ある日のことだった。

　何気ない陽気の日にそれは起こった。

　そう誰もが喜び奇跡を見た瞬間。

「八時間キター！！」

　白い軍服を着た女性が奇声を上げる。

「ついに連合艦隊の主力が我が鎮守府に・・・・」

　高速建造材を使用し彼女に出会う。

「大和型戦艦一番艦、大和です。艦隊決戦の―――」

「いらっしゃい大和！！」

すぐさま抱きつく。

「ふっふぇ！？」

いきなりの出来事で驚く。いきなり抱きつかれ頬ずりされる。

「あっあの提督？　落ち着いて・・・・・」

こうして大和は着任した。

「とっいうわけで呉鎮守府の天ヶ瀬美咲です。階級は中佐。あと今いるメンバーを紹介しよう」

見たところ駆逐艦と軽空母に戦艦だけのようだ。

「電です。よろしくなのです」

「雷よ。困ったら頼ってね」

二人の駆逐艦。

「龍驤やよろしゅうたのむわ」

「鳳翔です。よろしくお願いいたします」

「千代田です。おねぇ共々よろしくね」

三人の軽空母。

「比叡です。気合入れていきます」

「榛名です。よろしくお願いいたします」

「扶桑です。山城共々よろしくお願いいたします」

戦艦が三人。

「まぁとりあえず今いるメンバーだ」

「現在は泊地や別の鎮守府などに出張している」

ホワイトボードにはそう言った面々のメッセージが大量に書かれている。

「すごいですねぇ」

その中で見知った名前があった。

「武蔵？」

「ああ君の妹は、鉄底海峡（アイアンボトムサウンド）で発見したため連れて帰ってきた」

「今あの子はどこに？」

「確か佐世保に行ったな。艤装のチェックもかねて」

「そっそうですか・・・・」

少し気を落とすようではあったが仕切り直しみんなに顔を向ける。そこには凛々しさが漂うような真っ直ぐな強い瞳があった。

「戦艦大和よろしくお願いいたします」

みんなから温かく迎えられた。これからの鎮守府において彼女は大きな期待と希望を胸にここでの生活を始めた。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　※

そして着任して数週間後。

「あの提督」

「ん？　どした大和」

羽ペンで資料にサインを書き続ける提督を見て話しかける大和。

「私、ここ最近演習ばっかりですよね」

「そうだね」

「艤装を外されますし」

身軽すぎて何か落ち着かない様子だった。常につけていた４６センチ砲は保管庫に管理されている。

「ウチは艤装の付けっぱなしは原則禁止からね。扶桑を見てみ？　大きいでしょ？」

「そっそうですね。私も大きいほうですけど」

「なんでや！　なんでそんな自慢するんや！」

バンと扉を開けて二人をにらむ龍驤がいた。

「あっあの何がですか？」

「白々しいで！　またおっぱいの自慢なんやろ！　うわ～ん！」

「あっ」

追いかけたが既に姿は見えなくなっていた。

「ええっとどうしましょうか？」

「ほっときなさい。ええっと何の話だっけ？　胸の話？」

ずこっと一瞬コケて「違います！」と返す。

「そうではなくて。何故私は、演習と資料整理なのかということです！」

「ああ、はいはい」

そっけない態度で相槌を返す。

「まぁ確かに出そうかとは思うんだけどさぁ～」

　

