジ精神が強く、諦めないと言う気質は植民船で長く拘束されて宇宙というフィールドに解放されたからであろう。
ルッツ「賛成多数という事で、ヴィクトル総司令官、よろしく頼むよ。」
ヴィクトル「了解しました。」
一斉に拍手が沸き起こるが、星間連合議会機構の一人は拍手をしていなかった。
マサナリ(けっ、戦争屋め。この星間連合議会の惑星は発育途中だというのに、戦争か。そりゃ、勝てば文句は無いが、負けた場合、しかも現在の所負けるのが濃厚な線だ、負けたらその戦争で使った資材、人材が消え、もし占領され正式のアナトリア星間連合の一員になった時に元々差別される時点でマイナスからのスタートであるのに、経済において更にマイナスからではないか。)
ヴィクトル「ここで提案があるのですが、現在打撃艦隊は2個艦隊のみです。これでは戦力不足なのは目に見えております。そこで軍拡をして頂きたいと存じます。」
「ただでさえキツイ状態なのに何を言ってるんだ。」
「現在の戦力だけでなんとか出来ないのか?」
「第一、第二艦隊があるじゃないか。」
ヴィクトル「お言葉ですが、第一・二艦隊は移民が主目的の為に、防衛能力はありますが、元々第一・二艦隊の構成は移民船が多いのです。そこをご了承下さい。」
「ご了承下さいって出せないものは出せないんだ。」
ヴィクトル「……」
ルッツ「その提案は取り敢えず、今ではなく翌日に決めま……いやいや既に日が過ぎたか、今日の昼に行われる総会で決めましょう。」
ヴィクトル(ふぅ……助かった。今度はエメを連れてくるか。あいつならもう少し上手い事言えそうだし。)
ルッツ「では、解散とする。」
「全く、この重要な時期に攻めてきやがって。」
「酷いもんだ、議会創設にしてまだ一年も立たずに戦争が始まるのか。」
「今度のは地球での戦争よりも被害が多く出るのだろうか。」
「私は反対した……私は反対した。反対はしたが……」
「新興国家である我々を虐めて何が楽しいんだか。」
そしてヴィクトルは家には帰らず、艦隊司令部総司令官室に戻ることにした、なぜなら家に戻るよりも近いからであり、もう体の睡眠欲求が爆発しそうだからであった。
しかし艦隊司令部総司令官室に戻るとそこにはまだ人が居た。
ヴィクトル「そこに居るのは誰だ。そこまで超過勤務してまで金が欲しいのか。今はもう2時だぞ。」
それを言われるとある人物はヴィクトルの方に振り返った。
エメ「驚かさないで下さいよ。」
ヴィクトル「なんだ、エメか。こんな夜遅くまでここにいるとご両親に心配されるぞ。」
エメ「もう両親に心配される様な歳ではありません。」
ヴィクトル「はぁ……で何をしてるんだ。」
エメ「総司令官はお仕事してるのにその秘書が仕事してないってのはおかしい事でしょ。」
ヴィクトル「はぁ……」
エメ「それでですね、具体的に何をやっていたかと言うと、これです。」
ヴィクトル「ん、なになに……徴兵制度改革案?」
エメ「そうです。これは私からの提案とうよりも他の艦隊からの噂や、投書、実際の話からなのですが、はっきり言って徴兵制の兵士はやはり職業軍人とは違って能力も、そして任務に対する意識が低いのです。それでも給与は職業軍人と同じ位なのです。ですから徴兵人数を削減し、より良い働きをしてもらう為に軍備改善、士官学校の完全無償化など将来軍人になる人にとっていい環境を作ってあげた方が、能率の悪い人を大勢雇うよりもその方がいいかと思うんです。足りなくなればアンドロイドで代替出来る所はそれでも使えばいいですし。」
ヴィクトル「まぁ、確かに能力の低さは否定出来ない。しかしそこをアンドロイドで代用するとなると、金銭的に足りるのか?」
エメ「試算しましたが、それは大丈夫でした。足りるというか余裕が出来ました。」
ヴィクトル「そうか。じゃ、一応これ議会に提出してみるか。」
エメ「あっ、私の名前ではなくヴィクトル司令の名前で出して下さいね。」
ヴィクトル「なんで、こんな遅くまでやった人の仕事を俺の手柄みたいにするんだい。」
エメ「私の名前で提出したら、秘書のくせに出しゃばり過ぎと言われるでしょうし、司令の方が通りやすいでしょ?」
ヴィクトル「まぁ、そうか……じゃ、これは貸しという事で今度何処かで奢ってやるよ。さぁ、良い子はもう寝る時間だ。」
エメ「はぁ……疲れた。ここで寝ます。」
ヴィクトル「ダメだ。俺がここで寝るんだ。」
エメ「えぇ〜、そりゃないですよ。あっ、ここで貸しが役に立ちますね。」
ヴィクトル「ダーメ、さぁ家へ帰って寝んねしてくれ。」
エメ「明日遅刻してもいいならそれでも構いませんよ。」
ヴィクトル「ダメに決まってるだろ。それにソファは一つだけだ。先に私が眠ればもう、他に眠れる所は無い。それじゃ、私はお先に眠らせてもらうとしよう。」
エメ「くっ……おい!起きろ!」
ヴィクトル「zzz…………」
エメ「もう少しレディに対する扱い方を弁えないと、将来痛い目見ますよ。」
ヴィクトル「zzz…………」
エメ「早い。もう寝てしまったのですか。ならそれはそれでいい。よいしょっと。」
ソファから司令を引き摺り下ろし、ソファに眠る秘書がこの宇宙のどこにそんな秘書が居るだろうか。しかしここに居た。
エメは眠りに就こうとしたが、司令を不憫に思った為、枕替わりのクッションを司令の頭部に上手くセットした。そしてエメも就寝した。
