マイナスから始まる鎮守府【2】
急死した提督の弟として、とある鎮守府に配属された男の話です。
〜演習編〜
汚い文章ではありますが、よろしくお願いします!
僕は、急死した兄の後釜として、ある鎮守府の提督となってしまった。
その鎮守府は、かなり荒れており、第三者からは『作り直したほうがいい』といった意見を言われる程だ。
それでも、契約補佐官だった【大淀】や、成り行きで協力者となった【霧島】の助力もあり、見事、この惨事の元凶である【…】を排除する事に成功したのだった。
だが、そんな喜びも束の間、上層部からは、業務の再開を要求され、演習の日程も勝手に組まれてしまっていた。
指揮官として、ど素人である僕は、【大淀】のサポートを頼りに、演習に向けての知識を増やしていく。
そして、現在、僕は『ヒットアンドアウェイ』戦法を完成させるべく、『北の大地』北海道を訪ね、アイススケート合宿を行っているのだった。
昨日の反省会を行い、再度、赤と青に分かれて試合することにした。
赤 青
【霧島】 【時雨】
【金剛】 【電】
【響】 【隼鷹】
試合のルールは、昨日と同じだ。
水鉄砲を使い、先に相手のビブスを染めたほうが勝ち。
もちろん、艦種によって、持たせた水鉄砲の種類は違う。
戦艦は、大きく、射程距離が長い。
駆逐艦は、小さいが、小回りが利く。
軽空母の場合、飛行機に水風船を取り付けている。
僕はホイッスルを咥える。
ピィーーーッ
空間を切り裂くような高音が鳴り響いた。
金剛「霧島!いくネ!」
霧島「はい!お姉様!!」
金剛霧島は、昨日と同じく、"遠距離からの放水"を始めた。
だが、それだけではなかった。
二人はタイミングを合わせ、【青】チームを誘い込ませているかのようだった。
果たして、このことに気付いているのは、俺の他に誰がいるのだろうか。
いや、いた。
この試合中、誰よりも客観的に観察できる人物が…。
隼鷹「時雨、電、内側に誘い込まれているから、そのまま、その流れを利用して!」
時雨「…!、了解、わかったよ」
電「なのです!」
そのまま、内側に誘い込まれた、時雨と電。
そして、その瞬間を金剛が狙い撃ちした。
時雨と電は撃沈判定になった。
…なるハズだった。
霧島「?!」
霧島の予測ではそうなるべきだったのだが、
残念ながらそうはならなかった。
何が起こったのか。
時雨と電は、確かに金剛の射撃ポイントに追い込まれた。
だが、金剛が撃つ瞬間、
時雨と電は急ブレーキをかけ、
大きく回るように旋回し、
金剛の放水を避けたのだ。
金剛は、このことに意識を取られた。
基本的な話。
周囲を警戒することは、止めてはいけない。
何故なら、それが命取りになるからだ。
そして、金剛は周囲の警戒が薄れた。
だから、忘れてしまっていた。
上空から狙われていることに…。
隼鷹「そこだぁ!!」
バシャッ
金剛「Shit...!!!」
金剛は、隼鷹の艦爆による攻撃を直撃してしまった。
大淀「金剛さんの、ビブスの変色率58%、中破判定です」
提督「なるほど、なるほど。意外にも、隼鷹さんって、かなりのクセ者かもしれませんね」
大淀「昨日の成績も高い方でしたからね」
提督「…後は時雨と電による『ヒット&アウェイ』の実践のみですが、できるますかね?」
大淀「どうでしょうか…。そもそも、この作戦は、あの二人には余るものだと思います」
大淀「…正直、この作戦は破棄すべきです」
提督「…」
試合終了後、今日はもう切り上げると、彼女たちに伝えた。
提督「身体は冷えているだろうし、ゆっくり湯に浸かってください」
提督「その後、午後7時から、ミーティングを行います。【赤】は大淀のところへ、【青】は僕のところへ来てください」
提督「では、解散」
ちょうど今、僕の時計は、5時23分34秒を指していた。
アイスアリーナを出て、艦娘御一行は、温泉に入るべく、宿泊している旅館へと向かっていた。
アイスアリーナから徒歩20分と、そこそこ遠い。
それに加え、彼女たちには、アイススケートによる負荷もあるため、なかなかに辛い道のりに思えるだろう。
電「もう…辛いのです…」
金剛「イズナマ!」
電「どう読んだらそうなるんですか!電は"
いなずま"なのです!」
金剛「フフ、そこまで大きな声が出せるなら No problemデース!」
電「声と足は違うのです!」
金剛「そうデスか?仕方がありませんネ、私の背中に乗るデス!」
電「良いのです?!」
霧島「お姉様!その重労働、私が受けますわ!!」
金剛「良いんデス、霧島…。イズナマのことは私に任せるネ!」
霧島は思った。
きっと、金剛お姉様は、電ちゃんを、.....お姉様と重ねて見ているのだ、と。
【…】
前提督であった、現在の提督の兄を毒殺し、鎮守府の艦娘たちを洗脳し、支配した張本人である。
彼女は、現提督との駆け引きに敗れ、今は特殊監獄に投獄されている身だ。
恐らく二度と会えない私の義姉。
霧島「お姉様…」
榛名が目を覚まさない以上、私しか、お姉様にとっての妹がいない…。
楽しげに会話している金剛と電を見て、霧島は覚悟を決めた。
『例え私一人であろうと、金剛お姉様を支えてみせる』
…。
そうこうしているうちに、宿泊先の旅館へと到着した。
大淀「では、入りましょうか」
着替え室に入り、服を脱ぎ始める艦娘たち。
その中でただ一人、妙な行動を起こしている人物がいた。
霧島に気づかれないよう、
霧島の背後に忍びより、
霧島が上着を脱ぐために、腕を上に上げたところを、
霧島の脇に腕を忍ばせ、
2つの脂肪を鷲掴みにした。
霧島「ッ???!!!」
揉む
隼鷹「わぁお」
揉む
金剛「あれぇ、霧島。少し大きくなったデスか?」
金剛は指を器用に動かしながらそう言った。
それに対し、霧島は頬赤く染め言う。
霧島「んッ///、お姉様!い、いけませんッ!/////」
実際問題、霧島の言う通りだ。
アイスアリーナは貸し切りでも、
温泉は貸し切りではない。
当然、他の宿泊者がいてもおかしくない…。
だが、金剛の気持ちも理解できる。
現に霧島の2つの山は、同性から見ても、興味をそそる程の規模である。
だが、やはり、ここは公共の場だ。
公序良俗違反である。
大淀が動いた。
大淀「金剛さん!必要最低限のモラルは守ってください!」
…沈黙…
金剛「Oh...平野」
はて、いったい金剛は何を思って発言したのか?
