艦隊これくしょん?とある魔術師の毎日その2
前回の続き
今回はストパンとか、エスコンとか参戦。
注意事項は前回を見てくださいな。
西暦2015年6月30日
[第八呉鎮守府]
ヤン「いやぁ……参ったなぁ。」
吹雪「何がですか♩とても素晴らしいことじゃないですか!ついに私たちの新しい旗艦と仲間に出会えるじゃないですか!」
ヤン「うん……まあいいけどね。」(困るなぁ高野長官。私はできる限りサボりたいのに……いや、そう説明したはずだが。)
第八呉鎮守府港に一隻の戦艦が入港をしているのを、ヤンは静かに、うなだれるようにその光景を見ていた。
一様の受任の手続きなどを済ませると、ヤンは執務室へと戻る。次に新しい艦娘の出迎えだ。
吹雪「どんな子が来るのかな?戦艦とか、空母とか!」
ヤン「はははは。残念だけど軽巡洋艦2隻と駆逐艦が3隻さ。」
??「失礼します。」
ドアが叩かれる音がすると吹雪はヤンの格好を素早く直して、一回咳払いをする。
吹雪「どうぞ。」
入室を許可された五人の艦娘が一列に並んで待機する。
木曾「球磨型五番艦の木曾だ。」
五十鈴「五十鈴です。艦対空戦闘なら任せてね。」
弥生「……弥生……です。」
卯月「ぴょーん!卯月でーす!うーちゃんって呼んでね!」
秋月「秋月型防空駆逐艦1番艦の秋月です!」
ヤン「いやぁ……個性豊かでいいんじゃないかな。」
吹雪「う、うえぇぇぇ!?秋月型防空駆逐艦!?」
あまりにも驚いた吹雪はその場に尻餅をつく。
ヤン「どしたのかね?」
吹雪「だ、だって司令官!秋月型防空駆逐艦って大日本帝国海軍の駆逐艦の中でも非常に富んだ性能を持って、私たちよりも比べものにならないぐらいの艦対空能力があるんですよ!その上駆逐艦本来の対潜能力も失わずに戦うことができる、ものすごく強い艦なのに……なのに!」
秋月「あ、あの!大丈夫ですか?もしかして秋月、何か御心に触るようなことを……」
ヤン「いや、気にしないでくれ。それと吹雪。」
吹雪「は、はい!」
ヤン「性能で人を判断するんじゃない。性格で判断しなくてはね。」
吹雪「は、はぁ……にしても、なぜ私たちの艦隊に彼女が……」
五十鈴「ちょっと!艦対空能力なら私が高いわよ!!」
木曾「その代わり対艦能力が低い、ていう裏返しだろ。」
五十鈴「あんですって!!」
五十鈴の右手は木曾の胸ぐらを掴む。それに対抗するように五十鈴の腕を掴む。
木曾「やめとけよ。まともに艦と艦の撃ち合いで勝てない奴が俺に喧嘩をふっかけるのか?」
五十鈴「頭が筋肉で構成されているアホとは違うのよ私は!!」
ヤン「あー……二人とも。ちょっとストップ。喧嘩はいいのだが、その前に木曾。何か長官から渡されたものはなかったか?」
木曾「ああ。それを渡したいんだけど。こいつが邪魔でな。」
五十鈴「……ふん!」
二人はほぼ同時に手を離した。
秋月「あ、あの……その……」
五十鈴「……失礼いたしました提督。」
秋月が謝ろうとしたそれを抑えるように、ヤンに頭を下げる五十鈴。
秋月「あ……」
ヤン「いや結構……」(随分プライドが高い娘だ。)
木曾「これが頼まれていた書状だ。ほらよ。」
木曾は手に持っていた手紙入りの封筒をヤンに投げ渡した。
ヤン「おっと。ありがとう。」(この娘は強気だな。)
卯月「ムゥ……うーちゃんたちにも反応してよみんな!!」
弥生「……」
ヤン「あ、ああ。すまない。」(卯月は非常に明るいな。弥生はその対極だ。非常に無口だ。)
卯月「むーん……司令の名前は!?」
ヤン「ヤン•ウェンリーだ。」
卯月「へぇ……日本人じゃないの?」
ヤン「まあね……色々とあるんだよ。」
