2025-02-19 08:52:48 更新

概要

海軍兵学校を卒業して間もない若者提督がワケあり鎮守府に配属されちゃったお話。


前書き

お久しぶりです。疾走しないようにぼちぼち更新していきたいと思います


提督「……やっと、着いた」


提督「横須賀、鎮守府……さすがだな、広くて綺麗な庁舎だ」


提督「たしか、上官からの言い渡しだと……秘書?というのがついてるらしいが……」


提督「……」キョロキョロ


提督「……敷地が広いから、下手に動いたら迷うなこりゃ……」


提督「そもそもなんなんだ……海軍兵学校を卒業した途端にここへ配属されるなんて。提督?艦隊の指揮?俺が?……船にも乗艦せず、航空機の整備すらしないって……一体……」


?「こんにちは、なのです」


提督「ん?……何か、聴こえたような……」


?「ここなのです!」


提督「……うわぁ!!びっくりしたわ!!」


?「やっと気づいてくれましたね」


提督「い、いつからそこに?」


?「ずっといましたよ?」


提督(な、なんでこんなところに子供が……?)


?「あ、いま子供がここに?って思いましたね?」


提督「え、なぜわかった?」


?「顔を見ればわかるのです。初めて来た司令官さんは、みんなそう思うのです」


提督「む?初めて来た?ここは最近できたばかりと聞いたはずだが……」


?「…………」


提督「あ、れ……?」

提督(もしやタブーに触れてしまったか?)


?「……庁舎内を案内するのです。着いてきてください」


提督「……おう」


提督(なんか……嫌な予感がするな……)




?「着きました、こちらへどうぞ」ガチャ


提督「机と……棚ばかりだな。ここはなんの部屋だ?」


?「ここが司令官さんのテリトリー……即ち、執務室なのです。基本的にはここで仕事してもらいます」


提督「……埃一つないな。良く、手入れされている」


?「お掃除、頑張ったのです」ニコッ


提督「色々と説明してもらったが……まだ君の名を聞いていなかったな」


電「はわわ!失礼したのです。特型駆逐艦、電です」


提督「いなづま……だな。早く覚えるように努力しよう。これからよろしく頼む」





提督「それで、俺は一体何から始めればいいんだ?」


電「まずは工廠へ行って、新しい艦の建造をします」


提督「建造?……すまない、俺に船を造る技術なんて……」


電「あぁ!大丈夫なのです!妖精さんがやってくれるので」


提督「妖精?」


電「簡単に説明すると、妖精さんは私たち艦娘の艤装を作ったり治したりしてくれる、頼りになる存在なのです」


提督「ほぅ……。しかしそれなら俺がいなくてもいいんじゃないか?」


電「それは……そうなんですけど、司令官さんは私たちの艦隊指揮をして頂きたいのです。まだ電しかいませんが、これからどんどん増えて行った時に必要なのです」


提督「ん〜〜……わかった。まだわからないことばかりだから、君を頼らせてもらうね」


電「光栄なのです」


提督「じゃあ、早速その建造をしようか。資材……は何があるのかな?木材とか?」


電「燃料、弾薬、鋼材、ボーキサイトの4種類あるのです」


提督(他の3つは何となくわかるが……ボーキサイトってなんだ……?)


