2022-10-02 18:54:14 更新

概要

蒼空の見え始めたこの鎮守府では、いまだに雨が降っている…
それは今の戦況を表しているに等しいだろう。そんな中の二人の日常は──


前書き

どうも、時浦愁伍(時の雨秋の月)です。球磨ってなにかと出来る娘だよねと思っています。
完結済みです。
そして、旧垢からの再掲です。




空が白んで周りを侵食する雲と互いに譲りながら雨は降っていた。それを窓際で眺める一人の男性はとても憂鬱そうな顔をして溜め息をついた。


球磨「どうしたクマ?そんならしくもない溜め息なんかついて」


後ろから声が聞こえた。その声の主こそ我が鎮守府の秘書官であり、吹雪に続いての最古参である「球磨」だ。彼女に心配そうな声などあるはずが無く、ただ気になったかの様な質問をしてきた。


提督「そりゃぁこの天気を見て、今の我々を思わざるおえないじゃないか」


球磨「…確かにそうだクマ」


このやり取りで分かられる方もいないだろう。長年続く謎の敵対生物「深海棲艦」との戦争は確かに「艦娘」達の活躍によって終幕へ向かっている。しかし、それが今でも終わらないのだ。それが天気と被って見えたからだ。単なる比喩に違いないだろう。そんなものが冗談に見えないこの戦争は既に戦う意義も無いだろう。


提督「よくもまぁこんな時に深海棲艦警報が出るなんて死神は私達と一緒に踊っているのか?」


「神は死んだ」。そうニーチェはいった。

確かに神すらも関わりたくない仕事に空席が出来たら死神が喜んで席に就くだろう。


球磨「そんな顔して終わるんだったら皆やってるクマ。警報出てるから早く哨戒班を出すクマ」


相変わらず仕事の事になるとしっかりとしているからなぁ…


提督「はぁ…」


提督「よし!じゃあ放送をかけるぞ」


球磨「分かったクマ。放送くらいお茶の子さいさいだクマ~」


そうして放送で集まったメンバーは対潜特化が一つと水雷戦隊が一つ。哨戒には空母の直掩機も付けておく。


球磨「全員揃ったクマ?」


提督「今回のk──」


球磨「今回の警報では大型艦は見られなく、水雷戦隊相当の艦隊だそうだクマ。今奴らはここ沿岸の輸送航路を叩こうとしてるクマ。前の哨戒班が早めに発見したからまだ距離はあるクマ。第一水雷戦隊は直ちに迎撃、対潜装備を持った娘は潜水艦を警戒するクマ。」


「「「「了解!」」」」


あの…球磨さん?私の役を取らないでくれないかな?仕方がないな…


提督「これより船団を護り、撃滅せよ!総員抜錨!」


私達は埠頭から帽振れをして見送った。


提督「それで、何で役を奪ったの?」


球磨「奪っただなんて人聞きが悪いクマ。だって提督が遅いからだクマ~」


本当に仕事はしっかりしてるのに…どうして仕事モード以外の時はこんなにものんびりだらだらしてるんだろうか?今だって執務室のソファーで寝転びながら顔を膨らませてるし、

可愛いなぁ、もう!


球磨「球磨は優秀なんだクマ。だからもっと休ませるクマ」


このギャップは誰が想像できただろう?

最初は私すら驚いた。だってあの大井や木曽の姉である球磨がこんなにグータラだったのだから執務も捗らなくて幾度も喧嘩した。


今では立派な秘書官様だが、こうして甘えてくる。これが好ける理由の一つでもあるんだし、休みをまた取ろう…うん、そうしよう。


提督「分かった。こんな天気だから執務室でのんびりするか?」


球磨「やったクマ~」


大変ご機嫌が宜しい様で良かったです。


取り敢えずそうするためには書類を片付けよう。


提督「球磨?執務手伝ってくれ」


球磨「分かったクマ。今回だけだクマ」


そう言って毎回手伝ってくれるから更に楽なんだけど、ね?


提督「以外と優秀だよな?」


球磨「球磨ちゃんは優秀クマ。以外は余計クマ」


口と手を別々に動かして処理する二人には簡単な仕事だった。


球磨「これで終わりクマ」


そう言って最後の書類を渡してくる彼女は少し疲れが顔に出ていた。


提督「そうだ、優秀な球磨ちゃんよ。少し聞いてもらえるかい?」


球磨「どうしたクマ?何かまたさせる気クマ?それとも美味しい食べ物を食べるクマ?」


昔に奢ったことがあるのを覚えているとか、しかも見事に後者があっているという…


提督「正解だ。間宮さんの所に行くぞ」


球磨「なに頼んでも良いのかクマ?」


提督「今日に限っては好きなだけ食え」


球磨「……それは乙女に言ったら駄目クマ。一回身をもって知ってくるかクマ?」


提督「遠慮しときます」


球磨「そうか、残念クマ♪」


笑って言わないで下さい。おお、天使がそんな事言ったら滅亡は避けられないだろう。


提督「それじゃあ間宮に行く……前に寄りたい所があるんだが寄り道して良いか?」


球磨「そんなのを許さない程球磨は器が小さくないクマ」


提督「それで行きたい所なんだがな、明石の所に寄りたいんだわ」


球磨「何か明石に用があるクマ?」


提督「あるから行くんだろ?無くても行く奴なんてこの鎮守府の中じゃあ球磨くらいだぞ」


球磨「誉め言葉なのか貶してるのか分からないクマ。どっちクマ?」


提督「当然誉めてるんだろ。私が用も無いのに行くのが球磨っていうだけだから」


球磨「うぅ…」


最近球磨に流行るもの。真面目に笑顔、怒り顔。優しく包む心意気。


京都の荒廃を唄ったのとは違う内容。自分にセンスがないと思う一方、茹で蛸になった少女は恥ずかしそうに上目遣いで見てくる。

一回輪廻をくぐっても必ず戻ってきたくなるような力を持っているその顔は私にとって一生の保有物なんだろう。


球磨「早く…行くクマ!」


半ば追い出される格好となって酒保にたどり着いた。


球磨「明石は居るクマ~?」


何の音も返ってこない。


球磨「それじゃあ工房に行くクマ」


提督「そ、そうだな…」


おかしいな。私が主導してたはずが、手綱が球磨の手に──


球磨「それで、明石に何の用があるクマ?」


提督「それは、まだ言えないな」


球磨「……」


提督「……」


早く見つかってくれ!明石!




