2019-01-07 18:03:01 更新

概要

整備士のいる鎮守府の物語です。


前書き

ここはなんの変哲もない鎮守府。日々、艦娘たちが訓練や出撃に勤しんでいます。
ただ、ひとつ他の鎮守府とは違うところがあります。それは提督以外にもう一人別の男性『整備士さん』がいることです。
これは整備士のいる鎮守府の物語…

提督はみんなから 「司令官 司令官さん 提督」 と呼ばれています。
整備士はみんなから 「整備士さん 整ちゃん 整さん」 と呼ばれています。

初SSなので細かいことは気にせずに…


これは整備士のいる鎮守府の物語…


ーーーーーー


ー瀬戸内海に浮かぶやや大きな島にこの鎮守府は開設された。桜が舞っていくなか、提督は執務室で、工廠にはとある青年が整備をしていた。


工廠「カーンカーンカーンカーン ギュイーン カチャカチャ ガチャン 」


?「ふー… 主砲と魚雷管はこれでいいかな、後は…」


提督「よーす。やってるかー。整備士さん。」


ー整備士はその声に振り替える。


整備士「あ。どーも提督。またさぼりですか。」


提督「またさぼりって… 休憩だよ。休憩。いっつもさぼってるみたいなこと言うな。」


整備士「すみません。でもいつも休憩って言ってサボってるんで、今回もそう思っちゃいましたよ。」ハッハ


提督「お前な…  ところで整備の方はどうだ?」ハァ~


整備士「順調ですよ。あとはテストをすれば主砲と魚雷管はいつも通り、装備できると思います。」


提督「了解。今どの子の艤装を整備してる?」


整備士「吹雪の艤装を整備してます。あの子戦闘で相当無理な機動してるみたいなんで、タービン周りは帰ってくるたびボロボロですよ…」


ー整備士は持っていたタブレット端末にデータをアップさせ、提督に渡す。


提督「あー。あいつは頑張り屋さんなんだけどな…」画面スクロール


整備士「頑張るのはいいことですが、頑張りすぎてタービンがオーバーヒートを起こしたら、かえって危険です。作戦中ならなおさらです。安全装置はついてますが、あくまでもおまけみたいなものです。提督も吹雪によく言ってやってください。」


提督「わかったよ。吹雪に伝えとくわ。」


?「し れ い か ん?ここにいたんですね。」


ー工廠入口から提督を呼ぶ声が聞こえる。提督のタブレットの指の動きが止まる。


提督「げ…」ヒヤリ


?「トイレに行くって言って、なかなか帰ってこないと思ったらこんなとこで油売ってたんですね。」ニコ


ーその声の主は 特型駆逐艦一番艦 吹雪。この鎮守府の初期艦で秘書艦でもある。いつもは謙虚で健気な子だが怒るとマジで怖い。今回もどす黒いオーラを漂わせながら提督に近づいていく。顔は笑ってるが、目が笑ってない。


整備士(あ、提督死んだわ。)


ー整備士は直感で分かった。

 次の瞬間、固まっている提督に吹雪の見事な『ラ・ケブラーダ』が決まった。(知らない人は アニメ「日常・日常の24」を見てね!)


ーーー

提督「」チーン


吹雪「さ。司令官行きますよ。起きてください」パンパン


提督「」チーン


吹雪「起きませんね。まあ、引きずって行きましょう。」襟ツカミ―


提督「」ズルズルズルズル


整備士(提督マジで死んでないよね?大丈夫だよね?てか、吹雪が『ラ・ケブラーダ』したときにパンツ見えた!純白の白だった!ヤッタゼ!)


吹雪「あ!整備士さん!」


整備士「なんだい。吹雪。」キリ


吹雪「提督がご迷惑をお掛けしてすみませんでした。」ペコ


整備士「いいよいいよ。おけげでこっちもいいものが見れたからwin‐winだよ。」


吹雪「?」


提督「吹雪…さすがに『ラ・ケブラーダ』はないぜ…」イタタタタ


整備士 吹雪(あ。生き返った。)


吹雪「執務そっちのけで抜け出した提督が悪いんです。ほら!さっさと戻りますよ。」


提督「イテテテテ。引っ張んなって!」


提督「あ。そうだ整備士さん! 今日の昼過ぎぐらいにお客さんが来るから、工廠きれいにしといてよ~!」ヒラヒラ~


整備士「了解しました。(工廠に?執務室じゃなくて?誰が来るんだろう…)」


ー整備士は工廠から出ていく二人を見送りながら、二人の仲睦まじい姿を少しうらやましそうに眺めるのでした。




ーーーーーー

[演習場]