時を少し遡り宣戦布告後のアナトリア星間連合軍旗艦アシュートにて、イフサーンは星間連合議会側の領宙をモニターで見ていた。
イフサーン(これで、我らの国家もお終いか……兵士の士気は低いのならまだしも、民衆の戦争に対する軽視。議会は単に首都圏への反感を向こうに逸らす為だけに戦争をふっかける……なんて不様だ。)
イマード「総司令官、どうですか。この部分を領地にするなんて如何でしょう。さぞ儲かりますでしょうな。」
彼はイフサーンの秘書、イマード・エルバラダイで、彼の秘書になってから1ヶ月である。前の秘書は21日目で切られている。その前は3ヶ月であり、彼の秘書は長く務まる者がいないようだ。
イフサーン「そうだな……ここなら貿易の要所になりうる地点だろうな。」
イフサーン(この口やかましい奴め、俺も良くこんな奴を一ヶ月も雇ったな。しかし、あまり状況を良く考えないでこの男言っているな。敵には1自転分の猶予もあるその間は十分に軍備を整えられるだろうに。それを議会は新興国だかと言って見下し、余裕を与えた。馬鹿め。)
イマード「そろそろ杯も乾いてるでしょう、もう一杯どうぞ。」
イフサーン「あぁ、どうも。」
イフサーン(この様に優雅にワインを飲める地位の者が何割であろうか、一部ではパンと肉ですら不足している所もあるのに、これも全て首都圏のお偉い方のせいだ。この国家などさっさと滅べばいいのだ。ただし敵にやられる必要はないがな。)
イフサーンが産まれたのは辺境惑星の一角で産まれ育ち、その惑星ではある程度裕福であった。しかし裕福といっても首都圏の一般市民と比べたら遥かに劣るものであった。その辺境惑星の一般市民の生活は言うまでもなく更に酷い。そしてイフサーンは金を稼ぐ為に、その頃鎮圧任務で荒儲けしてる軍に入った。
入った頃は十分に稼いだらさっさと辞めるつもりだが、上に行けば行く程束縛が厳しくなり、彼は辞めるタイミングを逃し、遂にここまで来たのであった。
イフサーン「取り敢えず、本部に状況を伝えておいてくれ。」
イマード「分かりました。」
イフサーン(せっかくここまで続いてきた国家だ、どうせなら滅び去る最後の最後まで見届けてやるか。)
アナトリア星間連合首都スエズアナトリア星間連合本部大会議室ではその席の数に合わぬ、数人が居るだけであった。
ハサン「軍部の方から連絡が入ってきました。」
ラヒム「という事は……フフッ。」
アナトリア星間連合代表ラヒム・ジアーはアナトリア星間連合の発足以来長い間、連合の重職を担ってきた一族の1人であるがラヒムがのし上がれたのは先代の謀略や、血族で代表という席以外の重職を固めてきて、他の者の介入する余地を与えなかったからである。そもそもラヒムも先祖は単なる星間連合発足時には十数人いる主要メンバーの中の1人であったが、その先祖が担当していた部門は国家安全保障省であり、名前からも分かる通り国家における不満分子の制圧や政治警察等の役目をしていて、そのラヒムの先祖は最初はその役目をきちっと果たしているだけだったが、段々と自分の地位が改めて巨大な物であると気付き、初めは単に気に入らない奴に対してでっち上げの存在もしない事件で逮捕し、処刑をするだけであったが、次第に自分にとって不都合な奴を消していく事に躍起になっていった。
そしてハサン・ヘイダルはその秘書を勤めているだけではなく辺境惑星の諸政府とアナトリア星間連合首都圏政府にそれぞれコネを持ち、互いのバランスを保たせてきた者であった。諸政府が首都圏政府よりも力をを持てばアナトリア星間連合は、既に別の名前に置き換わっていたか分裂していたであろう。
アーレフ「今回の戦争で国民の大凡は国内の政治よりも、将来手に入る新領土の資源に目が行くでしょうな。まぁ、そちらに目が行くのは私もですがね……。」
アーレフ・ハブビ国家安全保障省大臣はハサンの親戚で、ハサンの信頼を一番高く得ている人物であり、彼は名門大学を首席卒業、その後テクノラートとなり、そして次に一惑星の代表者ともなり、現在では首都圏政府の重職の一人であり、将来ハサンの跡継ぎとして有名であった。
エビ「そうですな。この戦争で得られる物は我々にとって莫大な利益となる事は間違いありません。試算によれば数十年分の国家予算が手に入ります。」
エビ・ジャファル経済大臣も親戚ではあるがかなり離れている。彼は軍需産業とのコネを買われ現在の地位にいる。
マジド「これで更に我々は安泰の日々を送る事が出来るのですな。いやぁ、軍部の報告によれば戦力も大した事無いと言ってる、たかが1自転分の期間でどうこうなる物ではないだろう。」
マジド・ジアー防衛大臣はラヒムの弟であり、マジドは幼い頃には既にラヒムから兄は偉大であるという教えをずっと受けてきて今でもその考えは変わらず、完全なるラヒムの下僕であった。
ラヒム「そうだな。この戦争においては勝利するだろう。数的優位が揺るがないと分かった以上、心配する必要はないだろう。」
アーレフ「その戦争が起こる際にですが、各地でそれに反対している者共を纏めて消してしまってもよろしいだろうか?」
ラヒム「勿論だ。その為の国家安全保障省だろう。フフッ。」
エビ「戦争のお陰で停滞していた経済が再び大きく動き、儲けるでしょうな。」
マジド「そう。今回は大量に色々な物を発注してある。多少、虚偽の発注があるが、気にしないでくれよ。」