明石を探してはや25分、やっとの事で見つけた。


「それでご用件は?」


提督「近代化改修を頼む」


「近代化ですか?それまた何で今なんですか?」


提督「球磨をな?明日に出来るように準備しておいて欲しい」


「そういう事でしたら」


提督「それじゃあ頼むな」


足早に工廠を出たら、球磨が待っていた。


球磨「…何かを買ったわけでもないのかクマ」


提督「まぁ、球磨にとっては良いことだからさ」


球磨「それなら認めるクマ」


私の用事が終わったことで、喜んでいる様に見える。だって彼女が手を繋いで少し顔を赤らしめているから。


提督「なぁ球磨」


球磨「なんだクマ?」


提督「最初に正面海域で初めて出会ったのが君だったよね」


球磨「そうだクマ。懐かしいクマ。あの時は凄く嬉しそうに辛うじて威厳を保ってたクマ」


提督「その時に何て言ったか覚えてるか?」


球磨「そんなもの覚えてる訳無いクマ」


提督「だよな。私も忘れたからな」


球磨「それは仕方がないクマ」


提督「で、少し話したいことがあるんだ。いいか?」


球磨「うん」


提督「言いたかったのはな?君を近代化しようと思うんだ」


球磨「へ?」


球磨「やっとかクマ?」


提督「最終の近代化改修だ」


球磨「やったクマ♪」


こうして球磨に話したら案外怒られないのが多々あるから、悩みはいつも彼女に話している。


空はいつの間にか雲が隙間を開けて光を地上に下ろしていた。雨は降り続いていたが、希望が見えた。



提督「それで、明日には準備が出来るから最後の改修、楽しみにしとけよ!」


球磨「当然クマ」


提督「じゃあその最終改修の祝いに間宮だ」


球磨「ってことは改修後は無いクマか…」


球磨ちゃんシュンとしてて可愛いです。下に顔をおとして今にも泣きそうな顔で我慢してるんだもん。庇護欲だよね?それも──


提督「大丈夫だ。ちゃんと改修後に予定している。だから改修前の今日を楽しめよ」


球磨「そういう所が嫌なんだクマ」


それも演技でなければね?僕も可愛いから許してるけど、これもきっと「恋は盲目」なんだろうな、と。


提督「わかってるって!明日はもしかしたら忙しくなるかも知れんからな。今日くらいだぞ、ゆっくり出来るのはな?」


球磨「……ディナーに一緒に行ってくれるんだったら考えてやらなくもないクマ」


こういう所が可愛い、愛くるしいんだ。


提督「わかった。それで手を打とう。だから嫌いにならないでくれ」


球磨「考えるって言ったクマ!後、嫌いになるはずが無いクm…提督酷いクマ」


はい、私はこの光景を見れただけで幸せです。


提督「そんなに酷い奴とデートなんてと思ったことはないのか?」


球磨「自分自身で酷いって言うとは思わなかった。だけど思ったことはないクマ。思うはずが無いクマ」


提督「本当に優しいな、艦娘達を護るだけで一杯の私にここまでしてくれるなんて」


球磨「だって仕方がないクマ。惚れた弱味だからクマ。というか、誰がこんな提督だと想像して嫁いでくるクマ!?」


可愛いお嫁さんだ事で、はい。私は果報者です。


提督「結局、部屋に戻っても食事を作ってくれるんだから本当に果報者だなぁ。ありがとな?球磨」


球磨「…少し照れるクマ、そういうのはもっと良い時が合ったんじゃないのかクマ?」


提督「いやだって、こんなに嫁を困らせる提督だぞ?」


球磨「だって球磨に対してちゃんと愛情を注げていて、優しくて、いつでも見守ってくれる提督が球磨を困らせている訳ないクマ」


提督「ここまで言われるとなぁ…」


球磨「ふふっ…」


提督「あっ!笑った!」


球磨「笑ってないクマ!」


提督「いいや、笑っただろ!」


球磨「だから!笑ってないクマ!」


提督「まぁ、球磨が照れ隠ししたところで、間宮にでも行くか」


球磨「誤魔化したクマァ…それでも間宮には行くクマァ…」


球磨を何とかなだめたところで決して穏やかと言えない空の下を進んでいった。


途中──


球磨「それで、なんでも食べていいんだったクマ?」


提督「そうだな」


球磨「じゃあ、北上や多摩達も呼んできていいクマ?」


提督「えっ…そ、それは…あの…」


球磨「うそクマ♪球磨を弄んだ罰クマ♪」


提督「はぁ…良かった。それで、本気でそう思う時ってある?」


球磨「ん?無いクマ」


提督「そっか。んじゃあ──」


と言って私は水平線を見るように彼女に促しつつ口を開いた。


提督「もし、もしだよ?私が他の娘と一緒に並んで楽しそうに話していたr──」


球磨「どうして、今そんな話をするクマ。球磨は、嫉妬している訳じゃ無いけど、嫌クマ。球磨に興味が失くなったって言うんだったら他にも作るし、冷たいって言うんだったら暖かくするクマ。だから…だから…」


