【艦これ】天一号作戦
戦艦大和の最後の出撃となった海上特攻
そこを題材に艦娘たちがどんな会話をするだろうかと妄想しながら書き上げました。【完結しました】
更新日を章タイトルの横に追加しました。続きから読みやすくなっていれば良いのですが。
基本的なキャラ設定は【艦これ】です。
ただ、実艦を、艦娘が操ってる感じです。(アルペジオ形式)
普通に人も乗れます、艦載機も人が乗ることもできます。(敵方は普通に人間が操縦or艦娘的なのは補助AI的な扱い)
艦娘を使えば、人員削減できるし便利じゃねって感じの世界感です。
タイトル通り、敗北確定の特攻作戦なので、全体的に暗い話にご注意を。(轟沈も確定)
また、実際には参加していない「鳳翔さん」が参加艦艇に入っております。
史実は無視してますので、あくまでも「創作」としてお読みください。(一部、史実ネタも入れてますが)
「提督、全員揃いました。」
「そうか。」
振り返った視界に写るのは、凛と立つ女性。
戦艦大和、我が国の技術の粋を結集し作り上げた艦に宿った御霊。
帝国海軍の、象徴であった彼女。
最後の作戦の旗艦。
「バカな話だ。大和がいるから、降伏できないなどと。」
「蟷螂の斧であっても、あるならば心が折れぬモノも居るのでしょう。」
諦めの混じる顔で答える彼女に、息が詰まる。
戦況は奇跡が起きても無意味なほどに詰んでいる。
かつては300隻を超す艦艇を擁した帝国海軍はもう跡形もない。
ここに集結した11隻と、各港で防空砲台となった者たちを合わせても30隻にも届かないだろう。
損傷の修復すら満足にできず満身創痍のままの艦も多い。
「……非理法権天?」
彼女の装いが以前と異なっている事に気付きそこに書かれている文字を読み上げる。
「はい、最後の出撃という事で。」
こちらが服装の差異に気付いたことが嬉しいのか、小さく笑みをこぼす彼女に釣られて漏れたのは久しぶりの笑声だった。
作戦確認の為に大和の会議室に今回出撃する全員が集まった。
大和、鳳翔、矢矧、冬月、涼月、磯風、浜風、雪風、朝霜、初霜、霞。
人間は一切乗艦させず、艦の制御はすべて彼女たちに一任している。
「さてと、作戦と言っても無いようなものだ。突っ込んで死んで来い、それだけだ。」
命令書を何度確認してもそれ以外に読み取りようがない。
大本営に怒鳴り込み、上官を殴り飛ばし大暴れを演じても覆しようがなかった。
無駄な死者を出したくないという彼女たちの意思を尊重させて人間の乗員を0にさせ、この作戦を持って全面降伏への道筋を付けること。
それを確約させたのは、最後の意地だった。
「もっと言い方があるだろうに。」
「死して護国の鬼と成るべしとでも言えばいいの?恰好をつけたって今さらでしょ。」
「む、しかしだな。」
「大丈夫です、磯風ちゃん。霞ちゃんだって十分に解っていますよ。ね?」
やんわりと窘めるのは鳳翔。帝国海軍の中でも古株であり、今回の作戦に自ら志願した唯一の艦。
「……ふん。」
「この靴下を履こうって言い出したの霞だしな。」
描かれた文字を誇示するかのように、朝霜は自身の足を叩く。
ここに集合している全員が左足に揃いの靴下を履き、「非理法権天」の文字。
「提督の分はこちらです。」
浜風が差し出してきたのは、昼間にボタンが取れ掛けていると奪われた自分の上着。
受け取り広げてみれば左袖の部分に同じ文字が躍っている。
「これで皆お揃いですね、しれぇ。」
「千人針か。大層な加護がありそうだ。」
無邪気に笑う雪風に苦笑を返しながら上着を着込む。
「……降りては頂けませんか?」
集まってからずっと俯いていた初霜が声を上げる。同意を示すように何人かがこちらに視線を寄越す。
「貴方まで死ぬ必要は……」
「それなりの立場の人間になるとな、死に方で人を動かせるんだよ。」
言葉を遮り、声を発しながら太線2条中線3条となった袖章に目をやる。
命令書と一緒に渡された死に装束だ。
もう、覚悟は決めている。
「それに、一人ぐらいお前たちと逝くのが居ても良いだろう?」
精一杯恰好を付けたつもりが、「ぐぅぅ~~~」となった腹の音で盛大に笑われた。
「確かに、これぐらい気楽に構えているほうが私たちらしいですね。お夕食に致しましょうか。」
上品に口元を隠しながら、鳳翔は笑みを浮かべている。
明日、我々は死地に行く。
「提督。」
「ん?」
呉の軍港を出航してしばらく、大和の指を指す方角を見ると小さな艦が浮上しているところだった。
「ご・ぶ・う……武運を祈る、ですね。」
その艦の方を見ていた大和が何かを読み上げるようにしている。
双眼鏡で覗けば、必死に手旗を繰り返している姿が見えた。
全艦に無線を繋げる。
「返礼変わりだ、汽笛用意……5、4、3、2、鳴らせ!!」
十一隻の艦が一斉に、汽笛を鳴らす。
低く、大きな音が海に響き渡る。
少女が驚き尻餅をつくのを満足げに見ていると通信が入る。
≪……陣形変更を具申するわ。≫
「豊後水道を抜けるまでは、現状のまま維持。対潜警戒は任せたぞ。」
≪呼び寄せるような真似をしておきながら……≫
矢矧の声には呆れが混じっているが、一緒に汽笛を鳴らしたんだ同罪だろう。
≪秋雲姉さんも似たような事してるし、今さらってもんよ。≫
無線に割り込んできた朝霜の誇らしげな声に大きなため息が重なる。
尻餅をついていた少女は敬礼を決め見送ってくれた。
他の艦も気付いているだろう、ありがたいことだ。
後、三時間ほどで豊後水道を抜ける。
黒煙を吐きながら海に艦載機が落ちていく。
≪敵、索敵機の撃墜を確認。これで6機目ですね。≫
「ご苦労、問題ないか?」
≪少し気を使いますが、概ね問題はありません。慣れ親しんだ子たちですから。≫
上空を舞う荒鷲に視線を送りながら鳳翔の返答に安堵の息を吐く。
旧式の96式や21型とはいえ操るのがベテラン、損傷を受けることもなく見事に撃墜してくれている。
機種の統一しておきたかったが、各地からの寄せ集めでは仕方がない。
「鮮やかですね、流石の腕前です。」
隣に佇む大和の声に苦笑を浮かべて声を返す。
「着艦ミスで機体喪失をおこして頭を抱えたものだがな。」
≪昔の話ですよ、まだ布張りの複葉機が主力で……≫
「もう二〇年以上か。」
≪あの時の大尉殿がいまや大将閣下です、私の腕も上がりますよ。≫
≪水偵が敵を補足。南東方向より艦載機……大盤振る舞いね。100以上よ。≫
無線を遮る矢矧の声に顔を引き締める。
「鳳翔!!」
≪全機発艦させます、例の機体も出しますね?≫
「判断は任せる、対空戦闘用意、三式弾装填!!」
≪≪「了解」≫≫
全員の声に大きく頷く。
搭載されていた17機を発艦させ終え最後の機体に目を向ける。
「使いこなせれば良いのですが。」
