平和で暇な鎮守府の日常
深海棲艦もあまり出ないような、比較的平和なあたりにある鎮守府の暇な日常を適当に綴る、そんな短編集のSSです。
初投稿なので、至らない点やミスも多々あると思いますが生暖かく見守っていただければ幸いです。アドバイス等を頂ければ泣いて喜びます。
情報は基本的に不足していますので口調や呼称間違いがあればガンガンご指摘ください。
キャラ崩壊や、チョロイン、なんちゃってシリアス等の要素をたぶん、含みます。コイツはだめだ、と感じましたらブラウザバックして頂くことを推奨します。
章ごとの時系列は割と前後します。ご了承ください。
また、過度な期待をせず、ゆるく読むことをおすすめします。
それでは、最後までお付き合い頂ければ幸いです。
提督「……暇だな」
電「そうですね」
提督「仕事もそんなに多くないからすでに終わっているし、急に敵が攻めてくるわけでもなく、どうしようもなく暇だ。時間の経ち方が遅く感じる」
電「今日は珍しくほかの人たちがみんな出払っちゃってますからね。鎮守府全体が静かだから余計そう感じるのです」
提督「そうだなぁ……静かだよなぁ……」
電「司令官さん眠いのですか?」
提督「いや、そんなことはない、と思う」
電「だったらなんでそんなゆったりとしたしゃべり方を?」
提督「んー、暇で静かで気が緩みに緩んでるからかなぁ」
電「着任したての頃もこんな感じの時間はありましたけど、そのときはそんなしゃべり方ではなかったのです」
提督「それは、ほら、あの頃はいくら暇だって言ってもいろいろ緊張してたし。電にも気を使ってたし」
電「今は気を使ってないんですか?」
提督「今更そんな必要ないだろ? ここまで気を抜いてだらけられる相手もそういないんだからいいじゃないの。特別扱いだよ、特別扱い」
電「もうっ、そんなこと言ったって誤魔化されないのです!」
提督「悪い悪い。ま、本当に電は特別な存在だよ」
電「……え?」
提督「まぁ、なんだかんだ一番長いこと一緒にいる相手だしな。大切だよ」
電「司令官さん……! 私、そんな風に思ってもらってるなんてっ……嬉しいです」
提督「そんな特別な電ちゃんにはこれをあげよう」ニヤニヤ
電「ありがとうござ……ってこれおじいちゃんがお孫さんにあげるキャンディなのです!」
提督「なんてったって特別な存在だからな。美味いんだぞ? このキャンディ」
電「ほんとに司令官さんは! ちょっと真面目にしたと思ったらふざけて!」プンプン
「あっ! もしかしてさっきの話もこのためのフリだったりするのですか!?」
提督「いやいや、そんなことはない。本当にに電のことは大切だよ。もちろんこの鎮守府に所属してる皆も同じくらい大切だけどね」
電「……まぁ、今はそれでいいのです」
提督「許してくれるか?」
電「私は特別な存在ですからね、このキャンディに免じて許してあげるのです」
提督「ならよかった」
電「ただし! このキャンディは電以外にはあげちゃだめですよ?」
提督「いいけど、なんで?」
電「それは……」
「(おふざけではあっても司令官さんがくれた『特別』の証だから、それをほかの人には渡してほしくないっていう我儘なのです)」
「(でも、これをそのまま伝えるのは恥ずかしくて、恥ずかしくて、できないのです。……どうしよう)」
提督「ま、電がそういうならそれに従うよ」
電「え?」
提督「まぁ、許してもらう対価だからな。電がそうしてほしいっていうなら断りなんてしないさ」