提督「ほら!冗談だよ。もしもって言ったじゃないか」


球磨「それでもそんな話は聞きたくないクマ。冗談って分かっていても…」


球磨「はぁ…もう大丈夫クマ」


提督「いや、こちらも悪かった」


球磨「そっか…コホン!それじゃあ行くクマ!!」


提督「そうだな(よかった…)」


球磨「じゃあ先に間宮に着いた方から頼むクマ!よーいどん!クマ♪」


提督「ずりーぞ!やってやろうじゃねえか!こちとら士官学校でどんだけ運動させられたと思ってる!」


球磨「それは逆恨みだし、八つ当たりクマァ!」






球磨「やったクマ!っはぁ…はぁ…」


提督「くっ…ふぅ…結構キツいな…私よりも速いってどんなんだよ!?」


球磨「それは自意識過剰…クマ!」


提督「はぁ…はぁ…それじゃあ決めていいぞ。ただ、ある程度常識的な量で、な?」


球磨「提督酷いクマ。球磨ちゃんがそんな事するはず無いクマ」


暖簾の前、息を肩でしている二人の周りはガランとしていた。しかし、それと相反する様に店内からは明るい笑い声や話し声が聞こえてきた。


提督「はぁ……さて、呼吸を整えて──行きますか」


球磨「行くクマ」


提督「こんにちは~!まだお昼やってますか?間宮さん?伊良湖?ってあれ?伊良湖居ないじゃん」


球磨「一人で五月蝿いクマ。で、伊良湖ちゃんは?」


「そうですね、今は鳳翔さんの所に手伝いに行ってます。それと、まだやってますよ?何になさいますか?」


球磨「じゃあ球磨は…海鮮改丼に茄子と厚揚げのお味噌汁、ミニ鶏南蛮に緑茶でお願いするクマ」


提督「それじゃあ私は日替わりA定食に茹で卵、あと烏龍茶でよろしく」


「デザートは如何されます?」


提督「レアチーズケーキと珈琲で」


球磨「じゃあ…ガトーショコラとホットアップルパイと…パンケーキで紅茶♪」


「注文承りました!良いですね…球磨ちゃんのテンションが高いのはこう言う事で?」


提督「まぁ…うん、そうだな」


「羨ましいですね♪いつか私にもその様な機会が巡ってくるといいのですが」


提督「また、いつかな?」


「はい♪」


球磨「提督~まだクマ?」


提督「今いくよ!それじゃあまた」


「はぁ~い!伊良湖ちゃ~ん、注文入りましたよ~?あっ、居ないんだった!少々お待ち下さい!」


提督「さて…と。やっと落ち着いて座れた訳…と言う事も無いみたいだな」


球磨「周りは和気あいあいとしてるクマねぇ…」


長椅子には各駆逐隊の面々が腰掛けて聞いてる側からしても楽しい一時だ。

周りから様々な質問が私達に飛んでくる。


「しれいかん~うーちゃんとはいつ遊んでくれるんですかぁ?」


「うーちゃん…うるさい。いい加減にしないと、弥生も怒るよ?」


「ごめんピョン…なんてうっそ…いや、ホントにごめんって」



「にっしっし…この秋雲さまが色んな情報を聞き出しちゃうぞ~ってあれ!?紙がない!」


「さっき使いきるから買わなくちゃって言ってたじゃないの…」


「いいじゃん!陽炎姉さんはこういう所で細かいんだから!」


「はぁ…もういいわ、好きにして…」


「陽炎も大変やなぁ」


「そうですね。私はこの苺パフェがあればいいんです。不知火には関係ありませ…ありました。陽炎?パフェを取らないで下さい」


「ん?だって不知火がぁ?関係無いってぇ?言ったからぁ?仕方がないじゃい!──っていたい!」


「不知火を怒らせたわね?」


「はぁ…何でこんな姉ばっかなんだろ?まっ、いっかな」


「なぁ?ほなうちは先に」


「一応貴女も入ってるからね?」



提督「何か、何だろ…あぁ、表現出来無い!」


球磨「これは結構殺伐とまでは行かないけど居たくないクマァ…言うなら混沌?」


提督「それが言いたかったんだよ!」


球磨「クマァ…」


果たしてこれは質問なのか?どちらにせよ来たら返すだけだ。


提督「さて…周りは五月蝿いが、間宮さ~ん」


「は~い!もうすぐお持ちしま~す!」


球磨「凄いガチャガチャいってるクマ。一人はやっぱり大変そうクマ。間宮さ~ん?手伝うクマ~?」


「いえ!大丈夫です。秘書官に手伝わせるなんて出来無いです!!」


球磨「そんな事は無いと思う…から!手伝いはどうするクマァ~!」


「そんなに仰ってくれるならありがたく。そうですね!手を貸して戴けませんか!」


球磨「わかったクマ!  提督、少し手伝ってくる事になったクマ」


提督「いや…大声だったから聞こえてたし。行ってらっしゃい」


球磨「クマァ!」


提督「結局私一人かぁ~ってどうした?」


「あんな…提督さんや、うちは皆の為に頑張れてるんじゃろか?」


提督「あぁ…勿論だよ。逆に今、浦風が居なかったら磯風やそこの陽炎達も寂しがって力も出せ無いだろうし」


「そうじゃな!ぶち心配したんや。周りは早く沈んでしまったんじゃけぇ…」


提督「こっちが本当に、助かったよ」


「別にええんよ?うちとて提督に助けられたからなぁ…」


提督「そうか…にしてもいい匂いがするな」


「ほんまか?うちそんなにいい匂いするかえ?」


提督「ごめん、そういう事じゃなくて」


「ふふっ♪冗談じゃけぇ心配せんとも誘っとらん。まぁ、匂いがいいのは事実じゃけぇ…」


提督「   ……」


「さてっ、うちは愚痴話を聞いてもろうたしそろそろ行くけ」


提督「…っは!そうだな、また悩みがあれば遠慮無く聞けよ?」


「そうさせてもらうけ。うちは遠慮はせんよ♪」


提督「あぁ……さて、そろそろ球磨の方も出来るだろ」


「球磨ちゃん!ありがとうございました!」


球磨「いやいや、大丈夫だから早く運んじゃうクマ」


「いえ!そこまでは大丈夫ですので、席にお戻りになって休んでください!」


球磨「そこまで言うんだったら…わかったクマ」


球磨「提督~今戻ったクマ♪」


提督「おう、お疲れ。さぞ美味しいのが出るんだろうな?」


球磨「いつもの間宮さんのクマ」


提督「安定クオリティだな…ってどうした?そんなに笑顔で見て?」


球磨「な~んでも無いクマァ♪」


提督「教えてくんないの?え?本当に駄目なの?」


球磨「そうだクマァ♪」


提督「そうか…じゃあ待っとくしかないな」


球磨「ふふっ♪」


「提督、球磨ちゃん、お待ちどうさまです♪」


提督「あぁ、ありがとう」


球磨「ありがとうだクマ。ほら、提督?球磨ちゃん特性日替わりA定食だクマ!」


提督「おぉ…美味しそうだな!流石球磨だ!」


球磨「やったクマァ♪」


提督と秘書官食事中……






球磨「はっあぁ…美味しかったクマァ…幸せクマァ…」


提督「美味しかった…球磨は僕より食事の方が幸せなのか…」


球磨「何を言ってるクマ?『提督と美味しい食事を楽しめて幸せだ』って言ったんだクマ」


提督「よかった…」


球磨「自分自身を悲観視しすぎクマ。もっと自信を持つクマ」


提督「うっ…そこが僕の悪い癖だからな、どうしようも無い気がするんだが?」


球磨「はぁ…そこはこの球磨ちゃんと一緒に治していくクマ?」


提督(球磨に励まされてどうするんだ。ここは自分の踏みとどまるところだぞ。頑張れ、球磨にも応援されてるなら…)


提督「そうだな…これからもよろしくな?」


球磨「当たり前クマァ♪」


提督「じゃあ、間宮さん。御馳走様でした。また来るね」


「ご来店、ありがとうございました。それと球磨ちゃん、ありがとう♪」


球磨「別にあれくらい大丈夫だクマ」


引き戸で音を鳴らしながら横に動かしていくと、入る前とはまた違った景色が見えてくる。右に視界が広がる毎に斜陽できらめく白い光を受ける。

音が止んだ時には景色は元の色彩へと戻っていった。


提督「結構長居してしまったな…」


球磨「気持ちが高揚したからそれはそれでよかったクマ…」


提督「どっかでくしゃみが聞こえそうだな」


球磨「それだと面白いクマね?」


当然、自室で間食中だった某歌える一航戦は何回かくしゃみをして、相方に心配されたのはまた別のお話。


提督「んじゃあ、午後はもう残ってるの無いよな?」


球磨「書類は午前に…演習も今日は無し…っとそうだ、哨戒班がそろそろ帰ってくるクマ」


提督「じゃあ、向かうか」


海は蒼く澄んでいた。空は水平線で海と混ざっていた。空気は凛と、風は涼やかに雨があがった事を伝えている。近くの建物も屋根から雫が落ちるばかりで遠くで新高山の様な入道雲が立ち上っていた。そんな中に跳ねる水音が響く。