ーここは出撃や任務のない艦娘たちが日々訓練に励む演習場です。その演習場の端に整備士の姿がありました。この場所は、整備士が整備した艤装のテストを行う場所でもあるのです。


整備士「では、これより整備済み艤装動作テストを行います。妖精さん準備はいいですか?」


妖精さんA「おっけー」


妖精さんB「データ収集の準備も万端です!」


整備士「では、まずタービン機関から。出力を10%づつ上げていき、最終的に120%までもっていきます。   開始!」


タービン妖精さん「りょーかい!」

ーグウォーン ウォンウォン ウォンウォンウォン…


整備士「次に主砲。」


主砲妖精さん「いっくよー!」

ードーン! ガチャン ドーン!


整備士「次に魚雷。」


魚雷妖精さん「あいさー!」

ーカシャン バシュ!


ーーー

ーー



整備士「以上で、整備テストは終わりです。お疲れさまでした。」


妖精さんs「おつかれしたー。」


ー整備士はタブレットで得られたデータを見ながら、数値や振動の確認をしていた。一方妖精さんたちは艤装の片付けに向かったようだ。


妖精さんA「なー。みんなよー。」テクテク


妖精さんs「なんだー。」テクテク


妖精さんA「整ちゃんさーやばすぎない?整備済みの艤装テストなんて、他の鎮守府はどこもやってないよ。」テクテク


妖精さんB「ま―確かにね。でも作戦中に不具合が起こるぐらいならいいんじゃない?」テクテク


妖精さんA「そうだけどさー。今は艦娘少ないからいいけど、今後増えたら整ちゃんの負担も増えることになるでしょ?大丈夫かなー。」テクテク


タービン妖精さん「まあ、うちの鎮守府が特殊だけどねー。艦娘の艤装いじれる整備士なんて聞いたことないよ。他の鎮守府では私たち妖精が整備してる聞くし。うちでもそうしてきたでしょ?でも、整ちゃんがいるおかげで私たちの負担も減ってるからねー。本人気づいてないけど。」テクテク


主砲妖精さん「このテストって、整ちゃんが自主的やってるんでしょ?提督の命令でもないし、艦娘が増えた時はそれなりに工夫するんじゃない?」テクテク


魚雷妖精さん「そういえば、この前提督が整備士の負担軽減スペシャルゲストを呼ぶって言ってたな。その人が来れば整ちゃんの負担も減るんじゃない?」テクテク


妖精さんA「そうなのかな…」テクテク




ーーーーーー

[工廠]

ー整備士は動作テストの結果を見た後、少し足早に工廠に戻っている途中だった。まだ途中の整備艤装があるのと、来客の為に工廠を片付けなければならないからだ。


整備士(急がないとなー。っと、工廠の電気がついてる。消したはずなんだけど… 来客の時間までまだ早いし、提督でも来てるのか?)


?「おー!たくさんのデータ!図面!工具!素晴らしい!特にこのデータ面白い!」


ー工廠から聞きなれない声が聞こえる。


整備士(ん?提督じゃないのか?ってことは提督が言ってたお客さんか?)ヒョコ


ー整備士は確認するように陰に隠れて中の様子をうかがった。


?「でも…なにこの部屋!整理整頓がしっかりされてないじゃない!それに男臭いし!最悪!」ウガー


整備士(なんやあの女…勝手に部屋に入っていきなり罵倒かよ…)


?「ここの提督は『この鎮守府には他の鎮守府にはいない、整備士っていう男性がいるんだ。仲良くしてやってくれ。』って言ってたけど、絶対に無理!」ウガー


整備士(えー…そこまで言う…)


?「どうせ、その整備士の男ってのはクッサイ中年オヤジなんでしょ!いやだ!一緒にいるだけで吐き気がする!」ウガー


整備士(なんだよ。その酷いイメージは…俺まだ20代前半だし…。てか、クッサイ中年オヤジなら提督の中にもいるだろう…。お前の整備士の偏見の方が怖いわ。)イライラ


?「とりあえず。私はあの整備士のいうことなんて絶対に聞かない!だって、クッサイ中年オヤジ整備士の命令なんて聞きたくないわ!」ウガー


整備士(ブチ)


