2019-06-12 21:17:57 更新

概要

ネルソンの部屋に何故か大金(日本で言えば1億円)が置かれていて・・・


「姉さま、どうしたのですか?」


早朝にも関わらず、ネルソンが部屋に来るように言われ早々に着替えをして部屋の扉をノックする。


「ロドニー? 入って。」


ネルソンが許可すると、ロドニーは「失礼します」と言って部屋に入る。


「それで姉さま、一体どうしたのですか? まだ早朝ですよ?」


ロドニーの問いに、


「机に”あんなもの”が置かれて無ければ、わざわざあなたを呼びはしなかったわ。」


そう言って、机の方に指を差す。


「・・・!」


ロドニーは驚き、言葉が出ない。



机の上には・・・大量の札束が帯付きで置いてある光景。


「どうして姉さまの机の上にこんな大金が?」


「知らないわよ! 朝起きたら既に大金が置いてあったの!」


「・・・・・・」


ロドニーは机の上に載ってある札束を丁寧に数えて行く。


「ロドニーは長年この拠点で生活していますが・・・このような大金を間近で見るのは今日が初めてですね。」



2人の前に置かれているのは、ロドニーたちの月収・年収のレベルではない、


この拠点で生活している全艦船たちの何十年分の年収と言ってもいい程の大金なのだ。



「とにかく! この事は陛下に伝えるわ。」


ネルソンの提案にロドニーも賛同する。


・・・・・・


ネルソンの部屋に大金が置いてあった件について、陛下(エリザベス)含む幹部たちの緊急会議が開かれた。


「本当に心当たりが無いの、ネルソン?」


「ええ、昨日就寝した時には机の上に何も置いていなかったわ。」


陛下の質問に答えて行くネルソン。


「では誰が? ネルソン様のお部屋の鍵はロドニー様を含む、一部の方たちしか所持していないはずでは?」


メイド長であるベルファストが意見する。


「そうね、現時点でネルソンの部屋の鍵を所持しているのはロドニーとベル・・・まだいたかしら?」


陛下の質問に、


「もう1人・・・ウォースパイト様です、各部屋の合い鍵を所持しておられます!」


「ふむ・・・それで。」


陛下は辺りをきょろきょろし始めて、


「肝心のウォースパイトは見かけないけど、どこに行ったのかしら?」


確かに、陛下の従者であるウォースパイトにしては珍しく、会議室の中にはいなかった。


「そ、それが・・・私がウォースパイト様の部屋を何度もノックしたのですが、お出になられませんでした。」


「むぅ・・・ウォースパイトは一体どこに行ったのかしら?」


陛下の機嫌が急に悪くなる。


「緊急会議だと言うのに、サボるなんて・・・ウォースパイトを見かけたら即説教ね!」


そう言いつつ、大金の処遇を各員で検討し始める。


「まず誰の者か調べる必要が・・・勝手に使って後に持ち主が現れたら厄介な事になるわ。」


「そうですね。 でも、もし置いたのが部外者となれば・・・不法侵入をした事になるのでは?」


ネルソンたちは真っ先に部外者論を挙げる、当然内部の人間では無いと言い張る。


「確かに・・・あれだけの大金、拠点内の全艦船から集金したとしてもあの額には到底届きませんね。」


「となれば肝心の部外者は行方知れず・・・あの大金はロイヤルで使っても構わない、という事になるのかしら?」


話し合いが続き、出た結論は・・・



「”あの資金を置いて行ったのは部外者、そして肝心の部外者は行方知れず・・・もし、持ち主が現れたら


 資金を返すと同時に不法侵入で処罰を行い、現れる気配が無ければロイヤルで使わせてもらう”でいいかしら?」



まとめた結論に皆の意見が一致する。


「・・・・・・」


ロドニーが何故か考え込んでいる。


「? どうしたのロドニー? 何か言いたいことがあるの?」


「! い、いえ。 私もその結論に賛成です。」


「そう、じゃあこの結果報告を陛下に提出するわね。」


皆の意見をまとめた書類を陛下に届けるネルソン。



陛下の承諾の元、大金は一時的に保管され、猶予は1か月とした。


1か月が過ぎても、持ち主が現れなかった場合、この資金はロイヤルの所有となる。


・・・・・・


「それにしても・・・ウォースパイト様は一体どこへ行ったのかしら?」


廊下で悩んでいるイラストリアス、


「分かりません、朝から急に姿がお見えにならないので・・・」


ベルファストでも彼女の居場所が分からない、