甲板の最後尾で飛び立つときを待っている奇妙な造形の航空機。
「震電」だったか、試作機を徴用して強引に発艦できるように仕上げた機体。着艦の為のフックすらない、使い捨て。
「行きましょうか。」
意識を集中させ、震電のプロペラの回転数を上げていく。
良い音だ、丁寧に作り上げられたのだろう。
車輪にかけていたブレーキを抜く。
弾かれるように加速していく機体が火の尾を引く。
火薬式のロケットによる追加加速。
飛行甲板の長さが足りない分を補う為の装置、それを使って……
飛行甲板を渡り切った。
機体が上がらない。
「お願いします。」
海面スレスレまで降下していた機体が蹴り上げられるように上昇に転じる。燃焼が終わったロケットを海においていきながら加速していく。
「……ふぅ。」
上空で編隊を組む機数は18機。
「雲龍さんや天城さんが見たら羨むでしょうか。」
新旧入り混じった艦載機を、一路南東へ。
前方に見えてきたのは夥しい数の艦載機。
あちらもこちらに気付いたのだろう、やや高い位置にいた戦闘機が覆いかぶさるように突っ込んでくる。
編隊を組ませていた8機を散会させ護衛戦闘機部隊の正面へとすべり込ませて、相対させる。
すれ違いざまに叩き込まれた弾丸を避けさせるように機を捻るが、1機が主翼をもぎ取られ落ちていく。
こちらの戦果は、数機が煙を吹いているぐらい。
急降下で逃げていく機体を追わず、上から突っ込んでくる機体の下から逃れるように……避けきれず、さらに1機が撃墜されてしまう。
敵機への攻撃は当たってはいる。煙を吹き速力を落としていく機体もある。
だが届かない。
十分な防御を施した敵機には7,7mm機銃では火力が足りず、あちらの機銃弾は面白いように機体を引き裂いていく。
数発の20mmが当たり、1機撃墜したころには残っているのはわずか2機。
「……油断しましたね?」
呟く鳳翔の言葉に合わせるように、少し離れた所で爆発が連続する。
高高度からの急降下での一撃。
設計時の限界高度を越えていた機体もあったが成し遂げた。
爆撃機、攻撃機の集団を狙った10機の奇襲で、またたくまに20機近い機体が爆散し海へと落ちていく。
早すぎる降下速度に4機が空中分解を起こすが、無理矢理に落ちる先を操る。
空中衝突を引き起こし、さらに戦果を挙げていく。
残りは6機。
敵戦闘機部隊の真ん中に取り残された機はすでに落ちた。
すれ違い、即座に上昇へ。
機体が負荷に悲鳴を上げている、速力も落ちるがこの好機が最後。
負荷に負け、1機の尾翼がちぎれ飛ぶ。
正確さなど望めない、無茶な射撃。だが、敵はそこらじゅうにいる。
上昇に転じた機体がばら撒いた弾丸でさらに数機が落ちる。
慌てて回避機動を取る敵機の様子を見極め、狩立てていく。
「この高度でゼロを相手に背を向けるのですか?」
七面鳥射ちと、ゼロなど恐れるに足りずと。
「思い出しなさい、無敵と言われたゼロの精強さを、私たちの強さを。」
見送ってばかりだった。
自分より、後に就航した子たちを。
意表を突く機動を、避けるために。
最小限の機動を、落とすために。
祥鳳、赤城、加賀、蒼龍、飛龍。
龍驤、翔鶴、大鳳、飛鷹、瑞鶴。
千歳、千代田、瑞鳳、信濃、雲龍。
色々と教え、教えられた。
戦争だから、戦争なのだから。
諦めようとした。
それでも、それでも。
弾が切れた機体が出始めた。
でも、まだ終わらせない。
「……生きた証を。勇敢であったと、誇る為に。」
私達は、確かに此処にいたのだ。
世界最強と謳われた、私たちは。
着陸用の脚を引っ掛けて壊す。
翼を叩きつけて壊す。
ありとあらゆる方法で、ただ敵を一機でも多く落とす為に。
最後の1機がついに力尽きた。
≪申し訳ありません、全機撃墜されました。≫
鳳翔さんの少し疲れた通信が耳に入る。
≪そうか、敵機は?≫
≪突入してくる機数は、50機前後かと。≫
こちらの水偵を介して見た機数は100機を軽く上回っていたはず。
「……機数を見間違えた?」
呟きながらも、腑に落ちない。
鳳翔さんが楽観視している訳はない。
電探では細かな機数は解らない。
「水偵を戻す?ダメね、無駄に落とされるだけ、時間もない。」
敵攻撃部隊を確認した水偵は大きく迂回させながら敵艦隊が居るであろう海域を目指している。
苛立っている。
自覚し、大きく息を吸い……吐く。
「落ち着きなさい、大丈夫。」
神経質すぎる、そう言っていたのは誰だったか。
「戦場でもティータイムは忘れずに、だったかしらね。」
彼女の特徴的な言葉遣いや仕草を思い出しながら。
≪敵、射程内に入りました。矢矧さん合わせて。方位165……≫
「了解よ、大和。」
空に黒点が見え始めている。
方位合わせ、仰角合わせ、時限信管調整……
≪3、2、1、全主砲薙ぎ払え!!≫「全砲門!Fire!」
大和の声に合わせ、こちらも斉射。反動で揺れる体を頼もしく思いながら空を見据える。
轟音が響き、数秒後に空に爆炎が咲いた。
巻き込まれた敵機がバラバラになって海に落ちていく。
≪戦闘開始、各艦は最善を尽くせ。ついでに、全艦通信は切るなよ?今際の言葉拾ってやる。≫
冗談めかした提督の言葉。まったく、こんな時にまでと口元に笑みを浮かべ近づいてくる敵へと砲撃を放ち続けていく。
≪さ、始めるっきゃないね。撃ち方はじめぇーっ!≫
≪撃って撃って撃ちまくれ!!≫
≪相手にとって不足なしです!!≫
≪あ~もぅ、バカばっかり!!≫
駆逐艦も次々と対空砲火を上げていく。
対空戦闘においては、敵機の道を塞ぐように、攻撃位置に付かせないように。
主砲、高角砲の発射の角度や時限信管の調整を微妙に変化させながら、弾幕を張る。
敵は、そこまで多くない。
「30~40機って所?」
≪そのぐらいの数です!!≫
こちらの呟きを拾っていたのだろう、雪風の報告が聞こえる。
機銃の射程に入ると火線の量が一層増え始める。
その量に怯んだ様に敵編隊が崩れた。
退避するもの、操縦を誤り海に突っ込むもの、直撃し叩き落されるもの。
≪敵は逃げ腰です、さっさとお帰り願いましょう!!≫
≪油断するな、方位190から来るぞ!!爆撃機、雲の上だ!!≫
鋭い声。
咄嗟に目を向けた先、雲の隙間から機影が飛び出してきている。
≪防空駆逐艦を……甘く見ないでよ!!≫
火線が数十、一斉に伸びていく。
急降下をし始めていた機体が爆散していく。
あちらは大丈夫、視線を目の前に戻そうとした。
ずしんと、砲撃ではない振動が来た。
≪…………………!!≫
無線がノイズをまき散らす。
水柱が複数起立していた。
嫌な汗が背中を濡らす。
≪……ざい、至近弾多数ですが、冬月健在!!≫
≪全員慌てるな、目の前に集中しろ。≫
