2017-02-15 23:49:26 更新

概要

SS処女作になります 敢えて加筆修正はせず残しておくので、見苦しい点などあると思いますが、暇潰しにでも読んでいただければ幸いです♪


前書き

注意 ・自己解釈設定有り ・悽艦キャラ崩壊有り(?) ・詩的表現過多 ・微グロ(?) ・伏線敷設、回収初心者




単縦陣の最後尾へ、左後方からの直撃弾。


爆発と同時に強烈に弾き飛ばされ、大きく宙を舞う。


「八時の方向、いつ出てきたっぽい!?」


「吹雪ちゃんがっ!!!」


「shit!ここは撤退ネ、ブッキー!必ず助けに戻りますヨっ!」


混濁する意識が、有能な旗艦が自分を切り捨て、部隊を優先するという正しい行動をとったことを認識した。


砲撃の雨の中を撤退していく仲間の姿を眼で追ううちに、体が激しく水面へ叩きつけられる。


初撃で激しく損傷した艤装は、着水の衝撃でパージされてしまった。


私は丸腰だ。


やがて発砲音が聞こえなくなると、誰かが水面を移動してくる音がする。


「ヨォ♪」


仰向けで横たわる私の視界に映ったのは「悪魔」とも称され、多くの提督を恐怖に貶めた凶悪な戦艦、レ級。


何故この海域に?そう悩む間も無くレ級が、砲身を胸部装甲に押し当ててくる。


「嫌だ……嫌だよ……」


そんな言葉が咄嗟に口をついて零れた。


しかし、その言葉とは裏腹に私の心境はとても穏やかだった。


気絶しそうな程の痛みが引き、『私のような未熟な艦ならいくらでも代わりはいる』と冷静に考えられるのは、死を受け入れている紛れもない証拠だ。


「言イ残スコトハ、ソレダケカ?」


微かに頷いただけだが、伝わったらしい。


「ホォ、中々潔イナ。ジャ、マタ会オウ」


冷酷な筈のレ級の、気さくな笑みに意外さを感じるも本人は気がついていないようだ。


微笑ましく思うのも束の間、レ級の大口径砲が火を吹き私の胸部装甲に大きな風穴を穿つ。


鮮血が散り、レ級の頬を紅く染めるも不思議と痛みはなかった。


「ヨシ……オ前ラ!次行クゾ!」


私たちを強襲した部隊が去っていくと、遺された私の体は完全に水に沈んだ。


全てが海色に染まっていき、海が胸部の孔を塞いだ。


全身に世界の全てが満ち満ちていく。


空が、水面が、離れていくなか、誰かの歌が聞こえる。


そうだ、このまま還ろう。


還ればまた、あそこへ帰れるから。


受け入れることも勇気なんだ。


体が沈んでいく 深く 深く


意識が沈んでいく 深く 深く




瞼を通して光を感じる。


何処か見覚えのある天井、此処はどこだろうか。


先程の傷は完全に癒えている。


風穴すらも塞がっている始末だ。


長い間寝ていたのだろう、軋む体を起こすと四方を囲む白いカーテンが目に入る。


服が薄い青の病衣に替えられていることも相まって、まるで何処かの医務室のようだ。


ふと、遠くからひたひたと濡れた足音が聞こえる。


耳を澄ませていると、その足音は私のベットの前で止まった。


軽いレールの音と共に薄布が開け放たれる。


現れたのは、私を沈めた存在。


オーバーサイズのフードを被り、軽薄な笑みを張り付けた青白い顔。


レ級そのものだ。


「マタ会ッタナ?」


わざとらしく、それでいて本心からのようにも見える笑顔に呆れを感じるも、こうなることがわかっていたかの様に驚きや恐れは感じなかった。


「自分ガココニイル理由、解ルカ?」


私が首を横に振ると、彼女は当然だと言わんばかりに腕を組んで頷く。


「マ、ソウダロウナ。オ前ノ死二顔ヲ見タトキ、コウナルンジャナイカトハ予想シテタンダケドナ」


理由が解らず首を傾げると

