終戦後 ヘタレ提督は大和と結婚カッコガチがしたい
提督がどのようにして大和と結婚カッコガチになったのかを書いたものです。
同棲を始め何回目かの記念日、提督はプロポーズの決心をする。結果やいかに。
厳しかった戦争も終わりを告げ、はや4年。平和を取り戻した日本ではオリンピックの開催が差し迫っていた。
そんな中、鎮守府では、戦争後の後始末も一段落し各々が進みたい道を歩み始め、残った者は国防に努めていた。
「提督、お茶が入りました。」
「あっ!ああ、ありがとう…。」
隣にいる秘書艦、大和は居残り連中筆頭だ。思えば、この最古参の艦娘とは大分長い付き合いになる。一番に練度が上限に達し、一番に指輪を渡し、今では同棲もしている。そんな艦娘だ。
だが、互いの良し悪しが分かり始めた今になって何とも言えない隔たりが生まれている…。さっきの会話のように彼女のどこかしらに冷たい雰囲気が在るのだ。
…わかっている。原因はきっと俺だ。心当たりしかない。
二週間前のことだ。同棲を始め三回目の記念日を、指輪を渡して六回目の記念日を目前にしたとき、俺はある決心をしていた。
「提督、珍しいじゃないか、大和じゃなくて私を秘書艦に使うなんて。ケンカでもしたのか?」
「いや、そうじゃない。大和のことで相談があるんだ。」
「…何だ?ノロケなら聞かんぞ。」
「そうじゃない。…あの、だな。もうそろそろ大和との付き合いの節目を迎えるのだがな…。」
「ああ、もうそんな季節か。めでたいじゃないか。…それで?」
「ンッンン!そっ、それでだな、けっ、けけけけけっ、結婚っ!カッコガチをだな、し、しようとだな思うのだよ…、うん。どっ、どうしたらよいだろうか?」
「…あ?」
「自分で考えろ!」と言いたくてはやる気持ちを、グッと堪えている。そんな顔をする武蔵。どもり、咳払い、裏声、今思うと哀れな姿を晒しているなと我ながら恥ずかしくなる。
「どうだろう?妹のお前から聞けたら心強いのだが…。」
「はぁ、普通で良いと思うぞ。そうだな…。例えば記念日にかこつけて何処かムードのある所へ行って、其処でプロポーズするとかじゃないか?」
「あっ、ああ、やっぱそうか。そうだよな!そうしよう。うん、そうしよう…。」
こうしてその日の大半をプロポーズの計画に当ててその日は終えた。
部屋に戻ると拗ねる大和が可愛かった…。
…じゃなくて、その一週間後の記念日当日、俺はどもりながら大和を誘う。見るからに不自然な態度の俺を見て、何か思うところがあったのだろう、大和は気合いの入った格好で現れた。
そして…
結論から言おう。プロポーズ出来なかった。いや、出来なかったんじゃない。しなかった。
高級店で楽しく飯を食べ、ちょっと歩いてそのまま帰ってしまった。
ここだ!という場面は何度もあった。だが、勇気が、出なかった。
何もしないまま部屋に戻ると大和は少し困惑したような、そして悲しそうな顔になる。
そこからだ、ギスギスしているのは…。俺がヘタレなせいか…。
「おやすみ…。」
「…。」
あれから一週間、大和は俺に背を向けて寝ている。
話は変わるが、戦いが終わってから我々にも週二回の休日ができた。月月火水木金金のブラックな職場だった鎮守府も今となっては他の職場と変わらない。以前のような勤務状態だったら裁判ものだ。
明日はその休日、何か埋め合わせが出来るといいが…。
次の日、目を覚ますと大和はいなかった。彼女は機嫌が悪いと早くに起きてトレーニングをしに出掛けるという癖がある。まあそうだろう、機嫌が良いはずがない。あんなことをされたのだ。しかも今日の彼女はあの日ときている。生理現象もプラスされてイライラがマックスなのだろう。
彼女が帰ってきたのは夜の9時すぎであった。
ご飯は間宮さんらが気を効かせて持ってきてくれたが受け取らなかった。何故か彼女を裏切る気がして申し訳なかったから…。
「おかえり…。」
心なしか彼女の目が赤い。泣いていたのだろうか?
気まずくなった俺は寝室へと逃げこむ。
「はぁー、どうしようか…これ。」
指輪を取り出しては眺め、そして例の日を思い出しては反省する。
〈一時間後〉
寝室のドアが開く。
俺は急いで指輪をしまい横になる。
トットットッ
近づく足音。今まではこの音が待ち遠しかったが、今となっては冷や汗の原因でしかない。
ベッドを前に立ち止まる大和。今日も気まずい夜が始まる。そう思っていると
「提督…。」
「!?」
彼女から話しかけられたのは何日ぶりだろうか?驚きのあまり振り替えるとそこには…
目を泣き張らした大和は何も着ていなかった。
「大和…?」
俺たちのあいだでは金曜と土曜のあいだ、土曜と日曜のあいだが夜の営みをする期間だという暗黙の了解がある。だが、その期間にあの日が被ったら我慢するという暗黙の了解もある。 だから裸の大和見て驚いてしまった。
大和は無言で隣に横になると俺の下半身をまさぐる。反射的に身を引く俺。驚きのあまり声が出ない。
「…提督、提督は私から何か言わないと何も出来ないんですか!」
大和のその言葉にはグサッとくるものがあった。
「えっ、いや…。でも今日は…。」
煮え切らない態度の俺を大和はキッと睨み付ける。
「あの日、期待していたのに。遂にこの日が来たかと思ったのに。…私はあなたともっと特別になりたいです!あなたの子どm!」
それから先は言わせなかった。提督として、彼氏として、男としてこれで良いのか?そんな考えが頭を駆け巡っていた。だからキスで口を塞ぎ、夢中で抱いた。
〈二時間後〉
「はぁ、はぁ…。」
「はぁ、はぁ…。」
心地よい倦怠感、疲労感が体を覆う。そして
「…結婚しようか。」
不意にそんな言葉が漏れる。隣の大和のほうを向くと…
「グスッ、フフフッ、何か忘れてませんか?」
そう言われ、慌てて指輪を取り出し
「結婚してください。」
改めて言い直す。
「…はい、喜んで。」
俺と大和は夫婦になった。
〈数年後〉
あの日の営みがもとで、やまとが生まれた。
「パァパ、マァマ。」
最近は少しずつ言葉を覚え始めている。成長を見ているのが楽しくて仕方がない。
やまと目当てで、暇さえあれば俺たちの部屋に押し掛けてくる武蔵や、やまとを構うばかりでついついおざなりになる大和が拗ねて大変ではあるが、そんな日常が楽しくて仕方がない。
これからも幸せな日々は続く。そう、信じている。
おわり
今回が初投稿です。R-15とR-18の境界がわからなくてR-18とさせていただきました。
小説を作るということにまだ不慣れなので面白くなかったと思います。なのでアドバイスをいただけるととても嬉しいです。厳しい御意見もそれが自分の現実だと受け入れる覚悟はあります。なので二回目になりますがアドバイスをいただけるととても嬉しいです。
これからよろしくお願いします。
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