アーレフ「そういう所で蜜を吸うのにはぬかりないですね。」
マジド「そうじゃなきゃ、何の為に重職についたのやら。はっはっはっは。」
アーレフ「その際は私にもお願いしますね。フッ……」
ラヒム「まぁ、取り敢えずだ。これで一旦会は終わらせて、いつもの所へ行くか。」
エビ「私もお供させて頂きます。」
ラヒム「他の皆も来るのだ。今日は私が奢ろう。といっても私の金ではないがな。」
マジド「そりゃ、そうでしょうな。はっはっは。」
勝利を確信している者共はその時はこれで良いのだと思っていたのだろう。しかし、それは勝利を確信している者共の懐かしい良き日の夢として思い出されるのは言わずもがな。
そして舞台は再びナハの最高司令官室に戻り早朝の事であった。
ヴィクトル「ん、んー……なんで私は床に眠ってるんだ……。」
エメ「zzz……」
ヴィクトル「はぁ……一体私をどう思ってるんだか。」
ヴィクトル(しかし、この時間まで寝てるという事は相当疲れているのか。今日の会議に連れて行こうと思ったが。止しておこうか。)
ヴィクトル「さて、さっさと準備して行くか。」
そして彼は近くのカフェーに行き、カフェーの設備であるシャワーを浴びてそこで軽めの朝食を取り、再び総会に向かった。
そこにはまだ開始時刻から二時間程前であったが、面子は半分以上揃っていた。その面子の中にはマサナリ理事長も居た。
ヴィクトル(うーん、確か彼はあまり良い印象が無かったような。)
ヴィクトルは昨日の会議で彼が拍手していなかったのを思い出した。
ヴィクトル(このままだと、あまり今後の進展に万全な体勢を取れないだろう。少し話してみるか……。)
マサナリ「何か、用かな?ヴィクトル総司令官。」
マサナリ(戦争屋が私の所へ来たか。どういうつもりかは知らんが……あまり来て欲しくはなかったな。)
ヴィクトル「いやぁ……少し顔色が悪そうでしたので、大丈夫かなと。」
マサナリ「単に朝に弱いだけだ。私は軍人と違って体力的には劣りますからな。」
ヴィクトル「そうですか。まぁ、それは置いといてです。これをご覧になって頂けませんか?」
マサナリ(ほう、徴兵に関する改革案か。実に急だな。)
ヴィクトル「現在の所、我々は敵よりも圧倒的な不利状況であるのは違いありません。しかしその不利な状況で有る事をそのまま放置する訳にはいかないという事でこの様な物を作成しました。」
マサナリ(アンドロイド雇用案か……以前にその様な事を社会機構全体にアンドロイドを使用しようとの試みがあったが、結局は臨機応変に対応出来ないから、取り下げられた覚えてがあるな。どの部署でもどの仕事でもそれは有事対処能力は人間の方が結局は良い結果だったからな。)
マサナリ「アンドロイドなんかに、任せても大丈夫なのかね?」
ヴィクトル「えぇ、実際にアンドロイドで代用出来そうな仕事は沢山ありました。残念ながら軍何てのは考え、命令を出すのはほんの少しで大半は命令に従うアリの様な者ですから。」
マサナリ「もう少し言い方があるとは思うが、確かにこれなら経済的にも余裕は出るし、アンドロイド産業にとって良い景気にもなるだろう。勿論人材的にもだ。それで私にこれを見せてどうするのだね。」
マサナリ(案は良いが、結局戦争をやるには変わらないのだろう。私の意思は残念ながら変えられん。)
ヴィクトル「この案を共同で提出して貰いたいのです。この案件は国の内政にも影響を与えるでしょう。ですから関連する部署と共同で出した方が良いかと思っただけです。」
マサナリ「要はこの案を通す為だろうに、余計な言葉は要らぬ。そして確かに私は戦争には反対するが、個人の良心から見て国民にとって良い物であれば、私はその案の提出が誰であるかは関係無く賛成はする。そして今回は良い物であったから賛成し、共同で提出しましょう。」
ヴィクトル「ありがとうございます。」
マサナリ「礼など要らん。私が好きでやってるのだから。」
ヴィクトル「そうですか。それではまたいつの機会かに、お話しましょう。」
マサナリ「あぁ、それではな。」
そしてその総会では提案も通り、そこで余裕が出た分の半分は星間連合議会運営費に回され、片方で軍拡に回される事となった。
そして時が少し経ち……
エメ「要塞建設艦の研究が終了しました。」
ヴィクトル「やっとか……随分と遅くないか?」
エメ「他の研究だってあるんですし、仕方ないですよ。」
ヴィクトル「まぁ、そりゃ分かるが。まぁ、いい。取り敢えず優先順位的にはデムテル星系に近い惑星アムリッツァとトリスタンに配備して、そこが出来たら他の所にも配備しよう。まぁ、もし他の航路があって、そこから大挙して進軍されたら終わりだがな。」
エメ「了解しました。しかし、我々の宙域の探索はほぼ終わりつつあります。それはないでしょう。それとシャンタウ星団に派遣した偵察艦によりますとシャンタウ星団の中心であるベイジン星系には何も居ない事が確認され、現在他の星系に回ってますが、新勢力は無いようです。」
ヴィクトル「そうか。シャンタウ星団に第二艦隊を派遣して……結構時間無いな。デムテル星系を通ってシャンタウ星団に行くという事は戦時下においてはしばらく移民は出来ないだろうから、纏めて行くしかないか。そんで移民し終えて、その後デムテル星系で屍の山が出来るのか。」
エメ「敵国の屍の山がですね。」