「説明シテヤルヨ。口下手ダケド勘弁シテクレナ?」

と、色々なことを教えてくれた。


居眠りしてしまいそうなほど長ったらしく。


彼女の話を要約すると


・深海悽艦は海で散った未練を持った魂が具現化したもので、本来の体が海へ沈み、そこから誕生している


・未練を叶えて沈んだ深海悽艦は魂として海へと還元され、新たな命として生まれ変わることが出来る


・未練なく散った魂は、その場で海へ還元される


ということだった。


まとめるのにも一苦労だったが。


しかし、それでは説明がつかないことがある。


何故私は深海にいるかだ。


アア、ソレハナとやはり答えてくれる彼女。


「オ前、沈ム時二『海へ還りたい』トデモ思ッタンダロ?」


言い当てられた私は、動揺を隠しきれず表情にまでそれを出してしまった。


「図星ダナ?似タ事ガ有ッタンダヨ。ソイツハ結局深海悽艦ノ体ヲ手二入レテ、望マナイ形デ未練ヲ叶エルコトヲ強イラレテイルミタイダガナ」


肩をすくめ、呆れたように言う彼女の瞳は濡れた憂いを帯びている。


「兎二角、未練ノ無イオ前ノ魂二用ハ無インダ」


一歩近付いた彼女は、固めた右の拳をとんっと私の胸に当てる。


「魂ノ器、ツマリ体ト艤装ハ治シテアル。早イ所此処ヲ出ロ」


拳を解いた、冷たく優しい指が髪を伝い、撫でるように頬に触れる。


「幸セ二ナ」


不可解な彼女の言葉が、麻酔のように私の思考を濁らせる。


曖昧な感覚の中、私の体は、主の知らないままに動いた。



水面で照り反す陽光が、痛いほど網膜に刺さる。


見間違えることもない、ここは鎮守府港内だ。




「港内に艦影確認!これは……吹雪!?」


参謀も兼任する通信管制官の叫びに、意識を蝕んでいた睡魔が消し飛ぶ。


「どういうことだ!?吹雪は沈んだ筈じゃないのか!」


突然の入電に、必要以上に取り乱していた妹から通信機をひったくる。


「識別通信にも応答、目視でも姿が確認できますが、吹雪に間違いありません!」


困惑を滲ませる大淀の報告に、偽りの色を感じられないのは、それが事実であるからだろう。


「私が向かう。混乱は避けたい、まだ情報は流すな」


逸る気持ちを抑え、歩き出す。


万が一に備えて得物に弾を込め直し、それを使わないことを願いながら。



「吹雪ちゃんっ!」


予想通りだ。


私の帰りを待っていたであろう睦月が、艤装を外してきた私に飛び付いてくる。


心配かけたことを謝る。


彼女が首を横に振ると、動きに合わせて雫が舞った。


「良いんだよ、帰ってきてくれたんだもん♪」


重い愛にも感じられる一言を漏らした彼女の顔は、心なしか如月を喪った時よりも痩けているように見える。


「無事だったのか、吹雪」


突然、凛と響く声。


見知った艦のものである。


提督不在の今、秘書艦と提督の代理を兼ねる大型戦艦、長門だ。


曖昧な笑顔で誤魔化そうと声を出す。


「しかし、お前は本当に吹雪か?」


言葉を遮られ、艦娘各々に支給される拳銃の銃口と共に、冷徹な言葉が突き付けられる。


唐突すぎる質問に、睦月までもが体を硬直させた。


「金剛から、お前は沈んだという報告を受けている。お前は深海悽艦ではないのか?」


刀剣のように鋭い眼光に、本能的な危険を感じる。


「そんなことありません!吹雪ちゃんは吹雪ちゃんです!」


私が言葉に詰まった直後、涙の跡が強く残る睦月が叫んだ。


「だが…………」


沈黙が重たい。


彼女も仲間のため、本能的な勘を頼りに見定めているのだろう。


「そうだな、私もそう信じたい。二人とも、疑ってすまなかった」