卯月「ふむふむ……大人のニオイがするぴょん!えへへへ!」
ヤン「あ、あははは。」(何かと勘違いされたか。)
弥生「……」
一様の紹介を終えて、施設の案内を吹雪に任せて一人残るヤンは高野からの手紙の封を解いて、手紙を読み始める。
ヤン「……やれやれ。食えないお人だ。」
[第八呉鎮守府演習場]
吹雪「演習ですか?」
ヤン「ああ。ここで艦娘の陣形演習を行う。早速始めよう。」
演習場は巨大なプールで行われる。目標用の的がいくつかと、演習弾がそこらかしこに置かれている。そして緊急事態を想定して近くには入渠システムが小型なものだが置かれている。
最初に行われた演習は射撃演習。各艦娘は艤装を装備して演習弾を的に撃ち込んでいく。
木曾「は。まるで遊びだぜ。」
卯月「簡単すぎー。司令はうーちゃんたちを甘く見過ぎだぴょん!」
吹雪「まあいつもやってますし。」
ヤン「まあまあ。基礎は必要だ。」
次に回避演習。一定間隔に置かれてあるブイを器用に避けていく。
弥生「ほ、は、ふ。」
ヤン「ほぉ。弥生、君は艦運動が得意だな。」
弥生「……別に……」
ヤン(うーん……)
その次には対空迎撃演習。上空に浮かんでいる風船を撃っていく。
秋月「てやぁああ!」
五十鈴「はぁああ!!」
ヤン「さすがに言うほどはある。なかなかの撃墜率だ。」
そして、昼食を挟んだ後に最後の演習が言い渡される。
ヤン「では最後に艦隊陣形演習を行う。」
吹雪「よ、よいよですね。ちょっと緊張してきました……」
木曾「は、整列するようなもんだぜ。もっとも、そこの軽巡がうまく動いてくれればいいんだがな。」
五十鈴「あら、私がいつ艦隊の輪を乱すような艦娘になったのかしら。」
秋月「お、お二人とも……」
弥生「……苦手。」
卯月「うーちゃんは大得意!!」
実際に陣形を組み出す。プールは流れるように流水され始めると同時に陣形を作り出す。
ヤン「単縦陣!」
吹雪「まあこれは整列するだけですから……」
ヤン「複縦陣!」
五十鈴「ねぇ、肩に当たらないでくれない?バカが移る。」
木曾「なら問題ねぇ。お前は元からバカだ。」
ヤン「……単横陣!」
秋月「横で整列ですね。」
ヤン「最後だ!輪形陣!」
弥生「むう……どこだっけ?」
卯月「弥生はそっちだぴょん!」
吹雪「えっと、私は……」
ヤン「ふむ……やはり輪形陣で躓くか。」
演習を終え、夕食を済ませるとヤンは執務室へと戻り、資料を書いていく。
ヤン「吹雪は元からオールラウンダーの部分があったので、少々演習を積ませれば陣形には問題無い。木曾だが非常に対艦戦闘技能が高い。特に魚雷を命中させるのが得意なのだが、五十鈴となぜか仲が悪い。五十鈴の方は対空迎撃技能が高い。同じ防空艦である秋月とは少しぎこちないという感じだ。その秋月だが、駆逐艦としては非常にいい成績だ。対艦、対空、回避、どれを取っても優秀だ。しかし、あくまで平均的に見てだが。弥生は非常に無口だが、回避技能が高い。しかしあんなに無口だとなぁ……卯月はムードメーカーになりそうだ。陣形指揮もうまく取ってくれた……ふう。こんなものか。」
ヤンは椅子から立ち上がると背をぐっと伸ばして軽く体を捻る。すると突然机の上の黒電話が鳴り響く。受話器を手に取り電話に出る。
ヤン「はい。こちら第八……なんですって!!?」
翌日朝、すぐに艦娘たちは執務室へと集められた。
ヤン「緊急事態が発生した。吹雪は覚えているかもしれないが、皆は第四佐世保鎮守府を覚えているな?」
秋月「はい。確か司令官は、あのフォーク大将でした……」
卯月「艦娘の敵だぴょん!最低な無能野郎だぴょん!!」
木曾「まああんまいい噂は聞かないぜ。で、そのゴミ屑がどうしたって?」