提督の声は落ち着いている。大和の艦橋から見えているのだろう。
残っていた数機の敵機は諦めたように引き返していく。
「あの突入部隊で終わり?」
周囲に敵影なし、電探は離れていく敵機を捉えていた。
砲声が止み、一気に静けさが戻ってくる。
≪冬月、被害状況知らせ。≫
≪塩水でべたべたします。あと、何匹か魚が獲れました。≫
≪……敵、第一波は凌げたようだ。一息ぐらいは休めると良いが。≫
凌いだ。鳳翔さんの直掩隊が居たとはいえ損害なし。
大きく安堵の息が漏れた。
「護衛対象が居るわけじゃない分、気楽っちゃ、気楽なんだけどねぇ。」
敵機が去った空を見上げながら呟く。
水雷戦隊に配属されこそしたが、自慢の魚雷を盛大にばら撒いた記憶なんてほとんどない。
船団護衛や輸送任務ばかりで、戦闘と言えば専ら対空ばかり。
姉たちのように、敵艦隊へ斬り込んでドンパチ……
そんな空想に浸っていたが、視界の先で光ったモノで現実に引き戻された。
「っと魚雷じゃねぇか!!」
回避の為に針路を変えていく。
≪どうした?≫
「魚雷2発……あたいが避けりゃ問題にならないね。」
通信に返す言葉には余裕。
雷跡は丸見え、おまけに本数も少ない。
「他には雷跡はなし、ほいよっ、お返しだ!!」
軽やかに魚雷を回避し爆雷を投射していく。
くぐもった炸裂音が聞こえ、水柱があがる。
「撃沈って言いたいけど、不確実だね。」
≪追い払うだけで十分だ、潜水艦の足じゃこちらにはついてこれない。≫
「あいよ。」
提督の声に頷きながらも視線は周囲を見渡している。
第二撃は来ていない。念の為に、少し離れた箇所に追加の爆雷を叩き込んでおく。
もし他にもいるなら逃げるか、潜望鏡を上げるはずだ。
「見落としはしないぜ。」
≪25knまで速力を上げる、鳳翔?≫
≪大丈夫です、お気遣いなく。≫
相変わらず仲の良い事で、そう思いながら船の速力を上げようと力を込める。
ずきん、と体が鈍い痛みに襲われる。
「避けたよ……な?」
異常を表すように煙突からは黒煙が上がる。
機関部が酷い熱を吐き散らしながら耳障りな音を立て始めた。
≪朝霜、大丈夫ですか!?≫
黒煙が見えたのだろう、慌てた声が聞こえる。
「あ~……機関がぐずり出した。速力が上がんねぇ。」
綺麗に揃っていた輪形陣から次第に遅れていく。
追いすがるように、機関に力を入れるが……
「っつ、ダメか。」
再び走った鋭い痛みに顔を顰めながら空を見上げる。
気合で何とかなるレベルじゃなさそうだ。
≪…どれぐらい速力は出せる?≫
「10kn。それ以上出したら、缶が吹っ飛ぶかも。」
10knでも長くは持たないだろうけどね、と自嘲気味に口角を歪める。
≪……………≫
沈黙が長い。
ずるずると艦隊から離されていく。
≪……艦隊速力を≪電探に感あり、第2波来ます!!≫≫
何かを言い始めていた提督の声に被さるように大和の声が飛ぶ。
無線でのやり取りを聞き流しながら、覚悟を決める。
「まぁ、それなりにやったよな。」
呟く声には、懐かしむような色が滲んでいた。
ビシッと決めてやろう。
あたいは華の二水戦だぜ?
「先に行ってくれ。あたいは此処が終点だ。」
無線を聞いていた連中が、言葉を探している隙に畳み掛ける。
「あたい達の任務は確かに沈むことかもしれない。けどな、沈み方にだって意味があるんだろ?」
≪………≫
「此処まで来た意味はなんだ!帝国海軍の、私たちの意地を見せるためだろうがよ!!」
侮られて、馬鹿にされて、尊厳を踏み躙られるような提案をされて。
勝てないって事は多くの連中が知っていた。
それでも、意地があった。
貴様らに劣るような国じゃない。貶される様な国じゃない。
「……こんな所で立ち止まんな。」
≪全艦25knを維持せよ、朝霜は可能な限り本隊に続け。≫
堅い声、無理してるのが丸わかりだ。
「矢矧姐さん、土産話楽しみにしてるぜ。」
≪えぇ、活躍できなかったこと悔しがらせてあげる。≫
彼方に見えた黒点は染みのように空を染めていく。
艦隊は進んでいく、黒煙を上げる朝霜を置いて。
死に場所を求めて、南へと。
≪敵機接近、対空戦闘用意!!≫
また敵が来る。
力のない自分が嫌いだ。
自分に、力があれば良かった。
空母のように、航空機を操れたなら。
戦艦のように、巨大な砲で叩きのめせたら。
無いものねだりだ。
≪提督、敵機の動きが……≫
近付いてこない?
そうか、あいつらの狙いは。
「……そっちに行くなぁ!!」
≪針路そのまま、止まるな!!≫
艦隊の脇を抜けていくように、北へ飛んでいく。
行かせない、行かせてたまるか。
自分の持てる火力、全てを抜けていこうとする敵機に向ける。
≪隊列を乱すな!!≫
咎めるような声。
「援護ぐらいはさせてくれ、提督!!」≪見捨てる気!?≫
北方で上がっている黒煙の下には……
抜けていく、届かない。
「……何故だ、何故なんだ。」
こっちを狙え、私を狙え。
悔しさに、涙がこぼれていく。
≪いや~愛されてるねぇ、あたい。≫
「朝霜!?」
≪ほら、さっさと進んだ、進んだ。囮役やってやるからさ。≫
落ち着いた声色、何度も、何度も聞いたことのある声色だ。
ミッドウェイで、ガダルカナルで、マリアナで。
蒼龍や弥生が、大鳳や武蔵が、金剛や浦風、信濃が。
膝から力が抜けた。
……馬鹿者が。
吐き捨てた言葉は、誰に向けた言葉だっただろう。
音が聞こえる。
敵機が、到達したのだろう。
≪ははっこの朝霜に掛かって来い! もっと! もっとだっ! 来いやぁ!≫
振動が、響く。
聞きたくない、耳を塞いでしまいたい。
≪清霜や秋……に自慢でき……ぇ、艦隊の盾になれ……!≫
雑音混じりの無線から聞こえる声は、誇らしげで。
酷く、腹が立つ。
一際、大きい爆発音が聞こえた気がした。
≪………………≫
もう、何も聞こえない。
砲撃の音も、爆撃の音も、何も。
すすり泣く声が、聞こえてる。
私が泣いてるのか、無線から聞こえているのか解らないが。
握りしめた拳を床に叩きつける。
何度も、何度も。
血が流せれば、この悔しさも流せるのだろうか。
≪敵艦隊補足、見ツケた、見つケタ!!≫
矢矧の声は、彼女らしくない色を孕んでいた。
背筋が総毛立つような、嫌な声色。
≪……方位200、こノまま進メば3時間後ニハ砲戦距離に到達デきるワ。≫
「……矢矧さん?」
聞こえた無線に、違和感があった。
胸の内で暴れている感情が、原因なのだろうか。
≪矢矧、敵艦隊の規模は?≫
≪18隻、空母4隻ヲ含む。≫
≪……大和、水上機用意。≫
≪了解し≪私ノ報告が信用デキナイ、ソウイウ事カシラ?≫≫
≪まさか、お前の事は信用している。戦果を挙げるためだ。≫
無線に割り込んでいく矢矧の声が、耳に残る。
こんな言い方、する人だった?
