recolor
どうも、初投稿となります。
文才のかけらもない、黄鼬狐です。
とある方のssを見て、自分もこんなのを書いて見たいと思って、突発的に書いたものです。
ですので、誤字脱字その他諸々あるかとは思いますが、それをご了承の上、読んでいただけると幸いです。ちなみに、ジャンルではラブコメとありますが、"コメ"要素はないです。
シリアスラブストーリーです。
追加、投稿から一週間が経ちましたので、
コメント欄に解説を書きました。
わからなかった方などは見ていってください。
この作品では、視点が比較的頻繁に切り替わります。しかも、敢えて切り替わったという事を書いておらず、口調と行間のみで表現しております。個人的に、視点が変わったという事を書くのが、ゲーム画面を見ているみたいで、なんとなく気持ち悪いと感じるからです。見辛いかもしれませんが、お付き合いいただけると幸いです。
11月11日...
ーーいらっしゃい。
まあまあ、その辺にお掛けなさって。
ひとつ、お話でもしましょうか。
何、別に大した話でもないですんで、
気楽に聞いてください。
これはある男と、
ある、ヒトになった女の子のお話です。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
僕の名前は、カネキ サイセイ。
佐世保の海に面したある"丘"の上に建つ、
此処、ーーー鎮守府の提督として、
日々深海棲艦と言われる日本国へ害を
なす敵軍勢と、
《艦娘》と呼ばれる、
かつての帝国海軍の軍艦の生まれ変わりで、
深海棲艦に対抗するために顕現された
女の子達と共に戦っています。
戦う、と言っても僕ができるのはあくまで
指揮を執ることぐらいですけれど、
彼女達はそんな僕にずっと付いてきてくれて、
非常に心強いです。
だから僕は今日も彼女たちが
しっかりと戦えるよう、
残りの執務を頑張っています。
..........
時刻は02:00
提督「ふう、今日の執務はこれでおしまいです
ね。」
提督「それじゃ、パパッと明日の執務や出撃の
確認とかでもしましょうか。」
???「フフッ、お疲れ様、提督。
今、冷たいお茶でも持ってくるわね?」
提督「はい、ありがとうございます。」
彼女は、阿賀野型軽巡洋艦三番艦ー矢矧。
僕が此処に着任してから、
ずっと秘書艦として務めてもらっています。
彼女は、
出撃すれば必ず大きな戦果を挙げてくる、
秘書艦として僕のサポートをテキパキとこなす、
執務が終われば僕に気遣いまでしてくれる。
まさに非の打ち所がないという言葉が
最も相応しいであろう艦娘です。
また、たまに悪戯を仕掛けてくるのも、
僕が執務漬けになって、
気を病まないようにと想う、
彼女なりの心配りなのでしょう。
そんな彼女に、僕は何時からか..........いや、
出会った時から惚れていたのかも知れません。
提督と艦娘との間には、
[ケッコンカッコカリ]
と言われる制度があります。
選んだ艦娘と、仮の契りを結ぶことができると
いうものです。
もちろん、主な目的は対象となる艦娘との
絆などをより深めることにあるのですが、
中には副産物の【艦娘の戦闘能力の引き上げ】
が目的でそれを行う、
不届き者な提督も少なくないと聞きます。
ですが、[カッコカリ]とは言え、
[ケッコン]は『ケッコン』。
絆も、信頼も、愛も無しに『ケッコン』
を行うなど、一般家庭ならば
良くても喧嘩の毎日、
悪くて『リコン』
最悪、もっとひどいことにもなりかねません。
......僕自身は、秘書艦の彼女ー矢矧さんとは、
今までに数々の危難を共に乗り越え、
それらを築き上げてきた自身はあります。
ですがもし、
[ケッコン]を申し込んで断られたとしても、
それは、まだまだ足りなかったということが、
分かるだけです。
自分がまだまだ甘かったということです。
別に今まで築き上げたものが総崩れになる、
といことでもありません。
だから今度、僕は矢矧さんに、覚悟を決めて、
[ケッコン]を申し込もうと思います。
私が此処に着任してから、
提督は私を秘書艦に指名し、変更することなく
、ずっと傍で彼を支えてきたわ。
彼は、膨大な量の執務をこなし、
それで且つ、私だけでなく他の艦娘たちにも、
度がすぎるほど優しく、親しく接し、
私達が常に十分に戦えるように
作戦を練ったりするのに努めているわ。
そんな彼をずっと傍で見てきて、
最近何か心に引っかかりがあるような
気がする。
引っかかりと言っても、
嫌な感じとか、不快な感じとかではなく、
何かこう......胸が熱くなるような......。
...私は《艦娘》、かつての軍艦、
軽巡洋艦ー矢矧の生まれ変わり。
ヒトの心はまだよくわからないけど、
...多分これが、
"好き"と言う気持ちなのかも知れない。
.............................
[ケッコン]申し込みが間近に迫った、
そんなある日...
提督「さてと、この種、どこに植えましょうかね。」
僕は、執務の気分転換がてら、
花屋へ行ってきました。
突然ですけれど、僕は植物が好きです。
なぜかって?
それは、自分が一生懸命世話をして、
頑張った分だけ元気に育って、花を咲かせて、
必ず応えてくれるからです。
ちょうど、僕の鎮守府の艦娘達のようにね?
おっと、柄でもないこと言いました。
そんなわけで、僕は鎮守府の庭先の花壇で、
いろんな植物を育てています。
数々の花壇はありますが、
特に中央のはお気に入りです。
端から順に、
マリーゴールド、キンモクセイ、
ハギ、ゼラニウムと、
今植わっているのはこの4種類ですが、
今日新しく"朝顔"の種を買ってきました。
小学生の時育てたから簡単だって?
まぁ、初心忘るべからずと言いますか、
たまには童心に帰るっていうのも
悪くないじゃないですか?
まあまあ、そんなことは置いておいて、
どの位置に植えましょうかね?
色々と考えた結果......
提督 (此処がちょうどいいですね。)
そう思いつつ、
僕は"朝顔"の種をその花壇の中央に植えました。
提督「早く育ってくれるといいですね〜。」
.................................