ヤン「先日、我々が演習をしている時に基地を爆破して逃げ出したらしい。で、その際にこちらで試作予定だった一隻の艦船を奪取してこちらの方面に逃げ出したらしい。主力以外、ようは新米同然の艦娘たちはまだ彼の指揮下に入っており、全て殺害対処命令が出ている。」
吹雪「そんな……艦娘は無関係なのに……」
五十鈴「無能になんでみんなついていくのかしら?」
ヤン「おそらくは混乱している状況に、無理やり連れて行ったのだろう。」
卯月「悪者の考えそうなことだぴょん!!許せないぴょん!!」
弥生「……で、どうするの?」
ヤン「もちろん。迎撃しなくてはならない。それが私の仕事だ。」
吹雪「……助けないんですか?」
ヤン「何をだ?」
吹雪「決まっているじゃないですか!艦娘ですよ!今まで護衛引き続きの艦娘がどんなにボロボロでも助けることはしませんでしたが、今回は助けられます!指揮権はすでにない司令官の下ならば助けても……」
ヤン「残念ながらそれは軍人としてできないことだ。上層部の判断は”殺害”。それ以外はできないよ。」
吹雪「それでも!私は納得できません!」
ヤン「そうだね。私も納得はできないよ。だけどね、行動と納得は必ずしも結びつける必要性はない。それが仕事だ。」
吹雪「そうですけど……」
ヤン「ではこの話は終わりだ。総員、作戦行動準備。」
6月30日
[第八呉鎮守府近海 指揮型戦艦覇竜艦橋]
鎮守府近海に出撃した、長門型と同レベルの大きさを誇る指揮型戦艦覇竜はヤンたちを乗せて目的地まで進んでいた。
ヤン「さて、この指揮型戦艦。なかなかのスペックに驚きを隠せないが、君がいるのがさらに驚きだよアッテンボロー。」
ダスティ•アッテンボロー(以下アッテンボロー)「いやですね、私も気付いたらこの世界にいたんですよ。まあ久しぶりにあなたの下で働けるんだ。めいいっぱいやりますよ!」
ヤン「ふふ、期待させてもらうよ。」
船員「電探に感あり!10時の方向に戦艦『鳥嶋』!並びにその周辺に多数に艦娘反応!」
艦橋から望遠鏡にてヤンは10時方向にある戦艦を視認する。扶桑型思い出させる、旧式な戦艦だ。
船員「艦娘進路転進!推定進路、当艦です!」
ヤン「さてと。それではやりますか……全艦娘に発艦命令。それと……」
[指揮型戦艦覇竜後部カタパルト]
艦内が小さな工廠と入渠システムが置かれており、その中央には六つの大型な艦娘用のカタパルトが設置されてある。
吹雪「こんな装置を開発してただなんて……」
木曾「は!技術部の連中いいもん開発するじゃねぇか!」
艦娘たちがカタパルトに乗り、艤装を装備しつつ出撃合図を待っている最中、横ではメカニックチームが艦橋と連絡を取り合っていた。
メカニック「はい……はい……へ?いいんですか?」
船員「?どうした?」
メカニック「いや、どうやらな。例の試作兵装はつけなくていいらしい。」
船員「マジか。ビームライフルなら一撃で、艦娘も艦艇も吹き飛ばせるのによ。」
メカニック「提督閣下には何かお考えがあるんだろ。それに従おう。」
最終チェックが終わり、艦娘のカタパルトの進行方向上の扉が開かれる。
船員「システムオールグリーン!安全装置に問題無し!カタパルト陽電子装置、正常に稼働!」
船員「リニアボールテージレベル上昇!艦娘固定確認よし!」
メカニック「こちら後部カタパルト!発艦準備完了!」
ヤン『発艦!』
メカニック「了解!1番から3番発艦!」
右側のカタパルトに乗っていた吹雪、木曾、五十鈴発艦。瞬間速度500kmで打ち出される。
吹雪・五十鈴「う、うわぁぁぁあああ!!!!」
木曾「いっくぜぇぇええええ!!!」