球磨「執務室に早く戻るクマ。球磨は隣の大淀がいる無線室に行くから何かあったら来るクマ」


提督「りょ~かい」


提督「ふむ…椅子に腰掛けて窓から見える空を眺めるのもまたいいものだな。平和が一番だ」


提督「ここで執務室にある資料を見るのもいいが、どうしたものか……よし、確かここの引き出しに……」


提督「あったあった。これを──」


「大淀です。失礼します」


球磨「球磨だクマ。入るクマ」


提督「ん……入っていいよ」


「失礼します。只今帰投中の隊より通信を受信しました」


球磨「小破が三人、それ以外は無傷の様だクマ」


提督「そうか、よし、それじゃあ第一水雷戦隊にご苦労、背後を警戒しながら帰投せよ。対戦部隊に目下の水中を警戒しながら帰投せよ。とそれぞれ送ってくれ」


「了解しました!失礼致しました!」


提督「うむ。よし、それじゃあ──」


球磨「埠頭までお出迎えクマ?」


提督「ふっふっふ…流石は優秀な球磨ちゃん。まだ何も言ってないのに分かるとは」


球磨「当たり前だクマ。それと、外は夏って言っても少し冷えてるから、ハイこれ上着クマ」


提督「ありがとう。いや、もう本当に以心伝心だなって…」


提督「じゃあ、行こう」


球磨「行くクマ」






提督「うぅ…さっきもだが案外寒いよな」


球磨「だから言ったクマ」


提督「球磨は寒くないのか?」


球磨「下に追加で着てきたから寒く無いクマ」


提督「んにしても、埠頭に二人で海を眺めながら座っているとはな…」


球磨「更に、球磨ちゃんは手袋をしてなくて寒いから透也さんと手を繋いでいるクマァ♪」


提督「今更顔を少し赤らめて言うのは反則だと思う」


球磨「むぅ……珍しくこんな事してるのになぁ…酷いクマ」


提督「まだ来ないな。安全に帰れてるかな?」


球磨「あんな敵どもにやられるほど弱くないから大丈夫クマ」


提督「なんで球磨が言ったらこんなにも説得力があるんだろうな?」


球磨「球磨ちゃんだからクマ」


提督「昔から見てきたからか?」


球磨「それもあるけど球磨の教えてきた娘達だから、かな?」


球磨「それと、昔からなら透也さんもじゃないのかクマ?」


提督「痛い所を…確かに僕も見てきたけど、それは戦略面、性能面、そして個性面とかからしか見れていない。しかし球磨は彼女達の横で、前で、後ろで、と普段近くで客観的に見て育てている。その違いかな?」


