2018-12-10 00:25:33 更新

概要

初期艦5人組と提督を中心になんか書くSS
長く続けていきたい
リクエスト等はコメントにてどうぞ


前書き

この作品は前作『しょきかん!』からの続きとなります
初めての人は前作からの視聴をおすすめしますよ

キャラやシチュエーション色々と募集中ですが、出るかは作者の気分次第
ことによっては次作まで引っ張ったり外伝にしたり、出ても著しいキャラ崩壊の可能性がありますよ

この作品はR-15なのでちょっとえっちぃシチュや軽い下ネタが入ったりしますよ
ただし作者のうっかり暴走でR-18ギリギリのラインをチキンレースするかもですよ

それでもいいって人は暇つぶしにどうぞごゆるりと


初期艦再び!







――――――――1425 呉第三鎮守府執務室








叢雲「ザッケンナコラー!」ギリギリギリ


漣「アイエエエエエエエ!?ヤメロー!ヤメロー!」ジタバタ




叢雲「人がせっかく買ってきた限定物のプリン食いやがってドグサレッガー!スッゾコラー!」ギリギリギリギリ


漣「アバババーッ!?その件は本当にスミマセン!ご主人様から貰ったプリンと間違えたなんて思わなかったんですゴメンナサイ!」


叢雲「謝って済むならマッポは要らんわぁ!食い物の恨みは恐ろしいわよ……今ここで轟沈しながらその意味を噛み締めろぉ!」ギリリリリリリ


漣「うああぁぁぁ痛い痛い痛いッ!こんな激痛の走るグリグリあたい初めてッ!」


叢雲「あら随分と余裕そうね……ならもう『2割』ぐらいパワー上げても問題ないわねッ!?」ゴリッゴリリリッ


漣「うぎゃああッ!?ムラキョン洒落になってないよこの痛さ、マジで頭蓋砕ける5秒前なんですが!?これ漣の命は保障されるんですよねェェェェ~~~~~ッ!?」


叢雲「家畜に神はいない、あと司令官から貰ったとか妬ましい。だから死なないよう祈れ」


漣「いやああああムラキョンの鬼畜!オニ!アクマ!あとその私怨はいくら何でも理不尽すぎると思います!!」


叢雲「いいから黙って死の忘却を迎え入れろぉぉぉ!!」


漣「もしかしてグリグリですかァァァァ~~~~~ッ!?」


叢雲「YESYESYES!!」ゴリゴリゴリゴリゴリゴリ


漣「ぴぎゃ――――――――――――――ッ!!!」





提督「たかがプリンで大袈裟な……」


五月雨「て、提督!たかがプリンって、されどプリンなんですよ!?」


吹雪「私達女子にとって甘いものは何物にも代えがたい甘美……それをけなすのはたとえ司令官といえど許しませんよ!」


電「いや、それでもアレはやりすぎなのです」



提督「ていうか今執務中なの分かってやってんのかアイツら……」ショルイタイリョー


吹雪「大規模作戦の事後処理って、こんなに大変でしたっけ……?」サインカキー


電「猫の手も借りたいほど忙しいのです……それなのにあの二人は呑気なものなのです……」ハンコオシー


五月雨「あともうちょっとだから頑張ろ……わきゃぁッ!?」ショルイバサー


提督「うおおおおいそれめっちゃ重要書類なんですけどォ!?なにばら撒いてくれちゃってやがりますか五月雨ェ!?」


五月雨「ぴぃぃい提督ごめんなさいぃぃぃ!!」ワタワタ


吹雪「はいはい慌てない慌てない……」マトメマトメ





漣「ぬうぅぅぅ……初めてですよ、この漣をここまで痛めつけてくれたお馬鹿さんは……許さん……絶対に許さんぞ叢雲ォ!!この恨み10倍にしてじわじわとなぶり殺しにしてくれるッ!!」


叢雲「上等じゃないのやってみなさいよ!」


漣「ここにムラキョンが毎夜こっそり書いてる乙女ポエム集が」サッ


叢雲「きゃ―――――――ッ!きゃぁああ―――――――ッ!!な、なんでアンタが持ってんのよ返しなさい!返して!返してください!!」


漣「えーとなになに……『夏。青々とした鮮やかなキャンバスに、大きな積乱雲が描かれる夏。むせかえるほどの蒸し暑さと、ひんやりと冷たいスイカを食べる音。今年の思い出にはもう一つ、あなたの横顔。そしてそれを見て、いつもより顔を熱くさせる私』」


叢雲「やめてええぇぇぇぇ……!!」ペタン


漣「…………Oh」マガオ


叢雲「なんで真顔なのよぉ……せめて笑い飛ばしてよぉぉ……!!」シクシク




提督「ひでぇことしやがる……」ガッショウ


吹雪「あれ10倍どころか100倍はダメージ大きいよ……」ガッショウ


五月雨「叢雲ちゃん、可愛そうに……」ナムナム


電「でも漣ちゃんの気持ちも分かるのです」シレッ


叢雲「うああああぁぁぁぁぁぁ……」メソメソ


提督「こいつトドメ差しやがった!?」







大淀「楽しそうですねみなさん」



提督「」


電「ぴぃっ!?」


漣「げぇッ!?よどよど=サン!」ジャーンジャーンジャーン



大淀「提督……書類の進捗…………如何ですか」ニッコリ


提督「あ、いや、えとーそのーあのー」シドロモドロ



吹雪(あわわわわ)ガクガクガク


五月雨(大淀さんすっごく怒ってるぅぅぅ……!!)ビクビク


叢雲(あぁ……とりあえずアンタのせいにしとくわよ漣……)


漣(なんでや!全部が全部漣の責任違うやろ!)


叢雲(アンタが私のプリン食べなきゃそもそもこんな争いせず普通に仕事してたのよ!)


漣(ていうかそもそもそんなに大事なら名前書いとけッつーのよォォォ~~~!そんなことにも気づかないとか頭脳がマヌケかテメエ―――ッ!)


叢雲(それをいうならあのプリンのパッケージ全然似てないじゃない!間違う要素ゼロでしょうがアンタ実はわざと食ったわねッ!?)


漣(違いますー本当に勘違いしただけですー言いがかりも甚だしいですー)


叢雲(アッタマ来た……そこまでいうなら艤装持って表出なさいよ、ぼっこぼこにしてやるから!)ギロッ


漣(返り討ちにされても吠え面かかねーといいですなぁ……!)ジロッ


電(ふ……二人とも……!)


叢雲(何よッ!?)


漣(何さッ!?)


電(う、後ろ…………)






大淀「…………」





漣「」


叢雲「」




大淀「…………」




漣「…………許してにゃんっ☆」テヘッ


叢雲「…………にゃん」ペロッ




大淀「辞世の句は用意できましたか?」ニッコリ






『ギャアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!』






提督「さーて頑張って4人で仕事終わらせるか」


吹雪「はい司令官、これ先に目を通しておいてください」


五月雨「忙しい忙しい……」


電(二人とも……許しは請わないのです、サンズリバーの向こうで恨むのです)




漣「いや死んでねーからッ!?」ボロッ


叢雲「大淀さんは怒らせちゃいけない、叢雲覚えた」ボロッ







おわり


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提督(本名 小早川輝幸)



呉第三鎮守府の指揮官。まだ二十代と若年だが、数々の大規模作戦に参加、成功に貢献している実力者。


現在の階級は大佐だが、そろそろ少将にしてもいいだろうと近隣住民が語る。



軍学校に入る前は整体師を目指しており、その腕前は艦娘を骨抜きにするほど。資格は現在の役職に就いた後に取得。


自身の保有する艦娘全てを愛するという彼の思想は、根幹に師である宇喜多中将の信念のほかに、ある事件に巻き込まれたことがきっかけらしいが……。



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こぼれ話:すごいよ!ムラサメさん!




―――――――1355、村雨私室




村雨「――――――♪」ハナウタ



白露「どしたの村雨、えらくご機嫌じゃん」オカシムシャー


村雨「ふふ、当たり前でしょ?今日は村雨が秘書艦なんだもの」


白露「あー……そっか。今日だっけ」


村雨「うん♪」


白露「いいなー、いっちばん提督に近いポジションだし」


村雨「白露姉だって、来週秘書艦じゃない」


白露「それまで待てないもぉん……ずーっと白露が秘書艦なら一番いいんだけどなぁ」ゴロー


村雨「だぁーめ。秘書艦は皆楽しみにしてるんだから……涼風は分かんないけど」


白露「まぁあの子は頭より先に手が動くしね。江風も……あ、でもあの子は割とちゃんとしてるか」



村雨「むしろ白露姉が心配だなー。提督困らせてない?どっちが一番に書類を終わらせるか勝負ー、とか言って」


白露「流石のあたしも執務中は真面目にやってますー!むしろ村雨の方が……」


村雨「私もちゃんとしてるもん」


白露「ホントぉ?そのやったらでかいおっぱいで提督誘惑してそう」


村雨「スキンシップは別だもん」


白露「うわこの子否定しないのかよ!?」


村雨「白露姉も結構おっきいと思うんだけどなー」


白露「いやいや、アンタや夕立には負けるわ。ていうか妹のくせに姉を置いてスクスク育ちおって」


村雨「恋する乙女ですもの」


白露「はいはいそうですか」



村雨「……あら、いけない!もう行かなきゃ!」ガタッ


白露「行ってらっしゃーい」


村雨「ちゃんとお菓子片して帰ってよ?」


白露「分かってますから、ほら行った行った」ヒラヒラ


村雨「もう!行ってきます!」



ガチャ……バタン






白露「…………恋する乙女……ね」



白露「あたしだって…………」ハァ








村雨「急がなきゃ……」タッタッタッ




ガチャッ



村雨「提督ごめんなさい!うっかり白露姉と話し込んじゃった」


提督「おぉ村雨。まあそう焦らなくてもいい」


村雨「ダメです、遅れを取り戻さないと!書類は何が残ってますか!?」ガタガタッ


提督「もう今日は終わったよ」


村雨「…………へ?」


提督「急いできてくれて悪いが、今日は随分と少なくてな。昼の追加もなかったし、あっという間に終わらせちまった」


村雨「えぇ~……なんだぁ……」ヘタリ


提督「あっはっは、まあたまにはそんな日もあるさ」



村雨「……あ、ということは、今日はもう非番ってことですよね?」


提督「あぁ、そうだ」


村雨「じゃあ村雨と遊んだりもできるってことですよね」


提督「ん、なんだデートのお誘いか?」


村雨「んっふふ♪デートもいいけど……」ガタッ



スタスタ…………ポスンッ



村雨「こうして提督と一緒に、のんびりしたいなーって」


提督「おいおい……だからって何で俺の膝に乗るんだ」


村雨「村雨だって甘えたいんです」


提督「だからってなぁ」



村雨「それとも提督、こういうのはお嫌い?」


提督「嫌いじゃないが、誰かに見られたら……」


村雨「いいじゃない、見せつけたら」スリスリ


提督「顔を人の胸に擦り付けるんじゃありません」


村雨「提督は村雨のものっていう目印をつけてるの♪」


提督「猫かお前は」




村雨「……提督」スリ


提督「ん?」


村雨「…………私達、ずっと一緒ですよね?」


提督「当たり前だろ」


村雨「戦いが終わっても?私達ずっと一緒?」


提督「…………村雨?」





村雨「……時々夢に見るの。私から皆離れていく夢」



走っても追い付かない。呼び止めても止まってくれない。



提督も、白露姉も、時雨姉も、夕立も。



春雨も五月雨も海風も江風も涼風も皆。



どれだけ追いかけても、どんなに名前を呼んでも。



私に振り向かずに、皆闇に消えていくの。




村雨「……いつも泣きながら目が覚めるわ。その後皆の顔を見て……やっと安心するの」


提督「……そうか」


村雨「……全部、夢なんだよね?正夢になんかならないよね?本当は今見えているこの景色が全部夢で、目が覚めたら私一人なんてことないんだよね?」


提督「ああ……今が現実だ」


村雨「…………」ギュ




提督「……村雨。俺は生きている限り、お前を絶対に一人にはしない」


村雨「ホントに……?」


提督「ああ。お前だけじゃない、白露に時雨、夕立、春雨……この艦隊皆がお前の家族、お前の姉妹だ」


提督「お前は他の子の面倒もよく見てくれてる。新入りの子の世話も買って出てくれるし、食堂でも手伝ってくれていることは聞いてる。俺も何回助けてもらったことか」



提督「……でも、俺には甘えていいんだぞ」


村雨「うん……」


提督「お前だってたまには甘えたい時もある。そういう時は俺の所に来なさい」


村雨「うん……!」



提督「俺はお前にとっての父であり、兄であり……夫でもありたいと思ってる」


村雨「うん!…………うん?」



提督「……俺は、この鎮守府にいる艦娘全員もらい受ける。当然お前も」


村雨「えっ……えっ?」


提督「今まで言い出せなくてな……」


村雨「ちょちょちょ、ちょっと待って?提督、えと、つまりその」




村雨「……私を、お嫁さんにしてくれるの?」


提督「ああ」


村雨「…………私以外も?」


提督「……ああ」


村雨「白露姉も?時雨姉も?夕立も?春雨もみんな一緒?」


提督「ああ。皆一緒だ」




村雨「…………優柔不断なんだぁ」


提督「反省はしてる」


村雨「……皆自分の物って、欲張りすぎるよ?」


提督「自分でもそう思う」



村雨「……でも男らしくて、好き」


提督「悪いな、こんな男で」


村雨「ううん、いいの……私を、皆を一人にしないって約束してくれるなら、なんだって」



提督「指輪はもう少し待ってくれな」


村雨「うん、待ってる」




村雨「でも…………証拠が欲しいなあ」


提督「証拠?」


村雨「私達の傍にいてくれるって約束……本気かどうか、見せて?」


提督「具体的には?」


村雨「キスとか」


提督「その先でも構わんぞ?」


村雨「それはケッコンした後」


提督「アッハイ」




村雨「…………提督」スッ


提督「……後悔しないな?」


村雨「うん……今は無理だけど、村雨の全部……提督にあげる」



提督「……目、閉じて」ホホタッチ


村雨「…………!」ギュッ





村雨「…………!」






村雨「…………」







村雨「…………?提督?」



提督「……悪いが証拠はちょっとお預けだ」ヒソ


村雨「えぇっ!?どうして!?」ヒソ


提督「あいつらの教育に悪い」コッソリユビサシ


村雨「……?」チラ








皐月(わ、わ……しちゃうの!?あの二人キスしちゃうの!?)ドキドキ


如月(これは盛り上がってきたわぁ!村雨さんと司令官の永遠の愛が執務室で交わされるのね!)ワクワク


睦月(ほえぇぇ~……!村雨さん大人の関係……!)ドキドキ


水無月(ほおぉぉ、司令官も隅におけないなぁ!水無月も負けてらんないね……!)


文月(村雨さんずるいぃ~……文月も司令官とぉ……)フミィ……


長月(あまり人の営みを覗くのはよろしくないと思うのだが……)ジィ……


菊月(男女の契り……覗き見れば馬に蹴られる……か。恐ろしい話だ)ジィィ……


卯月(そういいながら長月ちゃん菊月ちゃんもガン見してるぴょん……説得力のかけらもないぴょん)プップクプー


弥生(報告したい……けど、邪魔できない……)


三日月(み、皆司令官の邪魔しちゃダメだよ!遠征の報告はまた後にしよう、ね!?)ワタワタ


望月(えー、今でもめんどいのに後からとかもっとめんどくせー……いいじゃん空気読まずに入っていけばさぁ)アクビ






村雨「~~~~~~~~ッ!!?」ボシュー


提督「あら、意外と初心な反応」


村雨「あ、あ、ぁぁ……!」パクパク


提督「…………」



提督「」ニヤ





提督「おーい、そこで覗き見してるお前ら」


村雨「ちょっ!?」バッ



(((ギクッ!)))




提督「お前らだよ、睦月以下10名。遠征終わったんだろ?入ってきなさい」テマネキ


村雨「ゃ、やああぁ提督ぅぅぅばかぁぁ……!」ポカポカ


提督(かわいい)




ガチャ



睦月「に、にゃはは……睦月型駆逐艦、遠征から帰投したにゃしい……」ギクシャク


皐月「あははは……」ニガワライ


三日月「ごめんなさい……司令官、村雨さんごめんなさいぃ……!」ペコペコ



提督「ええんやで」ナデナデ


村雨「あ、あうううやめてぇぇぇ……!」


提督「おやおやぁ?さっきまで積極的だったのに急にどうしたんですか村雨さぁん、誰か来たら見せつけるんじゃなかったんですかぁ?」ニヤニヤ


村雨「アレは言葉の綾でぇぇ……!」アワワワ


提督「あ、お前たちは気にせず報告してくれ」フイッ


村雨「ちょっとぉ!?」



望月「あいよー、とりあえずさっさと寝たいからちゃっちゃか済ませるわ」ポリポリ


三日月「ちょっともっちー!?」


水無月「もっちーは相変わらず空気読まないよねぇ、色んな意味で」


卯月「流石にうーちゃんでも自重するときはするぴょん……」


弥生「えっ」


卯月「えっ」




村雨「提督離してえぇぇ!なんで急に抱きしめてくるんですかぁぁ!」ジタバタ


提督「秘書艦なんだから一緒に遠征の報告を聞く義務があるでしょうが、それがあなたのお仕事でしょ」


村雨「もう分かったからぁ!聞くから離してぇ!」


提督「俺たちの仲の良さを見せつけるんだろ?自分でそう言ったんじゃあないか」


村雨「提督のバカあぁぁ嫌いいいぃぃ!!」ジタバタ


提督「俺は好きだぞお前の事」サラッ


村雨「ふえっ!?」


提督「村雨とちょっといいこと……してみたいなあ俺は」


村雨「やああぁぁぁ提督の変態ぃぃぃ!」


提督「俺が変態ってんならお前はさっきまでその変態を誘ってたんだぞ、つまりお前も変態だろ(暴論)」


村雨「私そんな子じゃないよおぉぉ!」


提督「でも俺はそんな村雨が好き」


村雨「ふええぇぇぇぇ!」




睦月(ほええぇぇ……)マッカ


如月(あらあら……妬けちゃうわぁ……)ウフフ


文月「フミィィ!司令官文月もぉ!」


長月「今日は諦めろ文月……」


皐月「ボクもそのうち司令官にあんなことされちゃうのかな……ど、どうしよ?ボクあんな耳元で囁かれて……わぁぁ……!」トリップ


卯月「あ、皐月が自分の世界に入っちゃったぴょん……こうなったら放っとくしかないぴょん……」


弥生「静かな分……卯月より、マシだと思う」


卯月「うびゃあぁぁ弥生が冷たいぴょぉん!?」


三日月「揃いも揃って自由すぎるよぉ……」


望月「どうでもいいけどお前らあたしの話全っ然聞いてないよなー?」


菊月「…………zzz」






―――――30分後






水無月「じゃーね司令官!また遊んでね!」


提督「おー、ゆっくり休めよー」




パタン……




提督「ふぅ、今度こそ今日の仕事、以上終わり!閉廷!」


村雨「閉廷!じゃないでしょおぉぉ!!」


提督「いやー終始真っ赤だったな村雨ぇ?攻められると弱いなんてかわえかわえ」ナデナデ


村雨「バカバカバカバカバカあぁぁぁ!!」ポカポカ


提督「あででで痛い痛い村雨さん痛いって、俺が悪かったから!村雨さん許して!」


村雨「豆腐の角に頭ぶつけて死んじゃえ――――――ッ!!」ベシベシベシ


提督「あぁ^~村雨のツインテビンタサラサラでいい匂いなんじゃぁ^~」


村雨「変態――――――――――ッ!!」




この後無茶苦茶お詫びデートした





白露「羨ましい……」←覚悟を決めてアプローチに来たがタイミングを逃した人





終わり



__________________



村雨


白露型のやたらと発育がいい三女。謎の村雨嬢。


鎮守府に新しく着任した艦娘を度々世話している頼れるお姉さん。

実際悩み事や相談を聞いてほしいという艦娘は艦種問わず大勢いるらしい。


一番大好き長女、大天使、ソロモンの悪夢という来いメンツに挟まれており、着任当初はあまり目立っていなかった。

が、最近成長と共に発育も良くなり、駆逐艦とは思えぬ色香を身に着けた。戦果もめきめきと上昇中。

それらを武器に提督へアピールしているが、今のところ指輪の約束以外に目立った戦果はない。



白露


白露型のやたら一番にこだわる長女。キャラの濃さも姉妹で一番?