メカニック「4番から6番発艦!」
左側のカタパルトに乗っていた秋月、弥生、卯月発艦。
卯月「ピョォぉおおおおん!!!!」
弥生「……」
秋月「いやぁぁああ!!!!」
高速で打ち出された6隻は速度が落ち着いてきたと同時に複従陣形に組む。
吹雪「フゥ……あんな早いなんて。」
木曾「へ、あの程度で目を回すなんてな。まだまだだな。」
秋月「で、でもちょっと癖になりそうな……」
弥生「……楽しかった。」
五十鈴「……おしゃべりは後みたいね。電探に感あり!射程内に敵性艦娘6隻!!」
卯月「……なんかやる気が薄れるぴょん。」
吹雪「でもやらないといけません。それが私たちの仕事だから。」
木曾「へぇ、ここでもなんか反対すると思ってたけどやるのか?」
吹雪「……司令官に言われなくても軍人としての義務はわかっているつもりです。出撃した以上私たちはただ単に戦うための兵器ですから。」
木曾「兵器……ね。」
すると、艦娘全員が耳につけているイヤホンからヤンの声が届く。
ヤン『さてみんな。聞いて欲しいことがあるんだが……』
ヤンの指令を聞いた6隻は、敵の6隻と交戦が始まる。それと同時に旗艦同士の戦闘も起こっていた。
[戦艦鳥嶋艦橋]
フォーク「いいか!あのヤン•ウェンリーだけは殺さなくてはならない!奴が私の軍人生命を断ち切った真の原因だからだ!」
船員A「何言ってんだ我が司令官は?」
船員B「しらねぇよ。どうも前の世界の恨みごとらしいぜ。」
船員A「そんなもんに俺たちは付き合わされているのか。」
船員B「仕方ねぇだろ。俺もお前も金で雇われただけだ。やばくなったら逃げるだけだよ。」
[指揮型戦艦覇竜艦橋]
船員「主砲1番、2番!砲撃体制よし!」
アッテンボロー「斉射!」
ヤン「後部VLSは使えないのか?」
アッテンボロー「どうも不調らしいですよ。主砲の火器管制だけは間に合ったようなもんですからねぇ。」
覇竜から放たれた51cm三連主砲のAP弾は放物線を描いて、戦艦鳥嶋の右舷に命中。鳥嶋は第二装甲(未修理)まで貫通し、機関(未修理)に支障をきたす。
[戦艦鳥嶋艦橋]
フォーク「撃ちかえせ!奴ごときの船など!」
船員「機関出力低下!水平システムに問題が発生しています!」
[指揮型戦艦覇竜艦橋]
ヤン「ふむ。整備不良の艦の末路だね。」
アッテンボロー「しかも治されていないとは……少々可哀想な気がしますが。」
船員「吹雪より通信です。どうしますか?」
ヤン「繋いでくれ。」
[艦娘交戦海域]
艦娘「くそ……こんな屈辱を……」
フォーク指揮下の艦娘はすでに2隻を残して戦闘能力を喪失、残りは弥生と卯月が捕らえていた。
青葉「しっかりしてください!ここで諦めたら……きゃ!」
青葉の主砲が木曾の砲撃で破壊される。
木曾「さあ、お前らの武器はもうないぜ。」
吹雪「おとなしく投降してください。味方同士で殺し合いだなんて……」
青葉「……」
艦娘A「あ、青葉さん……」
青葉「……ええ。イかれてます。こんなの。でも、それが命令なら!私たち兵器は殺さなくちゃいけないんだ!」
そう言い放つと青葉は吹雪に取っ掛かり、服の襟元を掴んでそのまま背負い投げる。
吹雪「う、うわぁあ!」
吹雪はそのまま海面に叩きつけられ、一度沈みかけるが、脚部のフロートユニットは無事らしく再度浮上する。しかしその間に青葉は木曾にも掛かる。
青葉「艦娘いえども生命維持ができなければ死にます!」
木曾「この野郎……」
その姿を見ていた吹雪が主砲を向けるが、それよりも前に艦娘Aが主砲を吹雪へ向ける。
艦娘A「動かないでください!」
吹雪「く……」
