【第11章】明日を繋ぐ鎮守府と今を生きる提督
繋ぎ続ける為に彼の歩みは止まらない
明日を紡ぎ今を生きる
それが今の彼等にとって大切な意味である
艦娘、人間、信じる気持ちを失いかけても、それが明日へと繋がるのなら
それが間違ってしまっていたとしても、それを背負い歩み続けよう
もう戻れないのだから
戻っては行けないのだから
自分の思いと真実と決意で今を生きる
そして、それが明日へと繋がる物語
この先に何があるのか・・それは・・
これは【捨てられた鎮守府と捨てられた提督】の続編の【おんぼろ鎮守府と捨てられた提督】の続編の【おんぼろ鎮守府と歩み続ける提督】の続編の【大切な鎮守府と歩み続ける提督】の続編の【大切な鎮守府と道を照らす提督】の続編の【君の居た鎮守府と道を照らす提督】の続編の【君の居た鎮守府と裏と表を行く提督】の続編の【帰るべき鎮守府と裏と表を行く提督】の続編の【帰るべき鎮守府と変わり行く提督】の続編の【明日を繋ぐ鎮守府と変わり行く提督】の続きになります!まず、それらから見てもらわないと全く分かりません
0章はとりあえず本編を見てから見る事をオススメします。てか、更新してるのか?しなければ!
増えるの!まだ増えるのかぁああ!これ以上増えると本当ワケワカメですね!
豆腐の味噌汁が好きです
でも、一番はフライドポテトです!でもね30を過ぎるとね・・
専門用語とかは全く分かりませんし、文章もおかしかったりしますが、中傷コメなどはせず、気にいらない方はそっと戻るボタンを押して忘れてください
それが貴方の為です
それでも良い方はどうぞ見てやってコメントを残してやってください
キャラ崩壊注意ですよ!本当に注意ですよ!
【提督】
大井と北上を助ける為に研修先である西鎮守府を川内と神通と共に南鎮守府へと向かう
そこで南憲兵と弥生そして伊良湖の協力によりボロボロになりながらも南提督の不正の証拠を表に出す事に成功
しかし、それはうまく回っていた歯車を壊してしまう事になる
終わってしまう鎮守府で提督は何を思い、そして、どう成長するのか
本当の正義と悪との狭間で出す答えとは
【金髪】
ヘボ子と同じ養成学校に所属している
黒髪とメガネは別の学校である
入居管理士を目指して勉強中
研修後はクラスの人達とも関わるようになり本来の性格もあり分け隔てなく接する事から周りからも友好的に思われるようになっている
嫉妬で、たらしハゲと言われた事もあるが本人は満更でもない様子だった
今では髪の毛が少しでも生えると剃っているらしい。毎朝の髭剃り感覚
ただ、研修後に数日間のケガによる休みと薙刀を常に持っている事に関しては触れないようにしている
最近、クルクルした何かが金髪の後ろを偶に着いて来ており専門の人が言うには艦娘の龍田の頭の上にあるクルクルと同じだと言うが害もなさそうだし本人も気付いてないのでみんな黙っている
トイレとか行った時や着替えの時は光る
でも、本人は気付かない
【黒髪】
メガネと同じ養成学校に所属している
金髪とは別の学校であるが連絡先を交換しておりメガネと三人のグループで連絡をしている
その中に提督はいない・・・・
本人も知らない
知らせない
可哀想だもん
自分の身体の事もあって潜水艦の事について勉強をしている
自身は潜水も出来ないがそれに近い事は出来るかもと思っている。例え自分が何者か分からなくても進もうと決め、出来る事をしようと、もう二度と逃げないと決意をする
あの人の様になりたい・・そしてあの人を・・
それを目標に頑張っている
クラスでは変わらず浮いているが昼休みとかはメガネと一緒にいる事が増えて付き合っているのでは?と噂されるがメガネと黒髪両方がそれを否定している
お互い金髪も含めて研修を終えて戦友と言う恋人よりも強い絆で結ばれている事からそういう風には見れないらしい
金髪と違い黒髪はクラスのみんなと更に距離が出来てしまっている。その理由としては黒髪自身が人を選んでしまっているのもあるが現役で働いている主に遠征をしている潜水艦(やばい奴ら)と自ら関わりを持とうとしている事もあるからだ
そこらのヤンキーも恐れてしまう存在になっていた
最近では教官ですら敬語を使っているとか
本人は何か目的があり早く上を目指そうとしている。その事を考えている彼女の目は恐ろしくも儚げに感じるとか
一部でファンクラブが出来ている
【メガネ】
黒髪と同じ養成学校に所属している
研修での西提督船に興味を持ち、船について勉強をしたいと思っているが残念ながら人が乗る船について勉強出来る環境は今の養成学校にはなく、それでも諦めきれなく艦娘の艤装工学の勉強をしている
もし、あの時のように海の真ん中で止まってしまった時助けられたらと
その思いが今のメガネを動かしている
自分の殻を破る事に成功したメガネは性格も大きく変わり筋肉を前面に出しての影キャラを脱しているかと思えばいきなりの変容に不気味と思われる事が多く距離をとられてしまっている
メンタルが大きく成長したのでほぼ無傷である
黒髪との交友関係もあり恐れられているが、一部から尊敬の眼差しで見られている
同じ艤装に興味を持つ人や筋肉な人とは仲良くなれている
西提督船を運転した感覚が忘れられずに偶に夜一人で黄昏ている
【ヘボ子】
金髪と同じ養成学校に所属している
金髪の事を追いかけて気付いたら養成学校に入っていた
彼女自身は金髪に着いてきただけなので特に目的もなかったが研修先である東鎮守府の提督に目をつけられてしまい後継者として見られてしまっている
彼女は過去でのヘボ子呼びから自分に自信をなくしてしまっていた時期もあり、頼られると嬉しい反面もあってから満更でもないけどハゲないか心配らしい
現在東鎮守府でバイト中
東鎮守府の熊野とは仲が良く昼休みとかはOLトークで盛り上がっているらしい(主に熊野の気になる人の話し)
陽炎は苦手らしい
【南娘】
南鎮守府の提督の娘で提督が居た養成学校に所属している
提督の事は少なからず知っており彼女自身もあまり良い印象を持っていない
正義感が強く、曲がった事が大っ嫌いで提督に対してのみんなの態度は良く思ってはいなかったが助けようとも思っていなかった
提督が養成学校を去った事を知り、ほんの少し罪悪感を持ってしまっている
だが、それも一時の事で学校生活に支障はなく毎日勉強に勤しむ学校生活を送っていたが南鎮守府崩壊によって・・
【吹雪、曙】←おまけ達
数章に及び出る出ると言いつつも出てこない人達です
彼女らはいつ出るのか?と言うよりも出す気はあるのか?そもそも存在しているのか?
どちらも同じタイミングで出てくる予定ではありますが、そこまでいけるのか?
いつも展開が遅くてすみません・・・そのうち出ます
【青年】
提督の居る鎮守府の町にある孤児院に住んでいる
孤児院ではみんなのお兄ちゃん的存在で青年もみんなを大切に思っている
そんな時におんぼろ鎮守府の司令官の元へ行ってしまった同じ仲間の電と叢雲を助ける為おんぼろ鎮守府へと侵入するが捕まってしまう
そこで自分の無知な思い込みだと知り一度は死を選ぶが、由良、卯月、により生きる事を決意
暴走してしまった電を止める為に青年は立ち上がる
大きな爆音(羽黒花火)を背に青年は電の本当の想いを知り走り出すのだった
そして此処から第11章が始まる
執務室へと走る青年
もう怖くなんかない
由良が卯月がくれたチャンスを俺は!
ドアの前へと着く
青年「すぅー、はぁー」
深呼吸をして心を落ち着かせる
青年「電・・ここにいるのか」
今行くからな!
そして執務室へと入った
ーおんぼろ鎮守府執務室ー
青年「おら!」
ドンッ!
最近付けたであろうドアを思いっきり蹴り開ける
取れそうになったが気にしない
青年「ん?」
足元になにか
大和「」
大和・・こんな所で
電「うぁああ!」
青年「っ!」
電「守る!」シュッ
大淀「っ!」
それは今まさに電が大淀へと攻撃しようとしていた瞬間だった
元帥「お前は」
大淀「丁度いいです!」ドゴッ
電「っ!」
青年「うわっ!」
ドンッ!
大淀の蹴りが電へと当たり執務室のドアを突き破り廊下まで青年を巻き込んで吹っ飛ぶ
壁へと強く叩き付けられる
青年「ぐぁ!」
電「」
電は意識を失った
青年「ぐっ・・」
大淀「気絶しなかったのは評価します。立ちなさい」
青年「うぅ・・電、おい!目を開けてくれ!電!」
大淀「目の前の状況を理解出来てないのは所詮一般人だからですかね」
大淀「今は私を認識するのが正解ですよ」
大淀「じゃないと気付く間も無く殺しましょうか?」
青年「お前!」
ふらつく身体に鞭を打ち立ち上がる
飛びかかってやりたいがそんな体力はないし、何よりも俺が艦娘に勝てる筈が無い
彼女達と俺とでは力の差があり過ぎる
青年「くっ・・・」
だけど、あいつは電を!
大淀「怒りに任せて飛びかかって来ないのは褒めてあげます」
青年「電をこんなにボロボロになるまでやる事ないだろうが!」
大淀「やってきたのはそちらですよ?」
青年「だとしてもだ!やり過ぎだろうが!こんなにボロボロにしなくても・・もっとやり方が」
大淀「出来るならしてます」
青年「は?それはどう言う」
電「っ・・まも・・る」
電が目を覚ました
大淀「まだ立ちますか・・」
青年「電!」
大淀「先ほどから気絶させようとしてますが、ああやって立ち上がってくるのです」
青年「っ!もう立つな!俺は無事だから!」
大淀「だけど、それも終わりです」
元帥「・・・・・・」
大淀「次に私に触れたら・・殺すつもりでやります」
青年「ま、待ってくれ!電は暴走してるだけなんだ。もう本人の意思も何もないんだ」
青年「止めてやらない!」
大淀「なら、止めて。これは最後のチャンス」
大淀「電を助けたいなら貴方が止めて」
青年「やってやるよ!だから電には手を出すな」
大淀「はい、そうさせないでください。面倒なので」
青年「っ・・」
こいつは一々むかつく言い方をする。
いや、今は止める事に集中しないと
電「まも・・る・・」ふらふら
青年「電」
ふらふらになりながらもゆっくりと大淀へと歩いていく
手遅れだって認めたくない。認めてたまるか!
電の前に青年が通せんぼする様に立つ
青年「電・・もう良いんだ。もう俺は大丈夫だから。もう止まっー」
止まってくれ。そう言おうとしたが最後まで言えなかった
電「邪魔するな!」バシッ
青年「ぐぁ!」
電に軽く叩かれた
それだけで壁へと叩きつけられる程の威力があった
多分軽く小突いている程度なのだろうが
それでも人間なら、かなりの衝撃だろう
青年「うぅ・・」
大淀「もう終わりですか?」
青年「まだに決まってるだろ!」
気絶しそうになるのを抑えて立ち上がる
また、電の前へと立つ
電「っ!」
青年「痛いじゃないか・・分かってるよ。怒ってるよな。俺はお前のー」
電「どけ!」バシッ
青年「ぐぁあ!」ガシャーン
人間の身体はどうしてこんなに弱いんだ
どうしてこんなに・・俺は
青年「うぅ・・電・・」
まだいける!
