2015-04-10 18:50:47 更新

概要

この物語は、鎮守府で働く清掃員の青年と、艦娘や提督が話したり、遊んだりするお話です。
たまにシリアス……というより、しんみりした展開が入るかもしれません。

修正しました(ごめんなさい)


前書き

鎮守府で働く青年のお話~。
一般市民から見た艦娘たちはどのように映るのか

色々おかしなところを修正してます。



もう1人の青年の物語






鎮守府清掃員




艦娘や提督が目を覚ます少し前から、この青年の仕事はスタートする。


鎮守府内を清掃をするという仕事につき始めて約1ヶ月。青年の清掃はまず港近くから。


まだ、ほんのり薄暗く、海から吹いてくる風が心地いい。青年は仕事をしている中では、この風をあびる瞬間が一番好きだった。


青年「……~♪」


これだけ大きな鎮守府であるのにもかかわらず、清掃員はこの青年ただ一人。仕事の合間に、鼻歌のひとつやふたつ、歌いたくなるのも当然だろう。


港で、青年の鼻歌だけが風の音と交じり、お世辞にも綺麗とはいえないハーモニーが響く。


青年「~♪」


??「随分とご機嫌だね」


青年「うぇ!?」


青年が驚き、振り返ると、ここの鎮守府の提督が立っていた。提督は、ニコニコとした表情でこちらを見ていた。


青年は、慌てて挨拶をする。提督は、「そんなにかしこまらなくても」と言いながら青年に挨拶を返す。


提督の人柄はとてもよく、ここにいる艦娘達にも好かれていた。


提督「そろそろ朝ごはんができる時間だろうからね。君も食べるだろう?」


青年「は、はい」


1ヶ月も経っているのにもかかわらず、青年には慣れないことがあった。それは食堂に行くと必ずと言っていいほど艦娘達がぞろぞろといる中、男一人でご飯を食べなければならないということだった。


もちろん、艦娘の中には挨拶を交わしてくれたり、話しかけようとしてくれる者もいる。


だが、青年は自分の立場のことについて考えると、そう簡単に仲良くしていいものなのだろうかと疑問に思い、ついそっけない態度をとってしまうことの方が多かった。


提督に連れて行かれ、食堂の前にたどり着く。できれば、提督と一緒の方が気が楽ではあったがそうはいかない。既に艦娘達が席を占領してしまっていたからだ。


提督「相変わらず早いなあいつら……でも青年君。腹ごしらえは大事だぞ。しっかり食べるんだ」


青年「あ、はい……」


青年は、提督と別れると、朝ごはんの定食を頼み、もらった後、出来る限り艦娘のいない席を探して座る。


青年「……いただきます」


幸いにも両隣に、艦娘はいない席に座れた。


今日のメニューはご飯と味噌汁、焼き鮭にほうれん草のおひたしとたくあんという見たままの和食の定食であった。


箸でご飯をすくい、まず一口。暖かな味わいが口の中で広がったと思うと青年は自然と微笑んだ。それほどの美味しさだったらしい。


その後も青年は、孤独で静かな食事を楽しむ……つもりだった。


長門「む、ここしか空いていないようだな」


陸奥「ちょっと今日は遅れちゃったからね。仕方ないわ。青年君、おはよう」


青年「あ、おはようございます……」


青年の隣に座ったのは長門型戦艦の二人だった。この鎮守府では、トップクラスの実力を誇っており、第一艦隊で活躍している。


長門「青年も来て、1ヶ月か……ここには慣れたか?」


青年「あ、いえ……まだ……です」


陸奥「ふぅん、結構かわいい顔してるのにね。だったら、私達がきっかけでも作ってあげる?」


長門「そうだな。一応、うちの鎮守府では全員仲良く、がモットーとされているし……損はないだろう」


青年「え……」


たわむれてみる


陸奥「というわけで、駆逐艦のみんなと仲良くしてみたらどうかしら?」


青年が連れて来られたのは、駆逐艦と呼ばれる艦娘達のいる寮だった。


青年「え、えっと、どうすれば?」


陸奥「適当に掃除してればいいのよ。みんないい子達だから、きっと声をかけてくれると思うわ」


青年「は、はぁ……」


青年は陸奥に言われるがまま、駆逐艦寮内の掃除を始めた。


まずは、誰しも通る廊下の窓を綺麗に拭くことから始めた。とは言っても、意外にも窓は綺麗で、青年はあまり仕事をやっている感じはしなかった。


青年が窓拭きをしていると向こうの方から一人の娘がこっちにやってくる。


夕立「あれ? 青年さんが窓ふきっぽい?」


青年「あ、え~と、まぁ」


夕立「いつもはもっと後にするよね?」


青年「うん。でも、たまには気分を変えてやってみようかと思って」


夕立「おぉ~、何かベテランっぽい」


何がベテランなのかまったくわからない。それに、始めて1ヶ月の仕事である。


青年はそんなことを考えてしまう自分に思わず苦笑してしまった。


夕立「お仕事頑張ってね」


青年「あ、ああ」


夕立「じゃあ、私は遠征に行ってくるっぽい!」


青年「うん。がんばって」


夕立と別れを告げたあと、陸奥が近くにやってきて、ニコニコしていた。


青年「え~と……」


陸奥「よかったじゃない。この調子でどんどん仲良くなっていけば、きっと大丈夫よ」


青年「は、はぁ……」



青年は陸奥がその場を去った後も一通り、駆逐艦寮を清掃し、移動することにした。



青年「……次は空母寮か。あの人に会いたくないなぁ……」



青年はそうつぶやき、空母寮内に入っていった。


空母寮内もこれと言って、大きな汚れというものはなかったが、青年は清掃を始める。


青年がしばらく清掃していると、後ろの方で声が聞こえた。


??「あら? 青年じゃない」


青年「あ、瑞鶴……さん。おはようございます」


瑞鶴「おはよう。どういう風の吹き回しかしら?」


青年「いや……ちょっと、空母寮内を清掃しようかと思って」


瑞鶴「ふぅん……空母寮が汚いから優先的に掃除しに来たって言いたいの?」


青年「い、いやぁ、そんなことはないです……。掃除しようがないくらい綺麗ですよ」


そう、青年が先ほど会いたくないと言ったのは、この瑞鶴である。


今でこそこの様に会話をしてはくれているものの、来たばかりの時は青年のおどおどした態度に瑞鶴が何度も怒ってちゃんとしたコミュニケーションはとることができなかった。


少し会話ができるようになったのは、理由があるのだが、これはまたいつかの話で……。


瑞鶴「そう。あ! わかってると思うけど、私と翔鶴姉のお部屋の前は絶対に綺麗にしててよね!」


青年「わかってますよ……」


瑞鶴「徹底的にお願いね! 特に! 一航戦のお二人の部屋よりかは少なくとも……ね?」


青年「はは……。考えておきます。……というより、そんなに加賀さんや赤城さんに対抗意識燃やしてるってことはお互い、いいライバル関係……何ですか?」


瑞鶴「そんなわけないわよ……。ま、あなたにはわからないでしょうね……」


青年「?」


瑞鶴「……ま、いいわ。私、これから出撃あるみたいで、提督さんに呼ばれてるから。掃除頑張ってね」


青年「は、はい……頑張ります」


瑞鶴「あ! そうだ……勝手に私達の部屋とか入ったら爆撃するからね?」


青年「入りませんよ……というより許可されてませんし」


瑞鶴「じゃあね~」




青年「……はぁ。疲れた……」


青年は、瑞鶴を見送った後に大きなため息をついた。


青年は、別に瑞鶴のことが特に嫌いなわけではないのだが、どちらかと言うとその口調の勢いの強さが少しばかり苦手なのである。


落ち着いて静かに話したい少年は、瑞鶴のその話し方だけに苦手意識を持ってしまっているために、あまり会いたくないと感じてしまうようだ。


青年「でも……まぁ、俺と話してくれるだけ、いい人だよな……」


青年はそんなことをつぶやいて、また清掃を始める。床にゴミが落ちてたらそれを拾い、窓に汚れを見つけたらそれを拭く。


そんな作業を何度も何度も繰り返した。


どんどんと時間は過ぎていき、気づけばあっという間に昼ごはんの時間になってしまった。


青年は一度、空母寮を離れ、食堂へと歩き出した。


今日は金曜日であったから、青年が食堂近くに来ると、海軍特有のカレーの魔性の香りがした。


青年は、ここで食べるカレーが特に好きだったので、少し急ぎ足で、食堂へと入って行った。


青年「お、今日はちょっと空いているんだな……」


青年が食堂へとたどり着くと、一部の艦娘は出撃や遠征に行っているためか、朝ごはんの時のような賑やかさはなかった。


カレーを受け取ると、青年はまた、艦娘のいない席を探してそこに座る。


青年「いただきまーす……」


陸奥「あら、隣いいかしら?」


青年「あ、どうぞ……」


陸奥が青年の隣に座ると、陸奥は青年の方へと少しだけ身体を寄せてきた。


陸奥「ねえ、誰かと仲良くなれた?」


青年「あ、いや……瑞鶴さんとは会話した……くらいです」


陸奥「なるほどね……これは、『あの作戦』を実行しないといけないわ」


青年「え? あの作戦って何ですか……」


陸奥「それは秘密よ。でも、成功したらあなたは確実に、以前よりみんなと仲良くできるわよ?」


青年「そ、そうですか……」


陸奥「ま、今日の晩御飯の時を楽しみにしておいてね」


青年「わかりました……」



その後も、休むことなく仕事を続けた青年は夜、突如、提督に食堂へと呼び出された。


青年「えっと……用事というのは?」


提督「来たか。よしっ……じゃあ、始めるか!」


青年「な、何をですか?」


提督「おーい!!!! みんないったん静かにしてくれー!!! 青年君からみんなに言いたいことがあるみたいだぞ!!!」


青年「んなっ……」


提督に大声で振り返った艦娘一同の視線は青年の方を向く。青年はこの時、経験したこともないはずの、結婚式での友人代表スピーチを披露する人の気持ちがわかった気がした。


青年「え、えっと……」


提督「……」


頭の中でどうすればいいのかを考える。何か一発ギャグで笑いでも取れたらいいのだが、青年にはそのようなギャグのネタどころか、それをする勇気すらない。


青年「あ、あの……」


瑞鶴「仕方がないわね……もっとハッキリ言いなさいよー! ゆっくりでいいからー!」


陸奥「あら、思わぬところから援軍が入ったわね」


青年「……あ、あのっ! 僕はまだこの鎮守府に来て……い、一ヶ月ほどしか経っていませんが……みなさんと仲良くできたらいいなと思ってます!! だから……よろしくお願いします!!」


提督「……なんだ。思ったより大きな声を出せるじゃないか」


青年「あ、えっと……」


青年がその時出した勇気に、長門と陸奥が拍手を添える。それにつられて、その場にいた艦娘達全員が続いた。


食堂内がまるで、曲の演奏が終わったコンサートホールのように思えるような、そんな、大きな音が響いていた。


青年「……」



その後というものの、青年は食堂内で色々な艦娘に絡まれた。


ある艦娘は酒をすすめてきたり、ある艦娘は青年のおどおどした態度をからかい気味にいじってきたり……。


しかし、青年には全て悪いようには思わなかった。むしろ、今まで経験したことのない楽しさを覚えたのだった。


鬼ごっことストーカーと


次の日の朝、青年はいつもより早く目が覚めた。まず、立ち上がり、体を思い切り伸ばす。


青年「んっ……はぁ……せっかくだし、仕事しようかな」


青年はそう言って、いつもより早く港へと向かうのであった。


港に着くと、大好きな風が吹いている。青年は掃除をしながらこの風を思う存分に楽しんだ。


青年「昨日はあんなことあったけど……ま、よかったんだよな」


そんなことをつぶやきながら、掃除を進めていくと、港の近くでカモメが何羽か飛んでいた。おそらくリーダーが決まっているのだろうか。一羽のカモメが飛べば、それ以外の者も続く。そのリーダーがあっちに行けば、ついて行き、こっちに行ってもついて行く。


青年「……まるで鬼ごっこだよな。あれ……いや、どちらかと言うと、ストーカー?」


提督「なかなか面白い例えをするね」


青年「あ、提督。おはようございます」


提督「おはよう。昨日はよく眠れたかね?」


青年「お、おかげ様で……」


提督「うん。ウチの艦娘達はみんないい子だから、君ともきっと仲良くしてくれるはずだ。まぁ、多少やっかいなのもいるがね」


青年「……まぁ、そうですね……」


提督「そろそろ朝食の時間だな。君もそろそろ来たまえ」


青年「あ、はい」



青年が食堂へとたどり着くと、一部の艦娘が話しかけてきてくれたり、掃除の依頼を頼まれたりした。


青年はほどよく、受け入れ、食事後、頼まれたところを中心に掃除することにした。


青年「~♪」


今日の青年はいつもより上機嫌だった。鼻歌も明るいタイプの歌になっている。


青年「とと……こんな感じか」


??「あ、青年さんだ!」


青年「?」


島風「……」


青年「えーと、島……風?」


島風「うん!」


青年「……何か用かな?」


島風「島風、青年さんと遊んでみたいの」


青年「え、今仕事中なんだけど……」


島風「むー。あっ! ……そりゃ!」


青年がぼさっとしていると、島風は青年が手に持っていた雑巾を取り、そのまま走り去ろうとした。


何があったかわからず青年は島風の方を見る。


島風「返してほしかったら、つかまえてみてー!」


青年「え」


そう言い残すと、島風はあっという間に廊下の向こうへと走り去ってしまった。


青年は少し間を置いてから、島風に無理やり鬼ごっこに参加させられたということを理解した。


青年はそのまま、島風の後を、掃除道具をそのまま放置したままにして、追いかけた。


しかし、青年が去ったその後、一人の艦娘が放置されたままの掃除道具を見つけた。


大淀「……あら?」




追いかけたのはいいものの、姿の見えない相手を無理に追いかけるのは得策ではないと考えた青年は一度立ち止まって周りを見てみることにした。


すると、遠くの方で島風の独特なあのリボンらしきものが見えたので、そっちへと向かう。


それに気づいた島風は、顔をこちらへ向けると少し微笑んで青年を見た。


島風「青年さんおっそーい!! 私はこっちだよー!」


青年「くっ……」


青年は島風を捕まえようと必死に追いかける。だが、島風は追いかけられるのに慣れているのか、フェイントをまぜるような動きで青年を翻弄する。


青年「どうすれば……」


島風「私には誰も追いつけないよ!」


そう言うと、島風はまた走り去ってしまった。


青年「島風って、陸でも結構速いんだな……。海の上だけかと思ってた……。う~ん、どうしよう……」


そう青年がつぶやいた瞬間、ポンポンと肩が叩かれたのを感じた。振り返ると、笑顔の大淀が立っている。


大淀「少し、お話しませんか?」


青年「……はい」


色々思うところがあったが、青年は大淀の向けてる笑顔から底知れぬ何かを感じ取ったため、言われるがままにすることにした。


司令室へと連れて来られ、青年は空いている席に座らされる。


大淀「さてと……まず、何から話しましょうか?」


青年「お、大淀さんに……お任せします」


大淀「そうですか……。そう言えば先ほど、廊下のところに放置されたままの掃除セットを見つけたのですが」


青年「……。すいません。僕です」


大淀「ふふっ。だと思いましたよ。ですが、あなたがあんな風にサボるとは思えませんし……何か理由があったんですよね?」


青年「え、ま、まぁ……」


掃除セットの件を言われ、怒られるのかを心配し、ある程度の罰は受けることを覚悟していた青年だが、少し安心し、島風に鬼ごっこに参加させられたということを打ち明けた。


その話を大淀は、何も言わず、微笑んだまま聞いていた。


大淀「なるほど……。ですが、島風ちゃんの気持ちもわかる気がしますね」


青年「気持ちって?」


大淀「ほら、あの子は姉妹艦が一人もいないので……遊び相手と言いますか、そういう存在の人がほしかったんじゃないでしょうか?」


青年「……」


大淀「青年さんはどうですか? 別にあの子にあんなことされたからと言って本気で怒ってるわけではないですよね?」


青年「あ、はい……どちらかと言うと、結構楽しかったって言うか……。鎮守府ってもっとお堅いところだと思っていたので」


大淀「そういうところもあるでしょう。あなたも聞いたことがあると思いますが、うちの提督は『みんな仲良く』がモットーですからね」


青年「そうですね……」


大淀「ふふっ。でも、今はそれより、あの掃除道具、何とかした方がいいと思いますよ。島風ちゃんとはまた違う……そうですね。ちょっとだけ、『表情が硬い子』が持っていくのを見ましたよ」


青年「え……それ、本当ですか?」


大淀「はい」


青年「はぁ……困ったなぁ」


大淀「掃除道具はあなたの商売道具なんですから、大切にしておいてくださいね」


青年「はい……それでは、失礼します」


大淀「あ、そうそう。あともう一つだけ。島風ちゃんにこそこそ追いつこうとしてるあなたの挙動……少しだけストーカーのようでしたよ」


青年「……以後、気をつけます」



青年が島風と出会った場所に戻ってくると、既にそこには掃除道具はなかった。


青年「しまったなぁ……どこにあるんだろう」


??「青年さん……戻ってきたんですか?」


そんな声がしたので振り返って見ると、大淀が言った通り、少し表情が硬そうな艦娘が一人立っていた。鋭い眼差しでこちらを見ている。


青年「……えーと……弥生……だっけ?」


弥生「……」


青年「……なんか……ごめん」



青年は弥生の表情を見て、弥生が怒ってるような気がしたので一応謝っておくことにした。




弥生「弥生、怒ってなんかないですよ? ……すみません、表情硬くて」


青年「あ、そうなの……」


弥生「……ついてきてください」


青年「え?」


弥生はそう言うと、歩き出した。青年はそれに続いて行く。


やがて、連れて来られたのは弥生とその他の睦月型駆逐艦達の部屋の前だった。弥生はすぐに部屋の扉を開け、青年に入ってもいいと手招きをする。


青年「し、失礼します……」


弥生「これ、青年さんの掃除道具……」


青年「あ、ありがとう……」


弥生「……実は……真に勝手でしたが、青年さんの道具を借りて……ここの部屋を掃除しようとしました……睦月型は他の駆逐艦と比べると人数は割と多い方なので……結構散らかってます」


青年「あ、そうなんだ……」


弥生「ですが……うまくいかなくて……」


青年「……じゃ、じゃあさ。一緒に掃除でもする?」


弥生「……迷惑ではない……ですか?」


青年「……雑巾が今無いのは辛いけど……新しく持ってきたらいいだけだしね。それに弥生の掃除したいって気持ちは何となく無下にしたく……ないし」


弥生「……助かります」


青年「うん。それじゃ、いったん新しい雑巾だけ持ってくるから。ちょっとだけ待ってて」


弥生「はい」


そう言い残し、青年はいったん自室へと急いで戻り、新しい雑巾を持って睦月型駆逐艦の部屋へと戻った。


戻ると、弥生はどうやら床に落ちていた少し大き目のゴミを拾って待ってくれていたようだ。


弥生「……」


青年「弥生って結構仕事できそう……」


弥生「青年さんほどじゃない……です」


青年「……まぁ、ありがとう。じゃあ、始めようか」


青年と弥生は二人で掃除を始めた。


掃除をしていて、特に青年が関心を持ったのが弥生の手際の良さだった。掃除の難しいところでも、青年がアドバイスを与えるとすぐにそのアドバイスを活かし、綺麗に掃除してしまうのだ。


弥生「こんな感じですか?」


青年「うん。……弥生、すごいな……」


弥生「……それほどでも、ないです」


青年「でも、こんなこと言っちゃ悪いんだけど……掃除のやりがいがあるな、この部屋」


そう、掃除のやりがいがあるというのはその部屋が散らかっていると示すようなものだからだ。


もちろん、部屋が綺麗であるのにこしたことはない。だが、かと言って綺麗すぎるのは掃除する立場の者としては何とも言えない気持ちとなってしまうのだ。


弥生「そんなに汚かったですか?」


青年「いや、汚い……とまではいかないけど……何となく散らかってるから……細かいゴミが多いって感じかな?」


弥生「……なるほど」


青年「……」


弥生「……弥生、怒ってないですよ?」


青年「あ、いや。そんなこと思ってないから」


その後も二人で、こんな感じで仲が良いのかよくわからない掃除をした。




弥生「今日はありがとうございました」


青年「あ、うん。別にいいよ……。本当は艦娘の部屋には入っちゃダメなんだけどね……」


弥生「ということは……バレるとまずいんですか……?」


青年「そこまでまずいとまでは言わないけど……まぁ、言ってしまえば女の子の部屋に入るわけだし……ねぇ?」


弥生「……弥生はまだ、男の人のそう言った気持ちはわからない……です」


青年「……うん。今はそれでいいと思うよ……」


弥生「そう……ですか」


??「お、いたいた。おい、青年」


青年「はい?」


木曾「お前に届け物と言うか、ほら。お前の雑巾だろう」


そう言って木曾は少し乱暴に、青年の雑巾を投げ渡してきた。青年はそれを受け取ると、一礼し、木曾にお礼を言う。


青年「ところで、どうして、木曾さんが?」


木曾「いや、島風のヤツが、退屈そうにしてたのを見てな。話を聞いてみたら、お前の雑巾をふんだくったらしいから、迷惑かけるなって、形だけ説教しておいた」


青年「そ、そうなんですか……」



ここで、青年は先ほど、大淀から聞いた島風の姉妹艦がいなくて、寂しいのではないかという話について思い出した。



青年「あの、木曾さん……もしよければ、島風に後で伝えておいてくれませんか。『暇な時になら遊べる』って」


木曾「……やだねぇ。それはお前が言うことだ。俺が言うことじゃない」


青年「……」


木曾「お前も男だろう。それくらいハッキリ言ってやらなくて、どうする。……島風は港の方だ。今ならまだ間に合う」


青年「……そうですね、では、失礼します。あ、弥生……また、掃除したくなったら声をかけてくれていいから」


弥生「……わかりました。頑張ってください」



青年は、掃除道具一式を手に持ったまま、今まで以上のスピードで、港へと向かった。


港へと着くと、朝より少し風が強くなっている。青年は辺りを見回し、島風の姿を探した。


すると、港の端の方で、海をただ見つめている島風の姿を見つけた。青年は、その後ろへこっそりと近づく。


青年「……島風」


島風「……あ、青年さん、おっそーい!」


青年「あの……何て言うか、途中で鬼ごっこすっぽかして、ごめん」


島風「……いいよ。別に」


青年「その……さ。今回はダメだったけど、できるだけ頑張って暇作るし、その時に遊ぼう……」


島風「ほんと!? いいの?!」


青年「あ……うん」


島風「青年さん、ありがとー!!」


島風は嬉しそうに青年へと抱きつこうとしてきた。青年は慌てて、それをかわそうとし、後ろへと倒れる。


そんな様子を木曾が、遠くから安心した表情で見ていたのは、青年も知らない……。




その後日である。



??「あの、青年さん。ちょっといいですか?」


青年「……朝潮……だっけ?」


朝潮「はい」


青年が食事をとっている時に話しかけてきたのは、朝潮型の1番艦・朝潮である。


真面目な顔で話しかけてきたので、青年は少しだけ不安に思った。


そして、その不安は見事に当たるのだった。




朝潮「今度は朝潮と一緒に掃除してくれませんか?」


青年「……はい?」




朝潮に聞いたところ、どうやら弥生が、青年と掃除したことを『思わず』他の睦月型の子達に話してしまったらしく、その話はあっという間に広まり、駆逐艦寮内……特に、真面目な駆逐艦達の間では、その話で持ちっきりになっているという。


青年「え、えっと……つまり?」


朝潮「朝潮型の部屋を一緒に掃除してください」


青年「……はい」



朝潮と一緒!


さて、朝潮に呼び出された青年は掃除道具一式を持って朝潮型の部屋へと向かう。


既に、扉の前で朝潮は待ってくれていた。朝潮は非常に真面目な艦娘だと他の子が言っていたのもわかる。


朝潮「あ、青年さん。わざわざこちらまで来てくれてありがとうございます。では、入ってください」


青年「失礼します」



睦月型の部屋に入った時もそうだったが、女の子の部屋に特有な甘い香りを感じ取った青年は、緊張してしまう。


ましてや、女の子と二人っきりである。弥生の時は、弥生の表情が気になっていたため、そんな気持ちにはならなかったが、朝潮の場合だと少しばかり意識してしまう青年であった。



朝潮「では、えっと……何から始めればいいのでしょうか?」


青年「あ、そうだな……まずはとりあえず、ゴミ箱に入っているゴミを分別しながら、捨ててくれるかな? 俺は、ほこりのたまってそうなところを掃除しておくから」


朝潮「はい。で、ですがゴミを手づかみするのは……」


青年「ごめんごめん。これ、ゴム手袋。多分これなら大丈夫だと思うよ」


朝潮「ありがとうございます」


それから二人は、徹底的に部屋の掃除をした。


朝潮の掃除の仕方は弥生と違って、アドバイスを与えずとも自分なりに考えて、何とかしてこなそうとするタイプのようだった。


その姿を見て、青年は朝潮は意外にも掃除に慣れているということを感じ取った。


青年「手際……良いんだな」


朝潮「え? ま、まぁ……。私以外で、積極的に掃除をしようとする子はあまりいないと言いますか……。あ、別に文句を言っているわけじゃないんですよ!?」


青年「う、うん。わかってるよ……」


朝潮「あ、この隙間……難しい……」


青年「ん? どれ? ……あ~、これは……こうすれば……! っと」


朝潮「なるほど……そんなやり方が……。今後の参考にさせてもらいます」


青年「あ、いや。そんな大それたものじゃないよ」


そして、掃除を終え、朝潮型の部屋は綺麗になった。朝潮の表情を見ると、満足したようだ。


青年「あ、じゃあこれで……」


朝潮「あ、あの……お礼と言いますか……小腹、空きませんか? もし、よければ間宮でも」


青年「え? あ、遠慮しておくよ……」


朝潮「で、ですが、何と言うかこのままだと私の気が収まらないんですよ……。だから、お願いします」


青年「あ~……うん。じゃあ、一緒に行こうか」



さて、間宮にたどり着くと、それなりに艦娘が何人か既に客として、間食を食べたりしていた。


朝潮と青年が二人で入って来たことに、多少の驚きを見せた艦娘が何名かいるのだが……。


間宮「あら、朝潮ちゃん。今日は、青年さんと一緒なの?」


朝潮「あ、はい。たまたま、そこで出会ったので」


間宮「そう。じゃあ、何にする?」


青年「……」


朝潮「では、アイスをお願いします。……青年さんは何にしますか?」


青年「え? あ、う~ん……じゃあ、朝潮と同じのでいいです」


??「ちょ、ちょ、ちょっと待った!」


青年「?」


瑞鶴「あなた達、いつの間にそこまで仲良くなったわけ?」


青年「あ~……えっと……」


朝潮「……いや、掃除をきっかけに仲良くなっただけです」


青年「う、うん。そんな感じです」


瑞鶴「本当に?」


瑞鶴の疑いの目に、少し怯えた二人は、ほぼ同じタイミングで二回頷く。


そして、瑞鶴が「ふぅん」と言って、離れて行こうとしたその時だった―――









青葉「ニュースです! ニュースですよ! 青葉、見ちゃいました! 何と! 青年さんと朝潮さんが一緒にお部屋から出てきたんですよ!!!」



朝潮「……」



青年「……」



瑞鶴「……」


店内は静まり返った。


それと同時に、他の艦娘の視線が朝潮と青年の二人に集まる。


特に、強い視線が瑞鶴から向けられていた。



瑞鶴「……そう。お部屋から……ね?」


青年「……そ、掃除していただけですよ?」


瑞鶴「ふぅん……でも、これは秘書艦として、提督さんに報告させてもらうから」


青年「え? 瑞鶴さん、今秘書艦だったんですか?」


瑞鶴「そうよ。うちの提督さんの秘書艦ローテーションって言うのがあってね……たまたま、今回は私なのよ」


青年「はは。それはまたとんでもない、タイミングで……」


瑞鶴「そうね……。と・に・か・く! これは報告させてもらうから、それじゃあ!」


瑞鶴は、かなり怒った様子で甘味処『間宮』から出て行ってしまった。事態を察した青葉もこっそり出て行く。


二人が出て行ったのを見送ると、青年は大きなため息をついた。この後、待っているのは説教だろうか……最悪、解雇もありえるかもしれない。


他の艦娘達は青年のその様子を見て、今話しかけるのはよしておこうと気を遣ってくれているようだった……。


そんな中、青年以上に悩んでいる表情を朝潮が浮かべている。


朝潮「すいません……私のせいで、こんなことに…」


青年「あ、いや……朝潮のせいじゃないと思うよ……。俺が軽率だったって言うのもあるし…」


朝潮「朝潮も軽率に頼んでしまいましたし……」


間宮「まぁまぁ、お二人とも、こういう時は甘いモノを食べて、忘れましょ? 提督さんなら、きっとわかってくれるはずですよ」


そう言いながら、間宮は二人の前にアイスを並べた。


青年「……じゃあ、いただきます」


朝潮「……いただきます」


食べたアイスは、ほんのり口の中でとろけ、食べてるだけで幸せな気分になれる……そんな優しい味だった。


以前から、艦娘の間で、この間宮のアイスが大人気であるということは知っていたが、青年は初めて食べたので、その理由がわかった気がする。


青年「……美味しい」


朝潮「ですね……」


間宮「ふふっ。そう言ってくれると、作っている側としては、一番の幸せですね……」



その夜、予想していた通り、青年と朝潮は執務室へと呼び出された。


コンコン。


提督「ん。入っていいぞ」


朝潮が執務室を2回ノックすると、中から提督の気の抜けたような声が聞こえてきた。


青年と朝潮は執務室の扉を開け、おそるおそる中へと入る。その時に、瑞鶴の視線が鋭くなっているのが見えた。青年は目を合わせないようにしながら、朝潮と二人で並ぶ。



提督「えぇと……うん。呼び出された理由って言うのは……わかってるね?」


青年「……はい」


朝潮「……はい」


それを聞くと、普段は穏やかな表情をする提督がいつになく真剣な表情になる。


提督「青年君、君に艦娘の部屋に入ってはならない……としたのは、まぁ、その何だ……。若さゆえの過ち的なものを作ってほしくなくて……だな」


青年「……」


朝潮「……」


提督「どういった経緯で朝潮の部屋に入ったかは知らんが……」


朝潮「それは……私が、青年さんの方を……」


朝潮は言葉を続けようとしたが、青年は朝潮の言葉を遮るようにして、前にいきなり出た。


青年「提督。僕が悪いんです……朝潮は悪くありません。僕が、朝潮と一緒に掃除するように頼まれた時、ハッキリと艦娘の部屋には入っていけないことになっているのを、朝潮に伝えなかったことが原因なんです……。だから、朝潮だけは見逃してあげてください……この通りです」