提督「……よし、全部使ってくれ」


電「はわわ……そんな投げやりにならないでください。えっと、とりあえず最低数でやりましょう」


提督「え?こんな30ぽっちで大丈夫なのか?」



〜建造開始〜



提督「……何日くらい掛かるんだ?船、だから……1ヶ月とかだろうか」


電「そんなに掛からないのです。最も短くて18分なのです」


提督「は?18分?」


電「今回は初めてなので、特別にこの『高速建造材』をプレゼントするのです」


提督「ガスバーナーみたいだな……」


電「これを使うことによって、建造時間を大幅にカット出来るのです!」


高速建造材「ボーーッッ!」


電「建造が終了したのです」


提督「早っ!?」


雷「雷よ!かみなりじゃないわ!そこのとこもよろしく頼むわねっ!」


電「はわわっ!雷ちゃんが出来上がったのです!」


雷「あら?電じゃない!」


提督「随分と似ているな?」


電「雷ちゃんは、電のお姉ちゃんなのです」


提督「姉妹、か……そういうのもあるんだな」


雷「司令官、これからよろしくね?」


提督「あ、あぁ。よろしく……えっと、いかずち?」


電「それじゃあ、早速雷ちゃんを艦隊に編成して、出撃するのです」


提督「えっ、出撃?」


雷「あら、司令官知らないの?」


電「雷ちゃん、この司令官さんはたった今着任したばかりの新人さんなのです」


雷「そうなの。だったら、私たちがしっかり教えないとダメよね」フフンッ


提督「申し訳ない……しばらく勉強させてもらう立場になる」


電「では、艦隊の旗艦は電に任せるのです」


雷「じゃあね!司令官!私たちの活躍、期待しててね?」


提督「お、おう……行ってらっしゃい」





駆逐ハ級「」ドゴォン


電「はにゃあー!?」


雷「電!大丈夫!?」


電「いたた……軽傷なのです」


雷「この……ってー!」


駆逐ハ級「」ゴボゴボ


雷「やったわ!この雷様に敵うとでも思ってんのかしら!」


電「すごいのです!」





電「戻ったのです」ボロ


雷「司令官!無事に帰ってきたわ!」ボロ


提督「うわーーー!??大丈夫か!??」


電「大丈夫です、ちょっと被弾しただけなので」


提督「ちょっとなのか!?すごく深い傷のように見えるが!?……ていうか服!破れてるんだけど!?」


電「あぁ、ごめんなさい。できれば気にしないでください。入渠すればすぐ治るので」


提督「にゅうきょ?……修理みたいなもの?」


雷「こうして中破したりケガした艦娘は、入渠させて治すのよ!」


提督「そ、そうなのか……」


電「こうした時に使うのがこの『高速修復材』です」


提督「……ただのバケツにしか見えないが。これを使うと?」


電「すぐに元通りに治るのです。ただし、入渠の際には資材が減るのでご注意ください。私たちは駆逐艦なので、そんなに資材は減らないので安心して大丈夫なのです」


提督(か、艦娘って凄いんだな……不思議だ……)



雷「司令官!間宮に行きましょう?」


提督「まみや?」


電「鎮守府内に『甘味処 間宮』という給糧艦の間宮さんと伊良湖さんが経営している食堂があるのです」


提督「食堂……ふむ、ちょっと行ってみようかな」


電「決まりなのです。司令官さんの着任を祝して、甘いものをご馳走するのです!」




〜 甘味処 間宮〜


雷「ここよ!このあんみつが美味しいの!」


提督「? 雷、ほんの一時間前に建造されたばっか……だよな?」


雷「?」


提督「……なぜこの間宮が美味しいことを知っているんだ? 」


電「──司令官さん」


提督「ん?」


電「それ以上の詮索は、ダメなのです」


提督「えっ?それは、どういう──」


電「話すと少し……いえ、かなり長くなります。今はまだその時じゃないので、機会が訪れた時に、きちんと、全てをお話しします」


提督「わ、わかった……なんか、ごめん」


提督(……なんか、やばい所に配属されてしまったっぽいぞ……)



雷「間宮さーん!あんみつください!」


間宮「いらっしゃい。雷ちゃん、電ちゃん……と、あら?新任の提督さんですか?」


提督「あ……初めまして……挨拶遅くなってすみません。ついさっき着任した者です。その、右も左もわかりませんが……よろしくお願いします」


間宮「はい。こちらこそ、よろしくお願い致しますね」 ニコッ


提督「アッ」


提督(て、天使か……?)