ヴィクトル「すごい事言うな。」
エメ「意気込みですよ、意気込み。そんな事より使節艦がどうやら新勢力との通信を開く事に成功したそうです。」
ヴィクトル「はぁ、さてどんな国なんだろうか。」
エメ「それじゃ開きますね。」
ダグラス「私はエンコミエンダ国首長ダグラス・マクドーネルである。貴殿の事情は部下から聞いている。」
ヴィクトル「そうですか。」
ダグラス「それでだ。やはり見返りが無いとだね。」
ヴィクトル「ちょっと待って下さい。お互いの存亡がかかっているのを承知か?」
ダグラス「お互いの存亡?違う、我々はあの勢力の属国みたいなものだ。」
ヴィクトル「はぁ?!」
ダグラス「我々はお前の様な存在を生かすも殺すも容易く出来るのだよ。」
ヴィクトル(二正面作戦は絶対に無理だ。この新勢力がいくら小規模だとしてもこの新勢力を全滅させるには時間がかかる。うまく星系の隅地を使って文化普及率を高くさせている。文化普及度が高ければ惑星の占領は困難だ。)
ヴィクトル「そ、そうか……」
ダグラス「それでどうするのだね。」
ヴィクトル「貴方にあの勢力の半分の宙域をくれてやる。それで十分だろ。」
ダグラス「ふむ。それだけか。」
ヴィクトル「それだけだと!貴様舐めてかかりおって。」
ダグラス「忘れるな、お前の存亡は私にかかっている。私が戯れに国家の存亡を見たいいが為にやっているだけなのだ。どっちが滅ぼうと構わないのだよ。小規模勢力が大規模勢力に必死に食らいつき勝ってゆくのも面白い。また大規模勢力が大胆に進軍して快勝していくのもまた面白い。」
ヴィクトル(クソが……)
ヴィクトル「それじゃ、どれくらいなら良いのだ。」
ダグラス「3分の2寄越せ。」
ヴィクトル「…………分かった。」
ダグラス「それと私は形だけは抵抗させてもらおう。もし負けた時の為にな。だがちゃんと貴殿が勝てる様に資金、資源、人材の援助くらいはやってやろう。後は自分でなんとかするんだな。」
ヴィクトル「……貴殿の協力に感謝する。」
ダグラス「それではご武運が汝にあらんことを。」
エメ「通信終了ですね。随分と舐められたもんですねぇ。」
ヴィクトル「何が、ご武運が汝にあらんのとを、だよ。馬鹿にしてんのか。まぁとやかくいっても仕方ない。敵対しないだけありがたい。まぁ、本当に敵対しないのならだけどな。」
エメ「どうやら第二艦隊の任務であった宙域の探索と移民を引き継いだ第三艦隊はデメテル星系付近の星を全て我々の勢力下に収め、他にアナトリア星間連合と繋がる航路は確認出来なかったようです。」
ヴィクトル「さぁて、我々の勢力が固まりつつある今敵さんは何をしてんだか……」
そして所変わりエンコミエンダ国都オリッサのダグラスの私室でオンラインでの密談が行われていた。
ダグラス「首都の犬はどうしてるかね」
アッシュ「暢気に豪遊してますよ。」
彼はとある組織のメンバーの一人である惑星カトマンズのアッシュ・スカイラー首長である。
ヴァシリー「そちらもですか。こちらも遊んでばかりですなぁ。まぁ、そのようにさせたのは我々だがな。」
ジャイプル星系ヴァシリー・ヴァレンシュタイン議長もその組織の一人であった。
エルネスト「いやぁ、あのようなクズが我々の部下でなくて良かったな。」
惑星スラトのエルネスト・ロブレス首長は地理的には首都圏に近く、主にこの惑星は首都圏と辺境の入り口となり情報の採集にはもってこいの惑星である。
ネビル「全くだ。しかしあのクズ共にこうしてまで頭下げてる時代はもう終焉を迎えるのだ。」
惑星エローラのネビル・ファーバー市長は最も辺境にあるが、逆に辺境過ぎて他国に比べて最も国家安全保障省の介入を受けている。そしてもちろんこの方もある組織の一員である。
ダグラス「そう。もう既にこの星団の物語は書き換えられている。いささか領土は減るが我々が、思う様に政治が出来るのは長年の夢であった。そして現在、我々はその夢を現実の物とする手段を手に入れた。この独立するチャンスを逃してはいけない。」
ヴァシリー「もちろん、独立というのは完全な独立。アナトリア星間連合が各惑星に与えている独立権とは違う。与えられた似非独立権ではなく、掴み取った真の独立権を我々は得るのだ。」
ネビル「私の惑星の状況を見ていると、本当に独立権が与えられているのかと疑いたくなるな。」
エルネスト「しかしエンコミエンダ国はいいですな。完全な自治とは言えないが、内政干渉がなくて。」
ダグラス「その代わりに莫大な金を払ってるんだ。これくらい与えられて当然だ。むしろお釣りが戻ってきてもおかしくはないがな。」
ネビル「先代の議長の時にその取引をしといて良かったですな。今のラヒムの糞野郎はちゃんと将来の自己の権益を守って、同じ取引をもうしてはくれないからな。先代は目先の自分の利益にしか目がいかないクズ野郎だったからある程度好きにやらせてもらったが。」
ダグラスの領有している宙域はエンコミエンダ国と言って、居住可能な惑星が多く、アナトリア星間連合の内訳を見ると、首都圏政府の比になるものではないが、人口、経済、軍事においてファーストマイノリティの地位を持っていた。しかし軍事には制限があるが、他の事に関して干渉されないのだから、それだけでも、十分である。かつて手に入れた自由で他の辺境とは一線を画すしているエンコミエンダ国の首長であるダグラスを中心にアナトリアの不満分子が集まり、将来には首都圏政府の転覆を狙い、このアナトリア星間連合の再生を目指す組織が段々と長年の夢を現実にしようとしていた。