青年は、提督に対して深々と礼をする。それと同時に執務室内を静寂が包んだ。


朝潮「……」


瑞鶴「……」


提督「……。青年君、頭を上げたまえ」


青年「……提督から、朝潮に対する処罰をなしにするという言葉を聞くまで、下げ続けます……」
















提督「あ、いや……その……処罰するつもりなんて、最初からないというか……」


青年「……へ?」


提督の言葉に、思わず頭を上げて驚いてしまう。提督の表情を見ると、いつもの穏やかな表情に戻っていた。


青年は、頭を上げ、もとの体勢に戻る。朝潮や瑞鶴も、キョトンとした顔で、提督の方を見ている。


提督「いや、何だ。君たちがここに来る前に、青葉が、今回の経緯につながることを教えてくれたんだよ。青年君が睦月型の部屋で弥生と一緒に掃除をしていて、それ以来、駆逐艦達の間では、その話が噂になっている。ということとか……」


青年「……だ、だったらなおさら……」


提督「いや、だからこそ私は考えたんだよ。……君が手伝わないといけないということは、うちの艦娘達の私生活というか、身の回りの生活に対する配慮の意識が欠けているとみた。だから、急に決まったことだが、明日、君に艦娘の部屋の整理整頓ができているかどうかを抜き打ちチェックしてもらおうと考えている」


青年「……はぁ」


提督「そうだな……。明日だけでなくとも、今週はいっそ、鎮守府内の美化週間ということにしてしまうか……。どうだ? いい考えじゃないか?」


青年「いや……いいんでしょうか? それ……」


提督「どうしてだ? 君の弥生や朝潮と……何だ。過ちを犯さなかった、というところを評価したんだが……もちろん、今後もないと思っているからこその頼みだ。どうだ?」


瑞鶴「……」


青年「あ、じゃ、じゃあ……そういうことで」


提督「話が早くて助かる。では、明日からよろしく頼むよ」


青年「……はい」



それから、二人は、執務室を出て、長い廊下を歩く。


この時ばかりは、朝潮と青年は特に何も話すことはなく、ただ、並んで静かに歩いているだけだった。


しかし、青年と朝潮が別れようとした瞬間、朝潮が青年の袖をクイッと、さり気なく引いた。


朝潮「あ、あの……今日は、ありがとうございました」


青年「あ、気にしないで……」


朝潮「……青年さんが、私のことを庇ってくれようとした時、嬉しかったです。……えっと……それだけです。お休みなさい」


青年「……うん。お休み」


朝潮が少し、急ぎ足で帰っていくのを見送り、自分も部屋に戻ろうとした時、目の前に瑞鶴が歩いてくるのを見つけ、あまり関わらないように歩いた―――


瑞鶴「ちょっと、待ちなさいよ」


青年「はい……」


――――つもりだったが、やはり呼び止められてしまった。


瑞鶴「……私は、まだ、完全に許したわけじゃないんだから……。提督さんはああ言ってるけど」


青年「はい……瑞鶴さんの言ってることの方が正しいです」


瑞鶴「……」


青年「……それでははこれで……」


瑞鶴「……何で避けようとするの?」


青年「あ、いや……。別にそういうわけじゃ……」


瑞鶴「私って、そんなに絡みづらい……かしら?」


青年「……。そんなことは……」


瑞鶴「やっぱり……私と話す時だけ、目線、逸らすよね」


青年「……」


瑞鶴「もういいわ。お休み」


青年「……」


美化週間スタート!!


翌日の青年の目覚めはいつもより、気分の悪いものだった。


昨晩の瑞鶴との会話が、頭から離れていない。


瑞鶴『やっぱり……私と話す時だけ、目線、逸らすよね』


そんなことを言われたのは初めてだった。


もしかしたら、無意識のうちに瑞鶴と話す時だけ、出ていた癖なのかもしれない。


そんなことを思うと、青年は瑞鶴に早急に謝った方がいいのかと思ったが、急に謝ったら謝ったで、機嫌を損ねそうな気がして怖かった。


青年「あ……時間、ちょっとだけ過ぎちゃった……」


時間は思ったより早く過ぎていた。気づけばいつもなら港の掃除を始めている時間だった。


ちょっと遅れ気味に部屋を出た青年は、その日の朝食もなかなか喉を通らなかった。


艦娘のみんなが食事を食べ終わる頃、提督がみんなの前に立ち、昨日話した例の美化週間のスタートを告げた。


面倒くさそうにする艦娘もいれば、真面目そうな艦娘達はちょっとだけ興味のある素振りを見せていた。



その後、提督に呼ばれた青年は執務室に入る。


提督「えぇと、まぁ、抜き打ちチェックだが、君の好きなタイミングでいいよ」


青年「大丈夫でしょうかね……」


提督「……私からの委任状的なものも持っていれば、艦娘達も文句は言えないだろう。さ、これを持って行っておきたまえ」



青年は提督の判子を押してある委任状を受け取ると、とりあえず、まずは一部屋、チェックしてみることにした。


青年「とりあえず……空母寮から回ってみようか」


そう言って青年が立ったのは、一航戦と呼ばれる、赤城、加賀の二人の部屋の前である。


二人はこの鎮守府の艦隊の中で主力として活躍している。そのため、他の艦娘達からの信頼も厚く、尊敬されている身でもある。


青年「……では」


青年がノックすると、「はいは~い」という穏やかな声がし、扉が開いた。中から顔を覗かせていたのは赤城の方だった。


赤城「あら、青年さん……どうかしたんですか?」


青年「あ、えっと……何と言えばいいのかわからないんですけど……美化週間ということで、お部屋の抜き打ちチェックというものをやってます……」


赤城「えっ?! そ、そうなんですか?」


加賀「それは、どういうことなのかしら?」


どうやら、向こうの方で加賀も聞いていたらしくこちらへとやって来る。この二人は、性格が正反対とまではいかなくても、かなりの違いがある。


赤城の方はそれなりに笑顔を見せたり、驚いた顔を見せたり、表情が豊かなのに対し、加賀の方は少しもの静かで、あまり表情を変えようとはしないタイプなのである。そのため、艦娘の一部では加賀のそのようなところを少しだけ苦手としているものもいるようだ。


青年もどちらかというと、加賀には少し苦手意識があった。瑞鶴とはまた違うタイプの苦手で、加賀の鋭い視線が、どうも克服できない。


青年「あ、えっと……こちらに提督の委任状というのもありまして……抜き打ちチェックというものをさせてもらいます……」


加賀「……なるほど。提督の言う事であれば……。具体的にはどのように?」


青年「あ、えっと、とりあえず、部屋の中が散らかってないかチェックするくらいです」


赤城「それなら、この部屋は大丈夫そうね……。青年さん、どうぞ」


青年「あ、失礼します……」


青年が赤城達の部屋に入ると、文句のつけようがないくらいに綺麗な部屋が広がっていた。


赤城「私はたまに、散らかしちゃうことがあるんですけど、加賀さんがしっかりしてるから、結構整理できているんですよ」


加賀「……身の回りの環境も綺麗にしておかなければならないと思ってやっているだけのことです」


青年「なるほど……」


赤城「青年さん、この後も抜き打ちチェックはするんですか?」


青年「はい、一応この美化週間の間はするようにと提督から言われてまして……」


加賀「提督の考えもわかる気がします。最近、少しそう言ったことに意識が薄い子達がいるみたいだから……」


赤城「ふふ。青年さんも大変ですね」


青年「あ、いえ……。一応これが仕事ですので」


赤城「そうですか……あ、そうだ。青年さん」


青年「何でしょう?」


赤城「……瑞鶴さんが元気ないようなんですが……何か知ってますか?」


青年「……え?」


赤城には悪気はなかったつもりだろうが、青年は嫌なことを思い出してしまう。


赤城の話によると、今朝、瑞鶴の姉にあたる翔鶴から、瑞鶴の元気がないという話を聞いたそうだ。また、加賀も加賀で、いつもと違い、張り合いがないと感じたようで、少し違和感を覚えたらしい。


加賀「別に心配をしているというわけではないのですが……。やはり、いつまでも落ち込んでいられると出撃に支障をきたすかもしれないので」


赤城「青年さん、この後も空母寮内を回るんでしょう? もし、よければ、翔鶴さんのお話も聞いてあげてください」


青年「あ、えっと……そういうのは提督に話した方がいいのでは……?」


赤城「そうなんですけど……やはり、私達としては早期の解決をしたいので。それに、普段から提督にはお世話になっていますし……こういうことではあまり、迷惑をかけたくないといいますか……」


青年「なるほど……。……わかりました、考えておきます」


加賀「……ところで、ちゃんとチェックはできているのかしら?」


青年「あ!? えっと……今すぐやります!」


青年は慌てて部屋の中のチェックをする。


やはり、見た目通り、かなり細かいところまで整理が行き届いている。目立った汚れはなく、机の上までピカピカだった。


青年は、ここで、チェックシートのようなものを取り出した。実は、この部屋に来る前に委任状と一緒に渡されていたのに気がついたのである。


そのチェックシートの各項目にチェックをつけていく。一通り付け終えて確認すると、改めて赤城達の部屋の整理の行き届きが完璧に近いことを確信した。



青年「え~と……はい。とっても綺麗なお部屋だと思います」


赤城「ふふっ。さすが、加賀さんですね」


加賀「……それほどでもないです」


青年「では……次の部屋に行くことにしますね」


赤城「はい。頑張ってくださいね」



赤城と加賀に一礼をしてから、部屋を出て、次の部屋へと向かう。


青年が次に立ったのは……例の瑞鶴の部屋、つまり、五航戦の部屋である。


青年は赤城達の部屋に入った時のように二回ほどノックすると、中から翔鶴が姿を現した。


翔鶴「あら、青年さん。どうしたんですか?」


赤城達の時と同じように抜き打ちチェックのことを伝えると、翔鶴は快く受け入れてくれた。


だが、中に入っても、瑞鶴の姿はなかった。


青年「……えぇっと、瑞鶴さんはいらっしゃらないんですか?」


翔鶴「瑞鶴ですか? 実は今朝方から元気がなくて……ついさっき部屋を出てどこかに行ってしまったんですよ……。何か悩みがあれば相談してくれればいいのに……」


青年「……」


翔鶴の顔はかなり淋しげだった。その理由が確実とは言わないが、ある程度予想はできている青年にとっては、罪悪感で胸がいっぱいになってしまう。



青年「えっと、じゃあ、チェックしちゃいますね……」


青年はすぐさま、部屋のチェックを行った。


こちらの部屋も、先ほどの赤城達の部屋と似て、しっかりと整理整頓されてある。まだ二つしか回ってないが、他の部屋もこんな感じナノではないかと思ってしまう。


青年「えぇと……はい。特に、汚い場所はないですね……。では、失礼します」


翔鶴「はい。お仕事お疲れ様です」


青年は少し、急いでその部屋を出た。この場にいつづけるのはよくない気がする。そう言った気持ちが出てきたからだった。


その後は、軽空母達の部屋を見て回った。さすがに全部の部屋が綺麗と言うわけにはいかなかったのが青年にとってはちょっと面白味があると思った。特に、千歳型と飛鷹型の部屋は、パッと見たところは綺麗であったのに、細かく見ると、空いた酒瓶のようなものが転がっていたりと、小規模な宴会の後のような状態になっていた。


青年「えぇと、今日はここまでかな……。一応、提督に報告しておかないと」


青年は、執務室へと向かい、歩き出した。


すると、向かいの方から弥生が歩いてくるのが見えた。


弥生「あ……青年さん、どうも」


青年「弥生か……。どうも」


弥生「美化週間と聞いて、他の子達、はりきってます……」


青年「あ、そうなんだ……」


弥生「実は……弥生、少し、掃除が……楽しいと思いました。青年さんのアドバイス、本当に役に立ちます」


どうやら、美化週間になって、他の睦月型の子たちも、部屋の整理整頓に気を遣うようになったらしい。とは言ってもまだ初日だが……。


しかし、弥生はこの前一緒に掃除して以来、掃除がマイブームとなりつつあるらしい。青年にとってはちょっと嬉しい出来事である。


青年「役に立ってるなら、よかった……」


弥生「はい。では、これで……」


青年「うん」


青年は弥生を見送ると、再び執務室へと歩き出すのであった。



海外艦、現る!


次の日、青年は最初に、海外艦寮を回ることにした。この鎮守府では、海外艦にはまず、海外艦同士で仲良くすることから始めてもらいたいらしく、海外艦寮というものを設けたらしい。とは言っても、今は人数が少なく、二人が同じ部屋で生活をしている。


青年「……。では……」


青年がノックをすると、扉が開く。


そこに立っていたのは、青年よりも小さい少女だった。


ゆー「あ……青年さん。Guten Tag」


青年「……こんにちは。えっと……ゆー」


『ゆー』というのは彼女の愛称のようなもので、本当の名前は、U-511という。ドイツ海軍の潜水艦で、つい最近この鎮守府に来たばかりの新人である。


ゆー「どうしたんですか?」


青年「えっと……お部屋の抜き打ちチェックというのを今やってて」


ビス子「なになに? あら、珍しいわね。青年がこんなところに訪ねてくるなんて」


ゆーの後ろから現れたのは、この鎮守府においては、ゆーの先輩にあたる、ドイツ海軍が誇る超弩級戦艦・ビスマルクである。


ビスマルクと青年はそこまで仲がよかったわけではないが、何度か日本の文化について聞いてきたことがあって、この二人は知り合いという感じで通っていた。


青年「ビスマルクさん、えっと……美化週間については知ってると思うんですが……」


ビス子「ああ、あれね。それがどうしたの?」


青年「実は……提督から艦娘のみんなの部屋を抜き打ちチェックするように言われてまして」


ビス子「つまり、綺麗さを見るってことね? いいわよ、見ても」


青年「え、そ、そうですか……では……」


これまで部屋をチェックした艦娘達は、提督からの委任状を見せなければ中に入れることをためらったはずなのに、今回はすんなり入ることができた。


青年は少しだけ、物足りなさのようなものも感じつつ、チェックを行う。


ビス子「どう? なかなかのものでしょ?」


青年「あ……はい。綺麗にまとまってると思います……」


ビス子「ふふん」


ビスマルクは得意げな様子で、こちらを見ている。


ここで青年は、昔に読んだジョークを紹介している本で、ドイツ人は勤勉で真面目な印象があるというのを感じたことを少しだけ思い出した。


確かにこれだけ見れば、なかなか真面目……と言えるのかどうかはわからないが、掃除にかける熱意のようなものは伝わってきたような気がした。


青年「これと言って言うことはないですね……。では、失礼します」


ビス子「ああ、待って。ほら、ゆー。あなた、青年に聞きたいことがあるんでしょ?」


ゆー「あ、えっと……」


青年「……?」


ゆー「私、実はここの他の潜水艦の子達とまだ馴染めてない……。でも、青年さんは、あの時勇気を持ったからみんなと馴染み始めている……どうすればその勇気を持てるの?」


青年「え、ええ?! 勇気だなんて……あの時は、どちらかと言うと、提督や陸奥さんの策略で嵌められたと言うか……」


ビス子「でも、あなたにはあの場で逃げるって言う選択肢もあったわ。勇気を持ったことには変わりないんじゃないかしら?」


青年「そ、そうなんですかね……」


ゆー「青年さん、教えて……」


青年「え、ええっと……」


期待の眼差しを向けてくるゆーのことは裏切れないと思い、青年は自分なりに思うことを述べた。


自分らしい態度で、接してあげれば向こうもわかってくれるはずだろうということや、向こうも向こうで気を遣ってくれているのかもしれないということまで……。


ゆーはその青年の話をいたって真剣に、途中で相槌を入れながら聞き続けていた。


青年「とまぁ……こんな感じです」


ゆー「参考になった。Danke」


青年「う、うん……そう思ってくれると嬉しいかな……」


ビス子「それにしても、青年も初めて来た時より、ちょっとは、明るくなったわね」


青年「そうですか?」


ビス子「ええ。私のお墨付きよ?」


青年「……」


ビス子「あ、あれ、もしかして今の使い方って間違っているのかしら? 提督からはそうやって教えてもらったはずなんだけど……」


ビスマルクはたちまち、困惑の表情を浮かべる。青年としては、ビスマルクが『お墨付き』という、なかなか難しい日本語を知っていたことに驚きを隠せなかった。


青年「あ、いやいや。たぶん、あってると思いますよ……」


ビス子「そ、そう。よかった……」


ビスマルク的には、難しい言葉を使って日本に少し馴染んできたことをアピールしてみたかったのか、その本意は青年にはわからない。


しかし、普段は取り乱した様子をなかなか見せないビスマルクのこんな一面を見れただけ、何となく得した気分になった。


そして、青年は今の自分の仕事環境というのは、ある意味で、素のままの艦娘と付き合えるような環境なのではないかと思い始めるのであった……。そして、こんなところに身を置いている自分というのは、ちょっと恵まれているのではないかとも思う。


青年「あ、では、僕はこれで失礼します」


ビス子「お疲れ様。この後も仕事って、日本の清掃員はなかなかハードなのね」


青年「う~ん、どうでしょうか……まだ一部屋目ですし……それに、艦娘の皆さんみたいに、命をかけている仕事と比べると、僕の仕事なんて、ちっぽけなもんですよ……」


ビス子「……そうなのかしらねぇ。私は、あなたの仕事もかなり大きなものだと思うけど?」


青年「……」


ビス子「私達がこうやって、鎮守府内で気持よく過ごせるのはあなたの清掃のおかげかもしれないし……。……いつもありがとう。Danke」


ゆー「青年さん、頑張って……ゆーは、青年さんのこと、応援してる」


青年「う、うん……頑張るよ。あ、では、あまり長居するのはよくないので、これで……」


青年は、そう言い残してから、海外艦寮を出た。


これまで、あまりこのような形で、お礼を言われるのはなかったので、少し気恥ずかしかったのが一番の理由だった。


青年は熱くなっていく顔を、必死に冷まそうとしながら、早足で港へと行った。





さて、海外艦寮から離れ、港で風を浴びて一息つくと、青年は次にどこへ向かおうかと悩んだ。そして、青年はここであることを疑問に思う。


もし、昨日部屋をチェックされた艦娘達がこのことを他の艦娘に話していたら抜き打ちである意味が無いのでは……と。


青年「……う~ん、気にするだけ無駄なのかもしれない……」


青年は、そうつぶやきながら、戦艦寮へと入って行くのであった。


「榛名は良妻ですか?」「はい、もちろんです」 



戦艦寮に入った青年はまず、一番近くにあった部屋からあたっていこうと思い、ドアをノックする。


??「はい、どちら様ですか?」


青年「あ、えっと……青年です」


扉の向こうから聞こえた質問に青年が答えると、扉が開き、中から巫女の衣装を模したようなデザインの服を来た艦娘が一人、姿を少しだけ見せる。


榛名「青年さん、お疲れ様です」


青年「あ、どうも……えっと、今大丈夫でしょうか?」


榛名「はい、榛名は大丈夫です!」


青年「あ、榛名さんだけじゃなくて、その他の金剛さんとか、比叡さん、霧島さんの方も」


榛名「えぇっと……お姉様達なら少し出かけていますよ。今はたまたま、榛名が一人でお留守番です」


青年「そ、そうなんですか……」


彼女は、金剛型戦艦の3番艦で榛名と言う。その他にも、金剛、比叡、霧島という姉妹がいる。


様々な姉妹艦がいる艦娘達の中でも、彼女たち金剛型の姉妹仲というのは、かなりいいことで有名である。


というよりは、長女の金剛を妹達が、かなり尊敬していて、それぞれの信頼関係も厚いと言った方がいいのだろうか……。


青年「えっとですね……今、美化週間ということで、お部屋の抜き打ちチェックをやらせていただいているんです……」


榛名「そうなんですか……なるほど」


青年「で、榛名さん達のお部屋をチェックさせてもらうことになるのですが……大丈夫でしょうか? 一応提督からの委任状もあります」


榛名「そういうことでしたら、大丈夫ですよ! では、青年さん、どうぞ」


青年「失礼します」


青年がそう言いながら、ゆっくりと部屋に入ると、中から、おそらくお香を焚いたような、かなりいい香りがした。


青年は噂程度にしか聞いたことがなかったのだが、金剛姉妹の長女である金剛は、提督にかなりの好意を持っているらしく、細かなアピールを日々、欠かしていないらしいとか……。


榛名「あ、ニオイ、気になりますか?」


青年「あ、いえいえ。いい香りだと思います……バニラみたいな、そういう感じで」


榛名「よくわかりましたね。バニラの香りですよ。金剛お姉様、お香がお好きで、よく焚いていらしてるんです」


青年「なるほど……」


榛名「ふふっ。提督にちょっとしたアピールだそうです」


青年「あ、噂通りなんですね」


榛名「噂も何も……金剛お姉様は提督一筋ですから」


青年「はは……そうですね」


そんな談笑をしつつ、青年は部屋全体を一通り見てみる。


やはり、艦娘達は提督が予想しているよりも身の回りについてはしっかりしているらしい。


それほど目立った汚れがあるわけではなく、他人から見れば十分に綺麗と呼べる部屋だ。



青年「綺麗ですね。お掃除はよくしているんですか?」


榛名「はい、榛名がよくやらせてもらっています。ですが、お姉様達や、霧島が手伝ってくれることもあるんですよ?」


青年「そうなんですか」


青年は、チェックシートの各項目にチェックを入れながら、榛名はきっといいお嫁さんになるのだろうと予想した。


榛名から溢れ出る、良妻オーラをひしひしと感じつつ、青年はチェックを終える。


青年「え~と……はい。大丈夫ですね……」


榛名「ところで、そのチェックで駄目だった場合って何かあるのでしょうか? 少し気になります」


青年「あ、え~と……提督がお仕置き……じゃなかった。それなりのペナルティは課すつもりのようです。まぁ、僕も具体的なことはよくわかりません……何しろこの美化週間自体、結構急に決まったことなので……」


このペナルティの件については、昨日青年が提督に報告をしに行った際に聞いたものである。


どうやら、提督は冗談などではなく、本気でこの美化週間に取り組むつもりのようだった。


青年「まぁ、今のところ、ペナルティを課されそうな部屋はないんですけどね……ちょっと危ない部屋もありましたが」


榛名「そうなんですか。でも、それって、青年さんとしてはチェックのしごたえと言いますか……そういうのがないのでは?」


青年「はは……。たぶん、その通りですね。清掃員のジレンマ……って感じなのでしょうか。綺麗なのはいいことと思えるのですけど、あまりにも綺麗すぎると自分の立場がないと言いますか……」


榛名「なるほど……難しい話ですね」


青年「ですね……でも、まぁ。これが自分の仕事ですので……」


榛名「そうですか……あ、そうだ。青年さん、もしよければ、お茶でも飲んで行きませんか?」


青年「えぇ……じゃ、じゃあちょっとだけ、いただきます」


榛名「はい、わかりました!」


本当に、良妻になりそうな艦娘でアンケートを取ったら間違いなく上位層になりそうだと、改めて感じた青年であった。


というよりも、むしろ、貰えるならこんなお嫁さんがいいなと、ちょっとだけ妄想めいたことも考えてしまう、青年でもあった。


それも仕方ない。なぜなら、彼もまた、一人の男なのだから……。



新人・秋月登場!


金剛型の部屋から出て、青年が次の部屋へと向かおうとしたところ、廊下の方から提督と見たことのない艦娘が歩いてくるのが見えた。


提督はこちらに気づき、近づいてくる。


提督「やぁ、青年君。調子はどうだね?」


青年「あ、いい感じですよ。……艦娘の皆さんのお部屋は基本的には綺麗だと思います……ところで、その子は?」


青年が提督に尋ねると、かしこまって提督の後ろへ隠れていた艦娘が姿を現す。綺麗な黒いサラサラとした髪をなびかせ、青年に向かって敬礼をする。


秋月「は、初めまして! 私、秋月型防空駆逐艦、一番艦、秋月と言います! よろしくお願いします!」


青年「あ、ど、どうも……」


提督「今は、秋月に鎮守府内の案内をしている途中だったんだ。あ、秋月、この子は青年君と言って、この鎮守府の清掃員をしてくれているんだ」


秋月「そうなのですか。ですが、大変なのでは?」


提督「いやぁ、これが、なかなか優秀な子だから。……そうだ、青年君。もし、よければ、残りは君が案内してあげてくれないか?」


青年「え?」


提督「いや……実は、その……事務仕事がかなり残っていてな……。早く終わらせないとマズイんだよ……だから、頼む! 私のことを助けると思って……」


青年「あ、で、では……え~と……こちらへ」


秋月「あ、よろしくお願いしますね」


秋月が青年の近くへと寄っていくのを確認した後、提督は少し急ぎ足で執務室へと戻っていくのであった。


青年は少しため息をつき、「また面倒事を押し付けられた」とかなり小さな声で呟いた。



青年「えぇと……今のところはどの辺を案内してもらったの?」


秋月「そうですね……執務室、工厰、今各艦の寮内を案内してもらっているところでした」


青年「なるほど……じゃあ、食堂と甘味処にでも……行ってみる?」


秋月「はい! おねがいしますね!」


青年は秋月と並んで歩き、戦艦寮内を一度出た。この間に交わされた会話は何一つない。青年は。ここで、何か話題をふってあげたほうがいいいのではないかと悩んでしまう。何より、この空気のまま歩いて行くのは無理だと感じ始めていた。


青年「……」


秋月「あの……青年さんは、こちらへ来てどれくらい経つんですか?」


秋月もどうやら、何か話題を触ろうと考えてくれていたようだ。青年は本来、こう言った場合、先輩である自分から話題を出してあげなければならないのに、無理に気を遣わせてしまったことに申し訳なくなると同時に、秋月の方を向く。