≪矢矧、空母の様子は?≫
≪艦載機ヲ収容…海に捨てテル?≫
≪損傷機を投棄中か、直援機はいないか?≫
≪えぇ、周りニは見当たらナいわね。≫
敵の数が少なすぎる。この程度の戦力であの国が来るはずがない。
なにより、直援機を出していないのが気にかかる。
≪……囮じゃないですか?≫
≪だろうな、本隊か別働隊がいる。≫
≪ケレド、十分。討つベキ敵がミエタ。≫
私達は死に場所を探しているだけ。
敵艦隊と撃ち合えるなら本望。
例え相手が用意した囮部隊であっても、このまま航空攻撃で潰えるよりはずっとマシ。
≪敵攻撃隊北西から来ています。機数不明。≫
≪矢矧、水偵はその艦隊に張り付かせろ。新手からの航空攻撃を凌ぎつつ、突っ込むぞ。≫
「囮であれば逃げるのでは?」
≪傷だらけの10隻と空母を抜いても万全の状態が14隻。この戦力差で逃げるとは思えん。≫
断定する提督。
……本当にそうだろうか、思考を巡らせる。
あの国は万全に、万全を期してくる。
囮に目が眩んで、見落としていないか。
まだ何か、あるのではないか。
≪なるホド、とことん弱い者いじめがシたイって訳。≫
≪徹底していますね、でも油断があります。≫
≪凌げば、反撃出来チャイまス!!≫
無線から聞こえる声には、歪な熱がある。
≪ワンサイドゲームになんかさせない、私達ノ目的ハ一人デモ多クノ敵ヲ殺ス事ナノダカラ。≫
以前、こんな状況があった気がする。
今と同じように、耐え難い焦燥に胸を焦がしていたハズだ。
思い出せ。
≪矢矧さん、訂正を。私達は殺すために戦っているのではありませんよ。≫
≪何ヲ甘イ事ヲ、ソンナ事ダカラ!!≫
≪敵を殺す事を否定はしません、ですが目的を間違えないで下さい。私達は……≫
≪ダマレ!敵ヲ殺ス、ソレ以外ニ兵器ノ目的ナド…≫
≪殺し続けて屍を積み上げますか?最早動けぬ皆を巻き添えに!!≫
≪ナ……ナにを!!≫
≪内地の皆が自身の燃料すら私達に託したのは何故!!提督が此処に居るのは何故!!此処で終わらせる為でしょう!!敵は討たねばいけない。ですが畏れさせ、皆を護る為です!!己が造られた意義すら見失いましたか愚か者!!≫
一喝、ここまで強い感情を表に出している鳳翔さんは初めてだ。
この芯の強さが、時代遅れと言われながらも常に空母の尊敬を集め続けた理由。
開戦時の一航戦でさえ容易には勝てないと言われた理由。
≪畏れさせ、護る。≫
≪……私達は、艦を建造した方々の願いが形となったモノ。確かに敵を殺すという願いもあるでしょう。しかし大半は違ったはず、ただ大切な人々が平和に過ごせるように、外からの脅威に負けぬように。≫
記憶を辿っていく。
私を造った人達や整備をしてくれていた人達。
(支柱の一本ぐらい気にするなって、お前さんに怪我がなきゃ良い。)
皆、楽しそうにしていた。
(○○が、戦死した)(空襲が、町を焼いてしまった)
悔しそうに、泣いていた。
(ミナゴロシダ!!)
呪いを吐く人もいた。
あぁ、それでもその人達の最初の願いは、
「……艦娘や皆が一緒に笑っている世の中が続けば良い。」
そう言ってくれていた。
熱くなるな、冷静さを……そう、ケ号作戦を思い出せ。
あの時の、阿武隈さんの冷静さを、視野の広さを。
熱に浮かれていたら見落としていただろう、海の底の待ち伏せに気付くことが出来た。
「左舷より雷跡多数、皆さん避けて!!」
「っつ!!」
私が魚雷を見落とすなんて。
その事実に、嫌気がさす。
自身や不知火が重傷を負った潜水艦からの雷撃。
霰ヲ沈メタ雷撃。
一瞬、目の前が赤く染まったような錯覚があった。
何をしているのよ、私は。
朝霜が沈められて、心に余裕が無くなっているから。
言い訳ばかり思い浮かぶ頭を疎ましく思いながら、魚雷の回避に集中する。
雷撃の狙いは不正確。数は多いが初霜が早く気付いたお蔭で距離がある。
小さな船体、増速か減速を掛ければ回頭の必要もない。
だが大和は、そのままでは4、5発は喰らう。
≪回頭します。凉月、冬月距離を取ってください!!≫
回避の為、船首をこちらに向け始めた大和に巻き込まれないように増速して脇を抜けていく。
大和の前に居るのは矢矧と磯風だったか、衝突しないように距離に注意。
大和が喰らうのは何発になる?
速力が落ちるような事が無ければ……
ズシン、と水柱が上がる。
数は……2、3発?
≪直撃は2発、損傷軽微。≫
大和の落ち着いた声。
流石は大和というしかない。
≪初霜、雪風、敵潜水艦に爆雷投射用意。魚雷発射後逃げているだろうが……≫
≪右舷前方、潜望……鏡か!?≫「雷撃、来るわよ!!」
≪な!?≫
磯風の戸惑った声に被せるように声を上げる。
大和は先の回避で回頭している途中。
やられた。
≪各艦は回避に専念を、大和は数発の被雷では沈みません!!≫
あぁ、そうね。あんたは数発の魚雷じゃ沈まないわよね。
あんたの妹もそうだったわ。
でも、この数は。
雷跡を目で数えていたが、20を超えた辺りで諦めた。
≪私が、盾にな「馬鹿言うんじゃないわよ!!」≫
黙らせる。
幾つもの涙の海を越えてきた。
もう見てるだけなんて、お断りだ。何でもいい、無茶でもなんでも!!
手段を選ぶな、魚雷に襲われた事は何度もあった。
幾つもの戦場の記憶を辿り……最善策を選び取る。
海面に向かって主砲を叩き込みながら、叫ぶ。
「矢矧、磯風、大和!!主砲でも副砲でも良いから撃って!!魚雷を潰すのよ!!」
馬鹿げている?
出来るわけがない?
そんな弱音は聞き飽きた、奇跡でもなんでも起こしてやる。
届けと、願いを込めた一撃が爆ぜる。
少し遅れて魚雷が誘爆し高く水柱が上がる。
ほら、出来る。
「さっさと撃て!!手本なら今見せたわよ!?」
≪は、はい!!≫≪で、ですが。≫
こちらの叫びに応じ矢矧、磯風が砲撃を始めるが大和の砲塔は沈黙したまま。
「大和、あんたの下手な砲撃なんて簡単に避けれるわ、水雷戦隊舐めんじゃないわよ!!」
≪当たるなよ、3人とも。≫
「さっさと撃たせなさい、クソ司令官!!」
叫びに被さるように、また水柱があがる。
大和からの砲撃は私たちの頭上を飛び越え、海面を叩いていく。
着弾の衝撃で船体が振り回されるが、損傷はない。
何よ、良い腕してるじゃない。これなら、味方の砲弾は気にせずに済む。
矢矧、磯風も必死の迎撃を続けている。
大和の真横を抜けてきた凉月、浜風も砲撃に加わり始める。
それでも手数が足りない。
着弾の水柱、誘爆の水柱。
次々と上がっていくが、魚雷は数発抜けていく。
ぎりぎりまで追いかけた、それでも全てを排除は出来ない。
後は、大和の装甲頼み。
水柱が、上がった。
「え?」
戸惑いの声をかき消すように、大和に魚雷が命中し始め、轟音を響かせる。
随分、近くで水柱が上がっていなかった?