それから数日が経ち、いよいよその日が
やって着ました。
コンコン、ガチャ
誰か入ってきました。
恐らく、矢矧さんでしょう。
.........僕は、覚悟を、決めたんだ......!
矢矧「提督、おはようございます。
今日も頑張っていきましょ?
......って、どうしたの?なんか真剣な表情ね?」
提督「......」
僕は、右ポケットから[ソレ]を取り出した。
スッ...... パカッ......
矢矧「あらっ、綺麗な指輪ね。
これ、どうしたの?」
提督「......あのっ、......これ...矢矧さんに...。」
そう僕は言いました.....、僕は言ったんです.....!
その日、執務室に入ると、
真剣な面持ちをした提督が立っていたわ。
そして、右ポケットから小さな箱を取り出した
矢矧(何かしら?)
と思っていると、提督はその箱を開け、
中から綺麗な指輪を見せて、
私に差し出した。
提督「......あのっ、 ......これ...矢矧さんに...。」
......突然のことに、私は驚いたわ。混乱した。
混乱したまま、提督に言葉を返す。
矢矧「えっ⁉︎これ......、私に⁉︎」
提督 コクッ
提督は頷く。
矢矧「 大和とか、雪風とかじゃなかって、
わっ、私に?」
提督 コクッ「そうです......!」
今度は、返事まで付いてきた。
矢矧「えっ、どうしよう......//
えっと、えっ、どうしよう......//」
混乱しっぱなしで、うまく言葉が繋がらなかっ
た。でも、段々と分かってきたことがあった。
矢矧(提督は、私を選んでくれたんだ。)
矢矧(私と、もっと居たいと思ってくれたんだ。)
そう考えると、嬉しくて、嬉しくて、
嬉しいのに、嬉しいはずなのに、
涙が出てきた。
本当に、ヒトの心はまだまだ、馴染めない。
でも、こんなにも、こんなにも......
矢矧(美しくて、"彩"鮮やかなものはない。)
そう思えた。だから......、
矢矧「そのっ......私でよければ...、
......お願いします。」
この気持ちに、素直になろうと思った。
私は手袋を外し、左手を差し出した。
提督は片膝を立てて、ゆっくりと指輪を私の
左薬指にはめた。.........少し熱い沈黙が続いた。
矢矧「少し......、暑いわね...?」
提督「そう......ですね。少し、窓開けましょうか....。」
そう言いつつ、提督は立ち上がって、
執務室の窓を開けた。
心地よい秋風が入り込んできて、
気持ちが落ち着き、心が安らいだ。
ふと、執務室の窓から庭先の花壇を見ると、
いつだったか提督が植えていた"朝顔"が
綺麗な白い一つの花を咲かせて、
ゆらゆらとそよ風に揺れていた。
すると....
ジー......パシャ!
提督と矢矧「「!!?」」
廊下から、シャッター音が聞こえた。
見てみると、いつの間にか、いつからか、
執務室のドアが、わずかに開いていた。
青葉「青葉、見ちゃいました。」
シュタタタタ.........
少しの間があり、私は状況を理解した。
そして、
ダダダッ!ガチャ、バタン!
矢矧「待ちなさい!青葉ァァァ........。」
矢矧さんがものすごい速さで、
青葉さんを追いかけていきました...。
提督「まぁ、明日には毎度お馴染みの
青葉新聞に載せられるんでしょうね....。」
そう諦めつつも、
内心は少し楽しく、嬉しくもありました。
でも、二人はまだ知らない。
これから起こる数々の事を.........。
.......................................
翌日、
案の定、
青葉さんが全力で矢矧さんを振り切って作った
[あること]が載せられた青葉新聞が、
鎮守府中にばら撒かれました。
それを見たのか、読んだのか、
用もなく執務室に入って冷やかしにくる者、
羨望の思いを告げにくる者、
その他大勢が引っ切り無しに訪れました。
でも、皆心の中では、
(おめでとう)
と思っていることは、分かりました。
なぜなら皆んな、文句を言ったり、非難したり
することは無く、
只々笑って僕たちの仲を見ていたからです。
提督(いい仲間がいるというのは
本当に幸せですね)
と、改めて痛感しました。
だが、提督は気づいていなかった...。
とある一人は、その[あること]を
よく思っていなかったということに......。
それから、数日が経ちました。
今日は[オヨメサ...]、ゲフンッ!
もとい矢矧さんは出撃のため居らず、
執務室には、
代理の秘書艦が来ることになっています。
その代理の方が、
もうすぐいらっしゃるはずですが......、
コンコン、ガチャ
おっ、いらっしゃいました。
榛名「提督、おはようございます。
今日は、この榛名が、
秘書艦を務めさせていただきますね。」
提督「はい。よろしくお願いします。」
この方は、金剛型戦艦三番艦ーー榛名。
この鎮守府に着任して......、
というよりは、とある海域でボロボロになって
いるところを救助した後、ここに就くこととな
り、それ以後かなりの戦果を挙げています。
矢矧さんには及びませんが、
彼女とも、かなり長い間共に戦ってきています。
だから、気心が知れている、
と言うのは少し違うかも知れませんが、
それに近い間柄でもあまたと思います。
............執務中
榛名「提督、これで良かったですか?」
パサッ、ニコニコ
提督「はい、ありがとうございます。
これで大丈夫です。すいません、次はこれをお願いできますか?」
榛名「はい、任せてください。」ニコニコ
彼女は、秘書艦の仕事を楽しんでやっているよ
うで、始終ニコニコ笑っていました。
榛名「そうだ提督、何か冷たいお茶でも持って
きますね?」
提督「はい、お願いします。」
榛名「どうぞ。」コトッ
提督「ありがとうございます。
いただきます。」ゴクゴク
榛名「...............フフッ......」ボソッ
この時、提督は気づいていなかった。
彼女がニコニコ笑っていた本当の意味を......。
.......................................
提督「.........ん...ん〜......
......あれっ....?僕は...執務をしてたはずじゃ......」
目が覚めると、僕は暗い部屋の中にいました。
提督「いや......ここは、地下室でしょうか…。
なんでこんなところに…。」
まだ、薬か何かで意識が少し朦朧とする中、
その部屋だとわかりました。
僕は普段、
その部屋を物置として利用していたため、
用もなくその部屋に入ったことはありません。
しかも、今は僕しかこの部屋になく、
ほとんど空っぽと言っていいでしょう。
提督(何かあったのでしょうか...?)
