2017-10-10 23:48:09 更新

概要

提督の鎮守府から何者かによって資金を盗まれて・・・


「・・・逃がしましたか。」


鎮守府に何者かが侵入して、今月の皆の資金を持って逃亡しました。


「まだ遠くに入っていないはずです! 皆さん、警戒しつつ探索をお願いします!」


霧島が鎮守府の皆に指示をした。


・・・・・・


「別にいいぞ・・・探さなくても。」


「司令は相変わらず、のんきですね・・・今月の資金袋を盗られてしまったんですよ!?」


「別に・・・備蓄しているし、それを充てるから心配するな。」


「そう言う問題ではなくてですね・・・」


「・・・霧島の言いたいことは分かるが、どうやって犯人を捜すんだ? 心当たりでもあるのか?」


「・・・・・・」


正直に言えば、「ありません」の一言です。


「犯人もわからない、逃げた場所もわからない・・・それでは探すだけ無駄だよ、無駄な労力を要するだけだ。」


「しかし、司令!」


「まぁ止めはしないが・・・大した成果は得られないと思うけどね・・・勝手にやってくれ。」


「・・・・・・」


司令はどうしてこんなに冷静でいられるのかが不思議でなりません。


鎮守府外と近海を探索しましたが、結局見つからず、打ち切りになってしまいました。


・・・・・・


翌朝、今度は捜索範囲を拡大して犯人を捜すことにしました。


司令はもちろん・・・相変わらず、のんびりです。


「少し出るね・・・帰りは、昼過ぎぐらいかな・・・」


そう言って司令は出かけてしまいました。


・・・・・・


「・・・ここだな。」


提督はある場所へ赴き、扉を叩く。


「はい? 誰でしょうか?」


彼女は重巡プリンツ・・・ドイツ艦でビスマルクと同じ国の艦娘だ。


「いきなり来て悪いね、朝だから色々と忙しいのに・・・」


「別に構いません・・・それで、ご用件は?」


プリンツが首を傾げて、


「資金袋を返してもらえるかな?」


提督は用件を言った。


・・・・・・


昼になり、提督は帰還・・・


「ただいま。」


「おかえりなさい・・・ってそれをどこで!?」


霧島は驚きを隠せない。


「別に・・・適当に探していたら、見つけた。」


「適当って・・・」


「まぁ見つかったのだから、これ以上の詮索は終わりだ・・・皆を帰還させろ。」


「・・・わかりました。」


霧島は不満に思いつつ、皆に帰還するように指示をした。


・・・・・・


「見つかったのはいいんですけど・・・」


霧島は頭を抱えて・・・


「中身は見つかっていないんですよね?」


「ああ、中はすっからかん。」


「じゃあ意味が無いじゃないですか!!」


「そんなに怒るなよ・・・袋が見つかっただけでも良しとしよう。」


「・・・・・・」


霧島は不満げだ。


・・・・・・


盗難事件から1週間以上が経ったある日の事、


「霧島、聞きたいことがあるんだが・・・」


「はい、何でしょう?」


珍しく提督から質問があり、


「霧島から見た視点の答えでいいからね。」


「・・・はい。」


「艦娘・・・いや、女と言うのはどうして簡単に男に体を差し出すんだ?」


「はい?」


「よく、「金が必要な時」 「借金返済」を理由に体を差し出す話をよく聞くからさ・・・」


「・・・・・・」


霧島も提督の質問に困惑しつつ、


「それは・・・女と言うのは男と違って働ける範囲が限られていますからね・・・すぐにお金を用意しろと言われたら、


 最悪の場合に自分を売ると言う形になるんだと思います。」


「そうか・・・望んでもいないのに生活のためか・・・辛いな。」


「・・・・・・」


「まぁ、多分ないだろうけど霧島が金に困る事態になった時、絶対にその「最悪の場合」はするなよ?」


「はい、わかってます。」


