【短編】提督と三日月 夏祭り編
短編読みきりです。
呼称や設定に間違いなどあるかもしれませんが、それでもよければ短いですがお楽しみください。
提督「なんだこの箱は?」
三日月「これは今度の夏祭りの時に誰が鎮守府に残るか決めるためのクジ箱です。」
提督「今度の土曜日に近くの神社でやるんだったか」
三日月「皆さん楽しみにしています。しかし誰かは鎮守府に残らないといけないので公平にクジで決めることにしました」
提督「別に鎮守府空けてもいいんじゃないか?遠征も休みにしてさ」
三日月「で、ですが敵が攻めてきたら対処できません」
提督「近くのお祭りだから直ぐにみんな帰ってこれるから問題ないでしょ」
三日月「言われてみれば確かにそうですね」
提督「まぁ、流石に俺が出ていく訳にはいかないがな」
三日月「そうですか?鎮守府空けるなら司令官がいる必要無いような気がしますが」
提督「えっ?俺お祭り行ってもいいの?」
三日月「艦隊運用しないなら司令官いなくても問題は無いような」
提督「お祭りなんてここ数年行ってないから行きたいんだよな。片手に酒を持って練り歩く....くぅ~堪らん!」
三日月「お酒はよくわかりませんが、お祭りの雰囲気は私も大好きです。しかし司令官がお祭りに出かけて行くとしたら、残る娘から苦情が出そうですね・・・えっ本当に行くんですか?」
提督「三日月、クジの中に提督を追加しておけ。同じ土俵に立つからには文句は言わせん」
三日月「えぇ・・・・わかりました、追加しておきます。問題は何人残るかですよね」
提督「一人でいい。より多くの艦娘に祭りを楽しんでもらいたい。本音を言うなら祭りに行ける確率を上げたい」
三日月「一人で大丈夫ですか?」
提督「近海に反応出たら連絡するだけでの任務だ一人で十分。妖精さんもいるしな」
三日月「では、一人を決めるためにクジを引きますね」
提督「おう。俺以外のやつを引くんだぞ」
三日月「できれば司令官を引いて穏便に済ませたい所ではありますが」エエイ
提督「おっ!さぁいったい誰が残ることに?」
三日月「......」
提督「あっ...」
提督「と、言うことで今日の祭りの間、鎮守府には三日月が残ることになった。みんなは三日月の分まで楽しめ!俺はそのつもりで祭りに行く!」
卯月「最低なこと言ってるピョン」
長月「普通は司令官が残るんじゃないか?」
皐月「そうだよ。おかしいよ!」
提督「黙らっしゃい睦月型。俺は何と言われようが祭りに行くからな」
三日月「鎮守府には私が残ります。有事の際には直ぐにサイレンを鳴らすので帰投をお願いします」
提督「祭り直前まで空母部隊で広範囲索敵を行うからよっぽどのことはないとは思うがベロベロに酔うことだけは無いように」
提督「あと、22時迄には全員鎮守府に帰って来るように。俺からの連絡は以上だ、空母部隊は出撃準備。それ以外は解散」
ヨーシユカタニキガエルカ ネエサンハヤクイキマショウ
夕方
提督「それじゃあ、行ってくる。今更だが悪いな」
三日月「い、いえ運が悪かっただけなので気にしないでください。司令官、数少ないお暇なので楽しんできてください」
提督「おう、じゃあ行ってくる」
三日月「はい、行ってらっしゃいませ」
提督「お前何時まで着いてくるの?」
望月「いいじゃんかよ~そんなにツンケンしなくてもさぁ」アーン モグモグ
提督「屋台に寄っては俺を呼びお金を出させる。自分は財布を持ってこないその手口が気に入らん」
望月「どーせお金使う暇ないんだから私に貢いでおけばいいよぉ」
提督「こ、こいつ.....」
望月「本当は三日月に奢るはずだった物を妹の私が食べてるだけだから問題ない」モグモグ
提督「はぁ?」
望月「三日月と一緒に祭り回る予定じゃなかった?」
提督「別に約束はしてなかった」
望月「なんだ、デートの約束はしてなかったんだ。悪いことしたなーっとは思ってたけど安心したわ」
提督「で、デートなんてするわけ無いだろ。まず三日月が嫌がるわこんなオッサン」
望月「うーん?司令官ってまだ二十代半ばぐらいっしょ。まだギリギリおにーさんで行けるかな〜どうかな....」
提督「え?俺まだお兄さん系で行けるかな?」
望月「あーやっぱり無理だ。オッサン臭するから」
提督「この野郎。解体されたいのか」
望月「普通の子に戻ってゲーム三昧もありっちゃありだよね。国から沢山お金もらってるし」
提督「じゃあ自分でお金出せよ.....こっちは薄給なのにさ」
望月「奢ってもらう食べ物が一番美味しいからね。屋台の焼そば最高だね〜」