鎮守府でも1、2を争うほどの元気っ子。長女とは名ばかりの天真爛漫さは見る者を飽きさせない。

とにかく一番であることにこだわっており、座右の銘は「2位は負けの1位」と豪語するほど。


提督に対しては相応にしおらしく、二人きりで星を見たいというロマンチストなデートを希望することも。


実は提督父の遠い親戚の娘なのだが、両者ともにそのことで気付いている様子はないし特に本編に絡める予定もない。


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提督と初期艦……と父兄参観?




―――――――2140、提督私室





提督「ぬわあああん疲れたもおおおおん」ベッドダイブ


吹雪「今日もお仕事大変でしたねー……」


漣「なんで毎日毎日こんな書類多いんスかねー……辞めたくなりますよ艦娘ー」


提督「お、じゃあ俺とのケッコンもなしになるがよろしいか?」


漣「よろしいわけねえだろぶっ飛ばすぞ」


提督「お、理不尽ゥー!」



叢雲「それにしても今日は疲れたわ」グッタリ


五月雨「書類の多い日に限って来客が多いんだもんねー」


電「しかも特に急ぎの用事でもないことばっかり……せめて日にちをずらしてほしいのです……」


提督「あー全くもってその通り……」






提督「で、なんでお前ら俺の部屋に平然と居座ってるわけ?」


電「司令官さんと一緒に寝たいのです」


漣「もうすぐ夫婦なんだから同衾ぐらい当たり前だよなあ?」


提督「ごーとぅーじぶんのへや」シッシッ


五月雨「疲れてるからって扱いがぞんざいすぎる!」ガビンッ


叢雲「ちょっと司令官構いなさいよ……」ユサユサ


提督「とっとと部屋に帰って寝ろ」ゴンッ


叢雲「ひんっ」


漣「うわ、眠気と疲労でムラキョンが珍しくデレたというにひでえ」


提督「もういいから静かに寝かせてくれよなー頼むよー」ゴソゴソ




――――――『~~~~~♪』ムネヒーメター オモイーヒートツー



提督「今度は電話かよ……」ゴソゴソ


吹雪「加賀さんの曲に変えたんですね……」


漣「CDとか限定版買ってるしよっぽど気に入ってんのな」


提督「加賀岬はいいぞ……」ピッ




提督「はい、小早川です……」



提督「……ってオカンか!知らん番号やったから誰か思うたわ」



吹雪「司令官のお母さんみたいだね」


電「時々お手紙出してるのを見かけるのです」


叢雲「電話もちょくちょくかけてるみたいよ」



漣「……やっぱご主人様に似てるんかなー顔とか」


五月雨「そう言えば提督のご両親って見たことないね」


吹雪「写真も見たことないからねー。写真をとる習慣がなかったとかなんとか」





提督「ああ、大丈夫じゃって、こっちは元気にしとるぃや」


提督「ちょいちょい電話しとんじゃけ分かろうが、これ以上電話料金増やせ言うんか」




吹雪「……よく分かんないけど、広島弁なのかな」


叢雲「司令官、広島出身なんだっけ?」


電「たしかそんなことを話してたような……」






提督「…………は?なんて?」


提督「ファッ!?おま、ちょ、それ……嘘やろ!?」


提督「え、いやそれはそうかも知れんけど……いやじゃけぇってわざわざ……」


提督「えぇ……(困惑)」




五月雨「…………なんだか会話の雰囲気がおかしいけど」


漣「ToLOVEる?とうとうToLOVEる発生なの?母親の前でラッキースケベイベントとか発生するの?」ワクワク


叢雲「なんで爛々と目を輝かせてるのかしらコイツは……」





提督「いや、こっちにも都合いうんがあるしよ……うん、今仕事忙しいし……」



提督「……は?そんなん今関係ないでしょ(半ギレ)」



提督「…………ファッ!?」




提督「やめてくれよ……(絶望)」




漣「あ、なんかご主人様の心が折れたっぽい」


五月雨「ぽい?」


吹雪「ぽい」


電「ぽいなのです」





提督「うん……うん…………分かった、たちまち説明しとくわ」


提督「……ああもう分かった、分かったぃや!ウチの子らにもちゃんとよろしく言うとくけん」


提督「……余計なお世話じゃホンマ」


提督「はいはい、はい……ん、ほなまた」



ピッ






提督「マジかよぉぉぉぉ…………!!」バフッ


吹雪「何か問題でも起きたんですか?」



提督「……親父とお袋が今度うちにくるらしい」


漣「…………結婚のご挨拶ですかそれは乙めでてぇ」


提督「ちげぇよ普通に遊びに来るだけだよ」


電「その時にやらないでいつやるのです?」


五月雨「思い立ったが吉日ですよ」


提督「お前らも悪ノリするのはやめなさい」



叢雲「それにしても急な話ね……?」


提督「親父とお袋、今仕事の関係で東京に住んでるんだけどよ。久々にまとまった休み取れたから、地元の友人に顔出しついでだそうだ」


吹雪「あ、やっぱり地元は広島なんですか」


提督「ああ、一時期東京にいたこともあるが」


漣「やっぱ田舎者とか言われたりしたんでしょうねえ悔しいでしょうねえ」


提督「やめろや「たちまち」が「とりあえず」の方言って知らなくて恥かいた俺の話は」


漣「ごめんなさい」



吹雪「…………で、ご両親はいつ頃来られるんですか?」


提督「明日」


吹雪「……早くないですか?」


提督「俺もそう思ったよ。おかしいと思って聞いたらよ、今新幹線に乗ってるらしいんだが……『今思いついた』んだそうだ」


漣「抜き打ちで家に来る姑みたいな話ですね」


提督「頼むからお前らはそんな意地の悪い人間に育たないでくれよ……」


電「司令官さんが意地の悪い人間の筆頭なのにですか?」


五月雨「電ちゃんの毒舌が切れ味を増していく……」



提督「はぁ……めんどくせえ」


叢雲「……どうしたのよ、ご両親と会うの久しぶりなんでしょ?なんでそんなに憂鬱そうなのよ」


提督「別に会うのが嫌なわけじゃねえんだよ……」




提督「ただ最近電話とか会って話すたびに見合いの話持ち込まれるのが面倒なだけでな……」



『は?』



五月雨「お、お見合いですか?」


提督「そうなんよ……こっちの事情をいくら説明してもちゃんと身を固めろの一点張りでな」


漣「え、でも今この鎮守府でガチガチに固められてるんとちゃいますのん?だって全員ケッコンするんしょ?この艦隊だけで何人嫁さんいるんすか」


吹雪「もう新しく固め直す余地なんてないんじゃ……」


叢雲「やっぱり一夫多妻っていう状態を認めてもらえてないのかしら……当たり前なんだけど」


提督「いや、別にそっち方面は問題じゃないんだよ……むしろ俺らの今の状況を容認してくれてすらいる」


吹雪「えぇっ!?」



提督「いや、何といいますかね?親父もオカンも昔から異常なほど物事に寛容でな?俺の教育方針も『好きなことやれ、ただし責任は持て』っていう放任気味な親でさ」


提督「この状況も説明したら『そうか、男冥利に尽きるな』の一言だけで終了だぜ?」


五月雨「……でも、認めてくれるならなんで……」



提督「そこは親父がな、『それでもあくまでカッコカリなんだろう?なら公的にきちんと妻帯者であることを表記できる女性を伴侶にしておいて損はない』とか言い出してさ……」


漣「むしろその女性がこの状況を受け入れてくれるかの方が大問題だと思うんですけど(名推理」


吹雪「十中八九司令官が軽蔑されて終わりそう……」


提督「大人ってのは皆そうや……外見だけで人の全てを知った気でいやがる……」


叢雲「アンタはそれだけで全て知れるくらい底が浅い人間でしょ」


提督「子供ってのは皆そうや……大人が傷つく言葉を平気で吐きやがる……」




漣「…………ご主人様的にはお義父さんの意見、どう思うんで?」


提督「難しい所だな……親父の意見は一理あるんだが、その俺のためにわざわざ見合いにくる女性の心情を思うとどうにもな」


電「断れないのです?」


提督「ちょくちょく断ってはいるが全部は無理だ。親父の仕事の縁で紹介してくれる人もいるし、そういうのを蔑ろにするのは親父の顔に泥を塗ることになる」



提督「まああまりにも性格に難があるとかっていうのはオカンが弾いてるみたいだが……」


叢雲「その辺きっちりしてるならむしろいい親なんじゃないかしら」


五月雨「良縁を紹介してくれるならいい人ですよね?」


漣「御両親も紹介された女性も悪くはないんや、うちのご主人様が特殊すぎるってだけで」


吹雪「そう考えるとこの状況を受け入れてくれるってだけで相当な聖人君子なんじゃないかな」


電「でも後から鎮守府の支配権を握ろうって魂胆かもなのです」


漣「支配権握ったところで運用できなきゃまず無理だと思うんですけど」


吹雪「運用できても私たちがストライキ起こせばいいだけだしね」


電「いざとなったら反逆して革命して司令官さんを返り咲かせるのです」



提督「なあお前ら、まだ見合い相手と結婚するわけじゃないし、そもそも今回相手がいるかもわからないから物騒な話しないで?特に電」


電「電は純粋に司令官さんが心配なのです」


提督「俺は君の純粋さが日を追うごとに消えていくのが心配なんだが」


電「電はそんな子じゃないのです!ただ嫌なことがあると少しピリピリするだけなのです!」


漣「言動がピリピリってレベルじゃないんですがそれは」


電「今度余計なことを言うと口を縫い合わせるのです」ヒソ


漣「アイエッ!?」




提督「…………不安だ」










―――――――翌日、0940 執務室





提督「はい電、これ大淀に持って行って」


電「了解なのです!」


吹雪「叢雲ちゃん、遠征部隊の指揮は任せたよ」


叢雲「任せなさいな」


吹雪「その間に書類作成しないと……」




五月雨「皆さんお茶ですよー」トテトテ


提督「おぉ、ありがとう」ウケトリ



五月雨「提督のご両親、お会いできるのがすごく楽しみです!」


提督「あんまり過度な期待はするなよ、本当に視察目的だからな。しかも一般人なら尚更、な」


叢雲「セキュリティの問題とはいえ、面倒な書類手続きが続くわねぇ……」


吹雪「でも大事なことだから」


漣「見学目的の一般人偽ってスパイ活動されてもごめんだしねぇ」


叢雲「そういうのは大体あきつ丸さんが見極めてくれるから平気よ」


提督「ま、どんなに強固に作ったつもりでも、人間が作る以上どこかしらに穴がある訳でね……」


漣「セキュリティにも穴はあるんだよな……」


叢雲「アンタの脳みそは既にウィルスに侵されてるようだけど?」


漣「大丈夫大丈夫最新のウィルス対策ソフト積んでるから」


叢雲「ほう、その心は?」


漣「一晩寝たらそういう事も含めて忘れてます!」キャピッ


叢雲「それメンテナンスじゃなくてフォーマットじゃねぇか!」タイキック


ゴッ!!


漣「アッ―――――――!?超絶美少女漣チャソのオーシーリーガー!!」


叢雲「せめてバックアップ取っとけバカ!」


漣「あーダメ!これダメ耐えらんない!お尻が二つに割れちゃう!!」


叢雲「元々皆等しく割れてるっつーの!」


漣「知ってるよそんなこと」マガオ


叢雲「…………」


ガスッ!ガスッ!ガスッ!


漣「い゛った!痛、痛いッ!ムラキョン連続は洒落になんねーから!」


叢雲「悪いわね、クソ真面目にやってんのよこっちは」


漣「いやあああムラキョンにお尻(物理的に)掘られちゃうううぅぅう!!」


叢雲「人聞きの悪い事言うなッ!!」ローキック


漣「いぎぃッ!?まさかの泣き所おぉ!!」


提督「お前ら喧嘩は他所でやってくんね?」


電「ちょっと席を離れただけで何なのですかこのバイオレンス空間は……」トコトコ


吹雪「あ、お帰り電ちゃん」


電「ただいま戻ったのです!」



提督「お帰り電、ちゃんと渡してくれたか?」


電「はいなのです!」


提督「それはそれは、お礼にジュースをおごってやろう」


電「9本でいいのです」


提督「謙虚だなーあこがれちゃうなー」




プルルルルルル……



提督「内線か……」



ガチャ



提督「こちら小早川」




あきつ丸『提督殿、あきつ丸であります』


提督「あぁ、どうした?」


あきつ丸『提督殿が仰っていた、ご両親と思われる男女が訪ねてきているのであります』


提督「了解した、こちらから出向こう。待っていてもらってくれ」


あきつ丸『了解であります!…………それと、もう一つお耳に入れたいことが』


提督「ん、なんだ?」




あきつ丸『もう一人、若い女性が同伴しているのでありますが……先のお話では説明がなかったので、どうすればよいか……』


提督「女性…………って」





提督「もう見合い相手連れてきたってことかぁッ!?」



吹雪「」ピシッ


叢雲「うそ……」ペンオトシ


五月雨「」


漣「行動が早スギィ!?」


電「えぇ……(困惑)」




あきつ丸『え、えっ……提督殿、お見合い相手とは、どういう……』


提督「すまんあきつ丸、詳しい話はそちらに出向いてからするよ……急いでいくから待っててくれ」


あきつ丸『あ、ちょっと、提督殿!?』


ガチャッ





提督「……さて、この中で俺と一緒に、いの一番で見合い相手の顔を見たい奴は挙手願う」




吹雪「う……ちょっと今回は遠慮したいです」メソラシ


電「い、電も心の準備が……」ウツムキ


漣「あたいはバッチコイやで!」フンゾリ


五月雨「五月雨も……うっかりコケてけがさせちゃいそうだし……」ニガワライ


叢雲「別に急ぐほどのことでもないでしょ、私は待ってるわ」ジムシゴト




提督「そうかー…………全員パスかー困ったなぁ」ボリボリ


漣「あたいはOKなんやで―――――――――ッ!!」


提督「お前が行くと喋り方の問題で相手が引きそうだからダメ」


漣「理由が人格否定レベルでひでぇ!」



提督「とにかく漣、お前はダメだ」


漣「ヤダ―――――――ッ!!」


提督「いやヤダってお前」


漣「やだやだやだ絶対ヤダッ!!漣ついていくでござる!絶対にくっついていくでござる!!」ジタバタ


提督「暴れんな小学生かお前は」


漣「やーだーやーだー!漣も一緒じゃないとやだッ!小生やだッ!!」ジタバタジタバタ


提督「…………」




提督「『少し静かにしろ』」



キィィィ……ン



漣「んむぐッ!?」


提督「『そこにお座れ』」



ペタッ



漣「ッ!?……ッ!!?」セイザ



提督「いいだろう、そこまでして俺に付いてきたいというのなら同行を許可する」


提督「ただし条件がある。素のお前は軍人としては素行不良に過ぎるから、相手に不快感を与える可能性がある。礼節を弁えた言動を徹底しろ。早い話が大本営でのお前の猫かぶりモードだ、分かるな?」


提督「もしそれを守れなかった場合、お前を一か月間存在しないものとして扱う、いいな?」


漣「ッ!!ッッ!!」コクコクコク


提督「よし、『立っていいぞ』」キンッ



漣「ふえぇぇ……」フラフラ


電「あんまり我儘言うからなのです……」


漣「いやだって、付いていきたいって言ってるのにアレはないっしょアレは……そら駄々こねますわ」


叢雲「今回は事が事だから慎重にならざるを得ないでしょ。司令官の人生どころか、この鎮守府、果ては海軍全体の評判に関わる話だもの」


吹雪「それにしたって流石にやり過ぎだとは思うけどね……」


提督「何とでも言え、俺達の印象ひとつで海軍の評判を落とすわけにはいかねぇんだよ」


五月雨「流石にお見合いどうこうで揺れる評判はないと思いますが……」


提督「人間どこから足元掬われるか分かったもんじゃないんだよ……万が一も可能性はつぶしておかねば……」



提督「……よし、行くぞ漣」


漣「アイアイサー!」


提督「…………『漣?』」キンッ


漣「ッ!……か、かしこまりました、司令官」



叢雲「相変わらずすごい効力ね……」


吹雪「傍から見たら私達も時々ああなんだろうねえ……」


五月雨「提督命令は原則服従なんだもんね……」


電「迂闊なこと喋れないのです……」






――――――1000、鎮守府正門前





提督「すまんあきつ丸、準備に手間取った」


あきつ丸「ああ、将こ……失礼、提督殿。お待ちしていました」


提督「すまんな……で、件の人物なんだが……」


あきつ丸「はい、そちらの憲兵詰所の奥でお待ち頂いているのであります」


提督「了解した、すぐに通してくれ」


あきつ丸「承りました」



漣「やっべ、今更ながら緊張してきた……」


提督「漣……分かってるな?」


漣「重々承知の上ですって!ていうか『御霊』に逆らえないの分かってるんでしょうが」


提督「分かってはいるがな……どうにも、不安が拭えん」


漣「え、漣そんなに信用ないんでございますか?」


提督「え、むしろ気付かなかったのか」


漣「サッザ泣きたい」





あきつ丸「お待たせいたしました。当鎮守府の最高指揮官……小早川提督をお連れしたのであります」




提督「……久しぶりだな。母さん、親父」




提督母「……元気にしとったか、輝幸」


提督父「碌に顔も見せんと……まあ、時期が時期じゃ、しゃあないわな」


提督「悪いな……」



提督「…………で、もう一人若い子連れてきたって聞いたけど?」


母「ああ、ちょっとトイレに行っとるよ。そのうち帰ってくるわ」


提督「さいで……」



父「……そっちの子は?」


提督「ああ、紹介するよ。ウチの鎮守府で働いてる艦娘だ」




漣「初めまして。呉第三鎮守府所属、綾波型駆逐艦、漣と申します」ペコ



母「まあまあ、礼儀正しい子じゃなあ!」


提督「普段はもっとお転婆なんだがね。流石にこういう場では自重するらしい」


漣(オメーがこうするように強いたんだろうがッ!)