「それ以上に、姿がお見えにならないのは初めての事です。」


彼女に身に何かあったのか、と心配をするベルファストに、


「実は一昨日の夜なんですけど・・・ウォースパイト様がお部屋で悩んでいる姿をお見かけしたんです。」


イラストリアスは一昨日の出来事を話す。


・・・・・・

・・・



「ウォースパイト様、少しよろしいでしょうか?」


イラストリアスが明日の出撃編成の報告をするため、ウォースパイトの部屋に入った時だ、


「・・・・・・」


ウォースパイトは何かの書類を見て、頭を抱えていた。


「ウォースパイト様、どうしたのですか?」


声を掛けると、


「!? ああ、イラストリアス! 何か用かしら?」


咄嗟に見ていた資料を隠し、話に応じるウォースパイト。


「は、はい。 明日の出撃編成の報告に上がりました。」


「ご苦労様、確認させて・・・うんうん、悪くないわ。 この編成で行きましょう。」


「ありがとうございます・・・先ほどはどうしたのですか? とても悩んでいる様に見えたのですが?」


「べ、別に貴方が気に掛ける事では無いわ。 委託から帰還したばかりでしょ? 明日の出撃に向けて


 早く休みなさい。」


「・・・分かりました。 ウォースパイト様もあまり無理をなさらないでくださいね?」


そう言って、イラストリアスは部屋から出て行く。


・・・・・・

・・・



「ウォースパイト様が何かの資料を見て頭を抱えていた、ですか?」


ベルファストにとって、その部分が頭に残る・・・恐らく、ウォースパイトがいなくなった理由はそれが原因であると。



「失礼します・・・とは言っても、誰もいませんが。」


掃除と称してウォースパイトの部屋に入るベルファスト、もちろん掃除が目的ではない。


「ウォースパイト様がよく目を通す資料は確か・・・」


ベルファストは手際よく、彼女の机や引き出しに入っている資料を取り出して行く。


「これは出撃・委託の編成資料にこちらは・・・」


ウォースパイトの主な役割は陛下の従者であるが、後輩への配慮として出撃・委託組の編成や体調の確認も担っている。


「ふむ・・・いつも見ている資料であって特別おかしな点は・・・おや?」


そう思っていると、引き出しの隅に僅かだが他の資料と違って折り込んだ資料があり、


「・・・・・・」


ベルファストはそれを開く、


「・・・ロイヤル拠点での維持費?」


そこに書いてあったのは、ロイヤル拠点を維持するのに必要な資金表だった。


・・・・・・


「ベルファスト、何か進展はあった?」


ネルソンに声を掛けられる、イラストリアスに聞いたのか調査の進展を聞いてきた。


「はい、ウォースパイト様の引き出しにこの資料が。」


そう言って、ベルファストはネルソンに先程の維持費が記した資料を渡す。


「何? この拠点の維持費?」


その時点ではあまり興味を示さなかったが、


「何々、数年前からこの拠点は・・・そんな、赤字続きだったの!?」


初めて知る衝撃的な事実。


「イラストリアス様からウォースパイト様が書類を見て頭を抱えていたと聞いていたのですが、


 恐らくこの資料で間違いないでしょう。」


「そう、でもこの資料と彼女がいなくなった事と何の関係があるわけ?」


「残念ですが、そこまでは分かりません。」



ネルソンと別れ、以降も調査を続けるも、目立った情報は無く調査を打ち切る事に・・・


・・・・・・


「・・・・・・」


ロドニーは1人、行きつけの村雨の店に飲みに来ていた。


「どうしたんですか、ロドニーさん? とても落ち込んでいる様に見えますが?」


女将である村雨が心配になって声を掛ける。


「あっ、いえ。 少し考え事をしていただけです。」


いつもの笑顔になり、女将を安心させるロドニー。


「・・・・・・」


ロドニーが考えていた事、それは当然ウォースパイトの事である。


「・・・・・・」



実はウォースパイトが失踪する前日に彼女と会話をしていた。


・・・・・・

・・・



「生活が赤字、ですか?」


ウォースパイトから告げられた衝撃的な一言。


「ええ、数年前から維持費が異常に増えてしまって・・・今日まで陛下や後輩たちには隠していたんだけど・・・」


ウォースパイトは「ふぅ~」っとため息をつき、


「既に数人の艦船たちが気づき始めている、隠し通すのは無理のようね。」