青年「えっと……一ヶ月……くらいかな」


秋月「なるほど……。そう言えば、さっき司令からこの鎮守府内のモットーを聞いたんですが……」


青年「ああ、『みんな仲良く』ってやつ……?」


秋月「はい。私でも大丈夫なんでしょうか……」


秋月は途端に、少し表情を曇らせた。やはり、新しく入って来ただけに、この先が不安なのだろう。青年は少しだけ、自分が来たばかりの時を思い出した。


青年「……大丈夫だよ。俺も……そんな感じだったから。……それに、さっきもそんな感じの相談を受けたかな……はは」


『さっき』というのは、ゆーに、友達との関わりについて相談された時のことである。


そうしたことに悩んでいるのは秋月だけではない。


おそらく、この鎮守府内でも、そう言ったことに悩んでいる艦娘はたくさんいるだろう。


そして、何よりも青年自身も悩んでいることなのだ。先日の瑞鶴とのすれ違いを未だに修正することはできていない。


しかし、一応の先輩として、青年に出来ることは……。



青年「……秋月は真っ直ぐそうな子だから、大丈夫と思う……うん」


この様に、励ましてあげることだった。



秋月「……あ。じゃあ……」


その言葉を聞いた、秋月は一度立ち止まり、青年の方をじっと見つめる。
















秋月「青年さんが、私の最初の友達ということにしてもいいですか?」


青年「……」


秋月「あれ……もしかして、嫌でしたか!?」


青年「あ、うぅん……嬉しいよ。ありがとう」


秋月「はぁ……よかった」


秋月は安堵の表情を見せ、ほっと胸を撫で下ろす。青年もそんな秋月の様子を見てると、自然と微笑んでしまうのであった。


青年は、秋月に「じゃあ、行くよ」と声をかけ、再び食堂に向け歩き出すのであった。



青年と秋月はその後、一通り鎮守府内を周り、港近くでのんびりと過ごしていた。


秋月「ここの風、気持ちいいですね……」


青年「うん、俺も好き」


秋月「本当に今日はありがとうございました。おかげで、この鎮守府には早く慣れることが出来そうな気がします」


??「あ……」


青年と秋月が少しばかりいい雰囲気になったこの瞬間、二人の近くで声がする。


青年が振り向くと、そこには、今までよりも視線が鋭い瑞鶴の姿があった。


瑞鶴「……何してるの?」


青年「あ……瑞鶴さん。ちょっと、新しく入った子に鎮守府の案内を……」


秋月「初めまして、秋月と言います。よろしくお願いします!」


瑞鶴「どうも……。で、あなた、自分の仕事は?」


青年「あ……えっと、まだ残っています」


瑞鶴「へぇ……仕事を残して、案内ねぇ……いいご身分になったじゃない」


青年「あ、あの……瑞鶴さん?」


青年は瑞鶴の機嫌がかなりおかしいということに気づく。口元は笑っているのに、視線はかなり鋭いものになっている。


瑞鶴「あなたは清掃員なんだから清掃員らしく掃除でもしておけばいいのよ。案内なんて他の子でもできるし……」


青年「あの、瑞鶴さん、もしかして、怒ってますか?」


瑞鶴「別に……。あなたがそう思ったのなら、謝るわ」


秋月「あ、あの……」


二人の緊迫した雰囲気の状態の中に秋月がおそるおそる入ってくる。


瑞鶴は、その鋭い視線を今度は秋月の方へ向け、睨みつけた。


秋月「……さ、さっきの言い方は……ひどいと思います。清掃員なんだから掃除してろだなんて……。そ、それに、青年さん、とってもいい案内をしてくれましたよ?」


瑞鶴「……わかった。謝るわ……ごめんなさい……」


瑞鶴はそう言い残すと、走って空母寮へと向かってしまった。


青年「……」


秋月「わ、私ったら出すぎたマネを……青年さん、すいません」


青年「あ、いいんだよ……たぶん、今回の件は……俺が悪いから。瑞鶴さんにはちゃんと言っておく」


秋月「そうですか……すいません……本当に……」




幸運な女神と普通の青年


その夜、青年は、晩ご飯を食べ、提督にも一通りのことを報告し終えると、空母寮へと向かっていった。


かなり遅い時間になってしまったので、もう既に外は真っ暗で寮内もかなり静かである。


青年は瑞鶴と翔鶴の部屋の前に立ち、一度深く深呼吸をする。


青年「……」


そして、静かに2回ノックをした。


扉は静かに開き、中から姿を現したのは翔鶴の方だった。


翔鶴「あ、青年さん……」


青年「ど、どうも。あの……瑞鶴さん、いらっしゃいますか?」


翔鶴「ず、瑞鶴ですか……? え~と……夜風にあたってくるって言って、出て行ってしまって……」


翔鶴が元気が無さそうな顔をしているのが見てとれた。そして、青年は扉の隙間から見て、二人の部屋がかなり散らかっていることに気づいた。


青年「な、何かあったんですか?」


翔鶴「どうやら、瑞鶴がやけ酒……をしてしまったようで。その酔った勢いで……」


青年「手伝いましょうか?」


翔鶴「すいません……できればお願いします」


部屋の中に入って見ると、昨日見たあの美しい部屋はなくなっていた。


空いた瓶に、おつまみのお菓子のゴミ。どこからどう見ても汚い部屋へと変貌していたのだった。


青年「……」


翔鶴「瑞鶴ったら、本当にどうしちゃったのかしら……」


青年「……」


青年はここでも、胸が締め付けられるような思いをした。もうここまでくれば、青年が原因だということは青年自身が強くわかっていることだった。


青年「……翔鶴さん。たぶん、僕のせいなんです」


翔鶴「えっ?! せ、青年さん、もしかして瑞鶴と喧嘩でも?」


青年「喧嘩……と言いますか、少しすれ違いと言うか……でも、とにかく僕が原因だと思います」


翔鶴「そうですか……」


青年「だから……今晩、何とかしてみます。瑞鶴さんが行きそうなところは、『心当たり』がありますので」


翔鶴「……そうですか。では、お任せします。青年さん」


青年「……はい。……あっ。お部屋、すいませんがお任せします」


翔鶴「このくらいなら、私1人でも大丈夫ですよ」


青年「ありがとうございます。では」


青年は翔鶴達の部屋を後にした。



青年は、瑞鶴の行きそうなところへと向かう。


そこに、瑞鶴はいた。港で、青年がよく風を好み、立つあの場所である。


青年「あ、瑞鶴さん、やっぱり『ここ』にいたんですね」


瑞鶴「……青年……何よ」


青年「……また、あの時みたいな感じですね」


瑞鶴「……」


『あの時』と言うのは、青年が来て大体2週間近く経ったころの話になる。





瑞鶴は、幸運の空母の名に相応しく、これまで様々な戦闘をほぼ無傷で帰ってきたりすることが多かった。


だが、ある日の出撃で、瑞鶴と一緒に出撃した翔鶴が、あとすこしで轟沈寸前の怪我をすることになってしまった。


そして、瑞鶴は自分を責めた。ひょっとすると、自分が幸福であるせいで、他人の幸運を吸収し、逆に周りを不幸にしているのではないかという風に……。


その日の夜、瑞鶴は、いつになく気を落とし、この場に立っていた。その時に、たまたま寝付けず、散歩をしていた青年が瑞鶴の姿を見つけたのだ。


青年「あ、あの……瑞鶴……さん?」


瑞鶴「……何だ、青年じゃない……」


青年「そんなところにいると……風邪、引いちゃいますよ……?」


瑞鶴「いいのよ。ほっといて」


青年「……」


青年と瑞鶴の関係というのは今以上に、劣悪……とまではいかないが、親しいとも言えない状態だった。だが、青年は艦娘達の前で思いを告げたあの場より先に、本当はここで一つだけ勇気を出していたのだ。


青年「あ、あの……瑞鶴さん」


瑞鶴「……何よ」


青年「その……僕には艦娘のみなさんの仕事がどういうものかは……詳しくは分かりません。でも、とても危険で……難しくて、誰にでも出来るような事じゃない、っていうのは分かります」


瑞鶴「……」


青年「……で、ですから、そのっ……元気を……出してください……な、何でしたら、僕が愚痴でも……聞きますよ……」


瑞鶴「……」


すると、瑞鶴が、青年の方に寄って来た。そして、青年をそのまま押し倒し、青年の胸元に顔を埋める。


青年「は、はいっ!? ちょっ……」


瑞鶴「いいから……ちょっとだけ、こうさせて……。これ以上何か言ったら、爆撃するから……」


その言葉は、少し震えていた。青年はシャツが少し濡れかかっているのがわかる。


青年は、瑞鶴が離れるまで、しばらくそのまま黙って過ごしたのだった。






その日以来、青年と瑞鶴の仲というものは、今へと通じるものになっていくのだったが……。明らかにあの時よりも、仲は険悪になっている。瑞鶴の目は、先ほどの秋月と一緒にいた時のように鋭いままだった。


瑞鶴「……」


青年「……」


瑞鶴「青年は、私のこと、どう思ってるのよ……。絡みづらい?」


先に言葉を発したのは、瑞鶴の方だった。目を合わせず、下の方を向いてしまったので、青年は瑞鶴の表情がわからない。


青年「……絡みづらい……と言いますか……本当は僕が勝手に苦手意識を持ってるだけです」


瑞鶴「そうだよね……だって、私以外の艦娘とは普通に話せてるもんね……。新人の秋月って子とも結構仲良さそうだったし……」


青年「……その、瑞鶴さんは……話し方が苦手と言うか……」


瑞鶴「私、そんなにきつい話し方してるかしら……? それだったら、天龍とか、摩耶だって……」


青年「……」


瑞鶴「……」


再び二人の間に沈黙が訪れる。瑞鶴の言う通り、積極的な話し方、というより口調の強い話し方をするのは瑞鶴だけではない。他の艦娘にもたくさんいるのだ。


青年はもちろんそれは分かっている。だが、どうしても瑞鶴だけは苦手意識を持ってしまうのだった。そればかりは、青年もわからない。



青年「……ひょっとしたら、『あの時』僕が不用意に瑞鶴さんと距離を縮めた……からかもしれません」


瑞鶴「……あんまり思い出したくないんだけどね、『あの時』は」


青年「……」


瑞鶴「……ねぇ、青年は私のこと、嫌いなの?」


青年「な、何をそんな……嫌い……ではないです。むしろ、色々……感謝してます」


瑞鶴「感謝?」


青年「はい……。割と最初の頃から僕と話してくれましたし……僕がみんなの前で立ったあの時も、応援してくれたり……」


瑞鶴「……」


青年「えっと……言葉で言うのは……難しいですが、とにかく……僕は瑞鶴さんのことは……嫌いじゃないです」


瑞鶴「……そっか」


青年「……」


瑞鶴「……あ~あ……ちょっと、バカらしい……。何でだろうね……」


青年「……わかりません……。ですが、僕が言いたいのは……その……今まですいませんでした……。目線をそらしたり、勝手に苦手意識持って、瑞鶴さんのこと避けようとしたりして……本当にすいません」


瑞鶴「いいのよ……。私の方こそ、ごめんなさい……。色々きつく当たっちゃって……」


青年「……」


瑞鶴「……」


青年「……仲直り……しましょう」


瑞鶴「……ええ。……青年、ちょっとこっち来て」


青年「?」


青年は、言われるがまま瑞鶴の方へと近づく。


瑞鶴は、青年の手を取り、自分の小指と青年の小指を絡める。


瑞鶴「指切り」


青年「……」


瑞鶴「な、何よ……子どもっぽいとか思ってる?」


青年「べ、別に……。何となく、瑞鶴さんらしいな……と」


瑞鶴「絶対褒めてないわよね」


青年「……どうでしょうか……。ですが、僕は約束しますよ。瑞鶴さんと仲良くすることを」


瑞鶴「……あなた、たまーにちょっとズルいこと言うわよね……」


月明かりに照らされてるおかげで、瑞鶴の顔が少しばかり赤くなっているのに青年は気づく。だが、これ以上何かを言うと、彼女のお得意のセリフが出てきそうで怖かったので、言わないようにした。


二人で、指切りした後、青年は瑞鶴を翔鶴の部屋へと送ることにした。


翔鶴「あら、青年さん。……瑞鶴も」


瑞鶴「翔鶴姉、今日は……ごめんね。迷惑かけちゃった……」


翔鶴「いいのよ。瑞鶴だって私には言えない悩みはあるものね……」


瑞鶴「……」


翔鶴「でも、いいじゃない。瑞鶴は、悩みを相談できる人が私以外に増えたみたいじゃない」


瑞鶴「え?」


翔鶴「……ふふ。青年さん、これからも瑞鶴と仲良くしてあげてくださいね」


青年「あ……はい」


瑞鶴「しょ、翔鶴姉! 私と青年はそんなのじゃないってばぁ!」


青年「……」


翔鶴「ふふふ。では、青年さん、お休みなさい」


青年「あ、はい。お休みなさい。瑞鶴さんも」


瑞鶴「……うん。お休み」


青年は二人に一礼をした後、自分の部屋へと戻って行くのであった。


長門と書いてながもんと読む


さて、瑞鶴との一件を何とか解決した次の日の朝、青年の目覚めは最高だった。


体が昨日とは違って嘘のように軽い。青年は元気よく布団から飛び出し、着替えてからいつもの場所へと掃除をしにでかけた。


その後、またいつものように提督と挨拶をし、朝食をとりに食堂へと向かう。


瑞鶴「あ、青年。おはよう」


翔鶴「おはようございます。青年さん」


青年「あ、どうも……」



瑞鶴と翔鶴が、笑顔で挨拶をしてくれる。この時、昨日の内に本当に解決しておいてよかったと思う青年であった。


さて、青年は朝食を取りながら、今日はどのように部屋を回るか考えた。昨日は、結局、秋月の鎮守府案内に時間を取られてしまったため、あまり回れていない。


とりあえず、この遅れを少しでも挽回する必要があると考え、今日はあまり艦娘の部屋には長居しないようにした。


朝食を取って、自分の持ち場を掃除した後、青年は昨日の続きということで、戦艦寮へと向かう。


まず、確認するのは、長門と陸奥の部屋だ。


青年は、長門と陸奥の部屋の前に立ち、一度深呼吸をする。


そして、ノックをしようとした次の瞬間だった―――ー




ドザァァァ!ガサガサガサ!!



とても、乱暴な音が聞こえてきた。


青年はその音に驚きを隠せないまま、ノックをする。


そして、部屋の中から出てきたのは陸奥の方だった。


陸奥「あら、青年君、いらっしゃい」


青年「あ、あの……さっき、とんでもない音がした気がしたんですが……」


陸奥「ああ、あれは、長門が掃除している音よ」


青年「……あの、陸奥さん。もう一度、確認していいですか?」


陸奥「ええ」


青年「僕から見ると、明らかに散らかしているようにしか……」


長門「ふん! む。このゴミめ……なかなかしぶといな……」


そう。陸奥の後ろで、部屋を片付けようと長門は奮闘しているのだが、その気合が裏目に出て、逆に散らかすという形に出てしまっているのだ。


なのに、陸奥はどういうわけか、楽しそうな表情である。


青年「え、え~と、止めないんですか?」


陸奥「う~ん、どういうわけか、『美化週間だから私1人でやる』って言って聞かないのよね。普段は私と一緒にやるんだけど……」


青年「でも、止めないと……」


陸奥「そうね……でも、長門があんなに一生懸命やってる姿見てると止められないと思わない?」


青年「ああ……」


確かに、空回りはしているものの、その目は本当に1人でやるという意志がこもっているのがわかるほどに真剣なものだった。


陸奥の言う通り、なかなか止めることはできそうにない。


長門「む。今度はこっちか……くそっ……」


だが、清掃員である青年としては――――




青年「長門さん、手伝います」



――――こうせざるをえないのだった。


長門「何だ。青年か……遠慮しておく。今回の美化週間は、私がやると決めたんだ」


青年「と、とは言っても……。オホン……では、抜き打ちチェック、していいですか?」


陸奥「あら、何それ?」


青年は、抜き打ちチェックのことを説明した。説明しながらも、他の艦娘たちは意外にも抜き打ちチェックのことは周りには漏らしていない

ことに、艦娘のノリの良さというものを少しだけ感じた青年だった。


そして、どんどん説明していくと、先ほどは楽しげな様子を浮かべていた陸奥の表情が少しばかりこわばっている。


陸奥「え、えっと……つまり、抜き打ちチェックで汚いと判断されたら……おしおきがあるってこと?」


青年「い、一応は」


陸奥「……。な、長門、一緒に掃除しない?」


長門「ダメだ。私1人でやる」


陸奥「……」


青年「……」


陸奥「青年君……ちょっとくらいは、汚さをマイルドに報告してくれるわよね?」


青年「あ、はい……。善処します」


長門「よし、この押入れのものはいったん全部出してから掃除した方がいいな」


ドザァァァ!!ズザァァァァ!!!


青年「……」


陸奥「あら、あらあら」


青年はちらりと、陸奥の方を見た、先ほどの楽しそうな表情は完全に消え、かなりひきつった笑顔になっている。


青年「……」


青年は心の中で陸奥に謝罪しながら、チェックシートの項目にチェックを入れていくのであった……。


その後は、陸奥が必死に止めようとしたのでさすがの長門も折れ、青年も加わり、3人で仲良く?掃除をしたのであった。




青年の下に来るのは……


それからと言うもの、あまり大きなトラブルはなく、数日経った後、青年は全ての艦娘たちの回り終えた。


青年「ふぅ……じゃあ、秋月、島風は仲良くな……」


秋月「はい! お疲れ様です!」


島風「青年さん、また遊んでね~」


最後の艦娘の部屋は、秋月と島風の部屋だった。二人とも姉妹艦がいないということで、提督の図らいによって同じ部屋になっているのである。

二人の部屋は意外にもちらかっていなかった。おそらく、秋月の方がしっかりしていると見える。


青年「さて、これで全部……か。提督さんに報告しとかないと……」


青年が執務室へと向かおうとした時、少しばかり視界が霞んで見えた。


青年「おかしいな……。……体もダルイし……」



提督「うむ。青年君ご苦労だった。これで全ての部屋を回り終えたみたいだな!」


青年「あ……はい」


提督「どうした? 元気がないぞ……。瑞鶴、この書類終わった」


瑞鶴「あ、はい……って青年! あなた、顔赤いわよ?!」


青年「え……」


瑞鶴は、青年に近寄り、青年の額に手を当ててみる。


瑞鶴「うわっ……すごい熱……」


提督「まさか、風邪でも、引いたのか……瑞鶴、青年を部屋まで送ってやれ。送った後は、しばらく安静だ。君も風邪が移ったらマズイから、出来るだけ早く戻ってこい」


瑞鶴「あ……はい……」


瑞鶴に連れられ、自分の部屋の入り口に立つ。


瑞鶴は心配そうに青年の顔色を伺っている。


瑞鶴「あの……大丈夫?」


青年「あ……はい。一日寝れば……大丈夫です……。ゴホッゴホッ……」


瑞鶴「……な、何かあったら言ってよね」


青年「……はい。あ、移しちゃ悪いんで……これで……」


青年は、そのまま部屋へと入り、鍵を閉めた。


そして、少し意識が朦朧とする中、布団を敷き、横になる。


この場に来て、やっと自分が風邪をひいていることを認識した。さっきまでの元気は何だったのかと思う青年だった。


何かを食べようと思っても食欲もない。しかし、ただ寝るのは何となく嫌だった。


青年「どうしよう……すごく暇だ」


こういう時に、青年は時間を潰す趣味を持っていなかったことを後悔する。


そして、本来ならば悩まなくていいはずのことを悩み始める。


青年「……俺、掃除しかないんだな……」


そんなことをつぶやいても、答えてくれる人はいない。青年は、どうしようもないと考え、そのまま目を閉じ、しばらく眠ることにした。





それから、青年が目を覚まし、外を見ていると夜になっていた。おそらく、艦娘や提督は、晩ご飯を食べ終わった時間だろう。


青年は一度だけ重い体を起こし、ストレッチをする。


青年「……体温、計ってみるか」


清掃員である以上、自分の部屋が汚いわけにはいかないので、普段から整理していたため、体温計を探すのに、苦労はしなかった。


体温計を脇にはさみ、しばらくじっとする。やがて、音が鳴るのを聞いてから確認すると、表示は38.9度、なかなかの高熱であった。


青年「やばいな……。明日までに治るかな……」


青年は再び咳をする。ここまでくれば、体調がかなりひどい状況にあることを自覚した。それに、まだかぜ薬のようなものも飲めていない。


青年「……どうしよう」


そんなことを思っていると、青年の部屋の扉がノックされた。


青年「……ん。誰だろ……」


青年が重い身体を動かして、入り口まで近づき、扉を開けると、秋月と島風がいた。


青年「あれ……二人ともどうしたの?」


秋月「あ、あのっ。青年さんが風邪と聞きまして……少しお見舞いを……」


島風「青年さん、大丈夫?」


青年「あ、うん……」


秋月「さあ、青年さんはいったん横になってください」


青年「……」


秋月に言われるがまま、また布団で横になる。


秋月「え、えっと……こういう時はどうすればいいんだっけ……あ、島風ちゃん! 濡れたタオル!」


島風「任せて!!」


秋月がそう言うと、島風は部屋から出ていきどこかへと走り去った。青年は、感謝はしたいが、島風が行くことにより何かが起こりそうで少しばかり不安になるのであった。


秋月「熱は計りましたか?」


青年「あ、うん……39度近くあったよ」


秋月「大変ですね……。あ、えっと……汗とか……大丈夫ですか?」


そう言われると、あまり気づかなかったが着ている下着のシャツが汗で濡れているのがわかる。


秋月「な、何でしたら私が……」


青年「い、いやいや……それは、まずいって……」


秋月はどうやら、病人の汗を拭く作業が当然のように思っているらしい。どこから仕入れてきた情報なのだろうか……。


青年は、秋月がかなり無理をして言っているのがわかる。


青年「あ、あの……秋月。大丈夫だよ……。無理しなくていいから……汗くらいは自分で拭けるし、濡れタオルは嬉しいけど……」


そんなことを言って、秋月を落ち着かせようとすると廊下の方から何かをぶちまけたような音が聞こえてきた。



夕立「うわぁ!? 廊下が水びたしっぽい!!」


島風「……もう一回くんでくるよ!!」


瑞鶴「まったく、何の騒ぎよ……ってうわぁ?!」


島風「ごめんなさーい!!!」


青年「……」


秋月「……」


青年「秋月……気持ちは、とても嬉しいって島風にも言っててくれる?」


秋月「……はい」


青年「……。できるなら、風邪薬とか、持ってきてくれると助かるかな……」


秋月「……! わかりました! 探してきます!」


そう言って、今度は秋月が急ぎ足で部屋を出て行ってしまった。


それとほぼ入れ替わる形で、島風が部屋の中に入ってくる。


島風「青年さん、水組んできたよ! あと、タオルも持ってきた!」


青年「あ、ありがとう……後は自分でできるよ……」


島風「ダメなの! 島風が看病するって決めたんだから」


青年「……」


島風「それに、青年さんには早く治って一緒に遊んでほしいし……」


少しだけ寂しそうな表情をする島風を見て、青年は断ることはできなかった。ここまで来たなら、もう彼女に身を任せていいと思い、青年は島風に任せた。


島風「えーと、タオルを濡らして……絞って……よいしょっ」


青年「あ、うん……いい感じに冷えてて気持ちいいよ……島風、ありがとう」


島風「うん!」


少々絞り方が甘かったが、青年はそれ以上に嬉しく感じたので、気にはならなかった。


その後、しばらくしてから秋月がかぜ薬を持ってやってきた。


秋月「青年さん、持ってきました!」


青年「あ、うん。ありがとう……そこに置いてくれたらいいから」


秋月「そうですか……。も、もう私達に出来ることはないですか?」


青年「あ、うん……一応は……二人に移しちゃ悪いから……そろそろ行って大丈夫だよ……」


島風「青年さん、明日までには治る?」


青年「どうだろう……でも、秋月や島風のおかげで早く治りそうだよ……」


秋月「島風ちゃん、ここは青年さんの言う通りにしておきましょう……。それでは、青年さん、失礼します。また何かあれば言ってくださいね?」


青年「うん。二人とも、本当にありがとう」


秋月と島風は一礼をして、部屋から出て行った。少しにぎやかだった部屋が急に静かになり、青年は寂しさを覚える。


とりあえず、青年は秋月が持ってきたかぜ薬の箱の裏を確認する。どうやら食後に飲むことを推奨しているらしい。


青年はここで、やっと少しばかりの空腹感に気づいたのだった。しかし、夜ももうかなり遅い時間だ。おそらく食堂は閉まっているだろう。


とりあえず、汗を拭こうと上だけを脱ぎ、自力で汗をタオルを使って拭く。自分でもこれほど汗をかいていたのかと驚くほどだった。


青年「……ご飯、どうしようかな……」


青年がそんなことを呟きながら汗を拭いていると再びドアがノックされた。


青年「……服、着ないと……」


青年はすぐに、替えの下着を着、もう一度上の服も着てからドアを開けた。


瑞鶴「……元気?」


青年「……あ、ま、まぁ……」


その場に立っていたのは瑞鶴だった。手にはお盆を持っていて、その上にはお粥が一杯乗っていた。


青年「……」


瑞鶴「……。こ、これっ……鳳翔に作ってもらった。私が作ったわけじゃないけど……、しょ、食欲が出たら食べなさいよ。ちょっとは食べないと治る風邪も治らないし……」


青年「瑞鶴さん……ありがとうございます」


瑞鶴「ほら、さっさと、布団のところに行く……」


瑞鶴に言われるがまま、布団のところに腰を下ろす。


瑞鶴は、お粥の入った茶碗を差し出してきた。


青年「どうも」


瑞鶴「……」


青年「……え、え~と、もう大丈夫ですよ?」


お粥だけ渡したら帰って行くものだと思っていたが、瑞鶴はなぜか正座をして、場を離れようとしなかった。青年は瑞鶴に足を崩すように促す。


瑞鶴「ふぇっ?! あ、うん……」


青年「……。じゃあ、いただきます」


青年は、少し息でお粥を冷ましてからまず、一口を入れる。お粥の優しい食感と程よい暖かさ、そして、絶妙な塩加減が三拍子揃ってとても美味しく感じられた。


青年「……美味しいです」


瑞鶴「ほんと!? あ、いや……鳳翔が作ったから当然よね!!」


青年「……?」


瑞鶴「な、何でもないわよ……。うん」


青年「……」


瑞鶴「……あ、じゃあ、もう私行くから。食べ終わったらそこに置いときなさいよ……。残してもいいから」


青年「そ、そうですか……では、ありがたく、いただきますね」


瑞鶴「早く治しなさいよ……。じゃないと、この鎮守府、汚くなっちゃうんだから」


青年「頑張ります」


瑞鶴「んじゃ、お休み……」


青年「お休みなさい」


瑞鶴は、少しだけ急ぎ足で青年の部屋から出て行ったのであった。


その顔がかなり紅く染まっていたのに、青年は気づかないという鈍感っぷりを発揮していたのだが……。




その後、青年はちょっとだけ無理をして、お粥を全て食べきった。無理をしていたと言っても、瑞鶴の図らいで、量は少なめだったから食べることができたのだが……。


青年は、食器をちゃんと盆の上に置き、歯だけを磨いて再び寝ることにした。




それから、さらに時間が過ぎて、深夜近くの時間になった。


青年は、すっかり眠ってしまっていた。おそらく、よほどのことがない限りは起きることはなさそうだ。


と、ここで、青年の部屋に1人の来訪者が現れた。瑞鶴が去った後、青年は鍵を閉め忘れたらしく、その来訪者は部屋へとこっそり入る。


弥生「……」


その来訪者とは、弥生だった。手には替えの濡れタオルを持っている。


弥生「……汗、かいてる」


弥生は、青年の顔を覗き込み、汗の状態を確認した。


そして、汗を拭こうと思ったのか、青年から掛け布団を取り去る。


弥生「……起こしちゃ、まずいかな……」


そんなことをかなり小さな声で呟きながら青年の服に手をかける。


弥生「……」


弥生は、どうやらかなり器用だったようだ。青年に気づかれることなく上だけをひん剥いてしまったのだ。


弥生「……やっぱり、汗、いっぱいかいてる」


弥生は、持ってきたタオルで汗を優しく拭き取る。青年はそれでも気づいていない。


それから弥生は一通りだけ拭き終わり、青年にもう一度服を着させようとする。


青年「……ん。寒い……」


青年が置きてしまった。


青年「え? 上脱げてる……って……弥生?! な、何してるの……」


弥生「……汗を拭いてました」


青年「……いや、その……そうか……」


二人の間にかなり気まずい空気が流れる。しかも、青年は上半身が裸に近い状態。もし、こんな時に誰かが入ってきたりしたら、後から大変な目に遭うのは間違いない。


弥生「……迷惑でしたか?」


青年「あ、いや、迷惑じゃないけど……というより、何でみんな俺が風邪引いたの知ってるの……」


弥生「鎮守府内では噂が広がるのは結構早いです。……たぶん、瑞鶴さんが誰かおしゃべり好きな人に話しちゃったんだと思います」


瑞鶴がそんなことをするのはあまり思えないと考えながら、青年は上の服を着る。


青年「でも……その、結構助かったよ。弥生、ありがとう」


弥生「……いえ。青年さんには、この前お世話になったので」


青年「別にあんなのお世話のうちにも入らないのに……」


弥生「……」


青年「……え~と、弥生? 機嫌損ねちゃった?」


弥生「大丈夫です。怒ってないです」


青年「そ、そう……」


弥生とはそれなりに親しくなったと感じている青年でも、時折見せる表情は少し不機嫌そうに見えるらしい。それがわかってからか、弥生も少しだけ表情を変えようとしているのが目に見てわかった。


弥生「どうですか? 笑えてますか……?」


青年「……」


頑張って、微笑もうとしている弥生の姿に思わず「可愛い」と思ってしまった青年は、目線を逸し「うん」とだけ答えた。


弥生「……青年さん、では、弥生はこれで失礼します」


青年「あ、うん……もう夜遅いから……。ちゃんと寝るんだぞ」


弥生「大丈夫です」


青年「……じゃあ、弥生、おやすみ」


弥生「おやすみなさい、青年さん」


こうして、夜は明けていったのであった。


次の日、青年が体温計で熱を計ると、まだ少し熱があったので、大事をとってその日は休ませてもらった。


昨日と同じように、何人か艦娘が、見舞いに来てくれたことに、青年は感謝し、ここで働いててよかったと感じるのであった。


大家族?! 陽炎姉妹!! 