そして開戦まで残り20日位のことであった。
ナハの最高司令官室にて
エメ「第二艦隊があと少々で黄色恒星に着くようです。」
ヴィクトル「遂にか、しかし我々に残された時間は少ない。もしもの時の為に出来るだけシャンタウ星団の開発を急がなければならない。」
エメ「敗戦したときの都落ちをするための拠点とするのですね。」
ヴィクトル「あまり、はっきりと言うな。ただでさえ勝つ自信が無いのに。」
エメ「そんな落ち込んでいる司令官に朗報です。タイタンの製造が出来るようになったようです。」
ヴィクトル「早速取り掛かれ。」
エメ「にしても資金援助のおかげでどんどん研究が進んで行きますね。」
ヴィクトル「あぁ……だが金だけじゃなんとかならんものもある。」
エメ「まぁ、仕方ないですよ。新兵ばかりなのはこんなにも急に軍事力を整えてるのですもの。」
ヴィクトル「うーむ……出来れば軍なんかで人を割いては欲しくない。確かに優秀な人材は我々も欲しいがそれを戦争なんかで殺すのは私は惜しいと思ってる。確かにアンドロイドで代用できる所はそうはしたが、結局人を使う所がある故、そしてゆっくりと着実に訓練させる事が出来ない為、部署の数に対して玄人が十分な数ではない。」
エメ「他の国から見れば、我々の軍なんて雑魚軍団にしか見えないかもしれませんね。」
ヴィクトル「はぁ……」
少し時が進みシャンタウ星団ベイジン星系にて続々と艦が到着してきた。恒星ベイジンは赤色超巨星で、それを第二艦隊旗艦の窓越しから見ても、その灼熱の恒星に己の闘争心を奮い立たせるようなオーラを放っていた。
アダム「あれがこのベイジン星系の太陽ですか。綺麗ですね。」
シュエリー「えぇ、いつまでも眺めていることが出来ますね。」
アダム「ですが、いつまでも眺めてる暇なんてありませんよ。」
シュエリー「分かってるわ。それで報告によればこの方面の探索が終わってるのね。取り敢えずこの方面から移民開始しておきましょう。既に惑星の情報も入ってるでしょ?」
アダム「はい。そちらの情報は既に全移民船に伝えてあります。」
シュエリー「よろしい。そしてまだ探索は終わってないんでしょ?」
アダム「そうですね。偵察艦はこのルートを使って、この星団を回るようですが。」
シュエリー「それじゃ、植民船に最低限の護衛を付けて、我々も探索に乗り出しましょう。」
アダム「分かりました。」
シュエリー「結局、指示出し終えたら暇ね。何をしましょう。」
アダム「暇になんてさせませんよ。ほら、この書類に全て目を通して下さいね。」
シュエリー「あぁ、忘れてました。そういえば本国が戦争中の間は私がしばらくこの星団を統括しなければならないんですよね。」
アダム「星団の管理を忘れるなんて、一体どれだけ、軽視してるんだか……」
シュエリー「星団の管理なんて、どうでもよくなるくらいあの太陽が綺麗なのがいけないんですよ。」
アダム「困った人だ……」
シュエリー「そういえば、何時頃星間連合議会理事会のシャンタウ星団担当官は来るのでしたっけ。」
アダム「少し遅れて30分後に到着するそうです。」
シュエリー「あっ、そうなの。何で遅れたの?」
アダム「アゾレス星団のデムテル星系の恒星の恒星風の影響らしいですよ。それで一時足を止められたみたいで。」
シュエリー「なんだか、嫌ね。宇宙ていうだだっ広くて何も無い空間が広がってるのに、ちょこまかと障害物があるのは。」
アダム「何も無かったら無かったでつまらないと仰いますでしょうに。」
シュエリー「ふっ、そうですね。少しは障害物あった方が人生にとってもいいスパイスですものね。」
アダム「さぁ、無駄話はお終いです。お仕事の時間ですよ。」
シュエリー「強制終了されたら仕方ないですね。やりましょうか。」
そしてまたアゾレス星団に話を戻す。
第一艦隊旗艦の司令室にてひたすらモニターを見つめながら指示を出す男が居た。
クン「その不審船は、そちらへ行ったから、2は現在担当している所の航路の封鎖、11はそれを手伝いに行ってくれ。また48はそこにいる民間船の他のルートへの誘導を頼む。でだ、そちらからVIPが出たから至急8はVIPの護衛をしている34の支援をしてやれってくれ。」
ユリ「…………」
クン「そこの航路にいる艦と艦の感覚が狭過ぎる、18はそこにいる奴に切符切るか、指示出すか、どうにかしろ。」
ユリ「zzz……」
クン「22は4の検問を手伝ってくれ、交通量が多くなってきたから対処し切れない。あっ、6も検問の手伝いだ。もしかしたらそこに違法運転手とか犯罪者とかいるかも知れんぞ。」
ユリ「zzz……」
クン「17はあまり追い過ぎるな、間違って武装船がアナトリア星間連合に入ったら大問題になるぞ。人質でも積んでいない限りそこまでやる必要は無い。」
ユリ「zzz……」
第一艦隊は現在星間連合議会のアゾレス星団の領宙の警備の任に当てられていた。移民任務や戦闘任務とは違って、事務処理に関しては専門の部署が付くので、ただ報告書を書けば良いので、ユリは完全に金食い虫状態であった。その様な報告書だけを書く仕事などほんのちょっと時間があれば終わるので、こうやって寝ているのである。