球磨「やっぱり色んな視点から見てみるべきクマ。役職交換してみるクマ?」


提督「面白そうだな。球磨が提督代理になるのは理解出来る」


球磨「いつも近くで貴方を見ていたからクマ♪」


提督「しかしな…生身で適正も無い僕に艦娘…いや、艦息になれと言うのは無理がないか?というか無理だろ」


球磨「上手く言ったつもりクマ?面白くないクマ。そもそも艦息なんて気持ち悪いクマ。それ以前に、透也さんに早く死んで欲しく無いんだクマ…」


提督「まぁ…そんなのになる気は無いから安心してくれ」


球磨「よかったクマ。変な決断をしないかと内心怖かったクマァ」


提督「口の中で笑うなよ…」


球磨「だって球磨が提督代理になったらどうなるか分からないクマ。頑張ってもやっぱり透也さんには追い付けないと思うクマ」


提督「そうか?出来そうなもんだけど…」


球磨「球磨は透也さんを尊敬してるクマ。だからこそ追い付けないって断言出来るクマ」


提督「うん。やっぱりお互いがお互いの為に情報共有しよう」


球磨「それがいいクマ」


提督「んで、本当にまだ来ないのか?球磨って今無線持ってる?」


球磨「持ってるクマ。了解したクマ」


提督「おおっ…すご…」


球磨「……あっ大淀クマ?ちょっといいクマ?……うん、あれから通信は?……うん、じゃあ向かってるクマ?……了解したクマ」


提督「球磨、どうだった?大淀との通信は?」


球磨「もう数分で着くみたいクマ」


提督「そっか…」


球磨「提督、これだけは言わせて欲しいクマ」


球磨「実際はこうやって外で出迎える、なんていう行為は危ないクマ。それは理解してるクマ?」


提督「当然だとも。だがそれよりも大切な事があるからな」


球磨「そうクマ。遠征や戦闘で疲弊した──球磨も含め、──彼女達が鎮守府に帰投した時に提督が出迎えてくれる安心感は船渠入りするより心のケアをしてくれるんだクマ。」


提督「そこまで言うか…けど、実際そんな話は上からも聞こえてるしな。そんなにか?」


球磨「当然クマ。表向きは国家の為、だけど本当は提督の為なんだクマ」


提督「とうとう国防を建前にしちゃったよ…」


球磨「だって皆提督が好きなんだから仕方が無いクマ♪」


提督「むぅ……」


球磨「……」


提督「……」


球磨「だから、今のこのやり方でこれからもしていくクマ。たとえ、たとえ…」


提督「たとえ、鎮守府が崩壊しても、僕が倒れても…な?」


球磨「そんな悲しい事を言わないで欲しいクマ。提督が居てこそのこの舞鶴鎮守府クマ…」


提督「まっ、そんな事が無いと助かるんだがな。っとお?」


球磨「どうしたクマ?ってやっとかクマ♪球磨にこんなにも提督と話す時間を作ってくれたあの娘達に感謝しないといけないクマ♪」


提督「て言って、彼女達も疲れてるはずなのに僕らが見つけた時に既に元気な様に振る舞ってるのか。どれだけ僕に良い格好を見てもらいたいんだか」


球磨「さっきも言った通りクマ。だから、透也さんもそれに答えるクマ」


提督「だねぇ…」


「提督ゥ~今帰ったネェ~!」

「提督さ~ん!私、頑張ったよ~!翔鶴ねぇは?」

「只今帰ったぞ。それで酒は?なに?この後一杯するか…」

「はわわ…提督、私、頑張ったのです!」

「那珂ちゃん帰投!えへへ…私これがいいの」

「ぴゃぁ。只今帰投しました!なでなでして?」


「て、提督。只今帰投致しました。こちらの損害艦は小破三人です。って那珂…止めなさい」

「ふみゅ…私の活躍はどうだった?司令官?」

「早くなでなでされに提督の所に行くっぽい!」

「おぅ!皆おっそ~い。私が一番最初に提督の所に行っちゃうよ?」

「しれぇだ!しれぇ~~」

「ゆっきぃ…あぁ…だりぃ…早く部屋に帰って提督とゴロゴロしたい…」


球磨「12人が一斉にこっちに向かってくるのは何とも言えないクマ」


提督「一応…球磨も入るんだが?」


球磨「球磨はそんな事をしないクマ。透也さんの所に抱き付きに行くクマ♪」


提督「…うん。確かに違うな。だが、そういう事では無いんだ」


球磨「クマァ♪」


提督「はぁ…そのあざとさに免じて許そう」


球磨「あざといってなんだクマ!球磨ちゃん怒っちゃうクマ」


提督「どっちも可愛いからいいよ」


球磨「うっ……そ、それは…」


提督「後数秒かなぁ?」


球磨「何が…クマ?」


提督「彼女達が」


球磨「球磨は無視クマ!?」


提督「いや、いつも見てるからな?別に無視している訳じゃ無いんだ。分かってくれ」


「「「ただいま(ネー)(帰ったよ~)(帰投した)」」」

「「「ただいま(なのです!)(きゃぴ☆)(です。ぴゃぁ?)」」」

「「「ただいま(戻りました)(しれぇーかーん!)(っぽい!)」」」

「「「ただいま(~!おっ先~)(戻りました!しれぇ!)(…早く寝よ…)」」」


提督「お帰り。ほら早く船渠入りする娘は入ってきて」


球磨「お帰りクマァ。お疲れ様だクマァ。またなにか球磨ちゃんが駆逐艦の皆に間宮羊羮勝手あげるクマ」


提督「いやぁ…見慣れた光景だが、これでまた『今日の平和だな』…って感じるよな」


球磨「そうだクマ。五月蝿いのも元気な証拠クマ。けど、はしゃぎすぎは少し嫌だクマ…」


提督「そこは後輩だと思って…」


球磨「後輩じゃなくって可愛い妹達だクマァ♪」


球磨「だから多少の事は許せるし、面倒も見れるクマ♪」


提督「そういうもんだよな…すまん、後輩より妹の方がやる気が出るって知らなくてな?」


球磨「知らなくても…いいクマ!はぁ…そういう事じゃ無いんだクマ」


提督「わっと…急に叩き出すなよ…」


球磨「だって球磨をからかったのは提督だクマ!」


提督「だからって叩く事は無いだろ…」


球磨の叩く力は弱く、誤魔化す様にしていた。

しかも顔を赤くして口をパクパクさせながらしているので、余計に可愛い見える。


提督「ごめんって、だけどな?球磨が皆に気を配ってるのはここにいる全員知ってるんだぞ?だから後輩じゃないか?」


球磨「クマァ……まぁ、そうしとくクマ♪」


提督「さてと、もう一回…戻るか?」


球磨「クマァ♪」


提督「んにしても、この舞鶴鎮守府に着任して何年だ?」


球磨「結構あれから過ぎてるクマねぇ…」


提督「中々に全鎮守府同時爆撃は効いたな。あの後少しでも動けたのは四大鎮守府だけだったもんな」


球磨「そういえば…佐鎮の時雨ちゃんから面白い情報を聞いたクマ♪」


提督「ん?あの慎二の所の?」


球磨「そうクマ。まぁ、内容は言えないクマァ」


提督「なんでだよ!?そこは聞きたかったのに…」


球磨「ただ、電話越しであっちの秘書官は『またあいつに弄られたくないって提督が愚痴ってるからさぁ』って言ってたクマ」


提督「ぬぅ…弄りネタが減っていく」


球磨「はいはい、おふざけもこれくらいにしとくクマ」


提督「半ば本気だったのに…そうだな。それで?」


球磨「結局透也さんには内緒だけど面白かったクマァ♪」


提督「」


球磨「コホン。なんやかんやどこも苦労してたって事クマ」


提督「そう…そうだな。(あいつからは追々事情を聞くとして…)到着したな」


球磨「だけど後で佐鎮に連絡したら駄目だクマ」


提督「!?」


球磨「どうせ提督の事だからするつもりだったんだクマ?」


提督「たまには同期にこんな事するのもいいじゃないか?」


球磨「TPOだクマ。それをいい加減にわかるクマ」


提督「ちぇっ…何だかんだで、あっちも大変そうだな」


球磨「どういう事クマ?」


提督「いや、あいつから聞いたところによると結構凄いらしいぞ?」


球磨「へ?全然内容が分からないクマ」


提督「だからな?コニョコニョ………」


球磨「うん。…うん?…へ?い、いや…ちょっと…本当クマ?」


提督「……と言う事だ。理解したか?」


球磨「…はで……いくマ…」


提督「だからさ、ってなんて?」


球磨「…提督はデリカシーがないクマ!」


提督「それは理不尽だよ。それでも、次は気を付ける」


球磨「はぁ…ほんとうにそうしてもらいたいクマ」


球磨「さっきTPOの話をしたばかりなのに、これは酷いクマ…」


提督「こうなってくると、自分の自己管理能力が心配になってくるなぁ…」


球磨「透也さん?」


提督「あぁ、ごめんね。取り敢えず今は皆いるよな?」


球磨「全員残ってるクマ」


提督「じゃあ、ちょっと持っててな?」


球磨「?」


提督「確か番号は…」


球磨「透也さん?電話に近付いて何してるクマ?」


提督「もしもし?あぁ、そっちに繋いでくれ。佐鎮によろしく…」


球磨「さっき話した筈だクマ!なんでクマ!?」


提督「ちょっと静かにしといてよ?…あ、よう。久し振りだね。所で今って少し時間ある?……了解。じゃあ少し後で演習出来ない?……出来る?よし。その時間でよろしく。じゃあね。っとそうだ、今時雨いる?…いないか。いや別段大した話じゃ無いからいいよ。また後で」


球磨「時雨ちゃんと何を話すつもりだったクマ?」


提督「ん?いや、別にあの件に対してでは無いよ。ただ、あっちの艦娘達は元気にしてるかなって?」


球磨「それは佐鎮の提督でもよかったんじゃないかクマ?」


提督「まぁ、もののついでってやつだよ。他にも艦娘目線からしか分からない事もあるだろ?」


球磨「はぁ…。本当にそうなんだろうけど、球磨は言ったクマ」


提督「結果的に後から演習するから早めにメンバー決めようか」


球磨「了解したクマ」


提督(あんな頃もあったけど、懐かしいな…)