それは言った本人のみぞ知る。
しかし、大淀を怒らせるには十分な要素だった…。
何を言っているか、理解できないだろうが、現実がそうなのだから仕方がない…。
大淀「金剛さんの晩ご飯、減らさせていただきます。最近贅肉が付いてきているでしょう。弛んでいますね、やはり食事制限をすべきなんですよ。山を3つに増やす気なんですか?」
金剛「Oh淀!!Sorryネー!本当ネ!!」
大淀「ちゃんとした日本語で謝罪しなさいよ。いい歳した大人でしょうが」
金剛「誠に申し訳ございません」
霧島「金剛お姉様がプライドを捨てた!?」
時雨「アホらしい。僕。先に入るよ」
響「…同じく」
電「…なのです!」
ガラガラ
カポーーン…
【清掃中】
全員がすぐさま着替え直し、すぐに自室に戻ってきた。
これは言うまでもない。
艦娘たちが、前記のことをしている間に、提督である僕の元に、一本の電話が入ってきた。
提督「…はい、どちら様でしょうか」
提督「…」
提督「…ッ!」
提督「お前ッ」
提督「何故だ!確かに書類g…」
提督「…ッ!」
提督「…」
提督「……」
提督「…なんの用だ」
提督「今はもう、お前に構っていられるほど、暇では無いッ」
『私のお陰だろう?』
提督「…貴様ッ」
プツッ
ツー
ツー
切られた
あの野郎、切りやがった…。
クソッ、今すぐにでも鎮守府に戻るか?
RRRRRR....♪♪♪
【非通知】
ピッ
提督「……おい!」
…。
提督「…そう」
どうやら、今すぐにでも、戻らなければならない状況ではないらしい。
つまり、日程を変える必要はない。
午後6時48分34秒
提督「…お風呂、入れなかったんですか?」
大淀「はい、お恥ずかしながら」
電「残念なのです」
提督「…そうですね、当初の予定を変更します。なので、今すぐ入ってきていいですよ」
霧島「良いんですか?司令」
提督「合宿程度のことで、疲労蓄積はしてほしくありませんから」
金剛「じゃあ、今すぐ行っくネー!!」
響「失礼するよ」
時雨「提督。ありがとう」
隼鷹「あ゛ぁ~!提督ぅ、こっち来て一緒に呑もうよぉ〜」
提督「あぁ、良いですね」
大淀「ダメですよ。まだミーティングが残っているんですから」
提督「だ、そうですよ」
隼鷹「えーっ…。残念だなぁ〜」
提督「ミーティングが終わり次第、一緒に呑みましょうね」
隼鷹「お!じゃあ、呑んで待ってるぅ〜」
大淀「…」
大淀は、何かを訴えかけるかのように、僕のことを見つめている。
とりあえず、僕は彼女に微笑み返したのだった…。
大淀「…提督の馬鹿」
午後8時00分04秒
既に、30分くらい前には揃っていたのだが、キリがいい8時ジャストに、ミーティングを実施することにした。
提督「では、まずですね、今回の試合を分析した結果を報告します」
提督「【赤】チームですが、自主的に、独自の戦術を駆使してきて、正直驚きました。金剛さん霧島さんコンビの陽動、響ちゃんのカバー…」
提督「…この戦術は演習においても、かなり期待できると思います」
霧島「計画通りです!」
提督「ですが、慢心はよくありませんね」
提督「結果的に、金剛さんは隼鷹さんに、中破ダメージを受けていますから」
金剛「そこは反省するネ…」
提督「【青】チームですが…。正直に言って、時雨ちゃん、アレはできそうですか?」
時雨「…」
時雨「あれは、慣れないね」
提督「だと、思いました」
大淀「なので、駆逐艦の皆さんには、今後は『リンクに書かれている直線の往復』をしてもらいます」
提督「もちろん、素人が"がむしゃら"にやっても無意味なので、知り合いのコーチをつけさせていただきます」
時雨「え、これだけ?」
提督「えぇ、楽でしょう?」
電「なのです!」
響「ハラショー」
隼鷹「ん〜?あたしらは何すんのさー」
提督「魚雷をかわす為の、ジャンプの練習をしてもらいます」
隼鷹「あぁ。まぁ〜、装甲だけは薄いからなぁ。あたし」
霧島「機動力優先ですか…、ただそれでは燃料がすぐに底をつくのでは?」
提督「以前、艤装を分解して、解ったことがあります。主に燃料は移動の際に消費され、動けば動くほど燃料の消費量は上がります」
提督「ただ、燃料の使用量は最小限に抑え、アイススケートのように滑るとどうでしょうか」
提督「…、燃料の節約になります」
提督「ただ、問題は艦娘がバテてしまう可能性がある、ということなんですけど…。それはおいおい、体力向上の訓練でもしましょうか」
隼鷹「えぇ〜、あたしぃ、走り込みは嫌だなぁ〜…」
提督「では、禁酒ですかねぇ」
隼鷹「マジで?!それはいやぁ〜」
例えば、
スポーツ大会に、
エントリーするとしよう。
何もせず、
大会当日を迎える人間は、
まずいないだろうと、
僕は思う。
では、何をするか。
『基礎体力の向上』を目指し、
走り込みや、ウェイト
更に食生活に気を遣うだろう。
『技術を得る』ために、
試行錯誤を繰り返し、
より高みを目指していく。
また、技術は、
複数組み合わせて、
『戦術としての昇華』も可能だ。
そして、『相手を研究』し、
弱点を探しす努力も、
必要だと思う。
だが、それだけでは試す事ができない。
結局、自己満足で終わってしまう。
そのための、練習試合だ。
基礎体力の状況。
技術の未熟さ。
戦術の穴。
を再確認することができる。
だが、それだけではない。
練習試合は、『士気向上』や『場慣れ』をするためのものでもある。
ならば、戦争だとどうだ。
戦争が大会本戦なら、
練習試合は演習である。
つまり、今から僕たちは、
基礎体力の状況。
技術の未熟さ。
戦術の穴。
を確認する為に、
士気が悪い鎮守府の、
士気を上げる為に、
演習(練習試合)を行うのだ。
今日は雲が厚い日だった。
提督「では皆さん、頑張ってくださいね」
大淀「旗艦は、最も耐久性の優れている、霧島さんでお願いします」
大淀「ただし、敵の状況などは、隼鷹さんがbluetoothを通して、皆さんに報告する形となります」
隼鷹「任せとけ〜」
提督「任せましたよ」
隼鷹「…緊張するじゃん。勝ったら酒奢ってくれよ〜?」
提督「奮発しますよ」
隼鷹「どんくらぁい?」
提督「2ヶ月分の僕の給与で酒を買いましょう」
隼鷹「あたし、頑張るよ!」
大淀「そろそろ、始まりますよ!」
金剛「みんなで円陣組むネー!!」
金剛「Get a victory into us hands!!!」
金剛「暁の水平線に、勝利を刻むデース!!」
一同「「「おー!!」」」
さて、今回の演習は、今後の士気に関わる、大事な試合ですからね…。
期待はしています。
ヒュ〜…
ダァーンッ
開始の花火が打ち上げられた。
提督「データでは、教科書通りの陣形でしか組まない」
が、勝率が85%と、なかなかに高い。
これが気になる。
提督『油断せず、練習通りにやりましょう』
提督『隼鷹さん、相手の艦娘を教えて下さい』
隼鷹「ん〜、もうちょっと待って…。お…!え…?」
では、まずこちらのメンバーを紹介しよう。
旗艦 戦艦『霧島』
戦艦『金剛』
司令塔 軽空母『隼鷹』
駆逐艦『時雨』
駆逐艦『電』
駆逐艦『響』
このメンバーは、『正常に動ける』まともな艦娘を寄せ集めただけの艦隊である。
正直、不安だらけである。
だが、それは艦種によるものであり、スペックだけで言えば、どの鎮守府よりも優れている自信がある。
では、相手のメンバーはどうだったのか…?
