2017-01-16 20:31:11 更新

概要

4章です。


前書き

注意事項
【勢い】
・ぷらずまさんと称しているだけのクソガキな電ちゃんの形をしたなにか。
・わるさめちゃんと称しているだけの春雨駆逐棲姫の形をしたノリとテンションの女の子。

もう矛盾あっても直せない恐れあり。チート、にわか知識、オリ設定、独自解釈、日本語崩壊、キャラ崩壊、戦闘描写お粗末、魔改造、スマホ書きスマホ投稿etc.

ダメな方はすぐにブラウザバックお願いします。

章が終わっている場合、更新があっても誤字脱字等々の修整のみです。すみません。


【1ワ●:増える人、変わる人】


 

1

 

 

陽炎「お久ね。よろしくー」

 

 

響「よろしく。響だよ以下略」

 

 

暁「やった。電と雷と一緒の所属ね!」

 

 

不知火「この不知火になんなりと」

 

 

初霜「金剛さん、榛名さん、瑞鳳さん……私もです」

 

 

提督「……見張りもありますよね」

 

 

一同「……」

 


響「お気になさらず」

 

 

瑞鶴「よし、これだけいれば私はそろそろ秘書官を降りていいわよね?」

 

 

ぷらずま「お前、秘書官としてなにかやりましたっけ?」

 

 

瑞鶴「……(メソラシ」

 

 

提督「……」

 

 

提督「龍驤さん、第2艦隊の司令官をお願いします」

 

 

龍驤「え、うち?」

 

 

提督「自分の他にもこの鎮守府に司令官をやれる人が欲しいのです。補佐官ですかね」 


 

提督「艦隊を複数に別けて出撃した場合のことを考慮して、と……」

 

 

提督「わるさめさんの件がありましたし、自分の身になにかあった場合、指揮を取ることのできる人を……」

 

 

龍驤「艦娘との兼任やな。ま、ええよ」

 

 

提督「初霜さんは第3艦隊の司令官をぜひ」

 

 

初霜「私が司令官ですか……?」ポカーン

 

 

提督「龍驤さんと同じく妖精が見えるうえ、必要な課程を修めていますので、就任自体は規則上問題ないかと」

 

 

提督「自分には素質があるように見えましたし……乙中将からは初霜さんは旗艦にしていたのは現場での判断力と分析力が優秀だったからだと」

 

 

提督「自分も同意ですし、龍驤さんのデータを参照してもらえば、その経験は現場でも活きると確信してもらえるかと」

 

 

初霜「提督のご命令とあらば」

 

 

初霜「でも、希望としてあくまで本職は艦娘でお願いしたいのですが……」

 

 

提督「そのつもりです」

 

 

初霜「あの、それと」

 

 

初霜「勉強をさせていただきたいので、秘書官の枠が定かではないのなら私に任せてはいただけないでしょうか?」

 

 

提督「了解です。では初霜さんとぷらずまさんはお残りください。他の艦娘の皆さんは解散で」

 

 

暁「電、雷知らない?」

 

 

ぷらずま「ほこり被ってる施設の場所を掃除しているのです。多分、ここの裏手の建物です」

 

 

暁「分かった。ヨンマルマルに間宮さんのところに第6駆逐隊集合なんだからね?」

 

 

ぷらずま「……分かりました」

 

 

響「それじゃまた後で」

 

 

陽炎「不知火、部屋に行くわよー」

 

 

不知火「荷ほどきですね」ヌイッ

 

 

初霜「私も少し外します。すぐに戻ってきますので」

 

 

2

 

 

初霜「えっと、着替えてきました」

 

 

提督「えっと、なぜ自分の制服の予備らですよね。ダボダボですし……」

 

 

初霜「え? だって司令官って皆さんこの制服、ですよね?」クビカシゲ

 

 

提督「……?」

 

 

初霜「えっと、それにせっかくの機会ですし」

 

 

初霜「……あっ」

 

 

初霜「勝手にお借りしてすみません!」

 

 

提督「い、いえ、そういうことではなく」

 

 

龍驤「多分、着てみたかったんやない?」

 

 

初霜「……」カア

 

 

ぷらずま「司令官さん、ぷらずまも用事があるのです」

 

 

提督「はい?」


 

ぷらずま「あのラブ勢代表格ともいえるエセ英国淑女に釘を差しに」 

 

 

ぷらずま「金剛ですからね。念のためです」

 

 

瑞鶴「うちではおちびがラブ勢じゃん」

 

 

ぷらずま「● ●」

 

 

ドオン

 

 

瑞鶴「……う……え?」

 

 

ぷらずま「今のは殺す」

 

 

瑞鶴「始まったー……」

 

 

提督「ぷらずまさん」

 

 

提督「お願いします。このようなところで瑞鶴さんを失いたくないので」

 

 

ぷらずま「……クソガ」ゲシッ


 

提督「……ああ、本を蹴飛ばして」

 

 

瑞鶴「なんかごめんね……」

 

 

提督「よくあることです……」

 

 

提督「初霜さんは大丈夫だと思いますけど、あの子はあまり刺激しないであげてくださいね」

 

 

初霜「はい。今後のために少々、ぷらずまさん? とのコミュニケーションの方法は考えておきますね」

 

 

提督「ええ。根は悪い子ではないかと。芯が少し邪悪に染まってるだけで」

 

 

提督「初霜さん早速で悪いのですが、夕方からの歓迎会で配るこの鎮守府(闇)の紹介資料を作成してあるので、人数分より少し多目に印刷しておいてもらえますか?」

 

 

初霜「はい、すぐに」

 

 

龍驤「二人、相性良さそうやね。瑞鶴もそう思わん?」

 

 

瑞鶴「そうだね。お互い遊びのない真面目なところが合うのかもねー」

 

 

提督「瑞鶴さん、まだ艦載機の扱いが上手いとはいえないので、鍛練は欠かさないように」

 

 

瑞鶴「わかってるって。ご飯食べたら演習場行くつもりだし」

 

 

瑞鳳「ところで提督、深海妖精が深海棲艦を建造しているという件なのですが……」

 

 

瑞鳳「対策、いや、終わらせる方法はあるのですか?」

 

 

提督「まだなんとも。上の指示待ちです」

 

 

提督「中枢棲姫勢力が何かしらの動きを見せるまでは平和、かもしれません」

 

 

提督「しかし、恐らく中枢棲姫勢力に目をつけられているのはこの鎮守府(闇)であると思われます。そういった意味も含めての皆さんの異動です」

 


提督「この余裕のある間に皆さんの練度上昇、および連携強化と資材確保に励みます」

 

 

3


 

瑞鶴「えー、皆さまこの歓迎会、恐縮ながら私、瑞鶴が」

 

 

雷「僭越ながら、じゃないの?」

 

 

卯月「アブー、あいつあれで大学通ってたらしいぴょん」

 

 

阿武隈「人の失敗を笑ってはいけませんっ」

 

 

瑞鶴「き、緊張してただけだし(震声」

 

 

瑞鶴「間宮さんがご馳走作っての歓迎会だし、無礼講でいいわよね。陽炎とかもう食べてるし」

 

 

陽炎「うんまい。つか歓迎される側の私達が準備してたっておかしくない?」

 

 

不知火「細かいことは気にしてはダメです。色々と特異な鎮守府ですから。榛名さんも手伝ってくれましたし」

 

 

榛名「いえ、構わないのですが、提督の姿が見当たりません……」

 

 

瑞鶴「仕事終わらせてから、行けたら行くってさ」

 

 

金剛「絶対来ないパターンネ!」

 

 

瑞鶴「まあまあ、来ないなら来ないで面白いことできると思わない?」

 

 

龍驤「ま、必要なことやね」

 

 

金剛「……?」

 

 

瑞鶴「うちの提督はあんまり艦娘とコミュしないタイプでねー、まあ、私達との関係をビジネスライクってスタンスなのよ」

 

 

瑞鶴「だけど、こっちとしては提督のこと知りたいわよね。だって命を預けるわけだし、人間的なコミュあってこそ信頼できると思うのよ」

 

 

金剛「意義なしデース!」

 

 

伊58「ゴーヤは一緒にお出掛けしたよ?」

 

 

金剛「デート、したのー?」

 

 

卯月「それ、うーちゃんとアブーのスカウトの随伴だからどっちかというと仕事だっぴょん」

 

 

瑞鶴「うちの提督、現段階でどんな風に思われているかざっくりと投票取ってみていい?」

 

 

瑞鶴「好き・やや好き・普通・やや嫌い・嫌いの4段階評価で、その隣には鎮守府への意見とか提督さんに対しての希望を書くとこあるから」

 

 

瑞鶴「あ、ちなみにこれは提督さんから許可もらってるし、本人も参考にしたいみたいだから遠慮なくー。名前は書かなくてもいいからねー」

 

 

…………………………


…………………………

 

…………………………

 

 

ぷらずま「わるさめさん…………?」

 

 

ぷらずま「好きとか法螺選択してんじゃねーのです……」

 

 

わるさめ「本心だゾ☆」

 

 

わるさめ「あの司令官襲った時に、口説き落とされちゃって」

 

 

ぷらずま「はあ……」

 

 

ぷらずま「妙な好意は抱かないほうが身のためです」

 

 

ぷらずま「あの人、私達をどちらかというと深海棲艦と考えているはずですから」

 

 

わるさめ「あんたも解答が私と同じじゃん?」

 

 

ぷらずま「たりめーなのです」

 

 

ぷらずま「好むところがなければ従いません」

 

 

わるさめ「あー……もちっと年頃の色気をまとったほーがいいっスよ……」

 

 

ぷらずま「そんなことより」スッ

 

 

ぷらずま「お集まりの皆さんに」スタスタ


 

ぷらずま「ぽんこつ空母もよく聞いておくべき話をします」

 

 

瑞鶴「おー、おちびが皆の前でなんかいうことあるの?」

 

 

ぷらずま「初霜さん」

 

 

初霜「あ、はい。このタイミングなんですね」

 

 

初霜「ホワイトボードと水性ペンを借りますね」

 

カキカキ

カキカキ

 

ぷらずま「この鎮守府(闇)の現状、センソー終結について」


カキカキ

 

 

ぷらずま「の」

 

 

カキカキカキ

 

 

ぷらずま「お話をしておくのです」

 

 

キュッ

 

 

4

 

 

ぷらずま「初霜さん、長ったらしいところはお願いするのです」

 

 

初霜「はい」

 

 

初霜「中枢棲姫勢力に大きな動きがありました。偵察隊によると活動海域に分散していた主力が集結しつつあり、中枢棲姫勢力との決着をつける大戦になると予想されます」

 

 

初霜「なぜわざわざ集まるのを待つのか。その前に各個撃破したほうが、というような疑問にはお手元の資料にアンサーがあるかと思いますので、置いておきますね」

 

 

初霜「深海妖精の発見と春雨さんからの提供情報により」

 

 

初霜「深海棲艦との戦争を終わらせる目処が立つかもしれません」

 

 

陽炎「……勝てば」

 

 

阿武隈「平和が訪れる?」

 

 

ぷらずま「…………」

 

 

初霜「春雨さんからの情報からして、深海妖精は特定の深海棲艦の指示で動いている可能性が高いみたいです」

 

 

わるさめ「む、私の情報を信じたの?」

 

 

わるさめ「確かに深海棲艦のアジトで建造っぽいこと行われてるって報告したけどさー」

 

 

わるさめ「まー、わるさめちゃんには妖精とか見えないし、そもそもアジトの内部とか侵入したら半殺しにされたから」

 

 

わるさめ「向こうの信用を得るためにもーって丙少将を襲ったんだゾー」

 

 

陽炎・不知火「……」キッ

 

 

わるさめ「なに? わるさめちゃんの情報提供のお陰で深海棲艦を滅ぼせそうなんだぞ?」

 

 

わるさめ「それに今は仲間だし、水に流してくれないかなー」

 

 

わるさめ「ごめんね☆」キャピッ


 

瑞鶴「右の大砲」ドンッ

 

 

わるさめ「ずいずい、いったああい!」

 

 

瑞鶴「仲間だと口にするのなら」

 

 

瑞鶴「その煽りは殴られて当然」

 

 

わるさめ「…………」

 

 

わるさめ「陽炎に不知火、気に食わないのならケンカ買ってやるぞー」

 

 

不知火「望むところです」

 

 

陽炎「今後のためにも白黒つけておこうじゃない」

 

 

初霜「……こほん」

 

 

初霜「わるさめさんの提供情報は甲大将が後日に裏付けを取ります」

 

 

榛名「大将直々、ですか」

 

 

初霜「深海妖精の発見と、深海棲艦発生の仕組みが判明したのはそれほどの快挙、と判断されましたから」

 

 

ぷらずま「上が美味しいところ取りなのです。発表時は真実は変わらず、その手段は表向きに改変され、将校の手柄になるみたいです」

 

 

ぷらずま「まあ、世渡りが下手な司令官さんなのですよ」

 

 

ぷらずま「この鎮守府に着任してからは軍で彼より貢献した司令官はいないのです。叩き出してきた功績は」

 

 

ぷらずま「豚を肥やす餌」

 

 

ぷらずま「まあ、それでもなんとも思ってないのでしょうね。出世欲もなにもない人ですから」

 

 

ぷらずま「この鎮守府(闇)は軍の縛りが薄く、比較的自由に動けていたからこそ、ですが」

 

 

ぷらずま「将校のやつらが楔を打ち込んできた」

 

 

ぷらずま「将校の兵力、そして乙中将との演習予定、結果は勝ちでしょうが、将校艦隊と互角以上に戦える私達はもはや今までのように心身に傷を負った欠陥品から、立派な戦力として数えられるのです」

 

 

ぷらずま「大人しくしてろ、のメッセージなのです」

 

 

一同「……」

 

 

ぷらずま「皆さん、ここの司令官を誤解していると思うのです」

 

 

ぷらずま「確かに丙少将のようにイケメンでも優しくもありません。乙中将のように前向きで明るくもなく、性格もお世辞にも良いとはいえません」

 

 

ぷらずま「ですが」


 

ぷらずま「私達のためを考えてくれる、というのは、沈ませないとか、優しくしてくれる、とか」

 

 

ぷらずま「そういうことじゃ、ないと思うのです」

 

 

ぷらずま「沈むのが怖いのなら、海に出なければいい話。優しくして欲しいのなら海から去って普通の人として友達を作ればいいのですから」

 

 

ぷらずま「それでも海で命を賭ける理由は深海棲艦との戦いで勝ち取るためでしょう」

 

 

ぷらずま「あの人はそこにおいて真摯なのです。それこそ深海棲艦とのラストバトル、だなんて見通しが出てきたのがその証拠なのです」

 

 

ぷらずま「ご安心を」

 

 

ぷらずま「もうすぐ終わるのです」

 

 

ぷらずま「なので、あの人にあまりキツいこと書くのはやめてあげて欲しいのです」

 

 

ぷらずま「変に思考されるのも差し支えますし」

 

 

ぷらずま「後、この鎮守府の現状ですが、資材少ないので遠征ガンバって欲しいのです」

 

 

ぷらずま「以上なのです」

 

 

雷「とりあえず電があの司令官のことすごい好きなのは分かったわ!」

 

 

ぷらずま「?」

 

 

ぷらずま「ああ、妙な方向に誤解されては困るのです」

 

 

暁「恋? 電は恋をしているの?」

 

 

暁「レディーね!」

 

 

ぷらずま「違うのです……」

 

 

ぷらずま「司令官として好きなのです。なので、悪い印象しかなさそうな皆さんに一応、伝えただけなのです」

 