「よし・・・変な質問をして悪かった。 今日の書類はこれね・・・後、少し外出するから・・・帰りは昼過ぎで。」


そう言って提督は執務室から出て行った。


「・・・司令はどうしてあんな質問をしたのでしょう?」


普段するはずのない質問・・・霧島の脳裏に残った。


・・・・・・


それから更に1週間が経過した後、また盗難事件が起きた。


「どうして・・・先ほど片づけたはずなのに!」


霧島は2度の盗難を許してしまったことに怒りを覚えた。


「絶対見つける! そして、捕まえたらじっくり尋問してやるんだから!」


そう言いつつ鎮守府の皆に指示を出す。


・・・・・・


結局、犯人は見つからず霧島は焦っていく。


「まだそんなには遠くへ行ってないはず・・・皆さん、もう少し捜索範囲を広げましょう!」


捜索中の皆に指示を出すが、


「やめておけ、見つからんだろうからな。」


提督は相変わらずの態度・・・冷静なのかただの面倒くさがりなのか・・・


「しかし、司令! もう2度も盗まれたんですよ!!」


「知ってる・・・でも、もう手遅れだと思う・・・袋は見つかっても、中身は取られているだろうな。」


「・・・・・・」


提督の言うことは最もだが、2度も・・・いや、資金袋を提督から預かり、それを紛失してしまった責任と盗んだ


犯人への怒りが募っているせいか・・・


「私は諦めません・・・絶対に・・・絶対に見つけます!」


霧島は捜索を続けた・・・


だが結局、資金も袋も行方がわからず、また打ち切りになってしまったのだが・・・


・・・・・・

・・・



「少し出かける・・・帰りは昼過ぎかな。」


また提督が出かけて行った。


提督が向かった先は・・・やはり、プリンツのいる宿舎。


提督が扉を叩く。


「だ、誰かな?」


扉を開けたのは、プリンツではなく駆逐艦のZ1であった。


「プリンツはいるかな?」


「いるけど・・・」


Z1は何故か表情が暗い。


「? どうした・・・プリンツがどうかしたのか?」


不思議に思い、提督が中に入ると・・・


「・・・・・・」


そこで提督が見た光景は・・・


・・・・・・

・・・



鎮守府に帰還後、提督は誰かと会話をしていた。


「霧島が必死に犯人を捜していたよ・・・でも、見つかるわけがないんだよな。」


「・・・・・・」


「なぜなら犯人は外部の人間ではなく、内部の人間だったからだ。」


「・・・・・・」


「霧島が片づけた資金袋を時間も掛けずに盗めたってことは、普段から袋がどこにあるかがわかる人間、


 つまり、この鎮守府にいる人間の誰かという事になる。」


「・・・・・・」


「そして・・・その袋が何故か海外艦の宿舎のプリンツの部屋に置いてあった・・・もちろん彼女は犯人じゃない。」


「・・・・・・」


「プリンツはドイツ艦・・・そう、お前と同じ国の艦娘だよ・・・ビスマルク。」


「・・・・・・」


提督の前にいたビスマルクは無言のままだ。


「駆逐艦の子から聞いたよ・・・プリンツはお前が宿舎から出た後、すぐに働きに出ていたことを。」


「・・・・・・」


「夜の仕事とZ1は言われていたようだけど・・・本当は体を売っていたんだろ?」


「・・・・・・」


「部屋の中を見たけど、家財道具はほとんど置いていなかった・・・相当苦しい生活をしていたんだな。」


「・・・・・・」


「無理が祟って、ずっと寝込んでいたよ・・・顔も体もあざだらけで、うわ言のように「ビスマルク姉さま」と言っているって。」


「・・・・・・」


「それで、お前はプリンツたちのために資金袋を盗んで届けた・・・違うか?」


「・・・・・・」


無言だったが、しばらくしてビスマルクは口を開いた。


「知らなかったの・・・あの子が・・・あんなに苦労していたなんて・・・」


ビスマルクの口から徐々に真相が語られた。


・・・・・・

・・・



(ここからビスマルクの回想)