旗艦 航空戦艦『日向』
航空戦艦『伊勢』
雷巡『北上』
雷巡『大井』
正規空母『加賀』
正規空母『赤城』
領空権の確保を重視したと見られる編成だった。
着弾点予測をフル活用しようという戦術か。
見え見えだな…。
だが、かなり堅実的であることに違いはない。
正直に言うと……頭にきた…。
提督『隼鷹さん、偵察機をもう1機追加し、更に高度を上げください。霧島さん金剛さん、例のお願いします』
金剛「霧島!いくデス!!」
霧島「はい!お姉様!」
金剛「Burning Looove!!!!!!」
『例の』とは何か。
そう、徐々に追い詰めて、捉える。
アレだ。
最初に、この流れに捕まったのは【加賀】だった。
赤城「加賀さん!避けて!!!」
加賀「問題ないわ、赤城さん。この程度の命中精度」
「簡単に避けられるわ」
と、加賀は言った。
果たして、数秒後の加賀は何を思うか…。
1
…2
……3
………4
加賀「なっ!」
直撃。
『【加賀】撃沈判定』
相手側提督「は?」
正規空母が、演習が始まって3分で撃沈した例が、過去に1度でもあっただろうか?
いや、ないだろう。
訪れる沈黙。
聞こえるは、波の音。
会場は、
静粛のあと、
湧いた。
観覧者「何が起きたと言うんだ!」
提督「そう、この戦術は初見殺しみたいなものだ」
決して闇雲に撃っているわけではない。
休まず、一定の感覚で撃ち続けているから、気付かれにくい。
提督「クッ!だが領空権はこっちのものだ!」
赤城「…ッ!加賀さんの仇は取らせていただきます!!」
赤城が射った矢は、
飛行機となり、
隼鷹を狙った。
魚雷投下。
霧島
↓
金剛
↓
響
誰も止めようとする素振りはない。
決まった!!
会場内の思考は一致した。
隼鷹「…ほぉい」
ピョンッ…と、
隼鷹は、魚雷が向かってくる方へ飛んだ。
「「「「?!」」」」
またも、会場は沈黙に包まれた。
この反応を僕は待っていた。
いやぁ、ニヤケが止まらない…w
大淀「提督。気持ち悪いです…」
提督「…」
…。
…まぁ、いい。
相手側提督「なッ!あんなものは反則だ!!」
相手側提督「抗議してやるッ!!!」
相手側の提督は、監督席にある受話器を取った。
同時に、
pRRRRRRRRR......
僕の席にある受話器が鳴った。
ガチャ
提督「…何か用でしょうか?」
相手側提督「貴様ッ!一体何を考えている!!真面目にやれぇッ!!」
提督「真面目ですよ?」
相手側提督「貴様ッ、ナメやがって!!」
提督「…落ち着きましょう。これは、戦争です」
相手側提督「…なッ!?」
提督「敵の攻撃から身を守るのは当たり前です」
提督「あなたが『当たる事が正当』だと言うのであれば、それに従いましょう」
提督「が、それは人権に反していますよね?それについてはどう思われますか?」
相手側提督「笑わせるなよ?…艦娘に人権だと?こいつらは兵器だろう!!」
提督「いえいえ、兵器ではなく兵士です。義務教育教材にも、『13才のハローワーク』にも記載されていることですよ?…いや、良いことを聞きました」
提督「…では、深海棲艦に代わって、戦争の恐ろしさを思い知らせてみせましょう」
提督「楽しみにしていてください」
カチャ
僕は、
相手の返答を、
待たずに切った。
今の戦況は、お互いに牽制し合い、睨み合っている状態だ。
…。
『人を人として利用するのが得意な方』
最後に、そう思ったのはいつだっただろうか…。
ただ、今はそんなことどうでもいい。
とりあえず、今は勝つ事だけを考えよう。
提督『隼鷹さん、まだ偵察機の存在は気づかれていませんね?』
隼鷹「気付かれてんなら、撃ち落とされてるんじゃない?」
提督『なら良かったです』
提督『…予測通り、相手さんは抗議してきました』
隼鷹「ひぃー、怖いねぇ〜。…言い返しちゃったんだろう?」
提督「不服でしたか?」
隼鷹「これも酒のため…てねぇ〜」
提督「凄いですね。感動しました」
…パワフル女子
提督「時雨ちゃん、電ちゃん、響ちゃん、準備はいいかい?」
時雨「提督。いつでもいけるよ」
電「電、大丈夫なのです」
響「…問題ない」
提督「よし、頼んだよ」
補佐A「日向より入電、駆逐艦が3体特攻」
相手側提督「!馬鹿が何が戦争だ。ただの特攻ではないか!」
相手側提督「薙ぎ払ってしまえ!!」
日向「提督からの入電だ」
伊勢「なんだってー?」
日向「『薙ぎ払え』だと」
隼鷹「航空戦艦様が動いたよぉ」
時雨「タイミングお願いしますよ!」
提督『金剛さんと霧島さんは、敵航空機の撃滅をお願いします』
霧島「了解です!」
正直、相手の雷巡は、既に脅威ではなくなった。
いや、慢心は良くない。
提督『隼鷹さん、雷巡の位置の把握もお願いします。それと赤城の無力化もお願いします』
隼鷹「全く…提督もブラックだねぇ〜」
提督『それ相応の報酬あ与えるつもりです」
ドォォオオン…。
隼鷹「やっべ、撃ちましたよ!」
時雨「ばか!!!」
時雨、電、響はすぐに切り返した。
水面を小刻みに踏み、身体を反転させ、すぐさま後退した。
駆逐艦の機動力に加え、スケートの技術を取り入れた。
今までの常識に囚われていては、絶対に越えられなかった壁を越えた。
オーバーに言うと、機動力は人智を越えている。
そんな駆逐艦3人には、なんの被害も被らなかった。
一方では、大混乱が起きていた。
保佐A「日向、伊勢共に中破判定」
相手側提督「な?!」
保佐A「...北川大破、大井撃沈判定です」
相手側提督「何が起きていると言うんだ…」
相手側提督「クッソぉッ!!」
叫んだところで結果は変わらない。
彼は、無意味にエネルギーを消費する。
…
赤城「…一航戦の誇りに賭け、決して諦めません」