整備士「だから俺は20代だっつーの!」ガバ


?「へ…?」


ーーー

ーー



ー静かになった工廠にの机にコーヒーが二つ置かれた。さっきからうるさかった女性は、下をむいたっきり顔を上げない。


整備士「てなわけで、この鎮守府で艦娘たちの艤装整備などを担当している 整備士だ。 よろしくたのむ。」


明石「工作艦 明石 です…(やばいよこれ…絶対、整備士さん怒ってるよ。しかもクッサイ中年オヤジじゃないし…若いし どうしよう…)」ダラダラ


整備士「ま。男くさいかもしれないけど同じ職場にいるんだし少し我慢してくれ。俺も今後、気を付ける。」


明石(あれ?そんなに怒ってない?なんで?)


明石「あのー。」ソローリ


ー下を向いていた明石がやっと顔を上げる。


整備士「なんだ?」


明石「怒ってないんですか?」


整備士「なんで怒るんだ?」


明石(え?)キョトン


ー予想外の回答に明石は驚いて固まってしまった。整備士は続ける。


整備士「明石も会ったことのない人といきなり同じ職場になる不安から、さっきの本音が出たんだろ?」


明石「…はい…」


整備士「(はい って『クッサイ中年オヤジ』の奴は本音だったのかよ…)だったら、仕方がない。新しい環境で不安になるのは誰でも同じだ。」


明石「…」


整備士「だからさっきのは、聞かなかったことにする。」


明石「!」


整備士「明石をゆするネタが、持てただけでも俺にとっては大収穫だ。」ニヤニヤ


明石「ちょ!誰にも言わないでください!お願いします!」


ー予想外の食いつきにびっくりしたが、少し面白くなった整備士は。


整備士「どーしようかなー」


ーと、定番のセリフを吐いて明石の反応をうかがう。


明石「お願いします!何でも言うこと聞きますから!」


整備士「ん?今、『何でも言うこと聞きます。』て言ったよね?」


明石「はい…。(あ。やばい。)」


ー工廠に再び沈黙が訪れる。数秒ほどだったが明石にとってはその数秒がとても長く感じた。それはそうだ、目の前にいるのは若い男。何を命令されるかわからない。明石には逃げ場なかった。


整備士「んじゃ」


明石(ビック)


整備士「これから同じ整備士同士、仲良く協力していこう。よろしく頼む。」


明石「え?」


―またもや予想外の回答に明石が固まる。明石が考えていたことは皆さんのご想像にお任せしよう。


整備士「なんだ。やっぱ男と一緒は嫌か?」


明石「い、いえ!そういうわけではないです。」


整備士「?」


明石「とっ! とにかくこちらこそよろしくお願いします!///」ペコ


ー整備士と明石は軽い会釈の後、がっちりと握手を交わした。こうして工廠には、二人体制で再スタートした。


妖精さんs「スペシャルゲストって明石のことか…これで整ちゃんの負担が減るといいな。」ヒョコ




ーーーーーー

[データ]

ー整備士は出撃・演習のたびに艦娘からデータを取っている。明石はその記録されたデータを見ながら整備士に疑問をぶつけるのであった。


明石「整備士さん。」


整備士「なんだ?」


明石「このデータってどうやってとってるんですか?」


提督「俺も気になる!」ヒョコ


明石「!!?」


ー整備士は明石に質問に答えようとした時、提督がどこからともなく現れた。整備士は突っ込むことをあきらめ話を進める。


整備士「艤装に装置をつけてるだけだけど…」


提督「その装置はどうやってつけたの?どこについてんの?」ワクワク


ー明石が質問しようとしたことを提督がどんどん喋っていく。


整備士「主にタービン・主砲・魚雷発射管と一部装甲につけてますよ。」


ー整備士は実際に装置をセットした実物の艤装を明石、提督の前に置き説明する。


明石「センサーはどんなのが?」


整備士「出力・振動・温度・傾斜感知センサーとGPSかな…」


明石「そのデータはどこに集約されるんですか?」


整備士「主に艤装の後ろ…艦娘でいうと背中側につけてる。はじめはHDDつけてたけど、重いし音もうるさいし壊れやすいから小型のSSDに替えたよ。ただ、塩害もあるからかなり重要にコーティングしてる。」