父「そうかそうか、こんな子が輝幸の嫁さんになぁ」


母「前々から変わった子じゃぁ思うとったが、他にも仰山居るんじゃろ?」


提督「ああ」


母「……裏切ったらいけんよ。そんだけの人数受け入れるって決めたんじゃ、男やったら最後までやり通し」


父「そんだけの女に好かれるんは男として感無量じゃ。その幸せ、ちゃんと噛み締めぇ」


提督「肝に銘じとくよ」



漣(ご主人様のご両親……えらいフリーダムな人かと思ったけど、全然いい人じゃん。色んな意味で大らかだけど)





母「……で、もうその子は手籠めにしたんね?」


漣「えっ」


提督「」ズルッ





提督「久しぶりに会った息子にかける言葉がそれかッ!?」


母「なんね、まーだ手ぇ出してへんのぉ?ホンマヘタレじゃのぉ」


父「お前そんなんでこの先務まるんか……相手は何十人と居るんぞ、小さく纏まっとらんで男ならどーんと2、3人一度に抱かんかいな」


提督「こんのクソジジババどもぉ……!仮にも婚約者がいる前でまあズケズケと……ッ!!」


父「儂がお前ぐらいん時にはなぁ、母さん含めて20人とは遊んどったぞぉ」


母「もーお父さん、昔の話はええっちゃ!恥ずかしうて敵わんわ!」


父「いんやぁ、母さんはそん中でもいっちゃん別嬪さんじゃった!じゃけえ儂は母さん選んだんじゃけぇの!」


母「まーッ!お父さんッ!」


提督「実の両親の生々しい情事なんぞ聞きとうなかった……」


漣(あぁ、やっぱご主人様の親だこれ)



母「で、漣ちゃん言うたかいな」


漣「あっ、はい」


母「ウチの愚息とはどこまでいったんね」ズバッ


提督「うら若き乙女にストレートに聞くなクソババアッ!!」


漣「え、あ、あの、えと……」モジ


提督「お前も真面目に答えようとしなくていいからな漣……」



父「いやだからな?そんなんじゃ男は務まらんぞ輝幸ぃ、儂がお前んぐらいの時はなぁ、母さん入れて」


提督「その話つい今しがた聞いたわッ!てかジジイお前酔ってんな!?こんな朝っぱらから酒かッ食らって酔っぱらってやがんな!?」


父「儂ァ酔っとらんぞぉ!こんな水みたいな酒で酔うわけなかろうぐぁぁ……」フラッ


提督「いやもう目の焦点合ってねぇからな!?俺と目合わせてるようであってねぇからな!?……ってか、それ俺の酒コレクションじゃねぇかどっから持ってきやがったコラァ!?」


父「んぁぁ?そこの奥に転がっとったぞぉ……なんやら髪が紫でツンツンの別嬪さんが寝とってなぁ、その傍に」


提督「隼鷹貴様ァァァァァアアアア!!?ファッキューバード!!ファッキューバード!!また俺の秘蔵の地酒コレクション勝手に開けやがったなあんのアマ今度という今度は許さねぇぇぇぇえええッ!!」


母「アッハッハッハッハッハ!相変わらずお前は喧しうて敵わんなぁ!」ケタケタケタ


父「ほんにまあ、ようもそんなんで提督さんになれたもんじゃ、っぇえっえっえっえっえっえ!!」ゲラゲラゲラ


提督「誰のせいでこんなにツッコミ入れてると思ってんだ快楽主義者共ォォォォオオオ!!」ムガァァァァァ



漣(あぁ…………親子だわぁ…………)シミジミ






??「あの、小早川……くん……?」




提督「ァア!?今度は誰だこん畜生めッ!もう今更誰が出てきても驚かねぇからなッ!!」






??「…………久しぶり、だね小早川君……ううん、輝くん」





提督「…………文華?」



漣(あぁ、家族コメディの次は王道ラブコメざんすね……漣は空気ざんすかそうすか……)











提督「それにしても綺麗になったなぁ、文華……」


文華「輝くんこそ、立派になったね。海軍のお偉いさんだもんね」


提督「俺なんかまだまだだよ。未だに部下との接し方も分からん不器用な野郎だ」


文華「その割には、その子……すごく慕ってくれてるみたいだけど?」フフ


提督「ははは……変わった奴だよこいつは。俺みたいな若輩者を、えらく気に入ってくれたみたいでな」


文華「素直じゃないね、相変わらず」


提督「性分だよ、生憎な」





漣(アーシの入る余地一ミリもねえええええぇぇぇぇぇぇぇッ!!!)ズギャァァァァン




漣(なんなの!?さっきからこの二人の間で流れてる甘酸っぱい空気は何なの!?漣そろそろこの空気に耐えられなくなってきたんですけどみたいな!場違いにも程があると思うんですけどみたいな!個人的には空気読んで二人きりにしたいのに『御霊』の所為でこの場から動けないんですけど的なッ!?)プルプルプル


漣(つーかこのほんわかおっとり美少女とご主人様はどういう関係なのッ!?ご主人様女とは無縁の人生とか言ってなかったっけ!?多分話の断片を繋ぎ合わせるに幼馴染かなんかだっていうのは分かるんですがそれにしてもこんな可愛い子が身近にいるの差し置いて女日照りとかぬかしやがったんかこの無自覚クソリア充めその節穴も節穴の目ん玉ほじくり出したろかいッ!?)ワナワナワナ






提督「にしても驚いたよ……まさか文華が出てくるなんてな」


文華「ふふ、ぼくこれでも結構アピールしたつもりだったんだけど。気付いてなかった?」


提督「……すまん、長くいるとどうしてもな……妹みたいな存在にしか見れなくてな」


文華「知ってたよ。そのうえでアピールしてたんだもん。あれだけ気付かれないと逆に笑えて来ちゃったけどね」


提督「そっかぁ……まさかお前がなぁ……」





漣(このクソご主人様があぁぁぁぁぁ!!ふっざけたことぬかしてんじゃねぇぞスカポンタンがぁぁぁぁあああ!!)


漣(つか冗談だろお前!?この文華って人にめっちゃアピールされてて全く気付かないってそれどうなんすか!?)


漣(お前こんだけの美少女にだよ!?正統派の黒髪ストレートで!?神様が気合い入れ過ぎて造形したぐらいの女のアーシから見ても思わず見とれるぐらいのすんごい可愛い顔立ちで!?ご主人様と同い年とかいうわりにデンデンよりちょっと大きいぐらいのロリ体型で!?)


漣(そのうえボクっ子!ボクっ子ですってよ奥さんどんだけ属性過多だよッ!クソッ、オモローなベシャリ程度が武器のアーシじゃとてもじゃねぇけど太刀打ちできねぇよッ!誰かニフラム!ニフラム唱えてこの子眩しすぎて直視できねぇよ!ああでもこっちの方が圧倒的に美少女レベル高すぎてニフラム効かねぇ!むしろこっちが浄化される勢いッ!!)


漣(漣、何でこの空間にいるんスかねぇ……?)




提督「……でも、本当にいいのか?お前はそれで」


文華「…………」



漣(……は?)ピクッ



提督「俺は既にこの鎮守府で何十人……100人以上の嫁さんがいるのに等しい状態だ。それこそ皆納得するような大人の女性から、誰もが警察に通報するような幼気な少女までありとあらゆる子を、だ。お前はそんなだらしない男についてきていいのか?」


文華「……ぼく、は」



漣(おいちょっと待てご主人様……)ピキッ



提督「お前の気持ちを否定するわけじゃない。文華が俺を好いてくれる気持ちは凄く嬉しい、身に余る光栄だ」


提督「でもさ、だからこそ、お前にはもっと……そう、俺なんかよりも幸せにしてくれる男がいるはずだ。法律無視して女侍らせてるクソみたいな男より、もっとお前を……文華だけをしっかり見てくれる奴がいるはずだ」


提督「…………それでも、お前の気持ちが変わらないなら」



提督「俺はお前を受け入れる」






漣(…………ハァァア!?)ビキィィッ







文華「……ぼくは、ずっと、輝くんが好きだよ」


提督「……だがな」


文華「今も、昔も、これからも変わらないよ!ぼくが好きなのは輝くんだけ、輝くん以外の人なんて考えられないよ!」


提督「文華…………」





漣()ブチッ




漣「――――――ッッだぁぁぁぁぁぁぁアアアアアアア!もうこれ以上黙っていられるかァァァァァアアアアアッ!!」ズガァァァァァァン


文華「!?」ビクッ


提督「ンなァアッ!?」




漣「おいコラご主人様……もといクソ提督ゥウッ!!」


提督「おいおい曙ッ!?曙の口調が移って……ていうかお前御霊の命令はどうしたッ!?」


漣「黙れこのウルトラC超弩級クサレキ○タマァ!!さっきから黙って聞いてりゃ何様のつもりじゃクソ提督しまいにゃぶっ飛ばすぞコラァ!」


漣「『お前のためを思ってー』だの『他にもっとふさわしい男がー』だの……結局自分に保守的なだけでちっともその子の事見てねぇじゃねぇかアンドロメダ級ヘタレ野郎がよォォォォオオオッ!!頭に血が上り過ぎて御霊の命令なんぞ糞食らえじゃアホンダラァァアア!!」



提督「……漣お前」


漣「もー我慢の限界っすわ!この後軍法会議だろうが左遷だろうが銃殺刑だろうがどうなってもいいけどこれだけは言わせてもらうしッ!」





漣「…………ご主人様さぁ……本当にその……文華さんだっけ?を思って言うとか妄言ぬかすならさァ……」



漣「……ちゃんと目を見てやれよ莫迦野郎」




提督「……!」




文華「……っ」ツゥ……



提督「文k」



漣「今のご主人様に文華さんに近づく資格はねぇ」バッ


提督「漣ッ……」


文華「漣さん……」



提督「漣……どいてくれ」


漣「どかない」


提督「どくんだ漣」


漣「絶対やだ」


提督「漣ィッ!!」


漣「『御霊』に命じたらいいじゃん……チート使って、漣黙らせりゃいいじゃん」


提督「……ッ!!」


漣「出来る訳ないよね。そんなの、ただのズルだもんね」



漣「そんなことしたら、漣……本当にご主人様の事軽蔑するよ」


提督「……」ギリッ




漣「なぁご主人様……アンタそんな人だったか?ウチらの目も見て話せないような……そんなヘタレだったか?」


漣「違うでしょうが……ご主人様はさ、もっと毅然としてて、厳しくて、優しくて……どんな時でも、漣達の目を、まっすぐ見つめて来てた」



ウチらはそんなご主人様に惚れて、付き従ってきた。


でも、今のご主人様は……ただのヘタレでしかないよ。



提督「お前に何が」


漣「ご主人様の目ッ!」



漣「……自分に嘘ついて、傷ついてまで……そんなに怖いのかよ……」


提督「……」




漣「……そんなんじゃ、ウチらを全員愛するなんてできる訳ねーだろ……」


漣「……ガッカリ、させんなよ……っ」ポロッ





提督「ッ……!」ギリッ





ガバッ






文華「……輝くん……っ」グスッ


漣「……痛いっつの、加減しろばか……」スンッ





提督「悪い、漣……目ぇ覚めたわ」


漣「寝ぼけすぎだっつの……顔しっかり洗えや……」




提督「あぁ、腹決めた。二度と迷いなんかしねぇ」


提督「文華、もう一度聞く。本当に、俺でいいんだな?」



文華「……ぅん、輝くんがいい……輝くんじゃなきゃヤダッ!」


提督「わかった」ギュッ



提督「文華、俺はお前を生涯かけて全力で愛する。ついて来い」


文華「ぅん!うんっ!」


提督「……吉川文華さん、俺と結婚してください」


文華「はいッ……!」









漣(……ぬぁぁぁあ柄じゃねぇこと叫んでしもうたぁぁぁぁあ……)ゲッソリ


漣(こんなの漣の役割じゃねーってのによぅ……それもこれもご主人様が変なところでヘタレるから悪いんじゃ)


漣(ウチら艦娘には強気なのに外の人間だと途端に尻込みするって内弁慶にも程があんだろJK……)





漣(一生愛してくんなきゃ割にあわねーッつの……)ヘヘ









――――――――1100 執務室





提督「…………というわけで、俺の公式上の嫁さんになりました、吉川文華さんです」


文華「ふ、ふつつかものですが、よろしくおねがいしみゅッ!?」ガリッ




文華「舌噛んだぁ……」ナミダメ



『あざとすぎる……!』




その小動物的可愛らしさと狙ったようなあざとさで、婚約者吉川文華はすんなりと鎮守府の人間に馴染んだそうな。








漣「へーいご主人様ー漣が愛のキューピッドしてあげたんだからなんか奢って☆」キャピッ


提督「今晩二人きりで同衾とかじゃダメか?」


漣「…………それでいいよ、ばか」ボソッ





おわりやがれ




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吉川文華



小早川輝幸提督と同い年の幼馴染。今回お見合い相手として登場、そのまま婚約者という圧倒的スピードで突っ走ったマッハシンデレラ。ボクっ子。


幼稚園からの付き合いで、いつも一緒に遊ぶうち自然と淡い恋心を抱くように。

その愛くるしい容姿で同級生男子のハートを鷲掴みにし、両手で収まりきらないほどの告白を受けたがすべて断ってしまう程度には提督に一途。周囲からも応援とも呆れともつかぬ生暖かい目で見守られていた。


同じく提督の幼馴染である翔鶴、瑞鶴とは年の離れた姉妹のような関係。二人の提督への恋も応援しているが、一番は譲りたくないと思っている。



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こぼれ話 提督の一日ちょこっとだけ






――――――――0500、提督私室





提督「……朝か」



いつもと変わらぬ呉第三鎮守府の一日。小早川提督の朝は早い。



提督「ふぁ……ねみ」



日の出とともに目を覚まし、微かに残る眠気を振り払うようにベッドから起きる。


顔を洗い、身支度をし、いつもの軍服に袖を通す……というわけではなく。



提督「さて、走りますか」



小早川がまず袖を通したのは、吸汗性の良いランニングウェア。


朝の早いうちから、鎮守府の外を軽くジョギングするのが彼の毎朝の日課であった。





提督「流石に寒くなってきたな……」タッタッタ……



今年は残暑が長引き、ようやく顔を見せた秋の初め。朝晩は随分と冷え込むようになり、吸い込む空気は乾燥しており、喉がひりつく。


そんな中でも小早川はペースを乱すことなく、鎮守府周辺の街を走っていた。




??「……あ、おーい!司令かーん!」タッタッタ


提督「んぉ?」



自身を呼ぶ声に振り返ると、後ろから見慣れた顔が走ってくるのが見えた。


それも3人。小早川は一度足を止め、彼女らが追い付くのを待つ。



提督「おう、おはよう」


長良「司令官おはよ!」ハッハッ


五十鈴「ちょ、長良ッ……アンタ、速すぎ……ッ!」ハァッ……ハァッ……


名取「ふえぇぇ…………」ゼェ、ゼェ



長良型軽巡……長良、五十鈴、名取である。


この3人も、早朝のランニングを日課としている。小早川と途中で合流し、一緒に走るというのも珍しくなかった。



提督「おーおー、息切れしちゃってまあ」


長良「もー、二人ともだらしないなぁ……」


五十鈴「あ、アンタみたいなッ、体力バカと、一緒にしないで頂戴……ッ!」ゼェッゼェッ


名取「長良姉さん……置いてくなんてひどい……」ゼェ、ゼェ


提督「まあ丁度自販機があるし、少し休憩するか。せっかくだから奢るぞ」


五十鈴「そうしてもらえると助かるわ……ほら名取、水飲みましょ」


名取「はいぃ……」



それぞれスポーツドリンクや水などでのどを潤し、軽くストレッチを行った後再び走る。今度は人間である小早川もいるため、ジョギング程度に抑えて。



提督「最近調子はどうだ」


長良「うん、絶好調!」


五十鈴「まあまあね」


名取「わ、私も、変わりなく……」


提督「そっかそっか。お前たちが頑張ってくれるから、最近は沖合にも滅多に深海の奴らが出なくなったって、漁師の人らが感謝してたよ」


五十鈴「ま、この五十鈴にかかれば当然ね」フフン


名取「私は、特別なことは、何も……」


長良「えー?一番頑張ってるの名取じゃん。特に最近は戦ってる最中なんて目がぞっとするほど鋭くなるんだよ、もう歴戦の軍人って感じ」


名取「そ、そんなことは……」


提督「名取は頑張り屋さんだからな!おかげで魚の供給も安定し始めてるみたいだし、お前たちのおかげだ!」


名取「あ、あり、がとう……ございます……」


五十鈴「あらら、真っ赤になっちゃって」フフ


提督「名取は可愛いなあ」


長良「司令官私はー?」


提督「長良もかっこいいぞー」


長良「可愛いって言ってよー!」



五十鈴「…………」


提督「……いつもありがとうな、五十鈴」ボソッ


五十鈴「……どういたしまして」ボソッ





ジョギングから戻った小早川はシャワーで軽く汗を流し、軍服に着替えた後食堂へ向かう。



天龍「よー提督、おはようさん」


摩耶「よっ、てーとく!」


木曾「良い朝だな」


提督「おう、おはよう」



鎮守府の朝は早い。まだ6時前にも関わらず、廊下は朝支度を済ませた艦娘達でにぎわっている。



初雪「司令官おあよー……」ムニャ


提督「低血圧なのはわかるがもうちょっとシャキッとしろ初雪……」


望月「ぁー……朝飯食うのもめんどくせぇ……」


提督「お前はそのうち起きるのもめんどくさがりそうだな……」


三日月「もっちー起きろーッ!」ガンッ


望月「ほげっ!?痛ったいな何すんだよ三日月ッ!」


三日月「あなたが今にも寝そうだからたたき起こしたのッ!」


望月「だからってフライパンで殴るこたーねーでしょうがよぉ!?つかどっから持ってきたんだそれ!」


提督「色々すげえよミカは……」ドンビキ




0600。食堂には夜間警戒や遠征出撃に付いた艦娘以外のほとんどが集まっていた。


食堂は広々とした大部屋に、長テーブルや円卓、カウンター等が設置されており、各々自由なスタイルで食事をしている。


姉妹艦数人で食べる者、任務の打ち合わせを兼ねて食べる者、食事の早食いで競い合う者。非番の艦娘は他に比べて食事のペースは多少緩やかだろうか。


忙しなく行き交う姦しい存在をすり抜け、小早川はキッチンで料理を拵えている一人に声を掛けた。



提督「やあ、龍鳳」


龍鳳「あ、提督!おはようございます!」



龍鳳。この艦隊の主計を担う艦娘の一人だ。甘口の料理を得意としており、主に駆逐艦の子たちに人気がある。


他に鳳翔、瑞鳳、白雪に秋津洲が主だ。海外艦も何人か手伝いに来るし、足柄のカツカレーは主に水雷屋たちの間でゲン担ぎメニューとして不動の人気を誇っている。



提督「おはよう。今日も忙しそうだな」


龍鳳「これくらいへっちゃらです!あ、今日は何になさいますか?」


提督「今日は焼鮭定食、食後に濃い目の緑茶を。あと生卵もつけてくれ」


龍鳳「かしこまりました、少々お待ちください!」



龍鳳が厨房の奥へ引っ込み、料理を持ってくるのを少し待つ。


と、提督は不意に後ろから誰かに肩を叩かれ、そちらを振り向く。



龍田「提督、おはようございます」



そこには天龍の妹、龍田が笑みを浮かべて立っていた。相変わらず気配を気取られず近づくのが得意らしい。



提督「おはよう龍田。前も言ったが、忍び足で俺に近寄るのは心臓に悪いからやめてくれ」


龍田「あら、私は普通に近づいただけなのだけど~」


提督「そうですか……で、何か用事か?」


龍田「ふふっ、食堂で用事も何もないと思うけど~」



提督はそれ以上口に出すことはなかった。彼女の言いたいことは大体察した。



提督「……向こうの二人席でいいか」


龍田「そうね~、まあまあかしら~」



全く、曙や満潮とは違ったベクトルで素直じゃない奴だ。提督は胸中でそうつぶやいた。






提督「さてと……」


龍田「お仕事の時間ね~」



朝食を終えた小早川は、龍田と共に執務室へと歩を進めていた。


艦娘の大半は、すでに今日の演習や遠征に出た後であり、鎮守府は一気に静かになっていた。



提督「……ところで今日の秘書艦って龍田だっけ?」


龍田「いいえ~?今日は時雨ちゃんと秋雲ちゃんじゃなかったかしら~」


提督「……なんかこっちに用事?」


龍田「提督とお話しする用事~」


提督「今日は非番で?」


龍田「お昼からよ~。朝方は特にやることもないし、天龍ちゃんは駆逐艦の子たちに特訓とかいって引っ張られていっちゃったし~」



ならば自室で過ごすなリ、他の艦とコミュニケーションをとるなリ、色々と暇をつぶす方法はあるはずだ。


それなのにわざわざ提督についてくるという龍田に、小早川は思わず苦笑いを浮かべてしまった。



提督「実は構ってちゃんですよねあなた」


龍田「何をふざけたことを言ってるのかしら~」ニコッ


提督「にやけてるぞ」


龍田「あら?」サワサワ


提督「嘘だゾ」


龍田「…………死にたい?」


提督「逆に聞くけど本気で死んでほしいのか?」


龍田「……分かってるくせに~」



…………単に、素直じゃないだけなのだ。







0900。本日の秘書艦である時雨、秋雲と共に書類作業に取り掛かる。




時雨「提督、この書類なんだけど……」


提督「……ああ、これはここをだな……」



白露型駆逐艦、時雨。雨の名を関する影響か、白露型は揃って雨が好きらしい。


特に時雨はその傾向が顕著だ。落ち着いた言動と儚げな雰囲気、そしてどこか艶めかしい背徳感を伴った色気を持つ不思議な雰囲気の子。それは雨の日になると一層幻惑的であり、一種の凄みすら感じられる。