赤城「最後まで頑張って…私の優秀な子たち!」
赤城は、
震える手を、
震えを抑え、
矢を、
射た。
だが、
弦が弾ける音が、
聴こえることはなかった。
赤城の心は砕けた。
彼女はもう発艦することはできない。
だが、彼女は大破でも中破でもなく、
無傷だった。
無傷だというのに、彼女はもう射ることはできない。
赤城「…ッ」
答えは簡単だった。
弓のみを集中して銃撃してしまえばいい。
最も非道で、誰も行わなかった盲点。
提督『隼鷹さん、すみませんね』
隼鷹「…遅いよ、謝るならもっと早くにしてほしかったなぁ」
提督『すみません』
隼鷹「らしくないなぁ」
時雨「提督。会場が引いちゃってるよ…」
提督『…では、ちゃっちゃと終わらせしまいましょうか』
時雨「本当に、悪いと思ってるのかな…」
勝敗が決まるのに時間はかからなかった。
結果は言うまでもないだろう。
今回の演習の映像は、リアルタイムで各鎮守府で上映されるようになっている。
そういったこともあり、戦術の共有も兼ね、演習を行った両提督へのインタビューが、演習後にセットされているのだった。
少し緊張する。
インタビュア「先ほど、お相手提督が『非道的戦術』と非難していましたが、どのような意図であのような戦術を選択なされたのでしょうか?」
提督「実に馬鹿な質問ですね。…これは、エンターテイメントではなく、実際の戦争を模した演習です。命がかかっているのに『非道』もなにもないでしょう」
僕はグーだった手を上げ、人差し指を伸ばし、そのままカメラに向けた。
提督「この程度の、単純な戦術も防げなかった、自分自身を恨むべきです」
提督「いってしまえば、深海棲艦相手にも『非道だ』と抗議するんでしょうかね?以上です」
インタビュアは誰一人として何も言えなかった。
ただ一人を除いて…。
『これは戦争ではなく、演習です』
『あなたは赤城さんの顔を見ましたか?私は見ましたよ…。絶望に満ちた、その顔を…。演習で心を破壊する必要性は、あったのでしょうか?』
提督「演習とは、実戦を模したものです。良かったではありませんか?練習で自分自身の弱点を知ったのですから」
『今は…、そんな事を言っているんじゃあ、ないんですよッ!』
『練習でッ!戦意を削いでどうするんですかッ!!』
『敵は、味方ではなく、深海棲艦ですよッ!』
提督「残念ながら、この程度で戦意喪失する様であれば戦場には無用でしょう」
提督「はっきり言いますよ。"邪魔"です」
『あなたは、艦娘を道具かのように思っている。という事ですか?』
提督「…いえいえ、艦娘は兵士ですよ」
『兵士であっても人は人ですッ!』
…。
この放送は、各鎮守府へと送られている。
今!
この!
段階では!
僕は、
モラルのない、
絶対悪であると、
認識されているだろう。
僕の鎮守府に、
抗議の電話をする用意も、
整えているだろう。
だが、
それは、
今、
現在での、
話だ。
僕は、ポケットからXperia Z5を取り出した。
『!真面目にやってください!』
電源を付け、アプリを開き、ファイルを開けた。
『聞いているんですか!真面目にッ…』
《真面目にやれぇッ!!》
《真面目ですよ?》
《貴様ッ、ナメやがって!!》
《…落ち着きましょう。これは、戦争です》
《…なッ!?》
《敵の攻撃から身を守るのは当たり前です。あなたが『当たる事が正当』だと言うのであれば、それに従いましょう。が、それは人権に反していますよね?それについてはどう思われますか?》
音量を上げた。
もう一度、
言うが、
これは、
この放送は、
全国の各鎮守府へと配信されている。
《笑わせるなよ?…艦娘に人権だと?こいつらは兵器だろう!!》
決定的な瞬間だった。
提督「…この通り、艦娘を道具とみなし、道具として扱った人間は、彼です」
提督「作戦としても、教科書通りで、艦娘の被ダメージなど考えてもいないのです」
提督「いくら装甲があろうと痛みは、感じるでしょう」
提督「その偏見的思想が、敗北に繋がったのだと、僕は思いますねぇ」
『そんな…』
この時、
民意の矛先は、
僕ではなく、
相手さんに向いた。
アナウンスが流れる…。
会見は以上としますーーー。
『クッ!』
提督「お名前をお聴きしても良いですか?」
『?!』
提督「あなたのですよ」
『…【青葉】』
提督「そうですか、青葉さんでしたか」
青葉『何ですか!何か文句でも?』
提督「いえ、滅相もない。あなたの思考力、考察力は、中々のものだと、思いましてね」
青葉『ッッ!?』
提督「今後のご活用を期待しています」
提督「あー、それとですね」
青葉『なんですか』
提督「マイク入ったままですよ」
青葉『ッーーーーー!!!/////』
wwwwww
やべぇwww
提督「では、失礼します」
…。
霧島「司令。やっちゃいましたね」
提督「こういう予定だったでしょ」
時雨「提督。何、にやけてるの?」
電「きもいのです!」
おっと、いけない。
青葉のアレが面白くてwww
大淀「…暗殺される前に帰りましょうか」
提督「そうですね」
鎮守府に帰ってすぐに、隼鷹に『鎮守府の駐車場に来い』と呼ばれた。
隼鷹「お、きたきた〜」
…それなりに高そうな車で待っていた隼鷹。
隼鷹「提督〜。早く乗りなよ」
隼鷹…、免許証持ってたんだ。
それより…
提督「…まさか、飲酒してませんよね?」
隼鷹「まっさかぁ〜」
提督「…」
いつもとは、
違う位置にある、
助手席に座る僕。
いつも見ている町の風景。
何故か新鮮に思える。
町のはずれにある居酒屋。
『飲み処 鳳翔』
提督「鳳翔…、なるほど」
隼鷹「かぁなり美味いって評判なんだぜぇ?」
提督「へぇ」
ここで給与の2ヶ月分がなくなるのか?