提督「でも、コーティングし過ぎたら重くなるんじゃない?」


整備士「それは妖精さんの力で何とかなったんですよ。まあ、SSD自体が小型で軽量だからコーティングもそこまで厚くなくても大丈夫みたいです。」


明石「それって、移動中もずっと記録してるんですか?」


整備士「いや、移動中はしてないけど戦闘開始の掛け声が始まったら記録するようになってる。あとは戦闘後5分間は記録してるね。機関や主砲がクールダウンしている時だから。ちなみにこれも、妖精さんの技術。」


整備士「んで、そのデータから機関や主砲・魚雷の稼働率。艦娘が戦闘中にどのような動きをしているのかをはじき出し、提督に報告してる。って提督に認可もらうために話したはずなんですけど…」チラ


提督「そうだっけ?忘れちゃったw」ケラケラ


整備士「まあそんな感じでデータを取ってる。」ハァ~


整備士「深海棲艦の動きは艦娘が出す報告書や、時々マイクロカメラ載せてるからそのカメラで帰ってきてから確認する。」


明石「へぇ~。そうやってとってんですか。やっぱ練度によって変わるものなのですか?」


整備士「変わるね。例えば初期艦の吹雪と、最近建造で着任した深雪では、同じ特型駆逐艦でも動きの切れが違うね。」


ー整備士は、パソコンの前に座り二人のデータを出した。


整備士「例えばこの前、吹雪が演習場で深雪の指導をしていた時のデータがあるけど、同じコースを走ったのに吹雪の方が燃費が良くてタイムも早い。深雪は急加速と減速を多くしていて、タービンにも負担がかかっていた。タイムも吹雪に比べて4秒遅い。」モニターユビサシ


明石「つまりこのデータからわかることは、深雪ちゃんはうまくタービンコントロールができていないと。」フムフム


整備士「そうゆうこと。じゃあ深雪をうまく育てるためにはどうしたらよいか。明石ならどうする?」


明石「ん~。私だったら、吹雪ちゃんのデータを深雪ちゃんに見せて、吹雪ちゃんと同じように動かしてみますね。それが一番手っ取り早いし…」


整備士「半分正解だな。」


整備士「確かに、吹雪のデータを深雪に実践させるのはあっている。ただし、それが深雪にとって最良の判断だとはわからない。」


明石「と言いますと?」


整備士「あくまでもデータは吹雪のものであって、吹雪が経験上の最良のタービン効率なんだよ。深雪に最初からそれを植え付けると、深雪の個性がなくなってしまう。そして、深雪が求めているタービン効率と違ったものを教えるのかもしれない。」


整備士「だからあくまでも、参考程度に教えるのがちょうどいいんだよ。そこからどう発展させていくかは、深雪次第だ。そうやって考えさせて、成長させていくのがこのデータの役割でもある。」


整備士「0~100を教えるんじゃなくて、0~25ぐらいまでを教えとけば後は勝手に成長する。戦闘でも自分で考えて行動するようになる。そうなればこのデータは必要なくなるんだ。それが一番いいことなんだよ。」


ー整備士はこのデータにかける思いを話した。明石・提督もしっかりとした返答が来て納得しているようだ。

ちなみに整備士によると、駆逐艦のセンサー装着はかなり苦労したらしく、限られたスペースでセンサーや記憶媒体を取り付けるのは骨が折れたそうだ。しかも、駆逐艦の艤装ばかり(センサー装着のため)触っていたため、周りの駆逐艦たちから ロリコン 疑惑も出たそうだ。その時なぜか、長門が親しく話しかけてきたことがあり整備士は今でも謎に感じている。


提督「整備士さんもいろいろ考えてやってるんだな。」


ーと提督が感心している時


吹雪「し れ い か ん?」


ー悪魔のささやきと共に提督は連れていかれた。

そして…


提督「ギェーーーーーーーーー」バキボキ


ーその悲鳴は島の反対側まで聞こえたという。




ーーーーーー

[整備士 仕事の流儀]

ー明石が来てから、この鎮守府は賑やかになった。整備士の負担となるためあまり艦娘を増やさない方針でいたのが、明石が来て余裕が生まれたため本格的に建造などを始めたためだ。明石は建造・整備・修理を受け持ち、整備士は整備・テスト・新規改良図面などを受け持っている。


整備士「ん~。ん?あ~。そうすれば…」カチカチ


明石(何やってるんだろう?)


ー明石は後ろから整備士のパソコンをのぞき見した。


整備士「明石どうした?」カチカチ


明石「ふぇっ!なんでわかったんですか!」ビック!