──

─────

──────────


球磨「それで、これはどういう事なの?」


提督「いや、それはな?私の不注意だったんだk」


球磨「うるさいから黙って」


提督「アッ、ハイ」


球磨「それで、どういう事か説明してもらおうか?クマ」


提督(後から取って付けた様な語尾…標準語での会話…ブチギレ中ですかぁ…)


「あ…あ、あの…わ、わ私は何もしてませn」


球磨「だから、説明しろって言ってるのが分からないの?」


「ひっ……」


球磨「私は?君になんでこうなったか説明を求めてるだけだから、それに答えるべきでしょ?」


「え、えっと…」


球磨「はぁ…さっきから同じ事を聞いてるけどこたえようとしないのは答えようとしないのはちゃんとした理由があるんだよね?」


「だ…だから──」


球磨「だからどうしたの?」


球磨「しっかり説明しなかったら私と お・は・な・し しようか」


「あっあ、あ…あ…あ」


球磨「あ、ばっかり言ってても何も分からないからね?」


「まぁ、落ち着くにゃ」


球磨「どうしたクマ?多摩には関係は無いんじゃないクマ?」


提督(あっ…語尾戻った。よかった…)


「いや、取り敢えず何があったか説明を求めるにゃ」


球磨「秘書官室が少し荒れていたんだクマ。そのときにいたのがこの娘だったっていう訳だクマ」


「なにかを取られたりとかはされてないわけにゃ?」


球磨「されてないクマ。ただ荒らされてただけクマ」


提督(そんな事かよ…しょうもないな)


球磨「提督どうしたクマ?しょうもないって思ったクマ?」


提督「いや?思ってないけど…んで、それ以外は何もないんだな?(あっぶねぇ…内心ヒヤヒヤだよ)」


球磨「特には何もないクマ」


「荒らされてるだけだったらこの娘じゃないかもにゃ?」


球磨「何でそう言いきれるクマ?」


提督「……そういえば多摩ってさっき何処から出てきた?」


「そこの秘書官室からだにゃ」


提督「え?」


「だってその時に多摩もそこで寝てたからだにゃ?」


球磨「え?」


提督「え?」


「え?」


「え?だって寒かったから布団にお邪魔したにゃ。その時に結構動いたからそのせいじゃないかにゃ?」


提督「……これは球磨と多摩が悪いな」


球磨「ごめんクマァ~~!!」


「え、えっと…取り敢えず私は無実…ですか?」


「当たり前だにゃ?」


「私って怒られ損?」


「そういう事になるにゃ?」


「これって悪いのは……」


「にゃ?なんで皆揃ってこっちを見るにゃ?」


球磨「だって…場をこんだけ混乱させて…」


「私を怖い目に合わせて…」


提督「自粛しなかったし…」


球磨「それだけで有罪だクマ!」


「そんにゃ…ただ寝ただけなのにぃ…」


──────────

─────

──


提督(懐かしい頃も大分昔に感じるようになるとはな…)