何度も立ち上がり電の前へと立つ
電「っ!」
青年「電・・お兄ちゃん怒るぞ?」
しかし、その度に
バシッ
青年「ぐっ!」
ガシャーン!
青年「まだ・・まだ!」
電「やめ・・ろ!」バシッ
ガシャーン!!
青年「お前の痛みに比べたら・・こんなの!」
電「やめろ・・やめろ!!」バシッ
青年「ぐはっ!!」ガシャーン!!
何度も何度も壁へと叩きつけられた
だけど、青年は立ち上がった
青年「電・・こんなに・・辛い思いを・・してたんだな・・ごめんな・・」ポロポロ
涙が止まらない
痛みじゃない
自分の弱さ。そしてこんなになるまで電の想いに気づいてやれなかった
そんな自分の弱さに涙が出る
もうボロボロで立ち上がる事も出来ない筈なのに
苦しい筈なのに
それでも電は戦おうとしていた
何度目かも分からない。何度も何度も俺は壁へと叩きつけられた
本棚に思いっきり身体をぶつけ
本棚が倒れた
青年「っ・・うわぁあ!」
青年は埋れてしまった
大淀「終わりましたか」
青年「ま、まだだ!!」
本の山から身体を出し立ち上がる
まだ動ける。動けるなら諦めない!
青年「はぁ・・はぁ・・電」
今になって辛さも悲しさも知ってしまった
だからこそ止められるなんて簡単に出来ないのも分かっている
だけど、それでも、俺はもう守られるんじゃなくて
電を本当の意味で守るんだ!
一度で良い・・俺の声が届いてくれ!
青年「電!とまれ!!」
電「っ!!」ビクッ!
電「なんで・・どうして・・守る・・守る為に!」
電は止まっていた。でも、まだ立っている
俯いている
目がよく見えないな。でも、それは電も同じで寂しい思いをしている
元帥「もうこれ以上は」
大淀「元帥、黙ってて!」
元帥「っ!大淀」
青年「電・・今まで守ってくれてありがとう」
そっと電を抱きしめる
電「あ・・・」
青年「お前の気持ちに気付いてやれずにごめんな。何度も何度も言ってくれたのにな」
青年「否定されて辛かったよな・・なのに俺はそれをやり続けた・・」
青年「でも、そんな俺を見捨てなかった。お前は強いよ・・本当に弱いのは俺だったんだ」
それをきっと電は分かっていて守ってくれていた
青年「今度はちゃんと聞くから・・ちゃんと受け入れるから・・」
もう逃げない。自分からも電からも
青年「強くなるから・・電と一緒に」
電「っ!」
青年「だから・・電・・」バタッ
生きてくれ
電「・・・・・・・」
電「・・お兄ちゃん」
電の手には青年のなのか自分のなのか分からない血が付いていた
電「これ・・電が?」
元帥「違うそれはー」
大淀「そうです。貴女がやったんです」
元帥「っ!大淀!」
電「電が?」
大淀「少しは覚えてるでしょ?そこに倒れてる彼も」
元帥「やめろ!それ以上言うな!」
大淀「貴女がやったんですよ?」
電「・・そっか、お兄ちゃんも全部・・」
元帥「大淀どう言うつもりだ!」
大淀「元帥、此処までの事になって何もなしで部下達は納得すると思いますか?」
大淀「彼も電も責任にを取らないといけません。それが、貴方への威厳にも関わる」
元帥「だが、あいつは・・」
大淀「大丈夫、私が勝手にやったと言うことにしてもらって構いません」
元帥「駄目だ!あいつだけは・・今は威厳も何も関係ない!」
大淀「元帥・・」
その目は冷たく、そして恐ろしかった
元帥「っ!お前はそんな目を」
スッ
その時、大淀に誰かが触れた
電「・・・・・」
大淀「どう言うつもりですか?命乞いですか?」
電「・・・触ったよ」
大淀「全てを思い出したんですね」
電「電が全てやった事・・なのです」
電「だから、電だけで許して欲しい・・」
電「青年を許して!お願い!何でもするから・・お願い・・」
青年「」ピクッ
大淀「もう貴女一人の責任でどうにかなると思いますか?これを許してしまえば海軍のー」
電「それでも・・許して欲しいのです」
電「ごめんなさい」
大淀「認められない」
電「青年は見逃すのです」
大淀「認められないと言ってる」
電「そこをどうにか」
大淀「これ以上海軍を舐めるなよ?」
電「海軍は舐めてない・・大淀に頼んでるのです」
電「大淀は許してくれないの?」
大淀「話しにならない!今此処で!」
電「良いよ・・でも、青年を見逃さないなら」
大淀「あ?見逃さないならどうする?」
電「最後の力で暴れる・・大淀は無事でも元帥は巻き込まれたら大変なのです」
大淀「脅すと?」
電「なのです」
大淀「上等だ!なら今此処で!」
元帥「やめろ!やめるんだ!!」
元帥「勝手な事をするな!とりあえず二人の処分は後で考える!電もそれで良いだろう!」
電「ダメ!これ以上青年を怯えさせるなんてさせない!起きたら温かい布団で目が覚めて・・」
電「いつも通りの・・みんなのお兄ちゃんとして・・楽しい毎日を・・電はもういないけど・・そんな毎日を返してあげたい!」
電「その為に・・電は立ってる!」
電「目の前の守りたい人も守れないで・・何が海軍だ!何が艦娘だ!」
元帥「っ!!」
大淀「くっ!お前と話してると、あいつを思い出してと頭が痛くなる!もういい!お前は此処で」シュッ
電「っ!」
元帥「よせ!!やめろ!!」
青年「っ!!」ぐわっ!
お兄ちゃんセンサー感知!
電のピンチ!!
青年「うぉおおおおお!!」ダッ
大淀「っ!ならお前から!」シュッ
青年「ふん!」サッ
大淀「え?避けた」
青年「大淀!!」ガシッ
大淀「は、はい!」ビクッ
その眼光は一瞬でも大淀を怯えさせる程に恐ろしかった
そう、これが兄の威厳なのだ
青年「電に!触るなぁああああ!!」ブンッ
青年は大淀を投げ飛ばした
大淀「きゃっ!」
ガシャーン!!
元帥「あいつ・・これは使えるか?」ボソッ
大淀「うそ・・私が・・」
大淀「あの野郎!」
元帥「もういい、寝てろ」ドゴッ
大淀「」バタッ
元帥「すまない大淀・・」
青年「電!」ぎゅっ
電「お兄ちゃん!」ぎゅっ
二人は抱きしめ合い泣いた
これからどうなるのか
そんなのはもう関係なく
ただ二人はまた二人兄と妹として会えた事を喜んだ
しかし、その二人の前に
元帥「二人とも」
青年、電「「っ!」」
二人はボロボロの身体に鞭を打ち土下座をした
青年「今回の件は俺の所為で起きた事です。電は巻き込まれただけなんです。処分なら俺が全て受けます!」
電「違うのです!暴れたのも壊したのも電なのです!青年は関係なくて!悪いのは全部電なのです!」
青年「違う!悪いのは俺だ!」
電「それこそ違うのです!悪いのは電なのです!」
青年「おい、お兄ちゃんに逆らうのか?」
電「妹の言う事が聞けないのか?・・なのです」
青年「怒るぞ?」
電「殴るぞ?」
元帥「黙れ!」
青年、電「「はい」」ビクッ
元帥「お前達二人の処分だが、二人はー」
如月「はぁ・・ドアが取れてる」
夕張「こりゃあ、かなりお金が掛かりそうだね」
如月「まぁ、出すのはね?」
夕張「まぁね」
元帥「あ」
如月「あ?」イラッ
夕張「元凶発見」
夕張「ん?」
大和「」
夕張「あらあら〜こんな所で寝て」
如月「あら、元帥、生きてたの?」
元帥「あ、はい」
如月「ねぇ?これはどう言う事?」
如月「鎮守府はボロボロだし、電も青年も傷だらけだし、おまけに電は全裸・・そんな二人に土下座させてる」
元帥「あ、えーとこれは・・その」
夕張「電ちゃん、これ着て」上着被せ
電「・・なのです」
夕張「君もよく頑張ったね」
青年「あ、いえ、俺は・・」
夕張「誇れ」
青年「え?」
夕張「何があったかは分からないけど生きてるんだから」
夕張「そんな傷だらけな姿見たら分かるよ。頑張ったね」
夕張「だから誇れ!」
青年「はい・・はい!」
如月「本当に変われたのね夕張」ボソッ
如月「ん?」チラッ
大淀「」メガネ取れてる
如月「ぷっ(笑)」
元帥「す、すまん」
如月「・・・・・」イラッ
如月「何が?すまんなの?どうして謝るの?」
元帥「こ、怖いぞ如月」
如月「ねぇ?なにをしてたの?こんな状況で」
如月「こんな惨事を起こしてしまっている。こんな状況で何をしてたのって聞いてるの?」
如月「ねぇ、答えてよ・・ねえ」
元帥「これには訳があってだな」
如月「怪我人達は他の娘達が手分けして動いてくれてるけど、ほぼ半壊状態・・どんな訳なのか聞かせて欲しいわね」
如月「まぁそれでも鎮守府を仮とは言え任されている状況でこんな事になっていたら、仮とは言え、おんぼろ鎮守府の司令官代行の元帥が責任を取らないといけないわね」
元帥「あぁ、その通りだ」
元帥「こうなってしまったのは全て私の責任だ。本部への報告も必要なるだろう」
元帥(大淀はそれが分かっていたから。二人を消してなかった事にしようとしたんだ。電の事を自分の責任にして提督に言うつもりだったのだろう)
元帥「はぁ・・やはり過ぎた地位なのかもしれないな・・」
如月「そうやって嘆くだけなら辞めてしまいなさい」
元帥「厳しい所は相変わらず変わらないな・・あの時から」
元帥「そして乗り越えたんだな如月」
如月「提督達と一緒だから乗り越えられた。みんなが居たから私は私であろうと思えた」
元帥「私も・・いや、俺も乗り越えないとな。提督にもあいつにも顔向け出来ない」
元帥「此処で終わるわけにはいかない」
元帥「おんぼろ鎮守府の要求は?」
如月「二人の状況見て、青年と電が何かしたってのは分かる」
夕張「そして事を起こしたのは間違いなく二人」
元帥「そこまで分かってるならどうする」
夕張「単刀直入に言うね。私は此処を守りたい。だから、余計な事もしないで、二人もこの件には関係ない」
青年「夕張さん・・」
電「・・いいのかな」
夕張「提督にこれ以上何かをさせるつもりなら私の全ての力を持って大本営と戦う」
元帥「夕張・・お前まで」
如月「今回の件は痛みわけにしてって事よ。まぁ、それでも、壊した所は直してもらうから予算も必要だから報告書は本部へ提出しないといけないけど、そこはどうにでもしてくれるわよね?」
夕張「得意だよね?そう言う裏工作」
如月「どう?」
元帥「言ってる事が無茶苦茶だ!こんな事逆に言えばこちらが良いように出来る事も忘れてないか?」
元帥「お前達、おんぼろ鎮守府の所為にする事も出来る。こんな無茶苦茶で一方的な話し、そうされてもおかしくないぞ!」