注意:今回は、なかなかの争いネタです。青年の決断には怒らないでいただきたい……。







さて、青年の風邪が治った翌日のこと、青年は、見舞いに来てくれた艦娘たちにお礼を言いに回りつつ、いつものように掃除をしていた。


そして、駆逐艦寮の廊下を掃除していた時だった。駆逐艦寮のとある部屋から大きな怒号のような声が聞こえてきた。気になってその部屋に近づくと、中から提督が出てくる。


提督「せ、青年君……いいところに来た。……何とかしてくれ!」


青年「……え?」


提督「私は執務があるので、これで失礼する」


青年「え? ちょ、提督?!」


足早に去っていく提督を見送りつつ、振り返ってみると、銀髪の陽炎型駆逐艦の1人、天津風が立っていた。


天津風「……青年さん。ちょっといいかしら?」


青年「あ、はい……」


天津風「私達の部屋に来てくれる?」


青年「え、ええ……」


それから、部屋に入ると先ほどの怒号がさらに大きく聞こえてきた。


黒潮「だから、あんなんは絶対おかしいって言うとるやろ!!」


浦風「何を?! そっちの方こそおかしいんじゃ!!」


青年「……」


見ると、黒潮と浦風の2人が喧嘩をしていた。


周りにはその他の陽炎型駆逐艦の一同が集合している。なぜか正座で。


そもそも、青年は黒潮と浦風の2人はオカンを彷彿させる態度で、なかなかの器量の大きさがあるという認識だったのだが……。


どういうわけか、今はこの2人が子どものように争ってしまっている。



青年「……何かあったの?」


陽炎「青年さん……えっと……それが……」


陽炎が何かを思い出したようで、突然震えだした。どうやら相当なトラウマでもあるのだろうか。


青年「?」


浜風「……2人は、たぶん。今までで一番激しい戦いをしています」


青年「え? そんなにひどい喧嘩なの?!」


天津風「できれば、止めてあげてほしいんですけど……」


青年「はぁ……で、でも提督がさっき出てきたってことは」


不知火「司令官でもダメでした」


青年「はぁ……」


とりあえず、青年は闘争心むき出しの2人に近づく。


青年「あ、あの~。2人とも、どんな理由で喧嘩をなさっているかはわからないんですけど、とりあえず、落ち着きましょう……」


黒潮&浦風「「落ち着けるわけないやろ(じゃろが)!!!」」


青年「……」


2人の剣幕に圧倒された青年はその場からすぐさま離れる。


青年「え、えっと……そんなにひどい理由なの?」


野分「あの2人にとってはとても深刻……いや、重大な問題のようです」


青年「えっと、一応ここにいる子達は理由を知ってるんだよね?」


そう聞くと、黒潮と浦風以外は全員頷いた。


青年「まず理由を教えてよ」
















磯風「お好み焼きだ」


青年「え?」


磯風「だから、お好み焼きだ」


それから、陽炎によって説明があった。


どうやら、一度、陽炎型駆逐艦だけでの盛大な食事会を開きたかったらしく、みんなでそのメニューを何にしようかと考えていた。


最初の候補にしてあがったのは、鍋だったのが、時期ではないということで却下になってしまった。


そこで、黒潮と浦風が候補として「お好み焼き」を挙げたのだ。だが、ここである問題が生じた。


黒潮は大阪風お好み焼き、浦風は広島風お好み焼き……そう。長年争ってきた派閥の2人が衝突してしまったのである。


その結果、今にいたるということだ。


陽炎「ということです」


青年「そんな、小さなことで―――陽炎「わー!!!!わー!!!!」


青年が呆れまじれに何かを言おうとした瞬間、陽炎が大きな声で遮る。この争いを「小さなこと」や「しょうもないこと」で片付けるととんでもない目に遭うそうだ。


舞風「私、廊下に行って踊ってくる……」


いつもなら、元気のいい舞風ですら、この始末だ。どうやら、オカン同士の争いは一度始まるとなかなか終わらないらしい。


黒潮「もー、えーわ!! 腹立ってきてしゃーないわ!! こうなったら、勝負するで!!」


浦風「望むところじゃ!! 返り討ちにしたる!!」


そして、2人はどこから持ってきたのか、装備を身につけ、今にもこの部屋で一戦交えそうな緊迫状態になった。


時津風「あわわ! 2人ともちょっと待って! だったら、どっちとも食べて美味しい方をみんなで決めるって言うのはどうかな?」


谷風「と、時津風?! そんなことしたらまた2人が――――











黒潮「なるほど。時津風にしてはなかなか妙案やな」


浦風「まぁ、広島風が勝つのは目に見えてるけど」


黒潮「その、余裕そうな顔が泣き顔に変わるのが楽しみやわ。んじゃ、準備するで」


秋雲「……これは大変なことになったわぁ」


雪風「あわわ……2人とも目が笑ってない……」


初風「とりあえず……舞風を呼んでくるわ。廊下で踊ってるだろうし……」


天津風「まったく、お好み焼き1つで……」


青年「あはは……では、これで失礼しま―――不知火「最後までよろしくお願いします」


青年「……はい」



それから、陽炎型姉妹一同と青年は食堂を貸し切りの状態にし、黒潮と浦風の2人はお好み焼きを作る準備を始めた。


席に座って待っている一同は、雑談をしつつ、ただ重い空気に耐える。


浜風「どうなるのでしょうか……」


秋雲「とりあえず、ここまで来てしまったら仕方ないわね~」


時津風「でも、私的にはどっちも食べれて嬉しいよ!」


舞風「たしかに。かなりお得ね! 美味しい料理を食べれば気分もアップアップよ!」


雪風「雪風もそう思います!」


天津風「まったく……それどころじゃないのに……はぁ」


谷風「まぁ、互いに譲れんもんがあるのはいいことよ!」


陽炎「わ、わわ、私、どっちを選べば安全かしら……?」


陽炎は恐怖のあまり、ガタガタと震えだした。あの2人が本気で怒った姿を見たのは初めてだったらしくかなり怖い思いをしたらしい。


不知火「大丈夫よ、陽炎……。きっと事態はいい方向に向かってくれるから」


陽炎「そ、そうなの……?」


野分「しーっ。そろそろ2人がお好み焼きを作って出てくる頃よ」



野分の言った通り、2人がお好み焼きを作って出てきてくれた。


こんな緊迫した状況なのにもかかわらず、既にいい匂いが立ち込めている。


今ここで、第1次お好み焼き大戦が始まろうとしていた……。



 お好み焼きウォーズ


さて、2人はそれぞれの大きな皿に1枚1枚お好み焼きを乗せ、その場にいるみんなの前へと配った。


黒潮「さぁ!!」


浦風「召し上がれ!!」


陽炎「や、やっぱり2人とも、目が笑ってない……」


しかし、陽炎のようにいつまでも震えてばかりでお好み焼きを食べないという選択肢が選べるわけがない……。


とりあえず、その場にいる全員がまず一口、食べたい方から口に入れた。もちろん、青年もだ。


黒潮「……」


浦風「……」


黒潮と浦風の2人は、みんなが美味しそうにお好み焼きを食べる姿を見て、嬉しさか、優越感を含んだ笑みを浮かべている。


その表情を見てしまった、舞風と浜風はすぐさま目線を外し、お好み焼きを味わうのであった……。


ひたすら静かな時間が流れる……。この重い空気を、少しでもやわらげてくれるのは2人の作ったお好み焼きの味だけだった。


しかし、決断の時というものは必ず来るものだ。癒やしの食事タイムは終わり、陽炎型姉妹一同は決断を迫られる。



黒潮「さぁ、選んでもらおか」


浦風「そうじゃのぉ」


黒潮「じゃあ、誰から行こか? そうやなぁ……ここは番号順で行こか?」


浦風「ということは……」


2人の視線が陽炎に集中した。周りから見てわかるほどに陽炎はもうガタガタである。


陽炎「わ、わわ、私?! え、えっと……」


黒潮「もちろん、大阪風やんな?」


浦風「もちろん、こっちに決まってるよの?」


陽炎「……私は……」







陽炎「広島風が好き!!!」


黒潮「……」


浦風「うしっ!!」


浦風が喜びのあまり、ガッツポーズをする。黒潮は笑顔だが、青年は黒潮から明らかにどす黒いオーラが出ているのを感じ取った。


黒潮「ほうほう……そうかそうか。陽炎は、広島風の方が好きなんか~。なんか悪いもんでも入れられてたみたいやなぁ……ほんまかわいそうやで……」


黒潮「後で覚えときや」ボソッ


陽炎「ひいっ?!」


浦風「これでまず、うちが一本。見たか!!」


黒潮「ふん、一本くらいとったところで、ええ気になっとんちゃうで。ほな、次行こか」


不知火「そうね……。不知火は、大阪風を選ぶわ。個人的には生地が厚めの方が好みなの。それに、何となくだけど具の混ざり具合が絶妙だから」


黒潮「どやっ! 見たか! やっぱり分かる人には分かるんやで!!」


浦風「ぐぬぬ……」


青年はこの時、少しだけだが不知火が微笑み、この状況を楽しんでいるように見えた。黒潮は、先ほどの腹いせか浦風を煽りに煽りまくる。


浦風が怒りの形相を浮かべる中、次に決断を迫られる初風は陽炎のように怯えた表情を見せ始める。


黒潮「所詮、広島やからな~。東京、横浜に次ぐ大都市、大阪には勝たれへんに決まっとるやろ!!」


浦風「味の勝負じゃろがい! 都市の大きさなんて問題にはならんわ、どあほ!」


ますます、ヒートアップしていく2人。果たして、本当に関係を修復することができるのであろうか……。


次の、順番が回ってきた初風は広島風を選択。黒潮の怒りのボルテージをさらに上げるということをしてしまった。


とは言ってもどちらのお好み焼きを選んだところで、結果は変わらないのだが……。


続く、雪風は2人のことはそっちのけで平然と広島風を選択……。これで、浦風が1歩リードした。


浦風「ふふん……もう勝負は目に見えてるんとちゃうか?」


黒潮「ぐぬっ……まだや! まだ全員には聞いてないから分からんやろ! なぁ、天津風?!」


天津風「え?! ここで私にふるの?!」


黒潮の鋭い視線に、天津風が珍しくおずおずとしてしまっている。青年はそんな様子を黙って見守るほかなかった。


天津風は、ああでもないこうでもないと1人でぶつぶつと言いながら考えを練る。


黒潮「さぁ、天津風、いつまでもうじうじしてるのはよくないで? そろそろ答えを聞かせてもらおか?」


天津風「……」


浦風「……」


浦風は、1歩リードしている余裕があるのか表情は少し穏やかになっている。浦風はいっそこのままの方がいいと考えたのが大半である。しかし、天津風はどういう考えを持ったのか、



天津風「大阪風ね」


と答えてしまった。周囲の表情が一気に曇る。


天津風「あ、あれ? しょ、正直に答えたんだけど……」


黒潮「そうやんなぁ。天津風は正直者やなぁ、うち、とーっても嬉しいで。みんなも正直に答えてほしいな~。なぁ、時津風?」


時津風「うん! 時津風は大阪風の方が好きだよ!」


浦風「……ほう」


そこから、互いに煽り合いの嵐が始まったり、それぞれ独自の感想を述べつつ、集計は完了した。ただし、「陽炎型の姉妹」でのみである。



陽炎「え、え~と、今のところ、広島風が私と、初風、雪風、谷風、野分、舞風ね」


不知火「大阪風は、私、天津風、時津風、磯風、浜風、秋雲」


黒潮「ぴったり、6対6……」


浦風「……」


青年「……」


ここで、最後の決断を迫られる前に逃げてしまおうと考えた青年。だが、その行く手を黒潮と浦風の2人が塞ぐ。


黒潮「どこ行くつもりなん? まだ終わってへんで?」


浦風「男やったらはっきりと答えな」


青年「え、えと……あの……」


ここで、青年の視界に入ったのは、不知火だった。不知火は、少しだけ笑みを浮かべて他のみんなを別の扉の方から退散させていたのだった。つまり、青年は不知火にちょっとだけ利用されてしまったのである。


青年「……」


不知火「……お気をつけて」


そう言い残すと、不知火は急ぎ足で出て行ってしまった。


黒潮「さぁ、いつまでたっても答えん男は嫌いやで! はっきりせえ!」


浦風「どっちなの?!」


2人は、青年の回答が気になって不知火たちのことには気づいていない。



青年「お、俺は……」


黒潮「……」


浦風「……」


青年「俺は――――――












――――――もんじゃ焼き派なんだ!!」


黒潮「……」


浦風「……」












黒潮「ぷっ……あはははは!」


浦風「あははは!!」


青年「……!?」


黒潮「あ~、おもろ。さすが青年さんやでぇ、うちらの予想を遥かに超えた回答やわ……」


浦風「こういうところは提督より、なんか魅力的やわ……」


青年「あ、そ、そうですか……」


黒潮「でもまぁ……今日はこの辺にしとこか、なっ、浦風」


浦風「うん」


青年「はぁ……よかった……」


こうして、第1次お好み焼き大戦は終結したのであった……。











―――次の日。



青年「……今日はいい天気だなぁ」


天津風「青年さん、ちょっといいかしら?」


青年「何?」


天津風「……今度は、どういうわけか、陽炎と野分が味噌汁の出汁で喧嘩してるんだけど……」


青年「……ほどほどにしてください」


※ちなみに主は、大阪住みですので大阪お好み焼きの方に縁があります。






青年の休日



次の日の朝の食事の時だった。


突如として、提督がみんなの前に立ち、一度全員を静粛させた。


提督「え~。みんな、美化週間はお疲れ様。いったん美化週間は終了だ」


その発表を言いつつ、提督は言葉を続ける。


提督「みんなも知っていると思うが、この間に青年君が部屋を抜き打ちチェックしてくれていたのだが、今日、それについての私の総評を述べさせてほしい。みんな、私が予想した以上に綺麗好きで本当によかった。私は嬉しいぞ!」


その言葉を、艦娘たちと青年は静かに聞いている。


提督「だが、青年君の抜き打ちチェックにて、あまり綺麗でないと言われた部屋がある。私も、汚かった場合の罰を考えていたのだが……。ここは1つ、青年君の代わりに鎮守府の掃除をしてもらうという罰に、昨日決定した。というわけで、汚かった部屋を晒してしまった、みんなは後で呼び出すので、そこまで覚悟はいらないけど、来てほしい。ちなみに、その罰が執行している間は、青年君には休暇を与えるということにする。みんな、文句はないな?」


提督の質問に、艦娘たちは口を揃えて賛同する。だが、青年だけはどうしても腑に落ちないところがあった。


青年は、食事後、提督と話をするために、執務室へと向かった。執務室に入ると、提督は青年を快く迎え入れた。


青年「え、えっと……本当に休暇なんていただいていいのでしょうか?」


提督「まぁ、いいだろう。ここのところずっと働き詰めだったし……この前、体調を崩したのもそれが原因かもしれないしな。たまには鎮守府の外にでも行って遊んでくるといい」


青年「遊びにいけと言われましても……」


そう、青年にはこれと言って一緒に遊びに行くような友人がいないのだ。もしいたとしても、都合がつくという保証はない。


困惑する青年の表情見て、提督は何かを考え出す。そして、何かを思い出したかのように椅子から立ち上がった。


提督「だったら、うちの艦娘を連れて行ってもいいぞ?」


青年「へ?」


提督「だから、艦娘を遊びに誘ってやっても……」


青年「いやいや、それって、ダメなんじゃ……ひょっとしたら迷惑かかるかもしれないですし……」


提督「いや、君も1人の健全な日本男子であるのだから、気になる艦娘の1人や2人、いてもおかしくないだろ?」


青年「……き、気になっている……ですか……」


青年は、ふと頭のなかでこれまで会った艦娘たちのことを考える。気になっている艦娘は……これと言って思い浮かばなかった。


だが、それなりに印象の強い艦娘は確かにいることには間違いはなかった。


提督「明日から、大体4日か5日くらいは君の休暇だ。好きに過ごすといい。あ、あと、これ給料」


青年「貰いすぎな気もしますが……ありがとうございます。……楽しんできます。それでは、これで」


青年は、提督に一礼だけして、執務室を去る。それから、まず自室に戻り、給料袋の中身をちょっとだけ見た。そして、それを金庫の中にしまい、仕事へと向かっていったのであった。



青年が掃除をしていると、向こうの方から1人の艦娘が歩いてくるのが見えた。


青年「あ、弥生……」


弥生「青年さん、どうも。休暇、楽しんできてください」


青年「あ、あはは……うん、楽しんでくる……」


ここで、青年は弥生が先日、見舞いに来てくれたことを思い出した。あまり借りというものを作りたくない青年は、お礼として弥生を誘ってみようと考える。


青年「あ、あのさ。弥生……」


弥生「何ですか?」


青年「もし、よかったら、明日、一緒に出かけない……?」


弥生「……それは……遠回しに、弥生を……で、デートに……ですか?」


青年「あ、いやっ……ほら、この前看病に来てくれたし、そのお礼……みたいなのをしたいというか……」


卯月「あ~!! 青年さんと弥生がなんだか面白い話をしてるぴょん! うーちゃんも気になるぴょん!」


青年「……」


弥生の後ろから突如姿を現したのは、睦月型4番艦の卯月だった。弥生と比べると、かなり明るく、表情が豊かな艦娘である。


弥生は、先ほどの『デート』発言を思い出したか、少しだけ頬を赤らめている。


卯月「何の話してたの?」


青年「え、えっと……明日遊びに行かないかって話なんだけど……」


弥生「……よかったら、卯月も来る?」


そう聞いたのは弥生の方だった。やはり、青年と2人で遊びに出かけるのは恥ずかしかったらしい。卯月はある意味で、道連れ役に選ばれたのだ。


卯月「もっちろん! 楽しみだぴょん! じゃあ早速計画を立ててくるぴょん!」


もちろん、そんなことは知らずに卯月は軽々と返事し、その場から去って行ってしまった。後に残された青年と弥生の間に沈黙が生まれる。


青年「え、えっと……それじゃあ、明日の朝9時くらいに、鎮守府の入り口で」


弥生「はい、わかりました……それでは、失礼します」


弥生もそう言い残して去って行った。弥生にしてはかなり珍しい足早な立ち去り方だったことに青年は違和感を覚えつつ、今日の内に出来る限り綺麗にしておこうと思い、黙々と掃除を続けたのであった。



次の日、約束した10分前ほどに青年が鎮守府の入り口付近にたどり着くと、既に弥生と卯月がそこに待機していた。それを見つけると、急いで2人のもとへと向かった。


青年「もう、来てたのか……」


卯月「うんっ! とーっても楽しみだったぴょん! あっ! 青年さんに今日行きたいところの予定シートを渡しておくぴょん!」


青年「ん、どれどれ」


青年は、卯月が意外とそう言ったことを決断するのが上手なんだなと感心しながらシートを見た。


その考えはあっさりと真逆の答えに変わってしまった。


青年「……あの、卯月」


卯月「どうしたの?」


青年「いや、あのさ……今日中に遊園地、お買い物、映画、動物園、水族館、エトセトラエトセトラ……無理だよ?」


卯月「え? 時間を切り詰めればいけるぴょん!」


青年「……無理だな。もっと絞り込んでくれないか? 弥生はどこか行きたいところはある?」


弥生「弥生ですか? 弥生は……青年さんに任せます」


青年「……え、遠慮とかしてる?」


弥生「いえ……たぶん、青年さんと卯月と行けるなら、どこでも楽しいと思いますので」


青年「そ、そう……」


青年は卯月に貰った、行きたいところリストを見て、今日の間にできる限り多く回れるようなルートを考える。おそらく、多く見積もって3箇所ほどだろうか。


青年「んと……じゃあ、遊園地はちょっと無理っぽいから……買い物にでも行く?」


卯月「うん! おっかいもの♪ おっかいもの♪ 嬉しいぴょん!」


弥生「買い物ですか……わかりました」


果たしていい空気といえるのかどうかわからない、この微妙な感じで、青年の休日初日はスタートしたのであった。


青年はとりあえず、鎮守府から少し離れたデパートへと連れてきた。下手に回るよりはこっちの方が2人のニーズを満たすことができるとふんだからだ。


青年「見たい商品でもあるなら、言ってくれたらいいから」


卯月「えっとね、うーちゃんは、新しい髪飾りがほしい!!」


青年「……髪飾り?」


卯月「うん! いっつもこのお月様のやつだから、たまには、その……いめちぇん! をやってみたいの!」


弥生「……青年さん、弥生もまずはそこから回ってみようかと」


青年「そうか、じゃあ、服とか、おしゃれ系の店を探さないとな……」


髪飾りの店なんてあるのだろうかと最初は思った青年だったが、探せばちゃんとあるものである。髪飾り専門店とはいかないまでも、それなりに大きなコーナーを設けている店が1つ見つかった。


卯月「わぁ~! すっごい素敵な髪飾りがいっぱいあるぴょん!」


青年「こらこら、店内では静かにしないと……」


青年は、そんなことを言いながら弥生、卯月と一緒に店の中へと入っていく。当然のことだが、この少しだけ異様な光景を見た店員が怪訝な表情をしたのは言うまでもない。


卯月「う~ん、どれにしようかな?」


弥生「……」


青年「あ、2人とも好きに見てていいよ。俺は待っておくから」


そう言って、女の子のファッションには疎い青年がその場を去ろうとした時だった。青年は服の裾が、何者かに引っ張られているのを感じた。


弥生「……?」


青年がその裾を引っ張っている手を見つけ、その主を見ると弥生だった。弥生は上目遣いでこちらを見ながらこう告げた。



弥生「見ていてくれないと……似合うかどうかわかりませんので……あの、その……お願いします」


青年「……あ、うん」


卯月「あー! このうさぎさんの髪飾り、とっても可愛いぴょん! うーちゃんに、ぴったりと思うぴょん! 青年さんもそう思わない?」


ちょっといい感じの雰囲気だった2人のことは気にせず、卯月は元気だった。だが、青年は卯月の笑顔を見ると、何となくだったが、親心的なものがわかった気がしたのもまた事実。


しばらくして、卯月は既に、候補を絞り始めていた。


一方で、弥生はまだその候補すら決められずにいる状態だった。


青年「あ、あの、弥生、別に無理して買わなくてもいいんだぞ?」


弥生「あ、えっと……」


青年がそう言うと、弥生はさらに焦った感じで選び始める。


だが、見つけることはできなかった。対して、卯月は先ほどのうさぎの髪飾りを買うことに決め、青年と弥生はそれについて行き、支払いを済ませて売り場から離れていった。


弥生「青年さん、すみません……せっかく連れてきてもらったのに……」


青年「気にしないでいいよ……弥生が本当にほしいやつでいいから」


弥生「……はい」


それからも3人で、色々な店を探しまわったが、結局弥生は自分でほしいものを見つけることはできなかった。


3人は、デパートをいったん離れ、次なる目的地、動物園へと向かいつつ、昼食をとれるような場所を探した。


青年「えっと……2人は何か食べたいものはある?」


卯月「うーちゃん、パフェが食べたい!!」


弥生「あ、弥生も……食べてみたいです」


青年「パフェか……昼食って感じじゃない気もするけど、近くにあるのかな……」


そう言いながら、辺りを見回してみると、嬉しい事に1軒のパフェ専門店らしき場所を見つけることができた。人気店らしく、ちょっとした行列ができている。


青年「じゃあ、ここにしよっか……2人とも、待てる?」


弥生「大丈夫です」


卯月「うんっ!」


それから、15分くらい待った頃に、3人は入店した。


席について、卯月は早速メニューを開き、どれにするかを迷い始める。弥生は、それを横から見ながらどうやら何を食べるか決めたようだ。


青年は店員を呼び、2人の食べたいものを聞いたあとに、テキトーに選んだパフェを注文する。


青年「で、この後、動物園だけど……」


弥生「弥生は、動物……結構好きです」


青年「そうなんだ……」


弥生「はい……。最近はカピバラが好きです」


卯月「あ! うーちゃんも好きだよ! かわいいよね!」


ふと、動物を愛でている弥生の姿を見てみたいと考えた青年は、少し疲れているのではないかと自分でも疑った。


そうこうしているうちにパフェが運ばれてくる。卯月は元気な声で「いっただきまーす!!」と言ってからは、自分のパフェに夢中になっていた。


弥生は、静かにパフェを楽しんでいる。だが、時折見せる、美味しさによってほころびるそのほほ笑みが何より青年にとって今日、弥生を連れてきてよかったと感じさせるものだった。


その後、たらふくパフェを堪能した3人は、動物園へと向かった。


動物園はかなりの人で賑わっていた。


青年「多いな……」


弥生「どうやら……何かイベントがあるみたいです」


卯月「イベント?! うーちゃん見てみたい!!」


青年「ええっと……ああ、パンダの赤ちゃんが公開されてるのか……弥生、どうだ?」


弥生「はい……楽しみです」


また、硬い表情がほころび、笑顔になる。


青年「……よし、じゃあ、ちょっと混雑してるけど、頑張るか。はぐれないようにな」


青年も少しだけ、気分が乗ってきたようだ。3人は、何としてでも近くで見ようとうまい具合に人ごみの中を進んでいった。


何とか最前列に出ることができた3人、青年は卯月と弥生の後ろに立つように心がけた。弥生と卯月は声を出してパンダの赤ちゃんを見ている。


弥生「……かわいいです」


卯月「パンダの赤ちゃん、初めてみたぴょん! すっごく、かわいいぴょん!」


青年「あはは……それはよかった」


だが、幸せな時間はそこまで長くは続かなかった。おそらく、3人の来たタイミングが非常に悪かったのだ。飼育員が他のお客のために、長居はやめてくれと声を出している。


青年「あちゃ~……」


卯月「え~、もう終わりなの?」


青年「そういうわけじゃないけど、こういうのは平等だから……ね。それに動物園なんだから、パンダの赤ちゃん以外にもいっぱいいるし……」


弥生「そうですね……弥生はカピバラを早く見たいです」


それから、一度パンダの赤ちゃんの場所から離れ、もらった園内地図を見ながらカピバラのところへ向かった。カピバラは現在、入浴中とのことで、温かい水の中へ入っていて、何とも言えない気持ちよさそうな表情をしているカピバラの集団を見ることができたのだった。


卯月「うわ~!! カピバラさん、かっわいいぴょん!」


弥生「……」


青年「弥生? ……あ、何でもないよ」


今まで見た中で一番幸せそうな笑みを浮かべていた弥生には、何も言わないでおこうと青年は思いつつ、カピバラを見ていたのであった。


それからの3人は、すっかり動物園の虜になってしまった。もっと他の場所を回る予定をたてていた青年も、思わず時間を忘れて動物を眺めることに集中してしまっていたのだ。気づけば、もう夕方。そろそろ帰らなければ、まずい時間帯である。


青年「やばいな……2人とも、そろそろ帰るか」


弥生「……はい。満足です」


卯月「とっても楽しかったぴょん!」


それから、3人が鎮守府へと帰っていく途中だった。弥生がふと、ある店の前で足を止める。青年と卯月が変だと思い、振り返ると弥生がゲームセンターの店頭に設置されたUFOキャッチャーの中を覗いている。


青年「弥生、どうした?」


弥生「……かわいいです……カピバラ」 


どうやら、弥生が気になっているのはUFOキャッチャーの景品のカピバラの大きな人形だった。


青年は、卯月には髪飾りを買ってあげたのにもかかわらず、弥生にはまだ何もあげていないことを思い出し、「やってみる?」と尋ねた。


弥生は、黙って頷き、まず1コインを投入する。(※弥生が気になっているカピバラの人形は、「カピバラさん」とググれば、画像で出てきます)



弥生「……」


弥生のそこからの顔つきは真剣そのものだった。卯月も、弥生の真剣さに気づいたのか静かにことのなりゆきを見守っている。


弥生「……あうっ」


500円入れて3プレイのうち、1回目は、失敗し、弥生は声を上げて悔しがる。


弥生「……つ、次こそは……あっ……」


次も失敗。


弥生「……あ、あと1回ある……」


だが、慣れないUFOキャッチャーは上手くはいかなかった。結局、カピバラの人形の真上にはクレーンを落とせてるが、アームが人形をちゃんと掴めていないのだ。


おそらく、正攻法より、アームに引っ掛けてちょっとずつ動かしていき、取るタイプのUFOキャッチャーなのだろうと青年は考えた。


弥生「……」


青年「……弥生、まだお金あるし、やる?」


弥生「……はい。……あっ、では、1回ずつ、3人で交代してやりませんか?」


卯月「うんっ! うーちゃんも頑張る!!」


こうして、3人のUFOキャッチャーチャレンジが始まったのであった。青年は、卯月と弥生に、先ほど考えた作戦を伝える。さすがに、2人とも普段から「作戦」には慣れているだけあった。青年が考えた方法はあっと言う間に理解し、着々と人形を落とし口へと近づけていった。


そして、ついにその時は訪れる……。


青年「……よしっ……これで……落ちた!」


卯月「やったやった!! やったぴょん!」


弥生「っ……嬉しいです!」


人目を気にせず、3人は喜んだ。弥生は、カピバラ人形を抱いて笑顔になっている。だが、その喜びの声はある人物の声で途切れた。


瑞鶴「……何やってんの?」


青年「え……瑞鶴さん?!」


瑞鶴「ええ、瑞鶴よ。……で、青年、休日なのは知ってるけど、何やってるわけ?」


青年「あ、いや……その、ね……」


瑞鶴「……」


瑞鶴の視線が少しだけ鋭くなっている。青年は、話を逸そうと思い、目線を下によると、瑞鶴の両手にはスーパーかどこかのレジ袋が握られていた。


青年「えっと、瑞鶴さんはどうしてここに?」


瑞鶴「あれ? 青年は知らなかったっけ……。うちの鎮守府、提督の気まぐれで『大宴会』が1ヶ月か2ヶ月に1回のペースで開かれるのよ。で、それが近づいているから今日はそれの買い出し」


青年「へぇ……」


瑞鶴「……で、そんなことで、話を逸そうと思ったって無駄だからね?」


青年「あ、はい……」


卯月「瑞鶴さんも一緒に帰るぴょん!」


弥生「そうですね……一緒に帰りましょう」


どうやら、卯月は普通にこの緊迫した状況に気づいておらず、素でこのようなことを言っており、弥生は人形をとれた喜びで、深く考えることができていないようだった。青年は気まずさを覚えながら瑞鶴、卯月、弥生と4人で鎮守府へと帰り始める。


青年「瑞鶴さん、荷物、僕が持ちますよ……」


青年は、瑞鶴のレジ袋をさりげに取る。瑞鶴は、小さな声で「ありがとう」とだけ答えた。


瑞鶴「……で、聞かせてもらおうかしら、どうして、弥生、卯月と出かけたのかしら?」


青年「それ、本人達がいる前で……って言っても先々歩いていってますね……」


瑞鶴「さぁ、正直に言いなさいよ……」


青年「えっと、まぁ、この休日にあたって提督さんから『好きな艦娘を連れて行っていいよ』って言われて……」


瑞鶴「へぇ、つまり、弥生と卯月が好きなんだ……。もしかして、あなたって、その……ろ、ロリコン?」


青年「ち、違いますよ……。弥生は、一応この前看病に来てくれたからそのお礼をしたくて……」


その言葉を聞いた途端、瑞鶴の表情がさらに強張る。


瑞鶴「あれ、私も看病してあげたわよね? わざわざお粥までつくって……」


青年「……あれ? 鳳翔さんが作ったって言ってませんでしたっけ?」


その言葉を聞いた途端に、瑞鶴は何かに気づいたような顔になる。そして、顔が一気に紅く染まった。文学的に例えるなら、「今にも爆発しそうだ」。


青年「……ず、瑞鶴さん?」


瑞鶴「と、と、とにかく! そ、そのっ……何で弥生と卯月なのよ!」


青年「そ、それはたまたま弥生が一番最初に目に入って……。卯月は、ついてくる形で……」


瑞鶴「……そうなんだ……」


瑞鶴はムスッとした表情になっている。青年はもちろん、こういった場合の女性の扱い方というものをよく知らない。


だが、青年は、自分でも次のような言葉が出るとは思わなかった。


青年「じゃあ、瑞鶴さん……今度どこか行きましょう……。お礼として……どこか、二人で」


瑞鶴「えっ!? あ……え? うん……」


2人がそんな会話をしていると、鎮守府へとたどり着いた。


卯月「じゃあ、青年さ~ん!! うーちゃん達はこれで! また、どこか連れていってね!」


そう言って、卯月は足早にその場を去って行った。弥生は、青年の方に近づいてくる。


弥生「青年さん……今日はありがとうございました。弥生、とても楽しかったです」


青年「あ、いいよ……そんなお礼なんて、こっちもお礼として、連れていったんだし……」


弥生「……そうですか。では、弥生はこれで失礼します」


そう言って、弥生は卯月についていった。鎮守府の入り口付近で、瑞鶴と青年の2人が取り残される。


瑞鶴「んじゃ、まぁ、私は食堂のところにこれ、持って行くから。青年も今日はあの子達に連れ回されたんでしょ? 部屋に行ってゆっくり休みなさい。休日は、遊ぶためだけの日じゃないのよ?」


青年「はは……そうですね。では、お言葉に甘えて、そうさせてもらいます」


瑞鶴「うん……。じゃあ、えっと……その……また」


青年「はい」


瑞鶴は、そう言って、青年が代わりに持っていたレジ袋を取ると食堂の方へ向かっていった。


青年も、自室へ戻ろうと鎮守府内を歩いて行く。


あともう少しで自室のある寮内へと辿り着く頃だった。海の中から、艦娘が1人、出てくる。


ゆー「……あ、青年さん」


青年「ゆー……。どうしたの?」


ゆー「ちょっとだけ、潜水艦のみんなで演習をしてた。青年さんは、どこかへ遊びに行ってたの?」


青年「あ、まぁね……」


ゆー「そう……。青年さん、明日も休日?」


青年「うん、たぶん……」


ゆー「あの、ゆー、お願いがある。青年さんに、日本文化について教わりたい」


青年「へ?」


ゆー「……お願いします」


青年「……あー、うん。わかった。じゃあ、明日の計画、考えておくよ」


ゆー「はい、お願いします」


青年「うん……あ、水浸しだから早く拭かないと風邪引くよ?」


ゆー「あ、はい……では、これで」



ゆーが去って行った後、他の潜水艦達も姿を現して、ゆーの後を追う形で去っていく。その言葉に「ゆーちゃん、待って!」などと言う言葉が出ている限り、ちょっとずつ打ち解けてきていることがわかった。


青年は嬉しく思い、自然と笑顔になる。そして、頭の中で、明日の計画を練りながら部屋へと戻って行くのであった。






日本文化に触れよう!