「なんか理由は言いにくいみたいだし、無理に言わなくてもいい。でも、いつか笑い話かなんかで、話の種としてぽろっと教えてくれると嬉しいかな」
電「……はい。いつか、言います」
「(きっと、私がこの気持ちを伝えられる勇気を持てたら、その時は……だから、それまでは……)」
提督「どうした俯いて、もしかして嫌だったのか?」
電「いえ、そんなことはないのです。司令官さん、いつか、いつかきっと伝えますから、それまでは待っていてくださいね?」
提督「んー、どうだろうなー」
電「なんなのですかそれ! もう! 絶対、待っててください!」
提督「ははっ、悪い悪い。待ってるよ、待つ待つ」
電「それでいいのです! まったく司令官さんは……」
「言える時が来たら、その時は、電の本気を見せてあげるのです! だから、待っててくださいね司令官さん。約束なのです!」
―――工廠
天龍「オレの名は天龍。フフフ、怖いか?」
提督「(なんかずいぶんスタイルいい子が来たな)」
天龍「おいおい、だんまりかよ。オレの迫力にビビっちまったか?」
提督「(いや、まぁ、怖くはないが迫力はあるな。どこがとは言えないけど)」
電「司令官さん、いつまでもぼーっとしてないであいさつするのです」ジトッ
提督「あ、あぁ、悪い。自分がここの提督だ。よろしく頼む」
天龍「あぁ、よろしくな……っと、喋り方とか気ぃつけたほうがいいか?」
提督「いや、大丈夫だ。そんなに厳しくするつもりはないからな、気楽に頼む」
電「そうなのです。ここは、あっとほーむ?な鎮守府を目指しているのです。ね、司令官さん」
提督「そうそう。俺たちは君たちに助けてもらう側だからな。作戦とかはどうしようもないがそれ以外は、なるべく君たちのしたいようにしてくれ」
電「ですです。なので、気楽になかよくしていきましょう」
天龍「おう。そう言ってもらえると助かるぜ。いきなり喋り方変えんのもキツイからなぁ」
提督「それでいきなりで悪いんだが天龍、君の力を見てみたい。哨戒もかねて、一度出撃してくれないか?」
天龍「いいぜ! 天龍様の実力、見せてやるよ! 行くぞ、電!」
電「分かったのです」
天龍「ま、数は少ねぇけど十分だろ。天龍、水雷戦隊、出撃するぜ!」
―――帰投後 執務室
天龍「艦隊帰投したぜー。まぁそこそこの出来じゃねぇかな」
提督「MVPは……天龍か」
天龍「たりめーだろ! オレが一番強いんだからよ! まぁ、無傷じゃなかったけどな」小破
電「私のほうがわずかとはいえ練度も高いはずなのに……」中破
提督「そうだな。火力はそんなに差があるわけではないが、耐久面がやはり駆逐艦とは違うな。頼もしいぞ」
天龍「提督、よくわかってんじゃねぇか!」
提督「まぁ、二人ともよく頑張ったな。とりあえず入渠と補給をしてきたらどうだ?」
天龍「おう、りょーかい。行こうぜ、電」スタスタ
電「はいなのです」スタスタ
―――廊下
電「私も天龍ちゃんぐらいの耐久がほしいのです……」
天龍「耐久より、駆逐艦なんだから避ける事を意識したほうがいいんじゃねぇか? ってか、天龍ちゃんって……」
電「? 天龍ちゃんは天龍ちゃんなのです。それとも天ちゃんとか龍ちゃんのほうがいいですか?」
天龍「いや、龍田みてぇだなって思っただけだ。天龍ちゃんでいいぜ別に。電のほうがここでは先輩だしな、好きに呼んでくれ」
電「天龍ちゃんも姉妹がいるのですか?」
天龍「まぁ、姉妹っちゃ姉妹だけど、龍田は相棒って感じだな。電にもいるんだろ?」