元帥「それならお前達を消してなかった事にする方がまだ早い!」
如月「時間をかけて、あーだこうだって言うのは苦手なのよ」
夕張「結局時間とお金が無駄に落ちるだけだしね」
如月「それにね?勘違いしてるようだから言うけど」
如月「元帥が相手だからこうやって言ってるのよ?」
元帥「どう言う意味だ」
如月「大切な仲間がこんな事になってるのに・・・・冷静だと思う?」ギロッ
元帥「っ!」
夕張「今の明石なら問答無用で飛び付いているかもね」
元帥「明石もなのか・・」
如月「そちらが交渉するんじゃなくてこちらが交渉する機会をあげてるの」
如月「本当なら自分でも何するか分からないのよ?」
元帥「・・こちらに拒否権はないと」
如月「そう、でも、あるようにしてあげてるの。貴方の威厳の為に」
夕張「どうする?明石呼ぼうか?」携帯電話
元帥「ま、待て!分かった。壊した所も直すし電の件も今回は無かった事にする」
青年「良かった・・良かったな!電」
電「うん・・でも、お兄ちゃんは」
如月「・・・・青年はどうするの?」
元帥「どんな事があろうと一般人をこのまま出すわけにはいかない。これは俺が元帥であろうと出来ない」
夕張「殺すの?」
元帥「本来ならそうしなければならない」
電「だ、だめ!お兄ちゃんはー」
青年「電、もういいんだ」
電「え・・」
青年「元帥・・俺の命で全てが収まるならそれで良いです」
電「い、いや!お兄ちゃん!」
青年「如月さん」
如月「なに?」
青年「電をお願いします」
如月「・・・・ええ」
電「如月・・助けて!お兄ちゃんを助けて!」
如月「ごめんね此処が限界なのよ。元帥も馬鹿じゃない。落とし所を間違えれば全部帳消しにされる」
元帥「・・・・・」
如月「元帥がさっき言った様に私達を全部消してなかった事にする」
如月「それもやろうと思えば出来てしまう」
電「そんな・・・」
夕張「辛いかもだけど一人の命と鎮守府を選ばないといけない」
夕張「青年、恨んでくれても良いよ」
青年「いえ、本来なら全てなくなってしまっていた。それを助けてくれた。恨むなんて出来ませんよ。夕張さん、如月さん、ありがとう」
青年「もし、生まれ変われたら。その時に恩は返します」
夕張「馬鹿・・そう言う事言わないでよ」
青年「せめてものお返しです」
電「うぁああああん!いやだぁああ!」ポロポロ
青年「ごめんな・・電・・」ポロポロ
如月「・・・・・・」
夕張「・・・・・・」
元帥「・・・・まるゆを呼んでくれ」
こうして一人の青年と一人の艦娘から始まった騒動は終止符を打った
半壊の鎮守府から響く鳴き声は暫く続いた
青年の想いは電に届いたのだろうか
【被害報告書一部抜粋】
おんぼろ鎮守府【半壊】
かなりの予算が掛かると思われる
大和【大破】
武蔵【中破】
卯月【大破】
電【大破】
大淀【小破】
その他数名の負傷者あり
間宮(おんぼろ)【睡眠処置】
間宮(大本営)【睡眠処置】
【死亡者】
青年
由良
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーー
ーーー
以上の報告書が本部へと送られた
青年編
終
色々あって夜になった
あれからすぐに南提督が目を覚ました
傷は南憲兵さんの処置と丁度急所を外していたと言うのもあり大事には至らなかった
でも、念の為に病院へと連れて行こうとしたが、それを南提督は拒否した
面倒ごとが増えるのを嫌がっているのかもしれない
と言うよりも自分の置かれている状況を理解しているのか抵抗をする事もなく全ての悪事を認め、あっさりと終わってしまった
明日には上へと南憲兵さんが報告するという事なので今日は南提督は医務室に拘留される事になった
あまりの諦めの良さに何かを企んでいるのかと思ったが南鎮守府の艦娘達が24時間監視をしているので何も出来ない筈だし南提督自身もそれは分かっている
本人は悪足掻きをしたくないだけと言っていた
本当にそれで良いのか?
口には出していないけど、追い詰めた俺が言うのもおかしいけど・・
そう思ってしまった
それから伊良湖さんや鈴谷さんの話しを聞いたり南憲兵とこれからの事について話し川内さんからもこれからの流れを聞かされたり書類を書かされたりと忙しかった
やっと落ち着けたのは深夜だった
皆が疲れ明日に備えて休んでいる
明日は司令官としての仕事が待っている。南提督の事や鎮守府のこれからやら色々とやる事が残っている
明日も大変だ。本当ならもう休んだ方が良い
だけど・・
眠れない
いや、このまま明日を迎える事に俺は・・
提督「・・・・・・」
外に出て月を眺める
そうしてるだけで落ち着く
落ち着くけど、少し悲しい
提督「俺はどうしたいんだろう・・」
これで良い筈なんだ
神通さんや川内さんや南憲兵さんの期待に応えられた
弥生も南鎮守府の艦娘達も助けられた
大井さんも北上さんもこれで追われる事もない
西鎮守府の事も守れた
提督「っ・・・・」
俺は司令官として正しい事をしている筈なんだ・・
面と向かって言える筈なんだ
間違いをなくす事が出来た・・と
誰も犠牲になんてなってない・・と
守る事が出来た・・と
提督「本当にそうなのか・・」
本当にこれが正しいのか?
100パーセントの答えになるのか?
提督「・・・・・」
いや、違う・・
時に実験も必要であり犠牲を出しているからこそ進める事も守る事も出来ている
あの時言った南提督の言葉は全部が全部間違っているわけじゃない
綺麗事じゃない
でも、それでも罰される事は間違いじゃない
そもそも100パーセントの答えなんてない
それを求めようとしてるのが間違いなんだ
これは司令官としてやってきた責任として受け入れなければいけない
そう、南提督は罰を受け入れた。それだけの事をしてきた
それで良いんだ
この判断で
誰も苦しまずに・・
提督「っ・・・・」
苦しまない筈なのに・・
なんでこんな気持ちになるんだ
どうして南提督が正しいって少しでも思ってしまっているんだ
そんな事ある筈がないのに!
提督「くそ!俺は何がしたいんだろうな・・」
自分の考えも分からなくなってくるなんて
自分がどれだけ司令官として半人前にも満たない奴だって分かる
何かが引っかかる
それだけで決断が出来ない
西提督さんならすぐに答えが出るんだろうな・・
それが例え残酷な事になったとしても
提督「・・・・・・」
決断は必要ない
あとは流れに身を任せれば良い
もう少し月を眺めていよう
明日を迎えて
終わらせて
帰ろう
俺の帰るべき場所へ
月は優しく光り
闇を照らしてくれる
その優しい光に何度助けられたか
でも、太陽と違ってはっきりと照らしてはくれない
だってはっきりと照らされたら
見えてしまうから
照らされていない無数の影が
提督「・・・・・・」
全部を見る必要はない
月が優しく照らしてくれる場所だけで良い
今回の事は見えなかった
それで良いんだ
提督「・・・・・」
神通「・・・・・」
神通「悩んでるの?」
提督「あぁ・・・っ!」
提督「い、いつの間に!」
神通「さっき来たの」
提督「そうですかお疲れ様です。川内さんから神通さんも色々動いてくれていたってのは聞いてます。ありがとうございます」
神通「気にしないで、それよりも頑張ったね。これは紛れもない貴方の功績になります・・喜ばないの?」
提督「功績ですか・・」
神通「納得出来ない?」
提督「そうじゃないです。そうじゃないですけど・・」
素直に喜ぶなんて
やりきったと思えない
一層の事祝杯でもあげるか?酒でも飲んで騒ぐとか?
いや、そんな金はないし、まだ未成年だ
と言うよりも酒を飲んでも合うか分からない下戸かもしれないし
そうなったらお酒の付き合いとかも大変になるな西提督さんとかは絶対に誘ってきそうだし
俺が見るに黒髪は酒が好きそうだ
なんとなくだけどそう感じる
っと、今はそんな事考えてる場合じゃない
自分の事考えないと・・
提督「はぁ・・どうすれば良いんだろ・・」
神通「ふふふ・・」
提督「あ・・」
鬼軍曹が笑った
会ってそんなに時間は経ってないけど、あまり笑うのが得意ではなさそうな感じもするし、今朝の無理矢理マヨコーラパンを口に突っ込んで来た時の怖さはまさにマヨコーラ鬼軍曹
悩んでる事話したら怒られそうだな・・
神通「悩んでる事口に出てたよ。そう言う所あの人にそっくりね」
提督「あの人?誰にですか?」
俺と同じような人がいるのかな?
神通「尊敬してる人・・その人はね。悩んでる事が口に出る癖に面と向かっては話してくれなかった・・一人で解決しちゃう人だったからね」
提督「一人で解決ですか・・」
と思ったら俺とは真逆の出来る奴だった
きっとこう言う場面でもすぐに解決しちゃうんだろうな・・
提督「羨ましいな・・」
神通「・・・・・・」
提督「俺もそうやってなんでも一人で解決出来る様な人になりたいな・・」
神通「提督、そう言う所は似たら駄目。絶対に真似したらダメよ良い?」
提督「え?どうしてですか!一人で解決出来るならそれで良いじゃないですか」
神通「そんなのは思ってるだけ。傷は確実に広がっていく・・そしていつか爆発する」
神通「頼れる人がいるなら頼りなさい。いないなら・・私を頼って」
提督「神通さん・・」
神通「お願い・・・」
提督「・・・・・」
もう怒られても良い
誰かに話したい
そう思い、言葉が出た
自分がどうしたいのか、どうするべきなのか
それが分からないと
提督「情けないですよね・・本当に」
神通「・・・・・・」
神通「優しいね」
提督「優しい?」
どうして優しいなんて言葉が出てくるんだ?
もしかして神通さんは俺のこの気持ちの原因を知っているのか?
提督「あの、神通さん!」
神通「ね?そう思うでしょ?鈴谷」
提督「え?」
鈴谷さん?何処に
鈴谷「やっぱりバレてたか・・」ヒョコ
近くの物陰から出てきた
こんなに近くだったのに全く気付かなかった
提督「え、えっと、いつから?」
鈴谷「外に出た時からずっと見てた」
提督「えーー!」
という事は月見て黄昏てたりとか泣きそうになりながら悩んでる所とかダイレクトに見られてた
恥ずかしい!