いや、そういうわけではないか…。
隼鷹「提督〜。早く早くぅ」
提督「…」
引き戸を開け、店内に入った。
外の雰囲気とは裏腹に、中は意外にも広かった。
隼鷹「姐さん、ごめんねぇ〜」
鳳翔「こんばんわ、隼鷹ちゃん。…そちらの方が…」
提督「はじめまして、ここの地区を管轄している者です」
鳳翔「ふふ、面白い方ですね」
提督「よく言われます」
隼鷹「姐さん、彼女は…」
鳳翔「…奥の部屋にいるわ」
彼女、とは
ふすまを開け、僕は驚いた。
一航戦の二人…!?
赤城「…」
隼鷹「…」
隼鷹「この度は、多大なご迷惑をおかけし、心から心から申し訳なく、深くお詫びいたします」
隼鷹は、
深く、
深く、
頭を下げた。
加賀「…」
提督「…」
加賀「…あの後、私たちの鎮守府に、全国から、抗議の電話が殺到したわ…。ねぇ、何故、傷ついた私たちが、批難されなければいけなかったの?ねぇ?」
隼鷹「…弁解の余地もございません」
加賀「…」
加賀は隼鷹の胸ぐら掴み、殴った。
加賀「ねぇ!!そこの男からは何もないわけッ!?」
提督「僕からは何も言うことはないですね」
加賀「ッ!殺してやる」
ドス。と、鈍く思い音が聴こえた。
僕の腹から。
隼鷹が、僕を殴ったのだった。
隼鷹「失態をお見せいたしまして、たいへん申し訳ありませんでした」
隼鷹の土下座を見るのは、これが最初で最後かも知れない。
加賀「許せるわけ無いでしょうッ!」
うずくまっている僕を他所に、加賀は何度も、隼鷹を蹴った。
「もうやめてくださいッ!!!」
そう叫んだ。
赤城の声を聞いて、
加賀の動きは止まった。
加賀「赤城さん…、何を言ってるの?」
赤城「…もう過ぎた事です」
加賀「我慢しては駄目よ!あなた言っていたじゃない!悔しいって!!誇りを汚されって!!」
赤城「加賀さん…」
加賀「許してはいけないのよ!こんなクズ!」
赤城「加賀さん…」
加賀「赤城さんッ!」
赤城「加賀さんッ!!いい加減にして!!」
加賀「ッ??!?」
赤城「加賀さん…、この提督さんが言っていることは間違っていないの…、確かに戦場では誇りなど無意味な物です」
加賀「やめて、赤城さん…。あなたの口からそんな言葉は聞きたくないわ」
赤城「命懸けで、泥臭くて、人権の尊重なんてない…、それが戦争です」
加賀「赤城さん…、もうやめてッ…」
赤城「でもね、提督さん…、私たちが背負っている物は、一航戦の誇りだけではないの」
赤城「70年前に散った英霊の想い、日々戦っている艦娘たちの想い、そして、平和を望む国民の想い。その全てを背負っているの」
赤城「…だから、私達ではなく、その全てに謝罪してもらいたい」
ぐうの音も出ない…。
提督「…、本当に、申し訳ございませんでした」
赤城「隼鷹さん、あなたは何も悪くないわ」
隼鷹「…」
加賀「帰りましょう。赤城さん…」
赤城「いえ、加賀さん」
加賀「?」
赤城「この方に奢ってもらいましょう。ね?隼鷹さん?」
隼鷹「…はい」
提督「…」
あぁ、そういうことか…。
彼女らは、鳳翔の料理を山程食べ、海を飲み干すかのように酒を呑んだ。
鳳翔「あらあら、寝てしまったのね」
提督「えぇ、今日は大変でしたから…。僕が言うのも、おかしな話ですね」
鳳翔「そういえば、提督のお名前は?」
提督「気になります?」
鳳翔「提督と呼ぶのも変じゃないですか」
提督「英華。英雄の英に、華やかの華です」
鳳翔「いい、お名前ですね!」
提督「…、勘定お願いします」
鳳翔「あ、えっと、その…」
提督「?あ?」
鳳翔「34万円…になります」
提督「すごいなぁw」
鳳翔「…流石に止めるべきでした」
提督「いえいえ、これは事前に約束していましたから」
鳳翔「…え?」
提督「給与の2ヶ月分を隼鷹に貢ぎます、と。」
鳳翔「あぁ…」
…。
提督「では、3人を送って帰ります」
提督「ごちそうさまでした。こんなに美味しい料理を初めて食べました」
鳳翔「ありがとうございます。是非、またお越しになってくださいね」
提督「えぇ、もちろんです」
僕は、隼鷹の車に、寝ている3人を乗せ。
そして、車を走らせた。
隼鷹「…提督ぅ〜」
寝言を言っている隼鷹を他所に、僕は運転をしている。
赤城「…あなたの鎮守府…、大変な状況だそうですね」
後部座席で寝ていた赤城が起きた様だ。
提督「運転、下手でしたか?」
赤城「元から寝ていませんでしたから」
提督「狸ですか」
赤城「たまにはお姫様抱っこもいいですね」
提督「…そうですか」
提督「…あなた方の提督はどうなんですか?」
赤城「…とても堅実的な人ですよ」
提督「でしょうね」
赤城「確かに、あの人は、私たちを人だとは思っていません。が、人として接してくれていました」
提督「物として接しろという方が無理です」
赤城「逆に、私たちを人として考える人のほうが少ない、と思います」
提督「それは、ありますね」
赤城「…、私、思ってしまったんですよ」
赤城「あなたのような、常識に当てはまらない司令官の元に、就きたかったものです」
提督「そちらの提督が泣きますよ?それに、非常識な人間の何がいいか」