とりあえず、状況を確認しないといけません。
僕は、立ち上がろうとしました。ですが...、
ググっ......
提督(!?)
提督「縛...られてる...?」
僕は椅子に座った状態で、手足が縛られ、
動けなく固定されています。
......訳がわかりません。
状況を飲み込めず、困惑していると、
キー
鉄扉が開き、誰か入ってきました。
???「お目覚めですか?提督?」
この声は......榛名さん....?
ちょうど良かった。彼女に助けてもらおう。
そう思い、
提督「...榛名さんですか?助けてください。
...僕縛られてて、動けないんです。」
そう求めたのですが彼女は、
榛名「それはできません。だって、提督を
拘束したのは私なんですから。」ニコニコ
と答えました。
提督「⁉︎」
彼女は衝撃のことを言いました。
提督(榛名さんが...僕を...拘束した...?!)
驚いている僕に、彼女は続けました。
榛名「提督はいけないお人ですね?
私という存在がいながら、
別の女に[ケッコン]を申し込むなんて...
......でも、それも今日でおしまいです。
私が提督を奪って仕舞えばいいのですから...。
......ではまずこちらから......。」
そう言いながら、彼女は僕の上着を外し始めま
した。そして、僕の上半身を撫でたり、
触ったりして、刺激し始めました。
提督「何......ッ、してッ、るんですか...ッ!」
榛名「何って......おかしなことを言うんですね。あなたが完全に矢矧さんなものになる前に、
私のものにしてしまうに決まってるじゃないですか....。」ニコニコ
そう言いながら、僕の体を触り続けます。
提督「やめッ...て...ください......!」
そう訴える僕に御構い無しに、
榛名「...今度は、提督が私を触ってください。」
と言いながら、僕の両手の拘束を解いて掴み、
無理矢理自分の体に押し付けています。
榛名「あぁ....提督ゥ、提督ゥ...。」
僕は必死に両手を振りほどこうとしましたが、
艦娘の力は強く、人の力でどうこうできるもの
ではありません。
その時、
カツ...コツ...カツ...コツ...
???「....提督、どこへ行ったのかしら?
机の上の書類は、まだ途中の
ようだったのだけれど...。」
誰かが執務室に入ってきました。
この声は......矢矧さん?!
提督(まずい! 非常にまずい!)
提督(早くこの状況から脱出しなくては!)
提督「榛名さん...!早くやめてください......!」
そう僕が言った時、
榛名「.........ウウゥッ!...。」バサッ
榛名さんの意識が急になりました。
ですが、意識がなくなっても、
榛名さんの両手からは離れられませんでした。
矢矧「あらっ?
なんで、こんなに物が出ているのかしら?
提督?この中にいるの?入るわよ?」
キー
矢矧「.........えっ......?」
遅かった。
遂に、矢矧さんが、入ってきてしまいました。
矢矧「提......督...?...何...してるの...?」
僕は慌てて弁明しました。
提督「いやっ!
違っ、違うんですっ!これは!
そのっ 矢矧「何が違うのよ!」」
提督「!!」
矢矧「そんな姿で、何が違うっていうのよ......!
あなたがそんな人だったなんて、
思いもしなかった......!
今までの私たちの絆も、信頼も、愛も、
一緒に[ケッコン]を喜んだのも、
全部.....全部......嘘...だったのね......!
......もう......いい......!こんな指輪ッ!」
シュッ
チリーン、リーン、.........
矢矧さんが投げ捨てた指輪が、足元に転がって
きました......。
矢矧「.........さようなら......。」
ダダッ
矢矧さんが悲しみの表情、失望した表情に、
涙を浮かべて走り去って行きました。
...........................................
その後、すぐに憲兵さんが飛んできて、
僕はすぐに捕まりました。
艦娘に、自分の欲求をぶつけた男として...。
当然、次の日には大本営から解雇通知が
届きました。
榛名さんの意識が戻ることは無く、
僕の潔白を証明せんとする言い分など
通るはずもありませんでした。
その後、僕は元いた鎮守府を訪れ、
荷物をまとめて、そこを去る準備をしました。
途中、何人かの元僕の艦娘と出会いましたが、
みんな、あの時の矢矧さんと同じ目を
僕に向けていました......。
荷物もまとめ終わり、鎮守府を後にする時、
あの花壇が目に入りました。
そこには、萎れて今にも枯れそうな"朝顔"と、
マリーゴールドと白のゼラニウムが
嫌に活き活きと花を咲かせていました.....。
..........................................
その事件があった後、
僕はずっと田舎の家で引き篭もっていました。
それからはずっと......、
サイセイ(外に出るのが怖い。)
サイセイ(人と会うのが怖い。)
サイセイ((自分を見られるのが怖い。))
そんな思考が頭の中をずっと泳いでいました。
ギュルルル
突然、僕のお腹がなりました。
サイセイ「.....そういえば、.......最後に物を
食べたのは...いつ...でしたっ...け...」
あのことがあってから、
僕は何も食べていないような気がしましたが、
その時は、そんなこともを考える事すらも
煩わしく感じるようになっていました。
....................................
僕が目を覚ますと、白い天井が見えました。
看護師「......お目覚めですか?
...カネキさん?」
サイセイ「.........ここは?」
..................
看護師さんによると、
僕は玄関も閉めずに自宅で倒れているのを、
偶然訪ねてきたご近所さんが発見して、
運ばれたようです。
どうやら原因は【栄養失調】で、
どうやら僕は5日間ほど飲まず食わずで、
相当危なかったらしいです。
今は、点滴をして、治療を受けています。
ベッドに横になりながら、
窓から空を見ると、
暗い鈍色の雲が一面に広がっています。
サイセイ(今日は雨でしょうか......。)
そんなことを思いながら、
ベッドから立ち上がって、外を眺めつつ、
窓に手を置いたその時、
ズキズキズキッッ
強烈な頭痛が襲いました。
ドサッ
僕は思わずそこで、
仰向けに倒れんでしまいました。
少しして、頭痛がほんの少しだけ引き、
僕は体を起こそうとしましたが......