それに対し、艦隊司令であるクンは今までに見ない仕事振りであった。というよりもこの指揮に関しては他に任せられる者が居ない為、こうなるのは仕方ない事であった。しかし不眠不休でやっている訳ではない。分艦隊司令達と共にローテーションを組んでやっているが、基本的には艦隊司令が主にその任をやれと言われているので、分艦隊司令よりも仕事時間はかなり長い。
ユリ「ふぁぁぁ、よく眠った。」
クン「81は51とそいつを挟みうちにして逮捕しろ。出来るだけ武器は使うなよ。」
ユリ(無能が可哀想に思えてきた。確かに無能はあまり仕事しないけど、ここまで有無が激しいと……いや、今まで全然仕事してこなかったんだからやっぱりこの言葉がピッタリかな……)
ユリ「ざまぁみろ。」
クン「おっ、起きたか。起きたばっかで悪いが、お茶を淹れてくれ。」
ユリ「はいはい……」
そして時は開戦まで一桁日となっていた頃、ナハでは盛大な観艦式が行われていた。盛大と言っても、規模が大きいだけであって、内容自体は簡素な物となっていた。
星間連合議会の幹部の出席者はマサナリとアドリアンであった。
この様に出席者が少ない理由は出来るだけ仕事を邪魔する訳にはいかないということで、深く関わった人のみを呼んだのであった。
そして軍部の幹部出席者はヴィクトルのみであった。勿論、設立された艦隊の司令もいるがその紹介は後でにする。そしてエメも居るが、幹部とは言えないのでここでは載せない。
そしてこの観艦式は一般市民の来場を許可しており、大勢の人がいて野外なのに狭くも感じる程だった。
そして各艦隊の旗艦がステージの後ろに並び、空を仰ぎ見れば遥か上空にタイタンが駐留している。そのステージに幹部出席者が座り、士官が出てきて司会をし始めた。
士官「この度は、星間連合議会軍の観艦式に足をお運びになった事を心より感謝いたします。晴天でとても暑い中ですが、兵士達は今でも訓練を絶えず行っています。それの苦しみと比べたら大した事はないでしょう。さぁ、それでは……」
士官が暫く話している間、ヴィクトルとエメはひそひそと話をしていた。
ヴィクトル「なぁ、エメ。」
エメ「何ですか、司令。」
ヴィクトル「本当にこの人事で大丈夫かなぁ?」
エメ「はぁ……もうそれ言うの何回目でしたっけ。もう耳にタコが出来そうですよ。」
ヴィクトル「だって心配しか無いんだもん。」
エメ「はぁ……」
ヴィクトル「それにこの艦隊は今まで移民とか警護とかそういう平和的利用の為の艦隊じゃないんだよ?暴力的道具達なんだよ。その暴力的な道具を持たせる人を間違えたら大変な事になるじゃないか。」
エメ「あのですね、司令。」
ヴィクトル「ん?」
エメ「司令はもう少し自分の人を見る目を信じた方が良いですよ。」
ヴィクトル「なんでそんな事が言えるのかい?」
エメ「普通ですね、クン司令にあんな忙しい仕事与える事なんてないですよ?日常の行動から見て、怠惰の塊としか思われてないクン司令の事をちゃんと仕事はやる奴であると見抜いて、後方防衛という忙しくて重要な仕事を与えたじゃないですか。結果、今でも順調に活動してますし。」
ヴィクトル「一回の例だけで、自分の人を見る目を信じろっていうのかい?それに無理な話だな。」
エメ「一回だけではないじゃないですか。ご友人選びにも成功しています。ルッツ議長は他人に立派な人であると紹介出来る人物ですよね?違いますか?」
ヴィクトル「まぁ、確かにそうかもしれんが……」
エメ「取り敢えず、今回の人事はきっと大丈夫です。」
ヴィクトル「きっとか……」
エメ「女々しいですねぇ……」
ヴィクトル「だけど慎重になり過ぎて悪い事はないだろう?」
エメ「ありますよ。いつまでも決め兼ねていたら相手に先手を取られて何も出来ずに終わってしまいますよ。」
ヴィクトル「はぁ……」
エメ「溜息を吐きたいのはこちらですよ……」
「戦争反対!暴力的手段という選択肢を消せ!過去の歴史から何も学ばずにまた戦争を始める気か!愚者共め!」
士官「な、何事ですか!」
エメ「あら、少し騒がしいですね。」
ヴィクトル「この主戦論者が殆どである場に一人の勇気ある者が迷い込んでしまったみたいだね……」
「戦争反対!」
マサナリ「君!そう!そこの君だ。君には確かに思想の自由と言論の自由がある。勿論政府に異議を唱える自由だってある。だがしかし、ここは同じ国民であるにも関わらず、自ずからの意志で戦地に赴く者に対して感謝をする場であって、話し合う場では無い!それが分かったら今すぐここから立ち去れ!」
ヴィクトル「マサナリがこんな事をするとは思ってなかったは。自分の予想としては黙って見つめるだけだと思ったんだが……」
エメ「あら、大人しくなって出て行っちゃいましたね。」
ヴィクトル「あらら、バイバイ。」
エメ「ふぅ……警備員にでもしょっ引かれるのかと思った。」
ヴィクトル「戦争に反対するのはべつに良いんだ。私だって戦争しなくていいと言われたら戦争なんてしないけど、今回の場合、戦争と負けた場合と同じになるんだが、戦争をしなければ、政治権力がどうの、出世がどうのとか、そんな事言ってる場合じゃなくて、明日のパンと牛乳を心配する暮らしになるんだ。幾ら何でも、そこまでは私は見過ごす訳にはいかないからね。そういう状況になるのなら私は一生懸命抵抗させてもらうよ。」