「今日は休みだし・・・久しぶりにあの子たちの宿舎へ行こうかしら。」


ビスマルクには、同じ国の艦娘がいて、重巡のプリンツ、駆逐艦のZ1、Z3がいる。


他にも仲間がいるが宿舎にはこの3人しかおらず、ビスマルクも実はその宿舎で一緒に住んでいたのだ。


「私が先に出て、すぐに「私と同じ鎮守府に来なさい」とは言っておいたけど、まだ来ないのよね。」


着任してからいくら待っても来ないので、心配になっていたようだ。


「でも・・・私が行くんだし、プリンツも「姉さま~!」って言って喜ぶに違いないわね!」


その時のビスマルクの気持ちはその程度であった・・・プリンツに会うまでは・・・


「プリンツ! レーベ! マックス! 元気にしてた~?」


ビスマルクが扉を勢いよく開けて、


「・・・何!? どうしたの!? プリンツ!?」


ベッドで苦しそうに寝込んでいたプリンツと、側で看病するZ1とZ3・・・明らかにただならぬ光景にビスマルクはすぐに駆け付ける。


「あ、ビスマルク姉さま・・・」


声に反応したのか・・・寝ていたプリンツが目を覚ます。


「どうしたの? 何があったの・・・その傷は、 一体何があったの!?」


状況が呑み込めないビスマルクがひたすら問うが・・・


「・・・僕が説明するよ。」


Z1の言葉で、ビスマルクは外に出た。


・・・・・・


「あの後、ビスマルクがいなくなった後・・・」


Z1が詳細を話した。



ビスマルクが宿舎から出た後すぐに、プリンツたちは戦力外通告を受けた。


理由は重巡と駆逐艦の数が多すぎた事・・・ビスマルクと言う戦艦がいたからまだ使っていたが、その本人が


宿舎から出て行ったことで、利用目的がなくなる。 ましてや海外艦などは、一部の提督は使用を拒否していたことも


あり結果、捨て艦に近い扱いを受けてしまったらしい。



「・・・・・・」


「そしてすぐにプリンツは働きに出たんだ。」


「・・・働くって?」


「プリンツは「夜の仕事」だとか言ってて詳細は教えてくれなかったけど・・・」


「・・・・・・」


「帰って来た時はあざができてて「お客さんから暴力を受けちゃった」とも言っていた。」


「・・・・・・」


「ずっと働きっぱなしだったから、先週から寝込んでしまって・・・まだ体調は良くないんだ。」


「・・・・・・」


「辛うじて最低限の生活は出来てる・・・プリンツがお金を貯めていたから・・・でも、もう底をつきそうかな。」


「・・・・・・」


「ビスマルクが今いる鎮守府はどう? やりがいはある? 生活は楽しい?」


「・・・・・・」


自分たちの事で精一杯なのに、私の心配をするZ1を見て・・・


「ごめんなさい・・・これお土産ね・・・もっと多く持ってくればよかったわ。」


「そんな・・・十分だよ、ありがとう。」


「・・・また来るから・・・その時はまた持ってきてあげるから・・・」


そう言ってビスマルクは宿舎から出た。


・・・・・・

・・・



(ここから現実)



「ごめんなさい・・・盗んだお金は私が全て払うから・・・」


「いや、金の問題じゃなくてさ・・・」


「ごめんなさい・・・」


「違うって・・・どうしてオレに相談してくれなかった?」


「・・・・・・」


「どうして相談せずに盗みをしたんだ?」


「・・・・・・」


「お前の気持ちは痛いほどわかる・・・妹分が苦しい生活をしていたから、耐えられずに鎮守府から資金を盗んで


 彼女たちの生活費に充てた気持ちはオレにだってわかる。」


「・・・・・・」


「でも、だからって盗みは良くない・・・本来なら処罰の対象・・・いや、即解体行きだよ、お前のしたことは。」


「・・・ごめんなさい。」


「残念だけど、お前をこの鎮守府に置くことは出来ない・・・犯罪者をかくまうほどオレは優しくないんでな。」


「・・・・・・」


「荷物をまとめて鎮守府から出て行く準備をしろ・・・それが出来たらもう一度オレの所に来い。」


「・・・・・・」


ビスマルクは無言で首を縦に振ると、執務室から出た。


・・・・・・


準備が出来たのか、ビスマルクが再び執務室にやってきた。


「・・・もう未練はないか?」


「・・・ええ。 今までお世話になったわ・・・じゃあ、さようなら。」


そう言ってビスマルクは去ろうとしたが、


「ほら、忘れものだ。」


提督がビスマルクに何かを渡した。


「? 提督、これは?」


「本来払う必要はないが、オレの慈悲だ・・・当面の生活費だ、プリンツたちと一緒に暮らして無駄に使わなければ、


 約1年くらいは生活できる金額だ。」


「・・・・・・」


「プリンツたちのいる宿舎に戻るんだろ?」


「・・・全てお見通しね、提督は。」


「・・・・・・」


「提督・・・ダンケ。」


ビスマルクはそれだけ言うと、鎮守府から去った・・・その姿を提督はずっと見つめていた。


・・・・・・


ビスマルクがこの鎮守府から去った情報はすぐ皆の耳に伝わり、衝撃が走った。


皆は提督に理由を尋ねたが、答えは同じ。


「ビスマルクが自ら退任を選んだ、それ以上の言及はするな。」


皆も「ビスマルク自身」と聞かされて、それ以上の言及はしなかった。


あれから月日が流れて・・・


ビスマルクさんの話題が消えかけていた時の事、


私は今日は休日で、鎮守府外で行っているイベントに参加していた時の事、


正面に見覚えのある顔が・・・


「ビスマルクさん・・・」


忘れるはずもない、あの髪型とあの普段の格好・・・声を掛けようと思いましたが、


「・・・あの子は誰かしら?」


連れの子がいたようで、声を掛けられませんでした。


「・・・・・・」


ビスマルクさんは私には気づいてない様子で、結局最後まで声を掛けることも、掛けられることもありませんでした。


「・・・・・・」


もう、関係ない、もう心配する必要もないんだな・・・と悟った私は、そのまま去りました。


・・・・・・


その後、ビスマルクがどうなったのかは誰1人として知る由もなかった。











「ある海外艦の苦悩」 終











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2017-10-09 13:07:29

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