半ば諦めたかのように、暗い表情を見せるウォースパイト。


「でもどうして赤字に? 今までの生活をしている限りでは、とても困惑している状況には見えませんでしたよ?」



確かに、振り返っても特別食事の量が減っているわけでも無く、備品が無いわけでも無い。


「新たな戦力の増強、休む間もなく敵からの奇襲、各拠点での絶えないイベント・・・


 それらの影響で、武器の調達・接待・増築が重なり合って維持費が飛躍的に増えたのよ。」


「・・・・・・」


「困惑した状況を皆に悟られまいと、密かに私が陛下の名を使って、外から資金を調達していたの。」


「・・・・・・」


「もちろん、それは悪い事なのは分かってる。 陛下の肩書きを利用するなんて最低の行為だし、


 それを知れば陛下も激怒するでしょうね・・・」


「・・・・・・」


「全てはこの拠点の生活を維持するために、誰にも悟られず頑張って隠し通して来たつもりだけど・・・もう限界ね。」


「・・・・・・」


「借金額限度まで達して・・・借りた人間から「一括で支払え」との督促状まで来てしまって。」


ウォースパイトが持っている手紙がまさに督促状なのだろう。


「それで、どうするおつもりですか? そんな大金、一括で払えるのですか?」


ロドニーが質問すると、


「もちろん返すことは無理・・・でも1つだけ当てがあるの。」


「? 当て、ですか?」


「ええ、だから今から私はそこへ向かおうと思っているの。」


ウォースパイトは既に外出をする準備が出来ていて、


「全ては自分が蒔いた種・・・蒔いた種は自分で摘み取って責任を果たすものでしょう。」


そう言って、ウォースパイトは誰にも悟られず拠点から出て行ってしまった。


・・・・・・

・・・



「・・・・・・」



あれからウォースパイトの安否は不明である・・・当てがあるとはいえ、当然無償でやってくれるとは考えにくい。


何かしらの担保が無ければ応じてくれないだろう。


「つまり、ウォースパイト様自信が、担保。」


自分を売ったのか定かではないが、少なくても彼女がいない理由はそれでつじつまが合う。


「本当にどうしたのですかロドニーさん?」


再び女将から心配の声が掛けられる。


「! いえ、少し考え事をしていただけです・・・お気遣いありがとうございます。」


そう言って、出された焼酎を飲み干し立ち上がる。


「ご馳走様です、また来ますね。」


ロドニーは店を後にする。


「・・・本当にどうしたのでしょう、ロドニーさんは?」


明らかに様子がおかしいロドニーを見て心配になる村雨。


・・・・・・


早朝、


店は朝から大忙しだ。


「私は暖簾を掛け、店内の掃除をするわ。」


「分かりました、海風は食器の準備と材料を切って行きますね。」


最近店に居候する事になった海風と一緒に店を切り盛りしていく・・・そんな中、


「!? おっとっと・・・ああっ!!」


山積みになった皿をゆっくり慎重に運んで行く1人の人間がいたが、


「あっ、危ないですよ!」


直前で皿をひっくり返しそうになり、村雨と海風が助けに入る。


「か、間一髪セーフね・・・」


村雨は安堵の息を漏らす。



村雨と海風ともう1人、裏で作業している人間がいた・・・新人だろうか?


「ご、ごめんなさい。 女将さん。」


新人らしき人間は素直に謝る。


「いいですよ、でも本当に危ないですから。 怪我をしないように気を付けてくださいね♪」


女将は新人に優しい言葉を掛ける。


・・・・・・


ウォースパイトが失踪して1か月が経ち、同時に猶予が過ぎた事により置いてあった大金は、


実質ロイヤルの所持金となった。


それと同じタイミングで、ウォースパイトが隠していたであろう督促状とそれに対して自身が行った対策などが書かれたメモを


ベルファストが発見し、瞬く間に拠点内に広がった。


「維持費が赤字って・・・ウォースパイト、何で言ってくれなかったのよ!!」


全ての事実を知った陛下は激怒するも、


「でも、ウォースパイトに全て任せていたのは私・・・赤字続きでずっと悩んでいたのね、それに私は気づきもしなかった。」


陛下は頭を抱える、


「だからって、勝手に私の名前を使って資金を調達した行為は許されるわけではない、でも・・・」


陛下は今回の起きた事態を整理する。


「あの子1人だけで背負って・・・じゃあネルソンの机に置いてあったのがその返済金と今後の維持費?