彼女が得物を納めると同時に、重圧的な雰囲気が霧消する。


先程とは一転、包み込むように柔らかい笑顔を浮かべる彼女は、睦月もろとも私を抱き締めた。


「お帰り、吹雪。お前にどんなことがあったとしても、お前は私の大切な仲間だ」


優しい囁きに、思わず視界が霞んでしまう。


「疲れただろう、今日はゆっくり休むといい」


帰還の喜びが涙となり、関を切ったように溢れ出す。


「行こう、吹雪ちゃん…♪」


睦月に支えられ、ドックへと向かう。



その夜、軽い入渠の後の私を待っていたのが、全所属艦による祝福だったのは私にとっては想定外のサプライズであった。




私が轟沈を知り、再び陸にあがることが叶ってから数日。


強制的な休暇を終えてから初めての出撃命令が下った。


内容は至極単純、鎮守府沖近海に確認された潜水艦隊を迎撃せよとのことだ。


編成は川内を旗艦に姉妹艦の2人と夕立、睦月、そして私を加え、神通と私以外は対潜魚雷を装備したよくある水雷船隊である。


天候は曇り、雨こそ降っていないものの厚い雲が空に灰色を差し不安を掻き立てる。


「許可を確認。川内、水雷船隊!出撃します!」


明るい声色とは裏腹に、眉の釣り下がった表情の川内と目が会う。


当然のことであろう。


海は次第に荒れ始め、出撃するタイミングに納得がいかなければ不安になるのは目に見えている。



表情の変化に乏しい神通さえもが不安を煽る様な表情をするなか、作戦海域に到着した。


私たちを待ち構えていたかのように現れた敵は、お決まりの如く私たちの不安を具現化させる。


砲身をこちらに向けて構えたのは、戦艦を中心とする主力艦隊。


件のレ級の姿が見えないとはいえ、水雷船隊、ましてや対潜戦闘重視の兵装では到底太刀打ちなどできるはずもない。


「敵主力艦隊と思われる一団と遭遇……長門、どうすれ……」


呟くように弱々しい川内の交信は、グシャリと鈍い音で掻き消される。


「どうした川内、応答しろ!……やむを得ん。全艦帰投しろ!」


無線越しにでもわかる長門の憤り。


それは果たして私たちへ向けたものか、それとも敵に向けてのものか。


「吹雪さん、行きますよ!」


川内と、川内を介抱しようとして被弾した那珂を神通が。装備が原理由で反撃すらできず、成す術なく大破した夕立と睦月を私が支え、低速ながらも後退を始める。


敵は深追いする気は無いようで、次第に砲撃は落ち着き始めた。


しかしそんな状況での「鎮守府は目の前」という慢心が更なる被害を呼ぶ。


速度を緩めてしまった神通の足元で、私との間に差し込まれるようにして放たれた魚雷が炸裂。


神通は膝を折り、姉妹諸とも倒れ混んだところへ、悪夢のように精密な砲撃が飛来する。


周囲の大気すら焦がす熱。


視界を覆い尽くす閃光。


絶叫さえ呑み込む爆音。


被弾した彼女達を避けて進んだ私達でさえも大きく吹き飛ばされる。


天高く舞い上がった鉢金が、主を追うように水面へ吸い込まれていった。


黒煙が晴れて尚大気が燻るそこには、彼女たちの姿は無い。


全てが焔に消えるその刹那、私が見たものは互いに抱き合う3つの影だった。




「貴様は一体何者なんだ……」


普段と何ら変わりの無い長門の声は、かえって抑圧された憤怒を意識させる。


「ならば何故、貴様には一切の損傷が無かった?被弾はおろか、熱傷すらも皆無に等しかっただろう?」


私が口を開いた途端、誤魔化しようのない事実を突きつけられる。


仲間を探し周囲を見回すも、夕立は大きな怪我を負い入渠中、睦月に至っては直接の被弾箇所への熱傷で左腕の機能を完全に失った挙げ句、その喪失感から言語障害すらも患ってしまったと聞いた。