赤城「人命を優先するという点ですよ」
提督「…、僕が守れるのは味方だけですよ…。あぁ」
赤城「ないものねだりですがね」
提督「なら、うちにきます?」
赤城「…できないでしょう?」
提督「規則上可能ですよ。僕の秘書も他所からきた艦娘ですから」
赤城「すみません。お断りします」
提督「そうですか、残念です」
…。
赤城「…宜しければ、今回の作戦について教えてはもらえませんでしょうか?」
提督「いいですよ。もう二度と演習では使いませんからね」
提督「これは大本営に発表する予定ですが、今回、僕たちは通話と映像で作戦を遂行することにしました」
赤城「まさか、艦載機にカメラを取り付けたのですか?!」
提督「えぇ。まぁ、限界まで高度をあげていましたからね。気付かなくとも仕方はありません」
赤城「…通話というのは?」
提督「そのままの意味です。言葉をそのまま伝えるということは、暗号を解読する時間を裂けるということ。伝達スピードが格段に違いますね」
…。
提督「まぁ、最初にあなた達を見た時は、正直、焦りましたね。領空権を奪取は不可能に近いですから」
提督「着弾予測射撃なんてされたら、普通は一方負けですよ。ただ、上空からの監視に加え、スケートの技術を取り入れましたからね」
提督「いくら着弾予測といえど、安定しない動きでは無意味ですから」
提督「なので、まずはじめに、空母のお二人を排除することにしました。…追い込んで撃つ。これは、配布された映像を見ると、わかると思います」
赤城「それに、手っ取り早く空母を倒すには、発艦不可にするだけですからね」
提督「えぇ、これはモーションの遅い、あなた方の弱点です」
赤城「…」
提督「すみません…、言葉が悪かったですね」
赤城「いえ、事実です」
提督「最後に、雷巡ですが、あれは元々脅威でも何でもありませんでしたね」
提督「魚雷に当たるということは、油断していたか、アホか。そのどちらかでしょうね」
勝つべくして勝った。
ただ、それだけだ。
提督「そろそろですね」
『飲み処 鳳翔』を出てから、1時間が経っていた。
赤城「加賀さん、起きてください」
加賀「んん…?まったく…、赤城さんったら、今日はダメな日ですよ」
赤城「加賀さん?」
加賀「もう、仕方がないわね…ん?」
赤城「加賀さん////」
加賀「え///」
提督「この車が、僕の車であれば、許可したんですけどね。続きは自室のベットにてお願いします」
…。
ドム…
ドアを閉める音。
赤城「今晩は、ごちそうさまでした」
提督「いえいえ、こちらこそ、ごちそうさまでした。まさか加賀さんの意外な側面が見られるとは」
加賀「…セクハラです」
提督「すみませんでした」
赤城「…では、お気をつけてお帰りなさってください」
提督「ありがとうございます。では」
車を発進させ、自分の鎮守府に戻ることにした。
大淀「…それで、こんなに遅いご帰宅になったと?」
提督「問題ありましたか?」
大淀「大有りです!信じられません!」
提督「…それでも、信じて僕のことを待っていてくれたんだ」
大淀「減らず口ですね」
提督「あれ、駄目でしたか?」
大淀「駄目です。通じませんよ」
提督「…まずは、隼鷹さんを部屋に届けてきます」
大淀「…」
そんな、人のモラルを、疑うような目で、見ないでもらいたい。
大淀「…では、私は朝早いので、先に寝ますね。おやすみなさい」
提督「おやすみなさい」
大淀はスタスタと行ってしまった。
大淀「…」
さて、さっさと隼鷹を部屋に戻して、僕も寝よう。
この鎮守府で、ただ一人の空母。
隼鷹「ふへへぇ?あれぇ?提督ぅ〜?」
提督「おはようございます(酒臭いです)」
隼鷹「たっくぅ、提督大胆じゃん///」
提督「…、僕はもう帰りますね」
隼鷹をベッドの上に寝かせ、僕は立ち去ろうとした。
隼鷹「ん〜?提督〜、どこ行くのさ?」
提督「自分の部屋ですよ」
隼鷹「もう少し、一緒にいようよぉ〜」
提督「…、まったく…」
提督「僕が気づいていないとでも?」
隼鷹「あれぇ?知ってたの」
提督「あなたは、酔っ払っていようが、意識は正常ですからね」
隼鷹「あらぁ〜」
提督「まぁ、良いですよ。少し、お話しましょう」
隼鷹「その前にさ、着替えるの手伝ってくれない?」
提督「ん?」
隼鷹「…加賀に蹴られたのが効いたねぇ」
提督「…絶対に、見ないので、安心してください」
僕は、隼鷹の上着を脱がせ、赤いドレスも脱がそうとした。
見てしまった。
彼女の、身体にある、無数の傷を…。
そうだ、
彼女も、
兄の洗脳下にあった、
被害者だ。
硬直。
隼鷹「提督〜?」
提督「…」
隼鷹「見たんだ?」
提督「…えぇ」
隼鷹「…あたしのブラ」
提督「…は?」
隼鷹「冗談だよ〜」
提督「…隼鷹さん」
隼鷹「…気にすることないって〜」
隼鷹「君は、当時、ここにはいなかった」
隼鷹「それに、これは提督の兄貴がしたものじゃないからね〜」
提督「…比叡」
隼鷹「…」
兄が支配し、比叡が操り、兄が利用し、兄を利用し、比叡が殺した。
隼鷹「私は、あたしの家は、元々政治家家系でねぇ」
提督「…花園優香(隼鷹の本名だ)」