エメ「もうちょっと皆が思いやりというのを持てばなぁ……」
ヴィクトル「そんな物を持っていたのなら地球でのザ ヘル ウォーなんて起きてなかったよ。」
エメ「そういえば、ザ ヘル ウォーってどれくらい惨事だったんですか?確かに教科書では被害をグラフや数字、写真で表している物がありましたけど。」
ヴィクトル「残念ながら、というかその方が幸福だけど、その頃の記憶はまだ自分が子供であまり覚えていないんだ。」
エメ「あっ、そうなんですか。てっきり体験者かと……」
士官「それではご紹介と参りましょう!新進気鋭の各艦隊の司令官の登場です!拍手でお迎えしましょう!」
ヴィクトル「パチパチパチパチ」
エメ「司令、口拍手なんて巫山戯た事やってると後で痛い目に合わせますよ。」
ヴィクトル「へいへい。」
エメ「全く……学生じゃないだから。そんな事して恥ずかしくないんですかぁ?」
ヴィクトル「へいへい……拍手なんてのは功績を立てた物に対して普通行うもんなのになぁ……」
エメ「余計な事言わないで下さい。」
ヴィクトル「へいへい。」
士官「左から順にご紹介します。マックス・ケルフェンシュタイナー第一打撃艦隊司令官、そしてその麾下にありますのはベランジェ・ゴンクール第二打撃艦隊司令官と、チェ・ヨンサム第三打撃艦隊司令官です。次にビティア・ヤンヴァリョフ第四打撃艦隊司令官、その第四打撃艦隊麾下にあるのはディーナ・フィリペンコ第五打撃艦隊司令官、ミハイル・ポクロフスキー第六打撃艦隊司令官です。そして次は第一空母艦隊を率いるアバ・エバン司令官、第二空母艦隊を率いるレティ・ベゴヴィチ司令官です。以上8名の司令官達です!」
エメ「今思えば、本当に良くここまで揃えられましたね。」
ヴィクトル「これでも少ないくらいだがな。」
エメ「敵の情報はエンコミエンダ国から入ってきてますが、実際はそれ以いる可能性も否めませんものね。」
ヴィクトル「どんなにエンコミエンダ国の諜報能力がすごいとしても、限界は当然ある。だがその限られた情報と一見関係無さそうに見える他の情報を知ってれば、自ずと見える事もある。にしても良くこんなペテンで首都圏政府という監視から抜けられたもんだな。」
エメ「エンコミエンダ国は武器や軍艦などの制限はありますが、艦船自体に制限はないですものね。」
ヴィクトル「そう。だから軍艦に武器を搭載しないだけで、それを単なる商船だと言い放って我々に格安で提供する。」
エメ「後はこちらで火器を搭載すれば軍艦の完成と……首都圏政府の監査官は何してるんでしょうね。」
ヴィクトル「まぁ、監査官といっても先程、エメが言った通り軍艦の製造に関する口出しは出来るが、単なる商船に制限は無いからね。文句言う権利が無い。」
エメ「ですが、こうやって話してますけど、一人何で今日居ないんですか?」
ヴィクトル「さぁ、知らないね。観艦式の進行を決めるのは私じゃないし。」
エメ「司令官、もしかしたら先程言った事を撤回させてもらう必要があるかもしれません。」
ヴィクトル「どの事かな?」
エメ「司令官の見る目の事です。」
ヴィクトル「あぁ、その話か。何で?」
エメ「タイタンの艦長は遅刻だそうです……」
ヴィクトル「あぁ、それならいいや。」
エメ「何でそういう事言うんですか?観艦式に遅刻しかも一兵士ならまだしもタイタンの艦長ですよ?」
ヴィクトル「彼が何かをしでかす時は必ず正当な理由があるからね。何か彼の周りで起こったのだろう。勿論、後でその理由について聞きにいくつもりだよ。」
エメ「はぁ……それならいいんですけど……」
ヴィクトル「あっ、そろそろかな。」
士官「それでは次に星間連合会議軍総司令官ヴィクトル・アイゼンハワー司令官の辞です。」
エメ「いってらっしゃい。」
ヴィクトル「あぁ。」
士官「ヴィクトル司令官それではこちらへ。」
ヴィクトル「えーと……取り敢えずだ。我々が戦うのは星間連合議会の存亡とかそういうのではなくて、この全宇宙に居る人類の一人一人のパンと水、そして人間としての権利を持つ事ができる。……皆がその事が出来る未来に到達させる為に戦うのだから……各艦隊の司令官はその事を考えて戦ってほしい。以上です。」
士官「……あっ、終わりですか。それでは次に行きたいと思います。」
エメ「短くないですか?」
ヴィクトル「少ない文量で濃い内容を伝えるのは効率的で良いだろう。」
エメ「まぁ、確かにそうとも言えますが……」
ヴィクトル「だろう?」
エメ「お陰で士官が少し戸惑ってしまったじゃないですか。あまりにも予想より短くて。」
ヴィクトル「あれ、知らないか?私が士官学校に居た時の話。」
エメ「そういえば、あまりお話になりませんよね。」
ヴィクトル「一応首席で卒業してるからスピーチを卒業式の時にすることになったから、その時のスピーチもこれくらい……いや、もう少し短かったかな、取り敢えず短かいスピーチをしたんだ。面倒臭いからね。私のスピーチが短いというのが話題になったと思うんだが……」
エメ「はぁ……」
そしてヴィクトルとエメが観艦式の最中にも関わらずお喋りしてはいる時に、別の場所ではとある騒動が起きていた。
「…………」
間者「そうやって、ずっと黙ってるがいい。ダミアーノ艦長。だがそれで損をするのはお前だけだ。お前がこうして黙ってる間にもお前の知り合いの誰かさんに危機が迫るだけだ。お前がタイタンのアンロックコードを言えばその危機は消える。さぁ、早く言うんだ。」