勤務態度も真面目、出撃すれば立てる武勲数知れず。しかし駆逐艦らしくまだ甘えたがりなところがあるなど、なかなかギャップの激しい子でもあった。




秋雲「ふむ……提督と艦娘のオフィス風景……今時珍しい一本芯の通った上司と、それに突き従う忠実な部下……ッぁあー、いいねー捗るッスねー!ラフ起こしますか!」



……その傍ら、執務そっちのけでスケッチブック片手に小早川と時雨……正確に言えば、二人の態勢を大まかに書き残している艦娘が一人。



陽炎型19番艦、秋雲。絵をかくのが趣味の自由奔放な艦娘だ。


暇さえあれば、否、暇でないときでさえスケッチブックを取り出し、何かを描いている。絵心自体はあるらしく、小早川の執務室にも彼女が描いた風景画が額縁に入れられ飾られている。


が、それはそれ、これはこれだ。執務中に絵を描くというのはどういう了見か。



提督「秋雲、仕事中は絵を描くなって前にも言ったろ」


秋雲「えぇー、でも提督だって秋雲のイラスト喜んでくれたじゃん?アレだって執務中に描いてたやつだし」


提督「あれは見つけた時にはほぼ完成してたから、多少は目を瞑ろうというだけの話だ。二度目はもう許さねえからな~?」


秋雲「だって、あたしがいいなって思った構図とかは、その時その瞬間にしか存在しないんだよ!刹那の風景を切り取って絵にするんだよ、そこが絵のいいところなんだよ!?ねぇ~時雨も分かってくれるっしょこの気持ちぃ?」


時雨「仕事中に趣味を持ち込むのは誰だっていけないと思うよ……」


秋雲「貴様は祖国を裏切った!」


時雨「祖国云々はよく分からないけど、駄目なものは駄目だよ秋雲」


秋雲「うえぇぇ~そんなぁ~」



時雨の同意が得られないと分かるや、大仰に泣き真似をして見せる。ご丁寧にポケットから取り出した目薬を挿し、涙を作るという演技派ぶりまで見せつけてくれた。



提督「嘘泣きしても駄目だ」


秋雲「いいじゃん提督のケチー!」ブーブー


提督「いいから仕事してホラホラ」


秋雲「せめて何かご褒美を!目標になるものを下さい!」


提督「伊良子あんみつ引換券5枚」


秋雲「交渉成立ゥ!」カリカリカリカリカリカリ



好物の甘味が報酬と聞いた途端、脇目も振らず書類仕事に取り掛かり始める。まったく現金な奴め。





時雨「…………ねぇ、提督」


提督「ん、どうした時雨」



時雨が何やら小早川の服の裾を遠慮がちに掴み、上目がちに見つめてくる。その仕草ひとつとってもやたらと色気を漂わせるようで、小早川の心臓は思わず半音高鳴ってしまう。



時雨「……僕には」


提督「え?」



時雨「僕には、ご褒美……ないのかな」



その遠慮がちに開かれた口から紡がれた言葉は、小早川の庇護欲とも劣情ともつかぬ感情をたやすく揺さぶった。



提督「……今度一緒に、街に行こうか」


時雨「ぇ……それって」


提督「…………俺みたいなおっさんじゃダメか?」


時雨「そんなことないよ、凄く嬉しい……嬉しいよ……」ギュッ



小早川の言葉に嬉しさを隠しきれなくなったのか、時雨がこれまた遠慮がちに抱き着き、小早川の胸に顔を埋め擦りつける。


そのいじらしくも愛らしい仕草。あまりにも不器用な甘え方。


その全てが小早川の理性にヒビを入れるのには十分すぎた。もはや執務など投げだし、今すぐこの少女を抱きしめてやりたい衝動に駆られる。




秋雲「……おーいお二人さんよ、人にばっかり仕事させて自分らはイチャコラとかいい御身分ですな、えぇ?」



横に秋雲がいなければの話だが。



秋雲「いいよいいよ、あたしはあんみつだけで……お二人はどうぞお気になさらず、オサレして逢引き行きゃいいじゃないですか、えぇいいと思いますようん」


提督「いや、悪かったって秋雲」


秋雲「んぁあ仰らないで、あたしは絵描き。でも絵描きなんて肩書だけで恩恵はないしよく修羅場になるわ、すぐヒステリックになるわろくなことはない」


提督「いやそこまで自分を卑下することもないだろ……今度埋め合わせするから」


秋雲「いいんですいいんです、どうせ秋雲なんて……」



言葉の端々から漏れ出る不満。遠慮しているようで文句が見え隠れ。なるほどへそを曲げるとはこのことだ。



提督「……デッサン」


秋雲「え?」


提督「今度俺の都合がいいときに、デッサンモデルやろうかなって」


秋雲「……マジで?いや、有難いけどなんで急に」


提督「そりゃお前、いつも目を盗んで描くのなんて艦娘ばっかりで、男の体型ってなかなか見る機会ないだろ?単純にスキルアップにつながればって」


秋雲「すっげぇ嬉しい」


提督「あ、そういえば油絵も始めたんだよな?機会があったら個展でも開いてみるか?」


秋雲「よろしいので!?」


提督「まあ当てがないわけでもないしな。最悪鎮守府の一般公開の日にブース設ければある程度人は見に来るだろ」


秋雲「あなたが神か……」



一点両手を組んで小早川に向かって拝みだす。つくづく現金な奴だ。



提督「ただし絵を描くのはプライベートの時だけだ。もし業務中こっそり描いてたらこの話はナシ。いいな?」


秋雲「はい!」



そうと決まれば、と再び机に向かい、先ほどの2割増しで執務をこなし始める。普段からあれの半分でもやってくれれば、と思わないでもないが、流石に口に出すのはやめておいた。



提督「さて、俺もやりますかね」コキッ


時雨「うん、僕、コーヒー淹れ直してくるね」



柔らかな日差しが差し込む執務室。慌ただしくも静かな時間がそこにあった。




――――――1200、食堂




提督「流石に静かだな……」



お昼時。何か特別な催し物やアクシデントがない限り、この時間帯の食堂は静かなものである。


人もまばらだ。鎮守府で内務作業をしていた者、単に非番の物。そのせいか厨房で料理を行う艦娘達も暇そうにしていた。


そんな中、小早川はテーブルを拭いていた艦娘に声を掛ける。



提督「や、足柄」


足柄「あら提督、お疲れ様!」



重巡洋艦、足柄。器量の良さそうな顔立ちに、タイトなスーツ風の服に身を包んだ艦娘。


綺麗な顔とは裏腹に、口を開けば勇ましさが目立ち、飢えた狼とも称されるほどの勝利への執心。恋愛にはまるで興味を示さないストイックな姿勢。


しかし家事炊事は人並みにこなせるので、たまに暇なときはこうして食堂を手伝ったりもしている。



足柄「私に声を掛けたっていう事は、そういうことね?」


提督「ああ、今日はしっかり食べたい気分でな。カツカレー、二枚で」


足柄「はーい、ちょっと待ってて!揚げたてを持ってくるわ!」



足柄の得意な料理は揚げ物だ。以前ゲンを担ぐために自分でカツを揚げたのがきっかけで、少しずつ料理の楽しさにハマっていったらしい。


こと揚げ料理に関しては素晴らしいの一言に尽きる。衣はサクサク、中はしっとりといい塩梅の揚げ物を作ってくれるのだ。これが鎮守府特製の間宮・鳳翔カレーの上に乗せられると、もはやその美味さは冒涜的と言わざるを得ない。


かくいう小早川も、彼女の作るカツカレーが好物であった。しかも今日は豪勢にカツを2枚乗せである。


これを食べると、足柄の元気を分け与えられたようで、その後の執務が何となく捗るような気がするのだ。



提督「……さて、どこに座るか」



駆け足で厨房に引っ込む足柄を見送った小早川は、自身の据わる場所を見繕おうと部屋を見回す。



提督「お?」



およそ七時の方向を向いたところで、8人掛けの長机で昼食をとっているグループが目に留まる。どうやら近くから予備の椅子を持ち出し、詰めて座っているようだ。



提督「ふむ……」



主に海外艦のグループらしい。戦艦をメインに、重巡や空母が仲良く談笑している。


いや、あそこにいるのは大和だろうか。するとその横にいるのは武蔵か。日、独、伊、英、米。ざっと見ただけでも錚々たる顔ぶれだ。


随分と話に花が咲いているようだ。お喋りに夢中で小早川にも気づいていないらしい。



提督「…………」



小早川はふと、彼女たちの傍で自分が聞き耳を立てていたことに気付くとどうなるか、反応を見てみたくなった。


幸い彼女たちが据わっているのは端の方で、洒落たインテリアや観葉植物をあしらった間仕切りを挟んでこちら側に、4人掛けのテーブルがある。


小早川は気付かれぬようそのうちの一つに腰掛け、料理を待つ間彼女たちの会話に耳を傾けることにした。




Bismarck「やっぱり日本のカレーは美味しいわね!毎日でも食べ飽きないくらいだわ!」


Prinz「本当、おいしいですよねー」


Warspite「もう、Ms.Bismarck、Ms.Prinz?食べながら喋るのはマナー違反よ」


Graf「そうだぞ、ビスマルク。少しは落ち着いてだな……」


Bismarck「もう、ごめんってば。グラーフはともかく、貴女にまで注意されるのはちょっと癪だもの」


Warspite「あら、最近は怒らないのね。身の振り方が分かってきたのかしら、つまらないわ」


Bismarck「その神経を逆なでするような物言い、本当根っこは二枚舌紅茶狂い国家の艦よね……」


Warspite「この程度のジョークも流せないなんて流石生真面目ジャガイモ国家の艦ね」


Bismarck「貴女……」ピクピク


Prinz「まあまあお二人とも……それにしても、改めてみるとすごい面子ですよねー」


Roma「本当……昔はいがみ合ってたのもいるけど、今じゃこうして一緒にテーブル囲ってるんですもの……」


Aquila「うふふ、これもある意味『腐れ縁』ってやつなのかしら」


Iowa「wonderな話よね……それにしてもこのCurry、意外とBeerにも……ん、んぐっ……ぷぁは!合うじゃない!」


Bismarck「いや、貴女ちょっと待ちなさいよ!?何昼間からお酒飲んでるのよ!」


Iowa「Noproblem!今日は非番なの!」


Zara「いやだからって昼間から……」


Pola「まーいいじゃないですかザラ姉様、ポーラだってほらー」トプトプトプ


Zara「あなたはお昼から出撃だからダメーッ!」トリアゲ


Pola「んぁあ、そんな殺生なぁ……」ヨヨヨ


武蔵「まあ、我々戦艦は中々活躍の場が少ないからな……大規模作戦でもない限り」


大和「そうよねえ……ちょっと物足りないような」


Bismarck「提督はそこら辺分かってないのよ、私達戦艦をもっと積極的に使っていけばいいのに」


Graf「そんなことをしたら資源がいくらあっても足りないだろう」


Prinz「そうですよビスマルク姉様、艦隊の華である戦艦は、来るべき時まで後ろでどっしり構えていればいいんです!」


呂500「相手の親玉と戦うためのお膳立てするのが、ろーちゃん達の役目ですって!」


Bismarck「もう、褒めても何も出ないわよオイゲン、ろー」


Prinz(御し易くて助かるなぁ)


呂500(最近ビスマルク姉さんの扱い方が分かってきたって)モキュモキュ




提督(凄まじいまでに濃い面子だなぁ……大和武蔵が霞んで見える)




Warspite「でもBismarck、貴女Admiralのこと、嫌いじゃないって言ってたじゃない」


Bismarck「うっ!?そ、それはあくまで人として、上司としてであって……」


Littorio「あら、いつも提督の事目で追ってるのに?」


Bismarck「……いつから見てたの」


Prinz「みんな知ってますよー」


呂500「誰の目から見ても明らかですって」


Bismarck「うぅぅ…………貴女達まで」



Iowa「でもWarspite?貴女もAdmiralが好きなのは知ってるんだからね」


Warspite「えっ!?あ、Iowa!?」


Iowa「日本語の勉強して、遠回しにProposeしたんでしょ?『月が……綺麗ですね』って」


Warspite「あ、あうぅぅ……」


Prinz「あ、それ知ってます!夏目漱石ですよねー」


Graf「日本の言い回しは詩的で面白いな……で、返事は?」


Warspite「『ああ、良かった。俺にしか、綺麗に見えないのかと思っていたよ』って……」


Aquila「きゃーっ!やだ、素敵!」


Iowa「Admiralって結構気障なところあるのね……でもいいなー、そういうこと言われてみたい」


大和「羨ましいですねー」




提督(あの告白は恥ずかしいから誰にも言うなと……おのれWarspite)




Bismarck「ヤマトはどうなの?ムサシは?」


大和「時々街へ連れて行ってくれますね。お食事したり、映画を見たり……」


武蔵「私も概ね大和と同じだな。たまに姉と提督と3人で遊びに行くこともある」


Warspite「Admiralったら、両手に綺麗な花を侍らせるのが好きね」


Graf「この間も、確か第七駆逐隊……だったか。4人連れで買い物に行ったそうだ」


Iowa「Meはナカ=チャンのGuerrillaLiveを手伝ったって聞いたわ」


呂500「ろーちゃんは提督と一緒に海釣りに行ったんだー!」


Littorio「私は提督と一緒に、お料理を作ったりします」


Roma「私もそれに付き合ってるわ」


Pola「提督とリットリオ姉様たちのお料理美味しいんですよねー、ワインが進んで進んで」


Zara「ポーラ……?」ジロッ


Pola「ヒエッ」



Warspite「それにしても、みんなAdmiralのこと慕っているのね」


Bismarck「……そりゃあ、ねえ」


大和「提督ったら、一人二人じゃ満足できないって自分で言うんですもの」


武蔵「ああ、一人ひとり口八丁手八丁。手を変え品を変えて口説いてくる」


Littorio「イタリア男も形無しですね……」


Roma「浮気性ってレベルじゃないわよアレは」


Iowa「でも嫌いじゃないんでしょ?」


Roma「…………うっさいわね」


呂500「否定しないのは肯定も同じだって」


Roma「ちょっと黙ってなさいよ!」




Prinz「…………結局のところ、皆Admiralさんのこと、好きなんですよね」


Bismarck「……まあ、ね。甲斐性はあるんですもの、あの人」


Warspite「私たちのこと、なんだかんだ言ってもきちんと考えてくれるんですものね」


Roma「私は別に、あいつに気にかけられたって……」


Littorio「あらローマ、頬を緩ませながらそんなこと言ったって、説得力ないわよ?」


Roma「えっ、嘘」サワサワ


Littorio「えぇ、嘘だもの」


Roma「か、カマ掛けたのね!?」


Littorio「そうでもしないと素直に言わないんだもん」


Roma「姉さんこそ、提督言ってたわよ、片付けの出来ない人はどうかって」


Littorio「えっ!?」


Roma「姉さんの今の部屋見せたら、提督どういう反応するかしらね」


Littorio「ふえぇぇ……!」




提督(今度抜き打ち検査でもしてみるか……)




一通り海外組の会話を聞いた小早川は、一先ず諍いもなく仲良くやっていることを知って安堵した。


一世紀前の大戦、その中で戦った者同士。何かしらの軋轢を抱えていてもおかしくないと思っていた。


そのことがきっかけで再び争いが起きてしまわないか心配だったが、一先ずは杞憂終わって良かったと言っていいだろう。



と、その時。



足柄「はーい提督お待ちどうさまー!足柄特製カツカレー、ダブルよ!」



と、厨房から足柄が注文した料理を持って早足でこちらに向かってきていた。


快活でよく通る彼女の声だ、当然後ろにいた海外組の耳にも聞こえないはずはなく……。




『…………』




ちらりと後ろを見れば、直前まで和やかに談笑していたはずの海外組が目を丸くし、こちらを凝視していた。


大して小早川はあくまで冷静に、彼女たちを見つめ返す。



足柄「…………え?え?何この沈黙……」



ただ一人事情を知らぬ足柄だけが、おかしな空気に戸惑うばかりであった。



やがて、硬直していた海外組の一人、ウォースパイトがようやく口を開く。



Warspite「……あ、Admiral……いつから、そこに」


提督「ビスマルクがカレー頬張って幸せそうな顔してた時からかな」


Bismarck「~~~~~~ッ!!?」ボンッ



いつも冷静なビスマルクが、あの場面を見られたことに羞恥を抱いて顔を林檎よりも真っ赤に染める。


やがて自分の言動もそこから全て聞かれていたのだと気付いた全員が頬を染め、あるものは顔を覆い、顔をそむけ、またある者は呆然として固まってしまう。



何となく事情を知った足柄から半眼で見られるのを感じつつ、小早川はあくまで爽やかに、



提督「大丈夫?ケッコンする?」



爆弾を投下した。




その後、悠然とカツカレーを平らげ食堂を後にした小早川。


その後ろには、錚々たる顔ぶれの戦艦勢が羞恥に悶えていた。


足柄は呆れ半分に食器を片付けていた。



――――――1400、廊下




提督「はぁ……」



昼下がり。小早川は書類仕事もそこそこに、小休止がてら鎮守府の廊下を歩いていた。


執務室前の廊下は港がよく見える位置にある。ここから出撃や遠征に出る艦隊、そして帰ってくるそれをこっそりと見守るには最適の場所であった。



今現在も遠征に出かける駆逐隊が、意気揚々と外洋に出かける様を見下ろすことができる。後姿からして、あれは睦月型の面々だろう。



提督「さてさて、どれぐらい資源を採って来てくれるかな……」



遠征によって確保してくる資材は、その時々によってまちまちだ。戦意高揚状態、いわゆる「キラ付け」を行った直後だと、より多く資源を持ち帰ってくることは周知の事実だが、それ以外でもたまに豊作ともいえる資源を持ち帰ってくることがある。