卯月「ちょ、ちょっと待つぴょん!ここにいる人質が殺されてもいいの!?」
艦娘B「あ、青葉さん!頑張ってください!」
青葉「グギギギギぎ!!」
木曾「この……!ちくしょう!やっぱ重てェ!!」
五十鈴「く、ここからじゃ馬鹿に当たる……?対空電探に反応……!!まさか!そこの君!逃げて!」
艦娘A「え?」
その瞬間、彼女の胸に一閃の光が突き刺さる。光と言うよりも粒子に近い攻撃。それがうち尽くされると、彼女は海上に倒れる。フロートでかろうじて浮いているだけだ。異常なほどの出血をして、すぐに海面が真っ赤に染まっていく。
青葉「!そんな!」
青葉は木曾から離れて艦娘Aを抱きかかえる。その腕ではふさぎきれないほど大きな穴が、彼女の胸にある。青葉の両腕が真っ赤になっていく。
吹雪「く、どこから!」
五十鈴「上空からよ!」
五十鈴の言葉に皆が上を向く。白い雲の上から黒い物体がその姿を現していた。
秋月「ま、まさか、ネウロイ!」
木曾「ち、おい提督!」
ヤン『ああ。こちらも先ほど捉えた。』
[指揮型戦艦覇竜艦橋]
ヤン「全艦娘は捕らえた敵性艦娘を一度こちらにまで送ってきてくれ。」
吹雪『了解!』
ヤン「アッテンボロー。主砲の残弾数は?」
アッテンボロー「AP弾頭だけですぜ!対空目標にはあまりにも……」
ヤン「フゥ……これは大ピンチだな。」
船員「艦娘部隊回収作業開始!」
ヤン「終了するまでにどちらへ攻撃するつもりかな?」
観測員『ネウロイ!ビーム照射!』
ネウロイのビームは動けずにいた『鳥嶋』の艦橋を破壊し、『鳥嶋』はその船体を真っ二つにし、爆発する。
観測員『ネウロイのビームが鳥嶋を破壊!』
ヤン「やれやれ。それは助かった。」
メカニック『こちら後部カタパルト!艦娘の回収作業終了!』
ヤン「ふむ。ではとっとと逃げますか。主砲を打ちつつ機関最大。ゆっくりと旋回しながら敵のビームを回避する。」
[指揮型戦艦覇竜後部カタパルト]
青葉「しっかり!しっかりしてください!」
艦娘A「あぉ……ばさん……わた……しぬ……の……」
青葉「ダメです!死にません!助かります!だから諦めないで!」
艦娘A「ウゥん……あり……とぅ……あお……さ……ん…………」
青葉「嘘……ダメ!返事してください!!嫌!いやぁ!!」
そのまま彼女は息絶えた。口を動かさず、赤い雫が口から流れる。
青葉「あ……あぁ……ああああああ!!」
青葉はすでに冷たくなった仲間を抱きしめて涙を流し、絶叫している。
メカニック「……死亡した艦娘を治せるほど入渠システムは万能ではない。」
吹雪「……ゴメンなさい……私たちが本当のことを話せば……」
秋月「殺したと報告して……裏で助ける作戦……」
艦娘B「いえ、それでも私たちは聞こうとはしなかったでしょうし……」
艦娘C「彼女が死んだ要因はあのネウロイです。」
卯月「と言われても……」
弥生「……」
[指揮型戦艦覇竜艦橋]
ヤン「さてと……どうなるか……」
40ノット以上の速力で走る覇竜が通った箇所にネウロイのビームが通る。仕返しと言わんばかりに覇竜の主砲がネウロイに向けられ砲撃を数度繰り返すが、何発か当たって、それだけに過ぎなかった。再度ネウロイのビームが放射される。まるで鯨のような形をしたネウロイの先端部分から赤い粒子の光が一閃する。覇竜の右舷に擦り、副砲が溶解する。
ヤン「被害報告。」
船員『第二、第一装甲溶解!後数コンマ照射されたら持ちません!』
ヤン(ここまでか……)「総員に退艦命令を___」
船員「対空電探に感あり!本艦の6時方向より音速でやってくる飛行物体あり!」
[上空]
F-15Cが二機、編隊を連なって飛んでいる。一機の方は両翼の青の塗装。もう一機は片翼に赤い塗装が施されている。