それから晩ご飯を食べた後、青年は一度ゆーとビスマルクの部屋へと向かった。ノックをして、ゆーが出てくると中に入ってもいいと言われたので、中へと入る。


ビス子「あら、青年、どうしたの?」


青年「ちょっと、ゆーと話があって……。ゆー、明日なんだけど、ゆーの行きたいところも聞いておきたいんだけど……」


ゆー「ん……ゆーは、お寿司、食べてみたい」


ビス子「あら、何? デート?」


青年「そ、そんなんじゃないですって……ゆーが日本文化を学びたいって言うから……」


ビス子「ふぅん……。ゆー、楽しんできなさいよ」


ゆー「うん」


寿司の他にもゆーの口からは色々なワードが出てきた。青年はそれを整理し、自分のたてた計画と照らし合わせ、行けそうなところは全部回ることができるようにする。


青年「うん。じゃあ、ゆー。明日の……9時半くらいに……じゃないな、マルキューサンマル……でいいのかな? その時間に、鎮守府の入り口で」


ゆー「うん。わかった。青年さん、Danke」


ビス子「ゆーのこと頼むわね。これでもかわいい妹分だから」


青年「あはは、はい……」


青年は、2人に「おやすみなさい」と言ってから部屋を出た。


次の日の朝、いつもの港での掃除を始める時間に目が覚める。休日であるのにもかかわらず、身体はすっかり仕事に慣れてしまっている。とりあえず、二度寝して遅刻するという展開は避けるために、港で散歩でもしようと思い、港へと向かった。


港に向かうと、艦娘が1人、掃除をしている。


青年「あ、陸奥さん。おはようございます」


陸奥「あら、青年君、おはよう……ふぁ~……眠いわね……」


青年「えっと、陸奥さんは罰で掃除を?」


陸奥「そうね……青年君のことだから、結構マイルドに表現はしてくれたんだろうけど……ほかが綺麗すぎたのね……。おかげで、罰掃除よ……」


青年「あ、あはは……」


陸奥「でも、今日は私1人でよかったわ。……長門には悪いけど、長門が手伝ってしまったりしたら……」


青年「そうですね……。な、長門さんもやり方さえ覚えれば大丈夫と思うんですけど……」


そう言って、陸奥と談笑した後、朝食を取り、約束の時間の頃に鎮守府入り口にたどり着く。それから、しばらくしてゆーがやってきた。いつものような、黒を基調とした服ではなく、白を基調としたワンピースのような服を着ていた。


青年「あれ……いつもの服じゃないんだ?」


ゆー「ん……なぜか、ビスマルクお姉ちゃんが持ってた」


青年「……へ、へぇ……。まぁ、ゆーには似合ってると思うよ」


ゆー「Danke……じゃあ、行こ?」


青年「うん……」


そう言って、2人は歩き出す。青年とゆーも、この時、青葉が『たまたま』目撃し、それを新聞の記事にするだなんて、思いもしなかったのである。そして、青年はこの翌日、ある疑いをかけられるのだが、それはまた今度。



さて、青年とゆーは、まず近くにある神社にやってきた。世界遺産に登録されているような、歴史が長かったりするわけではないが、それでもなかなか大きな神社である。


まず、大きな鳥居に、ゆーは圧倒されたようだ。鳥居を下から見上げ、驚いている。


ゆー「青年さん、これは、何?」


青年「それは、鳥居って言って……まぁ、簡単に言ってしまえば、神社のシンボルというか、入り口というか……門みたいな感じかな」


ゆー「鳥居……これは、何のためにあるの?」


青年「ええっと……ほら、神社って神様がいるところだからさ。ここからは神様のお庭……というより、ここからは神様がいるところだよって言う目印かな……。とは言っても、日本人でも神社への入り口として認識している人のが多いけど……」


ゆー「そうなんだ。また1つ、勉強になった」


青年「じゃあ、中に入って見ようか」


ゆーは、頷き、青年と一緒に神社の中へと入る。


そこまで人は多くはなかったが、散歩か何かで来ている人がちらほらと見えた。中でもゆーの目に留まったのは、巫女さんである。


ゆー「……あれ、あの人達も艦娘? 榛名さんとか、翔鶴さんとかが着ている服とちょっとだけ似てる」


青年「あ、違う違う。あれは、巫女さんって言って……神様に仕える人達だよ。まぁ、最近はバイトとかでやってる人もいるらしいけど……」


ゆー「じゃあ、榛名さん達も、神様に仕えているの?」


青年「うぅん……難しいな……」


ゆー「そう……。あ、あれはゆーも知ってる。お金を入れるところ」


『お金を入れるところ』というのは、想像の通り、賽銭箱のことである。2人は、そこへ近づき、賽銭箱の前に立つ。


そして、青年は財布から10円玉を取り出し、ゆーに手渡す。


ゆー「これ、どうするの?」


青年「まぁ、お金を入れて神様にお願いごとを祈ればいいよ」


ゆー「……10円で足りるの?」

 

青年「へ? まぁ、気持ちの問題かな……」


ゆー「そうなんだ。えっと、これをあれに入れるんだよね。……えいっ」


10円玉は、賽銭箱の中に吸い込まれるようにして入っていった。青年は、ゆーに、賽銭を入れた後にどうすればいいのかを、実際にやってみながら教える。たどたどしく、行っているその参拝を見た周りの人達は、2人のことを兄妹か何かと思ったのか、微笑ましく見ていた。


ゆー「お願い、終わった」


青年「そっか。じゃあ、次、行こうか……えぇっと……」


ゆー「ゆー、お寿司楽しみ。実は、今日、いっぱい食べれるように朝ごはんは少なめに食べた」


青年「そこまで徹底しなくてもいいのに……」


ゆー「楽しみだったから……お寿司」


青年は、そんなゆーを微笑ましく思いながら街中を歩いて行く。具体的な「日本文化」を紹介してくれと言われると、なかなか難しいと感じつつも、次の場所へと向かった。


次の場所は、青年がたまたま情報誌で見つけた、和服を着て写真が撮れるような小さな写真館だった。


ゆー「ここは……?」


青年「写真館……かな。ここでは、和服とか、十二単っていう日本の伝統的な衣装を着て写真を取ることができるんだけど……」


ゆー「つまり、コスプレ?」


青年「……そ、そういうことかな?」


青年とゆーは、とりあえず、用意されている衣装を見たりして楽しむ。青年は、昨日のうちに調べて覚えた、うろ覚えの知識をゆーに教える。時間がもっとあればたくさんのことを教えてあげることができるのに、と後悔しつつも、青年なりに頑張って教えた。


ゆー「青年さん……。ゆー、ちょっとだけ着てみたい」


青年「そうか……。えっと、すいません」


女性スタッフを呼び、着て写真撮影をしていいか尋ねた。女性スタッフは笑顔で了承してくれて、ゆーは個別の試着室へと入っていく。青年はしばらく待ち、時間を潰す。


やがて、ゆーが中から出てきた。


ゆー「青年さん……どうかな?」


青年「あ、うん……結構似合ってる。髪もセットしてくれたんだ」


ゆー「うん。……でも、ゆーが思うに、和服って、黒い髪の人の方が似合うと思う」


青年「う~ん……まぁ、そこは見る人によって違うんじゃないかな? ゆーも本当に似合ってると思うよ」


ゆー「そうかな。じゃあ、写真撮ってみたい」


ゆーがそう言ったので、スタッフに頼んで、いくつか写真を撮ってもらった。写真は、後日鎮守府にて送るとのことだった。ゆーはまた着替えて、髪も元に戻し、青年のところへ戻ってくる。


青年が時計を見ると、もうお昼の時間になっていた。青年とゆーは写真館を出て、本日のメインと言ってもいい、お寿司屋へ向かう。とは言っても安い回転寿司屋ではあるが……。


入店し、店員に案内され、席に座る。


ゆー「ここが、お寿司屋さん……くるくる回転してる」


青年「回転寿司って言うんだけど……。本当はもっと高級なところだと、こんな機械はないんだけどね。俺がお金ないから……ごめんな」


ゆー「うぅん、気にしないで。とっても、嬉しい……」


青年「そっか……。じゃあ、ゆーは何食べる?」


ゆー「これ、好きなものを取っていいの?」


青年「うん」


ゆー「えっと……じゃあ、これ」


そう言って、ゆーが最初に取ったのは、マグロ。寿司では定番の人気メニューである。青年は醤油を取って、ゆーに手渡した。ゆーはぎこちない手で醤油を出し、マグロをまず一貫、頬張る。


ゆー「…ん……美味しい……!」


一瞬、ゆーの瞳の輝きがより一層増したような気がした。ゆーは、喜んでもう一貫の方も食べた。何とも幸せそうな表情をしている。この笑顔が見れただけでも青年は満足である。


青年「遠慮しないで、どんどん食べていっていいから……」


ゆー「うん……。次は、これ……あ、これも」


そう言いながら次々と、ネタを取っていく。近くで見ていた中年のサラリーマン姿の男性がこちらを見ているのが見えた気がした。どこか、おかしいところでもあるのだろうか、と青年は思いつつ、自分も食べたいネタを取り、ゆーより、かなり遅めのペースで食べていく。


ゆーは、どのネタを食べても目を輝かせながら「美味しい」と言う。そう言ってもらえると、握った人もそれなりに満足だろう……。これが、もっと一流の寿司屋だったら、板前は大喜びだ。


とにかく、そこからのゆーの食欲はなかなか凄かった。美味しいものを食べていると夢中になり、ついつい食べ過ぎるという話を聞いたことがあるが、ゆーはまさしくそれだった。


ゆー「……ちょ、ちょっと食べ過ぎたかも……」


青年「あはは、大丈夫?」


ゆー「お茶……」


青年「あ、そうだ。それも確かにお茶だけど、お寿司屋さんでは、『あがり』って言うんだよ」


ゆー「あがり?」


青年「うん。どうしてそういうのかは知らないけど……」


ゆー「じゃあ、他には何かあるの?」


青年「えっと、そこに置いてあるショウガのことは『ガリ』で……醤油は『ムラサキ』だったかな」


ゆー「ムラサキ? 醤油は黒じゃないの?」


青年「う~ん……それを言われるとなかなか答えられない……」


ゆー「そうなんだ……。日本語、難しい……」


青年「結構上達してると思うけどね……にしても意外だなぁ」


ゆー「何が?」


青年が意外と感じたのはゆーの食べた寿司にあった。そう、全てわさび入りなのである。わさびは確かに好きな人には好きな味ではあるが、ゆーはそれを一度も気にした様子はなく食べていたのだ。(普通なら、ゆーくらいの歳の子は苦手とする子が多いのにもかかわらず)


青年「えっと、わさび、大丈夫だったの?」


ゆー「わさび? ……もしかして、この緑色の?」


青年「うん。鼻にツンとくる時があるから、結構苦手な人もいるんだけど、ゆーは平気だった?」


ゆー「うん。そこまで気にしなかった……。何て言うか……その……フーミのようなものを感じた」


青年「あ、風味ね……なるほど」


その後、2人は会計を済ませて寿司屋を出た。


さて、2人は鎮守府を出ると街中をのんびりと歩き始めた。実を言うと青年は寿司屋に行った後の計画は、ゆーが昨晩見てみたいと言った言葉に従ったルートになっている。


青年「えっと、ゆーは確か……日本の自然が見たい……か」


ゆー「うん。鎮守府の本で見た風景、とっても綺麗だったから」


青年「行けるかなぁ……ちょっとだけ、電車に乗ることになるけど、大丈夫?」


ゆー「大丈夫。日本の電車、乗ってみたい」



そう言って、2人は駅で切符を買い、電車に乗って都会から離れた自然が残っている場所へと向かっていった。

目的の駅に辿り着き、電車から降りると、先ほどのビルが建っている風景とは一変して、周りには野山の景色が広がっていた。


ゆー「……」


青年「まぁ、こっから先に歩いちゃうと帰るのがかなり遅くなっちゃうから……今はここで、我慢してくれると嬉しいかな……」


ゆー「うん。これでもとっても綺麗。青年さん……Danke」


青年「……ちょっと、のんびりしていこうか」


ゆー「うん」


そう言って、駅にあったベンチで並んで座る。この駅で降りる人はかなり少なかったので、静かな空気が2人を包んだ。このまま油断していると、寝てしまいそうな勢いだった。


青年「……ん?」


ふと青年が見つけたのは、移動販売をしているソフトクリーム屋であった。今どき、こんなところに売りにくるのは珍しいと思い、青年はゆーにいるかどうかを尋ねる。ゆーは、頷き、青年と一緒に買いに出た。


青年「ソフトクリーム2つください」


店長「あいよ」


ソフトクリームを受け取り、2人は再びベンチに座り、味わった。


ゆー「日本のソフトクリーム、美味しい……」


青年「確かに、美味しいね……あのおっさん、何者なんだろう……」


ただ静かな時間が過ぎていく。辺りに聞こえるのは鳥のさえずりや風の音だった。普通なら退屈しそうな場面だが、ゆーはとても楽しんでくれたようだった。とても心地よさそうに微笑みを浮かべている。




青年「……じゃあ、そろそろ行こうか」


ゆー「うん」


しばらくして、2人は電車に乗り、鎮守府のある方面へと向かっていった。



青年「……ん?」


ふと、青年が目をやるとゆーが、青年の肩に頭を乗せて寝てしまっていた。今日の小さな小さな旅の疲れか、それとも電車の座り心地がよかったのかは青年にはわからない。ただ1つ、青年にできることは、目的の駅に着くまで起こさないように、じっとしてあげることだった。


青年「……幸せそうな寝顔だよな……」








その夕方、提督のもとに一本の電話がかかってきた。


提督「はい、もしもし……」


電話をかけてきた相手の主の話を聞いて、提督は大笑いした。そして、「気をつけて帰って来い」とだけ言って電話を切る。



大淀「一体どうしたんですか?」


提督と一緒に執務をしていた大淀が話しかける。提督は、楽しそうにことのなりゆきを説明した。



提督「青年とゆーが、電車を寝過ごして見知らぬ街に行ったらしい」



ロリコンカッコカリと二人の龍


次の日の朝、青年はいつもよりかなり遅れて起きた。それもそのはず、鎮守府に帰ってきたのはなんとみんなが晩ご飯を食べ終わる頃だった。そのため、2人は晩ご飯を食べ終わった瞬間、すぐ自室に入って眠りについたという。


青年が食堂に行くと、食堂内がざわついていた。時折、一部の艦娘がちらちらと青年の方を見てくることを気にしながらも、朝食のメニューを受け取って空いている席を探す。


空いている席に座り、食事をとっていると、瑞鶴が青年の隣に座った。


青年「あ、おはようございます」


瑞鶴「おはよう……あなた、すっかり有名人よ?」


青年「へ?」


そう言って、瑞鶴が手渡してきたのは1枚の新聞。それを見るとでかでかと『青年ロリコン疑惑浮上』と書かれていた。


青年「……こ、これは……」


瑞鶴「あなた、昨日ゆーと出かけたんでしょ? ほら、一昨日だって弥生や卯月と出かけたから」


青年「えっと……確かこの記事とか作ってるの青葉さんですよね? ちょ、ちょっとだけ訂正してもらわないと……」


瑞鶴「そうね……。今のところ、ロリコンカッコカリってところかしら……」


青年「……」


瑞鶴「冗談よ……そんなに怒らないでよ」


青年「べ、別に怒ってないですって……」


青年と瑞鶴はそれから朝食を取り始めた。青年は朝食を取りながらも、瑞鶴がソワソワしているのがわかった。そもそも、瑞鶴と翔鶴は一緒に行動していそうなものなのに、翔鶴の姿が見当たらないのも疑問だった。


青年「……」


瑞鶴「あ、あのさー、青年」


青年「どうしたんですか?」


瑞鶴「そ、その……何て言うか……ロリコン疑惑解消のためには、歳が近いというか、もうちょっと大人な艦娘と遊ばないといけないんじゃないかしら?」


青年「……はぁ」


瑞鶴「え、えっと、この前約束もしたし、よければ今日――――「あ、いたいた、青年だぁ!」


そう言って、2人の後方から声がしたので青年は振り返って見る。そこに立っていたのは、蒼龍と飛龍の二航戦の2人であった。今朝の話題の人物としてひやかしにきたのかはわからないが、何やら蒼龍と飛龍はニコニコとしている。


青年「えっと、お二人とも、どうしたんですか?」


蒼龍「えっとね、青年君。大宴会のことは知ってるよね?」


青年「あ、まぁ……」


蒼龍が尋ねてきたことに青年は答える。以前、瑞鶴から大宴会については聞いている。


蒼龍「それでね、もしよかったらなんだけど、ちょっとそれ関連のことで手伝ってほしいことがあるんだけど……いいかな?」


青年「あ、僕でよければ、お手伝いしますよ」


蒼龍「わーい、男手が増えると結構助かるのよね~!」


飛龍「よしっ。じゃあ、食べ終わったら私達の部屋に来てね~」


そう言って2人は立ち去ってしまった。青年が再び食事を取ろうとすると、瑞鶴がじっとこちらを見ている。


青年「……ど、どうかしましたか?」


瑞鶴「……ふてくされるぞー」


青年「……へ?」


瑞鶴「……なんでもないわ。んじゃ、私はこれで。あ、これもーらいっ!」


青年「あ?! ちょ、それ、取ってたのに……」


瑞鶴はそのまま去って行ってしまった。青年は「やれやれ」と言った表情を浮かべ、残りの朝食を食べた。



それから、青年は言われた通り蒼龍と飛龍の部屋に向かった。ノックし、ドアを開け、入っていいか確認を取るとすぐに返事が返ってくる。青年は蒼龍と飛龍の部屋へと足を入れた。この前の美化週間があったおかげで、艦娘の部屋に躊躇なく入ることができていることに青年は、許されることなのだろうかと若干疑問を持ったが、あまり気にしないことにした。


蒼龍「ごめんなさいね。わざわざ来てもらって」


青年「いや、いいんですよ。それに、大宴会に僕も少しでも関われるなら……結構嬉しいですし」


飛龍「よしっ! じゃあ、話し合いを始めよう!」


そう言って、飛龍が取り出したのはメモ用紙と大宴会の計画表のようなものだった。それから聞かされたのは、出される料理の確認や、予算、終わった後のゴミの処理などかなり徹底した話し合いになった。2人の話によると、色々と計画を立てる係は毎回提督が判断するらしく、前回は長門と陸奥が担当したらしい。


青年「男手があると助かるって言ってましたけど、力仕事ではないんですね……」


飛龍「あはは。それは、ちょっとその場のノリで蒼龍が言っちゃったことだから、そこまで力仕事はないかな?」


蒼龍「そうね……。でも、たまにはパーッと何かやりたいわね」


青年「何かというと?」


蒼龍「ほら、いつも同じ内容だとみんな飽きちゃうじゃない」


青年「あぁ……なるほど」


そう言って、青年は過去に行った大宴会での計画をちょっとだけ見る。見事に、食べて呑んで食べて呑んで……と言ったことしかやっていなかった。


青年「えぇっと……余興と言いますか、催し物……をやってみるのは、どうでしょうか? 有志を集めて」


蒼龍「なるほどね。……でも、出てくれる子達なんかいるかしら?」


飛龍「いや~、案外集めてみたら結構集まるかもよ?」


青年「では……その方向で一度やってみませんか?」


蒼龍「そうね。やってみましょう」


飛龍「うんうん! 面白そう!」


そう言って、2人は快くその案を採用した。飛龍がそれをメモに書き取ると同時に、2人の視線は青年の方を向く。


青年「……どうかしましたか?」


蒼龍「……その案を出すってことは」


飛龍「自分でもやってくれるのよね?」



青年はこの時、自分の先ほどの発言に少しだけ後悔をしたのであった。蒼龍と飛龍は、青年がどんなことをやってくれるのかと期待し、目を輝かせている。


青年「いや、今はやらない……です」


飛龍「えぇ~。つまんないじゃない……そう言えば、何か特技とかあるの?」


青年「……言われてみると、ないですね……」


蒼龍「う~ん……じゃあ、こうしてみるのはどう?」


そう言って、飛龍が提案したのは青年は、この余興に出てくれそうな艦娘を見つける……、というよりスカウトしてくるということだった。もしできなかったら青年が何かを行い、できたらその子達に後は任せることができるという……。


青年「……じゃ、じゃあそれでいきましょう」


飛龍「よしっ。じゃあ、そうメモしておくね。え~と、後は進行役を誰に任命するかね……確か前回は、青葉だったわね」


青年「……また、青葉さんでいいんじゃないでしょうか……」


青葉の名を聞いて今朝の新聞記事のことを思い出す。青年は青葉に、進行役をやってほしいと頼みに行くことを口実に、新聞記事の訂正を頼もうと考え、それを伝える役を買って出た。


蒼龍「じゃあ、青年君に任せるわね」


青年「はい。えぇと、後のゴミ処理も僕に任せていただければ……」


蒼龍「えっ。それはダメよ。青年君の負担が……」


飛龍「毎回みんなで掃除って決まってるからねぇ……とは言っても大概の人達は酔いつぶれちゃってるんだけど」


青年「あはは……」


青年は、掃除役も買って出たのは言いが終わった後の散らかり具合を想像すると少しだけ、ゾッとした。だが、青年は急な休日をもらってしまったため、掃除をしていないことに若干のストレスを持っていた。気づけば、自分でも驚くくらいに掃除漬けの日々だったのである。


青年「……まぁ、僕は掃除しますよ。たぶん……酔いつぶれたりしてない限りは」


飛龍「お、言ったわね。当日が結構楽しみだわ。青年君がどこまでお酒に耐えれるか」


青年「そうですね……えぇと、これで一応、話し合いは終わりですか?」


蒼龍「そうね。今日のうちに話せることは終わったかな。というわけで、お疲れ様! もう大丈夫よ」


青年「そうですか。では、僕は、余興に出てくれそうな人と青葉さんを探してきます」


そう言って、青年は蒼龍と飛龍の部屋を出た。



言葉選択を間違えるとスカウトじゃなくて変質者



青年は、青葉のいる部屋へと向かう途中ですれ違った艦娘たちに声をかけようとしたが、なかなか上手くいかない。


青年はあくまでも清掃員、スカウトの経験なんて一度もなかった。そのため、上手くいかないというよりは、何と声をかけていいかわからない状態だ。


青年「うぅん……」


思わず声を出して悩み始める。すると、向こうの方から大和型戦艦の2人、つまり、大和と武蔵が歩いてくるのが見えた。青年はここで逃せば後はなくなってしまうと思い、2人の前に出てみる。


大和「あら、青年さん。こんにちは」


武蔵「元気か?」


青年「え、ええっと……」


青年はスカウトの人が声をかける時にいいそうなセリフを考えた。


そして、必死に考え、出た言葉が――――
















青年「大和さんと武蔵さんって……『いい体』してますよね」


大和「……」


武蔵「……」






青年は必死に、言葉を選んだつもりだったのだが、どうやら最悪の言葉を選んでしまったようだ。


普段、穏やかな表情を浮かべている大和でさえ、表情が曇っている。というより、何かの間違いであることを願っているような顔だ。


青年は自分でもどうしてあんなことを言ったのかわからず、困惑し、額から冷や汗流れてきた。


大和「……え、えっと……青年さん? い、今の言葉は……」


青年「あ、あのっ……ま、間違えました……け、けけ、決して変質者とかそういうのでは―――「まぁ、落ち着け」


慌てふためく青年の肩に武蔵が手を置いた。


武蔵「落ち着け、青年。私達に何か話があるのだろう? そこまで慌てなくとも、私達は、ちゃんと貴様の話は聞いている……だから、まずは、落ち着け」


青年「……はい」


そう言って、武蔵が手を離すと青年は一度だけ深呼吸をする。さすがは戦艦……と言ったところなのだろうか。武蔵の言葉がどれもこれも頼もしく、そして、安心できるように感じたのだった。


青年「ええと……お二人とも、大宴会がそろそろ近づいているのは……知ってますよね?」


大和「はい」


武蔵「ああ」


青年「大宴会の席でなんですけど……余興と言いますか……ちょっとした芸を披露する……みたいなものを計画しているんですが……出てみてくれませんか?」


その話を聞いて大和と武蔵は互いに顔を見合って考えている。武蔵は大和の方を見て何かを思いついたようだ。


武蔵「……これだ。大和、あれで出てみてはどうだ?」


大和「え?」


武蔵「……この傘を使えば、定番ではあるが、あの余興ができるだろ?」


傘を使った芸といえば、傘の上で何かを転がすあのネタのことである。大和もそれがわかったみたいで、「どうしようかしら」と呟き、考え始める。


青年「大和さん、お願いします!」


大和「そ、そこまで頼まれたら……うぅん……青年さんにそこまで言われると断れませんね。ぜひ、協力させてください」


青年「本当ですか?! ありがとうございます!」


青年はメモ用紙に、大和が出てくれることを書いた。だが、これだけでは終わらなかった。今度は大和が武蔵を道連れにしようと、説得し始めたのだ。



大和「ね、武蔵も出るわよね?」


武蔵「わ、私は遠慮しておく……」


青年「……武蔵さんもぜひ、何かあれば……」


武蔵「……仕方ない。考えておくとしよう」


そう言って、武蔵は諦めた表情になった。青年は一応、武蔵の名前もメモに書き記し、2人に礼を言う。


大和「ところで……青年さん、大変ですね……あんな記事が出るなんて……」


青年「あ、あれですか……実は、その件でこの後、青葉さんと会う予定なんですけど……」


どうやら、大和はそれなりに青年のことを心配してくれていたようだった。青年はそんなことを思ってくれている艦娘が1人でもいるだけでかなりありがたいと思った。大和曰く、武蔵は「あまり興味はない」と切り捨てたそうだが……。


大和「青年さん、私は青年さんが誠実な方だと思ってますよ」


青年「ありがとうございます……。色々と勘違いされると困りますので青葉さんには何としてでも記事を訂正してもらうつもりです……」


大和「なんでしたら、私もついていきましょうか?」


青年「あ、いえいえ。大和さんも忙しいのに、それはダメですよ……」


武蔵「フッ……青年も、少しは男らしくなったな。来たばかりの時はあんなになよなよしていたのに」


青年「そ、そうですか?」


姉御肌な武蔵にそう言われると自然と嬉しくなる青年。というよりも、武蔵の一言一言には、魔性の力があるのか、安心できるのだ。本当なら青年はこういうたくましい人物になってみたかったのだが……。どうもうまくいかない。


青年「……では、そろそろ行きますね。お二人とも、本当にありがとうございます」


武蔵「ああ。また何かあれば、ぜひ声をかけてくれるとありがたい」


大和「青年さんも、これから青葉さんの説得、頑張ってくださいね」


青年「……はい!」


そう言って、二人と別れを告げ、青年は珍しく活き活きとした表情で、青葉のいる重巡洋艦の寮へと向かっていくのであった。



やはり、青年はロリコンなのか?