間宮「あの……?」


提督「はっ!な、なんでもないです!えっと、とりあえずあんみつを……」


間宮「はい。あんみつですね? 」


雷「私、クリームあんみつで!」

間宮「はーい」


提督「……なあ、電」コソコソ


電「なんですか?」コソコソ


提督「あの間宮さんも……もしかして艦娘っていう種族なのか?」コソコソ


電「そうなのです、でも私たちと違って戦いに赴くことはしないのです」コソコソ


提督「なるほど……食堂のお姉さん、ということか」


雷「電?食べないの?」


電「はわわ!私もあんみつでお願いします!」


間宮「ありがとうございます、少々お待ちくださいね?」



提督「……」キョロキョロ


提督(使い古された形跡はなし……机も椅子も、壁に掛けてあるメニュー表もやけに新しいな……)


提督(最初から電一人で掃除したとは思えないくらい、まさにたった今出来上がったと錯覚してしまうくらいのピカピカさ……)


提督(……)


雷「司令官?」


提督「ん?どうしたのかな?」


雷「さっきから辺りをキョロキョロして、何かあったの?」


提督「え、あ、いやぁ、こういう広い食堂、懐かしいなって思って見てたんだよ。辛く厳しい学生時代は、もう死に物狂いだったから、ね」


電「……」





〜執務室〜


提督「まさか間宮に普通のご飯もあるとはね。甘味処って言うもんだから、デザートしか無いのかと思ったよ」


電「間宮さんのご飯はとても美味しいのです。特にあの卵焼きは絶品なのです」


提督「……うん、すごく美味しかった」


提督(それこそ、お袋がよく作ってくれた卵焼きと似てる味だったのが気になるところだが……まあ味付けが似るのはよくあることだろう)


提督「ところで、俺はここで仕事をする……と言っていたが、具体的には何をすればいいんだ?」


電「そうですね……正直、まだまだこの鎮守府でやれることは少ないのです。資材の見直しか、出撃か……」


提督「手持ち無沙汰ってわけね……この机に閉まってある資料は、読んでもいいのか?」


電「もちろんです。艦隊の指揮に必要な事項が事細かに書かれている、言わばマニュアルみたいなものなのです」


提督「そっか……結構分厚いから、読める時に読んでおくよ。そうそう、ちなみに俺の寝床とかって、どうなってるのかな?」


電「寝床は、あちらの扉の先にあるのです」


提督「仕事部屋と隣接してるんだ……寮みたいなのはないのか?」


電「あるにはありますが……艦娘用なので、司令官さんには狭いと思います」


提督「んー、そっか。わかった。その寝床とやらも後で確認しておこう」


電「それじゃあ司令官さん、まずは鎮守府海域の安全を確保するのが一番だと思います」


提督「あ〜……そういえば、君たちは一体……何と戦っているんだ?」


電「ああ、すみません。その説明もまだしていませんでしたね。私たちは深海棲艦と戦っています」


提督「……え?しんかい……なんて?」


電「深海棲艦、なのです。海の底より現れ、人類を侵略しようと企てているとされる、謎の敵……です」


電「偽装を装備し、航空機を飛ばしたり、時には人語を解する個体まで確認されています」


提督「……な、なるほど?」


電「……司令官さんが知らないのも無理はないのです。深海棲艦の存在も、私たち艦娘の存在も……この戦争も全て、秘密裏に行われています」


提督「……じゃあ、この鎮守府の存在は、どう説明がつくんだ?」


電「表向きはただの軍事基地跡。とはいえ、この中で一体何が行われているのか、外の人は知る由もありません」


電「この鎮守府は、日本を……いや、世界を守る最後の砦なのです」


提督「……そう、か。つまり俺は、選ばれし者……そういうわけだね?」


電「その認識で大丈夫です。理解が早くて、助かるのです」


提督「こうしちゃいられない。一刻も早く仕事を覚えて、この鎮守府を、世界を守らないとな」


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