鈴谷「久しぶりだね。神通」
神通「うん、怒ってる?」
鈴谷「ううん、最初は分からなかったけど神通の気持ち理解できたから」
神通「・・・・そう」
鈴谷「他の娘達は?」
神通「まだ教えてない」
鈴谷「そっか、ありがと神通」
神通「・・・・・・」
提督「何の話を?」
鈴谷「ん?聞きたい?」ニヤニヤ
提督「え?ま、まぁ」
この人殴られてからニヤニヤしてばかりで最初の氷のような表情を見てるからギャップもあってなんか変な感じだ
俺の事を知ってるみたいだけど何故かは教えてくれない
もしかして変な所当たったかな?感触的に多分クリティカルだったし
艦娘とは言え、伊良湖さんが襲われていると見えて咄嗟に殴ってしまったけど女の子を殴ったんだ
本人は気にしてないけど、あ、もしかしてドMなのか!
鈴谷「えっとね〜」
神通「鈴谷」
鈴谷「分かってるよ。ごめんね?詳しくは話せないけど、死んだって言われてた人がね生きてたんだよ」
提督「それは驚きですね。でも、良かったですね」
鈴谷「うん、多分最初から生きてるって知ってたら二人共終わってたんだと思う・・」
鈴谷「私だけ終わってしまうならそれでも良かったけど、きっとその人も巻き込んでいた」
鈴谷「だから死んだって嘘ついた大馬鹿にありがとうって伝えたかったんだよ」
鈴谷「ね?神通」
神通「そうね。でも、大馬鹿はどっちなんでしょうね?」
鈴谷「どちらもじゃない?」
神通「そうね・・でも」
神通「次止まったら・・猶予なんて与えないから」ギロッ
提督「ひぃ・・」ビクッ
神通、鈴谷((可愛い・・))
なんて眼力だ
俺を睨んでるわけじゃないのにこの迫力
危うく漏らしかけ・・・
提督「・・・・・・」ピラッ
これはセーフ
パンツがちょっと濡れただけだ
鈴谷「大丈夫、次は走り抜けるから」
鈴谷「だからもう嘘は嫌だから・・ね!」ギロッ
提督「ひゃっ」ビクッ
明らかにこっち向いて睨んでたよね?
なに?漏らせと?
そんなすぐに漏らしたりは・・
提督「これはセーフだ。うん、セーフ」ボソッ
パンツがちょっとやばいけどセーフ
鈴谷「っと、そんな事より提督ちゃんの話しだよね」
提督「あ、そうでした!」
パンツにばかり意識が向いていたけど、今はそれどころではない
もし、この気持ちを無視しなくても良いなら
提督「神通さん俺は・・」
神通「優しい・・それだけじゃダメ?」
何を聞きたいかもう分かっているようだ
提督「どうしても気になるんです。俺は本当に正しい事をしたのか・・本当はどうするべきだったのか」
提督「終わったはずなのにモヤモヤしてしまって・・」
提督「俺は何に引っかかってるんだろう」
神通「苦しい?」
提督「はい・・苦しいです」
鈴谷「優しいね」
提督「っ・・鈴谷さんまで」
鈴谷「でも、中途半端」
鈴谷「司令官として一番良くない」
提督「・・・・・・」
神通「今以上に厳しいこと言うけど、知りたい?」
提督「それでも教えてください・・お願いします」
神通「分かった」
鈴谷「良いの?」
神通「うん、彼の道よ」
鈴谷「・・・・・うん」
鈴谷「提督、南提督はね。街の人達に凄く慕われているの」
提督「え?あの人が」
鈴谷「孤児院には多額の資金援助をしている。他にも地域のイベントなどにも積極的に参加してる」
神通「学校に行って子供達に海の怖さを教えたり、偶に先生として勉強も教えている」
鈴谷「それだけじゃない。街を歩いて補導やゴミ拾いもしてる」
鈴谷「これだけ聞くと善人だよね?鎮守府ではやってる事はブラックだけど」
提督「そんな・・南提督がそこまでしてたなんて」
神通「貴方も向こうもお互いを知らない。お互いの背負うものを知らない」
鈴谷「今回の件ね。提督側から見れば艦娘を助けようとしてくれてた」
鈴谷「でも、向こうから見たらどうかな?」
提督「え?」
神通「南鎮守府のお家騒動に無理に介入してきて因縁を付けて壊滅まで追い込んだ」
提督「っ!で、でも、南提督は艦娘達を苦しめた!彼女達は泣いていた!あれをほっとくなんて出来ないよ!」
神通「悲しい事だけど、現実は無情なの」
鈴谷「犠牲はたくさんあったよ。でもね・・南提督は被害は出してないんだよ」
提督「っ・・そんなの・・」
鈴谷「最後まで言うね。今回提督達が介入した事で南鎮守府は大きな被害を出した」
鈴谷「安定していた鎮守府の体制は崩れて、これから街の治安も落ちて、代わりの司令官が来ても暫くは奴等の脅威に怯える事になる」
鈴谷「君は・・それだけの事をしたんだよ」
神通「提督はそれに少なからず気付いたんだよ。だから、それがモヤモヤとして頭に残ってしまった」
鈴谷「後悔してるんだよ。自分の行動に」
提督「っ・・・・・・」
神通「優しさと後悔はどちらも弱さから生まれてしまう。君は弱い。簡単に壊れてしまう程に」
提督「じゃあ・・俺がやった事は間違いだったのかよ・・」
鈴谷、神通「「・・・・・・・」」
提督「助けない方が良かったのかよ!見て見ぬ振りをしろと!」
提督「それが正しいのかよ!」
神通「そうだと言ったら?」
提督「っ、手助けしてくれたじゃないか。なのにどうして」
神通「これは私の意思じゃない。貴方の意思」
神通「それとも流されてやったんですか?」
提督「違う!俺は自分で選んで此処にいる!」
神通「なら、認めなさい!自分のやった事は間違ってると言ってみなさい!」ガシッ
神通「助けなかったら良かったと言いなさい!」
提督「っ!」
助けなかったら良かった?
何を言ってるんだ!!
神通「さぁ!後悔してるのでしょ!」
ふざけるな!ふざけるな!!
そんなの!!
提督「嫌だ!!」
神通「っ!」
提督「後悔してるかもしれないけど、それでも、俺は・・守れた笑顔をなかったら良かったなんて思えない!」
鈴谷「南提督は被害は出してないんだよ?」
提督「違う!苦しんでる人がいた!泣いてる娘がいたんだ!それは大きな事じゃないかもしれないけど、確かにあった事実なんだ!」
神通「間違ってる事かもれしれないよ。正義に反してるかもしれない」
神通「それでも、自分は間違ってないと言える?」
提督「言うよ・・間違ってるかもしれない。軽蔑されるかもしれない。俺を間違ってると止めようとする人が現れるかもしれない・・」
提督「でも、俺は自分の選んだ道を歩くよ。歩いてやる!」
提督「助けなかったら良かったなんて絶対に思ってやるもんか!」
それがいつか後悔に変わってしまっても
俺が自分で進んだと言う選択があれば
歩いて行けると思うから
提督「っ!そうか・・そうだったのか」
頭の中のモヤモヤが一気になくなった
提督「南提督もそうだったんだ」
自分の信じた道を歩いているんだ
その先の後悔もなにもかも背負って立っていたんだ
提督「だから、今を受け入れられている」
間違ってるか間違ってないかを決めるのは自分だったんだ
それを貫く事が強さなんだ
提督「南提督は間違ってない・・だけど、俺も間違ってない!」
提督「南提督・・・・」
出会いが違っていればきっと南提督とも上手くやれていたのかもしれない
西提督さんとは別の強さがあったんだ
神通「・・・・・・」
提督「神通さん、鈴谷さん。ありがとう。俺分かったよ・・」
鈴谷「ん?私達はただ、提督ちゃんを追い詰めただけだよ?」
鈴谷「それで君は開き直っただけじゃない?」
提督「確かにそうですね。でも、今はこれで良いんです。これで・・」
神通「行くの?」
提督「はい」
鈴谷「物好きだね」
提督「それでも、もう一度南提督と話したい。司令官として」
神通「なら行きなさい。自分の思う様にしてみなさい」
提督「はい!それじゃあ失礼します」
去って行く提督に神通が声を掛けた
神通「提督!」
提督「?」
神通「貴方がどんな選択をしようと私は・・貴方を肯定します。だから進みなさい!」
神通「背中はいつでも押してあげるから」
提督「神通さん・・」
提督「っ!」敬礼
そして提督は走って行った
鈴谷「行ったね」
神通「これで良かったのかな」
鈴谷「後悔してる?」
神通「分からない。このまま引き止めて普通の暮らしをさせてやった方が良いのかもしれない・・辛い道を選ばせてしまった」
鈴谷「見守っていこうよ。今度はちゃんと離さないように」
神通「・・・・うん」
鈴谷「まぁ、まずは敬礼だね。さっきの全然様になってなかったし」
神通「そうね。敬礼のやり方も教えないとね。ふふ」
鈴谷「これから色々教えてあげないと。でも、その前に私も責任取らないとね・・」
二人は月を見上げながら
考える事もなかったこれからを考え始めたのだった
鈴谷「ねぇ、涙出てるよ」
神通「鈴谷こそ」
ーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーー
「あの!」
提督「ん?」
伊良湖「提督さん・・少しお時間ありますか?」
提督「伊良湖さん・・」
そんな悲しそうな顔で言われたら
無理なんて言えないよ
提督「大丈夫ですよ」
伊良湖さんに誘われて着いていくのだった
ー南鎮守府食堂ー
伊良湖「少し待っててくださいね」
提督「はい」
呼ばれて着いてきたのは良いけど食堂に連れて来られるとは
提督「もう誰もいないか」
夜になると、あの出来事が嘘のように静かだ。数時間前まで騒動が起きていた場所とは思えない
俺が気絶した後に何があったのかも聞いた
伊良湖さんは俺の為に南提督を刺した
まだ、その事について話していなかったけど、優しい伊良湖さんの事だ
気にしてしまっている筈だ
伊良湖「お待たせしました。どうぞ」
提督「これはモナカ?」
あの時食べたマヨコーラ風味のモナカかな?
不味くもないけど美味しいかと言われると悩む
伊良湖「あ、これはちゃんと作ったやつなので安心してください」
提督「どうしてモナカを?」
伊良湖「駄目ですか?」
提督「いえ、そんな事はないです。じゃあ、せっかくだし頂きます」パクッ
提督「おお!これは美味しい!」
マヨコーラモナカとは大違いだ
これが、伊良湖さんの本気
手が止まらない!
提督「これは!うま過ぎる!」パクッパクッ
あまり食欲もなかったけど、そんなの関係ないくらいに入る!