「ところで大和」

「はい？」

「バストいくつ？」

「はっはあぁぁぁぁ！？」

「いや～前から気になってたんだけどいくつなのかなぁってさ」

大和は顔を真っ赤にして「知りません！　そんな事、重要ではないじゃないですか！」と言ってそっぽむいた。

バンっ！と机をたたき大和に言う。

「最重要だろ！　言いなさい！」

「い・い・ま・せ・ん！」

大和は睨む。

だが提督は席を立ち大和に近づく。

「――仕方ない。実力をもって行使をしよう」

提督の手にはどこから出したのかロープとメジャーを取り出し大和に迫る。

「ちょっちょっと提督！」

じりじりと迫る提督。大和は下がりながら扉の距離を測る。

「だっ大丈夫だよ･･･。はぁはぁ･･･。いっ痛くしないから･･･。はぁはぁ･･･」

「もういろんな意味でアブナイのでやめてください！」

「もう遅いわぁ！」

飛びかかろうとしたその時だった。

扉の奥から「失礼します」言ってと入る姿がある。

「提督。艦隊が帰還しました」

任務娘が現れる。艦娘「大淀」それが本来の名だ。だが艤装がないため任務娘としての業務をおこなっている。

「ああ、わかった」

いつの間にか手に持っていた物を隠した提督は平然と答える。

大和は、胸を押さえ深く息を吐く。

「失礼します。比叡含む五名無事帰還いたしました！」

比叡を筆頭に入る五人。だが六人目の姿はなかった。

「ごくろーさん。あれ扶桑は？」

きょろきょろと見回すが扶桑の姿が見当たらない。

それを聞くと皆「あー」と声を上げる。

「大破で入渠中なのです」

電が答えると軽く頭を押さえる。

「そっかー仕方ないな。榛名は演習だし、他にいけるのは―――」

ちらりと大和に目を向ける。

「大和。本日１５００時をもって第一艦隊に配属ついでに旗艦ね」

「あと明朝０５００時をもって出航以上。んじゃそういうことで」

執務室から出て行く提督を見て唖然としてた大和は、次の瞬間。

「ええ～！」

大絶叫した。その驚きの声は食堂まで響いたという。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　※　

「今、すっごい声がしましたね」

「ええ。大和さんの声でしたね」

千代田と鳳翔が食堂で夕食の下ごしらえの合間にお茶をしていたところ大和の声が響いた。

「きっと提督がまた驚かせるようなことをしたんじゃないでしょうね」

「いえ、もしかしたら今日はお祝いになりますよ」

席からはなれ「今日は赤飯ですね」と言って台所に立つ。

「わっ私もやります」

夕食の時間になる雷と電が横断幕を持ってきた。千代田は「二人では届かないから」と言って艦載機を使い壁に引っ掛けた。

「出来たのです」

「よし後はみんなを呼ぶだけね」

「おねぇがいたらよかったな」

食堂の扉が開くすると「ただいま」と数人の声が聞こえる。

そこには山城、夕張、そして千代田と同じ服を着て銀髪を一つ結びにしている艦娘がいる。

「ただいま千代田」

「おっおねぇ！？　千歳おねぇ帰ってきたの！」

「うん思ったよりも早く帰ってこれたからね。はいお土産」

お土産と言って差し出したのは一升瓶「千代田」だった。

「あっこれ私のだわ」

背中に隠そうとしたが一瞬の隙をついて千代田が没収する。

「おねぇまさか遠征中に飲んだんじゃないでしょうね」

さっきまでの歓喜な顔ではなく鬼のような形相で千歳に睨む。

「まっまだ、まだ飲んでないよ」

「・・・本当に？」

じっと光のない目でこちらを見る。

「まぁいいけど。飲みすぎないでよ？」

「わかったわかった」

一升瓶を鳳翔さんに渡し席につく。

「山城さんどうかしたの？」

雷はきょろきょろしている山城に聞く。

「いえ扶桑お姉さまが見当たらなくて」

辺りをきょろきょろと見回す。

「たしかドックにまだいたような」

それを言うと「今、行きますお姉さま！」とものすごいスピードで出て行く。

その入れ替わりで提督が入室してくる。

「山城どうかしたの？　すごい勢いで出て行ったが」

「う、うんまあいろいろと・・・」

歯切れが悪いように答える。

鳳翔が「いつ作っていたんですか？」と電、雷に聞く。

「昨日なのです」

「私たちが用意しといたのよ」

雷は、胸を張って言う。対照的に電は、もじもじしながら言う。

「おお～。立派な横断幕だね」

“大和さんきかんおめでとうなのです”

提督はにこやかに二人の頭を撫でる。

「ふにゃぁ～」

「えへへへ」

※

「それでは、大和着任と旗艦の祝いを祝して―――」

「「「かんぱーい」」」

鳳翔のお手製のお刺身フルコースを一人一人箸でつまんでいく。熱燗を飲み交わす提督を見ていた大和は、ふと不思議に思った。

「提督は、どうして急に旗艦にしてくれたのでしょうか？」

その問いに鳳翔は応える。

「大和さん。一応口止めはされているんですけど提督はあなたを守っていたんですよ」

「守った？」

ますますおかしいと思った大和だった。何故守る必要性があるのか？　どうしてそうした

のか。

「実は提督さん。大本営から大和さんを引き渡せと言われていたんですよ」

「ええ！」

「そこで提督は大本営に啖呵を切ったそうですよ。

『大和は、私の家族だ！　彼女を兵器として見ないあんた達に渡せない！』

と言ったそうです」

ちらりと大和は、提督の顔を見る。

千歳と飲み比べしている提督の姿を見てとてもそういうことを言うような人には見えなかった。

ここに着てから大和は、ややしばらく秘書艦をやってはいるが基本は、不真面目の印象だ。書類にサインするのも遅い。作戦概要は鳳翔頼り。駆逐艦と昼寝もしくはゲームの二択しかしてない人だ。