整備士「パソコンにモニターに反射してた。」ユビサシ


明石「あーなるほど…  なに書いてるんですか。」


整備士「飛行妖精さんの救命いかだの図面。」


ー整備士はパソコンに書いていた図面を明石に見せる。


明石「なんでそんなものを?」


整備士「飛行妖精さんから、頼まれたんだよ…」



ーー

ーーー


飛行妖精さん「なぁなぁ、整ちゃんよー。」


整備士「なんですか飛行妖精 編隊長さん。」


飛行妖精 編隊長さん「救命いかだ 作ってくれんかい?」


整備士「いいですが、なぜそんなものを?」


飛行妖精 編隊長さん「格闘戦・雷撃・爆撃攻撃のことは知ってるよな?制空権を維持し、開幕で甚大な被害を与えられる大切な戦闘だ。」


整備士「はい。知っていますが…」


飛行妖精 編隊長さん「もちろん敵もそれを防ごうと攻撃してくる。そして撃墜される場合もある。そうなったとき、パイロットは貴重な存在だ。今は、撃墜されるとベールアウトできるようになっているが、それでも戦闘が終わるまでは海の中にいなきゃなんねぇ。」


整備士「なるほど。言いたいことはわかりました。仲間を失うわけにはいきませんもんね。」


飛行妖精 編隊長さん「さすが整ちゃんだ。話が早くてありがてぇよ。提督には許可を取ってある。仕様書はこれだ。よろしくな!」


ー仕様書ー

1.一つに一編隊の人数が入れること

2.毛布食料などを用意すること(1週間)

3.救難信号を発することができ、夜間でも見えやすいようライトをつけること


ーーー

ーー



整備士「ってな感じだ。」


明石「なるほど。なかなか厳しい仕様書ですね…でも、大丈夫ですか?整備士さん整備もしながら図面書いてますよね。休んでます?」


ー明石は心配だった。整備の仕事は毎日入ってくる。中には翌日までにという急速な事案も入ってくるわけで、明石・整備士共に整備の傍ら他の仕事をしている。最近では、出撃の機会も多くなり整備する量も増えていった。そんな中整備士は、頼まれた図面を休憩時間などを削って書いていた。


整備士「別に睡眠時間を削ってるわけではないから大丈夫だよ。残業も、明石と分業体制に入ってから少なくなったし。」カチカチ


整備士「それに…」


明石「それに?」


整備士「俺は実際に戦場に行くわけではない。戦っているのは艦娘という女の子だ。妖精さんだ。俺や提督はここで無事の知らせが届くのを待つしかない。」


整備士「だからこそ日ごろの整備には手を抜けない。俺は艦娘たちの命を預かってるわけだ。ほかの艦娘も俺を信頼して、整備を任してくれている。その信頼を裏切らないためにも俺は整備後テストも欠かさない。やり過ぎだと言われるけど、俺のミスのせいで命を落とす艦娘がいてたまるか。たとえ、倒れても艦娘の異常報告があれば直す。それが俺の流儀だ。」


整備士「そして、この図面は飛行妖精さんの命がかかっている。いち早く試作品をもっていかないといけない。妖精さんも一人も死なせやしない。艦娘、妖精が死ぬくらいなら自分の命を捧げる。」


明石「そうですか…」


整備士「すまん。重い話になってしまったな。忘れてくれ…」


明石「いえいえ…何か手伝えることがあれば言ってください。」


ー明石は整備士の決意に震えながらも、なぜそうまでして自分の身を削るのかわからなかった。ただ、整備士にはそれほどまでの信念を支える何かがあることは感じた。


整備士「では明石、さっそく手伝ってもらおう。」


明石「はい!」


ーーー

ーー



コレヲコウシテ~。ア~イイデスネ。コンナホウシキハドウダ?コウスレバコンパクトニナルゾ!………


明石「飛行妖精 編隊長さん。できましたよ。」フリフリ


飛行妖精 編隊長さん「おー!できたかー!」ガタ!