さて、重巡洋艦の寮へと入る前、入り口付近で、小さな艦娘たちが集まっているのを見かけた。

よく見ると、第六駆逐隊と呼ばれる暁型駆逐艦の四姉妹だった。何やら、話し合いをしている。


青年「あ、暁に響、雷と電、一体どうしたんだ? こんなところで」


電「青年さん、ご機嫌ようなのです」


雷「こんにちはっ!」


暁「あ、いいところに。実は、青年さんに聞きたいことがあるの」


青年「ん?」


暁がそう言うと、響が今朝の新聞を取り出し、青年の記事を指さした。その指先には『ロリコン』の文字が書かれている。


暁「この言葉、いったいどういう意味なの?」


青年「え、え~と……」


青年はここで、ちらっと響の方を見た。明らかに響はこの言葉の意味をわかっている。そんな顔だった。一方で、雷と電もこの言葉の意味をちゃんとわかっていないようだった。


雷「気になってたから、青葉さんに聞こうと思ってたのよ!」


電「その……あまりいい意味ではないのですか?」


青年「あ~……」


青年は返答に困る。一名を除くまだまだ純粋なこの艦娘たちに、そんな知識を教えてよいものなのだろうか。しかし、今青年が答えなかったら、暁達は重巡洋艦達に聞きに行くに違いない。青年はそう思った。


青年「……えぇと……暁達にはまだ早いかな?」


暁「もうっ! 子ども扱いしないでよ! 私は立派なレディーなんだから」


青年「あ、ごめん……」


響「青年は何か隠してる」


青年「ひ、響……」


雷「えー!? 何なに!? 気になるわ!」


電「電も気になるのです」


青年「あ、いや……」


響「ワタシモオシエテホシイ」


響は絶対わざとやってる、青年はそう思った。響の言い方が明らかに棒読みだった。


しかし、青年はこの質問をいかにして回避するかを考える。先ほどの大和や武蔵のようにスカウトを口実に話を逸らす方法が最初に思いついたが、響がそれを許してくれそうにない。なので、青年は出来る限りオブラートに包んだ表現をすることにした。


青年「……えっと、子ども……というか自分より年下の子には、なるべく愛情を持って優しく接してあげることができる人って意味かな?」


心の中で何度も「嘘を教えてごめん」と謝罪しつつ、目線を逸らす。


電「そうなのですか……また1つ、勉強になりました!」


雷「よく知ってるのね」


純粋に青年を物知りかのように、尊敬の眼差しで見てくる2人のことを直視することはできなかった。暁は「ああ、やっぱりね!」と言って、あまり主張力の無い胸をはってみせた。


そして、青年が愛想笑いをしていると、響が青年の服の裾を引っ張った。青年は、響が何か言いたげな顔をしているのを見て、しゃがみ、耳を貸す。響は青年にこっそりと、


響「ハラショー。素晴らしい返答だった」


と答えた。青年は再び、先ほどの返答に後悔することになった。見事に響の策略にはまった青年だった。


このやるせなさを払拭するために、青年は大宴会での催し物の話をすることにした。


青年「そうだ。えぇっと……みんな、大宴会は知ってるよね?」


暁「当然よ! レディーだからね」


青年「レディーだから知ってるというのは……関係あるかはわからんが……。そこで、催し物の時間を設けようと思うんだけど、みんなは興味ある?」


雷「う~ん、楽しそうだけど、私達にできそうなことってあるのかしら?」


青年「そうだな……」


そこで、青年は暁達が何をすれば、盛り上がるかを考えた。青年は暁達には、下手でもいいので、何か一生懸命やってる姿を見せることができれば、みんなは喜ぶだろうと考え、出した結論が、「チアリーディング」だった。



電「ち、チアリーディングですか?」


青年「……うん。チアリーディング」


雷「れ、練習とかできるのかしら? 私達何も知識ないわよ?」


響「大丈夫。青年が見てくれる」


青年「へ?」


響「自分から提案したんだから、きっと何か教えてくれるはず」


青年「……前向きに検討しておくよ……」


暁「そうね……。チアリーディングってレディーがやることなのかしら?」


青年「えっと……まぁ、それは……」


響「大丈夫。チアリーディングは、スタイルがいいと、より輝いて見えるよ」


暁「そうなの!? じゃあ、私にぴったりね!」


青年「……」


まんまと口車に乗せられる暁。先ほどから響は、この状況を楽しんでいるとしか言えない。青年は、そんな考えを思いついた自分にまた後悔する。練習を見てくれと言われても見る時間がとれるかどうかもわからない上に、知識がない。


青年「れ、練習は他の人に見てもらうのがいいんじゃないかな……」


響「青年なら大丈夫」


青年「……」


練習を見る、ということはすなわち、彼女達との関わりがしばらく増えるということになる。もし、練習最中に青葉にでも知られてしまえば、青年はロリコンカッコカリから名実ともにロリコンとなってしまうことは間違いない。


青年「……と、とりあえず、青葉さんと会ってくる」


今の青年にできることは、青葉と話しをつけ、ロリコン疑惑を解消してもらう他にはなかった。チアリーディング関連の話は全て後回しである。


雷「青年さん! 私達頑張るからよろしくね!」


電「よろしくなのです!」


暁「ま、まぁ、見てくれた方が集中もできるしねっ!」


響「……頼んだよ」


青年「……あ、はい……」



青年は、その場から出来るだけ、早く立ち去った。青葉がどこで目を光らせているかわからなかったからだというのは言うまでもないだろう……。



マスゴミだなんて呼ばないで


さて、重巡洋艦の寮内に入り、青年は他の部屋になど目もくれず、真っ先に青葉のいる部屋へと向かった。


青葉のいる部屋の前に立ち、いつもより少しだけ強めにノックする。


中から「はいはい、今出ますよ~」と呑気な声が聞こえたと思うと、扉が開、中から青葉が姿を現した。青葉は青年の姿を見ると、目を輝かせて、青年の手をとった。


青葉「いや~、青年さん、青葉見ちゃったんですよ! 青年さんとゆーさんが歩いているところ! いやはや、本当にネタの提供ありがとうございます! おかげで、今朝の新聞はいつになくみなさんが取っていってくれました」


青年「えっと……そのことでお話があるんですけど……」


青葉「も、もしかして、青年さん自らインタビューを受けに来てくださったんですか?!」


青年「違います……」


青葉「む……ちょっとくらいは冗談につきあってくれてもいいじゃないですか~。まぁ、それは置いておいて……ささ、お入りください」


青葉に言われるまま、青葉型の部屋、つまり、青葉と衣笠の部屋に入る。衣笠はどうやら、演習で今は退出しているようだった。


青葉「さて、お話といいますと、やはり、今朝の新聞のことでしょうか?」


青年「あ、それもあるんですけど……実はもう1つ」


そう言ってから、青年は大宴会の進行役をつとめてほしいと頼んだ。青葉は、ためらいもせず、了承した。さらに、青年は続けて、催し物をするからその時での、進行役も任せることを頼む。青葉はこういうことが好きなのか、いきいきとした表情で、了承してくれた。


さて、話は本題に移り、青年のロリコン疑惑の話し合いになる。


青年「あ、あれはゆーに頼まれたことですので……」


青葉「ですか、その前の日には弥生さんや卯月さんと出かけてましたよね?」


青年「うぐっ……そ、それはそうですけど……だからと言ってロリコンというわけでは……」


青葉「なるほど……はっ! ということは青年さんももしかして、実は秘めたる恋心を誰かにお持ちなのですね?!」


青年「ええっ?! な、なんでそうなるんですか……」


青葉「ほらほら~、ここは正直に言っちゃいましょう!」


青年「い、いませんって……。それに、言ったら言ったで、またどうせ公表するつもりですよね……」


青葉が、青年に近づき、質問しながら迫る。青年はそれから離れながら答えた。青葉はその答えを聞くと、すぐにもとの座っていた位置に座り直し、スカートの部分を整える。


青葉「まったく……。でも、青葉は、前々から青年さんにはインタビューをしたいと思ってたんですよ?」


青年「え?」


青葉「青年さんの特集記事を組もうかと考えていたんですが、まさかのネタが入ったものですから……」


どうやら、青葉はマスコミ的見地からしては、青年には興味を抱いてくれていたようだった。それに、特集記事を組んでくれるとなると、さらに、自分のことを知ってもらえるチャンスにもなる。青年は、何となく、青葉の厚意を感じたのであった。


青年「……そうなんですか」


青葉「はい! ……さすがに今回の件はかなり大事になってしまったのは自分でもわかってます……本当に申し訳ないです」


青年「あ、いやいや……そこまで謝らなくても……」


青葉「……そうですか……。ですが、ちゃんとケジメはつけさせてください。でないと私のジャーナリスト魂が傷ついてしまうので!!」


青年「あ、あはは……わかりました。では、記事を修正してくれるだけでいいので……」


青葉「はい!」


そう言って、青葉は、訂正の記事を作ると言い始めそれの準備を始める。

青年は、それを見ながら青葉にも催し物に出てみるかと尋ねたが、断られてしまった。やはり、進行役として全力を注ぎたいとのことらしい。


青葉「……ところで、青年さん。さっきの話に戻るのですけれど……」


青年「?」


青葉「本当に、好きな人とかいないんですか?」


青年「……どうなんでしょうね……。自分でもよくわからないです」


青年は改めてこれまでの思い出を振り返る。だが、どうしても好きな艦娘を選べと言われても簡単に決めることはできなかった。青年は、たまには本気で考えてみるのも有りなのかもしれないと思い、もう一度深く考える。自分が話していると自然と楽しくなり、一緒にいて幸せだと感じれる艦娘を……。



青年「……いや、違うな……」


青葉に聞こえないほどに小さく呟く。やはり、ヘタレなのはまだ変わっていないみたいだった。完全に好きな艦娘など決めれるわけがないと、青年は自分なりの考えをまとめたのであった。


さすがにこれ以上長居するのは悪いと思い、青年は青葉の部屋から出た。



すると、廊下の向こう側から一名、艦娘がやってくる。なんと、加賀であった。青年は加賀は、赤城と一緒に行動している印象が強かったために、1人で、しかも重巡洋艦の寮で出会うとは思ってもいなかったのだ。


青年「あ……加賀さん、こんにちは」


加賀「こんにちは」


青年「今日は赤城さんとは一緒じゃないんですか?」


加賀「赤城さんは、今日、提督の秘書艦だから……」


青年「あ、そうなんですか……」


青年は、ここで、催し物のことを思い出した。加賀のような艦娘が引き受けてくれるかどうかはある程度目に見えているが、ダメ元で聞いてみることにした。


青年「あ、加賀さん、そう言えば、大宴会のことなんですけど……」


加賀「あら……もうそんな時期なのね」


青年「実はその時に催し物をやってくれる人を募集……してるんですけど……興味はありますか?」


加賀「……はい」


青年「そうですか……残念で……え?」


加賀「……二度は言いません」


青年「……え? 加賀さん……今日、エイプリルフールじゃないです……」


加賀「私が冗談を言うほど器用に見えるかしら……? ……その催し物……何でもしていいの?」


青年「え……まぁ、厳重注意がかからない程度には……」


加賀「そう……。……青年……一緒に出ましょう」


青年「へ?」


加賀「私がやりたい催し物は……あなたがいないと完成しないわ」


青年「あ、そ、そうなんですか……」


加賀「というわけで、今日から練習するわよ……。後で私と赤城さんの部屋に」


青年「あ、はい……」



大宴会


それから青年と加賀は周りには内緒で練習を始めた。その内容は、後々にわかることになる。そして、青年は休日が終了し、仕事も再開した青年は仕事の合間を加賀との練習に費やすことになった。


だが、この時の青年は今までで一番忙しかった。加賀との練習だけではなく、暁達のチアリーディングの練習も結局見ることになってしまったのだ。さらには、蒼龍と飛龍、青葉との大宴会の打ち合わせも行わければならなかった。


加賀「青年……もっと笑顔になりなさい」


青年「はぁ……加賀さんだって……」


加賀「私がこの表情だからこそ、あなたの笑顔が映えるのよ」


加賀は、催し物の練習にも手を一切抜かなかった。ここはやはり、加賀のらしさというものが出ているといえる。


青年は、そんな加賀の練習に何とかついていき、なおかつ、暁達のチアリーディングも完成へと導いていった。





そして、迎えた大宴会当日―――。




青葉「みなさん、お待たせしました!!! 待ちに待った大宴会が今日、いよいよ開かれます! 進行役はこの私、青葉がつとめさせていただきます、どうぞ最後までお付き合いください。それでは、まず提督から一言、いただいちゃいましょう!!」



提督「え~、みんな。いつも平和のために戦ってくれてお疲れ様だな。今日はみんなが待ちに待った大宴会だ! 今日くらいは、戦いのことは忘れて、自分の好きなことを存分に楽しんでほしい。飲むのもよし、食べるのもよし、新たな友達を作るのもよしだ! 注意することは、調子に乗りすぎて、喧嘩とかしないことだな。私から長々と話すつもりはない! 以上! あとは思う存分楽しんでくれ!」



提督が、そう言い終えると、艦娘たちから盛大な拍手が送られた。


続いて、乾杯の音頭である。青葉が壇上に立ち、マイクの音量をチェックし、再び話し始めた。


青葉「提督、ありがとうございました! というわけで、乾杯に参りたいと思うのですが……。今回の乾杯の音頭は、青年さんがつとめるそうですよ!? ねぇ、青年さん?」


青年「……え」


初耳だった。蒼龍と飛龍からも何も聞いておらず、打ち合わせにもそのような話は一切出てこなかった。青年は「遠慮します」とジェスチャーで伝えようとしたが、ダメだった。


蒼龍「ほらほら、早く早く!」


飛龍「みんな待ってるよ~」


蒼龍と飛龍の2人に背中を押され、壇上へと上がった青年は、かつてない緊張感を味わった。青葉にマイクを手渡され、何を言えばいいか分からなくなる。


黒潮「青年ー! こういう時は何かおもろいこと言うんやでー!!」


遠くから黒潮が叫ぶ声が聞こえてきた。青年は、さらに緊張し、体がコチコチに固まってしまった。


青年「え、えっと……」


そして、彼が全身全霊をかけた渾身の乾杯にちなんだ、一発ギャグが―――――。



















青年「お、お◯ぱーい!!」


これだ。



ただ、「乾杯」の「ぱい」と、「お◯ぱい」の「ぱい」に繋がりを見出しただけの、発想が非常にオヤジ臭いギャグだった。


当然、周囲は騒然とする。この場合はなかなかいい意味であった。まさか、あの青年がこのような単語を口にするとは誰もが予想しなかったからである。


青葉「みなさん、お静かに!! 青年さんが何か言いたいことがあるみたいですよ!?」


騒然とした会場を一度静める青葉。この言い方だと明らかにもう一度、何かやれとかなり遠回しではあるが振られているようなものである。


会場は再び沈黙に包まれる。














青年「……あの、乾杯」


全員「かんぱーい!!!!!!!!」


先ほどの恥ずかしさに耐え切れなくなった青年は結局ヘタれてしまった。青年は顔を真っ赤にして出ていき、それから戻ってきたのは、みんなが飲み食いを始めてから約10分ほど経った時のことだった……。


青年は戻ってきて、食事を取ろうと思い、各テーブルのところを一度見てみた。蒼龍、飛龍との企画の話し合いの段階でどのような食事が出されるかは知っていたがやはり、当日になってみるとかなり豪華である。寿司、七面鳥(丸ごと一羽)、ピザ、エトセトラエトセトラ……。


青年はお腹にやさしいものを食べようと、サラダバー辺りころに近づいた。


隼鷹「ひゃっはー!! 青年、盛り上がってるー?!」


青年「あ、ま、まぁ……」


千歳「お酒も、呑んでいいのよ。だったら、私達が相手になってあげても……」


青年「あ、いえ……遠慮しておきます」


早速酒に酔った一部の艦娘たちは、彼女たちなりに青年を元気づけようとしてくれているのか、からかっているのかは分からないが騒ぎに騒いだ。そんな様子を見て、青年は、苦笑いをしながらサラダバーの中から自分の食べたいものを選び、取ってから空いている席を探し始める。


漣「おっ。勇者様のご帰還ですね!!」


青年「うっ……」


曙「はぁ?! 何言ってんのあんた……ただの下ネタを言っただけのクソ清掃員なだけでしょうが!」


青年「ひ、ひどい……」


朧「まぁまぁ、青年さんも頑張ったと思うし……それに、朧は結構あのネタは好きだった」


席を探す度に、青年いじりは続いた。


金剛「Hey!! 青年、こっちに来るデース!!」


少しカタコトまじりの日本語で後ろから声をかけられた、青年が振り返ると金剛がそこには立っていた。青年は、何となく1人で食べたいと思ってはいたので、断ろうと考えた。だが、金剛は、少々強引に青年の手を引っ張り、自分の座っている席の近くへと連れて行った。


榛名「あ、青年さん、どうも!」


青年「あ、榛名さん……。さ、先ほどはお見苦しいところを見せました……」


霧島「でも、いきなり無茶ぶりをされたらしかたがないわね」


比叡「青年君も頑張った頑張った!」


どうやら、金剛型の4姉妹はそれなりに青年のことを気遣って、この席に連れてきたようだ。

青年が席に着くと、榛名が口を青年の耳に近づけてきた。


榛名「姉さまや霧島も、青年さんと前々から、話してみたかったらしいです。ちょっと、強引でしたけど、許してください」


青年「あ、はい……」


霧島「青年、お酒、どうかしら?」


青年「あ、あまり呑めないので……あ、でも、少しくらいなら……」


比叡「お、じゃあ思い切って一杯くらいはいっちゃいましょー!」


そう言って、比叡は青年に酒を注いだ。青年は仕方なく受け取り、器を手に持つ。


金剛「じゃあ、みんな持ちましたカ? じゃあ、乾杯デース!!!」


金剛以外「かんぱーい!」


榛名「青年さん、何かほしい食べ物があれば言ってくださいね」


青年「あ、いえいえ。そこまでしてもらわなくても……」


霧島「たまには遠慮せずに、青年ももう少し積極的になればいいのに」


青年「あ……う~ん、でも積極的になるってどうすればいいんでしょうか」


比叡「それはもちろん、気合を入れて……」


そう言って、比叡は自分の考えを話し始める。既に比叡は何となく頬が赤くなっていたため多少酔っているみたいだった。これもお酒の力なのか、比叡は饒舌に話していく。


比叡「――というわけで」


青年「な、なるほど……」


金剛「そう言えば、青年、この前ゆーと遊びに言ってどうでしたカ?」


青年「え?! なんで急にそんな話になるんですか……」


霧島「あら、みんなが気になっていることよ? 青葉の記事のこともあったし」


あの青葉との交渉の次の日、修正の記事は出されたもののやはり、青年とゆーのお出かけはデートのようなものと考えられているとのことだった。青年が困惑する様子を見て、榛名がまぁまぁと静止をかける。


ゆー「あ、青年さん」


金剛「Oh!!! 噂をすればなんとやらデース!!」


そんな会話をしていると、ゆーがこちらの方まで食べたいものを取りにやってきていた。ゆーは、今がどういう状況かわからず首をかしげている。


ゆー「青年さん、今日のお寿司、とっても美味しいよ。……もう食べた?」


青年「あ、まだ食べてない……」


ゆー「そう……。じゃあ、ゆーのお寿司、ちょっと分けてあげる」


青年「え?!」


ゆーはそう言って、自分の皿に乗っている寿司を箸で手に取り、青年に差し出してきた。


榛名「こ、これって……」


ゆー「青年さん……口、開けて」


青年「あ、あの、ゆー。わざとじゃないよな?」


ゆー「え?」


どうやら、ゆーは素で行っているようだ。だとしたら青年にとってはなかなか都合が悪いやら嬉しいやら……。


ゆー「……青年さん、あーん」


青年「あ、あーん……」


青年はゆーの上目遣いに、耐え切れなくなり、ゆーからその寿司を食べさせてもらった。ゆーの言う通り、確かに美味しかった。おそらく、この前2人で行った回転寿司の店よりも美味しい。


ゆー「どう?」


青年「あ、うん……美味しいよ」


ゆー「よかった。青年さん、さっきの、乾杯が終わった後、すごく元気がなかったから……」


青年「ま、まぁあれくらい大丈夫だよ……心配してくれてありがとう」


ゆー「うん……」


金剛「Oh...2人とも、なかなかアツイデース!!」


霧島「この前の記事、やっぱり嘘じゃないんじゃ……」


比叡「ひえー!!」


青年「ちょっ……ち、違いますって……」


榛名「大丈夫ですよ、青年さん。人それぞれですから♪」


青年「は、榛名さん、フォローになってない気が……」


どうやら、4人とも段々とお酒が入ってきていつもよりテンションが上がってきたようだ。

青年はこれ以上、ここにいると危険なのかもしれないと思い、こっそりとゆーと一緒にこの席から離れようとする。時間を見ると、それなりに経っており、催し物が始まるまでの時間が迫っていた。


青年「あ、そうだ……暁達と一応最終確認をしておかないと」


そう言って、ゆーと一度別れ、青年は暁達を探しまわるのであった。







青年「えっと、すいません。扶桑さん、山城さん、暁達を見ませんでしたか?」


山城「私達が今それに答える「山城さーん! それとってください!!」


扶桑「はぁ……なんで毎回こ「扶桑さん、それとってー!!!」


青年「……」


今の状況を説明すると、青年が暁達の居場所を扶桑と山城の2人に尋ねようとしたところ、2人は周りから色々な注文の集中砲火を受けている真っ最中だった。


2人は、何かを青年に伝えようとするが、周りの声にかき消され、よく聞こえなかった。青年の耳に一番よく聞こえたのは山城の例の「不幸だわ……」のセリフだった。


扶桑「青年さん、ごめんなさい。またあとで「うわっ!! お酒こぼした! 扶桑さん、そこにあるタオルとってください!!」


山城「本当にふ「あー!!! 最後の1個がー!!!!」


青年「……」


見かねた青年は2人の間に入り、周りからの注文を代わりに受け付け始めた。普段の仕事で慣れているのかはどうかはわからないが、青年は思いの外テキパキとことをこなす。


扶桑「あ、あの……青年さん」


青年「えっと……お二人とも、さっきから注文ばっかり聞いているせいで、あまり食事とかお酒とかを楽しんでいなさそうでしたから……その……勝手ですが、代わります」


山城「……でも……」


青年「大丈夫です。暁達との話し合いにはまだ少し余裕がありますから、楽しんできてください……。それに、今日はそういう日じゃないですか」


扶桑「青年さん……ありがとうございます。山城、少し離れたところに行くわよ」


山城「はい」


そう言って、2人は礼をしてから少し離れた席で食事を楽しみ始めた。青年は、注文をさばきながら、目線は暁達がどこにいるかを探し続けていた。幸い、簡単に見つけることができたので、席の場所をしっかり把握してから再び注文をさばきはじめる。




青年「本当にこの席注文多いな……一番不幸なのは、この席なんじゃ……」


しばらく経っても注文の波は収まらなかった。青年は慌てて時計を確認する。もう時間がない。


青年「まずいな……暁達の後には加賀さんとも会わないといけないのに……」


扶桑「青年さん、そろそろ代わりますよ」


青年「え?!」


急に話しかけられたので驚き、声のした方を見ると暁達が揃っていた。どうやら、この間に扶桑と山城が連れてきてくれたらしい。だが、ここまで時間がかかったということは連れてくるまでにも何か不幸なことがあったと思われる。相変わらずの姉妹である。


青年「あ、ありがとうございます!」


暁「まったく、レディーを待たせるなんてひどいんだからね!」


雷「さっ。打ち合わせしましょ!」


青年は、扶桑と山城に礼を言って、一度食堂を出て静かな場所へと集まった。



青年「えっと……と、とりあえず、最後の打ち合わせなんだけど……ちょっとある約束をしてほしいんだ」


暁「約束?」


青年「うん。えっと……パフォーマンス中に何があっても練習通りのパフォーマンスを続けてほしい。急に動きを止めたりはするのはナシの方向で……」


響「わかった」


雷「了解よ!」


電「了解なのです!」


青年はこの打ち合わせの後、大宴会開催前に加賀と待ち合わせしていた場所に行き、そこで最後の打ち合わせを行った。





そして、いよいよ催し物が始まる時間となった。


青葉「え~みなさん、一度、こちらに耳を傾けていただけると幸いです!!」


青葉の一言で、会場は静かになる。


青葉「ありがとうございます。実はですね、なんと!! 今日の大宴会では、催し物を開くことになっているのです!! 出てくださるみなさんは今日まで一生懸命練習に励んでくれましたので、ぜひ、暖かい拍手で迎えてあげてもらいたいところです。それでは、記念すべきトップバッターは……第六駆逐隊のみなさんです! どうぞ!!!!」


青年が壇上の近くでホイッスルを鳴らすと同時に、チアガールの服に着替えた四人が壇上に集合し、最初の構えのポーズをとる。そして、青葉が打ち合わせ通り、曲を流し始めた。


曲が鳴り始めると、暁達は練習した通りにジャンプをしたり、足を上げたりと言ったパフォーマンスを繰り広げる。そのクオリティの高さに会場は大いに盛り上がった。


提督「うおーっ!! L・O・V・E、ラブリー暁!! L・O・V・E、ラブリー響!! L・O・V・E、ラブリー雷!! L・O・V・E、ラブリー電!!」


提督は酔っ払ったテンションでわけのわからない合いの手を入れている。青年が視界に入った限りでは長門もわなわなと震えながら、四人のパフォーマンスを楽しんでいた。


一生懸命にパフォーマンスをしてくれている四人の姿を見て、青年も思わずガッツポーズ。それを見た青葉が「やっぱりロリコンなのでは……」と思うのは当然のことである。


そして、いよいよ。演技の最後の部分に到達する頃、壇上に1人の艦娘が乱入してきた。


それは舞風である。だが、青年との打ち合わせ通り、暁達は舞風の乱入を気にせず、練習した通りの演技を披露した。舞風はそれにピッタリと動きを合わせ、踊ってみせる。


実はこれが青年のサプライズであった。


チアリーディングの練習を見ると言った手前、下手な振り付けは教えられないと思い、こっそり舞風に相談していたのである。


そして、舞風にもサプライズ役として出てくれないかと頼んだところ、「踊れるなら何でもいい」と快く了承してくれたのである。


突然の乱入で、会場は騒然としかけたが、見事なパフォーマンスに、会場はさらに盛り上がる。


そして、いよいよクライマックス――――。最後の決めのポーズを飾り、パフォーマンスは終了した。


曲が終わると同時に、一斉に大きな拍手が送られる。次のパフォーマンスの準備のため、しばらく幕は閉じた。舞風は元いた席に戻って行った。



四人は、幕が下がった後、演技が無事に成功した喜びのせいか、壇上近くに立っていた青年のところに駆け寄り、抱きついてきた。


青年「えっ……ちょっ……」


暁「うまくいったわ!! 青年、ありがとー!!」


電「やったのです!!!」


青年「ちょ、は、離して……く、苦しいし……」


さて、それからも催し物は大いに盛り上がりを見せた。大和が、傘回しを披露したり、武蔵はまさかの落語を披露してみせるというなかなか普段では見ることのできない光景も見ることができた。


また、青年が声をかけた艦娘たち以外にも、蒼龍と飛龍がそれぞれ声をかけていた艦娘たちも催し物に参加していた。那珂は当然のごとく歌を、黒潮と龍驤は見事な漫才を繰り広げた。



そして、いよいよ、最後の大トリである青年と加賀の順番が回ってきた。


青年「あっ……も、もう、そろそろですね……」


加賀「そうね……」


青年「……」


加賀「……」


青年「……緊張、しますね」


青年は、ここでもまた緊張していた。青年は自分でも極度の緊張状態に陥ると失敗をすることは以前からわかっている。だが、どうしてもさっきの乾杯の時の失敗が頭から離れなかった。緊張のために足が震える。だが――――



ギュッ―――。


手にやさしい感触が伝わってきた。その先を見ると加賀が青年の手を握っている。


青年「……あ、あの……」


加賀「大丈夫……。あれだけ練習したのだから、きっと上手くいくわ」


青年「……」


加賀「……もう、いいかしら」


そう言って、加賀は手を離した。さっきの加賀の一言で吹っ切れたのか青年は一度大きく深呼吸をする。


青年「……行きましょう、加賀さん」


加賀「ええ」


そして、青葉が2人の登場を告げるアナウンスを読み終え、2人は壇上へと上がる。


会場は加賀が催し物をするという段階で、驚きを隠せず、騒ぎ始めていた。そして、2人が最初の立ち位置に立った時、パフォーマンスは始まった。


まず、全員の耳に聞こえてきたのは、マジシャンが手品を見せる時に使うあの有名なBGMである。



加賀「……!」


まず、加賀がどこからともなく、白い鳩を出してみせた。どんどん、体のあらゆる場所から出していく。


そして、その加賀の鳩を出すパフォーマンスに目を奪われている隙に青年はすかさず、スティックから花が飛び出す有名なマジックを見せる。これだけで会場は大盛り上がりを見せた。


次に加賀が次のマジックで使う箱を用意している最中に、青年がもう1つのマジックを見せる。


青年はまず、大きく風船を膨らませ、みんなの前に見せる。そして、ポケットから取り出したのは竹串。


青年「……」


青年は「今からこれを刺します」と、会場の全員にジェスチャーで伝える。艦娘の何人かは風船が割れることを恐れ、耳を塞いでいる。


そして、青年が竹串を風船に一刺し……風船は割れなかった。


会場から大きな拍手が送られ、青年は笑顔を見せた。


加賀は次のマジックの準備ができた。青年は一度離れ、加賀が用意した箱の中に入るのを手伝う。


加賀が中に入ると、青年はもう一本用意していたステッキで魔法をかけるようなジェスチャーをする。そして、箱の一部分をずらすと……。


そう、今2人が行っているのは有名な人体切断マジックである。


青年と加賀はその後も見事に人体切断マジックを続けていった。そして、無事にやり遂げ、青年と加賀はどの参加者よりも一番大きな拍手をもらった。ただ1人、少しだけ不満がありそうな人物がいたのだが……。