ゾクゾクゾクッ
次は、全身に悪寒が走りました。
提督(栄養失調の...影響...でしょうか.......)
そう思い、顔でも洗ってスッキリしようと
備え付けの洗面台へフラフラと歩き、
なんとか顔を洗って、少しは楽になりました。
サイセイ(もう少し......、
休んだ方が良さそうですね...。)
そう思いながら、顔を上げました。その瞬間、
オオェェェェェェ
今度は、今までに体験したことのないほどの、
強い吐き気に襲われ、嘔吐しました。
.........栄養失調なのだから、吐けるものなんて、
何もなかったはずのに......
その後も、顔を上げるたび吐き気に襲われて、
だんだんと意識が朦朧としてきた中、
気づいたことがあります。
それは、今僕が頭痛や悪寒、吐き気を感じてい
るのは、栄養失調のせいでもなんでも無く、
〈僕自身〉に対するものであるということです。
サイセイ(.........そりゃそうですよね.....)
病院に運ばれ、点滴を受けて、
頭に養分が回ったためか、
あのことについて、
再度考えられるようになりました。
サイセイ(僕が榛名さんの気持ちに
少しでも気付けていれば、
未然に防げたかもしれない!)
サイセイ(薬を盛られても、
僕がもう少し強ければ、
抵抗できていたかもしれない!)
サイセイ(僕があの時の状況をうまく
説明できていたら、
収っていたかもしれない!)
サイセイ(そして、それらができていれば、
......矢矧さんに、みんなに
あんな思いをさせずに
済んだかもしれない......!)
サイセイ(......イヤだ......イヤだ......
見たくない......!見たくない!)
サイセイ(そんな穢らわしい僕を見たくない!
そんな憎々しい僕を見たくない!
そんな忌々しい僕を見たくない!)
サイセイ(見たくない見たくない見たくない
見たくない見たくない見たくない見たくない
見たくない見たくない見たくない見たくない
見たくない見たくない見たく......ないッ......!)
そんな言葉が頭の中を埋め尽くし、
意識が歪む中、ヨロヨロと洗面台に手をつきま
した。その時、
カタッ
僕の手が何かの柄に触れました。
サイセイ(これ......は...、剃...刀...?)
......そこで僕の脳裏に、
ある考えが浮かびました....。
サイセイ(.........そうです.......!...
コレがあれば......、コレを使えば......、
コレで......、コレで......! コレでっ!)
......僕は勢いに任せて真一文字を描きました...。
...........その日から、僕は"彩"を失いました.........。
.................................
看護師「............カネキさん。
...大本営の方がお見えです。」
サイセイ「......どうぞ、入れてください。」
ガチャ
元帥「.........久しぶりだな......。」
サイセイ「その声は、元帥さんですね......。
お久しぶりです...あの時以来ですか.....。」
元帥「...そうだな......。」
サイセイ「それで......
僕に何の用でしょうか......?」
元帥「.........まずは
お前に謝らないといけない......。
.........すまなかった......。」
サイセイ「......なぜ...
あなたが謝るの...ですか....?」
元帥「実は......、
今回の事件の原因となった、
艦娘...榛名についてだが......
彼女は実は、かつて大本営が管理していた
ある実験の被験艦だったことがわかった..。」
サイセイ「......ある......実験...。?」
元帥「そうだ......。
そして、その実験というのが......、
擬似的に[ケッコンカッコカリ]状態にする
というものだったらしい。
容易に[ケッコンカッコカリ]状態に
することができれば、戦力が大幅に上昇する
というのが、
当時の大本営の考えだったようだ...。
当時は、 俺が元帥になる前の下っ端
だったから、こんなことが行われてたとは
知らなかった...。
そして、その実験の途中で脱走した艦娘が
一人いたようだ......。
それが......あの榛名だったんだ。
当時の大本営は、懸命の捜索をしたが、
見つからず、打ち切り。
実験自体も成果が出ず、中止になった。
...そしてその榛名を保護していたお前が、
今回の[ケッコンカッコカリ]を行なった
ことによって、当時投与された薬等の、
残っていた成分が誤作動的に反応し、
暴挙に出た後、成分が切れて、
意識不明になった......。
......これが、今回の事件の真相だ...。」
提督「............。
...そんなことがあったのですね...。」
元帥「すまない......。
調査も何もなしに、罪を課してしまった......。
発覚したのも、隠蔽されて、地下の奥深くに
保管されていた資料を、
偶然発見したからなんだ。
それがなかったら、今頃お前は......。」
サイセイ「......別にいいですよ。
そんな秘密裏の実験だったのなら、
隠蔽するのも当然ですし、
あなたはあの時下せる最良の判断
をしたまでです......。
後になって出てくる情報なんて、
わかるはずもありませんし......。」
元帥「......本当にすまないな...
そして、...感謝する......。」
提督「......いえ。」
元帥「......少し話は変わるが、
お前、 ...提督に
.....あの鎮守府に戻る気はあるか.....?」
提督「............こんな体で、
まともな仕事ができるとは、
思えないのですが......。」
元帥「......もちろん、そこについては俺の責任で
特別な対応をさせてもらう。」
サイセイ「.........それに、
彼女たちが許してくれるはずなんて
ないですし......。」
元帥「......無論、彼女たちにも説明した...。
...皆、泣いていたよ。
私達は、提督になんて酷いことを
したんだろう。と。」
サイセイ「.........。」
元帥「...彼女たちから、手紙も預かっている。」
謝罪などの内容だろうな......。」
サイセイ「.........今の僕に渡されても、
......困ります。」
元帥「そう......だったな...。
......すまん。」
サイセイ「.........。」
元帥「...............
今、彼処には代わりのものが
就いているんだが..、
...どうやら出撃することすら、
ままならないらしい......。」
サイセイ「.........。」
元帥「......今すぐに答えは出さなくていい。
でも......、一度、
顔だけでも出してやってくれないか?」
サイセイ「.........僕は、
彼女たちに恨みを持っているわけでは
ありませんし、......いいですよ。」
元帥「......感謝するぞ...。
日程等は、後日連絡する。
では、後ほど。」
サイセイ「はい。」
...........................