整備士「納得できればこれで量産に入っていきます。」


ーそう言って整備士は機雷のような形をしたものを取り出した。飛行妖精 編隊長は意外なものが出てきて驚いている。


整備士「まずこれは機雷のように見えますが、この中にいかだが入っています。これを水面に落とすと…」ポイ


いかだ「ボン! シューーー! テッテレー!」


整備士「このように完成します。原理としては水に落とした衝撃で、外枠が外れ中のゴム製のいかだに空気が入り膨らみます。平時はこのようにコンパクトに収まるので、場所を取りません。どの艦娘にも装着可能です。あと、膨らんだら自動的に救難信号が送られるようになっています。」


飛行妖精 編隊長さん「おー!原理はわかった! がこの後どうするんだ?どう救助してもらう?」


整備士「それは、2式大艇に救助をしていただきます。理由としては、艦娘が出撃中に救助活動を行うことも可能でしたが、敵機の奇襲などの恐れがあるため、航続距離が長く水面に着水できるものとして、2式大艇が最も効率が良いと判断しました。ただし、帰投する場合はその場での救助になります。あくまで進撃するときだけこの2式大艇を使う方針でいます。」


飛行妖精 編隊長さん「だが、うちには2式大艇がないぞ?」


ーこの鎮守府は艦娘が多くなったとはいえ、他に比べるとまだまだ小規模であった。そして飛行妖精 編隊長が言うとうり2式大艇は持っていなかった。


明石「それなら問題ありません!」


ー明石が自慢げに答える。


明石「大本営に今回の計画を話したところ、『妖精の生存率を上げる画期的なシステム』との好評をいただき、条件付きで2式大艇を4艇もらえることになりました~!」


飛行妖精 編隊長さん「4艇も貰えるんか!だが、条件付きとは?」


整備士「大本営からは…

『1.救命いかだの無償技術提供

 2.2式大艇を救助艇専用にすること

 3.いかだ製造の販売権を大本営とすること』

との条件を提示されました。もちろん快諾しましたけどね。」


飛行妖精 編隊長さん「いいのかい整ちゃん!?それは大本営が得をしすぎるんじゃ…」


ー確かにこの条件では整備士が得をしないことになる。ただ整備士には秘策があったようだ。


整備士「確かにこの条件では、特はしません。ですが、多くの妖精さんの命を救えるかもしれません。自分はお金儲けのためにこの技術を売ろうとは思いませんし、多くの妖精さんが助かるなら自分にとってこれ以上幸せなことはないと思っています。」


整備士「しかし、開発者なのだから少しは報酬が欲しいとも思っています。そうでないと新しいものが作れませんから。だから大本営には旧式の技術を提供したんです。」


飛行妖精 編隊長さん「旧式?整ちゃん新型も開発したのかい!?」


整備士「新型ではなくオプションを付けたんです。もちろんこの旧式でもしっかりと救助が出来ますし、生存率も上がります。ただ、これには欠点があって救難信号の誤差が大きいんです。半径2000mといったところでしょう。オプションでは、救助専用2式大艇にこの救助タブレットを取り付けるだけで範囲が半径250m以下になります。救難信号とGPSを組み合わせているので、誤差が小さく済むんです。これで効率よく発見でき救助がスムーズに行えます。」


整備士「救助タブレットを取り付けるだけなので、大本営のいかだと、各鎮守府が持っている2式大艇を改造するだけでいいんです。大本営からは、救助救助専用2式大艇の改造権利はこちらが持ってもよいとのことなので、多少の報酬が獲得できるんです。うまくいくかはわかりませんけどね。」


明石「ただ、どちらにせよ整備士さんの技術が認められたんです!これはすごいことですよ!」


ーしかし、この技術の発明者は整備士ではなく明石となっていた。これは提督の判断で、大本営に整備士がいることを内緒にしていたのと、整備士が大本営に取られてしまうかもしれないという危機感から、開発者を明石に変更した。整備士もこれを承諾した。このことを明石は知らない。




ーーーーーー


整備士と鎮守府の物語 2 



に続く。


後書き

ご視聴ありがとうございます。

できれば評価やコメントなどしていただくとありがたいです。

次回は2式大艇改造編などをお送りします。なお次回は1・2週間後に更新となります。

次回もお楽しみに!


このSSへの評価

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2021-01-16 15:32:02

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-: - 2018-11-27 16:55:12 ID: -

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1: SS好きの名無しさん 2018-11-27 22:43:39 ID: S:k2eypS

ふと思った。

フランス

絶対王制華やかなりし頃を参考

艦娘全員が『既婚者』か『結婚を約束している恋人』が存在

艦娘は外見は若い女性か少女だが肉体が老化しないだけで年齢は実際の『艦齢』とし、提督と結婚しており『秘書艦』を勤めている艦娘を頂点として鎮守府内で『社交界』を形成している。

一例

高雄夫人

摩耶夫人

愛宕夫人


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