意地っ張りの求める愛のカタチ
意地っ張り翔鶴と提督のラブストーリーです。
設定です
提督→優しくて包容力もあり、滅多な事では怒らない様にしている。ただし、度が過ぎたらブチ切れて取り返しが付かなくなるほど怒る。翔鶴と恋仲の関係で、彼女の性格を理解しているけど鈍い
翔鶴→提督が大好きだけど絶対素直にならない、構ってくれないといじけるor滅茶苦茶不機嫌になって八つ当たりする程拗らせる。提督が自分以外の人と接すると相手に舌打ちする位憎む程嫉妬深い。駆逐艦は大嫌い(小柄だし利便さも良くて沢山褒められるから)
瑞鶴→翔鶴の良き理解者かつ叱ってくれる存在。とにかく翔鶴と提督のフォロー役に徹する苦労人。
提督「あ、翔鶴!」
翔鶴「………チッ、何でしょうか」
提督「寄るだけど予定ないかな?無かったら俺と、」
翔鶴「何で貴方如きと付き合わないといけないのかしら?」
提督「そう言わずにさ…」
翔鶴「……アホくさ、帰ります」
提督「ちょ、翔鶴……」
提督「…また、俺何かやったかな……」
俺と翔鶴は、つい最近男女の仲になった関係だ。アプローチは俺からで、告白も俺から。その時の返事は、「別に……いいですよ」と素っ気なかったものの顔はとても真っ赤で、嬉しそうな声音だったからお互い了承してのもの。しかし彼女はかなり意地っ張りで、素直じゃない面倒な性格だ。
ふとした事で不機嫌になって、その後も引きずって機嫌を治してくれない。何が原因なのかも教えてくれず、謝っても許してくれない。何度も謝っても相当素直になれなくてじゃないので、聞き入れてもくれない。今日もまた、一緒に外で食事したいからと俺が呼び止めて振り向いたら、舌打ちをされて思いっきり眉間に皺を寄せていた。明らかに機嫌が悪かった。それでも怯まずに、何とか自分の心を奮い立たせた。だが、その望みは一刀両断されてしまい身体も顔もそっぽを向いていた。他所の翔鶴からは有り得ない程のドスの効いた低い声を聞くだけで、不機嫌なのは分かった。
一度断られてしまったら、もうこれ以上踏み込めない。俺一人のワガママで翔鶴を振り回したくないから。俺を一瞥すること無く翔鶴はそのまま消えてしまった。
瑞鶴「はぁ…本当に懲りないわね、翔鶴姉は」
提督「瑞鶴…」
瑞鶴「私からも謝るわ。ごめんね、提督さん。翔鶴姉は見ての通り、とんっでもなく面倒臭くて苦労するでしょ?でも、本当は提督さんともっと仲良くなりたいし、恋人らしい事したいって私にも言ってたの。それは本当だから」
提督「そうか…。でも、何であんな態度になったんだろう…」
瑞鶴「今日、白露型の子達褒めてなかった?」
提督「そうだな。山風と春雨が遠征で大成功を収めた…あっ…。翔鶴には、悪い事をしたな」
瑞鶴「提督さんは何も悪くないよ。悪いのは翔鶴姉だから。駆逐艦がいてこその遠征なのに、小柄で可愛くて、褒める所が沢山あるから嫉妬するなんて前代未聞じゃない。褒めてモチベーション上げるのは上官として当然なんだから、間違ってない。後で私がみっちり叱っておくから。ほら、戻っていいよ」
提督「すまないな、瑞鶴」
瑞鶴「全く、素直じゃない恋人と姉を持って大変よね」
きっかけは、龍驤さんとサシ飲みをしていた時だった。
翔鶴「龍驤さん、これは?」
龍驤「これ?ああ」
私の視界に入った、彼女の首に着けられていたネックレス。装飾に通されていたシルバーリング。私はそれに眼を奪われてしまった。
龍驤「鳳翔とオソロなんや。何十万もするけったいなモンとちゃうけどな」
翔鶴「もしかして、お揃いですか」
龍驤「まあな、へへっ」