数日後、僕は元帥さんに連れられて、
かつての鎮守府を訪れました。
元帥「着いたぞ。
俺はこの後、少し予定があるから、外すぞ。
帰るときは、また連絡してくれ。」
サイセイ「分かりました。」
ブロロロ
そう言うと、元帥さんは行ってしまった。
サイセイ(ああ、懐かしい香りですね...。)
僕は、鎮守府に植わっていた花の香りを
頼りに、そちらの方へ歩いて行きました。
正門に着き、開けて中に入りました。その時、
???「.........提......督?」
聞き覚えのある声が聞こえました。
サイセイ「...矢矧さん...ですか。」
花の水やりをしていたのでしょうか。
矢矧「......なん...で...?
ここに...?」
サイセイ「元帥さんから話を伺って、
様子を見に......、いや...、
顔を出しにきたんです。
.....ここで話すのもなんでしょうし、
執務室まで、連れて行ってもらえますか?」
矢矧「......ええ、わかったわ。」
僕は、矢矧さんに連れられて、
執務室に行き、現提督に事情を説明し、
執務室を空けてもらいました。
.....................
少し沈黙が走りました。
先に口を開いたのは矢矧さんでした。
矢矧「............その...あの時は、
本当に、本当にごめんなさい!!
あなたが、あんなことするわけがないのに
あの時のあなたを見て、つい、
感情的になってしまって、
あなたを軽蔑するような態度まで
取ってしまった......。
許してもらおうだなんて思わないわ...。
でも、謝ることぐらいはさせて。
本当に、ごめ...「矢矧さん......」」
僕は彼女の謝罪の言葉を遮るように
話しかけました。
矢矧「?」
サイセイ「......許すも何も、
僕は、あなた方を恨んだりなんか
初めからしてませんよ....。
あんな状況でしたら、そう判断するのも
至極まともなことなんですから...。
だからもう、謝らなくても大丈夫ですよ......。」
矢矧「......え...
.........いいの?
本当に......いいの...?」
サイセイ「もちろんです...。」
矢矧「...ありっ 、......がと、...うっ...。」グスッ
サイセイ「泣かないでくださいよ...。
せっかくまた会えたんですから...。
湿っぽいのは嫌でしょう?」
矢矧「...、...、ええ、そうね。
....それで..........その包帯は...どうしたの?」
......ついに聞かれてしまいました。
僕は、あの後にあったこと...
飲まず食べずで倒れて死にかけたこと、
あのことを防げなかった自分自身が嫌いになったこと、
自分を見なくてもいいように"彩"を自ら絶ったこと、
......全て話しました。
私は、彼の話を聞いていて、
胸が張り裂けそうな感じがした。
......いっそのこと、本当に張り裂けて仕舞えば
楽だったかもしれないのに......
でも、彼をここまで追い込んだのは、
"私"なんだ......。彼は、恨んではいないと言って
いるけど、原因は違う。"私"なせいなんだ...。
その"私"が楽になれるなんて、
虫が良すぎる話だし、
そんな道理があるわけがない。
...じゃあ......どうする...?
......どうすれば、罪を償える......?
私は苦し紛れに気になったことを聞いた。
矢矧「............ねえ....?
あなたは...、この後どうするの....?」
彼は答えた。
サイセイ「......元帥さんからは、
提督に....、此処に戻らないかとは
言われていますが、正直、僕なんか
に務まるとは思えませんし.....。」
......提督が、戻ってくるかもしれない......?
戻って来れば、また一緒に過ごせるかも
しれない......。
また一緒に笑ったりできるかもしれない...。
じゃあ、そのために"私"にできることは.........
矢矧「..................なる...。」
サイセイ「...えっ?何か言いましたか?」
矢矧「私が、あなたの"彩"を見る目になる。
私があなたの傍にいて、あなたを支え続ける。
あなたが私の、ヒトの心に"彩"を
教えてくれたんだもの...。
今度は、私があなたを導く番......。
それが、私のできる私自身の贖罪...。
だから......、」
矢矧「.........帰ってきて、
...提督...。」
僕は今、頼りにしている耳を疑いました。
矢矧さんはこんな僕に帰って着てほしいと
言いました。僕は思わず......、
サイセイ「.....いいんですか.........?
僕なんかが、提督に戻って....?
本当に......、いいんですか...?」
彼女は答えました。
矢矧「......あなただからこそよ。
あなたが傍にいない私たちなんて、
もはやかつての《軍艦》同然......
あなたがいたから、私たちは、
《艦娘》為りえたのよ......。」
............まずいです。
サイセイ「...本当に...いいん...ですか...?」グスッ
.........まずいですね。
矢矧さんに、泣かないで、とか
言っておきながら......僕が泣きそうです...。
泣いちゃいけないのに、
もう涙なんて出ないはずなのに、
泣きたくて、泣きたくて、仕方がありません。
......そんな僕を察したのか、
矢矧さんが僕のことを抱きしめたようでした...。
矢矧さんはそのまま僕の頭を撫でながら......
矢矧「...あなたは穢らわしくも、
憎々しくも、忌々しくもなんかないわ...。
だって、あなたはずっと私達のことを
大切にしていたじゃない...。
だから...、そんなあなた自身のことを
どうか嫌いにならないで......。
あなただから帰ってきてほしいのよ...。」
と諭すように語りかけてきました。
そんなこと言われたら...言われてしまったら...。
サイセイ(ああ......僕はなんて馬鹿なことを
したんでしょうか。
こんなにも僕のことを思ってくれる存在が
いながら、自分から、絶ってしまうなんて......。)
そして僕はこう答えました。
サイセイ「......分かり...ました。
僕でよければ......、
もう一度提督をさせて...ください。」
矢矧「......ええ、もちろん私も、私達一同、
喜んで歓迎させてもらうわ...。
......いえ......、違うわね......。」
サイセイ「...?」
矢矧「......だって此処はあなたの場所、
あなたがいてもいい場所、
あなたがいるべき場所なんだもの......。
だから、こちらの方が正しいわね..。」
矢矧「提督.........、お帰りなさい。」
.........その言葉に、
僕はもう我慢ができませんでした......。
提督「...っ、...っ、ウ...ウウァァァァ.........!」
僕は、声をあげて泣いてしまいました。
全く......、不甲斐ないですよね......。
その間も、矢矧さんは僕を優しく、
抱きしめていて来れました。
..............................