魚雷が、大和の船体に突き刺さり轟音を響かせている。
けれど、私の目はそちらを見ることは出来なかった。
ほんの、一瞬前に上がった水柱。
僅かに聞こえた苦鳴。
「嘘。」
≪……!!……!!≫
無線が叫んでいる。
聞き取れない。
視線が動かせない。
炎上している船体の、甲板に人影が見えた。
見慣れた姿。
「いそ、かぜ。」
呼び慣れた名前。
視線が、合った。
何事か呟くが、その声は聞こえない。
ふっと、口元に笑みを浮かべ、「すすめ」と南の方角を指差した。
直後、磯風の船体は大きな爆発を巻き起こした。
≪聞こ……か、各艦、損…知…せ!!≫
≪……こ…ら矢…、魚雷1発…撃。戦闘に支障なし。≫
≪こちら大和、魚…5発…弾、左舷浸水…生……、航行……障なし。≫
提督達の声が聞こえる。
被害報告を、しなければ。
無線が使えなくなった姉の分も。
「こちら、浜風。被害なし。磯風が……」
言葉に詰まる、手が震えている、きっと酷い顔をしている。
「磯風被雷、轟沈せり。繰り返します、磯風轟沈せり。」
それでも、言い切った。
息を呑むような気配が無線越しに伝わる。
「立ち止まる訳には、いきません。」
言い聞かせるように、ぐしゃぐしゃな顔のまま、南の方角を睨んだ。
せめて、磯風に報告できるように。
≪Expen……six tor…es and one Empire des……r!!≫
聞き慣れない、声。
耳に慣れない音の群れ。
≪It's the twentieth ship with this!!≫
また聞こえた。
「何を、言って……?」
≪エクスペンデッドシックストロぺドズアンドワンエンパイアーデストロイヤー≫
平坦な声で霞が一番最初に聞こえた音の群れを再現して見せた。
私達が話す言葉はではない。
敵方の通信を拾った?
≪響が、調べてたのよ。雷が沈められた後に私達に聞こえるように無線で流れていた言葉を。それとほとんど同じ。随分と自己主張の強い潜水艦よね?≫
くすくすと笑い声が混じっているのに、霞の声が怖い。
ガツンと、硬質なものを殴りつけたような音が聞こえた。
≪…………………………………………………コロシテヤル。≫
≪霞!?≫
≪……皆、ごめん。私はアイツだけは許せない。止メたいナら沈メテ。≫
霞が、南西に向かって速力を上げていく。魚雷が発射された方角へ。
いったい、あの無線は何を言ったの?
雷が沈められた時とほとんど同じ?
「霞、なんて言ってるの?磯風の事、でしょう?」
≪……あんたは知らない方が良いわ。≫
置いて行かれる、慌てて私も速力を上げる。
≪二人とも、止まれ!!……矢矧、止めろ!!≫
提督の静止の声に砲声が重なった。
目の前に、水柱。
≪次ハ当テルワヨ。浜風、ツイテクルナ。≫
砲塔がこちらを正確に狙っている。
近付こうとした矢矧さんに対しても、砲を向けている。
≪提督、敵機来てます!!≫
慌ただしい声。
対空砲火が撃ち上がりはじめる。
騒然とする中を、霞はどんどん隊列を離れていく。
砲は、まだこちらを向いている。
行ってしまう、行ってしまう。
≪霞さん。≫
≪鳳翔さん、間違ってるの解ってるから。だけど、許セナイノ。≫
≪……九段で待ってろ、二時間は説教してやる。≫
提督の声は、怒っているのに泣いているようで。
≪浜風、磯風ノ仇ハ取ッテクル。【立ち止まる訳にはいかない】んでしょ?≫
少し、冗談めかした言葉。
何を言っても無駄だと解ってしまった。
せめて、見送ろう。
離れていく、霞に向かって敬礼を。
「負けないでくださいね。」
精一杯の強がりを。
≪……無理は道理に、道理は法に、法は権威に、権威は天道に及ばず、負けないわよ。≫
私の戦場は、ここ。
数えるのも嫌になるような航空機の群れが襲い掛かってきている。
でも、諦めはしない。
無茶の極みの作戦だけれど、せめて一撃を届けてみせる。
手本は、見せて貰ったのだから。
夜が来たのか、そう思った。
敵機が空を覆い尽くしている。
【幸運艦】そう言われ続けて、気付けばこんな所に居る。
悔しかった。
本当に幸運なら、どうして私の目の前から皆消えていくの?
悲しかった。
でも、泣かないと決めた。
【幸運艦】の私が泣いたら皆が困ってしまう。だから笑顔でいるって決めた。
敵機の狙いは、大和さん、鳳翔さんに集中しているように思う。
打ち上げ続けている対空砲火は、敵の邪魔を出来ているだろうか。
上から、爆弾を抱えて降りてくる。
撃墜。
砲弾の時限信管が【幸運】にも狂って作動した。
次々と、次々と。
鳳翔さんに、攻撃なんて当てさせない。
次は、雷撃機。
投下された魚雷を、狙い撃つ。
あれ、外れた?
でも、【幸運】にも魚雷が見当違いの方向に進んでいった。
くすくすくすくす。
≪雪風、狙われているぞ!!≫
冬月ちゃんの声と一緒に、私の上空を薙ぎ払うように火線が伸びる。
ダメだよ、冬月ちゃん。私の事を守ろうとしたら……
私の張っている弾幕の倍はありそうな量。
煙を吐いた敵機が突っ込んで来る。
壊れた機体で、私に向かって。
「当たらないよ?」
コックピットの中にいたパイロットと目があった気がした。
怯えたような、顔をしていた。
あははははははははは。
誰の笑い声?
爆発の衝撃波で艦を揺さぶられながら、冬月が居る方角を見る。
ほら、【幸運】にも私を狙った敵が狙いを変えちゃった。
【不幸】にも敵機に体当たりされた冬月ちゃん。
【不幸】にも魚雷が誘爆した。
【死神】そう言われているらしい。
私は、自分以外の人々を生贄に生き残る艦娘なんだそうだ。
違うって何度も否定した。
違うって何人も庇ってくれた。
けど、結果は?
私は無傷、庇った冬月ちゃんは?
「雪風は大丈夫です。だから、庇わないで、守らないで!!」
叫ぶ声、もう何度も、何度も言ったのに。
≪…冬月!?そん……きゃあ!!≫
あぁ、また。
爆炎が、上がる。
直撃したのだろう、凉月ちゃんも。
空を睨む。
【幸運】にも、急降下を始めた敵機が見つかる。
このコース、鳳翔さんに当たる。
「敵機直上!!」
≪雪風ちゃん、何を!?≫
叫びながら、艦を鳳翔さんにぶつける。
船首が歪む、大丈夫、私は沈まない。
前部主砲を鳳翔さんとは逆側に向け撃つ、撃つ。
強引に鳳翔さんを押し退ける。
ほら、【幸運】にも私の被害は軽微。
爆弾だって、当たらない!!
≪な、なんて無茶を!!≫
「雪風は、沈みません。」
私は、沈まない。皆が生きてる間は絶対に沈まない。
至近弾で揺れる艦を無視して、機銃をばら撒く。
【幸運】にも敵機が飛び込んできた。
「あはははははははははは!!」
≪雪風ちゃん、避けて!!≫
雷撃、避けたら……主砲俯角が足りない。機銃は間に合わない。
錨を落とす。
【幸運】にも、魚雷に錨が当たる。
爆発の衝撃で船首が抉れたけど、それだけ。
だけど。
機関を後進に入れて、鳳翔さんから離れる。
「何で、私の事を気にしちゃったんですか!!」
だめ、だめ、だめ!!