 

響「私は別に嫌いじゃないよ」

 

 

響「改善して欲しいところはあるけれど」

 

 

不知火「不知火もです。合同演習の時からなかなか面白い司令官だと」

 

 

初霜「さて、皆さん書き終えたらこの箱に入れてくださいね」

 


【2ワ●:削ぎ落としたネジを探す旅】

 

  

1

 

 

提督「……」

 

 

龍驤「好きが4人。やや好きが4人。普通が3人に、やや嫌いが3人に、嫌いが2人」

 

 

提督「……キツいですね」

 

 

龍驤「あれ、キミのことやらかいい結果っていうと思ったわ」


 

提督「いえ、そこではなく、その隣の自分への要望、です」

 

 

『どうか自分を許してあげて欲しい』

 

『人としての心を忘れないで欲しい』

 

『もっと私を頼って相談して欲しい』

 

『自殺は思い止まって欲しい』

 

 

提督「なるほど、自分はなにかしらの闇を心に抱えていると思われているんですね……」

 

 

龍驤「ちゃうん?」

 

 

提督「別に闇なんて抱えてませんけどね……悩みは尽きませんが」


  

龍驤「でも、なんかそう見えるで。初対面の人も恐らくそう見えるよ……」

 

 

龍驤「明らかになにか抱えてそうなオーラ出してるもんキミ……」

 

 

提督「由々しき事態です」

 

 

提督「コミュ能力の欠如は自覚していたのですが」

 

 

提督「今後、作戦において信頼が必要になってくる場面が出てくるはずです。その時にお願いを聞いてもらうために」

 

 

龍驤「コミュすればええやん」

 

 

提督「……本とかで勉強しているんですけどね。自分、面白味がないので」


 

龍驤「そんなことはないけどなあ。まあ、相性ってのはあるで」

 

 

提督「特に異性は」

 

 

提督「理解しがたい部分が多く」

 

 

伊58「そういう話をするようになっただけ大分打ち解けた気がするでち」

 

 

龍驤「まー……」

 

 

提督「初霜さんとは相性は悪くないですね。榛名さんともなんとかなりそうですが、金剛さんとは円滑な関係を意識的に築く必要があります」

 

 

提督「自分のところの戦艦ですし、今後この一隻の力は当てにしますから」

 

 

伊58「一隻ではなく一人」

 

 

伊58「そういうところでち。特に金剛とかは気にするんじゃないかなー?」

 

 

提督「すみません……以後気を付けます」

 

 

龍驤「おしゃれしてきたら褒めるとか、そんな簡単なこと心がけたらええねん」

 

 

提督「……質問が」

 

 

龍驤「手帳とペン取り出した……」

 

 

提督「なぜ服装を褒める必要が」

 

 

伊58「え」

 

 

提督「自分が好きな服を着ればいいではないですか。ファッションの娯楽の本質は似合うから着るのではなく、好きだから着るものかと」

 

 

提督「自分に褒められたいから、着飾ってくるわけではないはずです」

 

 

提督「好かれていないはずですし」


 

龍驤「あかん、あかんでえ。瑞鳳、なんかいったって」

 

 

瑞鳳「うーん……そうですね」

 

 

瑞鳳「例えば、ですよ?」

 

 

瑞鳳「ここにお料理があります。別に提督さんに食べて欲しくて作ったわけではなく、お仕事として事務的にお出ししたとします」

 

 

提督「はい」

 

 

瑞鳳「それでも気になるから聞いてみたくはあるんですよ」

 

 

瑞鳳「美味しいですか、って」

 

 

提督「美味しいですよ?」モグモグ

 

 

龍驤「それやそれ! 聞かずともそれをいって欲しい乙女心やねんて!」

 

 

初霜「……」

 

 

伊58「初霜、どうしたんでち?」

 

 

初霜「い、いえ、提督はこのような砕けた話も出来る方、だったんだ、と」

 

 

初霜「あ、いえ、失礼しましたっ」

 

 

提督「いえいえ。自分、別にメリハリつけてるだけで機械人間でもなんでもないつもりです」

 

 

提督「黒や闇気味なのは否定しませんが……」

 

 

龍驤「後、ユーモアも欲しいなあ」

 

 

提督「欲しいですね」

 

 

瑞鳳「そういえば提督さん、名前はなんていうんですか?」

 

 

提督「…………名前、は」

 

 

提督「名字は青い山で、名前は、開く扉と書きます」

 

 

瑞鳳「あおやま、ひらと、さん?」

 

 

提督「……」

 

 

龍驤「なんかボケればよかったやん」

 

 

提督「……なるほど」メモメモ

 

 

初霜「ためになりますね」メモメモ

 

 

龍驤「はっつんも明日、気合い入れた私服にしたらどやー」

 

 

龍驤「褒めてくれるでー」

 

 

初霜「えっと、私服は少なくて……明日はこの制服で」

 

 

提督「似合っていますし、良いと思います」

 

 

初霜「……」ポカーン

 

 

初霜「…………」カアッ

 

 

龍驤「やればできるやんキミ!」

 

 

瑞鳳「この調子ならいけそうですね!」

 

 

提督「よし、そんな気がしてきました」

 

 

2


 

暁「司令官っ、漫画の図書館に行ってきたんだけど……」


 

提督「あー、そんなのありましたね。いかがなされました?」

 

 

響「暁がまだ司令官のことを怖がっているみたいでね、あなたのことを色々と知りたいみたいだ」

 


暁「この本、性格診断のご本をいくつか持ってきたのだけど、色々と質問してもいいかしらっ」

 

 

ぷらずま「●ワ●」ニタニタ

 

 

ぷらずま「暁お姉ちゃんこのサイコパス診断がいいと思うのです」

 

 

提督「……」

 

 

龍驤「よしキミのユーモア見せてみ!」

 

 

暁「そーいうのはいいから! 真面目に答えてもらわないと意味がないじゃない!」

 

 

響「お腹が減ればご飯を食べるといい」

 

 

提督「……なんなりと。どうぞ」

 

 

暁「サンタクロースが少年にサッカーボールをプレゼントしたけど、少年は喜びません。その理、」

 

 

提督「足がなかったから」

 

 

暁「ふえええええええん!!!」

 

 

提督「あれ、泣いて……? 答え知っていたのでサイコパスで答えた、そのユーモア……」

 

 

響「眠くなれば寝ればいい」

 

 

龍驤「それで笑って喜ぶの電ちゃんだけや……」

 

 

ぷらずま「●ワ●」キャッキャ

 

 

響「楽しければ笑えばいい」

 

 

提督「さっきから響さんがちょくちょく当たり前を教えてくるのはなぜ……」

 

 

響「理屈を手放して、当たり前や正直が出来るようになるべきだと思う」

 

 

提督「……、……」

 

 

響「そして私は眠い」

 


響「……zz」

 


龍驤「響これ寝たんか? 立って目を開けながら寝とるけど……」

 

 

龍驤「駆逐寮の寝床に運ぶねー。また戻ってくるわ」

 

 

提督「……お願いします」

 

 

3

 

 

提督「……暁さん」

 

 

暁「なによ、司令官のばーか……」グスグス

 

 

提督「合同演習でぷらずまさんがいった質疑応答内容を覚えていますか。そして自分が同調したことも」


 

暁「一言一句覚えてるわよっ」キッ


 

ぷらずま「……」

 

 

提督「間違っていると思いますか」

 

 

暁「当たり前よ。戦争終わらせる。そのために多くの犠牲者を出すことを躊躇わないだなんて、そんなの、本末転倒じゃない」

 

 

暁「司令官は本当に大事なモノを失ったことがないからそんな理屈をいえるのよ」

 

 

暁「きっとあなたは私より子供」

 

 

暁「いえ、人ですらない。きっと司令官に出来ることは機械にだって出来るわよっ」

 

 

暁「だって、あなたは誰かを本気で愛したことなんてないんだから!」

 

 

暁「『100万回生きたねこ』のご本でも読んできなさいよ、この人でなし!」

 

 

提督「……、……」ゴハッ

 

 

ぷらずま「吐血するほどですか」

 

 

暁「さようなら! もう寝るっ!」

 

 

提督「暁さん、待ってください」ガシッ

 

 

提督「礼をいいたい。ありがとうございます。大変、参考に、なりました」

 

 

暁「なにそれ、ぷんすか!」

 

 

タタタッ

 


提督「……まさか暁さんにいい負かされるとは」

 


ぷらずま「●ワ●」ニタニタ

 

 

ぷらずま「ま、少なくとも暁お姉ちゃんのは暴論です」

 

 

ぷらずま「私にはあんなことをいいません。それが暁お姉ちゃんのずるいところです」

 

 

ぷらずま「司令官さん、お友達と仲良くするのはいいですが間違った成長しちゃダメですよ?」

 

 

ぷらずま「それではおやすみ、なのです♪」


 

4

 

 

間宮「……あなたは」

 

 

間宮「子供を泣かせて楽しいですか?」

 

 

提督「そんな趣味は、ありません」

 

 

間宮「無自覚でやらかしているんですね。あまりこういうこといいたくないのですが、あなたは提督に向いていないと思います」

 

 

提督「軍学校時の教官からも、そういわれました。精進、します」

 

 

雷「司令官、見ていたけどすごーく頑張ってるわね、偉いと思う!」

 

 

間宮「……はあ、情けない人」

 

 

提督「……」ゴハッ

 

 

 

 

瑞鳳「瑞鶴ちゃん、提督と間宮さんって何かあったんです?」ヒソヒソ

 

 

瑞鶴「知らないけど……間宮さんの笑顔が怖すぎて……」ヒソヒソ

 

 

瑞鳳「提督さんがゾンビのような足取りで外の闇夜に……」

 

 

瑞鶴「あいつなりに頑張ってるみたいだし、フォローしてあげよっかな。それじゃお先ねー」

 


5

 

 

阿武隈「あの、なにか……?」

 

 

金剛「実はネ、乙ちゃんから頼みごとれてマース」

 

 

榛名「あの提督について、です」

 


阿武隈「といいますと」

 

 

金剛「この鎮守府を変えるために全力でバーニングラブしろとのことネ」

 

 

榛名「しかし金剛お姉様がバーニングラブするためには提督に対する愛情が必要不可欠です」

 

 

金剛「あの提督のいいところ教えて欲しいデース!」

 

 

榛名「人間的な魅力をぜひ!」

 

 

阿武隈「人としていいところ……ですか」


 

阿武隈「……、……」

 

 

阿武隈「宿題にしてください」キリッ

 

 

榛名「隙のない提督なんですね……」

 

 

卯月「聞いても分からないのなら、自分で見つければいい話ぴょん!」

 

 

卯月「悪戯してきました」

 

 

卯月「あいつは生真面目なやつでな、仕事終わりに大浴場でどっぷり風呂に漬かって考え事をするぴょん」

 

 

卯月「そこで入渠施設とは別にある大浴場の男と女の暖簾をすり替えて参りましたびしっ!」

 

 

卯月「ぷっぷくぷ!」ゲラゲラ

 

 

榛名「なるほど、ラブコメ的展開から裸の付き合いですね!」

 

 

金剛「卯月、攻めすぎネ……!」

 

 

阿武隈「卯月ちゃん……」



阿武隈「今すぐもどしてきなさい。そういう心に傷を負わせかねない悪戯をするのなら」



阿武隈「私は卯月ちゃんと仲良くしません」



卯月「ぷ、ぷっぷくぷ……」



卯月「了解びしっ……」



6


 

陽炎「ねえ不知火」

 

 

不知火「なんでしょう?」

 

 

陽炎「この鎮守府の説明もらったけどさ、ホワイト過ぎない? 想像していた実態と全く違うわよね?」

 

 

不知火「確かに想像以上にホワイトですね。ここの鎮守府はスケジュールこそありますが、遠征も出撃も任意、加えて哨戒すらも」

 

 

不知火「司令の『お願い』」

 

 

不知火「我々が拒否する場合のみ電さんとわるさめさんが全てを行うとのことですが……さすがにそこまで甘えるわけにも行きません」

 

 

不知火「のびのびと休暇を過ごしているかのような。確かに支援施設の側面もあるわけですが、鎮守府としては」

 

 

不知火「油断し過ぎではないか、と」

 

 

陽炎「丙さんのいっていたような場所ではないわねえ……ある意味怖いけど」

 

 

初霜「それで陽炎さん、用件は一体なんです?」

 

 

陽炎「暁型は置いといて、私と不知火、金剛さんに榛名さん瑞鳳さんに初霜さん、それと龍驤さん」

 

 

陽炎「みんな、この鎮守府を監視したり探り入れるよういわれてるわよね?」

 

 

龍驤「うちはまあ、元帥ちゃんに頼まれてるけど、そんな大した報告してないで。ここの提督はヤバい案件は上に報告しっかり入れとるし」

 

 

瑞鳳「確かに想像していたような人ではないかも?」

 

 

瑞鳳「龍驤さんがそういうのなら、まあ、悪い人ではないんでしょうし」

 

 

瑞鳳「龍驤さんはストレートに顔に感情出す人ですし」

 

 

龍驤「司令官向いてなかったんかな」

 

 

瑞鳳「愛嬌です愛嬌」

 

 

龍驤「それはそれで子供に見られとるみたいで傷つくんやけど……」

 

 

龍驤「でも、探りは入れたいなあ。正直あの子は結果を出しすぎてる」

 

 

金剛「執念ってセンソー終わらせることじゃないノー?」

 

 

金剛「合同演習の時に龍驤もあの場で聞いたはずデース」

 

 

龍驤「それの動機が気にならん?」

 

 

金剛「確かに本心とも限らない? センソーは良くないことだからとか、建前はいくらでも用意できるネ」

 

 

榛名「あの」

 

 

榛名「間宮さんは最古参と聞きました。なにか知らないのでしょうか?」

 

 

間宮「うーん、特には」

 

 

間宮「聞けば答えてはくれそうな気もしますけど……」

 

 

陽炎「なにか気になることとかは?」

 

 

間宮「あの提督さんが着任した時から1つありますね」

 

 

間宮「電ちゃんがなつき過ぎてるというか……」

 

 

間宮「ゴーヤちゃんが異動してくる辺りに、提督さんに聞いてはみたんですよ」

 


龍驤「そこらのことはうちも知らんとこやなあ……」

 

 

間宮「私にはまだ素っ気なくて距離を取っているというか、そんな風だと思っていますが……」

 

 

間宮「あの人には本当に、なんだか一目見た時から電ちゃんが楽しそう、というか、そんな感じが漏れてました、といいますか……」

 

 

間宮「今でもすごく気になっています」

 

 

不知火「司令官に好意を抱くというのは珍しくはないと思いますが」

 

 

龍驤「せやね。あの子はあーいうタイプが好きなだけやないの?」

 

 

間宮「いえ、皆さんもあの子のこと、知っていますよね」

 

 

間宮「あの手の人が着任したのは初めてではないんですよ。それこそ電ちゃんと春雨さんが一緒にいた提督は人体実験して、あの身体にしたようなので……」

 

 

金剛「何度か提督をクーリングオフしていたとかいう話は知っていマース」

 

 

榛名「今の提督みたいなタイプも来ましたが、クーリングオフされたと?」

 

 

間宮「はい。でも、あの人のようになついていたわけでもなく、むしろ嫌っていた節がありますし」

 

 

間宮「ええ……あの人に関しては1つだけいえます。なにか『特別』です」

 

 

間宮「今の提督は確かに有能な面もあると思います。でも、あの人体実験方法的に」

 

 