矢矧「......もう、落ち着いた?」
提督「...はい、ありがとうございました。
.........そうです、矢矧さんにお渡ししなけらば
ならないものがありますね......。」
矢矧「?」
提督はそう言うと、自分の左手から
[ソレ]を外して私に差し出した。
矢矧「......これって......、あの時の?」
提督「そうです。
あの時...、捨てられた時は
ショックでしたが、あのままだと
今までの記憶まで見捨てるようで......
憲兵さんに連れられる前に拾って、
僕がつけていたんです......。」
......私に、[ソレ]をつける資格なんて
あるのだろうか...。
矢矧「私が......、またもらっても...いいの?
私は..、[ソレ]を捨ててしまったのに...?」
彼は答えた。
提督「いいも何も...、
これはあなたのものなんです。
あなたが持っているべきものなんです。
だから、......もう一度、受けてもらえますか?」
ーーーああ、今度は私の番か...。
矢矧「......はい。喜んで......。」
そう答えると、私は彼の手を取り、
私の左手へと誘導した。
[ソレ]が再びはめられた時、
私の両目から涙がこみ上げてきた。
私は、思わずまた彼に抱きついてしまい、
そして泣いた。
さっき彼が流せなかった涙の分まで
埋め合わせるのかように、大粒の涙を流して...。
.................................
???「....いやいや、泣かせてくれるね....
全く。」
提督と矢矧「「?!!」」バッ
僕らは突然した声に驚き、
咄嗟に身を離しました。
サイセイ「...元帥さん⁉︎なぜ此処に?!
予定があるのではなかったのですか?」
その声は、先ほど予定で外すと言っていた
はずの元帥さんのものでした。
元帥「......ああ、これがその予定ってやつだ。
ほら、これ、仕事道具だろ?」パサッ
元帥さんはそう言うと、
僕の両手に何か乗せました。
提督「......これって...。」
元帥「それがないと、
提督の格好がつかないだろ?
......もう答えは出てるみたいだな。
.........お前なら、きっと戻ってくれると
信じていたさ......。
改めて、礼を言うよ。......ありがとう。」
僕が絶対に此処に戻るものだと
どこで確信していたのでしょうか?
あんなにも僕自身が嫌いだった僕を見て...。
...でもまあ、その時にはもうそんなことは
どうでもよくなっていました。
元帥「それを着て、席を着けば提督の復活だ。
......いや、もう復活しているな...。
手続き等は、俺がやっておく。
後日、任務等の詳しい書類を送るよ。
お前はそれまで、かつての、
そしてこれからの仲間との
再会を楽しんでくれ。
ではな......頑張れよ......。」
そう言い、元帥さんは部屋を出て行きました。
その後、僕は更衣室へ連れられ、
懐かしいあの服に着替え、
執務室へと戻りました。
そして、あの席に座りました。
そして、僕は彼女にこう言いました。
提督「矢矧さん......、良ければまた、
秘書艦をお願いできますか?」
彼女は......
矢矧「.......もちろん受けさせてもらうわ。
あなたの傍にいることが、
私の役目だもの......。」
そして続けて...こう言いました。
矢矧「だから提督、改めて.........
最後まで頑張って行きましょ?」
...........................
その後、執務室にかつての、そしてこれからの
仲間がやってきて、
謝罪の言葉を残して行きましたが、
僕が恨んでない旨や、
この"目"のことを告げると、
みなさんやはり、泣き出してしまいました。
ですが、最後には全身全霊で僕の力になると、
なんとも心強いことを言ってくれるのです。
やっぱり僕はこう思いました。
提督(本当に、
仲間というものはいいものですね。)
........................
あれから数日が経ち、鎮守府が本格的に
始動するようになりました。
僕に渡る書類等は、全て点字に直せるように
元帥さんが特別に機械を配備してくださり、
鎮守府全域に手すりなども、
元帥さんのご好意で備えられ、
容易に移動できるようになりました。
あの榛名さんの意識も戻り、薬の治療も
完全に終了し、僕の所へ謝罪に来たあと、
今後は大本営に所属することになったようです。
鎮守府運営については、
さすがに戦果や効率などでは前よりだいぶ
落ちてしまいましたが、
それでも僕は、僕らは、
共に居られる、戦えるというだけでも
十分幸せでした。
..............................
それから数年が経ちました。
ここを含む、各地鎮守府の奮戦により、
長く続いた深海棲艦との戦いが、
もうじき幕を閉じようとしていました。
Prrrrrrrrr ガチャ
提督「はい、こちら佐世保ーーー鎮守府。」
元帥「ああ、俺だ。」
提督「ああ、元帥さん。
ご無沙汰しております。
どうかなさったんですか?」
元帥「 .........ようやくだな。」
提督「何がですか?」
元帥「......終わったんだよ。
この長く続いた戦いが......。」
提督「..................はい?
それって.........、つまり......。」
元帥「ああ、
我々人類の勝利ということだ‼︎
たった今、確認に行っていた鎮守府から
連絡が入ってな。間違いはないそうだ。」
提督「そうですか......!!
本当に......、長かったですね。」
元帥「......そうだな。
お前たちも...、よく頑張ってくれた。
先に俺から言わせてもらう。
...ありがとう。」
提督「...元帥さんこそ、
お疲れさまでした。」
元帥「...ああ。
今順番に各地鎮守府の解体をしている。
じきに大本営からその連絡が入るだろう。
連絡が来たら、そちらの鎮守府も解体となる。
早めに準備は済ませておいてくれ。
要件はそれだけだ。」
提督「......そうですか。
わかりました。
進めておきます。」
そう言って、電話を切りました。
人類が勝利したのは嬉しかったが、
此処の皆さんと、別れるのは少し寂しいと
思いました。
役目を終えた艦娘は、艤装が解体されて、
今度は人として社会の中で、
生きていくことになります。
艤装解体されると、
完全に人の体に置き換わり、
歳も取り始めるようになります。
また、彼女達が社会へと出る際には、
希望により、新しい名前をもらうことが
可能であり、
僕が確認を取らなければなりません。
僕には、そのように彼女たちを社会へと
送り出すための手続きや支援などという、
最後の重要な任務があります。
提督「......今まで頑張ってくださった皆さんの
為にも僕も最後には頑張らないと
いけませんね。」
僕はそう言いつつ、最後の任務に
取りかかりました。
...........................