電「はい。お姉ちゃんたちが三人いるのです。まだ、この鎮守府にはいませんけどね」
天龍「まぁ、気長に待ってればそのうち揃うだろ。寂しいなら、オレを姉貴代わりにしてもいいぜ?」
電「む、寂しくなんてないのです。私のほうが先輩なのですから、天龍ちゃんこそ寂しかったら私のことをお姉ちゃんだと思うといいのです」
天龍「ははっ、そりゃいい。んじゃ、寂しくなったら甘えっからさ、よろしく頼むぜ。姉ちゃん」
電「まかせるといいのです!」
―――工廠
摩耶「よ! アタシ、摩耶ってんだ、よろしくな」
提督「重巡か。よく来てくれたな、摩耶。私がここの提督だ。色々するべきことはあるが、ちょうどいい時間だし食事を取ろうと思うんだが、いいか?」
摩耶「んー、ま、腹が減ってるわけじゃねえけど、いいぜ」
提督「そりゃあよかった。悪いな、こっちの都合に付き合わせてしまって」
摩耶「気にすんなって。食える時に食っとくのは重要だからな。美味い飯期待してるぜ?」
提督「なるべく期待には応えたい、が今日の当番は俺じゃないしなぁ。食堂についたらたぶん分かるから、それまで楽しみにしててくれ」
摩耶「ほー、当番制なのか。間宮とかはいねーの?」
提督「ごくたまに申請出すくらいだな。こんな辺境の、人も少なければ敵も少ないようなところだと予算も少ないし、俺もまだまだぺーぺーだから給料が安くてね、間宮さんを頻繁に呼べるほど金がない。ある程度貯蓄ができたら常駐申請でも出しておこうかとは思ってるけど、基本的には前線が優先されるからあまり期待はしないでくれ」
摩耶「ふーん。なんかよく分かんねぇけど大変なんだな」
提督「君もこれからその大変な鎮守府の一員になるんだぞ?」
摩耶「げ……そういやそうだな。アタシ料理苦手なんだけど」
提督「まぁ、数をこなせば嫌でも上手くなるさ。さ、いい加減食堂に向かうか」
摩耶「おう。そうだな、いつまでもだらだらと喋ってるわけにもいかねぇしな」
―――食堂
提督「今日の昼食当番は……っと」
摩耶「ん? 誰もいねぇじゃねぇか」
提督「当番表によると……初雪か。あいつまたサボったな」
摩耶「あん? じゃーどうすんだよ。アタシもうすっかり飯食うつもりだったのに」
提督「うぅむ。初雪を引っ張り出してきてもいいが、ひきこもると決めた時のあいつは少し厄介だからな」
摩耶「食うつもりになってたのに飯が無い、となるとなんかとたんに腹が減って感じるな」
提督「仕方がない。俺の料理でよければ作るが、それでいいか?」
摩耶「構わねぇぜ。美味いの頼む」
提督「まぁ、男の料理なんてたかが知れてると思うが、過度な期待はするなよ?」
摩耶「わかったよ、んでも不味いのはかんべんな。ってかほかの奴らは?」
提督「うちは暇な時間ができ次第、昼食の時間中に食堂に行って各自食事ってスタイルだからまだ仕事中か、当番が初雪なのを確認してダメだと思って自分で済ませちゃったかだとは思う。一応作ったら放送で呼んではみるけど、俺と二人で食事ってのも覚悟しといてくれ」
摩耶「別に二人でも構わないけどさ、昼食の時間内に各自食事って事は当番の奴はそれより前に作っとくのか?」
提督「そうだな。どれくらい前に来るかは各々違うから一概には言えないが、一時間くらい前には来て調理してるな」
摩耶「うへぇダルぅ、ってかそんなに時間使って大丈夫なのかよ。ほかの仕事への影響とかさ」
提督「全然影響はない。工廠でも言ったが、ここ近辺は人も少ないが敵も少ない。基本的には暇なんだよ、だから余裕のある時間の使い方してもほとんど問題が無い。もちろん食事の当番とかは考慮したうえで出撃や遠征、その他の仕事を割り振ってるけどな」