間宮「素晴らしいとは口が裂けてもいいません。深海妖精も電ちゃんがいたからこそ、発見できたわけですし」

 

 

間宮「深海棲艦との戦いを終わらせるのにすごく貢献はしています。でもそれは追々の話です」

 

 

間宮「電ちゃんの重要性は上も理解していたようで、運用のために、優しい、有能、黒い、色々な提督が派遣されたんですよ」

 

 

間宮「くどいようですが、今の提督に対しては、本当になついているように見えて」

 

 

間宮「それも着任した瞬間から」

 

 

一同「……」

 

 

榛名「一目惚れですね!」

 

 

金剛「榛名のその発想はなくもないケド。むしろロマンチックで私は大好きデース!」

 

 

陽炎「でも思考停止よねー」

 

 

榛名「榛名はそれでも大丈夫です!」

 

 

初霜「では着任以前から交流があったという線はどうでしょう?」

 

 

龍驤「作戦でもなんでも着任以前から二人が一緒になったことはないはずやよ?」

 

 

不知火「……そう言えば」

 

 

不知火「駆逐艦電はかなりの古参ですよね」

 

 

陽炎「19……何年? そんな浸水日早かったっけ?」

 

 

不知火「軍艦ではなく艦娘としてです」

 

 

不知火「第6駆は世間でも提督からも人気の高い駆逐艦です。どこに誰がいるかも耳に入ってくるほどに」

 

 

不知火「あの電は不知火が兵士になった時すでに色々な作戦に参加していたかと」

 

 

龍驤「15年前、うちより6年も前やで。あの子が妙に子供らしくない一面があるのはやっぱ歳月なんかなあ」 

 

 

金剛「……、……」

 

 

金剛「ちょっと待つネー……」

 

 

金剛「提督は何歳でどこ出身?」

 

 

金剛「電ちゃんと同じ○○とかは」

 

 

龍驤「出身は覚えとらんけど、歳は27やったかな……」

 

 

龍驤「あの時」

 

 

龍驤「…………あれ」

 

 

龍驤「電ちゃんは12歳やけど」

 

 

初霜「15年前から電艤装をつけていたわけですから」

 

 

不知火「我々は建造されると解体されるまで体は老いませんね」

 

 

陽炎「27-15で12ね」

 

 

瑞鳳「12+15で27でも」

 

 

榛名「同じ歳ですね!」

 

 

間宮「まさか昔馴染み……」

 

 

間宮「でも二人にそんな素振りは……」

 

 

陽炎「うーん、私と不知火が調べるわ」

 


金剛「私も調べたいデース!」


 

陽炎「間宮さん、提督の個人データなんとかならないかな?」



間宮「は、はあ。前に大淀さんからもらったものなら取ってあります」



陽炎「ありがとー。初霜も秘書官だし、聞いてみてくんない?」

 

 

初霜「私はその、あまり疑うような言動は控えますし、諜報のような真似も……」

 

 

初霜「信用したい、と思いますので」

 

 

瑞鳳「気に入ったんですねえ」

 

 

初霜「えっと、その」

 

 

初霜「……」コクン

 

 

瑞鳳(かわいい)

 

 

7

 


瑞鶴「おっす、嫌われてるわね。そんなところで壁に背中預けて座ってると風邪引くわよー」


 

提督「……」ビクッ

 


瑞鶴「別に追撃入れに来たわけじゃないから。ほら、チューハイ缶」



提督「それはどういった趣向の攻撃でしょうか……」

 

 

瑞鶴「攻撃じゃないわよ……あんたさー、コミュ能力というか人を理屈でしか理解していなさすぎ。だから齟齬が出る。暁のいった通りね」

 

 

瑞鶴「でも確かに納得したよ」

 

 

瑞鶴「あんたは私達を物扱いしたほうが優秀に戦える提督だ。思うところはあるけど、別に私はそれでもいいわ」

 

 

瑞鶴「戦争を終わらせる。皆、その過程のための方法に文句いうけどさ」

 

 

瑞鶴「別にこの戦争で人が死んでも、街で死ぬ人間の比じゃない。私に声かけたあの時、あんたがいった通り」

 

 

瑞鶴「どこ行っても人は戦って己と戦い抜いた挙げ句に殉職する。同感したわね。確かにそう。皆だって自分の意思でこの戦いに参加してる」

 

 

瑞鶴「あんただってそう。戦争を終わらせるため。じゃあさ、何のためにそうするの?」

 

 

瑞鶴「平和のためじゃないわよね。私は理論派じゃないけど、戦争が平和を養わないことくらい分かるよ?」

 

 

瑞鶴「誰かのため、っていえるようなやつならこんなに拗れてないだろーし。自分のため?」

 

 

提督「誤解しないで欲しいのですが」

 

 

提督「自分は誰かに憧れたことも、女の子に見惚れたこともあります……」


 

瑞鶴「ほう……あえていおう」

 

 

瑞鶴「なんか意外だ」

 

 

瑞鶴「そんで提督さん、お酒飲ますと割とペラペラ喋ってくれるタイプなのねー」

 

 

提督「……そう、かもしれません」

 

 

提督「ただその時のことをもう思い出せません。あまり大して気にかけていなかったのだと思います。それが本当に好意だったのかも、分かりません」

 

 

提督「背が大きくなるにつれて、自分はどこか浮き彫りになっていきました。皆のことが理解できなかった」

 


提督「どうしてそれで泣くのか。どうしてそれで怒るのか。どうして笑うのか。なぜそこまで本気になれるのか」

 

 

提督「理屈としては分かります。がむしゃらになにかに打ち込んでも、彼等のような熱は灯らなかった」

 


提督「段々と生きている気がしなくなりました。人生を模索していく十代によくある悩みです」

 

 

提督「心で理解できないから、せめて理屈で知ろうとするようになっていきました」

 

 

提督「本を、読み漁りました」

 

 

提督「著者の人間性が出ますから。その人のいる場所、自分のいる場所を繋ぐ道標です」

 

 

提督「それもまた理屈でしかなくて、周りとの溝は埋まらず、退屈なやつだと、面白くない、と時に非道だと、批難され、浮いていった」

 

 

提督「自分からしても彼等は同じだった。面白くなく、退屈だ。ですが、受け入れるよう勉めました」

 

 

提督「まずなによりも、相手の全てを受け入れることができない」

 

 

提督「自分の器の小ささを恥じてきたつもりです」

 

 

提督「本当に苦しみました。この本気の苦しみのお陰で、得たものもあります。その代償に削がれていったのは、自分のこの亡霊のような容姿が表している、と思います」

 

 

提督「死にたくなった。死は救いなのではないか、とすら思った」

 


提督「この深海棲艦との戦争の本に出会いました。そのきっかけは身近な女の子がこの戦場に駆り出されたのが切欠で、手に取ったものです」

 

 

提督「なんて素晴らしい出来事なのか、と。これは自分を生かす場所になり得るのだと」

 

 

瑞鶴「……?」

 

 

提督「この戦争は確かに人が死にます。しかし、街と人口と照らし合わせ、その死亡理由を比較した場合」

 

 

提督「格段に」

 

 

提督「自殺現象が少ない」


 

瑞鶴「待て待て待て」

 

 

瑞鶴「あんた、もしかして死にたくないからって理由でこの戦争に身を投じたの……?」

 

 

瑞鶴「それ、おかしいよ……」

 

 

提督「ぷらずまさんとはまるで逆です。街で自殺しないために、この海へと身投げしました」


 

提督「思えば、阿武隈さんをスカウトした時の言葉と同じです」

 

 

提督「がむしゃらに雨の中を駆けて進みました。この乾いた心身に潤いを与えるために」


 

提督「そして唯一、否定し、受け入れるのを拒むことが出来た」

 

 

提督「この戦争が続けば自分は自殺しないでいられるのだ、と思うスタートの甘えきった自分を拒む」

 

 

提督「ならば戦争を終わらせることこそ否定となる」

 

 

提督「その否定こそが自分が人生で初めて持った確かな熱量なのです」

 

 

提督「この輪廻戦は終わらせます」

 

 

提督「正直、理屈でしかあなた達の心を理解できません。この先、自分は心から謝ることはあっても」

 

 

提督「本気で礼をいうことは難しいかも、しれません」

 

 

提督「あなた達が要求しているものは、この戦争において兵士と司令官の信頼関係を深めるための相互理解」

 

 

提督「それは作戦完遂までの過程を効率的にする要素のそれ以上でもそれ以下でもない。それならば必要性がある。だから自分はそうします。その価値観を受け入れ、歩み寄りましょう」

 

 

提督「歩み寄ろうとして突き放され、理解しようとして罵倒を浴びる」

 

 

提督「分かりません。どこをどうすればいいのかも……分かったのは」

 

 

提督「自分は義務教育からやり直すべき欠陥品であるということ」

 

 

瑞鶴「別にあんたは間違ってはないよ。好まれるもんでもないわ。それは分かっている風ね。それがあんたの場合は……」

 

 

瑞鶴「ドストレートにこっちに伝わんのよ」

 

 

瑞鶴「ふっつーに考えて物や駒扱いされて喜ぶやつなんて希少でしょーが」

 

 

瑞鶴「あんたもうダメだ。亡くしたそのネジはもう作れないわね」

 

 

瑞鶴「せめて思い出すしかない」

 

 

瑞鶴「あんたのその見惚れた女の子は今どこにいるのよ。会って話でもすれば。なんかあの頃の気持ち」

 

 

瑞鶴「思い出せるかもしれない」

 

 

提督「無理だと思います。会っても、気付かなかった。そんな頃の気持ちは全く覚えなかった」

 

 

提督「彼女は27年、生きてます。成長を止めても自分と歳は同じ」

 

 

提督「15年も前になります」

 

 

提督「先の戦いで『運命を感じました』といわれて」

 

 

提督「彼女だと思い出した」

 

 

瑞鶴「……誰?」

 

 

提督「あの日、海へと駆り出されたんです」

 

 

提督「駆逐艦電として」

 

 

瑞鶴「お、ちび……?」


 

瑞鶴「マジかよそれ……?」

 

 

瑞鶴「なら、あいつに……」

 

 

提督「それは許しません。彼女の言葉を聞きましたね。解体不可能の彼女の信念を」

 

 

提督「あの時の思い出なんて、ないに等しいです。たまたま当番が同じで1週間程度、花壇に水やりした程度」

 

 

提督「そんな昔話をしてどうするというのです。あの時、確かに自分は彼女に欠片の好意を抱きましたが」

 

 

瑞鶴「提督さんあの時さ、なんとかしてあげたいっていった言葉、そうしたいからっていったけど」

 

 

提督「今の彼女に言葉として伝えることがどれ程残酷なことか、瑞鶴さんにも分かるはずです」

 


瑞鶴「そうあろうとしているんだと解釈したわ。それでも大きな1歩じゃないかと思った」

 


提督「もしも彼女が今患っている『クソガキの欠陥』を治したその時、ああ、そんなこともあったね、と、その程度の会話になるべきことです」

 


瑞鶴「違った」

 

 

提督「今の彼女にそれを伝えても返ってくる言葉が予想できないあなたではないはずです。普通として生きていた頃の話はぷらずまさんにとって……」

 

 

瑞鶴「……、……!」

 

 

瑞鶴「提督さん!」グイッ

 


提督「胸ぐらつかみあげないでください。息が出来なくて苦しく……」

 

 

瑞鶴「知ってるんじゃねーか」

 

 

瑞鶴「それだよ」

 

 

提督「瑞鶴さん、なにを……」

 

 

瑞鶴「その気持ちが!」



瑞鶴「愛しいって! 思いやるって!」

 

 

瑞鶴「気持ちなんだよ!」

 

 

提督「……、……」

 

 

提督「………、………?」

 

 

提督「よく分かりません」

 

 













めんどくさ! 右の大砲!



 

 

ドガン!

 

 

提督「ぶっ……」バタリ

 

 

瑞鶴「今の話は内緒にしとくけど」

 

 

瑞鶴「そこで寝て風邪でも引いてろ馬鹿野郎!」



8

 

 

提督「……」

 

 

『愛してる byいかづち』

 

 

雷「(*ノ▽ノ)」

 

 

提督「このお手紙はなんですか」

 

 

雷「だって愛してるとか言葉にすると恥ずかしいじゃない」テレテレ

 

 

提督「……」

 

 

雷「あのね司令官、一人で悩むことはないのよ。人の愛は世界を救うの。あなただって例外じゃない」


 

雷「まずは素直な気持ちを伝えることが大事。そうでしょ?」

 

 

雷「だからね、甘えてもいいのよ。その全てを私は受け入れる覚悟があるわ」

 

 

提督(今世代の第6駆怖いなー……)


 

雷「今日はたまの休みでしょ。私が初霜と執務を少し片付いてあげるから、瑞鶴さんと街に行ってきなさい」

 

 

提督「お言葉に甘えて。ですが、少しだけ自分しか片付けられない仕事があるので、早起きしたんです」

 

 

提督「今日は龍驤さんも休みですからね。阿武隈さん達の遠征部隊のお見送りも……」

 

 

ガチャ

  

 

初霜「あ、提督と雷さん、おはようございます。今朝は早いのですね」

 


提督「おはようございます」

 

 

雷「おはよう。初霜さんはここでもずっと鉢巻きしてるのねえ」


 

初霜「魂の象徴ですから」キリッ

 

 

提督「ここのルールの通り比較的緩いですから、服装は風紀を乱さない程度にご自由にどうぞ」

 

 

提督「お分かりかと思うのですが、決してこの鎮守府は任務において生易しくはないので……」

 

 

初霜「お構いなく。伊達に乙中将の第2艦隊旗艦を務めてはおりません」

 

 

初霜「なんなりと」

 

 

提督「……」

 

 

提督「ここの棚に確か……これですね」

 

 

雷「あ、それは私に頼って作ったデータね」

 

 

初霜「雷さんが……?」

 

 

提督「うちのやり方です。乙中将のところとは明らかに違い、別方向だと思うので、参考程度に」

 

 

初霜「これは、乙中将の第1鉢巻き艦隊、の……?」

 

 

初霜「個人データ……?」

 

 

初霜「あ、演習に備えて、ですね」

 

 

提督「はい。夕立さん、神通さん、扶桑さん山城さん、飛龍さん蒼龍さん」

 

 

提督「個人の趣味嗜好、経歴、今までの戦闘記録、その他もろもろです。兵士となる前の情報もあります」

 

 

提督「例えば今世代の山城さんは艤装を身に付ける前、ヤンキー経歴が。なかなかケンカっ早い人です」

 

 

初霜「……?」

 

 

提督「扶桑さんとは実姉妹。艤装効果も加わり、扶桑さんに対して甘いです。そして怒りっぽい。なので」

 

 

提督「例えば扶桑さんを捕まえて盾なり脅しなりクラッシュトークなりするのはそれなりに効果的です」

 

 

初霜「」

 

 

提督「その反応がまだ甘いんです。これはルール違反ではありません。スポーツでもラフは立派な技術の1つとして確立されています」

 

 

初霜「し、しかし、そんな真似……」

 

 

提督「暴力はダメなことです。しかし1部例外です。あえて大袈裟に言わせてもらいますね……」

 

 

提督「親の愛の鞭や、スポーツにおいては違います。相手の足をひっかけ転ばしフリーキック。服をつかんでフリースロー。格闘技においては」

 

 

提督「相手の命を殺めても罪に問われないケースさえあります」

 

 

提督「それがこの鎮守府(闇)のやり方です。そうですね、スポーツマンシップに則りますと」

 

 

提督「ルール内で形振り構わず全力を出して勝利をもぎ取りに行く」


 