安物だと言いつつも、リングを大切にする手つきと見詰める時の幸せに満ち溢れた瞳。愛する人とお揃いの物を持てることが嬉しくて堪らないと語っていた。
翔鶴「鳳翔さんは、何と仰っていましたか?」
龍驤「言葉失った後、嬉しさで顔を赤くしながら泣いとったわ。で、ありがとう、ありがとうって喜んどってな。こんな安物でも、喜んでくれるんやなって」
翔鶴「なんで、ペアリングをあげたのですか?」
龍驤「うーん…単純に、ずっとアイツの隣におりたいからやな。言葉がだけじゃ足らんから、形として何かを贈りたい。それがこれだったんや」
安物だと言ってるが、値段がどうであろうと愛と想いが詰め込まれた指輪を貰えるなんて嬉しくて仕方ない。あの時の鳳翔さんを思い浮かべながらリングを眺める龍驤さんの瞳を細めた笑顔はとても綺麗で優しくて。私にはとても眩しかった。
翔鶴「(いいな…)」
純粋に羨ましかった。
龍驤さんから無二の愛情を全て与えられる鳳翔さんが。一生の傍にいる、愛してるという確たる証拠である、お揃いの銀色のペアリングを貰った鳳翔さんが。
好きな人から一心に愛されている鳳翔さんが。
羨ましくて羨ましくて、仕方なかった。
私も同じくらい、好きで堪らない人からの愛情を示した物が欲しかった。
相手はもちろん、提督とのお揃いの物。
瑞鶴「翔鶴姉、また駆逐艦の子達に嫉妬したでしょ。そういうのやめなって、何度言えば分かるの?」
今私は、瑞鶴に怒られている。原因は私にある。だって、大嫌いな駆逐艦なんかを褒めて頭まで撫でたから。本当は私だってうんと褒められて頭を撫でて欲しいのに、素直になるのが悔しくて意固地になってしまう。恋愛は勝ち負けなんかじゃないけど、嫌なものは嫌。嫌いな相手を褒めて頭を撫でるなんて、私の心が許さなかった。だから、その手で触れられたくなくて棘のある態度を取った。私だけを見て、私だけを褒めて、私だけを愛して欲しいのに。ああ、駆逐艦なんて大嫌い。
瑞鶴「何、その顔。悪くないとか言いたいだろうけど、何被害者ぶってるの。提督さんは上官として当然の事をしただけ。資材をしっかり稼いでくれる駆逐艦を褒めるのは当然でしょ。それも気に食わないの?」
翔鶴「……だって、大嫌いだもの…。嫌いなものを褒めた人なんかに誘われたくなかったの。嫌なものは嫌なの」
瑞鶴「あのさぁ……駆逐艦があってこその私たちじゃん。それが分からないの?だったら何で空母として存在してるの。提督さん悲しんでたよ。好きな人にあんな態度、しかもどうしようもない理由であんな事言われたら傷つくでしょ」
翔鶴「あんな事じゃないわ!瑞鶴だって加賀さんに嫌な事言われてるじゃない!その度に言い返してるのに!」
瑞鶴「加賀さんと一緒にしないで。確かに嫌味言われてムカつく時はあるけど、言ってる事は筋通ってるし的確なの。私達の為に嫌われ役を買って出てる人なのを知ってるから、嫌いなんて一ミリとも思ってない。翔鶴姉のくだらない我儘なんかと比べ物にならないから」
翔鶴「〜〜……っ!」
瑞鶴「て言うかさ、もっとちゃんと素直になったら?駆逐艦嫌いなのはどうにもならないとして、提督さんにこんな態度を取っていい訳?いつか取られるからね?」
翔鶴「うう……今更、素直になるなんて、嫌よ。悔しいし恥ずかしいし」
瑞鶴「はぁ〜……呆れた……」
翔鶴「勝手にしたらどうなの。とにかく、私は悪くないもの」
瑞鶴「ったく……どうなっても知らないよ?」
翔鶴「………」
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