提督「お前と回るなら三日月の方が良かったよ」
望月「うへー惚気られちゃった。てかさ司令官話変わるけどどうして三日月鎮守府に残ってんの?」
提督「なんでってクジなんだからしょうがないだろ」
望月「あのクジに三日月が入ってるはずないんだけどなぁ」
提督「はぁ?どういうことだ」
望月「あのクジは元々いい意味で鎮守府に残る人を決めるクジだった訳さ」
提督「いい意味で?」
望月「そう。祭りに皆が行けば鎮守府で司令官と過ごせるって考えた人が複数いたんだよ。だけど皆残ると邪魔だから公平に一人だけクジで決めようって話になった」
望月「全員が参加した訳じゃないけど、三日月は何時も秘書艦だから今日だけは譲ってくれって頼まれてクジには参加してなかったんだよね」
提督「.....」
望月「そろそろ察してると思うけど、クジを引くときにイレギュラーが起きた。司令官が祭りに行きたいと言い出した。そうなるとこのクジに当たった人は貧乏クジを引くことになる」
望月「かと言って、忙しい司令官に楽しんできて貰いたいって気持ちが三日月にはあって断われなかったんだろうね。だから自分が残った。本人は祭りを楽しみにしてたけど最善手が自己犠牲でそちらを選んだと・・・」
望月「自己犠牲もどうかと思うけどね私は」ハァ
提督「......」
望月「さてさて、どうする司令官」ニヤニヤ
提督「あーそろそろ帰らないと門限過ぎちゃうなー」
望月「まだ20時過ぎだから余裕だよ?」
提督「俺超低速だから」
望月「てきとーな理由だな」ケラケラ
提督「俺、先帰るから楽しんでこいよ」
望月「帰るならこっちから帰るんだよ」
提督「あ?なんで茂ってる道なんか..」
望月「つべこべ言うな」ドーン
提督「うへっ」
望月「後はこのもっちーに任せておけばいいさ」
提督「何を任せるかよくわからんが、帰りは気をつけて帰ってくるんだぞ」
望月「あいよー」
ヘーィモッチー テイトクミナカッタデースカ
シレイカンナラヤシロノホウニムカッタヨ
ソウデスカ アリガトウゴザイマース バタバタ
望月「感謝しろよ、司令官、三日月」
三日月(やることが無いですね・・・)
(電探に反応は無いし、事務仕事も無い。かといってお風呂に行くわけには行かない・・・居眠りなんてもってのほか)
「そうだ!!」
(鳳翔さんに仕立ててもらった浴衣がありました、着替えて気分だけでも楽しみましょう!)
(鳳翔さんに着方習っておいて正解でした。私の姉妹に着付けができそうな娘は如月姉さんぐらいしかいませんからね・・・・)
(せっかくですから髪を上げて簪を挿しましょう。髪上げるだけでかなり涼しくなりますね)
(自分で言うのもなんですが、かなり似合ってます!さすが鳳翔さん)
妖精「基地航空隊帰還したぞってお嬢ちゃんなにしてるんだ?」ヒョコッ
三日月「ひぁぁ!び、びっくりしました」
妖精「お!お嬢ちゃん浴衣似合ってるぞ。女将の次ぐらいにはな」ハハハハハ
三日月「鳳翔さんに比べられたらさすがに・・・・」
妖精「まぁ若さで言ったら圧勝だ!女将は今後老いるだけだが、譲ちゃんにはまだ伸び白があるから安心しな」
三日月「鳳翔さんに伝えておきますね」ニッコリ
妖精「じょ冗談だよ・・・勘弁してくれ」
三日月「わかってますよ。それで異常はありませんでしたか?」
妖精「特に異常なかったぜ」
三日月「ありがとうございました。お仕事ご苦労様でした」
妖精「おう!よし帰って飲むぞお前ら!お譲ちゃんも来るか?」
三日月「い、いえ私は一応任務中なので」
妖精「大丈夫さ奴さんらはこやしねーよ。お前ら!別嬪さんにお酌してもらいたいよな」
妖精s「そりゃあ勿論」
妖精「特に今日のお譲ちゃんはいつもより色っぺーから酒がすすむぞオイ!」
三日月「別嬪だなんて・・・」テレテレ
妖精「お仕事がんばった俺たちの労いも任務の一環さ」
三日月「そ、そうですか?そこまで言われては断れません」テレ
妖精(お譲ちゃんチョロイな・・・・・・ハッ)
妖精「わ、悪いお譲ちゃん。今日の飲みは無しだ、おいお前らさっさと帰るぞ!」
妖精s「ど、どうしたんですかいきなり」
妖精「さっさと行くぞ、じゃないと馬に蹴られるぞ」ピュー
妖精s「まってくださーい」
三日月「・・・・・えっ、なんだったんでしょうか」
妖精s「にしても今日の三日月ちゃん可愛かったよな。せっかくお酌してくれるチャンスだったのに・・・」
妖精「つべこべ言うな。ついて来い」
妖精(俺の索敵が告げている。ここは退けとな・・・)
三日月「・・・・」ウツラ
三日月「ハッ」!