ガルム1「こちらガルム1。ターゲットタリホー。11時方向。間違いないネウロイだ。」
ガルム2「これから日本政府からのお仕事を始めるぜ。行くぜベルカ……じゃなかった。カールスラントのジェットストライカー。」
いつもとは形が違う戦闘脚を履くカールスラントのウィッチが一人。F-15Cと同速で飛び、その背には50mmカノン砲を背負っている。
ゲルトルート•バルクホルン(以下バルクホルン)「言われなくてもだ。今回の任務はジェットストライカーのテスト含めてある。それを忘れるな。」
ガルム2「はいよ……たく。この世界の女はどいつもこいつも怖いなサイファー。」
ガルム1「ターゲットロック。FOX3。」
ガルム2「話聞けよ!ガルム2、FOX3!」
F-15Cから長距離空対空ミサイルが四発ずつ、合計8発発射される。それの後ろからバルクホルンがカノン砲を手に取り、ネウロイに対して砲撃を行う。
攻撃に気づいたネウロイは拡散してビームを照射。6発のミサイルが撃墜するが、2発のミサイルと、50mmのHE弾頭がネウロイを破壊する。破壊された箇所に修復行動を行うネウロイに、二機はと一人はその後ろにつく。
ガルム1、2「FOX2!」
バルクホルン「くらエェ!!」
ネウロイにさらに4発のミサイルと50mm砲弾が命中。ネウロイのコアが見える。
バルクホルン「トドメだぁ!!」
コアに対してバルクホルンが突貫。ゼロ距離でカノン砲を発射し、コアを粉砕。ネウロイは爆発とともに崩壊していった。
[指揮型戦艦覇竜艦橋]
船員「す、すごい!敵ネウロイ完全破壊を確認!」
ヤン「フゥ……どうやら助かったようだ。」
アッテンボロー「みたいですね……まさかあれってご存知でしたか?」
ヤン「まあ……ね。間に合わないと思っていたんだが。まさかなぁ。」
[上空]
ガルム1「ターゲットをキル。」
ガルム2「やったなサイファー!それにウィッチさんよ。」
バルクホルン「気にするな。あの程度の敵はいつも簡単にねじ伏せている。」
ガルム2「なるほど。噂の第501統合戦闘航空団か。なかなかだったぜ。それじゃあ俺たちはこのまま他の任務があるんで。」
バルクホルン「ああ。私もこのまま基地に戻らなくてはならないのでな。ガルム隊。共同ミッションの協力に感謝する。」
そのまま戦域から離脱していく二機と一人、離脱していく方向は全く別だが。
[指揮型戦艦覇竜後部カタパルト]
覇竜も離脱を開始する。すでに鳥嶋は完全に沈没していたので、死亡と判定。その後離脱を決定した。指示を飛ばしたヤンがカタパルトにアッテンボローを連れてやってきていた。
ヤン「やあみんなご苦労様。」
吹雪「司令官……あれ?その人は?」
ヤン「ああ。私の副官のアッテンボローだ。」
アッテンボロー「ども。」
木曾「なんか不真面目なヤツだな。」
アッテンボロー「な、そんなこと言うか。これでも元々は艦隊指揮官だったんだぜ。」
卯月「全然そうは見えないぴょん!まるでわがままなお子ちゃまぴょん!」
アッテンボロー「んだと貴様らぁ!」
卯月「わー!怒ったぴょん!司令官助けて〜!!」
ヤン「はははは……君は……」
青葉「……第四佐世保鎮守府艦隊所属の青葉です。部下たちを代表してお礼を言います。」
ヤン「報告は聞いている……すまなかった。としか言いようがない。」
青葉「いえ……すみません。青葉、少し休憩させてもらいます。」
ヤン「いやいい。疲れているなら休んでくれ。」
基地についたヤンたちにすぐさま艦娘全員を引き連れて軍用車両に乗せていく。
ヤン「さて……残りは青葉。君だけだが……」