もっとも、小早川の場合キラ付けをした後に遠征に出すことはあまりない。キラ付けの方法としては、甘味を食べさせることにあるのだが、彼の場合は労働の後の報酬として出すのが普通だ。


大淀から言わせれば「非常にもったいない」とのことだが、小早川は甘味を与えた後の労働を良しとしない。彼自身、仕事終わりの一杯が非常に美味であるという認識のためか、遠征組に与える甘味は「仕事の後のご褒美」という意味合いが強い。



見るものが見れば非常に効率の悪い運用を、今日も今日とていつも通りにこなす小早川。だが艦娘にとってこの運用はかなり精神的にも負担が少ないようで、小早川のやり方に賛同する者は少なくなかった。



提督「んぉ?」



そしてそれは、今現在小早川に向かって全速力で走っている面子も例外ではなく……。




島風「白露ちゃんおっそーい!」ダダダッ


白露「うそぉ!今日こそあたしが一番乗りの筈だったのにぃ!」ダダッ


時津風「また負けたぁ……」ゼェ、ゼェ


夕立「夜戦だったら負けないのにぃ……」ポイ-……


天津風「あ、アンタ達……少しは、手加減ってものを……っ」ゼーッ、ゼーッ




十人十色の駆逐艦の中でも元気印の4人……と、それに巻き込まれたらしい天津風が廊下で駆けっこしているのにばったり出くわした。



提督「こらお前ら」


島風「おぅ……提督……」


白露「ひえっ、提督!?」ビクッ


時津風「うわっちゃー……よりによって司令に見つかっちゃったかー……」


天津風「恨むわよ島風……」



自分達でも悪いことをしているという自覚はあるらしい。各々罰の悪そうな顔で小早川の顔を伺っている。


水雷屋として機動力が売りの駆逐艦、元気一杯に駆けずり回れることに越したことはない。ないが、流石にこれは上司として見過ごせなかった。


そも、かなり前から再三廊下は走るなと注意しているにも関わらず、毎回廊下でレースが行われるのはもはや鎮守府名物である。その主犯たる島風と白露の常習犯二人も、小早川の説教も右から左、真摯に受け止めているような顔で実際は心の中であっかんべえ。



提督「今日という今日はもう許さないからな~?」ゴゴゴゴゴゴ


白露「ヒエッ」


夕立「ぽいぃぃ……!」ブルブル



提督「罰として向こう一週間、間宮の甘味を食することを禁ずる」ビシッ


島風「うわああああああ!?」ドシャー


白露「終わったああああああ!!」ガクー


夕立「ぽぎゃ―――――ッ!!」バターン



提督「天津風、恐らく半ば巻き込まれたのだろうとは思うが、連帯責任な」


天津風「うぅ…………」ナミダメ


時津風「司令、流石に天津風は許してあげてよ。あたしはいいけどさー」


提督「いいや駄目だ、一人だけ特別扱いすれば不平等だろう」


時津風「でも天津風は巻き込まれただけなんだよ?理不尽だと思わない?」



提督「いや、しかし……」


天津風「」ジー


提督「ぐ……だ、だが……」


天津風「」ウルウル


提督「ぬ……ぐぐ…………!!」



天津風「」グスッ





提督「天津風だけ免除」


島風「うええええぇ!?」ガビンッ


白露「提督意思弱すぎー!?」


夕立「一緒に走ってたのに不公平っぽいぃぃ!!」ポンスカ


提督「喧しいッ!もとはと言えばお前らが散々注意してるのに性懲りもなく走るからだろ!いい加減走るなら外に出てからにしろッ!」ヒラキナオリ



提督「全く……お前ら、というか主に島風よ……走り回る以外に何か趣味はないのか……?」


島風「速さを極めることが趣味!」フンス


提督「そうじゃねえ、もっと落ち着いて……そう、時間をのんびり感じられるような趣味を持ったらどうだ?」


島風「そんなの速くないもん!」


提督「……あのな」




提督「ハッキリ言うぞ島風。今のお前じゃ遅かれ早かれ、沈む」


島風「えっ…………」



小早川の言葉が一瞬理解できず、言葉に詰まる島風。


沈む。つまりは轟沈という意味だ。


轟沈?誰が轟沈する?自分が?



島風「な、なんで……」


提督「前々から言おうとは思ってたんだよ、島風。お前は早さを求めすぎるあまり、たびたび艦隊から突出する癖がある」


島風「だ、だって皆遅」


提督「突出するってことは、その分敵の攻撃に晒されやすくなる。いくらお前がスピード自慢とはいえ、絶対に避けきれるとは言い切れん。実際今までも危ない場面はあっただろ」



小早川の言う通り、敵艦隊にわれ先に突っ込んで、小破や中破になることも珍しくなかった。危うく砲弾や魚雷の直撃を食らいそうになったこともある。


だが島風は、それでも自慢の脚で何とかできると思っていた。



島風「で、でも島風の脚に敵う奴なんて」



刹那。



島風の視界に現れた物……真っ白い、こぶし大の物。


いや、それは拳そのものだった。真っ白な軍手をつけた、小早川の右ストレートが、島風の顔面手前に寸止めされていた。



島風「ヒッ!?」ゾッ



これが後ほんの数ミリ前に突き出ていたら、自分の顔面に突き刺さっていた。そのことに数舜遅れて思い至った島風が後ずさる。


見えなかった。小早川の挙動も、こぶしも。まるで拳だけが自分の目の前にワープしてきたかのように。



提督「調子に乗るんじゃねぇ」


島風「ひ……!」



声が冷たい。彼がこんなに怒っている表情なんて初めて見た。



提督「たかだか足が速いくらいで自惚れるな、駆逐艦島風」


島風「ッ……」


提督「一人の勝手が皆を危険に晒す。仲間と足並みを揃えろ。僚艦はお前の勝手な行動を見届ける観客じゃねえんだよ」



島風は自身の行いに、それほどまでの過ちがあったのかと。


初めて―――――正確に言えば、小早川に真正面から言われてようやく―――――真剣に考えたのだった。



提督「島風……お前にはちょいとばかしお仕置きが必要だな」


島風「ひいっ!?リズミカル尻たたきはもうやだッ!」


提督「雪風じゃねぇんだからんなことしねぇよ……むしろ」



そういって小早川はおもむろに島風を小脇に抱きかかえる。



島風「えっ」


提督「お前は少々脚部を酷使しすぎだ。おかげで足回りの筋肉がガタガタ……それだけじゃねえ、そのスピードに耐えるための上半身までまともに機能してるとは言えない状態……」


島風「あ、あのッ、提督ちょっと」


提督「これは少々キツい『お仕置き』が必要だとは思わんかね島風くん」


島風「やっ!?やだ待って、アレは本当にダメなのッ!私アレだけはッ!」


提督「なら少しばかりは自分でケアをやる努力をせねばなぁ?自身の疲労を顧みないお前が悪いのだよお前が」


島風「やだやだやだぁ!」ジタバタ


提督「暴れんなよ……暴れんな」




時津風「島風ご愁傷様」ガッショウ


夕立「アレは本当にマズイっぽい……意識が飛ばないようせめて祈るっぽい」


天津風「そーっと……気取られないように」アトズサリ


白露「気配を……断ち切る……」



提督「おうそこのお前ら、ついでに天津風も。せっかくだ、『一緒に受けていけ』」キンッ


白露「あわわ―――――ッ!?」ビシッ


時津風「やだやだやだーッ!」ピキッ


夕立「ぽい―――――っ!?」ピシッ


天津風「結局こうなるのね……」ビシッ



提督「さーさー早速施術開始と行こうか、なっはっはっはっはっは!!」


島風「やあああああああ!」









青葉「……ふむ」




フハハハハハハハ!


ラメェェェェェ!


ヤアアアア!


アヒィィィィ!




青葉「司令官、やっぱりドSですねぇ……」メモメモ





一時間後、そこにはキラ付けのままぐったりした島風以下4名が小早川のベッドで転がっていたという……。



提督「あー久々に本気で整体やってスッキリした」





1600、訓練棟。



艦娘たるもの、海上で戦うための戦闘訓練や射撃演習は必須だが、四六時中海の上で戦うわけではない。時には鎮守府周辺の陸地や、周辺地域との催し物などで暴徒やテロが発生した際、これを警察等と連携して鎮圧する場合もある。


さらに言えば、深海凄艦も島などの陸に上陸し、一部あるいは全てを自身らの拠点―――――"泊地"や"巣"と呼称される―――――を築き上げる事例が多々ある以上、艦娘にも白兵戦や通常兵器での訓練を実施させなければならない。


この訓練棟では、艦娘による近接戦闘の訓練が連日行われている。技能は多岐にわたり、剣道や柔道をはじめ、CQC各種、銃による射撃訓練など、必要とされるすべての訓練がこなされている。


小早川もそんな訓練室の一角を借り、竹刀の素振りや筋力トレーニングをこなしていた。




提督「今日もやってんなぁ、神通……」



艦種を問わず声を張り上げ、時には怒号が聞こえる中、一際威圧感を醸し出すのが神通率いる水雷戦隊の訓練風景である。



神通「一周ペース4分以内で走りなさい。4分を超えた者、並びに最下位の者は、この後の腕立てに50回追加です」



静かながらも有無を言わせぬその言葉に、駆逐艦の顔色が見る見るうちに青白くなっていくのが遠くからでも見えた。


泣く子もさらに泣きわめく、鬼すら裸足で逃げだしそうな鬼教官。普段は物静かで自己主張の強くない彼女だが、こと訓練や戦闘に関しては正しく鬼と表現するに相応しい。


が、同時に根詰めすぎるきらいもある彼女だ。あまり厳しくし過ぎないように諫めるのも上司たる小早川の役目である。




提督「よ、神通。今日も張り切ってるな」


神通「あ、提督……あの、お、お疲れ様です……」




小早川の顔を見るなり、何やら顔を赤くして挙動不審になる神通。出会った当初と比べればかなり円滑にはなったのだが、やはりどこかぎこちなさの残る会話である。




提督「張り切るのは良いが、あまり厳しくし過ぎるなよ。まあその辺の引き際は弁えてるだろうが」


神通「は、はい……ちゃんと、皆のことは見ています……見えている、つもりです。昔より」



第二水雷戦隊旗艦を務めたこともある神通。華と呼ばれた猛者揃いの頭の名は伊達ではなく、その訓練といえば苛烈というに等しい。今でも「悪さをしたら神通に叱ってもらう」と言えば効果覿面、向こう一週間は悪戯好きの艦娘も鳴りを潜めるほどだ。


が、着任当初はこれよりもさらに厳しいものであった。訓練後に嘔吐する艦娘は珍しくなく、神通の訓練に参加したくないと訴える者が後を絶たず。酷いときには神通の顔を見ただけで泣き出してしまう駆逐艦が出る始末であった。



これではさすがにまずいという判断を下した小早川の度重なる説得により、現在の状況にまで訓練のハードルを下げることに成功したのであるが。



提督(その割には……)チラッ



俯いてしまった神通の隙を突き、未だ持久走を継続している駆逐艦たちに目をやる。



提督(目が必死に助けを求めてるんですよねぇ……)



遅れた者は追加で罰を与えられるとあって、その走りはある種鬼気迫るものがある。


だがその視線は、この場において事実上の部外者である小早川に注がれていた。曰く、「なんとかして」と。



提督(あまり甘やかすのもな……)ポリポリ



これは訓練なのだから厳しくて当然であるし、本人のためにならない。


しかし彼女らの顔色が非常に悪くなり始めているのも事実だ。小早川との会話に必死の神通は気付いていないが、明らかにペースが落ち始めている。中には左右に大きくぶれながら気力で足を動かす者もいた。


仕方ない。小早川は小さくため息を吐くと、大声で呼びかけた。



提督「提督命令――ッ!現在訓練を行っている者は、今から15分の休息を命じる―――ッ!!」


神通「へ!?」


小早川の声を聞くや否や、その場にへたり込んで荒い息を吐く駆逐艦娘。その場にうつ伏せに倒れこんで動かない、などという者はいなかったが、相当疲弊しているようだった。



提督「あらら、こりゃ15分じゃ足りないかな……」


神通「て、提督……!あまり甘やかしては……」


提督「前にも言っただろ、飴と鞭が大事なんだって。神通が鞭うつのが大好きなドSであることはまあ承知の上だが……」


神通「どッ、ドSだなんてそんな!私は」


提督「違うと言い張るんなら、補給物資ぐらいは用意してやるんだな……鬼怒、阿武隈!」


阿武隈「はい、お任せください!」


鬼怒「頑張っちゃいますよー!」



いつの間に控えていたのか、小早川の後ろに待機していた鬼怒と阿武隈が、手に持っていた水と塩飴を疲弊した艦娘へ配り始める。



提督「由良、初霜と一緒に状態の芳しくないものを救護室へ。場合によっては増員を寄越す」


由良「了解しました」


初霜「一先ず冷やすものを……」



続いて由良と初霜の救護部隊がファーストエイドキット片手に飛び出す。訓練で火照った体に氷枕はさぞ気持ちが良い事だろう。



神通「…………」


提督「神通、お前が焦る気持ちも分かる。まだ艦隊全体で言えば、練度はさほど高くない」


神通「提督……」


提督「人を、国を守れなければ、艦娘の存在に意味はない。俺だって重々承知の上だ」



提督「だが、それでお前が嫌われては元も子もない。艦隊はチームワークが命……それを失った瞬間、皆轟沈しちまうかもしれん」


提督「そんなもん、教官のお前が許すわけがない……だろ?」


神通「…………」



神通「すみません提督……私、まだまだ未熟です……」


提督「まあ過ぎたことをあんまり責めるな。人間いくつになっても失敗するときはするんだ」


神通「私たちは艦娘です」


提督「人間だよ。そうやって感情を持て余してる様は、紛れもなく」


神通「…………」




提督「まあ打ち足りないってんなら俺が代わりにその鞭引き受けるけど?」


神通「全部台無しです……!」



小早川も、時にはふざけたい時がある。例え相手に引かれてしまうと分かっていても。


神通の淡い恋は、その性格も相まってまだまだ実る日は遠そうである。



なお後日本当に鍛錬で鞭を打たれることになろうとは、この時の小早川は知る由もない。





1900、食堂。




赤城「間宮さんお代わりッ!」モゴモゴモゴ


加賀「赤城さんそろそろ自重してください……」モグ



蒼龍「飛龍食べ過ぎだってばぁ!最近どうしちゃったのよ!?」


飛龍「いやぁなんか最近やたら食欲湧いちゃってさー」モグモグモグモグ


蒼龍「いい加減にしないと太っちゃうよー!」


飛龍「あー大丈夫大丈夫、元々そんなに太らない体質だし」


蒼龍「私に対する嫌味かそれはッ!」



瑞鶴「うわぁ……今日はいつにも増して激しいなぁ」


翔鶴「えぇ、赤城さんは相変わらずですけど……飛龍さん……」


提督「言っとくけどお前らも常時食べ盛りの中高生の軽く3倍は食うからな?」



瑞鶴「…………でも今日一番びっくりなのは」チラ


提督「あぁ」チラ




武蔵「あぁぁぁ~~~~何たる恥辱だッ!!この武蔵が……この武蔵ともあろうものが、提督にあんな痴態を晒すなどッ!!」ガツガツガツガツ


大和「提督に見られたぁぁ……あぁぁぁもう恥ずかしすぎてお嫁に行けないッ!穴があったら埋まりたいッ!箱があったら出荷されたいッ!!」ガツガツガツガツ




翔鶴「料理が出されたそばから消えていく……」


瑞鶴「提督さん……あの二人に何したの?」


提督「ちょっとからかいすぎたかなぁ……」




ハイチャーハン100ニンマエー!


マミヤサンツイカチュウモンー!


ナンニンカテツダイニキテー!



瑞鶴「間宮さん達大忙しだよ……」


翔鶴「そのうち本当に倒れかねませんよ……」


提督「……これ食ったら俺達も手伝いに行くか」


瑞鶴「報酬は上乗せだからね」


提督「互いに無事だったらな」


瑞鶴「お財布握りしめて待ってなさいよね」


翔鶴「二人とも早く行きますよー!」



食堂とは常に戦場なのである。食べる側も、作る側も。






2000、廊下




川内「夜戦の時間だあああああああああああああ!!」


江風「夜戦だ夜戦だ——————ッ!!」


夕立「ぽいぽいぽいぽい——————ッ!!」



提督「えぇい煩いキャンキャン吠えるな小娘共ォッ!!」



すっかり日も落ち、明日に備えて身支度をしだす者たちが多数の中、突如として鎮守府中に響き渡る快活な声。


もはやどこの鎮守府でも名物を通り越して日課となっている、川内の夜戦騒ぎだ。おまけに小早川の怒号付きである。


いつでもどこでもとにかく夜戦大好き。三度の飯より夜戦が好き。夜戦と聞くだけで思い浮かぶのはあの顔。それだけ夜の川内は血の気が多いのである。



川内「提督っ!夜戦の時間だよ夜戦!早くっ、やーせーんっ!」


提督「今日は夜戦の予定はナシ!ていうか昨日も一昨日も騒いでよく疲れないなお前」


川内「え、だって夜戦だよ?夜戦の時は元気になるでしょ」


提督「遊ぶことになったら元気になる小学生かお前は……」



江風「なーいいじゃンかよぉー!てぇとくー夜戦行かせてくれよぉー!」


提督「おお江風……すっかり夜戦馬鹿二号に成り下がって……」


江風「ばっ、馬鹿とはなんだァ!?少なくともそこの一号より騒がしくないし!」


川内「ひどっ!?江風いくらなんでもひどすぎるでしょ!」


江風「アタシはそこまで騒がしくありませんー川内さんがうるさすぎるんですー」


川内「こんのぉ……いくら弟子でも許さないよ!この川内のヤセン・カラテで直々にインタビューしてやる!」


江風「ああいいぜやってやンよ!アタシのギョライ・ダートに沈まないといいねェ!」


提督「だから騒ぐなって言ってんだろ!」


夕立「夜戦っぽい!悪夢っぽい!血が疼くっぽい、騒ぐっぽい!ぽいぽいぽいぽいぽい——————ッ!!!」


提督「お前はそれしか言えんのかこのぽ犬ゥ!」




更に厄介なことに、この川内に付き従う駆逐艦が最近出没しだしたのだ。


主に夜戦馬鹿二号とささやかれる江風、とりあえず楽しそうだから参加した夕立の二名。これに加えて時折三水戦経験のある松風や、夕立に巻き込まれる形で時雨が参加するなど、恰好だけ見れば立派な水雷戦隊である。



おかげで川内だけでもうるさいと評判なのが、ますます騒がしくなり一種の公害になりつつある。



提督「夜にこんなうるささってないぞ……ヤセン・ニンジャいい加減にしろよ」


川内「なんで怒るのさー?だって夜戦なんだよ?」


提督「お前がうるさすぎて近隣住民から苦情来てるんだよッ!クレーム処理するこっちの身にもなってみろコラァ!」


川内「私がうるさいんじゃないんだよ、他の皆が静かすぎるんだよ!」


提督「利いた風な口をきくなァ!お前らいい加減にしねぇと俺の堪忍袋もあったまり過ぎてグツグツのシチューになるぞ、ああ!?」




小早川がここまで本気で怒るのは実際珍しい事である。それだけ川内の普段の行動が腹に据えかねているということなのだが。




夕立「提督さん怒ると禿げるっぽい」


提督「また髪の話してる……じゃねえよ!夕立お前昼も怒られたってのに懲りてねぇのか!?」


夕立「アレは反省してるけどコレとは別物だよ」


提督「食後のデザートみたいな感覚で騒ぐなッ!」


江風「いいじゃンかよぉ提督夜戦させてくれよぉ」


提督「だから今日は予定なし!夜間哨戒だってローテーションなんだから我慢しなさい!」



川内「いいから早く夜戦!」


江風「夜戦!夜戦!」


夕立「夜戦したいっぽい!」



提督「」ブチッ



その時、小早川の堪忍袋の緒が切れる……!




