花陽「冷たい朝の公園で」
私は朝早く目覚めたから近所を散歩していた。
近くにあった公園のベンチに誰かが座っているのが見える。
……あ、凛ちゃんだ。
普段の彼女からは想像できないような顔をしている。
すごく、落ち込んでいるようだ。
凛ちゃんとは幼馴染みだが、あんな表情は初めて見た。
私は凛ちゃんと、【あいたい】と思っていた。
それは2つの意味で。相対。会いたい。
少し話がずれてしまったが……さて、どうして凛ちゃんは落ち込んでいるのか。
とりあえず私は話しかけることにした。
一歩、また一歩と凛ちゃんへと近付く。
かなり近付いても気付かない。
それほど考え込んでいるのだろうか。
「凛ちゃん?」
少し微笑んで答えてくれた。
「かよちん……」
微笑んでくれたが笑顔が硬い。
引き攣っている。
やはり凛ちゃんにはいつもの笑顔でいて欲しい。
私は隣に座り、また口を開いた。
「どうしたの? 何かあったの?」
凛ちゃんは少し考え込むような顔をしていたが、もう一度微笑み、こう言った。
「大丈夫にゃー」
全然大丈夫には見えない。
幼馴染みだからとかそういうのではなくて、誰が見てもわかる。
そのくらい大丈夫ではないのだ。
私はこの気持ちを悟られないように少し微笑み再度口を開く。
「……本当に?」
すると、すごく震えた泣きそうな声が私の脳を刺激した。
「大丈夫だから。 もう、行って……」
私も泣きそうになってしまった。
私まで泣きそうになるなんて凛ちゃんに心配かけたくない。
そう思い、私はベンチを立つ。
ふと、腕を掴まれる。
「行かないで……」
「……行かないよ、凛ちゃん」
もう既に泣いてしまっている凛ちゃんを隠すように私は抱きしめた。
体温が伝わってくる。
何があったのかは全くわからないが、取り敢えず今は凛ちゃんを守ってあげたい。
今までは凛ちゃんに助けられてばっかりだった。
でも、これからは私が凛ちゃんを助ける番なんだ。
冷たい朝の公園の中で私たちを祝福してくれるかのような優しい風が吹いていた。
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