ダミアーノ「…………」
間者「ほう……それじゃ、一人ずつ殺ってやろう。ほらモニターを見ろ。」
ダミアーノ「…………」
間者「ほら、お前のフィアンセーがこの世から消える所をモニターを通して見るんだ。」
ダミアーノ「…………」
間者「ほら!目を開けてモニターを見るんだ!」
ダミアーノ「…………」
間者「そうか、お前はフィアンセーの最期も見ないのか。よし、分かった。殺れ!」
ダミアーノ「!」
間者「どうだ。さぁ、次は誰かな。」
ダミアーノ「…………」
間者「ほう、貴様の様なフィアンセーよりも軍事機密を優先する奴にも涙は出るのか。どうだ、言う気になったか。」
ダミアーノ「…………」
間者「さて、まだか。まだまだ殺っていくぞ。」
ダミアーノ「…………」
間者「さて、モニターを見ろ。次は両親だ。」
ダミアーノ「…………」
間者「まぁ、この老夫婦が一緒にあの世に行ける様に、まとめて殺してやる。」
ダミアーノ「…………」
間者「どうせ、言わないんだろ。こっちも時間が惜しい。10秒以内に言わなければ殺す。10。」
ダミアーノ「…………」
間者「9」
ダミアーノ「…………」
間者「嫌ならばさっさと言えばいいものの。6。」
ダミアーノ「…………」
間者「5!4!3!2!」
ダミアーノ「すまない…………」
間者「殺れ!」
ダミアーノ「貴様…………」
間者「どうした、もう死んだぞ。どうせならお前の一族全て殺してやる。」
ダミアーノ「貴様、殺す!」
彼は後ろ手で縛っていた縄は生憎、彼の両親が殺された数秒後、彼の隠し持っていたナイフで切られていた。
そして彼が言葉を言い放つと同時にナイフを間者の太ももを目掛けて投げ、命中した。
間者「うっ…………」
ダミアーノ「さて、今度はこちらが脅迫する番だ。貴様は何処の誰だ!」
間者「…………」
ダミアーノ「ふん、貴様も私と同じで言うつもりがないようだな。だったら言える状況に持ち込んでやる。」
間者がナイフを刺されて痛さのあまり倒れている所にダミアーノは近づき刺さっているナイフを持ち、ナイフを刺したまま抉る様に動かしてく。
間者「あぁあああ!」
ダミアーノ「さぁ!言え!」
間者「あぁぁぁぁぁあ!!!」
ダミアーノ「ほらほら!叫んでたら分からないぞ!」
ダミアーノは彼が苦しくて言えないのかと思い一旦動かすのをやめた。
ダミアーノ「さぁ、言う気になったか?」
間者「…………」
ダミアーノ「そうか。じゃもっと殺ってやる。」
間者「あぁぁああぁあ!」
ダミアーノはナイフを動かしながら、間者のポケットに入っていたダミアーノの携帯端末を取り出し、電話をかけた。
間者「あぁぁああぁあ!!!」
ダミアーノ「うっさい!電話するんだ。静かにしろ。電話が終わるまでに言わなければ殺す。」
間者「あぁぁああぁああああ!」
ダミアーノ「もしもし、私だ。あぁ、私用は終わった。ここに迎えを寄越してくれないか?現在地は送る。それじゃあな。」
間者「あぁぁあ!」
ダミアーノ「言う気になったか?」
止めたが効果は無かった様だ。
ダミアーノ「そうか。言わないか……じゃあ、死ね!」
間者「ああぁぁぁあああ!」
間者の太ももに刺さっていたナイフは股間に深く、ナイフの柄のギリギリまで刺さっていた。
ダミアーノ「国家如きに仕えるお前にも血は出るのだな。私の親類と同じ赤色の血が。」
間者は既に死んでいるのを確認する必要もないくらいの血が出ていた。
ダミアーノ「ああぁぁぁあああ!!!」
彼の手に掴まれていた携帯端末のフレームが歪みそうであった。
ダミアーノ「…………ごめん……皆。ごめん、シュザンナ。ごめん……お父さん……お母さん。」
彼がなぜ親類を殺されてまでタイタンのアンロックコードを言わなかった理由は単に軍事機密だからだけではない。アンロックコードを打てば、タイタンの操作が出来るのだが、そのアンロックコードを打てば、出来る操作の中の一つに自爆がある。現在、自爆したら観艦式にいる人々が全て死ぬ事になる。それだけではすまない。ナハ自体の都市機能が消える程の被害が起きる。
勿論、それだけではない。彼自身の親族を殺せる程の職務に対しての接し方の所為でもあった。
ダミアーノ「ああぁぁぁあああ!ああぁ!あぁ!」
彼は迎えが到着するまで叫びながら骸にナイフを刺し続けた。
この様な事になったのは観艦式の日の朝、家のポストに一枚の手紙が入っていた。手紙の内容はこの場所に来い、来なければお前の親しい人を殺す。もちろん他言無用だ。言えば殺す。たったそれだけであった。
彼は取り敢えず隠れて部下を数名同行させて行ったが、その場所に着いた途端、いきなり車両が後方より現れ、部下が守りに入ろうとする前に車に乗せられ、ナンバーも隠されていた為、ナンバーからの追跡も出来ず、自車両に乗って追いかけようともしたが既に見失っていて、結局、ダミアーノが言っていたもしもの時の為として、私用であるので遅刻すると部下は伝えるしかなかった。勿論GPS発信装置も付いていたが、すぐに装置もバレて、今は下水道の中であろう。
これが観艦式中にダミアーノ艦長が遅れ理由であるが、私用の一言で観艦式の司会者に伝わっていた……
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