提督「ここまで言って聞かんのなら俺にも考えがある……」


川内「お、とうとう夜戦させてくれる気になった!?」


提督「」スッ



川内「…………?笛?」



提督「」スゥッ




ピィィィィィィィィィィィッ!!




川内「うわうるさッ!?」


江風「うひぃ!?」


夕立「ぽいぃ……!」



提督「……と、このようにこの笛かなりうるさい音が出ます」


川内「ぐぅ、耳痛い……で、でもこんなんで私は止められな—――――」




提督「ちなみにこれ、神通さんから預かりました」


川内「」


提督「その笛を吹くと……どうなるか分かるか?」





神通「ドーモ、お集りの皆さん……ジンツウです」




川内「アイエエエエエエエエエ!?」


江風「ジンツウ!?ジンツウナンデ!?」


夕立「コワイ!」




提督「ジンツウだ!ジンツウを呼ぶぞ!」


川内「もう呼んでるじゃないですかやだー!?」


提督「あ、ちなみに」




海風「ドーモ」


時雨「ドーモ」


提督「騒いだ奴の姉妹はほぼ全員来るぞ」


江風「アイエッ!?」


夕立「ポイッ!?」


提督「皆さん、少々懲らしめてやりなさい」


神通「はい」


時雨「喜んで」


海風「いきます!」





ザッケンナコラー!


テメッコラー!


アイエエエエエエエエエエエエエエ!




提督「んじゃ、後頼むわ」


神通「はい……毎度ごめんなさい」


提督「いいよ、これで少しは反省してくれりゃ……まあ、難しいかね」



川内「提督助けてッ!後生ッ、一生のお願い!」


提督「お前は俺が一生のお願いしたら夜戦をやめるのか?」


川内「そ、それは……」


提督「そういうことだ。せいぜいしごかれて頭を冷やしなさい」


神通「というわけで姉さん……ハイクを詠みなさい」




アババババ—————ッ!?




提督「サヨナラ……」



こうして鎮守府に平穏な夜が訪れた。





2200、提督自室前




提督「あーくそ、今日は一段と疲れた……これも全部夜戦馬鹿どものせいなんだ」



この日、小早川は早めに仕事を切り上げ、自室へと向かっていた。普段であれば日付の変わる時間まで執務を行うが、いつもよりも慌ただしく騒々しい一日であったため、疲労困憊であった。


見かねた大淀からも「今日は休んでください」と言われてしまう始末である。彼女も他鎮守府や大本営との連絡、細かい経理の仕事などで忙しいというのに、気を使わせてしまった自分が情けない。



提督「ふわ……ぁふ」



我慢できずあくびを一つ。もはやシャワーを浴びる気にもなれない。今すぐこの窮屈な軍服を脱ぎ散らかし、ベッドに飛び込んで泥のように眠りたい。


いや、その前に酒を少し入れて眠りやすくしようか。普段あまり飲まないが、たまにはいいだろう。



提督「あー疲れた……ただいまっと。まあ誰もいやしないが」ガチャッ






吹雪「あ、お帰りなさい」


叢雲「今日は早かったわね、珍しい」


漣「おやおやぁご主人様とあろうものがもしやのもしや?まさかのサボタージュでございませうか?」


五月雨「もう、漣ちゃん……きっと疲れてるんだよ」


電「提督のメンタルケアどころかさらに疲労を煽る初期艦娘の屑なのです」


漣「デンデンさん最近漣にキツイ……キツくない?」


叢雲「自業自得でしょ」





提督「もう頼むから帰って今日は……」グッタリ



前にもこんなことあったなぁ……などとぼんやり思う小早川であった。




提督「え、何?何で揃いも揃ってまた俺の部屋にいるわけ?」


叢雲「別になんだっていいでしょ」


提督「いや良くないよ、俺にとって貴重なプライベートタイムなんですけど」


漣「ムラキョンもうちっと素直になりゃいいものをさー、そうやってツンみ出すからご主人様が困るんでしょうよ」


叢雲「あ、アンタ達だって……」




提督「……えーじゃあ代表して吹雪さん言い訳をどうぞ」


吹雪「司令官がお疲れだと思って、また癒しに参りました」


提督「あー前回グッダグダに終わったやつ?それのリベンジ?」


吹雪「こ、今回は大丈夫です!ちゃんと考えてありますから!」


提督「えぇ~?本当にござるかぁ~?」


漣「大丈夫だって信じて!ご主人様が信じるウチらを信じて!」


叢雲「アンタが言うと一気に信頼性薄れるからちょっと黙ってて」


漣「誰にも信用されない漣って一体」




提督「って言われてもだよ。お前らだって自分の部屋あるんだし、明日も早いんだぞ」


電「1日夜更かししたって平気なのです」


提督「あーだめだめ不健康すぎます、そんな不摂生お父さん許しませんよ」


吹雪「いつ私たちのお父さんになったんですか」


漣「はぎぃみたいなこと言ってるし」


叢雲「はぎぃって誰よ」


漣「萩風氏」


叢雲「だからそういう分かりにくいあだ名付けるな」



提督「もう俺の事はいいから、お前らも早く寝なさい」


漣「何だとおめぇ~っ!アタシらの好意が受けらんねぇってのかぁ!」


提督「どこの酔っ払いだてめーは、いいからはいベッドから降りる!」


五月雨「…………」



五月雨「提督」


提督「ん、なんだ五月雨」



五月雨「ごめんなさい!」ガシッ


提督「え」



五月雨「ちぇすと————ッ!!」ブンッ!


提督「うおおおぉぉ!?」



ボスッ



提督「え、は……!?」


吹雪「まさかの一本背負い……」


漣「ご主人様何が起きたのか理解できてないよ……」




五月雨「お覚悟ッ!」ギシッ


提督「ファッ!?五月雨さん!?馬乗りとか何やってんすか、まずいですよ!」ジタバタ


五月雨「暴れないで……暴れないでよ……」ギッギッ



電「五月雨ちゃんが暴走し始めたのです!」ハワワ


叢雲「傍から見たら逆夜這いよアレ……」


漣「まあなんだかよく分かんないけど、今が絶好の機会と見たね!突撃ーッ!」ガバッ


吹雪「ええぇ!?じゃ、じゃあ私も!?」ガバッ



ガシッ



提督「うわあああなんだこれ!?何この状況!?なんで駆逐艦に身動き取れなくされてんの俺!?」グギギギギ


叢雲「まあ今日は犬に嚙まれたと思って諦めなさいな……」ギシッ


電「司令官さん……」ギシッ


提督「くっそ、なんなんだお前ら!?寄って集って大人いじめて楽しいのかよ!」


叢雲「アンタが大人しく受け入れないから悪いのよ」


吹雪「観念してください司令官」


提督「もう何!?目が!目が怖いんだけど!?これ絶対按摩だけじゃ済まなくなるじゃんライダー助けて!」ギギギギギ


漣「げへへへへ……叫んだって無駄無駄の無駄よ、誰も来やしねぇぜぇ……」


提督「あぁそんな!お代官様お許しください!なんでもしますから!」


漣「ん?今何でもするって言ったよね」


提督「あっ」


吹雪「じゃあ大人しく私たちに身を委ねてください……大丈夫、すぐに終わりますから」


提督「アイエエエエエエ!?」



ガチャッ




「何をしてるの……?」


提督「ハッ、その声は!?」



文華「……皆、輝くんに何してるのかな」ゴゴゴゴゴゴ


吹雪「ひぃ!?」


漣「あ、文華さん……め、目が怖いですよ……」


文華「怒ってるんだから当たり前だよ……僕の旦那様に何をしてるのかな……?」


叢雲「こ、これはその……し、司令官に、按摩をね……?」


文華「大人数で無理やり押さえつけるマッサージなんてあるんだぁ……へぇ、僕知らなかったなぁ」


叢雲「うぅぅ……!」



提督「ああ、文華助かった!頼むこいつら引き剥がして!」


文華「輝くん……悪いんだけど、僕は輝くんにも怒ってるんだよ」


提督「はえ?」



文華「本当に嫌なら、どうして『御霊』に命じて止めさせないの?」


提督「…………あ」


文華「輝くんともあろう人が、まさか度忘れなんてするはずないよね……つまりまんざらでもないってことでしょ……?」


提督「い、いやそれはそのーあのー」


文華「言い訳無用……それにさ、単純に今何時だと思ってるの?川内さんの事とやかく言えないぐらいうるさいんだよ、君たち」


提督「うぐ……」



文華「…………全員、そこに正座」ビシッ


「「イエスマム!」」シュタッ



その後、お説教は一時間ほど続いた。


呉第三鎮守府に於いて、『正妻に逆らってはいけない』という暗黙の了解が出来たのはこの時であったという。




提督「どっと疲れた……」


文華「輝くん聞いてる!?」


提督「はい聞いてます!」




おわるんご




________________



御霊


深海棲艦のコアを元に人工的に作られた、艦娘を艦娘たらしめる重要な核。適齢する少女に取り込ませることで艦娘が誕生する。


直属の上司である提督の命令に原則従うようプログラムされている。これは本来大規模な群れを作らない深海棲艦が、上位個体のコアによって統制されることで巨大な艦隊を組むことが出来ることと原理を同じくする。


なおその性質を悪用する者も少なくないが、命に関わる命令などは艦娘が拒否することも出来る。


________________





初期艦と宴!





—————2000 提督私室




カラン……



提督「…………」クイッ



提督「……ふぅ」コトッ




提督(今日は珍しく執務が夕方に終わってしまった)


提督(せっかく時間が空いたのだ、たまにはストレス発散も含めて秘蔵のコレクションを味わうのも悪くない)




提督「……ん」クピ



提督「美味いな……」




提督(艦娘達も早めに仕事を切り上げさせ、各々好き勝手にしている)



提督(川内達は特別夜間哨戒に行かせてある。夜明け前までは戻ってくることもない)



提督(こうして静かに美味い酒を舐めるのはいつ以来だろうか。普段から忙しいわ騒がしいわ……落ち着く暇もない)



提督(少し一呼吸淹れられるかと思えば深海共の襲撃があるし、そうでないときに限って上から連絡が来るし)





提督「…………静かだなぁ」




提督(だが今は何も気にすることはない。気のすむまでこの静寂という肴を味わうことが出来る)



提督(……本当、静かだ。いい夜だ)



提督「このまましばらく続いてくれればなぁ」クピ






バァァンッ!!