「そんな人が・・・・」

そう呟くと提督が隣に座る。

「鳳翔さん。お水ちょうだい」

「はいどうぞ」

コップにいっぱいにあった水を半分飲み干し一息ついていた。

「あの提督」

「ん？　どしたの？」

「いえ、その、ありがとうございます」

頭にはてなを浮かべている提督は「どういたしまして？」と返した。

「さてでは、大和ホテル自慢のコンソメスー・・・・プ」

声のトーンが下がり何故か壁に向かい落ち込んでいた。

「大和？　もしかしなくても天然？」

自分からホテル言うなんておもしろいね」

周りがホテルやら何やらと笑っていた。

「ほっホテルじゃないです！　戦艦です！」

それからもドンちゃん騒ぎが続き九時になりお開きになった。

「はい！　じゃあ掃除してお開きにしようか」

酔いつぶれて半裸状態の千歳は、千代田に任せた。「だから飲み過ぎないでって言ったのに！」と肩を担いで出て行く。

空の一升瓶をケースに入れてお皿を流し台にとてきぱきと掃除をする。

「ねむいのです」

電が言うと雷「司令官！　電を寝かせてくるね！」と言って母親のように連れて行く。しかし提督は「雷なんか鼻息が荒かったけど大丈夫かな？」と何か別の心配をしている。

「じゃあ後は頼む」

自室に戻ろうとする提督が振り返る。

「大和。明日から頼むね」

それを聞いてさらに身が引き締まった。

提督が「じゃあおやすみ」と言って廊下の奥に消えていく。

　　　　　　　　　　　　　※

「提督！」

後ろから大淀が声をかけてくる。

「どしたの？」

「元帥からの電話です」

「了解。傍受は？」

「多分大丈夫かと」

それを聞いて帽子をかぶり。「やれやれ」と執務室に赴く。

「はい電話変わりました」

『よぉ首尾はどうだい？』

女の声が言う。

「上々よ。大和が手に入ったのは本当に幸運だったわ」

『けど上の連中まだ諦めていないぜ』

「あなたもその一人でしょうが」

『おいおい俺は、逆に支援してるんだぜ。それに今の艦隊運用は、誰のおかげかわかっているだろう？　天ヶ瀬提督』

お茶らけた言い方をしているが威圧感のような物を感じる。

彼女の名は、坂口提督。エリート出の元帥で提督の支援者の一人である。士官候補生時代の先輩でありタメ口で話し合える間柄。そして――――。

「分っていますよーだ。バカ姉貴」

『同い年でなおかつ義理の姉に対してとはいえバカ呼ばわりね～。しかも上官に対してその口・・・・』

声のトーンが下がる。

「溺愛されて歪まなかっただけましよ」

『ううっそうだな。まぁ無駄話はここまでにして本題に入るか。最近になって深海棲艦が活発化してきた』

「そう・・・・」

『驚かないんだな』

「まぁ何となく。最近そんな大きな戦闘が見られないしね」

予想は出来ていた。それ以前からほとんどの海域では駆逐艦、軽巡しか見かけないなどの報告が多く寄せられている。

最近では、漁師は「魚が安全にとれていいさね」と言われるぐらいに穏やかだった。しかし静か過ぎるとおもうところがある。それこそ何か大きな力が動いているとしか・・・・・。

『何かあればこっちにいる艦隊をすぐに動かすようするけど？』

「ありがたいけどこっちは人手がそれなりに足りてるから大丈夫よ。まぁとにかくこっちでもいろいろ注意しておくわ」

『気をつけろよ？　それよりやっぱり俺のところに来ないかい？　てゆうか男口調辛いお願いだから―――』

「じゃあねクソ姉貴」

勢い良く受話器を下ろす。

「何というかあの人らしいですね」

「まぁいつものことだし」

「でも大丈夫ですか？　大本営は、

また大和さんを・・・・」

「大丈夫よ。私とクソ姉貴で絶対みんなを守るから」

立ち上がり執務室から出て行く。提督は、「明日もがんばるぞー」と言って廊下で姿を消す。

　　　　　　　　　　　※

明朝０４５５時。

「ソウビチェックカイシー」

艤装にのっている工業妖精たちが最終チェックを開始している。

「砲弾の詰め込み終了」

ピンク髪の少女はリストに書きながら言う。

彼女の名前は、明石。ドックの整備員の一人で工作艦、艦娘である。彼女は大和の艤装のチェックでパーティには出席は出来なかったがそれが自分の仕事だと喜んで仕事にかかっていた。

「違和感無い？」

「はい大丈夫です」

それを聞いて安心し「あと最後に渡す物があるんだ」と言ってあるものを差し出す。

「傘？」

明石は、三脚の傘のようなものを差し出す。

「大和さん。肌白いでしょ？　一応渡しておくね」

「ありがとうございます」

「一応盾に使っても良いんだよ」と言って大笑いしている。

大和もつられたように微笑む。

「ソウビチェックシュウリョウ」

妖精たちが騒ぎ大和から離れる。

「艤装チェック完了。注水開始！」

旗艦大和、

二番艦　比叡、

三番艦　雷、

四番艦　電、

五番艦　千歳、

六番艦　千代田の順番で並ぶ。

『今回の目標海域は、南方海域の前面よ。大きい戦果よりも自分の命を捨てないように生きて帰りなさい！』

「「「「「「了解！！」」」」」」

大和は、すぅーと息を吸い込み大声を上げる。

「抜錨！　大和発進します！」

こうして彼女たちは、海へと出て行く。

白波を立て彼女たちは、西へと向かう。

艦これ戦記　第二章　集結南雲航空戦隊＜http://sstokosokuho.com/ss/read/828＞