隼鷹「知ってんじゃん〜。なら話は早いね」
隼鷹「お父様は言ったよ。家を守るにはお前が必要なんだ。とね」
隼鷹「そうして、あたしは、艦娘になった…」
隼鷹「【隼鷹】の証は、お父様の、せめてもの情けだったんじゃないかなぁ」
提督「『商船改装空母』」
隼鷹「まぁ、こんな姿じゃあ、客も呼べないよねぇ…」
提督「…(そんなことはないですよ)」
無責任な事を、言える立場ではなかった。
隼鷹「ねぇ〜?提督」
提督「…」
隼鷹「なんなら、提督が買ってよ」
隼鷹「私に乗ってみないかい?」
【隼鷹】は僕に絡む様に抱きついた。
深い傷。取り返しの付かない傷。傷ついた腕。傷ついた身体。僕は彼女を抱いた。
提督「【隼鷹】さんッ…」
隼鷹「提督ぅ、こんな時くらい【隼鷹】で呼ぶのはやめてよ〜」
提督「…【橿原丸】さん」
隼鷹「…それは意地悪だねぇ、英華さん?」
提督「優香…」
隼鷹「それに、今日は勝負下着なんだー」
提督「…商売上手ですね(…)」
もうこの部屋には、
【提督】と【隼鷹】など、
存在していなかった。
あるのは、
1組の男女と、
酒気と、
官能のみであった。
夜は深く深く…。
今日の目覚めは、とても、良いとは言えるものではなかった。
大淀「…今何時よ、ん?」
ベットの隅に転がっている、目覚まし時計を見た。
【04:39】
大淀「…」
いつもより1時間も早い…。
今から、もう一度、寝る気にもならない。
そうだ、シャワーを浴びよう。
私は、給湯のボタンを押し、テレビの電源をつけた。
…。
大人の映画が放送されていた。
…4時でも放送されるんだ…。
何故か、釘付けになってしまった。
私も、提督にあんな事をされたい。
提督『もう少し、楽になっていいんですよ?』
大淀『きゃっ///恥ずかしい///』
提督『綺麗ですよ。大淀』
大淀『提督…////』
大淀「…なんてね」
何を考えているのかしら…。
第一、あの人に性欲があるのか自体怪しい。
給湯の報せが鳴る。
さて…。
私は寝間着を脱ぎ、下着を外した。
今日も、鏡に映った平野に、落胆した。
【06:49】
そろそろ、提督を起こしに行きますか。
おそらく、昨晩の疲れで爆睡でしょう。
私は、提督の部屋へと、向かった。
コンコン
大淀「提督、起きていますか?」
やはり、反応はない。
ガチャ
大淀「おはようございます!提督!!」
私は、驚愕した。
ベットに誰もいない。
もう起きていたというの?
それはない。
まさか…。
私は、
すぐさま、
隼鷹の部屋に、
向かった。
コンコン
ガチャ
大淀「隼鷹さん!提督をm…」
この部屋は、
酒気と、
嗅いだことのない臭いが、
充満していた。
…まさか。
私は、ベットから、布団を引き剥がした。
…。
…。
裸の男女。
が、抱き合って寝ていた。
//////////
嘘。
え、嘘。
すぐに布団を戻し。
私。
大淀は、
自室に焦って戻った。
事後だった。
手遅れだった。
先を越された。
あぁ…////
大淀「提督の馬鹿ぁ/////」
睦月「電ちゃん、昨日の演習見たよ!凄かったね!」
電「本当!?嬉しいのです!」
昨日の演習の効果もあり、
鎮守府全体の士気が向上した気がする。
鎮守府近海の、巡回業務の再開も、近々できそうだ。
提督「大淀さん、今日の日程は…」
大淀「…」
提督「大淀さん?どうしました?」
大淀「なんでもありません!」
提督「…怒ってます?特に、身に憶えがないのですが」
大淀「…今日は、あと訓練のみです!以上!」
行ってしまった…。
提督「…?」
そう、
何故か、
今朝から、
大淀は、
怒っているのだ。
…。
提督「もういいですよ、休憩に入ってください」
「「「はい!」」」
提督「5分休憩したら、またここに戻ってくるように、お願いします」
…。
睦月「それにしても、今の提督って誠実で良いよね!」
電「そう思うのです!」
愛宕「トレーニングは厳しいけどね…。はぁ、肩凝るわ〜」
電「…当たり前なのです」
霧島「…司令。編成は決まったのですか?」
提督「何も考えていませんでした」
霧島「…」
提督「嘘ですよ。そんな顔しないでください」
霧島「…」
提督「とりあえず、前回の演習メンバーに【愛宕】さんを、入れようかと」
霧島「巡回にしては、少し重すぎる気がします」
提督「…えぇ、最近、深海棲艦の様子がおかしいそうで、万が一に備えて…、の編成です」
IN
【愛宕】
OUT
【響】
ふむ…。
「…く、…いとく」
時雨「提督!」
提督「…!」
時雨「もう5分過ぎてるよ」
提督「すみません、では、次は射撃訓練をお願いします」
深海棲艦といえど、やはり、演習通りの戦術で対応可能だろう。
可能だと思う。申し訳ないが、この職については素人のようなもので、必要最低限の知識しか、持ち合わせていない。
正直、資料でしか深海棲艦を見たことがない。
得体の知れない、なにか。
だが、どうも、『馴染み』のある存在。
『馴染み』…?
…。
大淀「提督、お客様がお越しです」
提督「…?」
提督「そんな予定はなかったはずだが」
大淀「…ないはずですけどね」
??