気付くとお皿の上にあったモナカは全部なくなっていた
提督「あ・・・・」
しまった全部食べてしまった
提督「すみません。あまりに美味しくって」
伊良湖「うん、良いんですよ・・」ポロポロ
その言葉とは裏腹に伊良湖さんから流れる涙
提督「っ!俺!今から何か作ってきます!」
そう言って立ち上がろうとする
伊良湖「待って!」ぎゅっ
手を握られた
提督「え?」
伊良湖「これは全部提督さんの為に作ったんです。だから」
提督「でも、泣いて」
伊良湖「悲しくて泣いてんじゃないんです。提督さんがモナカを食べてくれて・・そして、私は・・良かった・・良かったって」ポロポロ
提督「伊良湖さん・・・」
伊良湖「ごめんね。よく分からないよね?説明するから少しだけ・・待ってて」
そう言いながらも涙はどんどん溢れる様に出ていた
提督「ハンカチどうぞ。いくらでも待ちますから」
伊良湖「あら・・千円札じゃないの?」
提督「茶化さないでください」
伊良湖「拭いて・・」
提督「分かりました。じっとしててください」
それから少しして伊良湖さんの涙は止まり落ち着いた
伊良湖「ごめんなさい・・迷惑だったよね?」
提督「いえ、伊良湖さんが元気になって良かった。事情聴取とかの時は凄く辛そうだったから」
伊良湖「・・・・優しいですね。提督さんは」
提督「っ・・ありがとうございます」
伊良湖「・・・・・・・」ジーー
提督「・・・・・・?」
伊良湖「・・・・・・・」ジーー
提督「・・・・・・」
気まずい・・それになんでじっと見られてんだ?
俺から話さなきゃだめなのか?
だが、何を話す
伊良湖さんって美人よりも可愛いよりですねとか言ってみるか?
あ、ゴミを見る目で見られそう・・
提督「っ・・えっと・・・あの・・その・・」
やばい、緊張で頭がグルグルしてきた
伊良湖「ふふ、可愛い」
提督「からかわないでくださいよ・・こっちは本気なんですから」
これが苦手な人だとか嫌いな人ならストレスにしかならないからな
提督「伊良湖さん、そろそろ話をお願いします」
伊良湖「もう少し見てちゃダメ?」
提督「ダメです。本題をお願いします」
提督「伊良湖さんの涙の理由を教えてください。心配したんですからね?」
伊良湖「っ・・ごめんなさい」
提督「やっぱり言いにくいですか?」
伊良湖「いえ、貴方には聞いてほしい」
伊良湖「私ね、もう今までの様に料理をする事が出来なくなったの。ううん、したくないの」
提督「・・・・・・」
伊良湖「海軍の人にも艦娘にも私はもう料理したいと思わないし美味しそうに食べてても何も感じない・・寧ろ嫌な気持ちばかりが出てくる」
伊良湖「今日の夕食・・涙して食べる娘達もいたけど・・腹が立った。提督さんがいなければ食べる事も出来なかったのに・・彼女達も・・私も含めて大っ嫌い」
提督「伊良湖さん、俺の事で怒ってくれたのは嬉しい。でも、彼女達だって怖かったんだ辛かったんだ」
提督「彼女達も伊良湖さんも悪くない」
悪いのはこの体制を立てた南提督
そして、それを壊した俺なんだよ
伊良湖「提督さんがどう言ってくれても遅いんです。もう戻れない。戻っちゃいけないんです!」
提督「そんな事ないよ!伊良湖さんは!」
伊良湖「提督さん!」
提督「っ!」
伊良湖「お願いです・・今の私を否定しないで・・貴方に否定されたら私はもう何も残らない」
提督「っ・・・」
伊良湖「ごめんなさい。重いよね・・」
これが、俺が壊してしまった
影に隠れていた所の一つなんだ
この事実から逃げてはいけない
それは伊良湖さんの言う様に明日を生きる者達を否定してしまう
進もうとしてる人を否定してはいけないんだ
提督「伊良湖さん。最後にもう一度だけ言わせてください」
提督「貴女は何も悪くない。南提督を刺したのもみんなを嫌いになってしまった要因も俺達の所為なんです。だから、全部背負わないでください!」
提督「もし背負う事しか出来ないなら半分で良いから俺にも背負わせてくれ!」
提督「お願いだ・・伊良湖さん」
伊良湖「提督さん・・こんな女ほっておいても恨みはしませんよ。一目見られただけで良かったんです」
伊良湖「もし受け入れてしまったら・・きっと苦しませてしまう・・後悔させてしまう・・だから」
提督「ううん、それでも俺は伊良湖さんを受け入れますから」
伊良湖さんは強い・・一人でも生きようとしてる
だけど、いや、だからこそ俺は!
伊良湖「っ・・やっぱり提督さんは優しくて温かい・・」
伊良湖「泣いたのはね?そんな海軍の人間も、自分を含めた艦娘達も嫌いになってしまった私が、貴方を海軍の人間だと知ってしまって」
伊良湖「貴方のことも嫌いになってしまうんじゃないかって・・」
伊良湖「そうなったらもう二度と美味しく食べてくれたみんなの笑顔の温かさも何も感じなくなってしまう」
伊良湖「だから確かめたかった」
提督「どうでした?」
伊良湖「はい、不安だったけど、美味しそうに食べてくれる提督さんは・・可愛くて、愛しくて、そんな姿を見ていたら枯れたと思った涙も心も救われたんですよ」ポロポロ
伊良湖「今ね私、凄く・・凄く胸が温かいです」ニコッ
提督「っ!」
胸に手を当てて目から溢れる涙
そして無邪気に感じる笑顔
少し、いや、かなりドキッとしてしまった
でも、そんな彼女が俺だけしかいない
これから孤独と戦う事になる
それはずっとかもしれないし、すぐに終わるかもしれない
先の見えない恐怖と戦いながら
そんな道を歩く彼女を
気付くと伊良湖さんを抱きしめていた
伊良湖「あ・・提督さん?」
提督「大丈夫だ。俺がなんとかするから。一人にはさせないから・・させないから!」ぎゅっ
伊良湖「提督さん・・はい」ぎゅー
また背負ってしまう事になるけど、それでも良い
俺は伊良湖さんのこの笑顔を守りたい
伊良湖さんを部屋まで送り。不安そうにしている彼女が眠りにつくまで一緒にいた
危うく一緒に寝てしまいそうになったのは秘密だ
提督「・・・・」ナデナデ
伊良湖「提督さん・・」zzz
今のこの気持ちがなんなのかは分からない
同情なのか、それとも・・
提督「行こう」
まだやる事がある。それを終えてからでも良い
また伊良湖さんとの時間を作れば良いのだから
部屋を出て南提督のいる医務室へと向かうのだった
どうしてこうなってしまったんだ
何をすれば全てが丸く収まってくれていたのか
逃げずに向き合えば良かったのだろうか
いや、違う
鈴谷さんや神通さんと話した事も
伊良湖さんを抱きしめた事も
そして俺がそうしようと決意した事も
全てが一つでも欠けていれば
俺はきっと此処に立っていない
南憲兵「提督、お前がやったのか」
南提督「」
提督「はい、俺がやりました」
俺が南提督を殺しました
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーー
ーーーーー
少し前
ー西鎮守府医務室前ー
医務室の前には見張りがいなかった
提督「おかしい見張りがいないなんて」
交代で見張りをしている筈なのに誰もいない
中で何かが起きてるのかもしれない
提督「誰か呼ばないと」
すると中で何か音がした
誰かが泣いている
南提督じゃない
提督「まさか!南提督が誰かを」
そう思うと誰かを呼びに行くことを忘れドアを開けた
ー南鎮守府医務室ー
提督「っ!」
その光景は想像を遥かに超えていた
そこにあったのは
南提督「」
すでに事切れている南提督の姿と
少女「・・・・・・」
ナイフを持って立ち尽くしている少女の姿だった
多分成人はしていると思う
少女「南提督・・」
ポタポタと液体の垂れる音がする
それはナイフから垂れる血だった
提督「っ・・」
声が出ない
身体思う様に動かない
まるで夢を見ている様に
目の前の光景を現実だと認めたくなかった
南提督の人生がこんなに簡単に終わってしまった
進む道は違っていたかもしれないけど、強い想いを持っていた
そしてそれはもしかしたら俺と同じで・・
確かめたかった
彼の事をもっと知りたいと・・そう思っていたのに・・
やはり、艦娘の誰かなのか?こうなる可能性はあったかもしれない
そうしてやりたいと思う娘達も居たと思う
だけど、それを行動に移してしまう
そうなってしまう程に恨んでいたのか
少女「誰?・・・・」ポロポロ
彼女は泣いていた
提督「な、なんで・・」
やっと声が出た
少女「ん?これ?止まらないんだよ」
少女「悲しくて・・悔しくて・・憎くて・・」
提督「そこまでする必要はなかった。もう南提督は捕まって君達は少なくとも今の状況からは脱する事が出来た」
提督「また新しく始められたじゃないか」
提督「なのに・・どうして」
少女「君は勝手な事ばかり言うね」
提督「え?」
少女「新しく始められる?司令官を失った艦娘達が全員そう出来ると思う?出来るわけないでしょ」
少女「部分解体だってお金は掛かる。安いものじゃないし、此処の予算を使っても半数も出来ない。それ以前にさせてもらえるかも分からないよ」
少女「残ったら残ったで同じ様にこき使われてしまうだけ、耐えられなかった娘達が次も耐えられるわけない」
少女「何も変わらない・・そして変えようとした人も・・もういない」
提督「いないって」
少女「そうでしょ?此処まで自ら泥を被ってまで尽くしてくれていた彼を此処は否定し、追い出した。あんなに頑張ってくれていた南提督を」
提督「っ!君は南提督を憎んで」
少女「憎むわけないでしょ!」
少女「今を変えようと必死に足掻いていた!どんな事も今を変える為に周りになんと言われようとやり遂げていた!」
少女「表立って表彰はされてないけど、徐々に変わってきていた。いつかみんなが笑える為に頑張ってた」
提督「・・・・・・」
少女「なのに誰も分かってくれなかった!自分の事ばかりで周りを見てない!」
提督「ならなんで南提督を」
少女「それが彼の・・あの子の望みだから・・」
提督「望み?ふざけるな!南提督がそれを望んだって言うのかよ!そんな簡単に命を捨てる様な人だった言うのか!そんなわけないだろ!」
少女「簡単なわけないでしょ!色々考えてそうするしかなくなって・・なのに貴方に何が分かるの!あの子を語らないで!」
提督「君は、南提督のなんなんですか!」
少女「初期艦です!いえ、初期艦だったです。もう部分解体してしまっているから艦娘じゃないけど、それでもあの子が着任した時からずっと見てきた!」
提督「っ!」
少女→五月雨「白露型駆逐艦6番艦五月雨・・それが私の名前です。見た事くらいあるよね?海軍関係の人間なら」
五月雨「此処にいる時点で君も司令官なのかな?一般人じゃないよね?」
提督「いや、ごめん。正直言うと俺は君を知らない」
五月雨「そう、まぁ、どうでも良いけど・・」
提督「五月雨、教えてほしい。そんなに尊敬していた存在をどうして」
五月雨「それしかもう守れないんだよ・・守りたい存在の為に選んだんだよ」
五月雨「起こった事も聞いた・・そしてこれからの事も・・」
五月雨「君が野口くんだね。南提督が話してた。馬鹿みたいな幻想を語ってるって」
五月雨「そして、南提督を追い詰めた」
提督「・・・・・・」
五月雨「南提督が言ってた。あいつは絶対に来るって」
提督「っ、考えてる事もお見通しなんだな。五月雨は俺を恨んでるのか?」
五月雨「恨んでるかって言われれば恨んでるよ。今すぐ殺したいくらいにね」
彼女は持っているナイフを強く握りしめる
でも、それを向ける事はしなかった
五月雨「だけど、出来ない・・南提督が嬉しそう貴方のことを語るんだもん」
提督「え?」
五月雨「あんなに嬉しそうな顔見た事なかった」
提督「南提督が・・どうして」
五月雨「言ってたよ・・君は司令官としての器は全くないって・・」
提督「・・・ばれてたのか」
俺が司令官だって事も
五月雨「でも、人として、自分の大切な人を託す人間としては必要な存在だって言ってたよ」
提督「っ!」
五月雨「南提督は大切な存在を守る為に自らの死を利用したんだよ」
提督「・・・・・・」
五月雨「どうしたの?今更後悔してる?」
提督「違うよ。南提督は・・ちゃんと見ててくれていたんだなって」
その上でこの道を選んだ
提督「守りたい存在・・」
その為に自らの死を望んだ
全てを知っていたのに
提督「南提督さん・・やっぱり貴方の考えは分からないよ・・」
生き抜いて守らないと誰も幸せになんてなれないのに
貴方なら他の道だって見つけられていたのに
どうしてだよ!