提督「初霜さん、その思考回路に切り替えて乙中将との演習において作戦を考えてみてください」


 

提督「殺し合いの実戦におきましては正々堂々に凝り固まる頭はあなたの命はもちろん、仲間の命も、作戦自体を危険に晒します」

 

 

提督「ましてや中枢棲姫勢力は会話が可能で人の心にも知識があります」

 

 

提督「軍学校も兵士の若さや、今の世の中の風潮を無視できず、ここらの教えが教官によっては甘いです。自分はそれが貴重な兵士の殉職に関係する部分だと考えます」

 

 

提督「ですので演習から徹底します。ここにおいてぷらずまさんの思想は間違っておりません」

 

 

提督「戦闘において、初霜さんのタメにもなると自分は思います」

 

 

雷「私は別にいいと思うわよ。乙中将だってその辺り対策しない人ではないし、なにより全力で相手しないと失礼だし」

 

 

雷「そういう人でしょ?」

 

 

初霜「一理、ありますね」

 


提督「ただあくまで敬意を持って、です。人間を明らかに道具だと判断するのは控えましょう」

 

 

提督「そこら辺を考慮しないがために瑞鳳さんには……(メソラシ」

 

 

雷「あれはダメね。ダメの中のダメ。私が司令官のところに来ようと思った理由だもの」

 

 

提督「左様ですか……」

 

 

提督「それではちゃっちゃと執務を片付けますか」

 

 

9

 

 

提督「夜通しやってたのですね」

 

 

陽炎「おはよ……」



不知火「ございます……」

 

 

提督「おはようございます。自由には責任がつけます。そこら辺、駆逐艦といえど容赦はなく。陽炎さん、不知火さん」

 

 

提督「わるさめさんと夜通し戦うのは構いませんが、今日の遠征任務は変わらず9時からです。後、3時間30分程ですが、睡眠をお取りください」

 

 

陽炎「大丈夫よ。3時間も寝れたら余裕。駆逐艦のあるあるよ……」


 

不知火「はい。しかしわるさめさんに……」

 

 

陽炎・不知火「100回やって1回も勝てなかった……」

 

 

提督「夜戦装備があるとしても、夜のステルスギミックを二人で相手するのが間違いでしょうね……」

 

 

陽炎「空が白みかけてもそうよ。あいつの駆逐棲姫艤装の速度と回避性能、本家越えよ。イカれてる……」

 

 

不知火「射撃精度がおざなりでしたが、補って余りある性能……」

 

 

提督「ぷらずまさんの同種ですからね。クールタイムにさせればガクッと戦闘能力は落ちるんですけど……」

 

 

陽炎「司令、私達でわるさめに勝てる?」

 

 

提督「演習形式、しかも二人だけでも可能です。どんな手段を使っても、というのならいくつか考えがあります」

 

 

提督「同士討ちは禁止」

 

 

提督「なので勝つまでやる。それだけです。わるさめさんは気分屋なところがありますので、いつか勝ちの目が出るはずです」

 

 

提督「回数こなすのが嫌なら鬼畜艦の精神に堕ちてもらう必要はありますけどね……」

 

 

不知火「それは難しいです……」

 

 

陽炎「くそー……さすがに人の心は失いたくないわね……」

 

 

わるさめ「気分によっては普通に負けたり帰ったりするっス……」

 

 

わるさめ「つーかカゲカゲとヌイヌイはザコすぎなー。お前ら丙んとこでも遠征とかばっかやらされてたろー」

 

 

陽炎「まあ、確かに暁と響も含めて遠征や哨戒メインだったけど……それなりに深海棲艦も沈めてきたわ」

 

 

不知火「将校の第3艦隊です」

 

 

わるさめ「丙少将のところだし、どうせ安全重視してトラブルもそう大して見舞われていなさそ。いいことだけど、死線を潜らなきゃねー」



わるさめ「1発で砕ける駆逐は特に」

 

 

わるさめ「お前ら中枢棲姫勢力幹部とやればすぐにあの世行きだゾ☆」

 

 

陽炎・不知火「後3時間やれ」

 

 

提督「お二人とも大丈夫ですか?」

 

 

陽炎「全く問題ないわ。それに司令の指示は全て『お願い』だって聞いたけど?」

 

 

不知火「司令の指示に従わないわけではありません。しかし、今回は不知火の裁量で引き続きやらせていただきたい」

 

 

提督「そうですか。ではご自由に」

 

 

わるさめ「3時間だけなー……やべ、テンション落ちてきたから負けるかもしれねっス……」


 

提督「ところでわるさめさん、鹿島さんの件ですが、協力していただけますね」

 

 

わるさめ「うん、わるさめちゃんがんばるー」ヒャッハー

 

 

わるさめ「練巡は要るしね。香取のやつはかなり先になるみたいだし、鹿島っちはこの鎮守府(闇)の、いや」

 

 

わるさめ「司令官のためになるからね、任せなさーい」


 

提督「助かります」

 

 

不知火「あ、瑞鶴さん来ました。おはようございます」

 

 

瑞鶴「はよー。あんたらはまさか夜通しわるさめとやってたの。根性あるわねー」

 

 

陽炎「私服なのね。サイドポニーだと雰囲気変わってて可愛い」

 

 

わるさめ「羨ましっス。わるさめちゃんも街に行ってお買い物したーい」

 

 

瑞鶴「提督さんからはー?」

 

 

提督「……、……!」ハッ

 

 

提督「とてもよくお似合いだと思います。魅力のあまりつい言葉を忘れておりました」

 

 

瑞鶴「その淡々とした事務的口調を止めてよね……」

 

 

わるさめ「さすがとしか。こいつ本当にモテないタイプっス……」

 

 

提督「ところで現地集合の時間は午後からなのに、お早いですね。街に用事が?」



瑞鶴「確か提督さん、午前は講習会行くんだっけ。どうせ暇だしついでに乗せてってもらおっかなって」

 

 

提督「構いせんが退屈ですよ?」

 

 

瑞鶴「モーマンタイ。そんな何時間もかかるもんじゃないわよね。スマホでも弄って待ってるわよ」

 

 

10

 

 

瑞鶴(やば、そういえば充電不十分だ。スマホの電池なくなりそう)

 

 

瑞鶴(そーいえば、市民会館って、成人式で来たんだっけ)

 

 

瑞鶴(つっても、艤装つけてると、成長止まるし)

 

 

瑞鶴(はあ、翔鶴姉に会いたい)

 

 

瑞鶴(色々と犠牲払うのよねえ)

 

 

瑞鶴「……ジュースでも買ってこよ」

 

 

11

 

 

『自動車免許講習会場→』

 

 

瑞鶴(ん、ざわついてるな。終わったのかな。覗いてみるくらいなら怒られないよね……)

 

 

通行人「やっと終わったー」

 

 

瑞鶴(終わったんだ。じゃ入ってもいいよね)

 

 

チラッ

 

 

婦警さん「田中秋晴さーん」

 

 

瑞鶴「……あれ? あの最前列で座ってる後ろ姿」コツコツ

 

 

瑞鶴「龍驤じゃん?」

 

 

龍驤「!?」

 

 

龍驤「ず、瑞鶴。お前、なんでここに……」

 

 

瑞鶴「いや、提督さんが鹿島との待ち合わせ時間より早く出て、講習会に出るって。私は電車代ケチって乗せてきてもらった」

 

 

瑞鶴「あんた免許取ってたんだ?」

 

 

龍驤「ま、まあね。この空間に、て、提督さんもおるん?(震声)」

 

 

瑞鶴「どこかにいると思うけど」

 

 

龍驤「のど乾いたから飲み物買ーて来てくれん? 奢るからさ」チャリン

 

 

瑞鶴「いきなりパシるんじゃないわよ……まあ、いいけど」

 

 

婦警「みるくせーきさーん」

 

ザワザワ

 

瑞鶴「……」

 

 

瑞鶴「名前w」

 

 

龍驤「人の名前を笑ってはあかんでー」

 

 

瑞鶴「あんた、提督さん張りに顔色悪いけど」

 

 

婦警「みるくせーきさーん」プルプル


 

婦警「み、る、く、せ、え、き、さーん!」

 

 

婦警「いませんかー!」

 

 

龍驤「……」ダラダラ

 

 

瑞鶴「…………」

 

 

瑞鶴「まさか」クルッ

 

 

龍驤「瑞鶴」ガシッ

 

 

龍驤「自販はそっちやないで」ニコ


 

瑞鶴「……」ダッ

 

 

龍驤「待ち! そっちには!」

 

 

龍驤「悲しみしかあらへんよオ!」

 

 

瑞鶴「龍驤、あんた……」

 

 

龍驤「……」プルプル

 

 

瑞鶴「飲み物ミルクセーキでいい?」

 

 

龍驤「うああああああ!」

 

 

瑞鶴「静かにしなよ、迷惑じゃん」

 

 

龍驤「誰にもいうなや! いうなよ!」

 

 

瑞鶴「はいはい。そういえばあんた司令官時代も龍驤って呼ばれてたわね。あれ、もしかして本名で呼ばれるのを嫌……」

 

 

龍驤「うるさいうるさい、うちは龍驤さんや!」


 

瑞鶴「まあ、私は可愛い名前だと思うわよ?」

 

 

龍驤「……」

 

 

瑞鶴「みるくせいき」

 

 

瑞鶴「ぷっ、くっ」プルプル

 

 

龍驤「笑い堪えてるやん!」

 

 

瑞鶴「っふ……ふう。抑えたわよ。それで提督さんはどこだろ」

 

 

瑞鶴「確か青山だっけ?」

 

 

龍驤「そやなあ」

 

 

龍驤「下は開く扉と書いて」

 

 

龍驤「ひらと、やったかな」

 

 

婦警「青山……」

 

 

龍驤「お、来たんちゃう?」

 

 

婦警「オープンザドアさーん」ップ

 

 

龍驤「(゜ロ゜;)」

 

 

瑞鶴「これはさすがに無理w」

 

 

瑞鶴「ぷっ……オープンザドアは……」プルプル

 

 

瑞鶴「みるくせいきを耐えた婦警さんが追撃の餌食に」プルプル

 

 

提督「……」ソソクサッ

 

 

提督「瑞鶴さん、来るなといったのに……」

 

 

提督「それにまさか龍驤さんまでいたとは……」

 

 

提督「……」

 

 

瑞鶴「いつまで扉の前で立ってるのよ」

 

 

瑞鶴「ハリアップ」

 

 

瑞鶴「オープンザドア」プルプル

 

 

提督「知られたくはありませんでしたが、自分は散々ネタにされてきたので動じません」

 

 

龍驤「瑞鶴、お前覚えとけや……」

 

 

龍驤「分かるよ。うちはキミの気持ちがすごく……」

 

 

瑞鶴「ごめん、ほんとにごめん。っぷは」プルプル

 

 

瑞鶴「鹿島のスカウト全力で協力するから」

 

 

瑞鶴「今は許して……」プルプル



【3ワ●:鹿島艦隊の悲劇と中枢棲姫勢力】

 


瑞鶴「龍驤も乗ってくの?」

 

 

龍驤「練巡は必要やからね。それにうちも休みやし、哨戒は暁響ゴーヤ瑞鳳金剛榛名がやってくれてるし」

 

 

龍驤「鎮守府には初霜とわるさめと電のやつがおるし、大丈夫や」

 

 

龍驤「アブー卯月陽炎不知火雷は遠征やったかな。ま、キミと瑞鶴だけじゃ鹿島の要らん傷えぐりかねんから」

 

 

龍驤「ここに加わるわー」

 

 

提督・瑞鶴「失礼な」

 

 

提督「しかしなきにしもあらず。お二人方、自分は少し発言に配慮が欠けてしまう時がありますので」

 

 

提督「フォローお願いします」

 

 

提督「彼女が解体を希望した理由はその悪評ゆえです。精神的外傷により、現役から引いた人です」

 

 

提督「彼女が練巡として鍛えた艦娘」

 

 

提督「1年間で撃沈率40%」

 

 

提督「あの鹿島さんは死神の練巡、とか、身内の深海棲艦と、揶揄されていたそうです」

 

 

瑞鶴「噂は知ってるわね……」


 

龍驤「うちも知ってる。あれは鹿島のせいじゃなく、不運が重なった結果」

 

 

龍驤「現場での撃沈は(仮)も含めて司令官の責任や」

 

 

龍驤「鹿島がいまいち練巡として結果を出せずにいたから、責任が飛び火したようなもんやん」


 

提督「それはあくまで事後処理で」

 

 

提督「実にきな臭い事故です」

 

 

提督「練習航海中、旗艦を鹿島とした艦隊は鎮守府正面海域でレ級、ネ級を含めた艦隊と遭遇した模様です」


 

瑞鶴「……」


 

提督「そこからは鹿島さんを除いた艦隊の全滅、そしてその間にどういった内容で全滅したのかはわるさめさんの証言ですが」

 

 

龍驤「本人は鹿島っち殺すって脅されたから拉致られたんやろ?」

 

 

提督「みたいですが、わるさめさんはそこ以外あまり覚えていないみたいで、鹿島さんは頭が真っ白でなにも覚えておらず、思い出せもしない、と」

 

 

瑞鶴「さすがにそれはないんじゃないかな。自分を除いた味方が全滅でしょ。わるさめのやつは置いといて」

 

 

瑞鶴「うちの阿武隈と卯月がキスカでのこと忘れたっていってるようなものよね。むしろ一生忘れない最悪な記憶よ」

 

 

提督「そうです。あのレ級とネ級との会話をし、なにか隠している可能性が高いです。レ級とネ級は割と幼稚な面があるようなので、なにか中枢棲姫勢力の機密を口走った可能性も」

 

 

提督「まず、そのレ級とネ級は中枢棲姫勢力幹部。確定的です」

 

 

提督「ぷらずまさんやわるさめさんの司令官と繋がっていたと思われます。しかし、なぜあの時あんな場所に彼等が現れたのか。これは相手があの知能レベルであることを考えると」


 

龍驤「偶然ではなさそうやね」

 

 

提督「はい。しかしわるさめさんと鹿島さんを除く4隻、」

 

 

瑞鶴「怒るわよー」

 

 

提督「……失礼。4名が轟沈です。先の阿武隈さん達のキスカ戦でも4名が殉職です。あの司令官ならそれが不味いことだと分かるはず。鎮守府をかなり徹底的に調査され、全てが明るみになる危険が出てくる、と」

 

 

提督「あの司令官は自分よりも頭は回りますが、自分と違ってかなり保身的な傾向が見受けられます。そんな彼女があそこで4名を沈めるのをよし、としたわけではないでしょう」

 

 

龍驤「中枢棲姫勢力にしてやられたってこと?」

 

 

提督「ええ、中枢棲姫およびリコリス棲姫の知能レベルは天才の類です。先の戦いで乙丙連合軍の探り、そしてわるさめさんの証言であの二人が核であることも分かりました。ここは将校の間でも意見に食い違いはなかったようです」

 

 

提督「あの中枢棲姫幹部にだけ焦点を当てますと、人間自体を傷つけるのを嫌っています。周りの深海棲艦を使ってそれを隠し、誤差の範囲だと我々を上手く騙していました」

 

 

提督「あのわるさめさんはこちらを試すための刺客だと断定。そして『わるさめさんを裏切らせる』ことを目的とした襲撃です」

 


提督「彼女の目的を知っていて、それを可能とする情報をこちらが有しているかの探りのためだと思われます」

 

 

提督「ではわるさめさんという情報の塊を与えてどうするのか」

 

 