摩耶「ま、この鎮守府については追々教えてくれよ。今はとりあえず飯だ、飯!」
提督「今作ってるから少し待っててくれ」
―――食事中
摩耶「ん、けっこー美味いじゃん! やるな、提督」モグモグ
提督「そうか? それならよかった」
摩耶「おう。よっぽど不味くなけりゃ文句言うつもりもなかったけど、割と美味いじゃん。遠征行ってる奴らは仕方ねぇけど他の奴はこれ食えないんだから残念だな」モグモグ
提督「こんな簡単な料理でそこまで言ってもらうとなんか申し訳ないな。あと楽しく食べてるところにこう言うのもなんだが、口に物が入っているときに喋るのは行儀が悪いぞ。食べるか、喋るかどっちかにする。女の子なんだからその辺はしっかりしときなさい」
摩耶「わりーわりー、いやぁ予想以上に提督の料理が美味いからさすぐにでも感想を言いたかったんだよ。まぁ、行儀は悪いな。感想の時間はお終いだ! 食うぞー!」
提督「あんまり意気込まれてもおかわりなんて大して用意してないからな?」
摩耶「……」モグモグ
提督「……(食べ方が綺麗だな。荒っぽい喋り方をしている割に、というと摩耶に失礼だけど似たような喋り方の天龍とか深雪は食べ方が荒いからな、意外だ)」ジー
摩耶「……」ングングッ フゥ トン
提督「……(水を飲んだ後のグラスの置き方も静かだ。天龍なんて毎回机が揺れるぐらい強く、置くというよりもはや叩き付けて電に怒られているのに)」ジー
摩耶「……いつまでも見ていないで、自分も食べろよ提督」
提督「あ、あぁ、すまん。少し見惚れていた」
摩耶「は、はぁ!? 何急に口説いてきてんだよ!」
提督「いや、そういうことではなくて。今この鎮守府にいるのが駆逐艦と軽巡だけで、どちらもまだ子供っぽいのと荒っぽいのが多いからな。そんなにきれいな食べ方をしている子を見たのが久しぶりでつい、な」
摩耶「んー、まぁ許してやる! でも今後いきなり女を見つめたりそうやって不用意な発言すんなよ? 男に免疫がない奴だったら張り手の一つや二つ飛んでくんぞ」
提督「肝に銘じておく。はぁ、他の子にも似たようなことを言われているというのに俺は……」ブツブツ
摩耶「はいはい、反省会はやめやめ。せっかくの美味い飯が不味くなっちまう。とっとと食おうぜ」
提督「それもそうだな。冷めないうちに食べてしまおう」
摩耶「そーそー。っとそういや、さっきここにいるのは駆逐艦と軽巡だけって言ってたけど戦艦とか空母は?」
提督「まだいない。現状うちの最高火力は君だ」
摩耶「硬い敵が来たらきついんじゃねぇのか?」
提督「摩耶がしっかり当ててくれればどうにかなるさ。まだこの辺には敵空母は確認されてないしな」
摩耶「かー、責任重大だねぇ。ま、燃えても来るけどさ」
提督「頼りにしてるぞ?」
摩耶「おう! 摩耶様に任せときな! って言ってる場合じゃねぇ! 飯が冷めちまう! 提督も早く食べろよ」
提督「あぁ! 忘れてた! んぐっ、もうすでにぬるいっ! くっそぉ失敗した」
摩耶「……次食う時は気を付けようぜ」
提督「……そうだな。次は、気を付けよう」
摩耶「ただ次は、他の奴らもいるだろうし話が弾みそうだよな……」
提督「あぁー……」
―――食堂
瑞鶴「ねぇ、翔鶴姉?」
翔鶴「ん? なにかしら?」
瑞鶴「翔鶴姉って、練度高いじゃない?」
翔鶴「えぇ、訓練も欠かしていないしそれなりに戦闘もこなしてきてるから、そこそこではあるわね」