ドア「あのさぁ」





漣「うっひょっほっほーいご主人ー!アタシら非番だから夜通しマ○カーやろうぜー!漣DKなー!」



提督「……いい、夜だったのになぁ」タソガレ





漣「ありゃ?ご主人様ってば珍しー、お酒飲んでるー」


提督「ん?普段自制してるだけだぞ」


漣「あの秘蔵の酒コレクションってただご主人様のコレクター魂を満足させるためだけじゃなかったんだね」


提督「飲まなきゃ集める意味ねーだろ……」クピ




提督「……んで、何しに来たんだっけ?夜通しゲーム?」


漣「そーっすよ、マジ徹夜でゲーム三昧と洒落込もうじゃありませんか!今夜は寝かせないゾ☆」キャハッ


提督「せめて初雪とか望月ん所に行けよ、あいつらゲーム大好きだから喜んで付き合うだろ」


漣「あの二人ガチ勢過ぎてエンジョイ勢の漣が入っていけないんですもん、住む世界が違うというか」


提督「さいで」


漣「そんなわけなんで漣と付き合ってくださいお願いします」


提督「悪いがゲームでもリアルでも飲酒運転はしない主義なんでね」


漣「絶対嘘だゾ……」




提督「冗談だよ、ゲームの類はどうも苦手でな」


漣「ほう、例えば?」


提督「アクションは滅法弱い。レースゲームも難しいな」


漣「アレっしょ、ご主人様ってハンドル切ると自分の体も傾くタイプっしょ」


提督「御明察。RPGとかなら楽しめるんだが」


漣「あー今日はその辺は持ってきてないにゃー……ご主人様と楽しみたかったのに」


提督「悪かったって、下手でいいなら付き合うから」


漣「いやそれじゃご主人様が楽しくないっしょ……そういうとこ変に気ー使っちゃうタイプなんスよ自分」


提督「もっと他の所に気を配るべきなんだよなあ」




漣「しゃーね、今日はやめとくかー。大人しくご主人様と駄弁ろっと」イススワリ


提督「いや寝ろってお前は……」


漣「ぶっちゃけ徹夜するつもりで来たから眠気吹っ飛んだ」


提督「布団頭から被って羊でも数えろ」


漣「羊が群れを成して大脱走してるとこ想像するとかハラハラして寝るどころじゃないんですが」


提督「お前はどんだけ想像力豊かなんだよ……ったく」クピ




漣「…………」ジー


提督「……どうした?」


漣「いや…………美味しいのかなって、それ」


提督「……まあ、飲んでみなきゃ分からんだろうな」クピ


漣「大人ぶっちゃって」


提督「大人ですから」





提督「……試しに飲んでみるか?」


漣「へ?」


提督「少量ならおそらく問題ないだろう……漣が下戸じゃなきゃだが」


漣「で、でもご主人様に悪いし……飲み方わかんない……」


提督「初めは誰だってそんなもんだよ。ていうか興味はあるんだな」




提督「どれ、久しぶりに腕を振るいますかね」ヨッコイセ


漣「え?え?」


提督「漣はそこで待ってな。お前でも飲めそうな酒とつまみ持ってくらぁ」


漣「いや、ちょっと……えぇ……あの人絶対酔ってんな……」




—————10分後




提督「ほいお待たせ」ガチャガチャ


漣「うわ、なんか色々持ってきてるし……」



提督「つまみはまあ適当にこんぐらいで」コトッ


漣「ひょえーイタリアンな感じでオシャンティー……あれ、お酒は?」


提督「これから作るのさ」ガチャガチャ


漣「作るって……」



提督「はい用意いたしましたのはこちらの何の変哲もないグラス」コトッ


提督「この中に氷を適当に入れまして」カランカラン


提督「ウォッカをツーフィンガーほど入れまして」トプトプ


提督「あとは100%果汁のオレンジジュースを入れて混ぜるだけ」ドプドプドプ



提督「ほら、スクリュードライバーの完成」コトッ


漣「おおぉー!」パチパチ


提督「ウォッカはきつい奴だが甘いジュースで割ってるから飲みやすいと思うぞ」


漣「ご主人様すげー!バーテンみてー!」


提督「割るだけなんだから簡単だろ、シェイカーとか使わないし」



漣「んじゃ早速いただきます……」ゴクッ



漣「ほへー……全然お酒って感じしない……本当にジュース飲んでるみたい」


提督「でも度数は結構あるからあんまり飲むと一気に酔うぞ」


漣「ほーい……」クピ



漣「知らなかったなぁ……お酒ってこういう飲み方もあるんだね」


漣「ほら、普段隼鷹の姐さんとか見てるとさ、お酒ってあんな五月蠅くて酒臭くなるものなんだなって思っちゃって」


提督「あぁ……アイツらは基本酔えれば何でもいいみたいだからな……」


漣「うん、だからさ。こんな上品な飲み方があるって知って、ちょっと漣さんカルチャーショック」


提督「ふふ、そうか」



漣「にしても本当にお酒って感じしない……」クピ


提督「酒だけだと胃に悪いから適度につまめよ」


漣「ん……」カプ



ガチャ



五月雨「提督ー……あれ?起きてる」


提督「ありゃ、五月雨も来たのか?」


漣「あ、さみーおいっす」


五月雨「あ、漣ちゃん……まあ、私だけじゃないんだけど」


電「司令官さんこんばんはなのです」ヒョコッ


提督「電……」



漣「にひひっ、こりゃーまた初期艦様が全員集合するかもね」


提督「ちょくちょくそうなるんだから今日ぐらいゆっくりさせろよなーたのむよー」


五月雨「ご、ご迷惑でしたか、やっぱり……」


電「何だか眠れなくて……一緒に寝て欲しかったのです……」


提督「あーいいよいいよ、二人ともおいで。と言ってもまだ眠る気はないんだが」クピ


漣「だから言ってんじゃん寝かせないって」クピ


提督「フランケンシュタイナーで眠らせてやろうか」


漣「女の子にかける技ではないと思われますサー!」



五月雨「あれ、二人ともお酒飲んでるんですか?」


電「司令官さんはともかく漣ちゃん……」


漣「いやアーシも最初は断ったんだよ!?ご主人様が試しにって……」


提督「そうそう俺が飲ませた。悪いのは俺。責めるなら俺を責めるべし」


五月雨「うわぁこの人酔ってる……」



提督「せっかくだ、お前らも一杯試してみるか」


電「えっ!?い、電は……」


五月雨「わ、私も……」


漣「堅い事言うなよぉ、ほら、とりまそこに座る座る」グイグイ


五月雨「わ、わぁぁ!?」


電「はわわーッ!?」





五月雨「結局座っちゃった……」チョコン


電「なのです……」チョコン


提督「ま、本当にダメだったら止めるから……さて、二人とも味のリクエストは?」


五月雨「え、えと……よくわかんないですけど、酸味があるものを」


電「電は……辛めなものを飲んでみたいのです」


提督「ふむ……じゃあこの辺かな」カランカラン



提督「まずは五月雨。このカクテルグラスに……」コトッ


提督「ジンをベースにライムジュースで割るだけ」トプトプトプ



提督「ほい、ギムレットだ」スッ


五月雨「あ、ありがとうございます」



提督「次に電だな。辛口を所望らしいから……」コトッ


提督「最初にグラスの中にオリーブの実を入れといて」ポイッ


提督「これまたジンベースで、ドライベルモットで割る……」トクトクトク


提督「最後にレモンピールを少々……」プシッ



提督「カクテルの帝王マティーニだ」コトッ


電「わぁ……」



五月雨「ふわぁ……爽やかな香り……」クピ


電「はわぁぁぁ……」クピ


提督「くく、美味いか?」


五月雨「はい!お酒って美味しいんですね!」


電「電、ちょっぴり大人なのです……」ポワァン


漣「ありゃ、デンデンてばもう酔ってる?」


提督「まあマティーニはわりかし強いからな……少しずつなら大丈夫だろ」


漣「ご主人様、他にも作れるの?」


提督「ん、試すか?」



提督「はいこちらに取り出したるは白ワイン」ドンッ


漣「えっ、ワインで!?」


提督「おう、ワインカクテルって結構あるんだぞ。んでこれをまず注いでだな」トプトプトプ


提督「これをソーダで割りますと」シュワァァァァ



提督「スプリッツァーの完成ッと」


漣「はへぇ……口当たり軽い……すっと入ってく……」



提督「五月雨はどうだ、いけそうか?」


五月雨「はい、まだ大丈夫です」


提督「よし、じゃあもう一杯……そうだな」



提督「五月雨の青くて綺麗な髪にピッタリのがあるんだ……まずシャンパンを適当に……」シュワァ


提督「これにブルーキュラソーっていうのを混ぜる」チョロロ


五月雨「わあ!綺麗な青色……!」



提督「最後にレモンピールを絞って……シャンパン・ブルースの出来上がり」


五月雨「ん……何だか、センチメンタルになりそう……」



電「司令官さん、電にも」


提督「おいおい大丈夫か?」


電「平気なのです!」


提督「そうか……じゃあ今度は少し甘めに……」コトッ



提督「今度はラムをベースにしまして」トプトプ


提督「パインジュースとココナッツミルクで割って混ぜます」ドプドプ


提督「で、カットパインとチェリーを添えたら……」スッ



提督「ピニャコラーダの完成」


電「美味しいのですぅ……」ホワァ




五月雨「提督すごいんですねぇ……カクテル作れちゃうなんて」ポヤァ


電「もー一生ついてくのです……司令官さんマジリスペクトなのです……」ポヘェ


漣「さみーはともかく電まずくない?」


提督「電は結構度数高いのばっかりだからな……ちょっと休憩させるか」



ガチャッ



叢雲「なーにが休憩させるかーよ」


提督「げっ、叢雲……」


吹雪「私もいますよー」ヒョコッ


漣「Oh!淀デース!?」


吹雪「吹雪だってば!掠ってもないし!」



叢雲「で?幼気な駆逐艦にお酒なんか飲ませてどうするつもりだったのかしら?」アオスジ


提督「いやー折角の一人の夜を邪魔されたからさ、腹いせにこいつら巻き込んだの」


吹雪「大人として割と最低な発言してますよ……」


漣「まあいーんでないの?漣だって途中から自分で注文してるしねー」クピ


五月雨「お酒って美味しい……」クピ


電「ふわふわしていいきもひなのれすぅ」ポヘェ


提督「おい電ペース落とせって」


電「はぁい……」ヒック


吹雪「うわぁ、こんな電ちゃん初めて見た」


叢雲「ちょっと司令官アンタね……」


提督「何だよぉ、ただでさえ少ない貴重なプライベートタイムをだぞ、慈悲もなく奪われた俺の気持ちが分かるのか?」


叢雲「うっわ、ちょっと目が据わってるじゃないの!さすがに悪ふざけが過ぎるでしょ!」


提督「うるへー!こうなったら貴様等も道連れじゃい!者共やっておしまい!」


吹雪「え、ちょっと」



漣「ヒャッハー!新鮮な素面だ―――――――ッ!!」ガシッ


叢雲「ちょっ、漣!?何すんのよ離しなさいよ!」


漣「ふへへへへ、暴れても無駄だぜムラキョンさんよぉ……大人しく乾杯しようやぁ」スリスリ


叢雲「うわっ、この!?暑苦しいのよ離れろッ!」グギギギギ


漣「フィーヒヒヒ!ムラキョンの太もも!腋!尻!胸!実際豊満!フィーヒヒヒヒヒヒ!」スリスリスリスリスリ


叢雲「変態だ――――――――――ッ!!?」


吹雪「叢雲ちゃんッ!」



電「逃がさないのれす」ガシッ


五月雨「ですよー」ガシッ


吹雪「うわわわッ!?ふ、二人ともやめて、離して!」


電「電達と一緒に大人の階段を上るのですぅ」ポワァ


五月雨「えへへへ……楽しいですよぉ、気持ちいいですよぉ」ポヤヤァ


吹雪「二人とも出来上がってるぅ――――!」ガビーン


電「お酒でシンデレラになるのれす」ズリズリ


五月雨「月の灯りで踊りましょー」ズリズリ


吹雪「や、やだ引きずらないでッ!た、助けてッ!誰か―――――ッ!」ジタバタ


叢雲「吹雪―――――ッ!」


漣「アーイイ……遥かに良いです……お酒で上気したムラキョンの肢体……想像するだけでとてもイイ……」スーリスーリ


叢雲「アンタはいい加減離れろっつってんのよ!」ゴンッ


漣「イイーッ!アーイイ!この苦痛!これで漣の中のソウルがとても湧いてくるんです!分かってください……フィヒ」スリリリリ


叢雲「あっ、ちょ……ッ!?ど、どこ触ってんのよ……んっ!」ピクッ


漣「アーイイ!とてもッ!すごくイイ!激しく上下!激しく前後!女同士でポイントが倍増!何事もお酒で解決するのが一番だ!というわけでムラキョン漣達と一緒にドリンク&ファックしましょう!フィヒッ!フィーヒヒヒヒッ!」スリスリスリスリスリスリスリ


叢雲「助けて―――――ッ!」



提督「いやー乱世乱世」ハッハッハ


吹雪「笑っとる場合か――――――ッ!!」


叢雲「助けろ莫迦――――――――ッ!!」





叢雲「酷い目に遭った……」グッタリ


吹雪「お酒ってこんなに人を変えるんだね……怖い……」グッタリ



提督「酔うと本性が出るとはよく言ったものさね」クピ


叢雲「アンタが酒なんて飲ませるから……」


吹雪「危うくお嫁に行けなくなるところでした……」ブルッ


提督「どっちみち俺が貰うから身内の問題で済むしヘーキヘーキ」


叢雲「しまいにはぶっ飛ばすわよアンタ」


吹雪「えーと宇喜多中将の番号は」


提督「ごめん調子に乗った」




提督「……まぁそれはさておきだ。せっかく来たんだ、一杯付き合ってくれ」コトッ


叢雲「……まぁ、アンタとの仲だし、今更よね」


吹雪「多少のことで司令官が自重するわけないですもんね」


提督「部下からの信頼が厚くてうれしいぜ」


叢雲「言ってなさいタコ」アキレ


吹雪「ばーか」フンッ




提督「んじゃま、吹雪のから作りますかね」


提督「まずウォッカをベースにホワイトキュラソーを加えまして」トプトプトプ


提督「香りづけにレモンジュースを加えますと」チョロロ



提督「ほい、バラライカの完成」


吹雪「ん……レモンのいい香り……」




提督「さて叢雲様のはどうしましょうかねっと……おっ?」ゴソゴソ


提督「じゃあこの日本酒で」ドンッ


叢雲「日本酒でカクテル……?」


提督「実は意外とあったりするんだなこれが」



提督「この日本酒に卵白、グレナデンシロップを少々」カチャカチャ


提督「さらにレモンジュースを加え、隠し味にシロップを混ぜます」カチャカチャ



提督「日本酒カクテル、撫子だ」コトッ


叢雲「ピンク色で甘い味……日本酒だなんて信じられないわ」クピ





提督「それにしてもお前らいい飲みっぷりだなぁ」クイッ


漣「ご主人様のカクテルが美味しいからざんすよぉ」ホワホワ


五月雨「ねー♪」


電「ねー♪」


吹雪「あーあーもう、真っ赤になっちゃって」クピ


叢雲「明日どうなっても知らないわよ」クピ


提督「吹雪、叢雲も。遠慮しないで飲んでいいんだぞ」


吹雪「明日も早いので適度にいただきます」


叢雲「司令官こそ明日大丈夫なの?」


提督「割と強い方だから大丈夫」クイッ


叢雲「本当かしら……」クピ




提督「……ふぅ、しかしなぁ」クピ


吹雪「どうしたんですか?」


提督「いやなに、こうしてお前らと過ごすのも悪くないと思ってな」


漣「ほほう?いつも当たり障りのない接し方ばっかりのご主人様にしては珍しいですなぁ、どういう風の吹き回しよ」


提督「うるせーなぁ……」クピ



提督「俺ってさ、元々一人で月見酒っていうのが一番好きだったんだよ」


提督「何か成し遂げた時、感傷に浸りたい時、ただなんとなく……俺にとって月と酒は切っても切り離せない要素なわけよ」


提督「それは今でも、これからも変わることはないだろう。一番であることもゆるぎない」




提督「……でも、こうしてお前らと飲む酒は、『特別』だ。お前らの笑顔が最高の肴だよ」




叢雲「…………ッ」カァッ


吹雪「司令官……そういうことサラッというのずるいと思います」テレ


漣「ほんっとご主人様ってば酔っぱらっててもアーシ等の心を堕としていくスタイルなんすねぇ……」クピッ


提督「おう、何度でも堕としてやるよ覚悟しやがれ」


漣「お兄さん許して……突き落とされ過ぎて漣のハート壊れちゃぅ……」クピッ


提督「……漣?」



漣「…………ご主人様ぁ」グスッ


提督「……えっ」



漣「ご主人様の馬鹿ぁ……漣をどこまで惚れさせたら気が済むんですかぁ……もう心のキャパが積載オーバーして溢れちゃうよぉ……うえぇぇ」グスッ


提督「えぇ……お前泣き上戸かよ……」


漣「漣壊れちゃううぅ……ご主人様に身も心も砕かれてぇ、ご主人様一筋に作り替えられちゃうんでしゅぅ……」クピ


提督「物騒なのか可愛らしいのかこれもうわかんねぇな……」クピ




五月雨「提督ッ!」ガバッ


提督「ファッ!?」


五月雨「さっきから漣ちゃんばっかりー……五月雨のこともちゃんと見てくれなきゃ拗ねちゃいますよぉ!?」プンスカ


提督「だ、大丈夫だってちゃんと見てるから……ていうか五月雨顔真っ赤だけど大丈夫か?」


五月雨「提督とくっついてるとふわふわして……体が熱くなっちゃう……」


提督「こっちは絡み酒の上に甘えん坊かよ……」


五月雨「むー!冷静に分析しなくていいのー!」!グビグビ


提督「おいおいおい五月雨待て待て!?そんな一気にッ」


五月雨「ふにゃぁぁ……えへへへへへ……てーろくあっらかひぃ……」グニャァ


提督「ガンガン体擦り付けてくるんですが発情期の猫か何かですかね?」



電「司令官さん……?」


提督「…………なんでしょう電さん」


電「司令官さんは……電のこと……愛してますか?」


提督「あ、愛してますよ勿論……でもなんで急に」



電「じゃあ刻み込んでほしいのです……電の躰、全部に」バサッ


提督「ファッ!?」



電「電の全部好きにしていいのです……体、熱くって、火照って……我慢、出来ないのです」バサッ


提督「お前脱ぎ魔かよォ!?ちょ、待ッ、この絵面はまずい!?本格的に憲兵呼ばれる!!」


電「憲兵さんなんて電がやっつけるのれす……だから今は……ね?」クネ


提督「うわあああ電がしな作ったらヤバイ!この光景が危ない!なのに電は合法とか思えちゃうぐらいのこの魔性っぷり!?いやとりあえず服着て!?」



電「電の本気……ベッドで、見ますか?」


提督「完全にどスケベのセリフだコレ――――ッ!?しかもこれを電が言ってると思うと色々とヤバイ!なんかがヤバイ!主に青少年のなんかがッ!!」




叢雲「随分楽しそうねアンタ」クピ


提督「叢雲さぁん!飲んでないで引き剥がすの手伝ってくださいよォ!俺このままだとマジで社会的に人生おわるから!」


叢雲「御霊に命令して止めればいいでしょ」


提督「こういうので使うのはなんか反則だろ!?俺ァ自力でこいつらどうにかしたいの、ちゃんと本心から向き合ってこいつら止めたいんですことよご理解いただけて!?」


叢雲「変なところで男らしいわねアンタ……いや、男らしいと言っていいのかこれ……」


吹雪「まーその時はその時だから。ちゃんと弁護はしてあげますよー」


提督「やだ吹雪さん黒ぉい!?え、てか何?俺もう更迭されること前提なの!?」


吹雪「まあ……遅かれ早かれこうなると思ってたんですよね」


提督「そんな容疑者の知人インタビューみたいな答え方しないでッ!?というかアレですか、吹雪さん酔うと腹黒くなっちゃうとかそんな感じですか!?」


叢雲「普段から真面目だしね。口には出さなくても、アンタに文句の一つや二つはあるんじゃないの?」


提督「……いや、覚悟してたけどさぁ。そりゃ100%好かれるとは俺も思っちゃいないよ?でも改めて聞かされるとちょっと心に来るものがあるんですよ」



電「そんな司令官さんでも、電は大好きなのです……甘えていいですよ?」


提督「カッチャマ……って今の電に抱き着いたら本末転倒じゃねぇかッ!いいから君は服を着ていい加減!」


漣「ごじゅじんざばぁぁぁぁぁ……!ざざなびもぉ!だいすぎれずぅぅぅぅぅ!」ヒシッ


提督「お前はいい加減泣き止めよ。ああクソ、いつもの分厚い面の皮どこに剥いできたんだよお前、調子狂うわ……」フキフキ


五月雨「てーろくぅぅぅ!だからしゃみだれもちゃんとみなきゃめーなのー!」プンスカ


提督「あーはいはい五月雨可愛い可愛い……正直今日一番扱いにくいかもしれん」ナデナデ




叢雲「ふはっ!あの司令官があんなに狼狽えてるなんて珍しいわ」


吹雪「普段ドSだからねー、いい加減報いを受けたっていいんじゃないかな」


提督「助けて……助けてクレメンス……」


叢雲「それにしても美味しいわこのお酒ー」フイッ


吹雪「あ、もうこんな時間かー」フイッ


提督「これが若さか…………」




提督「あぁいかん、ちょっと水飲んで落ち着こう……」グビグビ


叢雲「あっ、ちょっとそれ」




提督「ングォッフゥ!?」ブフーッ


叢雲「それウォッカの原液……」


吹雪「うっわぁ……一気に3分の2飲んじゃった……」


提督「うが……ッ、ぁ、やっべ……」グワングワン


叢雲「ちょ、司令官大丈夫?」


吹雪「首が据わってない……」



提督「」ガクッ


電「……司令官さん?」


叢雲「…………ちょっと、これ不味いんじゃ」


五月雨「提督ぅ……?ねーてーとくってばー」ユッサユッサ


吹雪「あっ、五月雨ちゃん乱暴にしちゃダメッ!」ガバッ


五月雨「んやぁ、ふぶきちゃんらにふるのぉ」ジタジタ


漣「ご主人様ぁ?」グスッ




提督「…………吹雪」


吹雪「あ、良かった生きてた……はい、なんですか?」


提督「愛してる」


吹雪「あ、はい…………はい?」




提督「お前は俺のものだ……これから先ずっと、何があったとしてもずっと一緒だ……吹雪は、俺の女だ」ニッ


吹雪「は、ひ、ひゃいッ!?」ボッ



叢雲「……え、ちょっと待って今の……なに?」


提督「叢雲」


叢雲「え、えっ、な、なによ」




提督「いつもお前を頼りにしてる。これからも俺の傍にいてくれ……ずっとずっと、な?」ニコッ


叢雲「~~~~~~~~~~ッ!!?」ボフンッ




漣「…………え、何これは」ヨイサメ


提督「漣ィ!」


漣「ファッ!?」ビクッ



提督「俺はお前の笑顔にいつも救われてきた!お前の気遣いに助けられてきた!愛してるぞ漣ィッ!!」


漣「ふひぃっ!!」ボシュー




電「えっ……えっ?」ポカン


提督「電」


電「は、はいなのです!?」



提督「いつも頑張ってくれてありがとうな……お前の事、大切に思ってるからな。いつでも甘えにおいで」ニコ


電「は、はわ…………」カァッ




五月雨「え、あれ?何この展開」キョトン


提督「五月雨!」


五月雨「……はい」



提督「……一度しか言わないぞ……大好きだ、五月雨」ナデナデ


五月雨「あ、へ、は……ふきゅぅぅ……」シュゥゥ




吹雪「あ、あ、うわ、あわわわわ!?」ホホオサエ


叢雲「なによそれぇ……ずるいぃ……」ツクエバンバン


漣「はへぇぇ……ご主人様好きぃ……」ショート


電「…………もう、なにされてもいいのれす」ドキドキ


五月雨「うきゅううぅぅぅ…………」キゼツ



提督「んが……ぁ……はへ」ガクッ





提督「」スヤァ







―――――――翌日





ガチャッ



霞「ちょっと司令官!?いつまで寝てるのよ、起きなさ…………」




漣「あだまいだい……」ズキズキ


五月雨「うへへ……大好きだって……提督が大好きだって……うへへぇ」ニヤニヤ


電「あぁぁぁぁぁ!!電、なんて恥ずかしい事……ッ、うあああああぁぁぁ!?」モンゼツ


吹雪「司令官……」ヨリソイ


叢雲「なんであんな恥ずかしいセリフ吐いたのよッ!?おかげでこっちは悶々として寝れなかったのよ責任取んなさいよ!!」バシバシ


提督「いたたたッ!いや、だから俺もなにしたのか途中から覚えてないんだって!何そんなに怒ってんだよ!?」


叢雲「ムッキー!こっちは羞恥心で死にそうだったのにムカつくぅぅぅ!思い出せ、今すぐ思いだせぇ!あ、いや、やっぱ思い出すなあぁぁぁぁ!!」バシバシ


提督「結局どっちなんだよぉ!?」


漣「むらぎょん……うるざぃ……あだまにひびぐ……」ズキズキ


電「穴があったら入りたいのですぅぅぅ……!!」クネクネ


漣「デンデンも……やめへ……うぷ」オェッ


吹雪「司令官好き……」


提督「吹雪は吹雪でどうした!?俺何言ったの!?ねぇ俺お前らに何言っちゃったのォ!?」





霞「…………アンタら表出なさい」ピキピキ




その後霞の介抱によって二日酔いから回復したのち、お説教を受けることになった小早川達であった。




霞「ちゃんと聞いてるの!?」


提督「ごめんよかーちゃん……」


霞「誰がかーちゃんよ!いい大人がみっともないったら!」


提督「ごめんなさい霞ママ……」


霞「ママっていうのやめろこのクズッ!」


提督「久しぶりに霞からクズって言われた!ありがとうございます!ありがとうございます!」


霞「反省しろバカ――――――ッ!」



なおこの後物理的に絞められたのは言うまでもない…………







おわりーな



___________________



吹雪


呉第三鎮守府所属。鎮守府に最初に着任した5人のうちの1人。

勤務態度はまじめ、戦績も優秀。しかし融通が利かないときがあるのが玉に瑕。

着任前は頑固な性格が災いし、問題児扱いされていた。現在はかなり改善されている。

酔ってもそこまで変わらないが、多少言動に腹黒さがにじみ出る。



叢雲


呉第三鎮守府所属。最古参の1人。

内勤業務に関して光るものがある。他の艦娘をまとめるのが上手く、前線指揮などを提督の代理として勤めることが多い。

以前はきつい物言いが元でトラブルになることも多々あったが、近頃は丸くなったと専らの噂。

酔ってもさほど変わらないが、少し言動がSっぽくなる。





呉第三鎮守府所属。初期艦の1人。

あっけらかんとしたムードメーカーだが少々内弁慶。艦娘になる以前つらい経験をしたらしいが……?

