金剛「別れの日」
SS初投稿です。色々至らない点があると思いますが、よろしくお願いします。
とある楽曲を参考にさせてもらい短編を書かせてもらいました。
SSは時々読みますがすべてを把握しているわけではないので、類似した作品があったら申し訳ございません。
ふと、部屋の掃除を始めてみると机の引き出しの奥から懐かしい写真が出てきた。最愛の人と二人で写る写真。君は今どこにいるのだろうか?何をしているのだろうか?覚えているだろうか、あの夏の暑い日々を。
金剛 「テートク、少し外を歩きましょう」
そういって連れてこられたのは、鎮守府近くの砂浜だった。夕日がもう沈もうとしているそんな時間のこと。
金剛「こうやって二人でここを歩くのも久しぶりデス。覚えていますか?初めて二人でここを歩いたときのこと。テートクが着任して半年くらいでしたカ?」
提督「あぁ懐かしいな。俺もまだなんにもわからなくて初めてきた戦艦が金剛で、よくここで気晴らしがてら色々相談したっけな。」
金剛「ホント色々ありました。最初の大規模作戦攻略の祝賀会で、元帥の前で私にシャンパンをひっかけたこととか。」
提督「あったあった。緊張していたのと金剛が珍しく化粧なんかしてくるもんだから驚いてしまってな。普段から美人だなとは思っていたけどあそこまで変わるとは思っていなかった。」
それを聞き少し頬を赤くそめ微笑む金剛。
日が沈み始め月明かりがあたりを照らし出す。
金剛「テートクが私に告白してくれたのも、こんな月明かりが照らす夜空の砂浜(ここ)でしたネ。でも私たちがちゃんと付き合いだしてから海軍の動きも忙しくなりデートらしいデートもできずやっぱりよくここで二人きりでゆっくりすることが多かったデスネ。」
提督「それについては申し訳なかったと思っている。いろんなとこに連れて行ってやりたかったんだが・・・」
金剛「イインデス。私はテートクと一緒に入られればそれだけで幸せでした。それに一度鎮守府を抜け出して少し遠くの街へ連れて行ってくれたときは嬉しかったデース。」
提督「あの後こってり絞られてな・・・」
ーーーーーー
どのくらい歩いただろうか。鎮守府の建物が小さく感じる距離。
金剛「テートク・・・手をつないでください。」
金剛が伸ばしてきた手を握る。小さいが暖かく力強い手。
金剛「テートク、大好きデス・・・でももうこんな日々も終わりですネ・・・」
提督「そんなこと言わないでくれ、どうにかここに残る方法はないのか!?金剛・・・頼む・・・いかないでくれ・・・」
金剛「深海棲艦が消滅して世界に再び平和が訪れた今、私達艦娘がココに残ることはできないんですヨ。何故かはわかりませんが本能が知っているんデス。案外私達は似て非なる者達だったのかもデスネー。」
提督「金剛っ」
思わず彼女を抱き寄せる。
金剛「テートク・・・私は突然この世界に人の姿を身に纏い生まれ変わって再び戦いの中に放り出され最初は辛かったデスネー。でもアナタと出会えて幸せでした。それまで人の姿を身に纏ったことで生まれていた不安も何もすべてアナタと出会えた喜びに比べればなんてこともなかったネー。」
少し間を置き再び彼女が口を開いた。
金剛「最後に私に思い出をくれませんか?アナタと一緒だったという思い出を。」
提督「すべてが終わったら渡そうと思っていた。でも俺が考えていた未来はこんなものじゃなかった。これを渡して二人でこれからも一緒に暮らしていくつもりだった。俺は軍を辞めて普通の会社に入って、夜には家に帰るんだ。そうしたら金剛が家で晩飯を作って待っていてくれて、なんでもない話をしながら眠りについて次の日を迎える。こんな毎日を想像してた。そんな未来のためにも用意したものだけど、金剛・・・受け取ってくれるか・・・?」
ポケットに入れいていた婚約指輪を差し出す。
金剛「指にはめてもらえますカ?」
提督「あぁ。」
金剛の指に指輪をはめる
金剛「これで私はテートクと正真正銘の夫婦デスネ!とっても嬉しいネー。本当にありがとうデス。愛してます。私は消えてもヴァルハラから見ているネ!だから安心してこれからも変わらぬ毎日を送ってくださいネ・・・?・・・テートク・・・テートク・・・」
溢れ出す涙を止められない金剛
提督「金剛っ・・・ありがとう本当にありがとう。俺も愛してる。金剛のおかげでどれだけ救われたか。」
彼女の体が次第に光に包まれ始める
金剛「テートク、鎮守府にいる皆とはお別れを済ませましたカ?」
提督「あぁ。」
金剛「ならよかったですネ。」
二人で迎えた夏は何度目だっただろうか。長く暑い日々が終わり冷たい海には靄がかかりだし、気が早いラジオからは次第に冬のヒットナンバーが流れ始めていた。
金剛「大好きです。愛してます。提督、さようなら。」
短いキスの後、彼女は光に包まれながら、微笑みながら、消えていった。
完
このSSへのコメント