瑞鶴「てことは、ここの鎮守府に来てからそれなりに長いんでしょ?」
翔鶴「そうねぇ、赤城さん達ほどじゃないけどそれなりには長いわ」
瑞鶴「ふと気になったんだけどね、この鎮守府で一番古株の空母って誰なのかなって」
翔鶴「また、いきなりどうして?」
瑞鶴「世間話とかで、初期艦は電ちゃん、初軽巡は天龍さん、初重巡は摩耶さん、初戦艦は、えっと……んと……」
翔鶴「霧島さん」
瑞鶴「そう! 霧島さん! って聞いたりするんだけど初空母っていうか、初めての航空戦力って聞かないから気になっちゃって」
翔鶴「そういえば、私も聞いたことないわ。順当に考えれば軽空母の誰かか、千歳さんか千代田さん、それか赤城さんかしら?」
瑞鶴「どうしても気になるし、聞き込みに行こうかなぁー……」
翔鶴「まぁ、そんなに気になるなら聞いてみたらいいんじゃない?」
瑞鶴「一人だと緊張するかもなぁ……誰か一緒に行ってくれないかなぁ……」チラチラ
翔鶴「まったく、瑞鶴ったら。ついて行ってあげるわよ」
瑞鶴「やった! 翔鶴姉大好き! それじゃあさっそく軽空母の誰か捕まえよう!」ガタッ
翔鶴「瑞鶴? 食器を片付けるのが先でしょう?」ゴゴゴ
瑞鶴「あ、わ、わかっ、分かってるからぁ! だ、だから凄むのやめよう?」ビクビク
―――廊下
瑞鶴「(翔鶴姉は滅多に怒らないから、たまにああやって凄まれるとすごく怖い。それを改めて感じた。感じたくなかった)」
翔鶴「探し始めたのはいいけど、軽空母の皆さんは練度上げの引率で結構忙しかったりするから、なかなか見つからないわねぇ」
瑞鶴「忙しいって言ってもこの鎮守府基準で、だけどね。ブラック鎮守府、だっけ? とか呼ばれるところでは軽空母の人たちと潜水艦の皆は地獄を見てるって話だし」
翔鶴「そうね。うちの鎮守府の潜水艦の子たちは提督がかなり大切にしてるものね」
瑞鶴「そうそう。服を含めての艤装だから仕方ないし、なんともないように体が出来てる言っていっても、ずっと水着なんて体が冷えたらどうするんだ! って潜水艦の子たちに無理やり上着着せるし、しょっちゅう体調を気にしてるし。過保護すぎよね」プンプン
翔鶴「あらあら、瑞鶴は潜水艦の子たちが大切にされてるのが不満なの?」
瑞鶴「そうじゃないよ! そうじゃないけどぉ……他の子たちにも、もっと優しくしたほうが良いっていうか……もっと私にもかまって欲しいっていうか……」ブツブツ
翔鶴「(瑞鶴は提督にかまって欲しいのね。まだまだ甘えたいのかしら)」
龍驤「おー、つるつる姉妹。そないなとこでぼけっとしてどしたん?」
鳳翔「つるつる姉妹って何ですか? 龍驤さん」
龍驤「翔鶴も瑞鶴も名前に鶴が入ってるやん? だから合わせてつるつる姉妹。コンビ名みたいで呼びやすいやろ?」
鳳翔「失礼じゃないですか? それ」
龍驤「そんなことないって、二人も気に入るって。なぁ翔鶴、瑞鶴?」
翔鶴「え? あら、龍驤さんに鳳翔さん。いらっしゃったんですね」
龍驤「あれ? もしかして気づかれてなかったん?」
鳳翔「そうみたいですね。瑞鶴ちゃんもずっと何かつぶやいてますし」
翔鶴「あ、お二人に聞きたいことがあるんです! お時間よろしいですか?」
龍驤「ええで、ええで。ウチ、かわいい後輩の頼み断るような酷い先輩やないし。鳳翔さんもええやろ?」
鳳翔「ええ。取り立てて急がなければいけない用事もありませんから」
翔鶴「ありがとうございます。ほら、瑞鶴?」
瑞鶴「うへへ……ダメだよぉこんなところで……」ニヤニヤ