提督「わるさめさんから向こうの幹部の人柄も大体判明しました。深海棲艦の形をした人間と捉えるべき存在です」

 

 

提督「そこの判断、今までの中枢棲姫勢力、ぷらずまさんが語ってくれたように、あの司令官と情報の交換をしていた足跡からして」

 

 

提督「何のためかは知りませんが、こちらサイドと協力関係を結びたがっている可能性があります」

 

 

龍驤「断定は出来んね。向こうがなに考えているか分からん以上、それこそ巧妙な罠の危険性もあるやん」

 

 

提督「ええ。なのでしばらくの安息。向こうから何らかの意思表示を待つために設けられた時間でもあります」

 


提督「わるさめさんは本当に肝心なところを覚えていない様ですが、恐らく鹿島艦隊の悲劇は」

 

 

提督「あの司令官最大の『してやられた』です。中枢棲姫勢力が取引相手との立場を明確にするために証拠品そのものであるわるさめさんを確保したのだと思います」

 

 

提督「そこから完全に保身や情報の隠蔽レベルがかすかに下がっている、焦りと受け取れる言動もあります」

 

 

瑞鶴「なるほどなるほど……」

 

 

提督「深海妖精はいました。彼等は主に深海棲艦側に与する存在です」

 

 

提督「中枢棲姫勢力は深海棲艦。そしてわるさめさんいわく中枢棲姫とリコリス棲姫には妖精可視の才がある、と。恐らく自らの建造行程を目撃、その瞬間から深海妖精の存在を知っていたと思われます」

 

 

龍驤「そのことなんやけどさ」

 

 

龍驤「君の説やと『艤装に人間を適応させる』で深海棲艦の知能レベルは比較的、低いんやろ?」


 

龍驤「あのレベルの知能を持つ深海棲艦が産まれる可能性はあるの?」

 

 

提督「なにしろ深海妖精自体が未知の部分があるので可能性はありますが、かなり低い、と自分は」

 

 

提督「自分の論に穴があるか、それとも中枢棲姫勢力幹部は深海妖精以外の原因で知能が覚醒した存在ではないか、と自分は思います」

 

 

提督「ここらは深海妖精の調査で後々判断できます。陸地に誘える方法が分からない今、甲大将率いる江風さんが出動して深海妖精に探りを入れるみたいですね」

 

 

瑞鶴「それで鹿島艦隊のことだけどさ、わるさめを鹵獲するのが目的だったのなら、あの場で4人を沈める必要はなかったよね?」

 

 

龍驤「そやな。口封じなら鹿島だけ見逃したのもおかしいし」

 

 

提督「こう考えるのが妥当です。まず深海棲艦艤装を展開したわるさめさんは強い」

 

 

提督「なので鹿島さんを殺さない、の取引により、わるさめさんの抵抗を封殺した。しかし、戦って自らの力を示しておかねばわるさめさんが抵抗してくる危険性があるので、4名を贄とした」

 

 

提督「まあ、いつも通りの自分の説ですが」

 

 

提督「4名は深海棲艦化したゆえに死体が見つからないのではなく、資源として中枢棲姫勢力に回収されていることもあり得ます。あの勢力が4名も殺す、という手段を取ったのは少し疑問です。他にやりようはあります」

 

 

提督「その疑問を思考しますと」

 

 

提督「彼等は通常の深海棲艦とは違います。中枢棲姫勢力と複数回戦っていた丙少将の報告書ではあの深海棲艦の一部は通常よりも治癒のレベルが高いと」

 

 

提督「中枢棲姫勢力は特異です。そこのネタも個体差による偶然と切って捨てるべきではありません」

 

 

提督「恐らく再生、自己治癒とはまた別にあなた達と同じく入渠のシステムのような手段を使える」

 

 

提督「あなた達が艤装を直すのと同じ。しかし、あなた達は人をベースにしているので艤装は資材で直せ、肉体は自然治癒はもちろん入渠で格段に効率的な速度で戻る」

 

 

提督「艤装をベースとした彼等は艤装に治癒力があり、ある程度は資材で直せます。しかしあなた達が頭を吹き飛ばされたら死ぬのと同じく限界があるかと」



提督「そして彼等の肉は、艦娘でいう艤装の外付けであるため、必要なのは」

 

 

提督「『人間』という資材」

 

 

瑞鶴「なにそれ……虫酸が走る」

 


提督「深海棲艦についている肉部分でも可能ではあると考えますが、そこはあくまで深海棲艦。兵力的にこちらサイドを使う判断をすることに不思議はありません」

 

 

提督「ここらは中枢棲姫のやり方でしょうかね……リコリス棲姫はママと呼ばれるほどに命を慈しむ深海棲艦みたいですから」

 

 

提督「中枢棲姫のほう、こいつはかなり性格が自分と似ている気がしますね……」

 

 

提督「……鹿島さんは深海妖精や中枢棲姫勢力に関しての有力な情報を持っていると、自分は見ています」

 

 

瑞鶴「鹿島のトラウマをえぐるみたいで気が進まないスカウトね……」

 

 

龍驤「しゃーないよ。その情報にはこちらの兵士の命はもちろん、戦争の勝敗にすら関わってくるかもしれへんのやし」

 

 

龍驤「上手くやらんとあかんね」

 

 

提督「そうですね。今回、自分は鹿島さんにかける言葉が少なすぎます」

 

 

龍驤「今は鹿島なにしとるんー?」

 

 

提督「マンションの管理人と、そのマンションに併設されているコンビニで働いているみたいです」

 

 

瑞鶴「世間話から始めるかー」

 

 

龍驤「そやね。まず本題に入る前に空気を軽くしなあかんよね」

 

 

提督「お願いします」

 

 

提督「では出発しますか」

 

 

ガゴッ

 

 

提督「……ギアを間違えて」

 

 

瑞鶴「運転下手かよ……」

 

 

龍驤「乗り上げたで……」



【4ワ●:欠陥鹿島(仮)「うぷぷぷぷ」】

 

 

1

 

 

――――ありがとう、ございますっ。

 

 

――――鹿島さんの指導のお陰で

 

 

――――私、砲雷撃戦で活躍できるように、なりました!


 

――――それはよかったです。

 

 

――――みんなが、生きて帰って来ることが、すごく――――

 

 

――――私は嬉しいんです。

 

 

鹿島(仮)「……」ポケー

 

 

常連さんA「おっと、ごめんよ」サワッ

 

 

鹿島(仮)「い、いえ……」

 

 

鹿島(仮)(おしり触って……)

 

 

店員さんA「か、かっしー、レジのお客様のお相手お願いします」

 

 

鹿島(仮)「はい、ただいまー」

 

 

不良君「鹿島さん」ズイッ

 

 

不良君「今日、何時上がりっすか」

 

 

鹿島(仮)「ええと、そういうのは、ちょっと、困ります……」

 

 

不良君「LINEだけ教えて? ね? しつこくしないからー」

 

 

鹿島(仮)「い、いえ、ですから……」

 

 

鹿島(仮)(この人は、本当に毎日来て……)

 

 

鹿島(仮)「ええと、私、夜からお昼までなので……」

 

 

不良君「すごく静かでいいお店知ってるよー。空くのは夕方からで」


 

鹿島(仮)(つ、疲れます……)

 

 

2

 

 

鹿島(仮)「買い物も終わり、もうすぐ、家に」フラフラ

 

 

通行人A「お前、なに見てんの?」

 

 

通行人B「いや、深海棲艦の誕生の仕組み、判明したんだってさー」

 

 

鹿島(仮)「…………」

 

 

鹿島(仮)(そういえば、商品の新聞の見出しにあったなあ……疲れて手が伸びなかったけど……)

 

 

鹿島(仮)(センソーの終わりを叩きつけた)

 

 

鹿島(仮)(快挙、です)

 

 

ジムトレーナー「右!」

 

 

パアアアン!

 

 

ジムトレーナー「次!」

 

 

鹿島(仮)(ジム……トレーナー)

 

 

鹿島(仮)(ああ、練習巡洋艦時代の私はあんな風に、皆を導いて……)ウルッ

 

 

――――この役立たずめ。


 

――――君と、姉の香取が教鞭を取った二ヶ月のデータ。


 

――――艦隊の練度数値が40も違うのはどういうことかな。

 

 

ジムトレーナー「次の試合のセコンドだけど、俺がつくから」

 

 

鹿島(仮)「……セコンドみたいに」

 

 

――――ハッキリいうとだね。

 

 

――――君が艦隊にいてもいなくても

 

 

――――まるで変わらないんだ。

 

 

――――鹿島の適性者は稀少ではあるから長い目で見てきたが

 

 

――――次の派遣先の育成艦隊が同じ結果なら――――

 

 

鹿島(仮)「練習巡洋艦時代も」

 

 

鹿島(仮)「今と大して変わりません……」

 

 

鹿島(仮)「眼がグルグルしてきました……」

 

 

鹿島(仮)「うふふ……うふ、ふ」

 

 

トゥルルル

 

 

鹿島(仮)「はい鹿島です」

 

 

店員さんA「かっしー助けてー! Bさんが今日休むって連絡が来たので、他の子にかけてみたんですけど、誰も入れないみたいで!」

 

 

店員さんA「店長も来られないみたいで。かっしーはマンションのほうは大丈夫です?」

 

 

鹿島(仮)「ええ、大丈夫です。分かりました。戻ります」

 

 

鹿島(仮)(これからの時間は、よくクレームつけてくるおじさんが来ますね)

 

 

鹿島(仮)「ああ、私はトレーナーでもセコンドでもなく、ましてや選手でもなくて……」

 

 

鹿島(仮)「あのサンドバッグだあ……」ウルウル

 

 

2

 

 

――――そう、悪いけど。

 

 

――――この子達の死体、もらうわね。

 

 

鹿島(仮)「っ!」ガバッ

 

 

チュンチュン

 

 

鹿島(仮)(……朝です)

 

 

鹿島(仮)「目覚めが、悪いです……」

 

 

――――鹿島さん、朝ですよ!

 

 

――――毎日、夜遅くまで勉強しているから、寝坊しちゃうんですよっ。

 

 

――――おにぎり作ってきたので、どうぞー

 

 

鹿島(仮)「……」

 

 

鹿島(仮)「静かなのは、嫌いです」

 

 

鹿島「うふ、うふふ」

 

 

鹿島(……テーブルの上に郵便物、置きっぱなしでした)スッ

 

 

鹿島(仮)「……えっと、これは……」

 

 

鹿島(仮)「対深海棲艦海軍、から……?」

 

 

鹿島(仮)「復帰の、お誘い……?」

 

 

鹿島(仮)「いまさら」

 

 

トゥルルルル


 

鹿島(仮)「うふふ♪」

 

 

 

 

 

 

 

鹿島(仮)「うぷぷぷぷぷ」グルグル

 

 

2

 

 

ぷらずま「わるさめさん、どこに行くのです?」

 

 

わるさめ「うーわ、正面玄関でわざわざ張ってたの?」

 

 

ぷらずま「お花を眺めていただけなのです」

 

 

わるさめ「電みてーなこといいやがってー。お花が好きとか可愛い駆逐艦を演じてるわけ?」

 

 

ぷらずま「虫です」

 

 

わるさめ「?」

 

 

ぷらずま「蕾から花に移って蜜を吸う虫を眺めていたのです」

 

 

わるさめ「うーわ、不思議ちゃん属性がついたんだー……」

 

 

ぷらずま「で、わるさめさん、私達が勝手に外に出て問題でも起こせば」

 

 

ぷらずま「司令官さんのクビが飛びますが?」

 

 

わるさめ「ちょーといいや。見張りとしてあんたも来れば。問題を起こさなきゃいいんでしょ?」

 

 

ぷらずま「●ワ●」ハ?

 

 

わるさめ「●ω●」ア?

 

 

ぷらずま「兵器ですよ。生かされているだけでもありがたく思えなのです」

 

 

ぷらずま「私達が出ないのが最も良策なのですよ?」

 

 

ぷらずま「はわわ、もしかしてわるさめさんは」

 

 

ぷらずま「頭が悪いのです?」

 

 

わるさめ「鹿島さんでしょ?」

 

 

わるさめ「私達あの人の指導を受けたことあるよねー」

 

 

わるさめ「色々あって私は失踪したし、今もかなり情報操作されてるし、あんたと違って言動の規約もあれば誓約書も書かされたぞー」

 

 

わるさめ「あの人、わるさめちゃんのこと死んだと思ってるゾ☆」

 

 

わるさめ「直接会って話したほうがいいんじゃない?」

 

 

ぷらずま「ダボが」

 

 

ぷらずま「んなの司令官さんが伝えますよ。それでなにか思うところがあるのなら向こうから来るのです」


 

ぷらずま「一応聞いてやりますが、外出許可証は?」

 

 

ぷらずま「なければ通さないのです」

 

 

わるさめ「とう!」

 

 

わるさめ「はい、あんたも1歩だけど、門の外に出たー」

 

 

ぷらずま「……」

 

 

ぷらずま「こういうセンソーをなめた態度はヘドが出るほど嫌いなのです」

 

 

ぷらずま「どうせわるさめさんはもう情報も隠していないので、殺しても阻止します」

 


わるさめ「調子に乗るなよー」

 

 

わるさめ「やってみるか……?」

 

 

初霜「はいストップです!」

 

 

初霜「提督からわるさめさんを出さないようお願いされていますし、鎮守府(闇)が壊れるためぷらずまさんの暴走した場合、なんとか止めるよういわれています」

 

 

初霜「同士討ちは禁止。無駄な出費をなくすため、艤装展開してケンカもダメです。この鎮守府(闇)のルールは頭に入っていますね?」

 


ぷらずま「●ワ●」

 

 

ぷらずま「分かっているのです。このダボがなにもしなければなにもしないのです」

 

 

ぷらずま「ですが初霜さん、秘書官だからといってあまり調子に乗った口を叩くのは止めて欲しいのです♪」ジャキン

 

 

初霜「了解」ビシッ

 

 

わるさめ「あー、もうだっるー……」

 

 

わるさめ「あいあい。私が大人になるよ。はっつーん、わるさめちゃんは大人しくお留守番してるっス……」

 

 

わるさめ「間宮さんに飯の作り方教えてもらおっかな。ぷらずまも来るか。お前も女の色気でも出すために家事のひとつくらい覚えればー?」


 

ぷらずま「……」

 

 

わるさめ「はいスルー……つまんねーよー。司令官さっさと鹿島っち釣り上げて帰ってこねーかなー……」

 

 

ぷらずま「つまんねーのは私も同じです。司令官さんがいればなにか私にやること寄越すのですが……」

 

 

わるさめ「司令官の部屋、行かね?」

 

 

わるさめ「意外とむっつりで、えろ本とかあったりしてー。キャハハ☆」

 

 

ぷらずま「断言します。ねーのです」

 

 

わるさめ「でも男じゃーん。男はオープンかムッツリのどちらかだと思うんだよね」

 

 

わるさめ「ある、に賭ける」

 

 

わるさめ「100万」

 

 

ぷらずま「ない、に賭けます」


 

ぷらずま「200万」

 

 

わるさめ「テメー、払えよ?」

 

 

ぷらずま「わるさめさんこそ」

 

 

わるさめ「まあ、そんなに持ってねーから司令官にねだって払うネ☆」

 

 

ぷらずま「構わねーですが、私の取り立ては帝愛グル真っ青です」

 

 

初霜(提督……なんて苦労人)

 

 

初霜(秘書官である私が、あの人の力になってあげないと)フンスッ

 

 

初霜(まずは提督を信じることっ)

 

  