その軟派な言動で誤解されることが多いが、根は真面目で正直者。

一定量以上飲酒すると泣き上戸になる傾向がある。





呉第三鎮守府所属。最古参のうちの1人。

容姿の愛くるしさとおっちょこちょいな言動でマスコット的存在になっているが、実は初期艦の中ではかなり戦闘能力が高い。

最近はかなりしっかりしてきているようで、自身の意見を貫き通す度胸が付き始めている。

酔うと体温が高くなりやすく、羞恥心が薄れるので服を脱ぎ始める。



五月雨


呉第三鎮守府所属。最初に着任した1人。

神が与えたもうた天性のドジっ子。本人は改善してきているというが、それでも常人よりかなりドジ。

あらゆることでドジを起こしてきたが、不思議とここ一番で失敗をしたことがないラッキーガール。

酔うと末っ子らしく甘えん坊になり、言動も少々粗野になる。





呉第三鎮守府所属。かなり早い段階で着任している。

きつい言葉は心配の裏返し。罵倒は一人前になってほしいから。根性は叩いて伸ばすちびっこハートマン軍曹。または教育ママ。

最近は立派に仕事をする提督に暴言を吐くことも少なくなったが、少々寂しさを感じているらしい。

酔うと本音を素直に伝えられるようになるらしい。



____________________




初期艦と新任!





――――――1500 執務室






提督「新任の教育係?」


大淀「はい、定期的に行われる新任提督の実地研修ですが、今回はこの呉第三鎮守府がその1つに選ばれました」


提督「で、俺が先任として色々と教育すると?」


大淀「その通りです」




提督「ごめんパスで」


大淀「ダメです」


提督「なんで?(殺意)」


大淀「宇喜多中将が提督を推薦なさったそうで」


提督「お師様ェ……」


大淀「あと、その中将から手紙を預かっています」サシダシ


提督「……どれどれ」ペラッ




『輝幸君、君もそろそろ先輩として後輩を指導する訓練をするといい。


優秀な君ならきっと出来る。僕の弟子だからね。


困ったことがあれば連絡してほしい。いつでも相談に乗るからね。



P.S 逃げたら社会的に殺すよ?』





提督「ヒエッ」ゾゾッ


大淀「……まだ逃げますか?」


提督「恨むぞ大淀……」


大淀「うふふっ」






漣「……で、結局新任の教育を引き受けたと」


叢雲「アンタ大佐なのに色々と立場弱すぎない?」


提督「言うな……お師様には逆らえねぇんだよ……」


吹雪「それで、その新任の人ってどんな人なんですか?」


漣「女性提督とかだったらまた色々と波乱が起こりそうで」


五月雨「それは流石にないと思うけど……」




提督「ざっくりとした情報だが、士官学校を首席で卒業したエリートらしい。試験的にだが自分の泊地も持っているそうだ」


電「すごいのです!」


漣「その時点でご主人様とは雲泥の差じゃあーりませんか」


提督「おう新任の方がそんなにいいか、じゃあ異動願出しとくわ」


漣「…………ッ」ウルウル


提督「お前最近泣き虫になったな……冗談だから本気にすんな」


叢雲「近頃の漣ってば神経質なんだから少しは空気読みなさいよ」


提督「すいません」



五月雨「それにしても、そんなすごい人がわざわざうちに来るなんて……」


提督「ウチも一応精鋭揃いで通ってるが、釣り合ってない気がするんだよなぁ」



吹雪(何度も大規模作戦成功させてる人が何か言ってる)ヒソヒソ


漣(あの人自己評価低すぎるから……)ヒソヒソ


叢雲(謙遜もここまで来るともはや嫌味ね)ヒソヒソ


提督「聞こえてるぞお前ら」




電「それで、いつ頃到着予定なのです?」


提督「ん?あぁ……いつだったっけかな、確かこの資料のどっかに……」ペラペラ


叢雲「それぐらい暗記しなさいよ」


提督「悪かったって…………お、あった。えーと今日の1500……」





提督「…………えっ、今日!?」


吹雪「ウソッ!?え、今1000だから……あと五時間したら来るじゃないですか!?」


漣「えぇ……いくらなんでもフットワーク軽すぎると思うんですけど」


五月雨「歓迎会する時間もないじゃないですか!せっかくの御馳走が食べれな……じゃなかった、御馳走でもてなせないじゃないですか!」


叢雲「アンタ一番楽しみにしてるのそれなのね……」


五月雨「ち、違うぅぅ~~!」



電「……どうするのですか?」


提督「とりあえず急いで歓迎用の料理を作るように通達するか……試験的にとはいえ、恐らく艦隊運用のノウハウは実戦である程度積んでるはずだから、一部艦娘の指揮権移譲して……」ブツブツ


電「えーと……客室は余っているから、後は掃除と必要になる日用品の用意、それに鎮守府の案内役の選定……」ブツブツ


提督「電、あちらさんも多分何人か自分の手勢を率いてくると思うんだがどうだ?」


電「電もそう思います。念のため大目に10人程度見積もって客室諸々用意するのです。あと、一時移譲する艦娘なのですが……」


提督「戦艦1、空母1、重巡軽巡がともに2、駆逐4で行こうと思うんだが……」


電「では戦艦の長門さんを中心に、少し癖のある人選を……」


提督「いや、いくらなんでもそれは新人いびりみたいで面白くない。やはり何人か真面目な者を……」


電「ですがそれでは接する者に偏りが起こるので、今後の艦娘とのコミュニケーションが円滑に……」





漣「…………デンデン、あんなに頼もしかったっけ?」


叢雲「なんか司令官と喧々諤々で意見交わし合ってるんだけど……」


吹雪「いつの間にかここ一番での度胸がついてきた……ってことかな?」


五月雨「電ちゃんかっこいい……」ホエー



提督「……ほら、お前らもぼーっとしてないで準備準備」


吹雪「あっ、はい!私、他の人たちにも通達してきます!」


叢雲「今後の物資の消費にも変化が起きそうね……大淀さんと意見交わしてくるわ」


五月雨「私は電ちゃんのお手伝いを!」


漣「え、えとえと……」オロ




提督「…………漣、手伝ってくれ」


漣「!……アラホラサッサー!」






―――――――――1500、鎮守府門前




提督「…………」




ブロロロロ…………




提督「来たか……」




キィッ



ガチャッ





提督「…………」ケイレイ



???「…………」ケイレイ



提督「遠方遥々、ようこそいらっしゃいました。呉第三鎮守府総司令官、大佐の小早川輝幸です」



???「御活躍はかねがね耳にしております。お初にお目にかかります、自分は羽柴真琴と申します。階級は大尉です」




提督「羽柴大尉、我が呉第三鎮守府へようこそ。士官学校を首席で卒業なされたとか。尉官なれどその活躍獅子の如しと」


羽柴「恐縮です。しかし、今の地位に自分は満足していません。今回はご指導ご鞭撻、よろしくお願いいたします」


提督「こちらこそ。立ち話も何ですから、続きは中で」


羽柴「お邪魔いたします」






???「ふぅん……あの人がここの」


???「すごい活躍してるって聞いてるけど……パッと見は普通のお兄さんだよね」


???「ウチの司令はあの人の事尊敬してるけど、どうなんだろうな?」


???「これからいやでも知ることになるわよ」





提督「…………こちらは、大尉の?」


羽柴「御無礼をお許しください……まだ経験が浅く、礼儀も……」


提督「ははは、私が礼儀のなっていないダメ上司筆頭だから、気にしていないよ」


羽柴「そんなことは……いえ、重ね重ね失礼しました……」



羽柴「お前たち、失礼だぞ!きちんと挨拶しなさい!」



???「ごめんなさいね、小早川大佐。ウチの子たち、血の気が多くて……羽柴真琴指揮下、戦艦陸奥です」


???「駆逐艦皐月だよ!あんなこと言ったけど、ボクは大佐の事尊敬してるんだよ!」


???「同じく朝霜だ。あたいはまあ、第一印象で決めつける人間じゃないから。これから見極めるさ」


???「…………」




羽柴「矢矧!」


???「ふん……」




矢矧「……重巡、矢矧よ。大佐。言っておくけど、私は私の提督にしか従う気はないわ。覚えておいて」




羽柴「本当に申し訳ございません…………」


提督「いやいや、これぐらい突っ張った方がこちらもやりがいがある。大変結構」


羽柴「しかし大佐……!」


提督「うちは十人十色の艦娘抱えてるからね、あのぐらいは可愛いもんさ。クソとかクズとか言ってくる奴もいるし慣れっこだよ」


羽柴「…………」



提督「……堅苦しい喋りはここまでにしよう、大尉。これから俺のところで色々と目にするものがある。幻滅することもあるだろう、失望することもあるだろう。それでもこの研修を通して自分に活かせるものを見つけてくれ」


羽柴「……はい、大佐」




提督「さて……じゃあ今度こそ鎮守府を案内しようか。一先ずは執務室だな」







―――――――執務室




吹雪「秘書艦吹雪、以下5名集合しています」ケイレイ


提督「御苦労」ケイレイ




提督「大尉、紹介するよ。呉第三鎮守府秘書艦筆頭の5人だ」



吹雪「吹雪です!よろしくお願いいたします!」


叢雲「叢雲です、お見知りおきを」


漣「漣っす!堅苦しいの苦手なんでごめんちゃい☆」


電「漣ちゃん!もう……失礼しました、電です」


五月雨「五月雨です!初めまして!」



提督「漣お前……こういう時ぐらいビシッと決められんのか」


漣「さっきまで我慢してたけどもう限界です、漣の真面目ちゃんエナジー全部すっからかんです」


提督「大本営の議会ん時は半日持つのにか?」


漣「いやー充電するのうっかり忘れてて」


提督「お前の鼻に充電プラグぎゅうぎゅうに詰め込んでやろうか」


漣「やめて!サザナミッチャーンの美貌が台無しになっちゃう!」




羽柴「……随分、緩い感じなんですね」


提督「すまん大尉、ここまで頭のねじ外れてるのはコイツ除いたらほぼいないから……」


羽柴「他にもいるんですか……」




羽柴矢矧「……本当、随分緩いのねぇ。というよりたるんでるのかしら?これが呉の守護神の実情ってことなの?」


羽柴「矢矧お前ッ!」




叢雲「おーおー、活きがいいこと……」


吹雪「むこうの矢矧さんはすごく尖ってるねぇ」


五月雨「…………」ムッ


漣「はーいさみー怒らなーい」ホッペムニムニ


五月雨「やーめーへー」




羽柴「今日ぐらいは大人しくしろっていっただろう!」


羽柴矢矧「数々の大規模作戦成功させてるっていうからどんなのかと思えば、あんまりにも期待外れだったもので」


羽柴「それを口に出すことが問題なんだ!」


羽柴矢矧「ごめんなさい、今度から口にチャックでも縫い付けとくわ」


羽柴「お前……!」ワナワナ




提督「まーまーどーどー大尉、俺は気にしてないから。あんまり怒ると端整な顔が台無しだぞ」


羽柴「う……た、端整……」カァッ


提督「なぜ顔を赤くするのかは深くは聞かんが……とにかく、案内を続けよう。電、サポート頼む」


電「はいなのです!」






――――――移動中





羽柴陸奥「……大佐、一つ質問いいかしら?」


提督「ん?なんだろう」


羽柴陸奥「さっきの子たち、初期艦娘ですよね。司令の着任時に大本営から派遣される……」


提督「ああ、一人1隻、サポート役としてな。」



羽柴陸奥「……前に資料を読んだのだけど、この鎮守府……初期艦娘を5人全員派遣されてるって。本当なんですか?」


提督「…………」


電「…………」



羽柴「陸奥、あまり込み入った質問は……」


提督「いや、気にしてないよ大尉」



提督「確かにその通りだ。あいつらは俺の着任の時、5人全員が派遣されてきた」


羽柴陸奥「……それは、何故でしょうか」


羽柴皐月「あ、それボクも気になるなー。大佐、どうして?」


提督「んー……結構複雑な話だから端折って答えるけど」




提督「体の良い厄介払いってとこかな」




羽柴陸奥「えっ……?」


羽柴皐月「それってどういう」


提督「あー、俺からはこれ以上話せないな。詳しくは本人たちに聞いてくれ。話してくれれば、だけど」


羽柴朝霜「…………」







提督「…………ここが修練場。ウチの艦娘たちが日々己を鍛える場所だ」


羽柴「すごい……施設内に立派な道場が……」


電「ここでは砲撃、発艦の演習のみならず、銃や体術、近接武器による戦闘を想定した訓練も行っているのです」


羽柴皐月「ほえぇぇ……」アングリ



羽柴矢矧「なぜ近接戦闘の訓練が必要なのかしら?私達は海上で砲撃を行うんだから、特に近づく理由もないじゃない」


提督「うちは万が一近接による戦闘を行わざるを得ない状況に陥った事態を想定して訓練してるからね。まあ滅多にないから、君の指摘は間違ってないよ」


羽柴矢矧「なら普通に訓練をした方が……」


提督「まあうちはそれだけじゃないんだよ。観艦式とか鎮守府を一般公開する場合、他にも地域での催しものなんかに、うちの艦娘を警備として派遣したりもするからさ」


羽柴朝霜「か、艦娘を陸で働かせてるのか?」


提督「おかしい事でもないよ。うちの子たちはちゃんとやってますよ、その証拠にほら、こんなに強いですよっていうアピールの意味も兼ねてる」


羽柴「なるほど……」


提督「それに、仮にも軍属ともあろうこいつらが、艤装がなければ見た目通りか弱い乙女ですー、じゃあ通らない。これは一般市民に舐められないようにするためでもある」



提督「ちなみにだが、この電は我が鎮守府全体でもかなり上位の実力だぞ」ポンッ


電「まだまだ未熟なのです……」



羽柴矢矧「ふぅん……?アンタみたいなちんちくりんが?」


羽柴「矢矧……上官の艦娘だぞ」


提督「まぁ、疑問に思うのも無理はないだろう……折角だ、誰か手合わせするかい?」


羽柴「いえ、我々は近接戦闘についてはほぼ素人ですので、それは……」


提督「……冗談さ」






電「こちらが食堂なのです。我が呉第三鎮守府は大所帯のため、必然的に飲食スペースと調理場を大きくとる必要があるのです」


羽柴皐月「うっはー、こんなに広い食堂初めて見た!」キョロキョロ


羽柴陸奥「これだけの規模を維持できるなんて、流石は上層部も一目置くエリート、かしら?」


羽柴「私も将来は、これだけの規模を扱う提督になりたいものです」


提督「自慢なのはデカさだけじゃないぞ?うちの料理は他のどの鎮守府よりも美味いと自負してる。丁度昼時だし食べてみてくれ」




間宮「お待たせいたしました」コトッ


羽柴朝霜「うおぉ、美味そう!」


羽柴「こら、ちゃんと座れ!」


提督「構わないよ。それだけ喜んでくれるなら間宮も作り甲斐があるだろう」


間宮「はい、お代わりもありますから遠慮なくお申し付けください」


羽柴「……では早速、いただきます」


羽柴皐月「いただきまーす!」




羽柴朝霜「……うっっっっっっっま!!?このハンバーグ滅茶苦茶ジューシーでうめぇ!?」


羽柴皐月「すごくおいしい!何これ、こんなの初めて食べた……」


羽柴陸奥「料理一つ一つが丁寧に、かつ繊細な味付けで作られている……この規模の食堂でこれだけ緻密な味付けが出来るなんて……」


羽柴「……大佐の所属でなければ、是が非でもスカウトしていたところでした」


提督「そう言ってもらえると自分のことのようにうれしいよ」


間宮「お口に合いましたようで、なによりでした」



羽柴矢矧「…………」ムグムグ


提督「……いかがかな?」


羽柴矢矧「……美味しいわよ。もうほとんど食べちゃってるんだから分かるでしょう?」


提督「お代わりもあるぞ!」


羽柴矢矧「貴方って底意地が悪いのね…………頂くわ」スッ


羽柴皐月「あ、ボクもお代わり!」


羽柴朝霜「アタシもッ!」


間宮「はーいっ♪」


後書き

今回はここまで

生きてます。出張言ってて書けませんでした。PCじゃないと書ける気しないの。


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1: SS好きの名無しさん 2016-09-23 09:45:22 ID: AbMLFWgG

村雨の話ありがとうございますありがとうございます!!!(歓喜)

ええい!こんな番外編が続くなら三日月にも主役の道を平に!平にお願いつかまつる!!!(ただの暴走です)

2: Evin 2016-09-24 00:00:03 ID: vtQcxROl

※1
よろしい、ならば外伝だ

3: SS好きの名無しさん 2016-09-26 06:22:19 ID: HJK-XCGv

母『そろそろ身を固めんと』
提督「余計なお世話じゃ」
母『お見合い決めたから』
提督「勝手に決めんな」
母『もう日にちも気まっとる』
提督「ふざけんな(半ギレ」

初期艦ズ(心折れたっぽい?)

4: SS好きの名無しさん 2016-10-05 11:11:33 ID: w1659uxH

あれ?
電話の話が消えてるっぽい?

5: 朝凪 2016-11-04 17:04:15 ID: 0H6nKbZK

ハラショー!!
ハラショォォオオオ!!!

6: SS好きの名無しさん 2016-11-17 20:01:12 ID: 0Ls_M6Zd

小早川、吉川と来たら次は毛利だよなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ

7: SS好きの名無しさん 2017-01-02 23:37:35 ID: meF7bog6

ん?ちょっと話がきえてる?

8: SS好きの名無しさん 2017-03-25 11:50:58 ID: NzQeuGoZ

しょきかんとは。

9: Evin 2017-03-28 19:48:12 ID: wc3Qz0kR

※8もうちっとお付き合いくだせえ

10: SS好きの名無しさん 2017-09-01 17:44:54 ID: OkMey4p7

宇喜多直家?多趣味どころじゃない宇喜多?

11: Evin 2017-09-02 19:07:28 ID: ub2ZdunB

※10宇喜多さんは裏表のない素敵なおじ様です

12: SS好きの名無しさん 2018-08-05 21:33:45 ID: DQY0LQHM

期待

13: SS好きの名無しさん 2019-08-03 21:46:46 ID: S:z4fYaT

某軽空母「ドーモ、白露=サン、村雨=サン」

14: SS好きの名無しさん 2019-08-03 22:42:53 ID: S:cqH3Zz

某軽空母「ドーモ、白露=サン、村雨=サン」


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