青葉「……青葉は……」
艦娘B「青葉さん……」
その時だった。鎮守府の入り口から軍用トラックが入ってくるのが見えた。トラックについているマークから見るに、特別保安隊ものであることがヤンにはすぐに判明した。トラックから何人かの兵士が、布を覆い被せた装置を運んでヤンたちの前に置いた。
ヤン「なんだね君たちは?」
保安隊長「ヤン•ウェンリー少将で在らせますね?」
ヤン「確かに私がヤンだが……何用ですか?」
保安隊長「あなたには敵性艦娘掃討の命令が出ているはず。なぜ艦娘が掃討されていない?」
ヤン「報告は受け取りましたか?すでに掃討したはずですが?」
保安隊長「……あくまでそうですか。では我々が取りこぼしを処理します。おい!やれ!」
保安員「はい。」
保安員はすぐに布をとると、それは小型なキャノン砲みたいなものだった。それを一人の保安員が、艦娘を乗せた車両に照準を定める。
ヤン「まさか……やめ___」
ヤンの制止の言葉は届かずに、車両へ一発の砲弾が撃ち込まれる。砲撃を見たアッテンボローが咄嗟に青葉を抱き寄せて倒れ、他のヤンの艦娘たちがその場に伏せる。車両にいた艦娘の一人にぶつかって砲弾はさらにその艦娘の腹部から炸裂。対艦用に作られた小型な散弾が車両ごと艦娘を破壊し尽くした。
ヤン「……」
青葉「ぁ……」
保安員「命中。目標は実験通りに内部に隠れている敵を殲滅しました。」
保安隊長「うむ……む?なんだ。まだ殺し損ねている。」
燃え盛る車内から手を出して、なんとか脱出し、叫ぶ艦娘が一人いた。肌は焼けただれ、伸ばした右腕以外の四肢はなくなり、その原型も止めてはいなかった。
艦娘D「ぐるじいよぉぉ!!!だべが!!だべがバズケデェェェ!!!!」
その姿を見た艦娘たちはただ呆気にとられていた。保安隊長は、はぁとため息を吐きながら拳銃を取り出し、艦娘の頭に向けて発砲した。艦娘の肌は特殊にできていても、ここまで損傷していると、その硬質さも無くなっている。頭部に弾丸を撃ち込まれた彼女はその場にごとりと音を立て、動かなくなった。
保安隊長「よし。撤収だ。帰るぞ。」
ヤン「……諸君はこれが目的か?こんなことが目的だったのか?」
保安隊長「ええ。遅かれ早かれ。彼女たちは死ぬ運命だった。何、気にする必要性はありませんよ。どうせすぐに量産が取れる使い捨ての捨て駒だ。」
青葉「貴様らぁぁぁぁあ!!!」
青葉は怒りに身を任せて走り出そうとするところをアッテンボローに止められた。
アッテンボロー「馬鹿!やめろ!」
青葉「よくも!よくもみんなを!!実験動物みたいに!!殺したなぁぁあ!!!殺してやる!!ズタズタにしてぶっ殺してやる!!!」
保安隊長「あ?……ああ。あれも排除対象か。」
ヤン「違う。彼女は私の部下だ。」
保安隊長「しかし___」
ヤン「これ以上私の鎮守府での行動は許さない。とっとと出て行ってもらおうか。諸君らにはすまないが、私は君らがここにいるのがとてもとても気にくわない。虫酸が走るほどにね。」
保安隊長「……わかりました。しかし驚きましたね。まさかヤン少将も____」
ヤン「言葉をかわす気もない。即刻出て行かないなら上官反逆罪で君を射殺する。」
保安隊長「……では失礼。」
保安隊はそのまま素早く撤収していった。その頃になると消化班がやってきて車両の火を消していた。
青葉「待て!この畜生どもが!豚のように殺してやる!!家畜のように殺してやる!!虫けらのように殺してやる!!!絶対殺してやるぅぅぅう!!!うわぁぁぁぁぁぁあ!!!!!」
鎮守府には、涙とともに出てくる青葉の怒りの声が響いた。
多分続く
このSSへのコメント