球磨「どうしたクマ?」


提督「おう、お帰り」


球磨「ただいまクマ。あと5分位で全員集合するクマ」


提督「ありがと」


球磨「ふわぁ……それと透也さん、大本営から速達だクマァ」


提督「了解した。あとさ?眠そうだから少し寝ててもいいよ」


球磨「え?いや、誰が透也さんを手伝うクマ?一人で大丈夫クマ?」


提督「僕の事なら問題ないよ。集結後の説明とかもやっとくし昼寝しなよ」


球磨「むぅ……じゃあ、その言葉に甘えるクマ」


提督「そうでなくっちゃ!」


球磨「??まぁ、いいクマ。だから提督のベッド貸して欲しいクマ」


提督「流石にソファーで寝ろとは思ってないからいいけど…秘書官のあったろ?」


球磨「……部屋から一番近いのは提督のベッドクマ。秘書官室のベッドは二部屋跨がないといけないクマ」


提督「ん…そうだな。理由は何であれしっかり休んでこいよ」


球磨「わかった…ふわぁ……クマァ」


提督「さてと、球磨も居なくなったし昼食前にしまったあれを──あれ?」


「失礼します。提督、宜しいでしょうか?」


提督「いいよ、神通。入ってくれ」


「失礼します。先程の報告です」


提督「どうだった?」


「敵深海棲艦は無事に撃滅。こちらの損害は小破が3人のみです。」


提督「よくやった。今日1日は皆非番にしたからゆっくり休んでね」


「有難うございます。ところで…演習を行うと聞きましたが?」


提督「あぁ、佐鎮の所とな?メンバーは一応…」


「私を、入れて貰えませんか?」


提督「何故?」


「他の娘達が今どれ程出来ているかを確認したいんです。」


提督「神通らしいな。だけどな?一戦してきた後だから、休息をしっかりとって欲しいんだけどな」


「そうですか。それでは他の所でお願いします」


提督「了解。さっきも言ったがしっかり休めよ?これも任務であり、義務だからな」


「はい!失礼しました」


提督「ふぅ……何で毎回“これ”を出そうとすると人がくるんだよ…」


提督「あぁ、あいつが神通引き抜いたの根に持ってないといいな……無理な話か」


提督「………間宮行くか」



提督移動中 Now Loading…───────────────



提督「こんにちはー」


「こんにちは~って提督じゃないですか」


提督「ははっ…まあな?今は一人で来たから」


「あぁ、了解しました。いつものですね?」


提督「うん。それで頼む」


「承りました。伊良湖ちゃんいるよね?もう一回鳳翔さんの所に行ってくれない?」


「分かりました。ところで、何でですか?」


「鳳翔さんも居ないと出来無いからよ」


「そういうことでしたら!行ってきます!」


「はい、行ってらっしゃい」


提督「中々楽しそうでよかった」


「そんな事無いですよ?」


提督「それは失礼したね。ただ、私は皆と接触する時間が少ないからどうしても現状が分からないんだ」


「ふふっ、どこぞの佐鎮よりも把握されてると思いますが?」


提督「それもそうだったな!あいつは人一倍鈍感でその癖にいつの間にか相手を堕としてる女たらしだったわ」


「あんまりそういう事を仰られてるといつか怒られますよ?」


提督「大丈夫大丈夫!あいつを知ってる奴等には周知の事実だしな」


「あら、そうなのですか?てっきりお二人だけしか知らないと思っていたのですが」


提督「なんたってあの山吹元帥も知ってるしな」


「そうでしたね。山吹元帥も今では海軍軍令部長ですから」


提督「皆結構上にいったな……」


「っと、こんなところで話だけされるのはどうかと思うので、間宮特製羊羮等はいかがでしょうか?」


提督「それじゃあ間宮羊羮と緑茶を」


「承りました」


提督「はぁ……やっぱり羊羮美味しい…」


「ふふっ。今なら定価の半分ですよ?」


提督「えっ……どうしよう」


「冗談です。普段通り無料ですよ♪」


提督「だと思ったよ……ったく、相変わらず間宮さんh「間宮です。さんは要りません♪」──間宮は冗談が好きだな」


「いえ、皆さんの笑顔が見たいのでやってるんですから」


提督「僕も冗談を言える様になりたいものだよ」


「十分あると思いますが?」


提督「これであるんだったら嬉しい限りだね」


「間宮さ~ん!連れてきました!」


「間宮さん、どうされました?…あぁ、理解致しました」


「じゃあお願いします」


「分かりました。しかし、今日もお一人ですか?」


提督「そうなんだ。球磨が寝ちゃってね」


「あら、可愛い理由ですね」


提督「そんな事を本人に言ったらきっと喜ぶぞ」


「うふふ。きっと喜ぶでしょうね♪」


提督「それで今日は何が出てくるんだい?鳳翔さんだから楽しみなのだが」


「それは私の腕を信用してないですね?」


提督「いやいや、間宮も美味しいんだが甘味と料理だと違うじゃないか」


「むうぅ……」


「あら、間宮さんを苛めていらっしゃるのは愉しいですか?」


提督「誰もそんな事を言ってないだろうに」


「あらあら?そうでしたか?」


提督「なんか悔しいな!」


「はいはい、それではそんな提督に簡単ではありますが?」


提督「が?」


「簡単ではありますが稲荷寿司をどうぞ」


提督「マジか!?え、いいのか?」


「はい♪」


「「(提督の変わり様…凄い……)」」






提督「いやぁ、美味しかった。久しぶりにいい油揚げ食べたわ」


「それは良かったです♪」


提督「じゃあまたよろしく」


「「「はい♪」」」


提督「あぁ、美味しかった……最高だわ…」


提督「っていま何時だ?……げっ、もう16時かよ。30分後じゃないか」


提督「走って間に合うか?くっ…」





『え~てすてす。演習組は集合して下さい。繰り返します、演習組は集合して下さい。以上館内放送終了』


提督「はぁ……しんど…」


球磨「ふわぁ…おはようクマァ」


提督「やぁ、おはよう。良く寝れたかい?」


球磨「至極当然な答えクマ。安眠だったクマ♪」


提督「そうか。そりゃよかった。所で、だ。もうすぐ演習始めるから第二訓練海域を開けといてくれ」


球磨「わかったクマ。それで、後どのくらいなんだクマ?」


提督「20分」


球磨「え?」


提督「20分後だ」


球磨「は?」


提督「今から20分後」


球磨「いや、聞こえなかったとかそんなんじゃないけど、20分後?馬鹿じゃないかクマ?」


提督「えぇ……そこまで言わなくても」


球磨「開始が20分後クマ?それとも到着が20分後クマ?」


提督「……到着」


球磨「はぁ……接待は?」


提督「間宮と鳳翔に」


球磨「部屋は?」


提督「明石に」


球磨「会場は?」


提督「準備済み」


球磨「ならよしだクマ!」


提督「奈良吉田?」


球磨「違うクマ!!」


提督「くっ、くくっく……」


球磨「んっ、んっぷぷ……」


二人「「あはっはっはっはっは」」


「失礼します。対佐世保演習の準備が、って、え?」


提督「はぁ、はぁ、……しんど」


球磨「あぁ…お腹痛いクマ」


「え?だ、大丈夫ですか!?」


提督「いや、なんでもないよ。それで?」


「あっ、それでですね、対佐世保演習の準備が出来ましたのでそろそろ参られませんと」


球磨「あはっ。こっちは大丈夫だから球磨達も行くクマ」


提督「よし、それじゃあ第二に行こうか?」


球磨「クマァ!」


「まだ来ておられませんので、少し早めに動いてはどうかと思いまして」


提督「うん、いい判断だよ」


球磨「そういえば……佐世保の編成は一体なんなんだクマ?」


提督「えっとね………夜戦狙ってきてるね。げっ…しかも旗艦は時雨じゃん」


球磨「ふぅん?だったら球磨に考えがあるクマ────」






「よう、久しぶりだな透也」


提督「あぁ、久しぶりだな慎二」


「この前は私の演習部隊を潰してくれてどうもありがとう。お返しをしてあげよう」


提督「そんなそんな。お返しなんて要らないよ。代わりに僕がもう一度プレゼントをあげよう」


「うん。じゃあよろしくね?臆 病 者 ?」


提督「そうだね。よろしく女 た ら し 君 ?」