翔鶴「瑞鶴? しゃんとなさい!」
瑞鶴「……はっ! 私は何を……って龍驤さんに鳳翔さん!? いつの間に?」
龍驤「トリップするほどって、何考えてたんやろな」ヒソヒソ
鳳翔「大方、提督の事じゃないですか? 耳真っ赤ですし」ヒソヒソ
龍驤「はー、瑞鶴もお熱なんか。やっぱ司令官は色男やなぁ」
瑞鶴「へ? 提督さんがどうかしたんですか?」
龍驤「いやいや、気にせんといてこっちの話やから。んで? なんか聞きたいことがあるんやろ?」
瑞鶴「あ、そうなんです! あの、この鎮守府の一番の古株の航空戦力って誰なのかなぁって」
鳳翔「どうしてまたそんなことを?」
瑞鶴「かくかくしかじかで」
龍驤「ほー、それでそんなことが気になったんか」
翔鶴「はい。それで、お二人は何か知ってますか? っていうかもしかするとお二人のどちらかが?」
龍驤「ウチはちゃうで」
鳳翔「私も違いますね。というかこの鎮守府で一番新人の軽空母は私ですし」
瑞鶴「え! そうなんですか!?」
鳳翔「えぇ。私が来た時にはもう、他の軽空母はもちろん赤城ちゃんも加賀ちゃんもいましたから」
瑞鶴「加賀ちゃんて……フフッ。って、違う違う。ていうことは龍驤さんより前に来てた人かぁ」
龍驤「千歳と千代田は、ウチよりあとやからちゃうね」
翔鶴「となると、残った方は……」
龍驤「祥鳳、隼鷹、飛鷹やね。あと一応航空戦艦の四人もウチより先におったな」
瑞鶴「あぁ! そういえば航空戦艦の人たちもいた。すっかり忘れてた」
鳳翔「その反応、扶桑ちゃんの前ではやらないでくださいね。あの子落ち込んじゃうから」
瑞鶴「はい、肝に銘じます。協力ありがとうございました」
龍驤「気にせんでええよー。そういえば航空戦艦ならさっき工廠におったで。珍しく四人で固まってたから早く行くとええんちゃう?」
瑞鶴「本当ですか? 急がなきゃ! それじゃ、さよなら!」ダッ
翔鶴「あぁ! 瑞鶴、廊下でそんなにスピード出しちゃだめよ! それでは、ありがとうございました」タッタッタッ
龍驤「気ぃ付けてなー」
鳳翔「……そういえば聞かれませんでしたけど、龍驤さんは一番の古株が誰か知らないんですか?」
龍驤「いや、気にしたこともなかったし知らんなぁ。まぁ、候補としては残った軽空母の誰かか航空戦艦の誰かか、赤城あたりちゃうん?」
―――工廠
瑞鶴「さて、と。どこかなー」
翔鶴「あそこじゃない? ほらあそこに扶桑さんみたいな後姿が」
瑞鶴「え? でもあんなキラキラしたオーラ纏った扶桑さん見たことないし、よく似た別人じゃない?」
翔鶴「いえでも、やっぱりあの後ろ姿は扶桑さんよ。声をかけましょう?」
瑞鶴「翔鶴姉がそういうなら。すみませーん」
扶桑「ん? あら、翔鶴さんに瑞鶴さん。どうしたんですか?」キラキラ
瑞鶴「いやぁ、扶桑さんたちが四人で集まってるなんて珍しいなって思って声かけてみました。何してるんですか?」
翔鶴「(扶桑さんが見たこともないくらい明るい雰囲気を醸し出してるわ。良いことでもあったのかしら)」
扶桑「伊勢と日向がね、航空戦艦としての戦い方について話し合わないかって誘ってきたの」キラキラ
瑞鶴「珍しいですね。いつもはそれぞれ扶桑型、伊勢型で別れてるのに」
伊勢「別に仲が悪い訳じゃないからね。それに日向が数少ない航空戦艦の仲間なわけだし一緒に話したほうがきっと身になるって」
瑞鶴「へぇ、そういうのって山城さんが、扶桑姉さまと話し合うのは私だけでいいんです! って突っぱねてる印象がありました」