提督「こんなの誰も理解なんて出来ないよ」
五月雨「だからこそ辛い道だったんだよ。でも、この子は一人で進む道を選んだ。一人で背負っていたんだよ」
提督「ふざけんなよ。そんなの勝手過ぎるだろ」
五月雨「それは君達も同じだよ。お互いが違う道を見てしまったらどちらかが退くかしない限り終わらない」
五月雨「艦娘達にとって退く事は出来ない。そしてそれは司令官も同じだった」
五月雨「分かり合うなんて出来ない。だって私達は違う生き物と兵器だから」
提督「っ!それは違う!」
提督「人間も艦娘も同じ生き物だ!五月雨はそれで納得出来たのかよ!」
五月雨「出来るわけないじゃない!頑張ったよ。でも、だからこそ分り合おうとした私を遠ざけた」
五月雨「そうなってやっと分かったんだよ。生きる道も全てが違っているんだって」
提督「くっ・・どうして簡単な事なのに!」
みんな難しく考え過ぎている
だけどそうなってしまっている
そうしないと置いて行かれてしまうからだ今に
そんな今が俺は
嫌いだ!
提督「認めないからな俺は」
今を
五月雨「・・・・・・」
五月雨「でも、偶に会いに来ちゃうんです。嫌そうな顔するけど追い返したりなんてしないんですよ・・ツンデレって言うんですかね?本当に可愛い子だった」
五月雨「最初に出会った時から目に涙を溜めていた・・我慢して来たんだよね」
そう言うと南提督に触れる
五月雨「よく頑張ったね南提督くん。ちょっと疲れちゃったよね・・辛かったよね。ごめんね・・力になれなくて」ポロポロ
提督「・・・・・」
後悔してしまいそうだった
南提督を追い詰めてしまった事を南鎮守府に来てしまった事を
大井さんと北上さんを助けようと思った事を・・
でも、それだけはしてはいけない
それをしてしまえば
俺は自分を仲間達を見失ってしまう
南提督の選択が守る為だったとしても、そして、それに一人の少女を巻き込んでしまっていても
俺は進まなければいけない
このまま人を呼べば今の状況は終わる
五月雨「私も疲れちゃった・・」
五月雨「約束守れないけど、良いよね。もう、貴方のいない世界で頑張れないから・・」
彼女はそのまま動こうとしなかった
約束がなんなのかは分からない
もう諦めてしまっている
ただその場で南提督に語りかけていた
提督「っ・・・」
あの日の叢雲と同じ様に見えてしまった
自分の信じた未来を失い絶望の中に落ちてしまった
そんな姿が目の前にあった
あの後悔をまた俺は選んでしまうのか
提督「五月雨・・・俺は」
五月雨「捕まえてよ」
提督「それで良いのか?」
五月雨「うん、これで良いよ。君になら捕まっても」
提督「な、何を言って」
五月雨「南提督に言われたからもあったけどね。もう一つ君を恨めない理由があるんだよ」
五月雨「なんかさ他人だって思えないんだよ。不思議だよね」
提督「五月雨・・」
五月雨「もう、終わりだね」
提督「っ!誰か来る」
騒ぎを聞きつけて誰かが来てる
このままばれたら五月雨は
提督「くそが!」ダッ
ドアに鍵を掛ける。これで少しは時間を稼げる
五月雨「な、なにをして」
提督「来い!」ガシッ
五月雨「なっ!離して!」
提督「来い!約束も果たせず終わろうとしてんじゃない!」
五月雨「自分が何を言ってるか分かってるの!貴方は!」
提督「貴方じゃない!提督だ!覚えておけ!」
五月雨「え!野口じゃなくて提督?え?どう言う事ですか!」
提督「それは後だ!とにかく逃げるんだ」
五月雨「やめて!乱暴しないで!」
提督「なら!従え!」
五月雨「いや!」バシン
提督「ぐっ!」
頬を思いっきり叩かれた
意識が飛びそうになったが、どうにか気合いで乗り切った
提督「くぅ!いてぇな!」
五月雨「あ・・ごめんなさい」
提督「大丈夫だ!」
五月雨「でも、頬が腫れて」
提督「イケメンになったろ」
五月雨「今冗談を言ってる場合じゃないでしょ!」
提督「冗談じゃねえよ!」
五月雨「もうお願いです!ほっておいてください私の為なんかに」
提督「お前の為じゃない勘違いするな」
五月雨「え?」
提督「俺の為だ」
五月雨「は?」
提督「此処しかないか!」グイッ
五月雨「あ、ちょ!」
提督「あ、いたた。頬が暴れると痛むな」
少し演技を入れて言ってみる
五月雨「あ・・」
大人しくなった
ちょろいな。少し心配だ
だが、このチャンスを無駄にしない!
提督「何処か出られそうな所は」キョロキョロ
五月雨「え?あるの?」オロオロ
提督「っ!あれは!」グイッ
五月雨「きゃっ!」
無理矢理窓に押し込み外へ出す
五月雨「ま、待って!」
提督「待たない!」
窓は小さいが小柄の五月雨ならギリギリいけるか?
いや、いける!
五月雨「いたた!ちょっと痛い!」
提督「大人しく入れ!」
五月雨「分かったから押さないで!」
五月雨「あ・・・・」
提督「どうした!」
五月雨「えっと・・その・・」
提督「ん?あ!」
お尻が引っかかったか!
五月雨「ごめんなさい・・////」
提督「くそっ!なんでお尻はデカいんだよ!」
五月雨「人が気にしてる事を!」
五月雨「これでも現役の頃はお尻も小さかったです!」
提督「そんな過去のお尻じゃなくて今のお尻の事を言ってんだよ!」
五月雨「・・・・・グスッ」
ドアが叩かれる音がする
「おい!提督か!今お尻って聞こえたがお尻に何かあったのか!くっ!鍵が掛かってる!取りに行く暇はないか!今助けるぞ!」
ドンッ! ドンッ!
ドアを突き破ろうとしている。時間がない!
提督「五月雨!押すぞ!」
五月雨「やっ!」
提督「了承は求めてない!」
そのデカイお尻に背を付けて押す
提督「おりゃぁあああ!」
五月雨「いったぁああい!」
スポッ!
そんな音と共に五月雨は外へと出された
五月雨「いてて・・」
提督「行け!元艦娘だったんなら逃げるくらい出来るだろ!」
五月雨「で、でも!すぐにばれて」
提督「時間は稼ぐから行け!早く!」
もう自分でも何をしてるのかも分からない
この先を考えているわけじゃない
ただ、そうしたい。それだけだった
提督「お前は背負おう事になったんだ。次は五月雨が南提督が出来なかった事を引き継いでやるんだ!」
五月雨「でも、私じゃ・・」
提督「変えるから」
五月雨「え?」
提督「南提督がやろうとしていた事とは違う道になるけど変えてみせるから」
提督「だから、俺を信じてくれ」
五月雨「提督・・・・」
提督「南提督の気持ちも全て君なら分かるだろ」
五月雨「・・・・・・」
提督「何かあれば力になるから。おんぼろ鎮守府へ来い」
五月雨「おんぼろ鎮守府・・そこが貴方の」
提督「走れ!」
五月雨「っ!」ダッ
彼女は走って行った。一度振り返り不安そうな顔をしていたが決心した顔をしてまた走り出した
強い娘だ
提督「はぁ・・なにやってんだよ」
今自分が何をしてしまっているのか
考えるだけで頭が痛くなる
提督「・・・・・・」
南提督「」
考えてる時間はないよな。こうするしかないか・・
どうしてここまでしてしまうのか分からない
だけど、あの娘をほっておけなかった
五月雨が言った他人とは思えないと言う言葉
それは俺も同じだった
五月雨からは心の奥底から親近感を感じていた
まるで兄妹の様な
いや、違うな。
大切な人の大切な人だからって言う方がしっくりくるな
自分で言ってて意味分からないな
だけど・・
提督「覚悟決めるか・・」
覚悟を決める理由としては大きく意味があると思えた
捕まる気はない。それは信じてる仲間達の事もあるから
切り抜ける方法もあるにはある
でも、それは此処のみんなを裏切る事になる
だけど、それでもやるしかない
怖いな・・幻滅されてしまうだろうな
南提督もこう言う気持ちを持っていたのかな?