 で、その代償がウォースパイト自身が担保になったって事?」


陛下は立ち上がって全員に指示する。


「ウォースパイトを探して! いい? 今回の事であの子を責める必要は無いわ。 見つけ次第連れ帰って来て!!」


陛下の指示に皆が捜索に乗り出す。



しかし、肝心のウォースパイトはどこに行ったのかは誰も知らず、ロドニーも「当てがある」と言われただけで、


場所がどこなのかを聞けなかったため、お手上げ状態である。



しかし、意外な場所でウォースパイトを見つける事になる。


・・・・・・


「・・・・・・」


ロドニーを含む、ネルソン・ベルファストが村雨の店に呑みに来たことである。


「ロドニーさんに続いて・・・ネルソンさんとメイドさんも元気が無いですね。」


いつもなら、来店早々会話が始まるのだが、今回は何の会話も無い。


「ロドニー様、ネルソン様、お注ぎ致します。」


メイド長のベルファストだけが、普段と同じ様に振る舞う姿が見られるも、2人は終始無言である。


「本当にどうしたのですか? 酷く疲れているように見えますけど?」


村雨の気遣いに、


「女将さんが気遣う必要はありません、こちらの問題ですので。」


ロドニーはやっと口を開く。


「本当に・・・どこに行ってしまったのやら。」


ネルソンも一言だけ呟いて、またも口を閉ざす。


「ちょっと海風、手が空いてるなら料理を運んでくれない?」


村雨が海風に指示をするも、


「そう、調理中ね・・・なら仕方ないか、じゃあ新人さん! 料理を運んでくれます?」


「は、はい。 お待ちください。」


裏で作業中の新人が慌てて駆けつこうとする。


「! 今の声は!?」


ロドニーは女将の方を見る。


「はい、分かりました。 お任せください。」


裏から現れた新人は、頭に頭巾と体に着物を着ているも、


「ウォ、ウォースパイト様!?」


そこにいたのは紛れもなく、ウォースパイト本人だった。


「あら、ロドニーとネルソンに・・・それにベルまで。」


ウォースパイトは3人を見て、無難に「久しぶりね」と挨拶するも、


「こんな所で何をしているんですか?」


ロドニーの言葉に、


「・・・何って、この店で働いているんだけど?」



・・・考えればその通りなのだが、


「いえ、そうではありません! 何故この店で働いているのかを聞いているのです!」


ロドニーは口調を荒げる。


「何故って、この店に大金を借りる条件として、この店で働くことになったのだけど?」


「・・・・・・」


前にウォースパイトが言っていた「当てがある」とはこの店のようだ。


「陛下がウォースパイト様を心配しておられます、「今すぐに戻ってきて欲しい」とも言っています。」


「う~ん、そう言われても・・・女将さんにここで働く契約をしたから、当分はロイヤルに帰れないわ。」


そう言いつつ、食器を片付けて仕事を始めるウォスパ。


「・・・それで、働く期間はどのくらいなのですか?」


ロドニーの質問に、


「10年よ。」


「じゅっ、10年ですか!?」


「ええ、あれだけの大金を短期間で返せるわけないし・・・女将さんと相談して、「10年働いてくれれば借金は帳消し」と


 言ってくれたから、迷わずこうして働いているのだけど?」


「・・・・・・」


ロドニーたちは驚くと同時に呆れた表情を見せる。


「?」


ロドニーとベルファストはある事に気付く・・・ウォスパの表情がとても明るい事に、



ロイヤルでは普段から陛下の側で従事しているウォースパイト、いつも多忙で真剣か疲れた表情しか出さない彼女が、


あんなに笑顔でいる光景を初めて見るロドニーたち。


「じゃあ私は仕事に戻るわね・・・あっ、これを持って行って。」


ウォスパは女将の許可を貰って、棚から何かを取り出す。


「とても美味しいから! ロイヤルではまず見ることは無いから少し持って行って。 ロドニーたちも


 陛下も間違いなく気に入るわ!」


そう言って、ウォスパから渡された物は・・・カップヌードル系統。


「はぁ・・・そ、それでは・・・頂きます。」


ロドニーは渋々お土産を貰う。


「陛下に伝えて置いて、私は借金返済のために当分はロイヤルに帰れないからって。」


そう言って、ウォスパは裏口へ入って行く。


・・・・・・


ウォースパイトの行方と今の現状を包み隠さず、陛下に報告するも、


「何を考えているのよ、ウォースパイトは!!」


当然ながら、陛下は激怒した。



 






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SS好きの名無しさんから
2019-06-13 11:18:15

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1: SS好きの名無しさん 2019-06-14 17:58:33 ID: S:QbPYg3

いっそのことロイヤル拠点を破棄して
全員この店で働ければ良いかと。
余った人員はチェーン店で


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