歴史から消えた英雄Ⅰ
第7宇宙の太陽系の中にある青い星“地球”…
この星は、今まで幾度の死と生の連鎖を繰り返してきた。
だが、そんな悪夢も今やっと解放された。
そして、長い年月をかけて手に入れた…。
“永遠の平和”…。
だが、その平和はある1つの命を犠牲にしてのものだったことを人々は知らない。
今から送るこの話はある1人の、運命を背負わされた悲しい物語である。
それは、約2年前の出来事…。
孫 悟空…またの名をカカロット。
この男はいつものように修行の日々を送っていた。
「でやあ!だあ!」ブンッ!ズババババッ!
「ハァ…ハァ…。」
「か…め…は…め…。」ブゥウウウウン…。
「波あああぁぁ!!」ズオッ!ドガアアァン!
「ハァ…ハァ…。今日はここまでにするか…。」
悟空は木陰に入り、腰をおろした。
「そういえば…あの日からもう20年か…。」
「よしっ!久しぶりにベジータと組み手でもするかぁ!」
「えーと…。ベジータの気は…ズキッ!
「っが!?」
「うがあああ…。あ…頭が…。」
悟空はベジータの気を探ろうとした瞬間、いきなり悟空の頭に激痛が走った。
悟空は嘆き、悶え狂った。
「まっ…まさか…この頭痛は…。」
“…ロット…。おい…。えるか…?”
“チッ…。聞こえるか!?カカロット!!”
「…ッ!?」
「そ…その声は…。な…なぜ口が聞けるんだ!
あの封印をしたら口は…。」
“ハハハハッ!さすがに、あの封印にも限界はあるもんさ…。”
「くっ…くそっ!こうなりゃさっさと外に追い出すしk…ズキッ!
「がっ!?」
“ハハハハッ!外に追い出されてたまるか!
テメェの内側からジワジワと苦しめていってやるぜ!!ハーハッハッハ!!”
「ぎゃああああ!!や…やめろ…!やめて…くれ…!!」
“ハッ!やめろって言ってやめる奴なんざいねぇよ…。”
脳内に奴の罵る声が響く。
「う…うぐぐ…。がああああ!!」
だだっ広い荒野に、悟空の苦しむ声が静かに響き渡った。
そして、海上では凄まじい程の水しぶきを上げながら、猛スピードで飛ぶ者がいた。
それは、誇り高きサイヤ人の王子ベジータだった。
悟空の気の乱れに疑問を抱き、様子を見に行く所だった。
「クソッ!何だ!?この胸騒ぎはっ!一体何が起こっているんだ?」
「カカロット…。」
「うがあああ…!?うおおおおお!!」
ズオオオオオオ!!
悟空はついに超サイヤ人になった。が…。
その様子がいつもと違った。
周りのオーラが金色ではなく、どす黒いオーラを放っていたのだ。
「かはぁ…。さっさと…出ろ…。」
悟空はいつもの明るい声ではなく、低く冷酷な声を放った。
まるで、地球全体に響くような声で…。
「さっさと…出てきやがれーー!!ちゃあああああ!!」ズオオオッ!
その時、悟空の背中からもう1人の背中が出てきた。
そして、悟空は更に気を高めた。
「ずりゃああああぁぁぁ!!」パァン!
瞬間、そこは凄まじい光に包まれ、辺りは何も見えなくなった。
だが、代わりにある1人の声は聞こえてきた。
“クックック…。プツリと切れてくれて感謝するぜ?”
“カカロットさんよぉ…。”
悟空の前に立っていたのは、見た目も格好も髪型も全く…いや瓜二つの奴が立っていた。
だが、ひとつ違ったのは相手に向けられた不敵な笑みの存在だけである。
「ハァ…ハァ…。くっ…!ヤベェ…こりゃヤベェな…。でも…。アイツを出しちまったのはオラだからなぁ…。」
「オラが最後まで面倒見ねぇとな…。」
“ふぅ…。久しぶりの外の空気だ…それに…体がよく動くぜ。”
“じゃあ早速…。”ニヤ…。
奴は殺人鬼のような笑みをみせ、悟空に向き直った。
“俺の準備運動を手伝ってもらおうか…!”
「な…何だって!?」
「オメェ…オラのあの事知っててそれ言ってるのか!?」
“あぁ。そうだ…。久々に貴様をなぶり殺しにできそうなんでなぁ!!」
「くっ!闘いは避けられそうにねぇな…。」
“フンッ!そういう事だ…。”
2人は身構え、睨み合い、お互いのスキを探った。
そして、悟空が飛び出そうとした時、見に覚えのある気を感じた。
目線を上に上げると、そこにはあのベジータがいた。
「べ…ベジータ!?」
「オ…オメェ…。何でここに?」
ベジータは下降しながら答えた。
「貴様の気が乱れていたのでな…。だから様子を見に来ただけ…と言いたい所だが…。これはどういう事だ!説明しろ!!」
ベジータはもう1人の悟空に指を突き付けて言い放った。
“ほぅ…。アイツがサイヤ人の王子のベジータか…。たいした事はなさそうだな…。”
「な…何だと!?貴様!誰に口利いてるのかわかって…うっ!?」
「カ…カカロット…。貴様そっくり…いや同じだな…。」
「あぁ。正直オラも気持ち悪ぃぜ。ここまでそっくりだと…。」
“クッ…クククッ…。ハハハハッ!!当たり前だろ!?俺は貴様の…“本当の姿”なんだからな!!”
「な…何!?」
ベジータは突然の奴の告白に頭が追い付かなかった。
「ど…どういう事だ…。カカロットの“本当の姿”…?訳が分からん…。」
「まぁベジータ落ち着けって。順を追って話するから…。」どさっ
悟空とベジータは荒野の土の上に座った。
「あとは…。」ジロッ
「…ブツブツブツ…。」
悟空は奴を睨み付け、一言二言呟き、それを奴の体めがけ放つ。
すると、どこから出てきたのか細身のロープが現れ、奴の体に巻き付いた。
“チッ!クソッ!体が!言うことを…!”
「これでいいだろ…。」
「な…!カカロット…。あ…あれは…?」
「あの事も、説明するから…。」
「いいか。ベジータ。これはまだ誰にも話した事がない話だ。しっかり聞いてくれ…。いいな。ベジータ。」
悟空は、いつものヘラヘラした顔はどこにもなく、1年に1、2回位しか見られない真剣な顔がそこにあった。
悟空の表情の中では、レアものである。
「あぁ。分かった。どんな内容でも受け止めてやる。」
「ハハハッ!さすがベジータだ。頼もしいぜ。」
「…そうだ。あれは…。」
悟空は小さく口を開き、ゆっくりと話し始めた。
そしてそこで、彼の意外な真実が明らかとなる。
未だかつて聞いたこともない孫 悟空の過去を…。
ーto be contenued…。
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