もう、聞く事は出来ないけど
落ちていたナイフを拾う
そして強く握りしめる
提督「貴方の思う明日と俺の思う明日はきっと・・」
同じだったのかもしれない
ただ、道が違っていただけなんだ
そっと南提督に触れる
まだ温かい・・
それと同時にドアが壊れる
南憲兵「提督!尻はだいじょーっ!」
南憲兵の目の前には返り血に染まりながらもしっかりとナイフを握っていた提督の姿だった
南憲兵「提督、お前がやったのか」
困った様に
だけど、その目にはしっかり意思を宿し
提督は言った
提督「はい、俺がやりました」
この罪は俺が背負おうと覚悟を決めた瞬間だった
南憲兵編
少し時間は遡り
提督が伊良湖を寝かしつけている時
その頃南憲兵は近くのコンビニへと向かっていた
南憲兵「すっかり暗くなってしまったな」
と言っても時間は既に0時を過ぎてしまっているので当たり前だ
提督達と鎮守府のこれからについて話し合っていたり書類の整理などをしていたらこんな時間になってしまった
提督には書類やらと色々無茶をさせてしまったからこっちのやれる事は出来るだけしてやりたい
怪我をして疲れているのに提督は文句一つ言わなかった
南提督に殴られたり蹴られたりしたのに平気な顔をしている
ちょっと怪我の治りが早い様にも思えるが
南憲兵「本当にあいつは凄いな」
明日も大変だと思うがそれが終わったら提督とはゆっくり話しがしたいな
その時自分が男でないと言う事も教えようか
きっとビックリするぞ
自分が元艦娘で戦艦長門だったと知れば
南憲兵「それで意識とかされたりしてな」
まぁ、それはないか
だってそんな勇気はないから・・
もし、元艦娘だと分かったら離れてしまうかもしれない
そうじゃなくても壁はどうしても出来てしまう
人間と艦娘は違う生き物だと言う当たり前が出来てしまっているから・・
どんなにそうじゃないと言ってもそうなってしまう
現に自分もそう思っている
この手に兵器が付いていた・・それに過去も現在も関係ないのだ
生まれた時から付いていた
だけど人間には付いていなかった
それが艦娘と人間の違いだ
自分が艦娘で生まれてしまった事をこんなに悔しく思った事はない
だったらこのまま男同士の付き合いでいた方が良い
男友達として付き合うのも悪くない
そうすればきっと彼に近づけるかも
思い過ぎだな・・
南憲兵「でも今は飯くらいは良いよな」
と、一人でこれからについて考えているとコンビニが見えてきた
深夜でもやってくれているのは本当に助かる
いつも通っているから店員さんとも顔馴染みだ
まぁ、男と思われているがな
ーコンビニー
店員「あ、南憲兵さんお疲れ様です。今日も夜勤ですか?」
南憲兵「ん?あぁ、そうだな。そんなところだ」
店員「いつも南提督さんや南憲兵さんが頑張ってくれているおかげで自分達は平和に過ごせてますよ。本当にありがとうございます」
南憲兵「なんだよいきなり」
店員「いや、たまにはちゃんとお礼を言った方が良いかと思いましてね。いつも感謝してますよ南憲兵さん」
店員「タダには出来ませんが割引させてもらいますよ。おでん美味いですよ」
店員「あ、廃棄の時間が近づいてるわけではないですからね?出来立てですよ」
店員「昨日まではね」ボソッ
南憲兵「・・・・・・」
いつも聞こえてんだよな・・
こいつは悪気はないんだろうが本音がいつも漏れてしまっている
だから信用できると言うのもある
だが、安くしてもらえるのは助かる
そう・・いつもなら喜ぶべきだと思うが・・何でこんな時に・・
きっと近いうちに南提督が捕まった事は町中にも広まってしまうだろう
そうなった時どうなるか・・
想像するだけで恐ろしく感じてしまう
この店員には長い間世話になっている
それこそ精神的に弱っていた時には察してくれたのかおでんをサービスしてもらった時は泣きながら感謝したものだ
まぁ、廃棄寸前のだったが・・
それでも良くしてくれていたから・・
そんな店員さんだから・・
南憲兵「っ・・・」
後で知って苦しんでしまうなら・・
今教えて
怒りを受け止めるのも
南憲兵「じ、実は南提督は」
店員「ん?南提督さんがどうしたんですか?」
捕まったと言おうとした時
川内「店員さーん」
店員「あ、はーい。南憲兵さん失礼しますね」
南憲兵「あ・・」
客に呼ばれてしまった
ん?あの客って
川内「ねぇ、缶コーヒーは何処?」
店員「はい、あちらにありますよ。すぐに分かると思いますが」
川内「そうじゃなくて隠してる裏のコーヒーとかないの?」小声
店員「裏にあるのは在庫だけですよ。此処はただのコンビニです」小声
川内「ふーん・・ありがとう」
店員「いえいえ」
南憲兵「川内、来ていたのか」
川内「うん、ほら、行こ」
南憲兵「すまない。少し店員と話しが」
店員「あ、おでんですか?安くしますよ」
川内「いらないよ。それ廃棄寸前でしょ?匂いで分かるよ」
店員「え?」
南憲兵「ちょっと!」
川内「長門、時が来たら分かる事だよ?それを早く教えるってことはそれだけ長く苦しませてしまうだけだよ?」
川内「今日という日をわざわざ騒がせなくても良いんじゃないかな?」
川内「此処で喋って怒りを受け止めても苦しむのは君じゃないよ?」
南憲兵「っ、そうか、そうだな。すまない」
少し考えれば分かる。これは自分が楽になりたい為にしようとしてる事だと
店員にはすまないが・・それでも受け入れてもらおう
おでん・・何回か腹壊した事もあるし・・
川内「うん、別に良いよ。気持ちは多少なりとは分かるからね」
川内「それよりほらコーヒー見ようよ。少し品揃えはあれだけど色々あるよ」
店員「マヨコーラチキン出来立ていかがですかーーー!!」
店員「まぁ、誰もいらないよな」ボソッ
???「っ!!」
南憲兵「川内は缶コーヒーが好きなんだな」
コーヒーにこだわりがあるのかもしれないな。確かにこんだけ種類が多いと楽しいだろうな
素人ながらコーヒーは本当に奥が深いと思う
川内「うん、こんだけ種類が多いのに味が全く変わらないのは凄いよね」
南憲兵「ん?」
川内「そのくせにすぐに新商品が出る。色々名前を変えたりとか言い方を変えたりとか面白いよね」
川内「新商品の香る虚しさってどんな味なんだろうね。なんか虚しい事でもあったのかな?」
川内「絶対味変わらないよね!(爆笑)」
南憲兵「さあ?どうだろうな。確かにコーヒーに虚しさは要らないと思うが」
川内「これもこれもこれも全く違うデザインだけど味は変わらない!逆に凄いよね!」
南憲兵「あぁ、そうだな。凄いな」
考えた事はないが確かに色々考えつくものだな
コーヒーもある意味で奥が深いんだな
川内「なんかさ自分達艦娘と似てるかなって思うだよね。次はどんなのが来るのかなって楽しみになるんだよね」
南憲兵「それってどう言う」
川内「味は変わらなくても表現やデザインでさ違って見える。同じでも同じじゃない」
川内「凄いよね。同じなのに全く違う様に思えるんだよ。それがたくさんあるんだよ!それだけの可能性があったんだ」
川内「それだけの道があるんだね」
川内「今はハッキリとそう思えるんだよ」
南憲兵「・・・・・」
そうか、彼女も悩んでいたんだな。そして道を見つけたんだ
川内「はは、ごめんね。変な話しをして」
南憲兵「いや、良い話しだった。こっちこそありがとう」
南憲兵「良いコーヒーが見つかると良いな」
川内「どれも同じだけどね」
川内「それでも探す事に意味があるんだと思う」
南憲兵「あぁ、そうだな。本当にそう思うよ」
コーヒー選びに夢中な彼女を背に買い物を済ませコンビニを出る
おでんは格安で買った
川内「提督はどの缶が好みなのかな?」
川内「ううん、それとも私がどの缶なのか見るべきなのかな?ふふ、楽しいな」
川内はまだコーヒー選びに夢中の様だ
気付いたら鈴谷と神通の姿もあった
神通はマヨコーラパンとマヨコーラチキンも大量に買っていた。在庫全部を店員がせっせと作らされているが、あの量はかなり時間が掛かるぞ
提督の夜食だと言っていたがきっと冗談だろう
あの味は拷問でしかない
鈴谷はそれを見て爆笑していた
あんなふうに笑うんだな
知らなかった
南憲兵「今日で大きく変わったんだな」
みんなのおかげだ
みんながいたから
南憲兵「よし!」
俺ももう止まるのはやめよう
同じ味かもしれないけど俺は・・いや、私のデザインや表現で立ち向かおう
離れてしまうかもしれないけど提督にはありのままの自分を知ってもらいたい
教えよう自分の事を
南憲兵「ふふ、あいつどんな顔するかな?」
あいつにも夜食買ってやったし起きていたら一緒に食べよう
いや、寝てたら起こそう
私と食べられるんだから今夜は付き合ってもらおう
こんだけ悩ませたんだ。これくらいの我儘は許してくれよな
そんな事を思いながら南鎮守府へ向かった
ー南鎮守府憲兵詰所ー
南憲兵「遅くなった」
今夜はもう何も起きる事はないとは言え憲兵が鎮守府を空けるのはいけない
私がコンビニに行っている間に代わりに此処にいてくれる娘がいたが
弥生「むにゅむにゅ」..zzzZZ
南憲兵「ふふ、待たせ過ぎてしまったな。弥生も今日は疲れてる筈なのにありがとう」
彼女を詰所のベッドへと運んだ
南憲兵「報酬のお菓子を買って来たんだが起きてからだな」
枕元に置いた。報酬だから他の娘に文句は言われないし言う奴もいないだろう
南憲兵「さてと提督はどこだろうか?」
ベッドの方にはいなかった
何処へいるのだろうか?
それから提督を探して南鎮守府の中を歩くが
南憲兵「なんかおかしいな・・」
深夜だから当たり前だと言われればそれで終わりだが、それでもおかしい
静か過ぎる
それに
南憲兵「少し匂う?」
この匂いは・・何処かで
南憲兵「っ!執務室だ!」
急いで執務室へと向かった
このかすかにする匂いは執務室で偶にしていた
ー南鎮守府執務室ー
だが、そこには誰もおらず朝のままだった
荒らされた机に開かれた洋服ダンスに
川内と鈴谷が争った跡がそのままだ
南憲兵「くんくん・・しないな」
あの匂いは此処が一番強かった筈だが・・まったくしない
南憲兵「・・・・・」
匂いだけで皆を起こすのも悪いが・・
南憲兵「ん?」
いや、起こす必要もなさそうだな
だが、嫌な予感しかしない
思い出せ
この匂いは
南憲兵「もういい!」
こうなればさっきの所に戻って匂いを辿る!
すると言う事は何かある筈だ
それから微かな匂いを辿り行ったり来たりを繰り返した
そして
南憲兵「うっ・・お手洗いに行きたくなった」
急激に尿意が襲って来たのだ
このままでは決壊するのは目に見えている
すぐに近くのトイレの場所を思い出す
医務室の隣にある
全速力で走った
憲兵が漏らしたとなれば大惨事だ
トイレを補足して急いで入る
隣の医務室で何か物音がしたような気がしたが今はそれどころではない
憲兵のプライドと意地がどうにか繋がり間に合った
南憲兵「ふぅ・・なんとか守れたな。ん?」
この匂いは
さっきより強い!
そしてその先は
医務室!南提督が捕らえられてる場所
見張りの姿もない
南憲兵「くそっ!最初から分かってた事だ何かあるならまずは此処だった」
そして、その騒ぎ確定させる様に声がする
「そんな・・お尻じゃ・・・お尻の事・・・だよ!」
お尻?なんだお尻とは!
全部は聞こえなかったが提督のお尻が大変なのか!
南憲兵「おい!提督か!今お尻って聞こえたがお尻に何かあったのか!くっ!鍵が掛かってる!取りに行く暇はないか!今助けるぞ!」ドンドン!
扉は鍵が掛かっている詰所に鍵を取りに行く暇はない
提督の尻が大変だ!
何度もタックルを繰り返す
ドアは頑丈なのか中々開かない
時間だけが経っていく
南憲兵「提督!!」
やっと自分が前向きになれると思った
やっと本当の自分を見てくれるかもと思える人に出会えた
もし提督に
提督の尻に
何かあれば私は・・私は!!
南憲兵「っ!!」
もう大切な人を失いたくない!!
ドン!!