数日が経った10月25日。
その日の数日前に大本営から連絡が入り、
今日がこの鎮守府の解体日となりました。
僕は彼女たちを、講堂に集めました。
そこで解体式を開きました。
式が順調に進み、最後に僕が言葉を言う番が
回って来ました。
僕は、秘書艦を務めてもらった矢矧さんに
連れられて壇上へと登りました。
前もって準備した、
ある『大事なもの』を持って......
提督「えっと。
皆さん、今まで本当に、本当に
お疲れさまでした!!」
元艦娘達 「お疲れさまでした‼︎」
提督「途中で、いろいろなことがあったり、
十分な支えができていたとは
言えませんが、こんな僕今までずっと
ついて来てくれて本当に本当に
ありがとうございました!
今日で、この鎮守府も解体と
なるわけなのですが......」
元艦娘達「............」ススッ グスッ
皆さんは寂しさのためか、
泣いているようでした。
僕は、寂しさは感じてはいましたが、
最後には笑って終わらせたいと思いました。
提督「......この鎮守府が解体されたからといって
僕らまで二度と会えないと言うわけでは
ありません。またいつかどこかで
偶然会うことも、
そう少なくはないと思います。
だから、その時にはまた声をかけてください。その涙は、再会した時に流してください。
だから、今は、最後には、
清々しく終わりを迎えましょう。」
艦娘達「......わかりました!」
元帥「みんな、覚悟は決まったようだな。
それじゃあカネキ、締めてくれ。」
提督「はい。
それでは、本日、この式を以って
ーーー鎮守府の解体とさせていただきます。
皆さん、本当にお疲れさまでした‼︎」
全員「お疲れさまでしたー‼︎」
サイセイ「そしてっ!」
解体の言葉に続けた彼の方を見ると、
彼はいつかの日のように片膝をつき、
右手に小さな箱を持っていて、
その中には、
矢とハギの花の形の装飾があしらわれたものと
キンモクセイの花の装飾があしらわれた
2つの美しい『指輪』があった。
矢矧「......提督?」
サイセイ「あなたは、
僕がこんな状態になっても、ずっと、ずっと
僕の傍にいて、僕を支えてくれました。
あなたにとってはそれが贖罪なのかも
しれませんが、僕にとってはかけがえのない
時間でした。
だから、僕はこれからもずっとそんな時の中で
過ごしたいと思いました。
あなたがよければ、これからもずっと
僕の傍にいてくれませんか?つまり......。」
サイセイ「僕と、『ケッコン』してください!」
全員「!!!!!!???」
私は、いやその場にいたみんな驚いた
ようだった。
私は、以前のように、驚いたまま聞いた。
矢矧「えっ、えっ、えぇ⁉︎
それって、ど、どういう......。」
サイセイ「言葉通りの意味です。
カッコカリではなく本当の『ケッコン』
をしてくださいと言いました。
それに今日はあなたの誕生日ですよね?
これが、僕からのあなたへの最大の
プレゼントでもあるのです。
....受けていただけますか?」
体温が急に上がって、鼓動が早くなってる。
他のみんなを見ると、ニヤニヤしながら、
私が答えるのを待っている。
まるで、私の答えが決まっているかのように。
...でも、その通り、私の心の中ではもう既に
答えは出ていた。
矢矧「......はい。喜んで...。」
そう言って、
私はそのキンモクセイの花の方の『指輪』を、
いつかのようにもう一度、彼の手を取って
私の指につけてもらった。
......................
式の後、二人で執務室へ戻りました。
そこでは、やっぱり前のように僕らを
いじりに来る者がいましたが、
言うまでもなく、彼女らは僕らのことを
祝ってくれているのだと分かりました。
そこから、僕らは鎮守府の最後の後始末の後、
執務室の最後の整理をして、
僕らは此処を去りました。
私たちは、思い出の鎮守府を背にして、
歩き出した。
矢矧(もう、ここへ帰って来ることは、
ないのよね......。)
そんなことを思いながらも、
私はこれからの彼と歩む未来に、
楽しさや嬉しさを覚えていた。
私は、歩きながらあることを思い出した。
そういえば......、
矢矧「ねぇ...、そういえば私、
この後の名前について、
まだあなたに伝えてなかったわよね?」
サイセイ「そういえば...、そうですね。
どうなさるのですか?希望があるのでしたら、
僕が後から大本営に連絡して
おきましょ「その必要はないわ」」
サイセイ「?」
私の心は決まっていた。
矢矧「この私の名前は、ここでのあなたとの
思い出がたくさん詰まっているものだから、
新しい名前なんかじゃなくって、
"矢矧"のままで、あなたの傍にいたいの...。」
サイセイ「...そうですか。
分かりました。では、よろしくお願いします。
"矢矧"さん。」
矢矧「ええ、よろしくお願いします...。」
そう言って、また私たちは歩き出した。
道の脇に咲く、"カエデ"の葉が秋風に乗って、
まるで、秋の"はなふぶき"とでも言うかの
ように、私たちの頭の上を舞っていた。
歩きながら私は彼に、
矢矧「......ほんと、色々なことがあったわね。」
と言って、矢とハギの花の『指輪』をつけた、
彼の手を握った。
サイセイ「......そうですね。」
そう返して、彼もその手で
キンモクセイの『指輪』をつけた私の手を
ぎゅっと握り返した。
すると、
ソヨソヨソヨソヨ
いつか執務室へ吹き込んだような
優しい秋風が、鎮守府の方から吹き、
キンモクセイとハギの花の香りが、
私たちの鼻をかすめた。
私たちはそちらを振り返った。
そこには、あの花壇で、両端の花が枯れ、
中央では高く、高く伸びた蔓に、
白い、3つの大きな"朝顔"の花が、
秋のそよ風に揺れているのが、
私の目に映った。
矢矧「ねぇ......、あの"朝顔"
とても綺麗に咲いているわよ...。」
僕は、彼女のその言葉を聞いた時、
枯れかかっていたあの"朝顔"を思い出し、
少し驚きましたが、
なぜか不思議だ、とは思いませんでした。
サイセイ「...そうですか。
僕には見ることはできませんけど...、
......今の僕たちなら、
わかるような気がします.........。」
そう言って、
彼は私の手をもう一度強く握った。
矢矧「......ええ、そうね。」
そう言って、私も彼の手を握り返した。
僕たちは、再び歩き始めました。
あの思い出の鎮守府をもう一度背にして...。
少し歩いた時、矢矧さんが立ち止まったのか、
繋いでいた手が後方に引かれました。
僕は振り返りました。
すると、僕の方が身長が低かったはずなので、
いつもならば、
少し上から聞こえていた彼女の声が、
その時は僕の顔のすぐ真横で、
矢矧「私は...、あなたのことが...ずっと、
......これからもずっと、
..............大好きよ.........。」
と聞こえました。
そして次の瞬間、
矢矧「......だから......、...ねっ...?」
彼女の息が僕の口へと掛かりました......。
---------------
その後、彼女はこう続けました。
矢矧「提督...、いえ...、サイセイさん...、
これからもずっと...、頑張って行きましょ?」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
いかがでしたか?