間に合わない。
爆弾が、鳳翔さんに直撃する。
「あ、ああ、あああああああああ!!」
きっと、私を気にしなければ鳳翔さんは、避けれたのに。
私と鳳翔さんを狙った爆弾が立て続けに降り注ぐ。
【幸運】にも数発が空中で突然爆発した。
「しれぇ、鳳翔さんが!!」
自分の損害、被弾1発。
鳳翔さんは?
気にする間もない、雷撃が来てる。
被弾で主砲が上手く動かない。魚雷と爆雷を放り投げる。
当たれ、当たれ。
至近で連続して爆発が起こる。【幸運】にも誘爆が起きた。
がくん、と力が抜け速力が落ちていく。
浸水?
≪く、っそ、全員被害報告!!≫
【幸運】にも敵機の攻撃は終わったようで、私は自分の状態を確認していく。
≪こちら、矢矧被弾多数、後部主砲が右向いたまま動かない、復旧は無理ね。≫
≪浜風損害軽微、至近弾のみです。涼月さん大破、通信設備も壊滅している模様。≫
≪初霜、損害なしです。≫
≪大和、傾斜の回復に成功。第三砲塔大破。≫
≪こ、こちら冬……、大…、…す。≫
≪雪風、被弾。スクリューシャフトが折れました。動けません。≫
≪鳳翔、飛行甲板炎上中、機関部もダメ、ですね。微速での行動が出来る程度です。≫
こんな所で、機関部は生きてるのに。
浸水は止めた、前部主砲は動かないけど、まだ戦えるのに。
≪動ける艦のみ、続け。大和、機関一杯!!≫
≪提督!?≫
困惑した矢矧さんが声を上げる。
≪貴艦らは各自最善と思う行動を取れ。≫
提督の声は、感情を噛み殺したように色が無かった。
≪……了解、矢矧続きます。≫
≪浜風、了解。≫
≪初霜、行きます。≫
仕方がない。動けない艦は置いて行かれる。
私達は、囮ぐらいにはなれるだろうか。
敵が来なければ、自分で沈むしかない。
≪大和さん、瑞雲はまだ動かせますか?≫
≪え?は、はい損傷はありませんが。≫
≪25番を搭載して私に操作権を。≫
≪……自沈するつもりか?≫
嬲り殺しにされるぐらいなら、そう考えるのは逃げなのだろうか。
≪まさか、そんな事致しませんよ。≫
とても落ち着いた鳳翔さんの声。
≪提督は一度も私達を無駄死にさせなかった事、知ってますから。≫
そういえば、雷撃処分を命じていたのは、いつもこの提督以外だった。
なんとか連れ帰ってこいと、無茶な命令を飛ばすのがこの提督だった。
自身が乗る艦が沈むことを恐れずに、殿や囮をやりながら、冷静にいつだって私達が生きて帰れる可能性を見捨てなかった。
「大和、いけるか?」
「はい。」
カタパルトから、瑞雲を空へ放つ。
私は、戦艦だから水上機は偵察や観測にしか使ってこなかった。
そんな私がこの機体を預かって。
≪お預かりしますね。≫
操作権を鳳翔さんへ委ねる。恐る恐る飛ばしていた私の目の前で、くるりと宙返りを決めて空を昇っていく。
≪思った以上に、使いやすい子ですね。≫
お手本のような機動を決めながら、私たちの周りを飛ぶ。
≪今回は煙突に爆弾を放り込んでも始末書は書かなくともよろしいですよね?≫
世間話をするような鳳翔さんの声に提督が目を丸くした。
今さら始末書も何もないだろうに、そう思った私の横で笑い声があがった。
「くっくっく、お前がホールインワン決めたお蔭で中将には怒られる、整備員からも大ブーイングだったな、確か。」
≪大尉殿がやってみろと言ったではありませんか、おまけに中将閣下の前で笑い転げて。≫
「お前だって模擬弾で真っ青に染まった天龍を見て笑いこらえるのに必死だったくせに。」
≪ふふふ、龍田さんも涙目でしたからね。≫
≪そんな事が、あったのですか。≫
「あぁ、鳳翔が初めて演習に出た時だな。」
束の間、空気が緩む。
無線を聞いていた他の子も会話に混じっていく。凉月さんの無線も復旧したようだ。
暗く澱んでいた空気が少し、マシになったような気がする。きっと、もう長くはない談笑の時間、思い出話に華が咲いた。
「それで、武蔵ったら、張り切り過ぎて進水式で津波起こしてしまいまして。」
≪あの、武蔵さんがですか!?≫
凹んでいた武蔵の顔を思い出しながら、このひとときを胸に刻んでいく。
皆の笑い声を、忘れないように。
≪……お喋りはそこまで、目標の敵空母からの艦載機の発艦を確認、同時に隊列から離れてる、残りの艦隊の針路そのまま、司令の言ったとおりね。≫
名残惜しむような声を滲ませながら、矢矧さんが報告をあげる。
ここを乗り切れば、敵艦隊と砲火を交えることが出来る。
「鳳翔以下、後方に残存する艦隊に通達する、全艦撤退せよ。」
≪……提督、それは命令でしょうか?≫
「俺の我儘だ。出来る事なら全員で帰りたいぐらいだ。」
≪ここまで来てそれを言いますか。≫
やや呆れたような浜風の声。
「ここまで来たから、だよ浜風。敵に対する威圧はこっちの4人で事足りる。」
≪今から撤退したって、間に合うかどうか解りませんよ。≫
「間に合うかわからないって、言うなら動く方法はあるんだな、雪風。」
≪……冬月、凉月、鳳翔さんはまだ機関が動きますから。雪風は、ハンモックで帆でも作ります。≫
≪そちらの、皆さんはそれで良いのですか。≫
戸惑ったような冬月の声。
「艦隊旗艦として、命令します。鳳翔さん、雪風さん、冬月さん、凉月さん生きて内地まで帰還し我々の戦果を伝えてください。」
横で聞いていた提督は頷き、笑みを向けてくれた。意を汲めた、その事実が嬉しい。
≪……満身創痍の艦隊にその命令って大和、鬼ね。≫
別働隊の居場所は不明、航空攻撃だって続くかもしれない。
「鬼の山城、地獄の金剛、蛇の長門、地獄榛名に羅刹霧島、夜叉比叡と先輩方は散々言われてきてますからね。ようやく追い付けましたか。」
歌うようにホテルよりずっと戦艦らしい先輩方のあだ名を列挙していく。
何人かは、苦笑を無線に響かせている。
≪鬼子母神大和に脅かされて撤退しましたと報告してきます。≫
「よろしく、頼みます。」
≪無線は、切らないで下さいね。最後まで聞いて覚えていきますから。≫
さぁ、後は暴れるだけ。
対空戦闘を続けながら、一直線に敵艦隊の元へ。
急降下爆撃、避ける為に大きく回頭はしない。わずかに舵を動かして最低限の回避。
避け切れずに数発被弾するけれど、それがどうした。