朝潮「青年さん、すごかったです!」


弥生「青年さん……頑張った」


青年「あ、あはは。みんなありがとう……」


壇上から降りてくると加賀と一緒に、賞賛の声をかけられる青年。あまり慣れない経験なので気恥ずかしさを感じつつ、どこか座る場所がないか探す。すると、腕を何者かに強引に引っ張られた。


青年「いててっ……って、瑞鶴さん……」


瑞鶴「……一緒に呑まない?」


青年「え?」


瑞鶴「言葉通りの意味! 拒否権もなしっ! じゃあ、呑むわよ」


そう言って、無理やり青年を隣に座らせ、強引に酒を注ぐ瑞鶴。だが、青年をはさむ形で、加賀が青年の隣に座った。


瑞鶴「……え?」


加賀「青年、私と一緒に呑みましょう」


青年「は、はい?」


瑞鶴「ちょっと、加賀さん! 私が先に誘ったんですけど?」


加賀「口を慎みなさい五航戦」


瑞鶴「んなっ……だ、大体、加賀さんには赤城さんがいるでしょ?!」


加賀「それならあなたもよ、五航戦。それに……今日だけは、彼は私のパートナーだから」


そう言って、加賀は、青年の腕を取り、青年の体を自分の方へと近づけさせた。普段の加賀からは考えられない行動である。


「酒に酔っているのだろうか……」青年は最初、そう思ったが、あの加賀が自分のパフォーマンス前に、失態に繋がるような行動をするとは思えなかった。


おそらく、加賀はまだ酒に酔っていないのにもかかわらず、このような行動を取っているのだ。それが瑞鶴に対抗してなのかどうかは定かで無いのだが……。


瑞鶴「あっ……ず、ズルイ!!」


青年「ちょっ……瑞鶴さん、痛いですって……」


瑞鶴「だ、だって……練習してた時、加賀さんと青年は、一緒にいたんでしょ……。……だから、ちょ、ちょっとくらい私と呑んでくれたっていいじゃない!」


加賀「五航戦、青年が嫌がってるわ」


瑞鶴「青年、嫌じゃないわよね?!」


青年「あ、いや……」


加賀「……『いや』と言ってるじゃない」


瑞鶴「~~~っ!!!」


瑞鶴は痺れを切らし、加賀にもお酒を注いだ。


瑞鶴「……だったら、呑み比べで決めましょう」


加賀「……望むところよ」


青年「あわわ……」


瑞鶴「もちろん、青年も呑むことにはかわりないからね?」


青年「で、できるだけ頑張ります……」


そう言って、二人は呑み始めた。青年はこの後どうなるかはある程度予想できたので、少しだけ呑む。周りは、加賀と瑞鶴が呑み比べする様子を、眺めているものもいる。



瑞鶴「……で、青年。どーして、加賀さんには声かけてぇ……わらしには声かけなかったのよぉ……」


呑み比べを始めてから少ししたところで、瑞鶴が口を開いた。少し呂律が回っていないところを見る限り、この勝負はおそらく加賀に分がありそうだ。よくよく考えてみると、加賀はパフォーマンスの前には一切呑んでいなかっただろうが、瑞鶴は既にそれなりの量を呑んでいた可能性が高い。勝負はやらなくても最初から見えていた。


青年「え?! あ、それは……一応、ダメ元で聞いてみたら……加賀さんがすんなり了承してくれたというか……」


加賀「……」


瑞鶴「まっさか、加賀しゃんがあーんなことするなんてぇ、思わなかったけど……あなたもだけどぉ……」


加賀「五航戦、呂律が回っていないわよ」


瑞鶴「えぇっ……!? まあーってますよ……」


加賀「……」


青年「瑞鶴さん、そろそろやめたほうが……」


瑞鶴「うるさいわねぇ……まだしょーぶは終わってないんだからぁ……」




これは、幸運?それとも……


瑞鶴「んぅ……ま、まだまだ……」


青年の予想通り、先に酔いつぶれてしまったのは、瑞鶴の方であった。青年は瑞鶴の様子を見て、心配する。


加賀「……」


一方で、加賀はほんのりと頬が赤く染まっているのにもかかわらず、酒を呑む勢いは未だに落ちる気配がない。青年も、いつも呑んでいる量よりは少しだけ多めに呑んでいてちょっとだけ頭がボーッとしている。


青年「……あ、あの、加賀さん、瑞鶴さん、このままでいいのでしょうか……」


加賀「……あなたが心配なら、彼女の部屋で寝かせてきてあげるといいわ」


青年「えっ……」


加賀にはそう言われたものの、姉の翔鶴に、そのようなことを頼んで、許可がおりるかどうかはわからない。青年は確証を持てないまま翔鶴を探し、見つけて近づく。


青年「あ、あの……翔鶴さん?」


翔鶴「あらぁ、青年さん、どーしたんですかぁ?」


どうやら、こちらも完全に出来上がってしまってるみたいだ。マトモなコミュニケーションができるかどうかは、疑わしい。青年はとりあえず、翔鶴に瑞鶴を部屋で寝かせてくることを伝える。


翔鶴「ずいかく……あ~。いいれすよ? あの子、私が寝かせちゃうとふてくされちゃうので~」


青年「そ、そうなんですか……では……」


青年は、楽しみを奪うのはよくないことだと思い、元の場所へと戻った。瑞鶴は何やらまだうわ言を述べながらテーブルに突っ伏している。


青年「……瑞鶴さん、失礼します」


青年はそう言って、瑞鶴を背負い、一度加賀に礼をしてから食堂を出た。そして、静かな鎮守府内を青年は瑞鶴を背負いながら歩いて行く。気づけば、瑞鶴は寝息を立てて、青年の背中で眠ってしまっていた。


青年「……」


青年は、瑞鶴の体重に耐えつつ、瑞鶴を運ぶ。酒が入っているせいで、少しだけ足がおぼつかないところがあったが、瑞鶴を起こさないようにゆっくりと進んでいく。


青年「……たぶん、起きてたら『重いなんて言ったら爆撃するわよ』……とか言うんだろうなぁ」


そんなことを呟きながら、空母寮に入っていき、瑞鶴と翔鶴の部屋を開けた。


青年「よいしょっと……」


そして、青年は瑞鶴をそっと下ろし、布団を押入れの中から出した。そして、圧倒言う間に敷き、もう一度瑞鶴を背負い、そこに寝かせつける。


青年「……」


青年は瑞鶴の寝顔をチラリと見た。普段の瑞鶴とは思えないほど、穏やかな表情で眠っている。そして、青年が掛け布団を瑞鶴にかけようとした時だった。


瑞鶴「ん……あれ、ここ、部屋……」


青年「あ、目が覚めたんですね……」


瑞鶴「せい……ねん……?」


どうやら、酒で酔っているためハッキリと今の状況を理解できていないらしい。そして、瑞鶴はゆっくりと、自分の置かれている状況を確認するために周りをグルッと見る。


瑞鶴「私……酔っ払って……ん……頭痛い……」


青年「呑み過ぎですよ……。ほら、今日はもうゆっくり、休んでてください……」


青年がそう言って、改めて掛け布団をかけようとした。だが、瑞鶴はそれを拒み、青年を押し倒す形でもたれかかってくる。


青年「はいっ!? ちょっ……」


瑞鶴「……やだ」


青年「え?」


瑞鶴「……もうちょっとだけ、一緒にいたい……」


そう言って、こちらを見つめる瑞鶴。青年を押し倒した際の勢いのせいか、服の上が少しだけはだけ、さらには頬は酒によって赤く染まっている。いつもの瑞鶴とは違い、何とも言えない色気を漂わせている。青年は、そんな瑞鶴を直視できず、思わず目線を外してしまう。


青年「……ダメですよ……。瑞鶴さんは眠っておかないと……」


瑞鶴「だって……遊んでくれなかったじゃない……どこか遊びに行こうって自分から言ったくせに……」


青年「あ……」


ここで、青年は瑞鶴との約束をすっぽかし、大宴会の準備に時間を割いていたことを思い出す。瑞鶴は、青年の胸辺りに顔をうずめる。


瑞鶴「……鼓動、速くなってる……体は正直ね……」


青年「そ、それは……」


瑞鶴「……ねぇ……約束、破ったんだから、私が罰……決めていいよね……」


青年「あ、えっ……と……」


瑞鶴「拒否権はなし……」


青年「……」


瑞鶴「青年……私とさ……私と……んっ……」








そう言って、次の単語を言う前に瑞鶴はまた青年の胸に顔をうずめたまま眠ってしまった。どうやら、よほど酒に酔って疲れてしまっていたらしい。青年は、この時ばかりは、苦手な酒に助けられたと思い、もう一度、瑞鶴を布団の上に寝かせた。


そして、掛け布団をかけ、電気を消し、部屋を出る前に一言、「おやすみなさい」とだけ言ってから、食堂へと戻っていくのであった。






青年が去った後、瑞鶴は再び自分の部屋で目を覚ます。そして、大きなため息をついた。


瑞鶴「やっちゃった……恥ずかしくて寝たふりしたけど……青年、私のこと、嫌いになってないわよね……? ……とにかく、今は頭が痛いから……寝よう……胸の奥も……ちょっとだけ痛いけど……」





うっかりのキスはカウントされるか否か



青年が食堂の方に戻ってくると、加賀は先ほどと同じ場所で待っていた。青年は加賀の隣に一応、座っておく。


加賀「おかえりなさい……。少し遅かったわね」


青年「あ……ま、まぁ……」


青年は先ほどの瑞鶴の様子を思い出し、顔が思わず赤くなる。あの時、瑞鶴は何と言おうとしていたのか気になって仕方がなかった。


加賀「……青年。今日はありがとう」


青年「あ、いえ……」


加賀「……青年ももっと呑みなさい」


何の脈絡もなく、そう言われ、青年は言われるがままにして、加賀から酒を入れてもらった。明らかに、いつも以上に呑んでしまっているため、これ以上の酒はマズイ。そう思った青年は何とか加賀が酔いつぶれるまで待つしか方法がなかった。


だが、青年は加賀のことを侮っていた。なかなか、酔いつぶれる様子を見せない。ひょっとしたら、既に酔いつぶれているのかもしれないが、加賀のことだから、そんな様子を見せまいと根性で平静を保っているという可能性も高い。


加賀「ほら、青年。まだあるわよ……」


青年「か、加賀さん……これ以上は、僕、ダメです……」


加賀「情けないわね……」


加賀に酒をすすめられ、困り果てている青年のもとへ、ある艦娘がやって来た。青年は頭がボーッとした状態であったので、その艦娘を見つけ、意識するのに少しだけ時間がかかった。



青年「ん……弥生……?」


弥生「青年さん、大丈夫ですか……?」


青年「あ、うん……一応……これ以上呑むとさすがにヤバイけど……」


そう言うと、弥生は青年にコップに入っている飲み物を渡してきた。


弥生「青年さん、頭がスッキリする飲み物です……これで少しはマシになるかと……」


青年「あ、ありがとう……」


弥生がそう言ってきたから、ありがたく思い、その飲み物を一気に青年は飲み干した。だが、それと同時に強烈な目眩が彼を襲う。


青年「あっ……えっ……。や、弥生、これ……って……」


弥生「弥生……酔ってなんていないですよ……」


口ではそう言っているが、よく見ると頬がほんのりと赤くなっていた。明らかに酔っている。青年は、酔った弥生にまで呑まされてしまったのだ。


青年「んっ……うっ……」


とうとう、青年は耐えられなくなり、その場に突っ伏してしまう。そして、それから視界が真っ暗になり、青年は目を閉じる。

会場はその後、酒豪な艦娘たちによる酒飲み大会で盛り上がった。青年は、酔いつぶれてしまったままであったが……。




青年「……んっ」


夕立「お~っ、青年さん、起きたっぽい?」


青年が、重いまぶたを開けると、夕立がこちらを見ていた。それから、首だけを動かし、辺りを見回すと、自分の部屋ではないどこかに連れて来られたというのだけはわかった。


青年「ここは……」


五月雨「もう、大宴会、終わっちゃったんですが、青年さんが酔いつぶれたままだったので、私達の部屋に運ばせてもらいました」


青年「えっ……そうなの?」


春雨「青年さん、大丈夫ですか?」


青年「あ~……うん。まだちょっと頭がガンガンする感じ……」


村雨「なら、もう少しここで休んでいくといいわ」


青年「あ、うん……そうさせてもらうよ」


時雨「でも、青年。飛龍さんと蒼龍さんから、回復次第、部屋に来るように言ってたよ」


青年「え? まだ何かあるのかな……」


白露「まぁまぁ、今は細かいことは気にせず、ゆっくりしていくといーよ!」


青年「あ、そうだね……」


涼風「そうそう! 春雨に任しときゃぁ、すぐよくなるって! なぁ! 春雨?」


春雨「ええっ!? う、うん……青年さん、頑張りますから、ゆっくりしていってください」


青年「あ、ああ……」


青年はその後、もうちょっとだけの間横にならせてもらった。春雨はその間、青年のことを介抱してくれる。もちろん、五月雨や他の子もてつだってくれたのだが、主だって介抱してくれたのは春雨だった。


春雨「青年さん、どうですか? 楽になりました?」


青年「うん……結構、楽になった」


本当に先ほど涼風が言った通り、春雨に任せていたらあっという間に気分が楽になっていた。これなら、今すぐにでも立ち上がって、蒼龍と飛龍の部屋に向かうことができる。


春雨「よかったです……」


涼風「さっすが春雨! その能力私にも分けてほしいねぇ!」


そう言って、涼風は春雨の背中をバシッ!と叩いた。


春雨「あっ――」


青年「へ?」



青年が楽になったと聞いてすっかり安心しきっていたのだろう。春雨は、涼風に背中を叩かれた勢いで、青年の方へ倒れる。



そして、次の瞬間、青年の唇に柔らかい感触がつたわってきた。


春雨「んーっ!??!?!」


青年「っ?!?!?!?!」


何とうらや……恐ろしい偶然だろうか、青年と春雨の唇がぴったりと重ね合わさってしまっていた。


傍から見れば、接吻、口づけ、ベーゼ、キスのどれかである。というより全部同じである。




夕立「お、おおおっ?!」


時雨「そんな……」


五月雨「嘘……」


村雨「あらあら……」


白露「こ、こんな感じにキスってするんだ……」


涼風「あちゃーっ。強く叩きすぎちゃったかな……」



不運なことにあっている2人に対し、他のみんなは各々の感想と言うより、驚きの声を上げている。

青年と春雨は、慌てすぎて、すぐ離れたら事は済むはずなのに、なかなか離れなかった。


春雨「んっ……ぷはぁっ……っ……」


青年「っ……」


春雨「あ、あ、あ、あのっ! ご、ごごごごめんなさい!!!」


青年「こ、ここっ……こちらこそ、ごめん!!」



春雨と青年は顔を真っ赤にし、互いに距離を取り合う。他のみんなはこの後、どうなるか気になって何も言わないで黙って見守っている。




春雨「あ、あのっ……わ、私、ああいったことは、は、初めてで……せ、青年さんとするのがい、嫌だったというわけじゃなかったんですけ……ど、あわわ……何言ってるの私……」


春雨はすっかり、動揺してしまい、この状況にどう言っていいかわからないと言った顔をしている。真っ赤な顔は暫くの間元に戻る気配がない。


青年「そ、そのっ……あ、お、俺が避けなかったから……その、ごめん……」


春雨「い、いえいえ、青年さんは悪くなくて……」


青年「……」


春雨「……」


涼風「じゃあ、お二人さん、ここはなかったということで―――


時雨「涼風、君が一番の原因なんだよ?」


村雨「ちょーっとだけ、お仕置きが必要みたいね……」


涼風「あはは……その……ごめんなさい!!」




その夜、涼風の泣き叫ぶ声が聞こえた艦娘には聞こえた……らしい。



反省会?いや、二次会ですよ


それから青年は、一度落ち着き、白露型の部屋を出て蒼龍と飛龍の部屋へと歩いていた。みんな、大宴会で疲れて寝てしまったのだろうか、どの部屋の前を通っても、会話をしているような声は聞こえなかった。


青年は、ふと、立ち止まり、唇に手を当てる。するとたちまちに先ほどの事件を思い出し、顔を真っ赤にしてしまう。青年は、その行為を蒼龍と飛龍の部屋にたどり着くまでに実に五回ほど繰り返した。


やっとのことで、蒼龍と飛龍の部屋の前へとたどり着いた青年。ノックを2回ほどして、返事が返ってきたので、その扉を開けた。


青葉「おっ! 本日の主役が帰ってきました!」


飛龍「青年、お疲れ様~」


蒼龍「ささ、座って座って♪」


青年「えっと……これは、一体何ですか?」


飛龍「それはもちろん」


蒼龍「反省会に決まってるじゃない」


青年「反省会?」


青葉「おほん、簡単に言わせていただきますと、大宴会の後、企画係にあたってたみなさんで反省会と言う名の二次会をいつもやっているんですよ」


青年「へ、へ~」


青年はそう言って、ふと机の上を見てみる。そこには堂々と置かれたまだ未開封の酒瓶が……。青年は先ほど、加賀や弥生に呑まされたことを思い出し、表情が青ざめる。


蒼龍「大丈夫よ。無理に呑ませたりはしないから」


青年「ほ、本当に頼みますよ……」


そして、二次会(反省会)がスタートした。一応、反省会という名もあるので、最初は今回の大宴会での反省点をみんなで上げていくという話になった。


蒼龍「別にないと思うけど……飛龍は?」


飛龍「私もなし、青葉は?」


青葉「いえ、今回は今までで一番よかったと思いますよ、青年さんはどうですか?」


青年「……その、今度からお酒を嫌がる人に強要するのはナシという方向にしませんか?」


青葉「あちゃー……よっぽど嫌だったんですね……」


それから、他に反省点を聞いていっても上がらなかったので、名目だけの反省は終わった。



蒼龍「というわけで、二次会本格的にスタート」


飛龍「かんぱーい!」


青葉「かんぱーい!」


青年「かんぱーい」


ちなみに、青年はお茶を入れて飲んでいる。


飛龍「いやぁ~っ。それにしても本当に今日の青年は輝いてたね」


青葉「本当にそうですよね! 一体どういう話術を使って加賀さんを説得したのか、青葉、気になります!」


青年「い、いや、普通に頼んだら……了承してくれました」


蒼龍「あの加賀さんがねぇ……。よっぽどの理由があったのかしら?」


青年「う~ん……わかりませんね……」


青葉「そうそう。青年さんと言えば……今日の一発ギャグ、よかったですよ」


青年「うっ……あれは思い出したくないです……」


蒼龍「青年君があんなことを言うなんてね……。もしかして~……大きい方が好きなのかしら?」


飛龍「え? でも、ロリコン疑惑出てたよね?」


完全に、三人とも、酒に酔った状態での深夜テンションだ。普段なら会話に出さないようなことをどんどん聞いてくる。


それも、青年が明らかに返答に困るものばかりを……。


蒼龍「で、青年君は大きい方が好きなの?」


青年「え……あ~……。って何でそんなこと言わないといけないんですか!」


飛龍「いーじゃん、いーじゃん♪ せっかく、企画係をともにしたんだから、ちょっとくらい教えてくれても~」


青葉「そうですよ。青年さん、今日は思いっきりいっちゃいましょう!」


青年「嫌です……というより、青葉さんメモる準備、止めてください……」


青葉「え~」


蒼龍「じゃあ、好きな子が誰か教えて! ヒントだけでいいから!」


青年「いません……」


飛龍「ええ?! こんなにいっぱい女の子がいる環境にいて、好きな子がいないのはおかしい!」


青葉「そうですよね! 青年さんったら、なかなか教えてくれないんですよ!」


青年「え……これ、僕がノリ悪いパターンですか……?」


三人「うん(はい)」



見事に三人とも息がぴったりである。青年は、困った。これならばあえて呑んでもう一度、酔いつぶれた方がいいのではとさえ思えてくる。


だが、そうは思ったものの、こういった日も悪くないと思えてきた青年は、ちょっとだけ気になる艦娘を考えてみた。




青年「えっと……じゃあ、好みと言いますか、こういう子には惹かれる……みたいな感じでいいですか?」


蒼龍「おっ!」


飛龍「気になる!」


青葉「ぜひ、教えてください!」


青年「その……何と言いますか。献身的な人には……ちょっと惹かれるところがあります……」


蒼龍「ほうほう……」


飛龍「なるほどね……」


青葉「初めて、青年さんの重要な情報が手にはいりました!」


青年「……以上でいいですか?」


蒼龍「えっ……いやいや、他にまだ何かあるでしょ? 好きな髪型とか」


青年「髪型……ですか。な、長めの方が好みです」


飛龍「ということは私ははずれたかー!」


青年「あ、いや、あくまで……惹かれやすいのはって話ですし……」


青葉「青年さん、ズバリ、その気になっている艦娘の名前は?」


青年「えっと……ず――


蒼龍「ず?」


飛龍「『ず』ってことは……」


青年「あ、違います……言い間違えました……。って何で名前聞く必要があるんですか」


青葉「おしいっ……あともう少しだったのに……」


青年「油断も隙もないですね……」


そう言うと、青年はなぜ先ほど、『ず』という言葉が出てきたのかわからなかった。ただ、頭が少しだけボーッとしていたのだけは覚えている。


『ず』から始まる艦娘は2人しかいない。1人は軽空母の瑞鳳。そして、もう1人は――――。




青年「……」


青年はその艦娘のことを思い出した。少し話し方がキツイ時はあるものの、青年が困った時には助けてくれ、風邪の時は看病もしてくれた。そして、時折見せるしおらしい態度や、何よりあの明るい笑顔……。


青年は、無意識的に、いつのまにかその艦娘に自分が惹かれていることを認識した。だが、まだその気持ちが本当かはどうかはわからなかった。


その艦娘の他にもまだ思い出せば惹かれる艦娘もきっといるのは確かである。何よりも、その艦娘以外に今の段階で強く残ってるのは春雨である。ひどい事故ではあったものの、青年にとっては何よりも強く印象に残ってしまう艦娘になった。




蒼龍「まぁ、青年君の好みのタイプは聞けたし……次は何にする?」


飛龍「そう言えば、私気になってたんだけど、青年って怒ったことあるの?」


青年「怒ったこと……ですか。言われてみると……」


青葉「あれ、私がロリコン疑惑の記事を書いた時は、怒ってなかったんですか?」


青年「あれは何というか……嫌だなぁ……みたいな気持ちでした」


蒼龍「そう言われると、結構見てみたいわね、青年君が本気で怒ってるところ。怒られる方は嫌だけど」


飛龍「うんうん。私も、普段大人しい人が怒った時ってすっごく怖いもんね」


青葉「どうやったら青年さんは怒るのでしょうか……青年さん、何かこんなことされたらムカつくってこと、あります?」


青年「えっと……そうですね……うぅん……。わかりません」


蒼龍「ま、いつかは見れるかもね……」


青年「あまり怒りたくないんですが...」


青葉「まあ、その話はいったんおいておきましょう。改めて青年さん、今日はご苦労様でした!」


青年「え、急にどうしたんですか......何か怪しいですよ」


蒼龍「いやいや、私達は本気でそう思ってるのよ?」


青年「そ、そうですか……」


飛龍「というわけで、じゃーん! これ、青年にプレゼント!」


青年「へ?」


そう言って、青年はプレゼントの箱を渡された。それなりに大きな箱で持った時に確かな重さを感じた。青年は、その場で開けていいものかどうか悩み、ふと三人の顔を見る。三人は、青年のその様子を楽しげに見ていた。


青年「じゃ、じゃあ……開けます」


青年が、プレゼントの箱を開けると、中に入っていたのは小型の手で持てる掃除機であった。しかも、それなりにいいメーカーが作っている吸引力が変わらないとかどうとかの……。


青年「え、こんないいもの貰っていいんですか……」


蒼龍「いいのいいの。私達から、ほんの感謝の気持ち」


青年「……ありがとうございます……」


青年は、一度そのプレゼントの箱を閉じた。そして、もう一度三人の顔を見て、礼をする。


青葉「というわけで……まだまだ夜は明けませんよ! どんどんいっちゃいましょー!」


飛龍「おー!」


青年「えっ……まだやるんですか……」


それからも青年は三人の二次会に付き合わされてしまった。青年いじりはまだ続き、結局、今日の加賀と瑞鶴に挟まれていたことや、ゆーと遊びに行って何をやったのかとかを徹底的に聞かれ、青年は疲れ果ててしまったという……。





そして、次のお話へ


次の日、青年が目を覚ますと頭痛が彼を襲った。時間を見ると、いつも通り、掃除を始める時間である。昨日の疲れでてっきり寝坊するかと考えていたが、体はどうやらこの時間に起きることを覚えてしまっているらしい。


青年は少し重い体を起こし、いつも通り掃除をしに港まで出かけていった。


昨日の酔いがまだ残っているのか、いつもより気分が乗らない掃除だった。


青年「……う~ん、さすがに呑み過ぎた……」


青年が、少しグロッキーな状態になっていると、港の近くで人影を見た。かなり、港の先に立っている。バランスを崩してしまえば、海に落ちてしまいそうなくらいだった。


青年「あれ……艦娘か……? 見たことない後ろ姿だけど……危ないな……」


そう言って、青年はその後ろ姿へと近づいていく。


青年が近づき、「危ないよ」と声をかけると、それはこちらを振り向いてきた。


北方「……」


青年「……えっと、君は新しい艦娘?」


北方「ウン……カンムス」


青年「……名前は何て言うのかな?」


北方「……」


青年「あ、ごめん。こっちから名乗らないと……青年って言うんだ。……えっと」


北方「セイネンサン……アソボ?」


青年「え? あ……いい……けど」


北方「フカイフカイ……ウミノソコデ!」


青年「――――えっ」


もう既に遅かった。青年は謎の少女に体に抱きつかれ、そのまま海へと落ちていく。青年は必死に抵抗するが、青年よりも小さいはずのその少女に力でどういうわけか勝てなかった。海中に入った青年は、たちまち意識が遠のいていく。



青年「っ……」


そして、青年の目の前は真っ暗になった。



青年が、姿を消した港の先には青年の掃除道具が残されたままだった。それに真っ先に気づいたのは青年が姿を消して2時間ほど経ち、やっとのことで目を覚まして起きた提督だった。


提督「青年君……? ……まさか……まずいっ! 緊急事態だ……!!」


その日、青年が鎮守府のみんなの前で姿を現すことはなかった。青年が姿を消したことを伝えると、昨日の大宴会が嘘のように、みんなの気分が沈んでいくのを提督は感じた。


瑞鶴「青年……どこに行っちゃったのよ……」








つ・づ・く


↓続きです!!






作者のどうでもいい呟き

というわけで、次スレに続く!!!!!




<一応、ここまでの青年がたてたと思われるフラグ>


瑞鶴、弥生、ゆー、春雨、加賀?


5人中3人が駆逐艦、および潜水艦……。

もはやロリコンカッコガチに昇格してもおかしくない状態です。











<<リクまとめ>>


みいにゃんさんより←(2スレ目、一発目の大きなストーリー)

青年拉致事件?!



ワッフルさんより

扶桑姉妹をもっと……



駆逐艦最高さん

第六駆逐隊VS◯◯による何かの対決的なノリ



わー50さんより

潮と浜風に、お◯ぱい発言があったため、避けられ、凹む青年





十米名無しさん

提督と男同士だからこそできる絡み

      ↓

駆逐艦にもみくちゃにされる青年



※セリフを発している人物の名前、随時、付け加えていきますので、もうしばらくお待ちください。


後書き

字数が段々埋まってきたので下手をすると、2スレ目とかにいっちゃうかも……
本当はここまで、長く続くとは思いませんでした。

そして、遅れましたが10000PV、ありがとうございます!! 皆様のおかげです。



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このSSへのコメント

108件コメントされています

1: SS好きの名無しさん 2015-03-14 00:02:23 ID: PFs0I4VC

瑞鶴おねがい!!

2: ライン 2015-03-14 21:37:11 ID: JZefUmoQ

名無しさん
頑張って出してみたいと思います!

3: SS好きの名無しさん 2015-03-15 01:03:40 ID: vvi0QJGQ

やゔぁい、めっちゃ自分好みの作品だ(´・д・)今後に期待です

4: ライン 2015-03-15 16:56:16 ID: UaJDom9z

名無しさん
ありがとうございます!
できれば、リクも出してくれても……ね?

5: E8a7da3 2015-03-16 00:15:57 ID: wgwc8Q9L

期待。
大変かも知れないですが、頑張って下さい。

リクエストとしては…イケメンな木曾や大淀との会話、弥生と一緒に掃除するとか…でしょうか。

6: SS好きの名無しさん 2015-03-16 03:35:45 ID: YXpG-RhD

真面目朝潮ちゃんと一緒に掃除をして間宮さんのところで一服する。そして、間宮さんのところでも朝潮+ほかの艦娘と絡む!みたいな感じなのがみたいです(੭ु ›ω‹ )੭ु⁾⁾

7: ライン 2015-03-16 08:34:39 ID: y_s37wiY

E8a7da3さん
頑張ります~。
イケメンな木曾、大淀、弥生ですね! 頑張ってみます!

名無しさん
朝潮+間宮+αですね。すぐには反映させることができないかもしれませんが、考えておきます!

8: たぬポン 2015-03-16 16:47:15 ID: h6dv3ql-

最・高・です!!
もし良かったら赤城さん&加賀さんをお願いします!!