ドアが壊れ開かれた
そして
南憲兵「提督!尻はだいじょーっ!」
南憲兵の目の前には返り血に染まりながらもしっかりとナイフを握っていた提督の姿だった
嫌な汗が流れるのが分かる
南憲兵「提督、お前がやったのか」
一つの結果が見えてくる
それが怖い
でもそれを知ってか知らずか提督は困った様に笑い
だけど、その目にはしっかり意思を宿し
言った
提督「はい、俺がやりました」
最悪の結果を
南憲兵「今なんて言った?」
提督「この状況を見れば分かりますよね?俺が南提督を殺したんですよ」
南憲兵「・・・・・・」
南憲兵「話してくれ」
提督「ん?」
認めない・・
南憲兵「何が起きたか話してくれ」
提督「だから殺したんですよ」
認めてたまるか!!
南憲兵「それは見て分かる!事細かに話してくれと言ってる!」
南憲兵「お前は!いきなり殺したのか?違うだろ?何を話した!そして何があって殺した!」
提督「・・・・・・・」
提督「あんなに一方的に殴られ蹴られたんですよ?腹も立つでしょ?それで仕返しに文句でも言ってやろうと思いまして、そしたら言い合いになって・・」
南憲兵「それで刺したと?」
提督「はい」
南憲兵「言い訳しないのか?」
提督「現行犯ですからね」
南憲兵「ふざけてんのか?」
提督「本気です」
提督「本気で言ってます。南憲兵さん」
南憲兵「・・・・・・・」
こいつは本当に・・
提督「それでお願いがあります」
南憲兵「なんだよ」
提督「俺は此処で捕まるわけにはいきません。特例措置を使わせてもらいます」
南憲兵「特例措置だと?」
提督「はい、海軍法で定められている。特例措置です」
提督「人を殺しても捕まらない法です」
南憲兵「・・・・・提督」
提督「ありますよね?」
提督「司令官クラスの人間であれば人を殺してしまった場合であっても憲兵が保証人として好意の殺害でなく任務またはそれに準ずる公務の妨害の為やむを得ない状況で起こってしまった場合だと証明出来るのであるのならば刑罰の対象にならない」
南憲兵「保証しろと?」
提督「はい、お願いします」
提督はもう少し頭良い奴だと思っていたが
提督「俺は殺してしまいました。だけど好意じゃない。仕方なくなんです!お願いします。俺の事を信じてください。」
それは考え過ぎだった
南憲兵「・・・・信じられると思うか?」
提督「信じてください!俺は・・殺してしまった。けどそれでも!・・・」
こいつは、優し過ぎるんだ
南憲兵「随分と言葉に詰まっているな」
そして
提督「っ・・お、お願いします!」
大馬鹿だ
南憲兵「勝手だな。信じられないに決まってるだろ」
提督「捕まえますか?」
南憲兵「まぁ待て」
そう言って倒れている南提督の側へ行った
ナイフを持っている提督に背を向けた
刺されるかもしれない。だけど、彼を信じたいという気持ちが出てしまった
お願いだ
提督「・・くっ」
南憲兵「刺さないのか?」
やっぱり優しいな
この先が心配になってしまう程に・・
提督「っ!」
南憲兵「此処で刺せば後はお前の好きな通りに出来るんじゃないか?此処の艦娘達もお前の言う通りに従うだろう」
南憲兵「刺せよ」
提督「な、なにを言ってるんですか!」
南憲兵「出来ないのか?一人出来たなら二人も変わらないだろ?」
提督「っ!する必要がないんですよ!貴方さえ俺を信用して保証すれば」
南憲兵「保証出来るかよ・・」
大事な人が犯罪者になるのを保証なんてするかよ
提督「っ・・し、してください!」
南憲兵「ふっ、前の私ならそう言っているだけだろうな」
提督「え?」
南憲兵「信じるよお前を」
提督「っ、そ、そうですか、なら」
南憲兵「だが、保証はしない」
提督「っ!」
南憲兵「お前を信じるよ。殺してないって」
提督「・・・・・・・」
南憲兵「前の私なら無駄に喚いてお前を捕まえていただろう」
南憲兵「だけど、目の前にある物だけが真実ではない。そう教えてくれたのはお前だぞ提督」
提督「・・・・・・・」
南憲兵「憲兵を舐めるなよ」
南憲兵「この刺し傷は痛みを感じる事も出来ないほどに正確に急所を刺している。力の入れ方も正確だ。見事だよ」
南憲兵「完全にプロの技だ。私でも出来るか分からない」
南憲兵「お前に出来るのか?」
提督「っ!」
南憲兵「それにこの匂い・・やっと思い出したよ」
提督「え?匂い?」
南憲兵「香水の匂いだ。これはよく南提督に会いに来ていた五月雨が付けていた香水だ」
提督「さ、五月雨って誰ですか?」
分かりやすい奴だすごく顔に出てるぞ
南憲兵「なんだ?なぜ隠す?」
提督「え?い、いや、隠すも何も俺がやって」
目も泳いでるし冷や汗も酷い。此処まで嘘が下手な奴は初めてだ
頑張ったんだな提督
だからこそ
南憲兵「何度も言わせるなよ?」
南憲兵「憲兵をなめんなよ?」ギロッ
提督「っ・・」
それを止めてやらなければ
信じる者として
お前の覚悟は分かった
だが、その覚悟をさせてはいけない
南憲兵「お前の事だ。南提督の考えに何か思う事があったんだろうな。そして会おうとした。」
提督「南憲兵さん俺は・・」
南憲兵「黙って聞けよ」
南憲兵「それともバレるのが怖いのか?」
提督「っ・・信じてくださいよ」
南憲兵「信じてるさ。お前はやってない」
もう遠回りはやめよう
提督がすごく苦しそうにしている
そんな姿は見たくない
南憲兵「やったのは五月雨だな。提督」
提督「っ!違う!五月雨って誰だよ!」
南憲兵「此処の元艦娘でな。南提督によく懐いていた。今しているこの匂いも五月雨のいや、南提督の亡くなった嫁さんがしていた香水なんだ」
提督「え?」
南憲兵「南提督が五月雨に贈った品がその香水だ。どう言う意図があったかは分からないけど確実に言えるのはこの香水をするのは此処では五月雨か亡くなった嫁さんだけなんだよ」
南憲兵「メーカーも名前も分からない香水を偶然他の娘がしてたと言うのか?」
提督「・・・・・」
南憲兵「艦娘達が香水なんてものを付けていたら南提督が黙っていないのは分かるよな?それこそ思い入れのある香水をさせてると思うか?」
提督「・・・・」
南憲兵「この窓もヒビが入ってるね。無理矢理何かをねじ込んだ?」
提督「・・・」
南憲兵「そう言えば五月雨お尻が少しばかり大きかったな。ドアの方から痛い痛いと聞こえたぞ?女の子に無理矢理ねじ込んだな?」
これは嘘だが、何か反応があればそこからなし崩しに何か分かる筈だが
提督「っ!!!」
何で知ってるのって顔してるな
ねじ込んだんだな
本当に君は・・
南憲兵「もう嘘はやめろ」
これ以上そんな苦しそうな顔を見せないでくれ
南憲兵「提督・・頼む」
提督「・・・・・」
提督は黙ったままだった
南憲兵「提督!」
やがて、諦めた様に言った
提督「見逃してやってくれませんか?」
南憲兵「お前じゃないんだな」
提督「・・はい」
南憲兵「何故庇う」
提督「分からないです」
南憲兵「分からないなら考えろ。逃げるな」
それは他だけではなくお前をも否定してしまう
提督「後悔したんです・・きっと俺はその償いがしたいんだ」
提督「でも、それだけじゃない。心の奥から助けてやってと誰かが言ってる気がするんです」
南憲兵「誰かだと?」
提督「はい、ほっとけませんでした」
普通ならこんなふざけた話しを信じるのはあり得ない
適当な事を言って逃れようとしていると思うだろう
だが・・この目は嘘をついてる様には見えなかった
いや、きっと信じたいんだな
彼を・・
提督「すみません。こんなの信じられませんよね」
南憲兵「いや、信じるよ」
提督「え?」
南憲兵「嘘言ったのか?」
提督「言ってません」
南憲兵「なら、信じるよ」
提督「で、でも、こんな話しを」
南憲兵「お前のその気持ちを信じる」
信じたいんだ・・信じさせてくれ
提督「南憲兵さん!いや、長門さんありがとうございます!」
長門か・・
南憲兵「お前は本当に艦娘が大切なんだな」
南憲兵「そんなに艦娘を守りたいのか?」
提督「俺にとって彼女達は新しい世界を見せてくれた。暗い世界から救い出してくれた。大切な存在なんです」
提督「俺が彼女達に出来るのはせめて地上だけでも守れる存在になってやりたいんです」
提督「海では守ってもらっているのに地上では酷い扱いを受けている。それなら守ってやらないとって」
提督「どう頑張っても人間は海じゃ何も出来ない・・出来なかった」
南憲兵「ふっ、まるで海で戦った事があるように言うな」
提督「そうですよね。おかしな話しです。あるわけないのに」
南憲兵「っ・・・」
なんだ、今の感覚
まさかあるのか?
いや、あり得ない
南憲兵「そ、そうか・・分かった」
少し気になる所はあったが分かった
分かってしまった・・
きっと提督はこれが艦娘達との対等の立場だと思うのだろう
それが進むべき道と信じている
それを否定はしない
生きる希望を見つけたならそれは他人がどう思っても正解なのだから
その為に生きようとするのは間違いじゃない
だけど、対等にはなれていないんだ
対等と言うのは同じ場で同じ立場で守り守られる存在だ
艦娘と人間では・・難しいだろう
提督の言葉で分かった
艦娘である以上
提督は本当の意味で対等の立場ではいてくれないだろう
たとえ本人が歩み寄ろうと
それは無意識のうちに秘めた溝が邪魔をしてしまう
認識されてしまった瞬間
関係は大きく変わる
上か下かのどちらかだ
なら・・私は・・俺は・・
南憲兵「南憲兵って呼んでくれ」
提督「え?でも」
南憲兵「勘違いしないでくれ。その方がやっぱりしっくりくるんだ」
南憲兵「お前にはそう呼んで欲しい・・これからも友としてな」
提督「っ・・分かった。南憲兵、ありがとう」
南憲兵「あぁ・・・」
これで良いんだ・・これで
提督「え、泣いて・・」
南憲兵「提督!」
提督「は、はい!」
南憲兵「言っておくぞ。お前を犠牲にせずにどうにか出来るなら手を貸す。だから考えろ」
私が友として出来るのはこれだけだ
艦娘としてではなく
人間として
お前の力になる
道は照らしたぞ
だから、後はお前が先行してくれ
それが・・
南憲兵「エスコートよろしくな?提督」
対等の立場だろう
提督「南憲兵・・・・はい!」
買ってきたおでんはすっかりと冷めてしまった
それでもまだ長い夜は終わらない様だ
俺はこれからも俺であろう
南憲兵「ほんの少しだけ・・ざんねんだ」ボソッ
なにがとは言わないけどな
南憲兵編
終
11章も始まりました!アカウントも変わりましたが、またまた、ダラダラとやっていこうと思いますが付き合ってもらえると嬉しいです!
コメントやオススメなどしてくれると凄く喜びますよ!
コメント返し出来ない時が多いですが、一つ一つ見てニヤニヤします。
とても好きな作品です!次作も楽しみにしています!