揺れる艦の中で、必死に速力を維持する。後部甲板が炎上した。
爆弾が、煙突に直撃した。
鋭い痛みが走る。けれど、機関は無事。
「蜂の巣甲板、役に立ちましたよ。」
必死に研鑽し、作り上げてくれた。そう簡単に沈むもんですか。
雷撃、2発。
浸水箇所を確認、右舷に注水。傾斜を回復、速力低下を最小限に。
「大和、主砲用意!!」
電探を睨みながら鳳翔さん、矢矧さんと通信を続けていた提督の声。
ようやく、ようやく。
方位、仰角よし、水平線の彼方へ向けて。
「第一、第二主砲。斉射、始め!水雷戦隊は突撃せよ!!」
弾着までの時間をもどかしく思いながら、次弾を装填していく。
40kmという超長距離砲撃、三式弾で多少効果範囲を広げているとはいえ、動体目標。
≪全遠、左寄せ4、下げ6。≫
無線の指示に即座に対応、砲撃。
砲撃を続ける為に針路は変えられない。被弾が加速度的に増えていく。
もうほとんど対空砲火も撃てない、それでも沈まない私に敵は狙いを定めている。
まだ、まだ。
≪全遠……下げ3。≫
方位があった、三式弾を放つ。
軋む。爆撃や雷撃で穴だらけになった船体が主砲の反動を支え切れず悲鳴を上げている。
浸水が止まらない。
「次弾、徹甲弾用意。」
提督の声に、主砲に装填する砲弾を変更する。
≪敵艦隊、回避行動開始!!せっかく、夾差を出せたのに。≫
≪狙いそのまま、大和さん撃って下さい。脚を止めますから。≫
鳳翔さんの言葉を信じて、撃ち放つ。
さらに被雷、海水の圧力に負け各所が裂け始めている。
≪敵艦隊、速力低下!!すごい。≫
弾着はまだのはず。
本当に、たった1発の250kg爆弾で敵艦隊の脚を止めて見せたのか。
≪弾着、直……至近弾!!≫
次で、決める。
「大和!!」
提督の声、そして……
焼け焦げた匂い、パチパチと火が爆ぜる音。
「爆撃…ですか。」
艦橋に直撃を喰らったのか、至近に喰らったのか。
滴り落ちる血を好ましく思いながら、意識を集中する。
方位、仰角、狂っていない。
撃てるのは最後。
立ち上がる事もせず、天井を見上げたまま主砲を撃ち放った。
反動がボロボロの船体に止めを刺した。
「てい、とく?」
廃墟となった艦橋で、上手く力の入らない身体をなんとか起こす。
「……おう。」
残骸に持たれるように提督が座り込んでいた。
這う様に、何とか提督の傍に辿り着く。
「当たったでしょうか。」
「さぁ、な。」
提督の制服は血塗れで。寄り添うように、提督の横に座り込む。
「ここまでか。」
「はい。」
「そうか。」
こちらの頷きに小さく声を返すと提督はポケットから封筒を取り出した。
「防水加工にしておいて、正解だったな。」
封筒の中から取り出したのは十枚ほどの写真。
私が出会う前の、若い提督と鳳翔さんの写真。
私たち姉妹が一緒に笑っている写真。
赤城さんや加賀さんとお酒を飲んでいる写真。
「後生大事に抱えてきたせいで、軟弱者と言われたが、やっぱり良いもんだ。」
一枚、一枚懐かしそうに、目を細めながら手繰っていく。
「……ん。」
写真を見終えた提督が、わずかに膨らみが残る封筒をこちらに差し出してきた。
「遅くなったが、な。」
「本当に遅すぎですけどね。」
「立場があんだよ、俺にも。」
「できれば貴方の手でお願いできませんか?」
左手を提督に伸ばす。
「……ち、我儘なやつめ。」
最後はこの人の隣で、良かったと意識を手放した。
無線が、途切れた。
直後に、大きな爆発音が響いた。
無事なの?
解らない、けれど確認なんてする必要は無い。
ただ前に進む。
立ち上る黒煙が見えている、大和の撃った砲弾の水柱が見えている。
「第二水雷戦隊、突撃せよ!!」
≪了解!!≫
群がっていた、敵機が散っていく。
それを合図とするように、敵弾が降り注ぐ。
着弾の水柱の大きさを確認して口角が吊り上る。
≪敵艦隊、戦艦含む14隻!!≫
その直後に、轟音が響いた。
大和の砲撃、その一撃が、ついに敵艦を貫いた。
≪……敵艦1隻轟沈、大和さんの、戦果です!!≫
至近に水柱が次々と上がっていく。一発でも直撃を貰えば動けなくなる。
主砲を撃ち返すが、主砲の照準は定まらない。
「撃てるだけ、マシと思うしかないわね。」
ここまでの攻撃で、すでに多数の被害を受けている。致命傷だけはかろうじて避けているが船体は至る所が傷だらけ。
≪ぐ…まだ、まだ!!≫
≪浜風さん!?≫
≪先に行け!!≫
視界の隅で、浜風が大きく回頭したのが目に入る、敵艦隊に横腹を見せた状態。
魚雷を撃つための体勢。
それに気付いたように、浜風に砲撃が集中する。
≪ははは、敵の練度は、低いようですね。直前で目標を変えるなど。≫
策に嵌ってくれたと、笑い声を残して水底へ消えていく。
次弾発射までの数分、確実に浜風は稼いでくれた。
敵との距離を、測れ。
私達の魚雷は、必殺の一撃。
≪舵損傷!?……矢矧さん、先に行きます!!≫
初霜の声。
後ろにぴったりとついてきていた初霜の進路がずれ、じわじわと私の前に出ていく。
私に集中していた砲撃が、初霜にも降り注ぎ始める。
肉薄する私達に怯えたように機銃弾まで飛んでくる。小さな破孔が船体に生じていく。
「そんなモノで、私が沈むもんですか!!」
高角砲か、副砲か、直撃した砲弾が船体を大きく抉って炸裂した。一瞬、意識が途切れる。
霞む視界に喝を入れるように拳を叩きつけ、痛みで意識を繋ぎとめる。
うっすらと、自身の身体が透けていく。長くは、ない。
回頭のタイミングを計ろうとした直後、敵艦隊に複数の水柱があがる。
「な!?」≪なに!?≫
≪ゴーヤの魚雷はお利口さんでち!!≫≪はっちゃん、やっちゃった。≫
特徴のある言葉遣い、そうか、彼女達がいた。
本土を守る為、最後の最後の防衛線として味方にさえも居場所を秘匿して。
≪さっさと決めるでち!!≫
「やってやるわよ!!」
距離は詰めた。ここからなら外しはしない。
吐き捨てる言葉に合わせるように左の錨を海に落とす。
舵を全力で入れながら主砲、対空機銃、爆雷投射機、魚雷発射管すべて右舷に向ける。
殴られるような衝撃、海底を噛んだ錨を支点に強引に艦を回す。
回れ、回れ!!