三日月「今日に仕事を残して・・おけばよかったですね。そうすれば眠気も気にならないのですが」
三日月「することが無いと本格的に危うくなっ・・・てきますね」
三日月「とりあえ・・・・ず、私の・・夜・・・・・・」zzz
提督「あー靴が傷んじまったな、流石にあの悪道には耐えられんな」
提督「買ったばかりなのによ、望月の野郎今度覚えてろよ・・・」
提督「まぁ、望月はよくないがまぁいい、問題は奴だ三日月め。祭りに行きたいならそう言えばいいものを」
提督「最悪、鎮守府護衛なんか後輩に押し付ければいいだけなんだよな。後で弩叱られるけどな」
提督「そもそも自ら鎮守府に残る自己犠牲の精神が気に入らん。戦場で命取りになるぞまったく」
提督「そりゃあ直前で俺が祭りに行きたいって困らせたのは悪かったけどさ」
提督「俺も三日月には休んで欲しかったんだよな。普段忙しい秘書任務させてるわけで・・・」
提督「あーでも、他の娘ならいいかと言われると困るし、俺も祭り行きたかったし」
提督「てか、早く帰ってきたのはいいけど言い訳どうしようか。三日月が気になって帰ってきたって言ったら気を悪くするか?」
提督「お前と回れないなら・・・」
提督「っ、いいおっさんがなに言ってるんだか。トイレでいいや理由なんて」
提督「おらー三日月帰ったぞコラ!」バン
提督「三日月とりあえずな自己犠牲の精神は・・・・・・えっ」
三日月「すぅすぅ」zzz
提督「えっ何で浴衣着てるんだ?いやそうじゃなくて任務中に居眠りなんて・・いやそこじゃない。あれ?俺が言いたいのは・・・?」
三日月「ぅぅん」
提督「!」
三日月「し、しれいかん?・・・・・・・!」ガバッ
三日月「す、すみません!任務中にも係わらず」
提督「あぁ」
三日月「でも、どうして司令官が此処に?まだお祭りの最中のはずですが」
提督「ちょっとな」
三日月「本当にすみません司令官。万が一があれば皆を危険に晒すような真似をして・・」
提督「寝てたことは次気をつけろ、それでいい。ただ自己犠牲は無しだ」
三日月「?」
提督「クジのこと望月から聞いた。今回は命に係わらないことだったからよかったものを・・・」
提督「お前たちをできる限り危険ではない状態で戦場へ送り出すように努力はしている。ただ想定外は存在するんだ、その時に自己犠牲がお前を傷つけることを許さない。痛みや責任を負うのは俺だ・・・いいな」
三日月「で、でも!」
提督「言いたいことは分かる。だがそれが俺の勤めだ。戦場に向かえない俺にできる唯一の戦いだ」
三日月「・・・・」
提督「らしくないこと言って悪かったな。まぁ誰も沈める気は無いし、皆優秀だから万が一にも無いだろうけどな」ハハハ
三日月「・・・司令官」
提督「何だ?」
三日月「私にはそう簡単に割り切れないかも知れません。仲間が危険なときにとっさに動いてしまうかもしれません。いえきっと動くのだと思います!」
提督「じゃあしょうがない!」
三日月「えっ?!」
提督「俺が辞めろって言ってるのはお前が考えて自らを犠牲にする行為だ。例えば今回のようなこと」
提督「とっさに体が動いて仲間を庇うのはセーフ。私が盾になればとか考えて守るようならアウト」
提督「どちらにせよ結果は一緒になるのかもしれない」
提督「三日月の優しさも理解しているつもりだ。それでも俺は誰にも自己犠牲をしてほしくない。分かってもらえたか?」
三日月「はい・・はい!」
提督「はぁ・・真面目なこと言うもんじゃないな。どっと疲れた」
三日月「も、もう!珍しく司令官がまともだと思ったら直ぐに・・・」
提督「お?普段から真面目だぞ?」
三日月「祭りに参加して艦娘置いてく司令官の何が真面目なんですか・・」
提督「行きたいなら言えばよかったんだぞ」
三日月「・・・・・・し、司令官に楽しんでもらいたくて」
提督「はぁぁ、打つ手なんかいくらでもあるんだぞ三日月」
三日月「どういうことですか?」
提督「別の鎮守府に依頼でも出せばいいんだよ、いつか交代でもすれば問題ないだろ?」
三日月「それもそうですね」
提督「ふぅ・・・前々から言いたかった事が言えたからもういいや。それに・・・」
提督「三日月の優しさ嬉しかった。ありがとう」
三日月「ど、どういたしまして?でいいんでしょうか?でも・・・・・」
ヒュルルル~~バン!!
三日月「あっ!・・・・・綺麗」
提督「おっ花火の時間か」
ヒュウ~~パンパン
三日月「綺麗ですよ司令官!」
提督「ああ、見てるよ」
ヒュルルル~ ヒュルル~~
三日月「・・・」
提督「・・・・」
パンパン ヒュルル~ パパパパドーン
ホンジツノハナビハイジョウトナリマスミナサマオキヲツケテ・・・・
三日月「最後の垂れ綺麗でしたね」
提督「まぁ、三日月ほどでは無いけどな」
三日月「!」//////
提督「ずっと考えてたけど俺が一番言いたかったことはこれだったんだな」
提督「あースッキリした」テクテクテク
三日月「・・・・・」////
三日月「なんなんですか!今日の司令官は!」///////
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