えっ、話が長いって?
まだまだ若いはずなのに、
長話なんて年寄りみたいですね。
あれ、もう行ってしまうんですか?
もう少し、ゆっくりなさればいいんですのに...
???「ねぇ、あなた?
お昼、何食べる?」〔台所から〕
...でもどうやら、
こちらもそろそろのようですね......。
「今、行くんで待っててくださーい。」
ふぅ、それでは、お別れするあなたに
ある花を贈りましょう。
少し待っていてください...
スタスタスタ
えっと、確かこの辺だったはずですが...
クンクン
.........これですね。
スタスタスタ
お待たせしました。
それでは、あなた方にこの
"ビオラ"の花を贈って、
お別れといたしましょう。
花言葉はーーーーー
〜fin.〜
お付き合いいただいてありがとうございます。
この話には「花言葉」が
バカの一つ覚えのように使われております。
基本的には秋に咲いている花で
そろえてありますが、描写の関係上、
秋ではないものも一部入っているかもです。
すいません。
概要にあるように、
投稿から一週間が経ちましたので、
コメント欄に解説を書きました。
わからなかった方などは見ていってください。
どうも、初めまして。
作品の方、読ませていただきました!なるほど……こういういろんな人から目線で……参考になります。
提督と矢矧が結ばれて良かったし、榛名も仕方ないですけど、そもそもの事の発端を作った青葉はギルティ……
途中で感情移入してしまいながら、最後まで読ませていただきました。
安易な言葉で申し訳ないですが……読んでいて楽しかったです!
コメントありがとうございます。
青葉は、ただ単に鎮守府中に伝えたというだけで、青葉自体が原因ではないつもりです。表現が下手くそですいません。
真にギルティなのは、昔の大本営なのです.....まじで許すまじ。
ところで、実は花言葉以外にも隠し要素的なものを施してあるのですが、お気づきになられましたか?
お気づきだったのなら、すいません。
(矢矧の誕生日は本当は9/25なのですが、
描写の関係上、ネットでよく使われている
10月25日に泣く泣く変更したという裏話もあります。)
読んでくださった方、ありがとうございます。花言葉はもちろん、そのほかも隠し要素にも気づいていただけましたか?
解説とかってした方が良いのでしょうか?
よろしければ、コメントして伝えてもらえると幸いです。
(と言いますか、僕の表現でちゃんと伝わってるのかどうか心配です...。)
約一週間経ったので解説します。
・1つ目 主人公カネキ サイサイは
金木 犀星(室生犀星様から拝借しました。)
で、金木犀が隠れております。花言葉は謙虚
・2つ目 白い朝顔の花言葉は固い絆であり、指輪の数に応じて1→0→3へと変化しています。マリーゴールドは絶望、白のゼラニウムは、あなたを信じないという花言葉があり時間前後の花の状態で二人の関係を表しています
・3つ目 鎮守府の場所の"丘"
カエデの秋の"はなふぶき"
矢矧の(もう帰ってくることはない)
と言う心のセリフで矢矧の慰霊碑の歌を再現しました。
(ゆきしふね かえらぬおかの はなふぶき)
本来はマイナスな雰囲気があるのですが、10月25日の進水日に詠んだことで、
これからの二人の生活への期待というプラスの雰囲気を持たせました。
続きます。
・4つ目 実はカエデは10月25日、
矢矧の進水日の誕生花なのです。
そしてその花言葉は大切な思い出。
思い出が脳裏をよぎっているのを再現しました。(ほんとはモミジとかでもよかったのですが、カエデだと10画で10月と10繋がりでいいなと、拘りました。)
・5つ目 最後のビオラは冒頭の11月11日、矢矧の起工日の誕生花であり、花言葉は
小さな幸福。読んでくださった方も小さな幸福から何か始まるといいですねという思いを込めました。
こんなところです。これらを踏まえてもう一度読んでいただけたらなと思います。
有難うございました。
すいません。
解説の訂正です。一つ目の部分カネキサイサイではなく、カネキ サイセイです。
シリアスをずっと書き続けられていて
凄いと思います(*´・∀・)ノ
私なら途中で絶対コメディをいれちゃいますw
花言葉もお洒落でいいですね♪
更新頑張ってください( ´∀` )b
7は私です(´・ω・`)
連コメ失礼しました(^-^;
7、8さんコメント有難うございます。
僕は不器用なんで、途中で路線変更みたいな高尚な芸当ができないんです。
初投稿で、花言葉などに手を出してしまったため、限度を弁えずに使ってしまった次第です。この物語は終了しましたが、
多分次回作も、花言葉が出てくるかもしれません(常習犯予備軍)。
連コメでも、コメントしていただけるだけで幸福至極でございます。