錨鎖がはじけ飛び船体に傷を付けていくがどうでもいい。
回頭完了。
「全弾、持って行け!!」
ばら撒く。
故障した舵をなんとか誤魔化しながら、矢矧さんの斜め前へ。
魚雷の射角が取れる位置まで持てばいい、前部主砲はとっくに壊れて撃てなくなっている。
降り注ぐ機銃弾に僅かに残っていた艦橋の窓ガラスが砕け散る。
至近弾が起こす波で、真っ直ぐ進めているかすら怪しいけれど、58さん達の援護のお蔭で、敵艦隊は混乱している。
≪全弾、持って行け!!≫
矢矧さんの声、後方から放たれた魚雷を確認、こんな時だからこそ、冷静に。
航跡の見えにくい酸素魚雷でも、どれを狙っているのか正確に見極める。
「一隻でも、一人でも多く。」
助けられるなら助けたい。救えるのなら救いたい。
でも、今だけは冷酷に。
「魚雷、発射!!」
次々と上がる水柱、炸裂音。
敵からの砲撃が数を減らしていく。
もう、艦艇を相手に出来るような武装は残っていない。
それでも、残った機銃を撃ちながら必死の抵抗を続けていると、同じように損傷し浮上した8さんも機銃で応戦を始めていた。
≪20mm連装機銃も、弾が切れちゃいそうですね。≫
「最後は、体当たりでも仕掛けますか。」
≪それは、ちょっと無理みたいです。さよなら、ですね。≫
無線が途切れ、8さんの姿が波間に消えていく。
次は一体、誰の番になるのか。
≪敵、撤退を開始……?≫
無線の声に耳を疑う。
黒煙が充満する中、必死に目を凝らす。
確かに回頭を始めている。
「あ、あ……」
引き上げていく。
砲撃は散発的になり、まともに狙っているのかすら怪しい。
≪……敵艦隊の撤退を確認。行動可能な全艦艇は泊地に撤退。≫
≪やった、でち?≫
≪勝てた、勝てたよ!!≫
無線がいくつも声を伝えてくる。
涙声で、何を言っているのか解らない声がある。
ただ、ただ叫びを上げているだけの声がある。
≪初霜、後は任せたわ。≫
そんな中、矢矧さんは力尽きて静かに沈んでいった。
返す言葉も、待たずに。
その後、私は生き残った58さん達潜水艦と共に、鳳翔さん達と合流。
漂流しかけの状態ながら10日後、なんとか泊地へ帰投する。
帰投した私達を待っていたのは、停戦という大きな結果だった。
当初は強硬に本土決戦を叫んでいた海軍将校は戦艦大和、そして常勝不敗と言われた提督を失ったという事実に大きく気勢を削がれた。
陸軍に対しては提督と深く付き合いのあった皇族の方が直に説得を行い終戦に導いた。
終戦交渉は難航すると予想されたが、先の坊の岬沖海戦での異常なまでの戦果のお蔭か大きな譲歩を引き出し、大きな混乱もなく締結の日を迎えた。
その後、艦娘は復員船として世界を駆け回った者や、本来の目的であった客船として従事した者などが居た。
私は、機雷の除去に従事し役目を終えた。
最後の我儘で、坊の岬沖で沈むことを認めて頂き明日、最後の航海に出る。
2015年4月7日 坊の岬沖
一隻のクルーザーが海をゆっくりと進んでいる。
甲板には一人の老人が煙草を燻らせながら何やら機材を確認している。
「緯度、経度よし、此処だな。」
そういうと、置いていた花束を海に放り投げ、日本酒を海に注ぐ。
「つい先日、叔母さんも見つかったよ。」
日本酒をわずかに残して注ぎ終えると、先ほどから鳴り響いていた携帯電話を嫌そうに眺め、渋々出る。
「あ、俺だが?」
≪やっと出た。先生、この間の原稿なんですけど著者名なんか違うの使うって言ってませんでした?空欄なんですけど!!≫
「あ~俺の本名で出そうと思ってんだよ。」
≪本名で?確か先生の本名って……なんでしたっけ?≫
「ウミノヒロカズだよ、覚えとけよ。」
≪あははは、すみません……漢字は?≫
「海原のウミに野原のノ、で大きい小さいの大きいに平和のワだ。」
≪えっと、珍しいというか、何というか。≫
「お袋の名前の漢字を使いたかった結果だそうだ、文句あんのかよ?」
≪いえいえいえ、それじゃこっちで入力しときますね。≫
「頼んだ。」
通話を切り、海を眺める。
海風が甲板に置かれた雑誌のページを捲っていき、紙が挟まれたページで止まる。
【武蔵、ついに発見!!】
大きな見出しと海底の様子を写した一枚の画像が大きく掲載されている。
挟まれていた紙が2枚、テーブルから落ちる。
拾い上げてみれば、幼子を抱えて微笑む一組の男女の姿を映した白黒写真と、隊列を組んだ様に整然と並んで海底で眠る11隻の艦の姿を示した画像のコピー。
「そろそろ、戻るか。」
老人はそういうと目を瞑り、意識を集中させる。
方位を変えて船が走り出す。
お読み頂き感謝です。
無事に終わらせることが出来ました。
4月7日なので、更新をさせて頂きました。
内容はほぼ触ってませんが……忙しくなり、新作の方も更新が止まってしまい、申し訳ないです。なんとかコツコツやってきます。
最後の最後で、58達の援軍。
大和特攻に一緒に行ってはいないハズなのですが、当時、沖縄近海で彼女たち潜水艦部隊が動いていたのは事実。
史実に近付けると、特攻機や回天なんかが出てきて悲惨さが倍増どころではないです。
距離の問題とか細かく考えるとキリがないのですが、矢矧以下水雷戦隊なら35ノット程度、時速で65kmぐらい。
大和の砲撃距離から考えると、40分ぐらい敵砲撃を受けながら突っ込んでるんですよね。
沈みそう。
矢矧の錨投下急旋回
出来なくはないハズ。実際にやったら、大惨事。たまに見かける表現です。(映画バトルシップでもあった)
秋津洲の艦長やってた人(黛治夫さん)の航海術とか調べると錨を上手く使ってる。
ロマンって大事。
初霜の最後
史実だと舞鶴で機雷食らって座礁。
私の作品では、坊の岬沖で自沈処分。
他の坊の岬生き残り艦も同じようにお役目を終えて最後は自沈した設定です。
史実だと解体や賠償艦になったりですが、そこはロマン優先で。
現代
最後は、全員揃って海で眠るって良くないですか?
霞が潜水艦追いかけて消えたままって仲間外れみたいで、嫌だったので書きました。
出てくる老人は、ご想像にお任せします。(答え出てますけど)
最後に
拙い物語ではありましたが、無事終える事が出来ました。
3万を超える閲覧者の方(2月1日現在)やコメントを下さったさとうきびさん、応援して下さった赤ヘルファン@ラブライバーさん他、多数の名無しのSS好きの方々に恵まれ、感謝の言葉しかありません。
本当にありがとうございます。
また別の作品も書いていく予定でありますので、よろしければお付き合いくださいませ。
末期戦感があって良いですね。明るく楽しい鎮守府も良いですが、こういう目を覆いたくなるようなお話も好きです。
続き楽しみにしていますので頑張ってください!
さとうきびさん、ありがとうございます。
人様の目に触れさせるのは初めてで、ドキドキしっぱなしでして。
コメントや評価が付いてないかと、隙あらば見てます。
たぶんPVの100件くらいは自分です。
明るく楽しい鎮守府も書きたいんですが、中々書けないです。
戦史という元ネタがあるので、書き易いんですよ。(改変しまくりですが)
書いては元気がなくなり、嫁艦を突っついて復活という変なループ。
「結末」はありますので、二月初旬までには完成させるつもりで頑張ります。
一気読みしてしまった。
悲劇なんだけど、少しは救われたような終わり方でホッとしました。
次回作、期待してます!
これはかなりググッと来ました。
SSで泣けたのは初めてです。
史実ネタいいですね。
映画やアニメもこのくらいやってくれたら
歴史もわかるしいいのではと思ったりします。
コメントありがとうございます。
泣けたと言って頂けるとは光栄です。
下地に史実に艦これキャラがいる事のおかげだと思いますが……嬉しいものです。
アニメや映画はどうなんでしょうか?
難しい気もしますね、戦争もの(史実含む)+アニメってなると拒絶反応を示す方も多そうです。
フィクションとして理解した上で楽しむ分には個人的にはOKだと思うんですけどね。
新作もなんとか更新頑張りますので、お暇な時にでも読んでいただければ。