「はぁ、本当にごめんね?うちの提督が…」


球磨「逆にこっちの提督も迷惑をかけるクマァ。仲が良い様な悪い様なよく分からない二人……」


「罵り合わないと気が済まないのかな?」


球磨「本当にそうだクマ」



「よし!時雨、徹底的に彼奴等を潰すぞ」


「はぁ………は~い」



提督「彼奴が二度と顔をあげられない様に捻るぞ」


球磨「本当に………了解したクマ」



『これより、佐世保対舞鶴の演習を行います。司会は私舞鎮の大淀と、佐世保の青葉がお送りします』


ワアアアァァァァ



提督「よし、取り敢えずの目標は夜戦まで持ち込まない事、だ。昼戦でけりをつけるぞ。戦略としては──────」


提督「─────以上だ。質問は無いな?」


球磨「当然無いクマ」


提督「よし!それじゃあ行ってこい!!」


「「「「「はい!」」」」」




「くそが!なんでまた負けるんだよ!?」


提督「という事でまた今度奢れよ?」


「ああいいさ。言ったからには責任持つよ!」


提督「ゴチです」


球磨「いただきますクマ♪」


「また負けたよ。慎二さん、落ち込んでないで頑張ろう?」


「そう言ってこの前神通取られたじゃん!」


「それは…仕方がないね。自信満々で賭けようとか言うからじゃないか」


「ぐぬっ……次で取り返してやる…」


「じゃあ、回収して帰るよ。またね」


提督「あぁ、またな」


球磨「また今度はよろしくクマ」


「うん。よろしくね♪」


「覚えてろよ…透也貴様ァ……」


提督「はいはい。またな」


「ちょっ、時雨!引っ張るのは無いぞ!」


「じゃあ自分で歩いてよ。意地でも動かなそうだったし」


「言う前に動いてたじゃないか!ってああああぁぁぁぁぁぁ」



提督「南無阿弥陀仏。頑張って生きろよ、慎二…」


球磨「南無三だクマァ」


提督「さて球磨くん、今何時だい?」


球磨「えっと…19時半をまわった所だクマ」


提督「夕食だな。よし、球磨?取り敢えず外出許可証に名前書いておけよ?」


球磨「え?」


提督「行く場所はもう決めてあるし、予約も取ってあるから」


球磨「ほ、本当に行くのかクマァ!?」


提督「あぁ。この報告書が終わればな?」


球磨「ふんふふ~んふんふふん」


提督「球磨?お~い球磨~?」


提督「聞いてないな……」


提督「取り敢えず報告書を終わらせてっと…よし!」


球磨「透也さ~ん?まだかかるクマァ?」


提督「いや、今終わったところだよ」


球磨「そっかクマァ。それでいつ行けるの?もうすぐクマ?」


提督「そうだな。……所で、着替えてこなくていいのか?」


球磨「あっ……ちょっとここで待ってて欲しいクマ」


提督「うん。行ってらっしゃい」


提督「そしてまた一人か…今日はそういった時間が多いな。さてと、どうしようか」


提督「うぅん………取り出す度に妨害が入っていたが、今は問題無い筈だ。」


それは執務机の引出しから取り出された。いや、取り出したのは正確には備え付けの引出しでは無い。普段の何もない空間に手を突っ込む。果たして机の下───真ん中の椅子を入れる空間の右上端には他からは見えない様に小さく浅い引出しがあった。

その側面にあるこれもまた小さなつまみを指先で掴んで手前に引く。


提督「えぇっと、確かここら辺に…あったあった。つまみが小さいからな…っと見つけた」


提督「中身はちゃんとあるな?良かった……忘れない様にポケットの中に入れておこう」


球磨「失礼するクマ!透也さん!この服どう?似合ってる?」


提督「あぁ、とっても良く似合ってるよ」


球磨「やったクマァ♪」


提督「それじゃあ向かうとしようか?」


球磨「そうするクマ!!」


執務室の扉を開けるとふんわりと優しい光で満ちていた。壁付け照明が横にずっと並んでいる。廊下には誰一人歩いている姿を見掛けなかった。


提督「さぁお嬢様?これからディナーに行きましょうか?」


球磨「………そうね。楽しみにしてるわ♪」


提督「乗ってくれるのか…」


球磨「当たり前だクマ」


提督「そうか…君らしいな」


球磨「球磨を相手にそんな事をするつもりだったクマ?」


提督「いやいや、そういうのはしないよ……普段は」


球磨「ん~まあそれでいい事にするクマ」


提督「そんじゃあ行きますか」




球磨「それで何故提督の車の助手席に座ってるクマ?」


提督「だって後部座席はアレだし…」


球磨「それでもこっちの方が良いから嬉しいクマ♪」


提督「そうか。そんで今日は○○っていうレストランに行く予定なんだ」


球磨「!?それって凄く有名な所だクマ!えっ…そんな所に私が行ってもいいのかクマ?不釣り合いじゃないのかクマ?」


提督「大丈夫、不釣り合いなんかじゃないよ。逆にその方が映えるからね(まぁ、レストランが彼女を引き立てるんだから)」


球磨「はうっ……そ…そうか…クマ?」


提督「そうだとも(やっぱり可愛いわ…)」


球磨「それで、ここクマ?」


提督「そうだ。夕食はここでいただく」


球磨「ふぁぁ……凄く高いし広いし豪華だし…本当にここなんだクマ?間違ってたりしないクマ?」


提督「ほら、そこに書いてるじゃん」


球磨「あぁ…間違ってなかった。気のせい?それとも夢?早くおきなきゃ──ってみゃぁぁぁ止~め~る~ク~マ~!」


提督「ほら、夢じゃないだろ?」


球磨「ゆっ…夢じゃない…」


提督「ね?だから一緒に食べよう?」


球磨「うん♪」


提督「(かわいいなぁ…球磨は」


球磨「へ!?か…かわいい……」


提督「さてと、それじゃあ、ってどうした球磨!?顔が朱いぞ」


球磨「むぅ……もう…透也さんのいけず…」


提督「うん。そうだね」


球磨「早く入るクマ!」


提督「えっ…あぁ…うん」




提督「いやぁ…美味しいな。間宮や鳳翔のも良いが、流石としか言い様が無いな」


球磨「ふぅ~ん。他人の話をするんだクマね?しかも目の前で」


提督「あっ…いや、そういう事じゃなくて…えっと──」


球磨「なんて冗談だクマ!半分は本気だけど……」


提督「もう怒ってないのか?」


球磨「当然クマァ♪こんな景色が良くて雰囲気が良くて食事が美味しい所で二人きりのディナーを楽しめるんだから♪」


球磨「しかもこんなネックレスまで一緒にくれたんだから」


提督「そうか…よかった。それじゃあ会計してくるよ」


球磨「待ってるクマ」


提督「うん。是非ともそうしてくれ(値段なんて見せるもんじゃないな)」


球磨「は~いクマ」




球磨「あぁ……もう…お腹一杯だクマ。幸せも一杯だクマ。また、来ようね♪」


提督「うん。車じゃなかったらワインとか開けたのになぁ…」


球磨「それじゃあ後で開けるクマ!」


提督「執務室で?」


球磨「執務室でクマ。何か問題でもあるのかクマ?」


提督「いや、別段無いからそうしようか」


球磨「じゃあ早く帰るクマ!」


提督「分かってるよ……」




提督「着いた…行きより帰りの方が短く感じるな。って球磨?」


球磨「すぅ……すぅ……」


提督「寝ちゃったか。全く可愛い奴だ」


提督「おんぶでも良いけど気付いてないから僕のご褒美はお姫様抱っこだな」


提督「もう皆寝た頃だし誰も見てない。見つかりでもしたらスニーキングミッションだなぁ。その前に球磨の羞恥顔が見れるからいいけど」


提督「やっと執務室に着いた…ワインは一人で呑むか……その前に、球磨を──僕のでいいか…僕のベッドに移して……」


提督「お休み、愛しの球磨。今日も一日お疲れ様。明日も普通の日であります様に…」


明日がまた良い日である事を祈るその姿は何事にも変えがたい愛情だろう。離れる前に手を握り、ワインを取りに行くであろう提督の表情はまるで天使か神に御告げが下されたかの様なふんわりとした柔らかい笑顔があった。


後書き

作品を緊張して書いてたら凄く…面白かったです!
詳しい内容は「時雨と提督と」をご覧下さい。

戦闘シーンは気が向いたら書く、と思います…はい。


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