訓練の最中ではあるのだが…。
提督「大淀さん、後任せました」
この時期の、客だというのだから、上層部の人間だろうな。
答えを言うと、上層部の人間ではなかった。
上層部の使い。
裏でお世話になっている【長門】だった。
だが、この訪問の内容は、望んでもいない、最悪のタイミングでの、最悪な要件であった。
【英治】
とは
誰か
何か
【英治】
とは
僕が
この鎮守府に
就任する
前の提督
だった男
【英治】
とは
僕の
双子の兄
である男
【英治】
とは
この鎮守府の
元凶にして
犠牲者である
【英治】
とは
妻に
殺された
【比叡】に
殺された
殺された
ハズだった
長門「…すまないな、英華くん」
提督「いえ、急用だったのでしょう?構いません」
長門「比叡の事だが…」
提督「…」
長門「今朝、警備員が、壁が破壊されているのを、発見した」
提督「…艦娘、戦艦型であろうと、破壊できない壁、間違いありませんね?」
長門「一部違うな。『艦娘には破壊できない壁』だ」
提督「ならば、外から…爆破された、ですか」
長門「いや、破片が外に向かって飛び散っているところを見ると、内側から破壊されている」
…。
提督「今から話すのは、独り言です」
提督「…食料の配給は、常に同じ刑務官が、毎日行っている」
提督「その人間を買収し、食料の中に小型の爆弾を混入させる」
提督「【比叡】はそれに気付き、壁に設置し、破壊した」
提督「…誰が、ならば、誰が買収をしたのか」
提督「…財を持ち、刑務官との人脈のある人物」
長門「何が言いたい」
提督「先日、【英治】から連絡がありました」
長門「なぜ、そんな大切な事をッ!…もとより、アイツは既に死んでいる」
提督「偽造なんて(あいつの)常套手段でしょう」
長門「…何故【比叡】なんだ?【比叡】は奴を裏切った張本人のはずだろう?」
提督「それが解れば苦労しませんよ」
『それに、あくまでも、予測でしかない』
長門「…我々は何をしたらいい」
提督「内部に内通者がいるはずです」
長門「…わかった」
提督「気を付けてくださいね」
兄ならば、確実に、この1ヶ月以内に行動するであろうと思っていた。
実際に、既に行動している。
本当に迷惑な奴だ。
これから、対深海棲艦作戦を、実施する予定だったのだから…。
時は、合宿2日目に遡る。
提督「…はい、どちら様でしょうか」
『あらら、改まっちゃって』
提督「…」
『えぇ…、無反応かい』
提督「…ッ!」
『アハハ、判った?』
提督「お前ッ」
『お前って、偉くなったなぁ〜w』
提督「何故だ!確かに書類g…」
『解剖結果とかかい?アハハ、偽造に決まってんじゃんw』
提督「…ッ!」
『比叡は元気にしているかい?』
提督「…」
『あれ?もういないのw?』
提督「……」
『残念だなぁw久々に愛しい嫁の声でも聞こうと思ったんだがw』
提督「…なんの用だ」
『他愛のないお話でしょう?』
提督「今はもう、お前に構っていられるほど、暇では無いッ」
『英華ぁ、お前が念願の司令官に成れたのは…』
『私のお陰だろう?』
提督「…貴様ッ」
『じゃあねぇ〜』
RRRRRR....♪♪♪
【非通知】
『もしもしー』
提督「……おい!」
『英華んとこは、二度と触れないから安心してなぁ』
提督「…そう」
『アデューw』
榛名お姉様は、未だに、目を覚ます予兆を感じさせない。
それ程、
静かに、
安らかに、
眠っている。
まるで、運命の王子様を待っている、Snow whiteの様に…。
…。
Snow whiteは、母の欲望によって、追い詰められ…、魔女となった母の毒によって殺された。
榛名お姉様は、比叡お姉様の欲望によって、追い詰められ、私の毒によって殺された。
一部、語弊はあるが、概要はそんなものだろう。
比叡お姉様は、榛名お姉様を調教し、駒とし、奴隷とし、私が毒を盛って静止させた。
榛名お姉様は起きることはない。
妹に毒を盛られ、絶望し、死にたがっている。
でなければ、榛名お姉様だけが目覚めないのはおかしい。
そうとしか考えられない。
霧島「…すみません。榛名お姉様…」
涙が、
込み上げてきた。
泣きたい。
辛い。
寂しい。
だが、
私にそんな権利はない。
「辛かったら泣いてもいいんですヨ?」
霧島「…金剛お姉様」
金剛「霧島は悪くないネ、…比叡も悪くない」
霧島「現に、榛名お姉様をこうしたのは私です」
金剛「誰かを守る為にしたことネ。もちろん、榛名の尊厳を守る為でもあった…」
霧島「でも、榛名お姉様は、一向に目を覚まさない」
金剛「きっと、疲れているのネ」
霧島「…金剛お姉様」
金剛「ほら、榛名の顔を見てごらん」
私は、
あれ以来、
榛名お姉様の顔を、
見たことはなかった。
見ないようにしてた。
見たくなかった。
思い出したくなかった。
逃げていた。
金剛「こんなに、安らかな顔してるネ」
榛名の顔は、死んでなどいなかった。
榛名は、榛名にとっての朝を、夜明けを待っていた。
ただ、それだけ。
決して目覚めたくないわけではないのだ。
今はまだ、休養が必要なだけ。
震え、怯え、動揺し、今にも自害しそうな霧島を、
金剛は、優しく、強く、暖かく、鼓舞するように、そっと抱き締めた。
霧島「(…)」
霧島「お姉様ッ…」
金剛「大丈夫デス」
霧島「…私はッ」
金剛「霧島は悪くないネ」
霧島「私…」
金剛「大丈夫…」
涙。
我慢してきた涙。
噎せ返り、喉を枯らしてまでも。
P12 1行
皇紀2661年
西暦2001年
北海道十勝沖にて、金属生命体が捕獲される。
金属生命体は、大砲と魚を組み合わせたかのような形状をしており、当時の漁師たちは、子供用玩具だと認識し、港へ持ち帰った。
P12 8行
皇紀2671年
西暦2011年
上記の金属生命体と思われる大群が、太平洋沿岸の港へ砲撃。自衛隊の決死の対応により、壊滅を免れた。しかし、現在の兵器では致命傷を与えることは難しく、領海圏の7割を喪失する事となった。この金属生命体の解明をすべく研究を開始。日本政府は、この金属生命体を『深海棲艦』と命名した。
P13 1行
皇紀2672年
西暦2012年
全国各地で、身に覚えの無い記憶が混雑していると訴える女性が殺到した。政府機関は、これが『深海棲艦』と関係している現象だと断定、研究し、ついに『深海棲艦』と対等以上の力を持った『艦娘』と呼ばれる兵士を発表した。当時、『深海棲艦』の情報に疎かった国民は、人権問題と批難。日本政府は「国家存亡の危機に瀕しており、世界の平和の為の戦い」と称し、『太平洋保安法』を制定した。
その後、世界各国が『深海棲艦』を危険視し、国連は対深海棲艦機関『SPKO(Sea peacekeeping organization)』を設立。深海棲艦撲滅を目指し、共同研究をすすめるのであった。
皇紀2676年
西暦2016年
現在、世界各地で『人型深海棲艦』が出現。日本政府は、『人型深海棲艦』を『深海棲艦』の中でも地位が高い存在であると定め、『姫』『鬼』とランク付けたのであった。
マイナスから始まる鎮守府【3】に続く
トーク中心になってしまい…。それもあり、なかなか天の声ができなくて悩んでいました。
それも含め、読み返してみると、なんだかなぁ…。アソコはこう書いた方が良かった、とか、ここは削除訂正したい!とか思っちゃったんですよ。なので、次回はもっと、濃く濃くドロッとしてやろうと思いましたね。
長々しくなりましたが、【3】もお願いします!
※ご要望がありましたら、コメントにてお願いします。
前が2万文字も行ってないのに新たにスレたてすな。
>>1
重いンゴ
>>1
新たにチャプターを増やし、
前スレを2万文字にまで増やしました。
大淀の主観から見た物語となっていますので、そちらも、なにとぞよろしくお願いします。