初霜「ないに賭けますっ!」フンスッ

 

 

初霜「全財産っ!」


 

3

 


龍驤「高そうなお店やけど、大丈夫なん?」

 

 

提督「まあ、なんとか。一見高くつきそうな料亭ですが、自分のような庶民の懐にも優しいお値段です」

 

 

龍驤「へえ、今の世の中は色々せな生き残っていけへんのやなぁ」

 

 

龍驤「街中も戦場やで」

 

 

瑞鶴「まー確かに海と鎮守府の行き来生活は色々と疎くなることもあるわね。龍驤もラフな格好止めてファッションに気使えばいいじゃん?」

 

 

瑞鶴「もとは可愛らしいんだし、着飾ればかなりのものだと思うのよね」

 

 

龍驤「興味ないといえば嘘になるけど今は止めとく。可憐過ぎて提督が惚れて恋愛してまうやん?」

 

 

瑞鶴「口を開くと服が死にそうだけどさ」

 

 

龍驤「一言余計や……」

 

 

提督「さてお二方、気を引き締めてください。仕事です」

 

 



 

鹿島(仮)「すみません。お待たせ、しました」

 

 

4

 

 

龍驤「龍驤さんやで」

 

 

瑞鶴「5航戦の瑞鶴でーす!」

 

 

鹿島(仮)「はい。鹿島、です。本当の名字なのでそう呼んでいただいて構いません。よろしくお願いいたします」

 

 

提督「提督の青山です」

 

 

提督「鹿島さん、まずは4名も轟沈した鹿島艦隊の悲劇、黙秘していることを教えてはいただけ、」

 

 

瑞鶴「しばらく寝てなさい。右の大砲」バキッ

 

 

龍驤「今のは褒める。ようしばいた」

 

 

瑞鶴「鹿島さーん、私も解体してさ、この提督さんに声をかけてもらってまた海に戻ってきたのよねー。この龍驤は司令官に転向してまた艦娘にね」

 

 

龍驤「そやね。阿武隈と卯月は知っているんちゃう? 二人もまた艤装を身につけて一緒に戦ってくれとるでー」

 

 

鹿島「知ってはいますが、私はお二人が解体申請をした後に配属されたもので、交友自体はあまり……」

 

 

瑞鶴「あ、そうなんだ」

 

 

龍驤「色々あった鎮守府みたいやね」


 

鹿島(仮)「軍に申し上げた通り、覚えていないんです」

 

 

龍驤「……いや、それは嘘やね」

 

 

瑞鶴「重苦しくない? もっと和んでから……」

 

 

龍驤「いや、鹿島がええなら必要ないわ。うちに任せとき」

 

 

瑞鶴「あんたは我が強いわねえ……」

 

 

龍驤「効果的な口止めを行えるほどの知能を持った深海棲艦やね?」

 

 

鹿島(仮)「お答えできません」

 

 

龍驤「いーや、答えられるはずやで。鹿島が黙秘するのは深海棲艦をかばってのことではないはずやし」

 

 

龍驤「誰かのためやろ?」

 

 

龍驤「鹿島以外は轟沈とのことやけどさ、死体が見つからないことの多いうちらの死亡判定が正確性に欠けるのは、まあ、鹿島も知るところ」

 

 

龍驤「遭遇した深海棲艦は1名を拉致していったんやね」

 

 

龍驤「それを口外すれば身の安全は保証しない、とかなんとか適当な脅しに屈したんちゃう?」

 

 

鹿島(仮)「……」

 

 

瑞鶴「拐われた子はすでに保護されているわよ?」

 

 

鹿島(仮)「……え?」

 

 

瑞鶴「駆逐艦春雨よね?」

 

 

龍驤「めっちゃ元気やで」

 

 

瑞鶴「あいつは元気過ぎるわね……」

 

 

鹿島(仮)「ほ、本当ですか!?」ガタッ

 

 

龍驤「事情があってあいつのことは大事にされてないねん。一般には公表されてもいない。知らないのは当然やね」

 

 

瑞鶴「特異な深海棲艦化をしているから、あの春雨がその春雨であるかどうかは鹿島さんが会って確かめてみてもらうのが確実ねー」

 

 

龍驤「少なくとも妖精はあの春雨を駆逐艦春雨とは認識しておらんから、春雨艤装は新造されて保管されとるよ」

 

 

鹿島(仮)「……ええ、よろしければ彼女に会いたい、です。謝らなければならないことが、あまりにも」

 

 

鹿島(仮)「多すぎます」

 

 

鹿島(仮)「軍は深海妖精を、発見したのですよね」

 

 

鹿島(仮)「この戦いは終わる、のでしょうか?」

 

 

提督「もちろんです」ムクリ

 

 

鹿島(仮)「私、春雨さんの生存を聞いてオーケーのお返事をしようと思っていたのですが」

 

 

鹿島(仮)「やはり断らせて、いただきます」

 

 

提督「……む?」

 

 

鹿島(仮)「……練巡なら、香取姉をお薦めします。例え何ヵ月待ってでもあの人の教えのほうが結果は出ます」

 

 

鹿島(仮)「本心を申し上げますと私は暁の水平線を、やはり海で見たいです」

 

 

鹿島(仮)「ですけど、あなた達が戦争終結に真摯であるのなら、私の勝手な望みで足を引っ張るわけには行きませんから」


 

鹿島(仮)「強い人達をさらに強くするのは、私には荷が重いです」

 

 

提督「いえ、まあ、確かに……」

 

 

提督「個々に目を見張る能力はあるんですが……(メソラシ」

 

 

龍驤「うちらは強いで(メソラシ」

 

 

瑞鶴「卯月と龍驤や将校兵士の即戦力加入で大分マシになったとは思うけど、方針的に胸を張れない強さはあるわよね(メソラシ」

 

 

鹿島(仮)「……?」

 

 

提督「自分の鎮守府の艦娘のデータです。色々と抱えている子達なので、それを見て答えを考えて欲しく……」

 

 

鹿島(仮)「気になりますけど……」

 

 

瑞鶴「そうね、ゴーヤは知ってる?」

 

 

鹿島(仮)「伊58ですよね?」

 

 

瑞鶴「魚雷の命中率は90%以上」

 

 

鹿島(仮)「すごいじゃないですかっ!」

 

 

瑞鶴「主に0距離で発射するから」

 

 

鹿島(仮)「」

 

 

龍驤「演習では撃沈させてこない、というマナーを逆手に取って沈むまで戦わせて隙を作ったり、沈んだと見せかけて背後から奇襲、そして騙し討ちや……阿鼻叫喚やったで……」

 

 

龍驤「瑞ほ……同じ艦娘を人質に取ったりな」

 

 

瑞鶴「私は空母だけど、どちらかというと殴り愛が得意ね。艦載機ではなく、素手で」


 

鹿島(仮)「!?」

 

 

提督「……結果は出しています」

 

 

提督「基礎の部分で劣っているところは形振り構わずで補っているせいです」


 

提督「後日、乙中将と演習があります」

 

 

鹿島(仮)「あの乙中将、ですか」

 

 

提督「来ていただいても構いません。実際に確かめてもらえれば……」

 

 

提督「自分はまこと勝手ながら鹿島さんを調べたうえでお願いしております」

 

 

鹿島(仮)「ならばご存じのはずです」

 

 

鹿島(仮)「私は歴代鹿島のなかで断然トップの欠陥を所有していると」 

 

 

鹿島(仮)「練巡として機能、しないんです。私の教鞭は毒にはなっても薬にはなりません」

 

 

提督「ご心配なく。あなたの指導内容も把握しております。その指導方法はメンタル的な部分にこそ効力を発揮すると思います」

 

 

提督「それに失礼ですが、あなたが欠陥であることは承知のうえ。ならばあなたに意志があるのなら」

 

 

提督「鎮守府(闇)こそが、相応しいと思います。この自分も含め」

 

 

提督「共に歩んでいけると思います」

 

 

提督「この先の海へ進むためにあなたの情報提供と、練習巡洋艦鹿島としての力を必要としています」

 

 

鹿島(仮)「……」

 

 

提督「あなたがこちらを思っての辞退なら、このデータを参考のうえもう1度のご一考を願いたい」


 

鹿島(仮)「……仮に私がなにか隠していて、その情報を渡したとして」

 

 

鹿島(仮)「それが軍法会議ものの内容ならばどうします。私は、すぐにお払い箱になるのでは?」

 

 

提督「その場合、乙中将に協力を申し出て了承いただいております」

 

 

鹿島(仮)「もしも」

 

 

鹿島(仮)「その情報を渡すことで」

 

 

鹿島(仮)「戦争が終わるとしたら?」

 

 

瑞鶴・龍驤「……!」

 

 

提督「……」

 

 

 

 

 

 

 

鹿島(仮)「我々の、敗北で?」



鹿島(仮)「青山さん、あなたはなかなか頭の回る方だとお見受けしました。それだけにその可能性も考えてはいますよね?」

 

 

提督「……?」

 

 

 

鹿島(仮)「私についた死神の練巡の通り名は伊達ではありません」

 

 

鹿島(仮)「あなた達も」

 

 

鹿島(仮)「味方同士で」

 

 

 

 

鹿島(仮)「殺し合う羽目になるかもしれませんよ……?」

 

 

瑞鶴・龍驤「……」


 

 

 












 

割と日常的に味方に殺されかけてるわよね。


 

 

せやな。陸で何回も死を覚悟したわ。

 

 

 

 

鹿島「」

 

 

 

提督「鹿島さん、脅しは結構です。そのような悲劇ではなかったはずです」


 

鹿島(仮)「うふふ……」グル

 

 

鹿島(仮)「うぷぷぷぷ」グルグル

 

 

瑞鶴「鹿島さーん戻ってきてー……」

 


鹿島「……!」ハッ

 

 

鹿島「すみ、ません」

 

 

提督「かくなる上は誠意をお見せしたく。あなたを引き入れたい、その本気の度合いは」

 

 

提督「自分の身体の一部を千切ってでも、と」

 

 

瑞鶴「鹿島さん、お分かりいただけたでしょうか?」

 

 

鹿島(仮)「ええ……どうやら欠陥、こほん、なにかがあるみたいで……」ヒキッ

 

 

龍驤「キミ、鹿島にドン引きされとるよ。割と珍しいと思うで」

 

 

提督「……む、本当にあなたを引き入れるためなら差し上げても良かったのですけども」

 

 

龍驤「それこそ脅しやろ……」

 

 

鹿島「では、乙中将との演習で敗北したら私を雇うというのはいかがでしょう?」

 

 

提督「……それは」

 

 

鹿島「乙中将に勝てるような艦隊ならば、私なんか必要ありませんよ。そうでしょう?」

 

 

鹿島「負けたのなら、私はもう1度鹿島艤装をこの身にまとい、お力添えさせていただきます」


 

瑞鶴「それは飲めないわね……うちのおちびが発狂しかねないわ……」

 

 

龍驤「それ以前にわざと負けるとか乙ちゃんでもさすがにキレるし……」

 

 

鹿島「わざと負ける必要なんてありません。私はそれを願ってはおりませんし、そんな鎮守府には行きたくありません」



鹿島「ノーの返事をした私をそれでもなお、と仰るのなら、の条件です」

 

 

鹿島「いかがなされますか?」ニコ

 

 

提督「…………」

 

 

提督「ええ、了解です。日時は追って伝えるのでぜひ見に来て頂けると」

 

 

鹿島「はい、お言葉に甘えさせていただきますね。その時に春雨さんにもお会いしたいと、思います」


 

提督「お忙しいところ時間を割いていただき、ありがとうございました」ペコリ


 

瑞鶴「鹿島さん、私と連絡先交換しない?」

 

 

龍驤「あ、うちも」

 

 

鹿島「はい、構いませんよ」


 

5

 

 

瑞鶴「どうするの?」

 


龍驤「負けるわけには行かんやろ」

 

 

提督「勝ちます。あの言い方なら勝敗は差して重要ではなさそうです」



提督「鹿島さんの基準で練巡の力が必要と判断してもらえる試合内容ならば勝利でも大丈夫そうな気がします」

 

 

提督「後はわるさめさんに口添えしていただいて、鹿島さんを引き込みます。そのやり方で行きます」

 

 

提督「そしてある程度、試合内容を鹿島さん向けに贔屓する必要があります」

 

 

提督「そしてなお勝ちに行くための艦隊を編成します」

 

 

龍驤「電ちゃんは出すん?」

 

 

提督「今回は出しません。あの子は恐らく6名編成で出せば最悪、乙中将の艦隊を数分で蹂躙する危険性がありますので」

 

 

瑞鶴「そこまで?」

 

 

提督「ええ。わるさめさんとドンパチしてた時、観察していましたが、あの耐久装甲ギミックは」

 

 

提督「海月艦載機を破壊することによりその効力が解除されますが」

 

 

龍驤「なるほど、あのふざけた数の艦載機に混ぜるんか。木を隠すなら森のなか、やね」


 

提督「やりようによってはもっと性格の悪い隠し方もできるので、最悪、演習にすらなりません」

 

 

提督「今回はわるさめさんを出します」

 

 

提督「将校から送りつけられた皆さんも完成度が高いので、鹿島さんにアピールするためにも今回は出しません」

 

 

提督「わるさめさん、ゴーヤさん、瑞鶴さん、龍驤さん、卯月さん、阿武隈さん。この6名で挑み、勝ちます」



提督「わるさめさんは気分屋のところがありますので、あまり当てにしないでください。そのように動かします」

 

 

龍驤「わるさめのやつはキミの指示なら従うやろ」

 

 

提督「怪しいところです。あの子は決して自分のために命を捧げるような動機でここに来たわけではないですし」

 

 

提督「大淀さんからも言動には適当なところがあり、ノリとテンションによって活動能力に激しいムラが出る、と教えてもらっています」

 

 

提督「あの子の性格は大体分かったので考慮のうえ作戦を立てますが、100%上手く運用できるかは分かりません」

 

 

提督「空母のお二人と卯月さんにかなり負担がかかります」

 

 

提督「帰れば乙中将の第1鉢巻き艦隊のデータを渡すので頭に叩き込んでくださいね。出来る限り緻密に艦載機を動かしてもらいたいので」

 

 

龍驤「任せとき。得意分野や」

 

 

瑞鶴「私は自信ないけど、うん、出来る限りがんばる」

 

 

提督「よろしくお願いします」



【5ワ●:提督のお家へ】

 

 

1

 

 

陽炎「金剛さん、なによー……」

 

 

陽炎「駆逐艦のなかでは大人なほうなんだけどなー。そもそも輸送任務とかで遠出するし」

 

 

不知火「なにか不知火に落ち度でも……」

 

 

金剛「まあ街だから常識とかマナーとか、海とは違うから仕方ないネ」

 

 

金剛「大屋さんとか、色々と挨拶しなきゃデース。下手な真似して警察に補導されるかもだから、子供だけでは心配ネ」

 

 

陽炎「金剛さんもこっち側じゃない」

 

 

金剛「心外デース!」

 

 

2

 

 

陽炎「このアパートか。洗濯物が乾きづらそうよね」

 

 

不知火「そうですね」

 

 

金剛「大家さんに挨拶してきたデース」

 

 

陽炎「部屋はここよー。青山で会ってるわよね」ガチャリ

 

 

不知火「お邪魔します」


 

3


 

陽炎「汚なっ。足の踏み場がないわ」

 

 

金剛「男性の独り暮らしの部屋は汚ないというイメージがあるケド、あの提督は綺麗にしてそうなイメージがあったネ」

 

 

不知火「しかし、よく観察すると物が多いだけで整然としています」

 