9: ライン 2015-03-16 17:04:25 ID: y_s37wiY

たぬポンさん
ありがとうございます!
赤城さんと加賀さんですね!了解です!

10: SS好きの名無しさん 2015-03-17 19:34:36 ID: JEXqFMjX

こういう提督とか艦娘以外の視点ってのはなかなか面白いね。

…駆逐艦の間で掃除が流行るという謎現象が起こりそう(小並感)

11: ライン 2015-03-17 19:45:26 ID: SqZoULjq

名無しさん

ありがとうございます!

あ、そのネタいいですね……使わせてもらいましょうかね←冗談です……

12: SS好きの名無しさん 2015-03-18 11:18:45 ID: oQex5Xjx

先日大淀、弥生、木曾のリクエストをした者です。
3人共イメージ通りと云う感じで、特に木曾と弥生がカワイイ&カッコイイ…。
この木曾姐さんには抱かれても良い(錯乱)
描写も丁寧で分かりやすく、とても読み易いのが特に素晴らしいです。

13: ライン 2015-03-18 18:04:48 ID: 9DVWiMgB

名無しさん
いえいえ。こちらこそ、リクエストありがとうございました!
楽しく書かせていただけましたし……。

これからもよろしくお願いします!

14: ワッフル 2015-03-18 21:55:29 ID: 1N_dZ0Ln

とっても面白いです!


リクエストOKならビス子かゆーちゃんお願いします!

15: SS好きの名無しさん 2015-03-18 22:13:04 ID: oBIMjCAJ

すごくおもしろいです、実際こういう感じで働いてみたいとも思ってしまった自分が・・・

リクですが、秋月と榛名良いでしょうか(^_^;)

16: ライン 2015-03-18 22:55:08 ID: 9DVWiMgB

ワッフルさん
リクありがとうございます~!
ビス子かゆーちゃんですね……海外艦を扱うのは初めてです……。
頑張ります!

名無しさん
そう思っていただけると、ありがたいです……。
リクありがとうございます!秋月と榛名ですね、了解です!

17: みいにゃん 2015-03-18 23:13:59 ID: XYMjxD4X

主様>

15のものです、色々大変かもしれませんが、体調等気をつけてくださいね、リク受付ありがとうございます♪

18: ライン 2015-03-19 11:32:33 ID: zTNaxh4J

みいにゃんさん
いえいえ、どういたしまして~。
これからもよろしくお願いします!

19: たぬポン 2015-03-19 12:05:05 ID: YUhsLJSY

リクエストをひろっていただきありがとうございます!!
今後の展開が楽しみですね!!

20: ライン 2015-03-19 12:34:18 ID: zTNaxh4J

たぬポンさん
いえいえ、こちらこそリクエストありがとうございます!
今後もよろしくお願いします!

21: たぬポン 2015-03-20 12:04:53 ID: gfI_wHdJ

出来れば、瑞鶴の部屋にいったら汚くて…的な展開を期待
あと、翔鶴をリクエストしていただけたらうれしいです!!

22: ライン 2015-03-20 21:21:57 ID: ybpEbki7

たぬポンさん
了解です!瑞鶴については、今後スポットを当てた話をやるつもりでしたので、そちらの方向で使わせていただきます! もちろん、翔鶴も出しますよ

23: E8a7da3 2015-03-21 18:39:50 ID: 2Rd3EWbl

はい!(金剛型は)大丈夫です!
長門は陸奥が居ないと張り切り過ぎて逆に散らかしそうなイメージが…

で、本人は真面目に(全力でやって逆に空回って)掃除してるから、周りは何も言えないとか…アカンそれ長門やないながもんや

24: ライン 2015-03-21 20:19:52 ID: nteQDzNa

E8a7da3さん

なるほど……何だかわかる気がしますw
というわけで、それを使わせてもらいたいですね…w

25: SS好きの名無しさん 2015-03-22 22:15:20 ID: jBnxEKb6

リクエスト拾っていただきありがとうございます!!

ものすごく続きが気になる……

26: たぬポン 2015-03-22 22:20:39 ID: jBnxEKb6

ゴメンなさい、上のコメント私のコメントです

ログインし忘れた…

27: ライン 2015-03-22 23:03:40 ID: y2Cxajng

たぬポンさん
いえいえ、リクエストありがとうございました!
瑞鶴とは……まぁ、特別な仲にはなりませんよ……たぶんw

28: ワッフル 2015-03-23 20:51:53 ID: PVSsEMJd

ながもんは何を片付けたんでしょうねえ・・・・

続きを早く!!

29: ライン 2015-03-23 23:21:51 ID: m3Q4SBpb

ワッフルさん
コメントありがとうございます!
さらに、オススメまでしてくれて……

これからも頑張りますよ!

30: SS好きの名無しさん 2015-03-24 21:13:08 ID: lFGfLZlC

10米の奴です

個人的には(一部を除く)陽炎型の誰かに看病されたいですねえ

リクできるなら島風と秋月がてんやわんやしながらも奮闘する姿がみたいです

31: ライン 2015-03-24 21:56:57 ID: qEze8Ads

名無しさん
陽炎型ですかぁ。天津風は個人的に好きですよ!!

リクありがとうございます!
頑張って、反映できるようにしますね…(ちょっと時間がかかるかも)

32: SS好きの名無しさん 2015-03-25 07:20:05 ID: frwK9GGS

みいにゃんです・・・

リクは出来れば弥生、汗かいた青年の服を剥いて、汗拭いて終わる頃に青年が目覚めるとかどうかな・・・?

33: ライン 2015-03-25 15:54:55 ID: F3---lAL

みいにゃんさん
弥生ですね!
頑張りますよ~w

34: みいにゃん 2015-03-25 22:19:47 ID: 2_nJHuw1

主様>

コメ拾っていただいてありがとうございます、こういう職場があったら本当にもっと頑張れそうですよね~

35: E8a7da3 2015-03-26 01:06:57 ID: o88bMA9K

ながもん…あっ(察し)



リクエストで、出来れば陽炎型の子達の話を…

因みに個人的イメージでは、

皆の姉【陽炎】【不知火】
オカン【黒潮】【浦風】
優等生タイプ【浜風】【野分】【磯風】
手の掛かる妹【時津風】【雪風】【舞風】
苦労人【天津風】【初風】【谷風】【秋雲】みたいな感じのを…

注文が多くて申し訳ないです

36: ライン 2015-03-26 15:17:57 ID: fQ7ocTcy

E8a7da3さん
リクエストありがとうございます~。
陽炎型の子たちの話ですね!頑張ってみます!

37: あっぽる 2015-03-26 20:03:58 ID: zApBeYr3

これ別に台本書きじゃなくてもいいと思うんだよなあ…あ、更新楽しみに待たせていただいてます

38: ライン 2015-03-26 20:07:44 ID: fQ7ocTcy

あっぽるさん
あ、そうですね……w
でも、何となく僕の文章力じゃ伝えられないかも……みたいな不安が襲って……w(ちょっと次の回だけ、台本書きやめてみようかな)

39: あっぽる 2015-03-26 20:32:32 ID: XMjjLY6m

いやほら俺ですら台本書きじゃないですから(単に趣向の差かも)
とはいえ台本書きが好きな人もいるわけなんですよねえ(・ω・)

40: ライン 2015-03-26 20:35:30 ID: fQ7ocTcy

あっぽるさん
難しいですねぇ……。
でも、たぶん次の回は登場艦娘多くなるので、やっぱり、次の回は台本書きのままでいっときます。(その次で1回試しで台本書き取っ払ってみます)

41: みいにゃん 2015-03-26 21:36:21 ID: 5UlXb-e1

主様>

弥生ありがとうございました、いや~・・・この弥生に看病してほしいですわ・・・・

今度は陽炎型ですね、陽炎型にも好きな子いるので頑張ってくださいね♪

私の誕生月艦娘はうーちゃんだったりします、しかも1日です・・・はい・・

42: SS好きの名無しさん 2015-03-26 21:38:31 ID: y5Wm5Mej

この手の論争のNGワード「そんなことで」を言いかけて陽炎辺りに「わー!わー!」って遮られる展開は見てみたいですね

43: ライン 2015-03-26 21:44:28 ID: fQ7ocTcy

みいにゃんさん
いえいえ、こちらこそリクありがとうございます~。
陽炎型の子はたくさんいるので会話で盛り上がらせたいと思ってます。

これからもよろしくです~

名無しさん
……それはアリですねwぜひ、使わせてもらいますw

44: E8a7da3 2015-03-26 23:02:30 ID: ddQf-Axd

黒潮浦風かわえぇのぅ
リク採用ありがとうございました

そうね、お好み焼きには拘りがあるのよね…
広島風と大阪風で口論になって(自分は広島風推し)殴りあいにまで発展した経験があるから他人事には思えない…

そして縮こまっている陽炎と初風を抱き締めてナデナデしたい、あわよくば持ち帰りたい

45: SS好きの名無しさん 2015-03-27 00:12:16 ID: L_xwZ39w

「おでんとお雑煮とお味噌汁の具も論争を呼ぶのよねぇ……」と争いの果てにぐちゃぐちゃになった部屋で呟く秋雲を妄想したw

46: ライン 2015-03-27 09:33:15 ID: MxoGNBmn

E8a7da3さん
いえいえ、こちらこそリクエストありがとうございます~。
そ、そんな過去が……大変でしたね……

名無しさん
食べ物の味についての争いは怖いですよね……

47: SS好きの名無しさん 2015-03-28 01:20:08 ID: z5Pxph9l

またまた十米の奴です

お好み焼きは大阪風でも広島風でも美味しくいただく私に死角はなかった。味噌汁は麦味噌が一番、異論は認める。

休日は睦月型の娘を膝に乗せてナデナデしたいですハイ

リクはうーちゃんと弥生と一緒に遊んでいるところを瑞鶴に見られて…、みたいなのお願いします
(`・ω・′)

48: ワッフル 2015-03-28 07:30:45 ID: 6PQO2F8I

お好み焼きなんてソースで味がきm(此処から先は赤く染まっている)味噌汁は大根入ってたら大体美味しいと思います

えーと、休日のリクエストでゆーちゃんお願いします
日本文化に触れるゆーちゃん...

49: ライン 2015-03-28 10:28:35 ID: arNEEONm

十米名無しさん
その休日、僕もぜひやってみたいですね……。
リク受け付けました~。頑張って反映させたいと思います!

ワッフルさん
お好み焼きは怖いですぜ……w
味噌汁は、個人的にはあさりの味噌汁大好きですw

リク受け付けました~。日本文化に触れるゆーちゃん、頑張ります。

50: SS好きの名無しさん 2015-03-29 01:50:44 ID: V4ikAX-W

陽炎の「わー!わー!」をリクした者です。
卯月&弥生→ゆーちゃんときてロリコン疑惑をかけられそうな青年君の次の相手は蒼龍&飛龍の二航戦コンビをリクエストしたいと思います

51: SS好きの名無しさん 2015-03-29 10:06:33 ID: jG03zVsJ

是非とも大和と武蔵をお願いします!!

内向的な青年くんと献身的な大和に姉御肌な武蔵がどんな親交を深めるのか凄く見てみたいです

これからも期待してます
気合い!入れて!頑張ってください!!

52: ライン 2015-03-29 11:14:41 ID: 7DmD8lXN

50コメの名無しさん
蒼龍&飛龍ですね!了解です!
今回の休日編はかなり長くなりそうです…w

51コメの名無しさん
大和と武蔵、了解です!
これからも、気合!入れて!頑張ります!

53: SS好きの名無しさん 2015-03-29 12:41:08 ID: mAlYoKep

暁型が見てみたいかも〜

54: ライン 2015-03-29 15:22:56 ID: 7DmD8lXN

名無しさん
暁型ですね!了解です!(今よくよく考えてみたらまったく出番なかったな……暁型)

55: SS好きの名無しさん 2015-03-30 22:35:48 ID: RtXHL8sC

青葉との絡みも見てみたいです

56: ライン 2015-03-30 22:47:12 ID: AcF2vKcn

名無しさん
了解です!青葉ですね……。(後で、リク、いったん整理しないと…)

57: SS好きの名無しさん 2015-03-30 23:34:26 ID: VcVnaMhE

主様>

そろそろ深海側に青年を拉致られて見ます?

実は深海側でも清掃週間でした的なのりで

byみいにゃん

58: ライン 2015-03-31 10:12:22 ID: s1sG6sBV

みいにゃんさん
うぅ~ん……それもそれでいいかもしれませんw
考えてみますw

59: SS好きの名無しさん 2015-03-31 15:02:05 ID: tPs_r5TX

お酒に酔った加賀と瑞鶴が青年を取り合うとゆうのはどうでしょうか

60: ライン 2015-03-31 17:44:24 ID: s1sG6sBV

名無しさん
いいですね。大宴会にはピッタリのネタですw

61: SS好きの名無しさん 2015-03-31 20:56:56 ID: 1BDIhS6b

これはあれか。余興を加賀に頼んで「一緒にやってくれるなら」と約束させられて、余興をやったらで瑞鶴に睨まれてお酒呑んでバトル開始の流れなのか?とネタを想像した

前のリク「わー!」とコメ50を足して「わー50」とでも名乗ろうかと思ってる名無しでした

62: ライン 2015-03-31 21:21:19 ID: s1sG6sBV

名無しさん
その呼び方いいかもしれませんねw

あ、そのネタめっちゃいいですわw
使わせてもらおうかな……w

63: SS好きの名無しさん 2015-04-01 07:46:02 ID: NS49AQt6

主様>

みにゃんです、後回し・・・思い付いた!

皆と仲良くなってから拉致られて、憤慨した皆が深海の基地?に乗り込んだら掃除指導してる青年に唖然とするかんじかな?

64: ライン 2015-04-01 21:04:17 ID: tDEfqt54

みいにゃんさん
う~ん……多分そうはならないかもw
ですが、みいにゃんさんのおかげでまた1つ大きなシナリオが思い浮かびましたので、それのための話に使わせてもらうかもしれませんw

65: ポテトチップス 2015-04-01 22:51:10 ID: HyidY46_

セリフ言っている人の名前、あった方が分かりやすかった。 検討を頼みます

66: ライン 2015-04-01 22:54:06 ID: tDEfqt54

ポテトチップスさん
了解です。検討どころか、入れます(特に飛龍と蒼龍との絡みの部分で入れた方がいいと感じ始めた)

67: SS好きの名無しさん 2015-04-01 22:57:27 ID: ToohbHWe

わー50です。
ヘタレ→ロリコンカッコカリ→変質者とまともな評価の得られない青年君。彼の行く末はだいぶカオスなようですねw

第七駆逐隊なら漣は率先してイジってきて、潮にドン引きされて、曙にクソ清掃員扱いされて、朧にフォローされる感じでしょうか。

ネタに関しては好きに使っていただいて構いませんよ。面白ければいいんですw

あと、遅ればせながら二航戦コンビ、ありがとうございました

68: ライン 2015-04-01 23:28:05 ID: tDEfqt54

わー50さん
果たして青年はどのようになっていくのでしょうか……一人前になることはできるのかな?w

そのネタもいいですね……できれば使わせてもらいたいw

いえいえ、こちらこそネタ提供ありがとうございます~。

69: SS好きの名無しさん 2015-04-02 00:35:23 ID: NZB-Rdmp

大和さんと武蔵さんをリクエストした51です!

書いてくださって本当にありがとうございます!!

あと、ふいに思ったのですが金剛型四姉妹と青年くんってどんな感じになりますかね?今のところ青年くんは榛名さん以外との交友関係が無さそうなのでww

金剛型!是非!お願いします!!
これからも!投稿!頑張ってください!!

70: SS好きの名無しさん 2015-04-02 11:24:56 ID: cOOL5od-

このSSの評価が凄く良いですね。 青年さんには健全なままでいてほしいような…^^;
暁型をリクエストしたものです。展開としては、宴会には暁達も出るんですかね?

71: ワッフル 2015-04-02 19:22:11 ID: citpA_-V

相変わらず面白いです!

ふと思ったのですが、扶桑姉妹を出していただけないでしょうか?
難しかったらごめんなさい。

72: ライン 2015-04-02 21:00:55 ID: Xey3Fvx_

69の名無しさん
いえいえ、どういたしまして!こちらこそ、リクありがとうございます~。書いてて楽しかったですよw

金剛型ですね!了解です!

これからも!投稿!頑張ります!


70の名無しさん
ありがとうございます!
青年……健全であってほしい(裁量しだい)
はい!暁達も出す予定です!

ワッフルさん
ありがとうございます~。
扶桑姉妹、了解!!

73: SS好きの名無しさん 2015-04-04 06:13:01 ID: v9p05TLO

いよいよ大宴会スタートですね!みいにゃんです、

青年が色々もみくちゃになりそうと聞いて、こっそり交代しようと・・・この先赤黒い染みで見えなくなっている

青年がどれだけはっちゃけるか楽しみですね♪

74: ライン 2015-04-04 23:07:13 ID: HfBpBgmU

みいにゃんさん
ぜひ、かわってあげてくださいw
もみくちゃにされますからw

75: SS好きの名無しさん 2015-04-05 00:07:23 ID: 0xv5aFdJ

どうもどうも、十米の奴です

今さらですがリクに答えてくださりありがとうございます。宴会…周りに誘う相手がいないから羨ましいよ青年君(′;ω;`)

リクエストが多くて大変だと思いますが待ってます!あ、でも無理だけはしないでくださいよ´д` ;

……2スレ目いってもええんやで(ニッコリ

76: ワッフル 2015-04-05 00:29:48 ID: TTONuRcB

リクエスト汲み取ってくれてありがとうございます!

しかしラインさんの友人は何やってんだw
あぁあと、75コメの方が言ってるように2スレ目いっちゃっていいんですよ(暗黒微笑
あ、あとマー.....いやなんでもありません。夜中のテンションです気にしないでください
作品の執筆頑張ってください!
長コメ失礼しました。

77: SS好きの名無しさん 2015-04-05 00:40:50 ID: h22MV6x2

わー50です。
どうにも緊張したり焦ったりすると明後日の方向に着弾する質らしい青年君。汚名返上なるのか楽しみにしてます。
ヘタレ→ロリコンカッコカリ→変質者→滑ってやらかした人……どんどん下がっていってるのは気のせいじゃないですかね?
そんな青年君のフォロー&癒しにゆーちゃんをお願いします

78: ライン 2015-04-05 11:54:28 ID: BqOe5kNn

十米名無しさん
いえいえ、こちらこそリクエストありがとうございました。
2スレ目、たぶんいきますw

ワッフルさん
こちらこそリクエストありがとうございます。
先輩に無理やり言わされたんですw青年と同じですねw

2スレ目、おそらくいきますw

わー50さん
そうですね……青年、だんだんと汚名がついていきますなw
ゆーちゃん、了解です!

79: SS好きの名無しさん 2015-04-05 16:26:46 ID: 6vir5DlS

青年さんだんだんハーレムを作り上げてますね。
暁達のチアも楽しみです^ ^
まったく羨ましいような…
そろそろ自分も何か名乗ったほうがいいかな?

80: ライン 2015-04-05 18:02:20 ID: BqOe5kNn

名無しさん
そうですねぇ……誰かとくっつくことはあるのかな?w
暁達のチア、楽しみにしておいてください。

できれば、あるとわかりやすかったり……

81: SS好きの名無しさん 2015-04-05 19:27:00 ID: 6vir5DlS

駆逐艦最高(と名乗ることにしました)です、よろしく。
暁は誰にも渡さん!!(笑)
何はともあれ頑張ってください^ ^

82: ライン 2015-04-05 20:01:00 ID: BqOe5kNn

駆逐艦最高さん
了解しました!
安心してくださいwたぶん、青年のものにはなりませんw

これからも頑張りますよ~!

83: ワッフル 2015-04-06 01:20:40 ID: lI09nyDh

ふむ、扶桑姉妹は相変わらずの平常運転ですねw
度々リクエスト、と言っては何ですが勿論扶桑姉妹もっと出さしてくれますよね?(ニッコリ
ゆーちゃんは渡さない(持ってないけど(血涙)
まぁ、青年君とくっつくのは瑞鶴かな?(すっとぼけ

図々しいリクエストすみません。
更新楽しみにしてます

84: elusha 2015-04-06 02:34:30 ID: iMm8iDoR

提督さん沖縄で孤児院とか開いてたりするのかな?ww

85: ライン 2015-04-06 16:21:27 ID: M4ZUYyVz

ワッフルさん
はい、平常運転ですw
大宴会では出せないかもしれませんが、今後も扶桑姉妹は出てくると思いますw

うーん、青年とくっつくのは瑞鶴なんでしょうか……(すっとぼけ)

elushaさん
某堂島の龍みたいな人ではないのは確かですw

86: SS好きの名無しさん 2015-04-06 18:20:49 ID: ubCwaQsG

修羅場の予感キター♪ 自分でネタ膨らましておいてだけど、修羅場だー♪

居酒屋でどの空母が一番か普通に友人提督と盛り上がれる、わー50です。

宴会が終わったら今度は反省会です。そうなんです。たぶん、グロッキーになってるでしょう青年君には悪いのですが二航戦と青葉にイジり倒されちゃってくださいw

87: ライン 2015-04-06 19:29:16 ID: M4ZUYyVz

わー50さん
はい!修羅場ですよ!w
いいなぁ……そんな友人がほしいw

ええ、反省会の予定もありましたよ。
そりゃぁ、もちろんイジられまくるでしょう…

88: SS好きの名無しさん 2015-04-06 19:54:54 ID: rwrIrsEz

二航戦と聞いて=゚ω゚)ノョ
最近、二航戦を揃えたいと思う、駆逐艦最高です(空母なのに駆逐艦ってややこしいかな…)

加賀さんがあの無表情でマジックやってるとこを想像してしまうw
宴会終わったら、反省会があるんですか?

89: ライン 2015-04-06 19:57:10 ID: M4ZUYyVz

駆逐艦最高さん
うちにはまだ蒼龍さんしかいません……w

はいw反省会の回を書く予定でございます。
その後のお話は……ここから先はネタバレになってしまいますので……w

90: みいにゃん 2015-04-06 20:43:00 ID: xuQpoTg5

加賀さんと瑞鶴が取り合いして酔いつぶれたところで、弥生が救出に来るも逆に飲まされて、潰れた所で、生き残ってた?白露姉妹たちにさるべされて、介抱してた春雨とラッキースケベのキスとか如何でしょうか・・・(ガクブル)

91: ライン 2015-04-06 20:53:29 ID: M4ZUYyVz

みいにゃんさん
なるほど……それも面白そうですねw
何となくですが、やりたいこと全てができる展開が見えてきました……w

92: SS好きの名無しさん 2015-04-07 00:35:15 ID: SJTploZ0

駆逐艦最高です。
後出しで悪いんですが、暁達と他の艦娘達とで行う、アニメ第6話の様な対決ものって作れますかね?番外編みたいな。

93: SS好きの名無しさん 2015-04-07 01:05:58 ID: EAyk7osH

やっはろー、十米の奴です

青年君の主人公補正がついに開花したんですね分かります。空母2人を両手に羨ましいぞチクソウ!

宴会では自分、料理を取って渡して取って渡して…で全く食べられない役です(′;ω;`)

リクなんですが、青年君と提督との絡みを見てみたいなーと。男同士でしか話せない…みたいな?
余裕があればでいいのでお願いします(・ω・ )

94: ライン 2015-04-07 22:52:08 ID: Cg41hkK2

駆逐艦最高さん
番外編でよいのなら作ります!

十米名無しさん
どんどん爆発していく主人公補正....
提督との絡みですか。
これもまた番外編という形になりそうですが頑張ります!

95: SS好きの名無しさん 2015-04-08 00:28:58 ID: ub0QaQP2

ありがとうございます!楽しみに待ってマスヨー♪(v^_^)v
ただ、内容については、第6VS誰か、の一対一ではなく第6を含む複数人で同時にという形で。

マサニアニメノヨウダ(by駆逐艦最高)

96: SS好きの名無しさん 2015-04-08 00:41:26 ID: i7eetAyL

ヘタレ→ロリコンカッコカリ→変質者→滑ってやらかした人→ラッキースケベ(駆逐艦に)……アウトやん! ロリコンカッコガチ決定やん! 主人公補正にすらそっちにブーストかけられた青年君の明日がヤバい。

嫁は飛龍、娘はゆーちゃんのわー50です。異論は認める。青年君よ。この二人に手を出すならお父さんを倒してからにしなさいw

日常編に戻ったら、ロリコン疑惑+お○ぱい発言で潮や浜風に避けられて凹む青年君というネタはいかがでしょう?

97: 山椒 2015-04-08 01:16:15 ID: atk7vps6

あ゛あ゛あ゛あ゛や゛よ゛い゛か゛わ゛い゛い゛い゛い゛(脳死)

瑞鶴とのこれからが気になります!

続き期待して待ってます!

98: ライン 2015-04-08 19:38:44 ID: QDQPhHc3

駆逐艦最高さん
了解です!バトルロワイヤル的なやつですねw

わー50さん
もう、青年君、どんどん属性が増えていきますね……w
日常編に戻ったらそうしましょう。かなり凹むでしょうね、青年w

山椒さん
はい、弥生はかわいいですw
瑞鶴とのこれからですか……たぶん、幸せなエンドが……

更新頑張ります!

99: SS好きの名無しさん 2015-04-08 20:09:10 ID: ub0QaQP2

更新頑張って下さいね。
このSSには終わりがなさそうだ。


…青年新シリーズってなんでしょう?



100: SS好きの名無しさん 2015-04-08 22:49:35 ID: Iq7hQyMY

100コメはみいにゃんでした?

主様>

やばいこのはるさめおもちかえりして頭なでなでしたい!

春雨のとくちょうが結構生きてた気がするのじゃ!(利根)

提督と語らいしたあとで、駆逐全員にもみくちゃにされませんか?

101: ライン 2015-04-08 22:53:26 ID: QDQPhHc3

99の名無しさん
頑張ります~!!
はい……たぶんまだまだ終わらなさそうですw

新シリーズ、いつ投下か迷いますねw

みいにゃんさん

お~、おめでとうございます!(特に何もないんですけど…w)
ぜひ、テイクアウトで……。

そうですね……それも入れておきましょうw

102: SS好きの名無しさん 2015-04-09 20:04:27 ID: pQypBL5A

戦犯涼風(嘘)
村雨嬢と時雨のお仕置きはえげつなさそう…

そして青年君のハーレムが着々と出来上がってますね…いいゾ~これ
個人的には二航戦サンド(物理)と青年マジギレが見たいです先生

二航戦サンドは言わずもがな、
青年マジギレは散らかしまくりの酔っ払い達に対して…とかどうでしょう
(怒ってても何だかんだで優しい青年君…の方が展開と性格的に組みやすいかな?)

103: E8a7da3 2015-04-09 20:42:04 ID: pQypBL5A

は"る"さ"め"か"わ"い"い"

…が、個人的に赤面する謎の村雨嬢の話を見てみたい
春雨と同じ様な事態(もし良ければもっと過激なものでもry)になりつつも、駆逐艦とは思えない妖艶さでひらりと躱す…とか

104: ライン 2015-04-09 21:27:06 ID: dQRFJTTV

102の名無しさん
かなりえげつかったそうです……

二航戦サンド(物理)とマジギレ青年ですね。わかりました!
次スレを楽しみにしていてください。

E8a7da3さん
春雨はかわいいですよねw
妖艶な村雨ですね、了解です。

105: SS好きの名無しさん 2015-04-09 22:00:19 ID: s3R1m9rd

この青年君だもの誘拐犯はレ級か北方棲姫か駆逐棲姫の三大ロリだと思ってました、わー50です。
春雨そっくりな駆逐棲姫にドキドキするのと、北方棲姫に「オニイチャン」と呼ばれてうかっりときめいちゃう青年君はありますよね?

106: ライン 2015-04-09 22:14:45 ID: dQRFJTTV

わー50さん
あったりまえじゃないですかぁwwww

107: SS好きの名無しさん 2015-04-09 23:34:17 ID: jjl0rXxs

これはいいss。是非続けて頂きたいです


ちなみに広島の人は「広島風」って言葉が好きじゃないみたいです
世間でいう「広島風」がスタンダードだろ!っていう意識みたいですよ
浦風が自分で広島風って言ってる場面があったので一応…

聞いた話なのでちがってたら土下座して謝ります

108: ライン 2015-04-09 23:39:17 ID: dQRFJTTV

名無しさん
ありがとうございます!
これからも頑張りますので、ぜひよろしくお願いします。

ま、マジですか....うぅん、今度修正しておきますね。


このSSへのオススメ

9件オススメされています

1: SS好きの名無しさん 2015-03-20 11:26:03 ID: PjVMFuXd

これからも期待したい一作

2: ギョタン 2015-03-23 05:46:10 ID: m3Q4SBpb

こんな職場で働いてみたい

3: ワッフル 2015-03-23 20:50:27 ID: PVSsEMJd

この人の作品は凄く面白い

こんな職場があったらなぁ・・・・

4: たぬポン 2015-03-27 13:06:33 ID: juv4EeM1

読んでて楽しい

更新が待ち遠しい作品ですね

5: SS好きの名無しさん 2015-03-30 01:12:32 ID: cvKd13uM

とてもいい作品だと思います,更新が毎日楽しみです頑張ってください。

6: SS好きの名無しさん 2015-04-07 01:21:53 ID: Fop9aM_V

結構面白い
更新楽しみ

7: ニカ 2015-04-09 12:51:02 ID: iaaYbkI6

これからも期待です!
青年と艦娘の絡みが面白い!

8: SS好きの名無しさん 2015-04-09 19:07:45 ID: oKN561XL

頑張って!

9: SS好きの名無しさん 2015-06-28 14:47:57 ID: oErxp7k_

筆者さんのSSは提督でも艦娘でも無い第三者
なので感情移入しやすいし
何より話が面白いですね


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