山城「あなたの中の私は一体どうなっているのか詳しく聞いてみたいわ」ワナワナ
瑞鶴「ひぅっ! そ、その、悪い意味じゃなくてっ」アセアセ
翔鶴「山城さんはとってもお姉ちゃんっ子だから焼きもち焼いてるんじゃないかって事よね?」
瑞鶴「そう! そうなんです! 翔鶴姉の言う通り!」
山城「……まぁ、納得してあげるわ。もちろん、いつもは扶桑姉さまと二人でしてた話し合いに伊勢と日向が加わるって聞いて少し思うところはあったけど、別に二人のことは嫌いじゃないもの。元々は妹になる予定だった訳だし邪険にはしないわ」
翔鶴「山城さんって優しいんですね」
山城「べ、別に私が優しい訳じゃないわ。だって当たり前でしょう? 姉が妹の頼みを聞くのは」
瑞鶴「(山城さんって重度のシスコンって言われてるけど、お姉さんだけじゃなくて妹もかなり好きなのね)」
翔鶴「扶桑さんがいつになく明るいのも伊勢さんたちが頼ってきたからなんですね?」
扶桑「そうなの! もう私嬉しくて嬉しくて!」キラキラ
瑞鶴「扶桑さんって伊勢さんたちに対抗意識燃やしてませんでしたっけ」
扶桑「もちろん負けたくないって思ってるわよ? でもそれとこれとは別。私がここで意地を張って二人に何もしないで勝っても、格好悪いじゃない。そんなの勝ったとは言えないし、何より鎮守府の為にならないわ」キラキラ
「四人で話し合って、互いを高めあって、そのうえで私は伊勢や日向、もちろん山城にも勝つ。そうじゃないとこの子たちの姉は名乗れないもの」キラキラ
山城「その通りです! さすが姉さまです!」
瑞鶴「嬉しいにしても、なんでこんなに前向きなのかな?」ヒソヒソ
翔鶴「妹たちの前で格好いい姉であろうとしてるのよ。素晴らしい心構えね」ヒソヒソ
瑞鶴「そうかなぁ」ヒソヒソ
翔鶴「ところで瑞鶴、聞かなくていいの?」ヒソヒソ
瑞鶴「? 何を?」ヒソヒソ
翔鶴「ここまで来た訳を忘れたの?」ヒソヒソ
瑞鶴「ここまで来た訳……あっ!」
伊勢「ひゃっ! 急に大声出してどうしたの?」
瑞鶴「あ、すいません。その、聞きたいことがあって」
伊勢「ん? 何々?」
瑞鶴「ここの鎮守府の最古参の航空戦力の方って誰か知ってますか? もしかして四人のうちの誰かだったりします?」
伊勢「最古参? 一応、この四人で一番古株は日向だよね?」
日向「そうだな。まぁ、すぐに扶桑、伊勢、山城、と来たからほぼ誤差みたいなものだがな」
瑞鶴「一番初めに改装されたのは?」
日向「それもほぼ同時期だが、私と伊勢のほうが必要な練度が低いからな。同日中に改装されたが一応伊勢のが早かったな」
瑞鶴「となると伊勢さんが最古参?」
伊勢「ううん。私たちが改装される頃にはもう祥鳳さんがいたかな」
瑞鶴「祥鳳さんのほうが早いのかぁ。あ、隼鷹さんと飛鷹さんが着任したのは……」
日向「扶桑と山城の改装が終わった後だな」
瑞鶴「あ、じゃあ祥鳳さんが最古参だ!」
日向「残念ながらそれも違う」
瑞鶴「へ? どうしてですか?」
日向「私たちが戦艦だった時に祥鳳が来たが、私が着任した時にはもう空母がいたんだよ」
翔鶴「ということは残ってるのは赤城さんと加賀さんだから、赤城さんかしら?」
伊勢「赤城は割と後だね。飛鷹と隼鷹が来てからだから」
瑞鶴「じゃあ加賀さんが最古参なの!?」
日向「あぁ、珍しいことにね。ここの初の航空戦力は正規空母なんだ。うちの提督は豪運の持ち主らしい」
瑞鶴「えぇぇぇえぇぇ!!」
―――執務室
エェェェェェ!