 

不知火「ゴミではなさそうですね。この紙束は海図、それと本です」


 

金剛「海……深海棲艦と、私達に関わる本ばっかりデース……」

 

 

金剛「勉強家デスカ。乙ちゃんは確かあの提督は軍学校での評価はよくなかったと言ってた気がしマース」

 

 

不知火「…………」ペラ


 

不知火「本のこの汚れかた、恐らく読み込まれているゆえですね。あの司令官は、物覚えが悪いからそうやって覚えたのでは?」

 

 

金剛「努力家ネ。でも」

 

 

金剛「量がおかしいデース……足の踏み場もなくて、私の背より高く積み上げられて……」

 

 

金剛「なにかしらの執念を感じマース……」

 

 

陽炎「……」

 

 

不知火「陽炎、アルバムを見つけたのですか?」

 

 

陽炎「タンスの引き出しにアルバム類はまとめてあったから見つけやすかったわよ」

 

 

陽炎「…………」ペラペラ

 

 

陽炎「ビンゴ」

 

 

陽炎「これ、電ね。顔も似ているし、調べといた本名とも一致」

 

 

陽炎「小学校、しかも学年も同じ。クラスは違うけど」

 

 

陽炎「にらんだ通り接点はあったわねー」

 

 

不知火「といっても、別に仲がよかったとは限りませんし」

 

 

金剛「寄せ書きのところは?」

 

 

不知火「真っ白です」

 

 

陽炎「泣いた」

 

 

不知火「……あまり卒業アルバムの写真には写ってませんね。電さんも同じく少ないです」

 

 

陽炎「こちらのアルバムは多分お父さんと一緒ね。子供の時代は感情豊かみたいだね」

 

 

不知火「む」

 

 

不知火「……六年生からですね」

 

 

陽炎「なにがよ?」

 

 

不知火「表情が乏しくなっています。中学生からはどちらかといえば今のような雰囲気ですね」

 

 

不知火「…………」

 

 

不知火「金剛さんはなにを見ているのです」

 

 

金剛「ノートとファイル、ネ」

 

 

金剛「ファイルのほうは全部、深海棲艦とか艦娘の資料デース。新聞からゴシップ、種類は様々デース」

 

 

金剛「ノートのほうは自分の県外やら予測やらで埋まっていて、几帳面に作製日付もあるネ」

 

ガサゴソ

 

金剛「!」パラパラ

 

 

陽炎「金剛さんの様子が」

 

 

金剛「深海調査行程について書かれてるネ。実際に艦娘を海に沈めること。長いから割愛しマース」

 

 

金剛「作製日付が15年前デース!」

 

 

陽炎「ってことは、少なくとも15年前から戦争のこと考えてたってわけか」

 

 

不知火「それは素晴らしい」

 

 

金剛「それだけではないネ!」

 

 

金剛「今後の展開もいくつか絞って予想されていて、その行き着く先は」

 

 

金剛「センソーの終了デース!」

 

 

金剛「現状もこの予想の範囲からズレていないネ」

 

 

金剛「次の展開は深海棲艦は未知の妖精の特殊な建造により、生まれている場合、深海棲艦側に建造の指示を出している存在も模索、そして深海妖精の確保に動く」

 

 

陽炎「もはや未来予知じゃない。あの司令官、演算装置かなにか?」

 

 

不知火「いえ、こうなのでは?」

 

 

不知火「もともとこの戦いは一人の人間でも終わりに導ける程度のもの」

 

 

不知火「軍の腰が重いのと、くだらない利益うんぬんで目的が建前と貸しているケースはありますから」


 

陽炎「まあ、軍需はあがるわよねー」

 

 

不知火「シンプルに目的に突き進めば終わりが見える戦いなら」

 

 

不知火「人間のために戦うのに、人間のために引き伸ばされて、人間が割を喰う本末転倒の状況です。そんなオチではないことを祈るばかりですね」

 

 

陽炎「よく分からないけど、まあ物事は単純じゃないってことね」

 

 

不知火「深海棲艦の殲滅の視点に絞ったこの真っ直ぐさはクリアですね。余計な贅肉を削ぎ落としてあります」

 

 

陽炎「というかさ」

 

 

不知火「?」

 

 

陽炎「えろ本とかないわねー」


 

不知火「……」戦艦クラス

 

 

陽炎「っ、ぎゃああああ!」

 

 

不知火「陽炎、ノートを投げないでください。人の持ち物です」

 

 

陽炎「そ、そのノートの最後のページ見てみなさいよ……」

 

 

金剛「……ん?」ペラッ

 

 

『かえってきなさい』

 

 

金剛「ホラーすぎるネ!」

 

 

不知火「……」プルプル

 

 

陽炎「……帰ろうか」

 

 

陽炎「やっぱりこのお忍び、バレるわよね。もっと計画を練るべきだったわー……」

 

 

金剛「帰るデース……」

 


ゴトッ

 


金剛「……うん? ひじがなにかに」

 

 

金剛(伏せられた写真立て、と、封筒)

 

 

金剛(この写真……封筒の中は)

 

 

金剛(レター、デース)

 

 

陽炎「金剛さん、早くー」

 

 

金剛「今行きマース!」

 

 

金剛(怒られるだろうケド、テイクアウトさせてもらいマース)

 

 

2

 

 

提督「…………」


 

ぷらずま「●ワ●」

 

 

ぷらずま「司令官さん、地下の拷問室使いますか?」


 

間宮「なぜ私まで呼び出されて……」


 

提督「自分の個人情報流したのは間宮さんですよね」


 

間宮「……あっ」

 

 

陽炎「えーと、その……」

 

 

不知火「し、不知火の落ち度を認めます」

 

 

金剛「申し訳ないデース!」

 

 

提督「怒ってはいませんし、謝罪したので許します」

 

 

ぷらずま「甘過ぎなのです……」

 

 

提督「外出届けもなしに遠出とは。規律は守ってください。ましてや今回は鍵を盗んでの不法侵入、軍規以前の人としての問題です」

 

 

提督「自分に人道を説かれるということがどれ程のことなのか、お分かりかと思います」



陽炎・不知火「返す言葉もございません」



提督「陽炎さんと不知火さん金剛さんには来月から少しハードに遠征スケジュールを組みます。甘んじて受け入れてください」

 

 

提督「これはお願いではありません」

 

 

陽炎・不知火・金剛「了解」

 

 

提督「間宮さん」

 

 

間宮「すみません……」

 

 

提督「遠征に同行してください。もちろん炊事も並行して普段通りに」

 

 

間宮「」

 

 

提督「なに1日です。しかもそのうち1回だけです。この子達がこのような真似を止めるどころか背中を押した罰として同じく甘んじて」

 

 

間宮「……了解です。海に出るのならお魚でも捕ってこようかな……」

 

 

提督「では、金剛さんだけこの場に残って後は解散で」

 

 

提督「先程からにこにこと、まるで謝る気がないようなので、少し話を」

 

 

金剛「了解デース!」

 

 

提督「?」


 

3

 

 

提督「金剛さん、自分個人としてはルール違反を咎めるだけで怒ってはいませんが、さすがにその態度は見過ごせない立場なので……」

 

 

金剛「謝罪の気持ちはあるんですケド」ニコニコ

 

 

金剛「それ以上のハピネスがネー……」

 

 

提督「く、これだから金剛は……なんなんですか……」

 

 

金剛「電ちゃんのこと、ホントに覚えてないって?」

 

 

提督「……」

 

 

金剛「これ、なーんだ?」ピラッ

 

 

提督「………それは」

 

 

提督「てっきり間違えて捨ててしまったものかと……」

 

 

金剛「間違えて? 電ちゃんとツーショット写真を間違えて捨てたと思っていた?」

 

 

提督「言葉の綾です」

 

 

金剛「『○○さん、お元気ですか。もうすぐ小学校を卒業しますが、あなたと植えた花壇の向日葵は季節外れに』」

 

 

提督「そ、れ……や、」

 

 

金剛「や?」

 

 

提督「やめてええええええ!」

 

 

4

 

 

響「なにごとだい?」

 

 

間宮「うちの提督さんが叫ぶなんて一体なにごと……!」

 

 

提督「金剛さん、誰にでも黒歴史というのはありまして、それをつつくのは……」

 

 

金剛「黒歴史じゃないデース!」

 

 

金剛「電ちゃんを想うハートがたくさん詰まってマース!」ニコニコ

 

 

間宮「え、これって、提督さんと電ちゃん、かしら?」

 

 

響「みたいだね。二人とも面影がある」

 

 

提督「」


 

間宮「二人とも可愛いですね……」

 

 

間宮「よかった。提督さんは悪魔でも鬼でもなく擬人化した闇でもなく人の子だったんですね」ホッ

 

 

提督「自分の評価は人のラインすら越えていなかったんですか……」

 

 

金剛「一緒の委員会で動物に餌をあごたり、お花を育ててたり、していた?」

 

 

提督「1週間だけです。その委員会で取った写真なんですけど、二人しかいなかったので、自然とツーショットに、です」

 

 

金剛「封筒に向日葵の写真も入ってマース。卒業前に軍に行った電ちゃんに贈るつもりとしか」

 

 

金剛「覚えていないはずがありません」

 

 

響「へえ。実に面白い話だ。電からも聞いたことがないな」

 

 

提督「そうですね。覚えてはいます。その点は謝罪しますので、いい加減にそれをこちらに」


 

金剛「深海棲艦を倒すの、電ちゃんをセンソーから解放するため?」


 

金剛「もしもそうなら、ロマンチック、デース!」



提督「……」

 

 

金剛「答えて欲しいネ」


 

提督「いいえ」

 

 

金剛・響・間宮「じーっ」



提督「一つのきっかけでは、あります」

 

 

提督「身近な人が戦争に身を投じた、というのは。あまり人と接するのは得意ではなく、ほとんどが知り合い以上、友達未満です」

 

 

提督「自分の父親も軍人でして、海外の戦争での救助活動中に命を落としました」

 

 

提督「そういうのもあって、自分と同じ歳の子がセンソーに兵士として参加するということが、とても不幸なことだと、知ってはいましたから」

 

 

提督「まあ」

 

 

提督「あの頃は自分もまだ純粋で可愛いげがあったということです」

 

 

提督「自分でも力になれることはないだろうか、と……」

 

 

提督「父を尊敬していたので軍人には憧れていたのもあります……」

 

 

金剛「なるほどネー」

 

 

提督「今はもうあの頃の気持ちを全く思い出せませんが……」



間宮「これは嬉しい情報ですね。私のなかで提督さんの印象がかなり変わりました」

 

 

響「スパシーバ」

 

 

響「これは広めてもいいかい。きっと一部の人の誤解もとけると思う」

 

 

提督「勘弁してください」

 

 

提督「今の距離感がベストです」

 

 

提督「自分、あの子に会いたくて提督になったわけではなく」

 

 

提督「あくまで戦争を終わらせるためにここにいるのですから」

 

 

提督「それに、自分はぷらずまさんがいなければ適当な艦娘を轟沈させて深海を調査するつもりでした」

 

 

提督「ご理解していただきたい。そこを興味本意でかき乱されるのが、最も困ります」

 

 

響「饒舌になったね」

 

 

提督「……」

 

 

金剛「なんか今まで誤解しててごめんネー」

 

 

提督「誤解ではありませんので、その謝罪は結構です」

 

 

金剛「テーイートークゥー!」

 

 

提督「なぜ距離を空けて……」

 

 

金剛「バーニング……」タタッ

 

 

金剛「ラ――ヴ!」トウッ

 


提督「ぶっ!」

 

 

金剛「うーんうん、私、気に入りマシタよー?」

 

 

金剛「仲良くしたいデース!」スリスリ

 

 

提督「恐れていた事態の一つが……」

 

 

提督「すみません。なんかすごく疲れたので自分は寝床に向かいます」

 

 

金剛「今日はこのくらいにしてやりマース!!」

 

 

提督「差し支えない程度に嫌われる方法を考えときますので……」

 

 

提督「それでは」


 

5

 

 

ぷらずま「…………」ジーッ

 

 

提督「……」コツコツ

 

 

ぷらずま「あの向日葵、咲いたのですね」

 

 

提督「なにかいいましたか」

 

 

ぷらずま「オープンザドア君」

 


提督「……、……」

 

 

提督「過去をほじくりかえす理由がありますか?」

 

 

ぷらずま「私は、覚えてます」

 

 

ぷらずま「育ててくれていたんですね」

 

 

提督「秋に咲きましたけどね……」


 

ぷらずま「私も楽しみにしていましたから」

 

 

提督「写真、あるので欲しければどうぞ。この話はどうかこれきりに……」


 

――――ギュッ

 

 

提督「……裾を離してくれませんか」

 

 

電「あの……、あ、あのっ」

 

 

提督「はい?」

 

 

電「……ありがとう」


 

提督「……、……」クルッ

 

 

ぷらずま「●ワ●」ニタニタ


 

提督「どういたしまして……」

 

 

※この後ぷらずまさんがお手紙と写真のことを広めた模様。

 

 

【6ワ●:ぷらずまさんは出しません】

 

 

1



阿武隈「提督、電さんから聞きましたよ」

 

 

卯月「ロリコンなんだって?」プップクプ

 

 

卯月「うーちゃんをやらしい目で見てたのはそういう訳ぴょん」

 

 

提督「見てません」

 

 

阿武隈「あたしはとても素敵なエピソードだと思います、はい!」

 

 

卯月「ま、少しお前の見方を変えてやるぴょん。ありがたく思え」



提督「ロリコンと思われることにありがたく思う……?」



卯月「そこじゃねーぴょん……」



伊58「指輪はぷらずまちゃんに渡すのでち? ゴーヤも欲しい!」

 

 

提督「渡しませんよ。あれは少し思うところがあります。あのシステムは軍の悪ふざけでしょう……」

 

 

龍驤「人に歴史ありやねー」

 

 

初霜「えっと、お祝いしましょう、か。なんとなく」

 

 

提督「なぜ輪形陣を組み始め……」

 

 

提督「こほん。皆さん」



提督「今日は乙中将との演習です」

 

 

ぷらずま「●ワ●」

 

 

ぷらずま「ダボども。気を引き閉め直すのです。オンオフのスイッチ壊れているのなら、機能するまで」

 

 

ぷらずま「昔のテレビのように叩いて殴って直してやるのです」

 


提督「金剛さん榛名さん暁さん響さん雷さんは抜錨してもらって乙中将達の出迎えに行ってもらっています」

 

 

提督「そして演習中の鎮守府周辺海域の警備は乙中将から参加しない方達が行ってくれるそうです」

 

 

提督「瑞鳳さん、白露さん時雨さん達と一緒にお願いします。榛名さんにもお願いしてありますので」

 

 

瑞鳳「はい、了解です」

 

 

ぷらずま「●ワ●」

 

 

ぷらずま「そういえば私はまだ編成メンバーを聞いていないのです」

 

 

ぷらずま「ま、司令官さんのことですから知らせる必要もなかった、ということなのでしょうが」

 

 

ぷらずま「聞かせて欲しいのです」

 

 

ぷらずま「今回のお友達セレクト」

 

 

提督「……それでは」

 

 

提督「もう1度、参加メンバーをこの場で伝えておきますね」



2

 


ぷらずま「司令官さん……?」

 

 

ぷらずま「この銃口が見えますか?」

 

 

提督「はい。もちろんです」

 

 

ぷらずま「聞き間違いを願って」

 

 

ぷらずま「司令官さん、もう1度いって欲しいのです」

 

 

ぷらずま「私を出さない……?」

 

 

ぷらずま「はあ?」

 

 

ぷらずま「この私を、出さない?」

 

 

ぷらずま「そんな怪奇を吹き込んだびっくりダボは誰なのです?」

 

 

ぷらずま「今すぐ消して元に戻して差し上げるのです」

 

 

提督「理由はいいました。ご理解ご協力を」

 

 

提督「何卒……」

 

 

ぷらずま「100歩譲って認めるとしても、敗北した負け犬どもがどうなるか分かっているのです……?」

 

 

ぷらずま「ここ自体が欠陥どもの最後の巣窟、保健所なのですよ?」

 

 

ぷらずま「ここでもいうこと聞けねー狂犬なら殺処分なのですよ……?」

 

 

提督「負けた時の覚悟は出来ています。皆さんもよろしいですね?」

 

 

一同「……」

 

 

ぷらずま「●ワ●」

 

 

ドン!