当然ながら味方などいるはずもなく、私は負の感情の籠った視線に晒される。


「軍規に反したとして、貴様は暫く個室での謹慎処分とする。近いうちに行われる大規模作戦の後にもう一度話し合おう」


そう言い残すと、長門達は会議室を後にした。


事実上の死刑宣告を叩き付けられた私は一人取り残される。


胸を支配するのは虚空の様にただただ広がる絶望と、あの日の胸に感じた海の感覚だけだった。



私が一人部屋へ隔離され、演習はおろか一切の訓練にさえ参加を禁じられてから数週間。


大規模進行作戦も終わりに近付いた頃、誰もが出払った鎮守府には叫び声がよく響く。


「港内に大型の艦影確認、戦艦と見られます!迎撃要因が不在です!」


大淀と共に、ゆったりとした速度で近付いてくる姿に目を凝らす。


「陽動か?それにしては不自然すぎるタイミングだな……」


戦闘は落ち着いたらしい、疎らな砲撃音を背景に、はぁ…と吐息が聞こえる。


「隠れる様子もなく、単艦での接近のため設備の破壊ではないと思います。無人兵装で応戦してはいますが、上陸は避けられません。どうしますか?」


敵の正確な姿を認めた私の体は、主の命令すらを拒むように硬直した。


「仕方ないな。吹雪、時間を稼げ」


苦々しい声での命令に、無言で頷く。


幸い、作戦海域はさほど遠い距離ではないのでそれまでに持ちこたえろとのことであろう。


ドックへ駆け込んだ私は震える腕を艤装で隠した。



「目的は時間稼ぎです、突出は控えてくださいね」


業務的ながらも優しい口調に僅かだが呼吸が落ち着く。


「ヨォ、コレデ三度目ダナァ?」


親しげに近付いてくるレ級。


私は、艤装すら展開していない彼女へ狙いを定める。


「ソウダ、ソレデイイ」


笑っている。


兵器の軋む音に、目を細めて笑っているのだ。


「吹雪さん?聞こえますか、吹雪さん!?」


応答の無いことを不審に感じた大淀の声も、最早煩いとしか感じられない。


ほぼ無意識の内に通信を切り、言葉の意味を問う。


「オ前ヲ救イニ来タカラサ」


表情を一切変えずに続ける。


「オ前ハ今、信用ヲ失ッテイル。解体ヲ免レナイノモワカッテイルンダ」


身構えていたことが幸いし、動揺は隠せた筈だ。


「オ前ノ信用ガ取リ戻セテ、私ノ罪滅ボシニモナル筈ダ。サァ……」


今後の未来が見えた私は、いよいよ理性を崩れさせ始める。


彼女は、何かを抱き締めるように大きく腕を広げた。


「私ヲ殺セ」


彼女は敵なのか、何故私を知っているのか、罪滅ぼしとはなんのことなのか、無数の疑念が思考を蹂躙する。


止まらない思考は更に絡まり、感情の糸を巻き込んでがんじがらめにする。


止まってはいけない、自らを縛る糸を引き裂くように私は吠える。


頭が働かなくなる前に、体が私の意思で動かせる内に、心が壊れて歪む前に。


放たれた魚雷が彼女を強く打ち付ける。


「ガ、ァ……」


止めの12.7cm方が彼女の胸を貫いた。


形容し難い色のに濁った飛沫に身を染め、私は膝から崩れ落ちる。


「アリガトナ……」


光に溶けるように消える彼女は、苦痛の中でも笑顔を浮かべていた。


恋人出もない、友人ですらない筈の彼女、しかし虚無感だけが残る。


「吹雪、凄かったっぽい!」


中破姿の夕立の声で現実に引き戻される。


「吹雪はやっぱり、いつもの吹雪だったのね!」


少し大人びた口調で、一部始終を見られていたことを告げられる。


「レ級を沈めるなんて凄いっぽい!」


沈める? あれが沈めたように見えたのだろうか。


「さぁ、一緒に帰るっぽい!」


曖昧な肯定をすると、怪我を負った仲間に囲まれる。


中破、大破で早く帰投したメンバーのようだ。


「かっこよかったわよ♪」


「み、見直したわ…///」


「かっこよかったねぇ、惚れ惚れするねぇ!」


普段なら絶対と言って良いほどの麗句の群れも、今の私には響かない。


私はそのまま、惚けたまま帰投した。



その後私は調子を取り戻し、今では旗艦に選ばれるほどになった。


胸に空いた穴は、時間が埋めてくれた。


私はそれでもいまだに、あの経験を完全に呑み込むことが出来ていないままである。


後書き

遂に完結出来ました! 学業が理由で更新が出来なかった時期もありましたが、失踪せずにやりきることができて良かったです! 課題を挙げるとキリがありませんが、とてもいい経験になったと思います。 これからも精進して参りますので、何卒よろしくお願いします♪


このSSへの評価

2件評価されています


金属製の餅さんから
2017-02-15 23:54:48

のんび~りさんから
2016-08-10 18:50:00

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金属製の餅さんから
2017-02-15 23:54:48

SS好きの名無しさんから
2016-10-07 00:40:26

SS好きの名無しさんから
2016-10-05 22:23:01

のんび~りさんから
2016-08-10 18:50:02

このSSへのコメント

2件コメントされています

1: のんび~り 2016-08-10 18:52:02 ID: vgCuHFZI

いよっしゃぁ!!

これだからお題投稿はやめられないぜ!

私の考えた(もちろん脳内で)話とどう違い、どんな所が同じなのか…ワクワクが止まりません!

あ、ティッシュ用意しておきますね。

2: kapeli 2016-08-10 18:57:27 ID: MHcnDn8b

いいお題の提供ありがとうございます!

受験生ですが、取り敢えず頑張りますので失踪しないように見張ってやってくださいw

拙い文章ではあると思いますが、応援よろしくお願いします♪


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