提督「なんか、叫び声が聞こえたな」
加賀「先ほど廊下を歩いていた時に瑞鶴が何かを聞いて回ってましたからそれでしょう」
提督「瑞鶴のことをよく見ているんだな」
加賀「えぇ、大事な後輩ですから」
提督「なんか加賀さんも変わったな」
加賀「どこがですか?」
提督「なんか、もっと棘があった。私が何とかしなくちゃって必死だったっていうか」
加賀「それは……提督が悪いわ」
提督「なんで!?」
加賀「初対面で、だらけ切ってアイスを頬張っていれば誰でも、あぁコイツはダメだ。頼りにならない、って思うはずよ」
提督「あれは、その、天龍が空母レシピで建造したなんて知らなかったし。まさかそれが一発で正規空母作るとは思わなかったしでちょっと気を抜いてたっていうか、なんていうか」
加賀「そもそも、その時点で連絡がちゃんと行われていません。やっぱり駄目じゃない」
提督「すいません。まぁ、今は加賀とかがちゃんとやってくれるから安心してるよ」
加賀「まったく。……でも、頼られるのもやぶさかじゃないわ」ボソッ
提督「まぁ、負担かけ過ぎるのもあれだし。あんまり頼らないように頑張るよ」
加賀「……馬鹿」
提督「なんで今罵倒したの加賀さん」
加賀「知りません」プイッ
提督「あー、俺またなんかやらかした? これだから俺は」
加賀「まぁ、提督も頑張るようですし、期待してるわ」
―――執務室
コンコン
提督「ん? 入っていいぞ」
霧島「失礼します」
金剛「提督ぅー! 今日の秘書艦の私が来たヨー!」
提督「ん? 今日の当番は霧島じゃなかったか?」
霧島「はい。そうなのですが、金剛お姉さまがそれはそれは酷い有り様で泣きついてくるものですから」
提督「代わってやったと?」
霧島「はい」
金剛「そもそも当番が回ってくるのが遅すぎるのが問題デース! それに、当番の日が来てもたった一日じゃ提督と十分なcommunicationも取れまセーン!」
提督「秘書艦は基本的に執務の補佐であって、俺との交流の機会ではないんだが」
金剛「仕事なんてあってないようなものなんだからそういうことは言っちゃNo! デスヨー? それに、この鎮守府の秘書艦の当番は提督とのsweet timeを過ごすための制度だってみんな思ってマース! ねー、霧島?」
提督「そうなのか? 霧島」
霧島「まぁ、その、大多数がそう考えていることは否定できません」
提督「そうだったのか……」
霧島「仕事が少ないですから、やらなければいけないごく少量の仕事が済んでしまえばあとは司令と過ごすだけですからね。指令と過ごす為の物と思っているにしろ、いないにしろ休める日としては間違いなく認識されていますね」
金剛「ネー! ほら提督、私の言った通りデスヨー! ダ・カ・ラぁー! 今日は甘ーい時間を過ごしまショー!」
提督「わかったから、机越しに抱き着こうとするな。数少ない書類が駄目になる」
霧島「まぁ、そういうことですので金剛お姉さまをお願いします」
提督「悪いな霧島」
霧島「いえ、私も金剛お姉さまのことは好きですから。あそこまで頼まれれば聞き入れます。あ、でも埋め合わせは今度、お願いしますね?」
提督「あぁ、いつもと同じ……だな?」
霧島「はい。楽しみにまっていますね。それでは失礼しました」
ガチャ バタン
金剛「むぅー……」
提督「何をむくれているんだ」
金剛「なんだか提督と霧島が通じ合っていてモヤモヤしマース」
提督「そりゃあなんだかんだ言って初めての戦艦だからな。かなり長いこと一緒にいるし気心は知れてるんじゃないか」
金剛「なんですか『いつもの』って! 気になりマース! すっごく気になりマース!」
提督「んー、あれは霧島とだけの約束だからいくら金剛でも教えられないな」
金剛「むー! ズルいズルいズルいデース! 教えてくれないなら私も提督とのpromiseが欲しいデース! それもとびっきりspecialな奴を!」ジタバタ
提督「お前たちの年齢がどうなってるかはよくわからんが、良い図体してジタバタと床の上で暴れるな」
金剛「提督は戦艦の中で誰が一番好きなノ!?」
提督「急にどうした。んー、一番かぁ……序列をつけるようなことはしたくないが強いて言うなら……」
金剛「ふんふん、強いて言うなラー?」
提督「いや、でも、金剛を前にして言うのはなぁ」
金剛「(ンンッ! 少し恥ずかし気な顔! これはもしかするといい感じデスカー?)」
提督「霧島かな」
金剛「モォー!」
ほわほわするね~。
こういうの好きだよ~。
これからに期待です!頑張ってください!
電ちゃんの乙女なところがグッと来ますぜ
>>1
コメントありがとうございます
好きだと思っていただけたようで、良かったです。
>>2
コメントありがとうございます
期待していただけるなんて、嬉しいです。精進していきます。
すごく気をつかって書かれてるんだなぁって感じます、応援させてもらいますね!
>>5
コメント、そして応援ありがとうございます。
なるべく気を使っているのはそうですが、言われると少し恥ずかしいですね。