 

 

ぷらずま「はわわ、はわわ!?」

 

 

ドンドン!

 

 

ぷらずま「お友達のみなさん!?」

 

 

ぷらずま「司令官さん大変なのです! お友達が病気なのです! だってここは黙りこむところじゃねーのです!?」

 

 

ぷらずま「ワンワン吠えないと!?」

 

 

瑞鳳「私、ヤバイです。ワンワンです。ここまで勝敗に魂捧げるクレイジーな鎮守府だとは……」

 

 

瑞鳳「龍驤さん、みなさん、私は遺言を書いていなくて泣きそうです……」

 

 

初霜「願わくは明日をください……」

 

 

龍驤「今演習の旗艦として参加メンバーに告ぐ」

 


龍驤「負ければ」

 

 

龍驤「死」

 

 

龍驤「あるのみ」


 

伊58・瑞鶴・阿武隈「了解!」ビシッ

 

 

卯月「りょかーい」ビシッ


 

卯月「わるさめのやつはどこぴょん?」

 

 

提督「腹ごしらえ、と間宮亭に……」

 

 

ぷらずま「ご安心を。負けた時はしっかりあいつも黄泉路に送り届けてあげるのです」

 

 

提督(安心できる要素がない……)



ぷらずま「仕方ないのです。私が声かけしてあげるので参加メンバーは声を張り上げて応えるのです」

 

 

ぷらずま「参加するお友達は表に」

 

 

…………………… 


……………………

 

……………………



ぷらずま「勝たなきゃ!」

 

 

ぷらずま「ゴミなのです!!!」

 


ぷらずま「テメーらみてーな海から背を向けた戦犯どもがのこのこ戻ってきた理由は!!」

 

 

一同「未練がましい愚図だからです!!」

 


ぷらずま「そんな愚図どもがまだ息をしていられるのは何のお陰なのです!!」

 

 

一同「勝利のお陰です!!」

 


ぷらずま「テメーら愚図が勝てるはずがねーのです!!」

 

 

一同「その通りです!!」

 

 

ぷらずま「誰に与えてもらった勝利なのです!!」

 

 

一同「提督です!!」

 

 

ぷらずま「なのです!!」

 

 

ぷらずま「ならばダボどもに聞くのです!!」

 

 

ぷらずま「2位とはなにか!!」

 

 

一同「負けの一番です!!」

 

 

ぷらずま「準優勝とは!!」

 

 

一同「がんばったで賞です!!」

 

 

ぷらずま「その通りなのです! この軍の穀潰しども!!」


 

ぷらずま「勝たなきゃ生ゴミに逆戻りなのです!」

 

 

ぷらずま「負けて明日が来るなどと! ふざけた希望を見出だすな!!」

 

 

ぷらずま「その値段さえつかない安い命!!」

 

 

ぷらずま「今日が捨て時なのです!!」

 

 

一同「イエス、マム!!」

 

 

一同「勝利を! 提督に!!」ビシッ

 

 

 

 

 

提督(この風景……)

 

 

提督(丙少将に見られていたら問答無用で殴られてたな……)

 

 

【7ワ●:乙の中将からのお願い】

 

 

1

 

 

――――私、ですか?

 

 

――――もちろん。僕の嗅覚がびびっときた。

 

 

――――君は、もっと強くなる。

 

 

――――でも、私は、

 

 

――――クラスのイジメから逃げ出すために艤装をまとって海に抜錨したような、

 

 

――――臆病者で、

 

 

――――この戦争で出撃したことあるよね。大したもんだ。学校のイジメに合うより、殺し合いのほうが気楽だなんて。

 

 

――――それに臆病者が弱いだなんて誰が決めたんだよ。溜め込むタイプみたいだけど、そういうやつは

 

 

――――それを吐き出した時、狂っているくらいに強いし。


 

――――深海棲艦に対してそんな戦い方をしてる。そしてその集中力と、素質の馬鹿げた根性値は目を見張る。

 

 

――――あの大和とだってやりあえる素質だと僕は思うんだよね。

 

 

――――本当に、いいのですね?


 

――――うん。まあ、誰かとは思ったよ。だって姿が全然違うもん。

 

 

――――だから、面白い。

 

 

――――現行艦娘の中で最低値の

 

 

――――艤装適性率10%の適性者。

 

 

――――その数値だとかなり不具合が出るから普通は1週間程度で諦めて解体申請するものなんだけどね。

 

 

――――君みたいなやつは見たことない。君はきっとその艤装を見にまとい、歴史にはない兵士としての機能を発現するだろう。

 

 

――――そうですか。私は、本当に心で溜め込むので、もしかしたら、

 

 

――――気が触れてあなたを殺してしまうかもしれません。

 

 

――――あっはっは、君のそういうところも割と好きだなー。

 

 

――――これあげるから鉢巻き絞めなよ。うちの流儀だ。

 

 

――――これから終わりの海まで。

 

 

――――飛龍と蒼龍、夕立と時雨、君で5人目の仲間だ。いつかみんなで暁の水平線をともに眺めようね。

 

 

――――よろしく、

 

 

 

――――神通。

 

 

2

 

 

乙中将「久し振りだね」

 

 

乙中将「青ちゃん、今日はよろしく頼むよ。お手柔らかに、とはいわない」

 


提督「ええ、よろしくお願いします。将校の第1艦隊、うちのメンバーともども勉強させていただきます」

 

 

提督「後、青ちゃんと呼ぶの止めてもらえませんかね……」

 

 

乙中将「馴れ馴れしいのは物心ついた時から直らない性格ー。三つ子の魂百までとかそんな感じで受け入れて」

 

 

提督「左様ですか……」

 

 

初霜「乙さんお久しぶりです!」

 

 

乙中将「初霜さん、聞いてるよ。秘書官として頑張ってるみたいだね」

 

 

乙中将「しかし、初霜さんを秘書官に任命するだなんて青ちゃんもなかなか分かってる」

 

 

初霜「そ、そうですかね……」テレテレ

 

 

乙中将「鉢巻きの魅力を」

 

 

提督「いえ、初霜さんを秘書官にしている理由に鉢巻きは一切関係なく」

 


初霜「私の魅力は鉢巻きだけ……?」

 

 

乙中将「いやいや、今だからいうけどね、初霜さんは兵士としても優秀だけど、それに負けないくらい司令官の素質もある。長い目、だけどさ」

 

 

乙中将「初霜さんを第2艦隊の旗艦にしていたのもその成長を見込んでのことだよ。いつか」

 

 

乙中将「第1艦隊の旗艦にもしてみようと考えていたことをここに打ち明けるよ」

 

 

初霜「!」

 

 

初霜「そ、そこまで期待されていたなんて!」

 

 

初霜「鉢巻き強く締め直します!」ギュッ

 


初霜「乙中将のほうからこっちの艦隊と演習を希望した、と」

 

 

乙中将「うん。これからわるさめさんやぷらずまさんレベルの敵が出てくると思ってるから、一戦交えて気を引き締め直しておく意味もある」

 

 

提督「こちらの艦隊編成はこれです。乙中将、どうぞ」

 

 

乙中将「……」

 

 

乙中将「電ちゃんは出さないの?」

 

 

提督「わるさめさんは出します。ぷらずまさんと交戦の希望があれば、この演習が終わってから、ということではダメですかね……?」

 

 

乙中将「いや、どちらかが出てくれるのなら僕としては願ったり叶ったり。これが最善手なんでしょ?」

 

 

乙中将「目的に対しての」

 

 

乙中将「僕に貸して欲しいといった鹿島さんの件、だよね?」

 

 

提督「本当に中将殿は鋭いですね……その通りです」

 

 

乙中将「まー、その返しは鹿島さんから引き出した情報をそのまま報告書として僕に送ることね」

 

 

提督「ええ、上手くいった暁にはそのようにさせていただきます」

 

 

乙中将「……それとわるさめちゃんと電ちゃんを除くと」

 

 

乙中将「睦月型の卯月が一番強いの?」

 

 

提督「龍驤さんと甲乙つけがたいですが、あの子は実力的には将校のもとでもやっていけるかと」

 

 

提督「少し自分には扱い難い面もありますが、それを踏まえてもなお」

 

 

提督「あの子は歴代艦娘でも上位の素質です。先の海戦はブランクのある実戦でしたが、姫艦隊相手に被弾率0%の撃沈数6隻と正直、驚かされました」

 

 

初霜「……魔改造艤装の機能もありますが、それを差し引いてもすごいです」

 


初霜「私が撃ち漏らした艦載機を全てフォローしてもらいましたし……」

 

 

乙中将「……ま、魔改造卯月艤装については明石さんから聞いたことあるけど、実際に見るのは初めてかな」

 

 

乙中将「楽しみだ」

 

 

瑞鶴「乙さんは私達の艦隊と演習やってからすぐに帰るのですか?」

 

 

乙中将「うん。そんなすぐって訳ではないけど」

 

 

乙中将「……ねえ青ちゃん」


 

乙中将「演習とは関係ない話になるし、青ちゃんのやり方は個人的に嫌いではないよ。そこは甲さんも、ね」

 

 

提督「……」

 


乙中将「ただ知っているよね。君のやり方はあの人に似ている。あの人は君よりも頭は回らなかったけど」

 

 

乙中将「将校のなかでは最も勝利に徹底してた。分かるよね。今は空になっている席に座っていた」

 

 

乙中将「丁の将校」



乙中将「君が教えをもらっていた人。この過去の鎮守府にいた例の女提督も似たタイプだったみたいだね」

 

 

乙中将「僕は大丈夫だと思っているし、念のためにあそこまで歪まないように、金剛さん達を送りつけた」

 

 

乙中将「正直にいうと鎮守府(闇)の監視よりもそっちを、ね」

 

 

乙中将「お願いね。そこまで堕ちないでよ」

 

 

乙中将「戦争で更なる化物を産んだなんて展開はごめん被るからさ」

 

 

提督「……」

 


提督「ご心配なく。彼等と自分は似ているようで似ていないかと。丁准将のやり方が自分に合っていたのは認めます。だから自分も配属希望を出しました」

 

 

提督「丁准将のその作戦効率は」

 

 

提督「武蔵さんや大和さんも認めていたところでもあります。あまり人気のある方ではありませんでしたが」

 

 

提督「まあ、自分よりは処世術に長けていたのでマシでしたね……」

 

 

乙中将「ま、そこらは金剛さんや龍驤さんがいるから大丈夫大丈夫」

 

 

乙中将「もう1つ、この演習が終わってからでいいんだけど、面白そうな匂いがする話があるんだよねー」

 

 

乙中将「今年のアカデミー卒業者は」

 

 

乙中将「歴代素質上位今年度成績トップ、甲さんが『マジかよ。アカデミーの時点でうちの江風と同じレベルじゃねーか』といった」

 


乙中将「『秋月型1番艦秋月』」

 

 

乙中将「それと一時期、軍でも大騒ぎになってメディアにも取り立てられた例の『歴史初の特異存在』」

 

 

乙中将「今の明石さんが、あ、30年も軍に貢献してくれている現行明石さんね」

 

 

乙中将「あの明石さんが愛弟子と呼んで、その技術を叩き込んでるみたいだね。着任の日に明石艤装を譲るみたい」

 

 

乙中将「かなりの工作艦センスと特殊技能を持っているとかいう」

 


乙中将「『工作艦明石君』」

 

 

提督「……ああ」


 

提督「アッキー&アッシーの欠陥コンビですね……」

 

 

乙中将「その呼び方、やっぱり昔になんかあったんだねー……」


 

乙中将「実の兄妹、みたいだね?」

 

 

乙中将「その二人はこの鎮守府(闇)に配属希望を出してるって知ってる?」

 

 

提督「……ええ、通達は来ています。なぜうちに、という疑問は大淀さんからお聞きください(メソラシ」

 

 

提督「あまり思い出したくない過去なので……」

 

 

提督「……」

 

 

乙中将「その二人になつかれている詳細を話してもらうよ。甲さんは声かけてないみたいだけど、将校でも取り合いするレベル」

 

 

乙中将「特に明石君のほうは丙さんがすごく欲しがってたなー」

 

 

乙中将「今まで貸した分はそれでいいから」

 

 

提督「……く」

 


乙中将「それじゃよろしく。うちの参加メンバーと装備はここに置いとく」

 

 


乙中将「それとわるさめちゃんが持ち込みたいものだけど、変な細工していたらその時点でアウトだからね?」



提督「ええ。音楽でやる気出したいらしく、そのままの用途です」



乙中将「全力出してもらえるのならそれくらいは。それじゃ、勉強させてもらうよ」


 

初霜「……」

 

 

初霜「提督」

 

 

初霜「その話、私も気になります。知りたいです」

 

 

提督「今は置いといてください。どうせ演習の後に嫌でも喋る羽目になると思うので…… 」

 

 

提督「命があれば、ですけど……」

 

 

初霜「そうですね……」



3

 


乙中将「始まるよ。皆、がんばってね」

 

 

扶桑「旗艦が私だと縁起が悪いのでは……」

 

 

山城「扶桑お姉様、問題はありません。そもそも相手は練度も不十分で新旧メンバー入り乱れて連携が取りきれないはずですし」

 

 

飛龍「うちの全力ですね」

 

 

蒼龍「このメンバーで組むのは久々ですよね」

 

 

夕立「相手の鎮守府(闇)は怖いけど、がんばるっぽいー」ガッツポ

 

 


ぷらずま「●ワ●」ニタニタ



わるさめ「●ω●」ニヤニヤ




扶桑「例の二人がこちらを……」



飛龍「というかわるさめのやつ、なんで陰陽服を着ているんですか……?」



乙中将「構っちゃだめ。あの二人は煽り性能も半端ないから……」



乙中将「こほん。向こうは本当になにをやってくるか分からないから、セオリーに凝り固まっちゃダメだよ」

 

 

乙中将「相手を中枢棲姫勢力と想定して、なにがなんでも勝つ。その気概で」

 

 

蒼龍「やるからには勝ちますが、乙中将が演習でそこまでいうのは珍しいですね。いつもは楽しもーとかそういう感じなのに」

 

 

飛龍「まあ、負ければ今後は向こうの提督が私達の指揮を執る場面が出てくるかもしれないしね」

 

 

飛龍「対深海棲艦海軍の階級はすぐに入れ替わることもあるし、あってないようなものだし」

 

 

乙中将「青ちゃんはね、出した結果にまだ能力が追い付いていないんだ」

 

 

夕立「夕立にはよく分からないっぽい……」

 

 

乙中将「今のままだと、味方にも甚大な被害を出すことも躊躇わない。というか、もしも深海棲艦との最後の戦いがあるとすれば」

 

 

乙中将「S勝利を取るためにどんな手でも使っても不思議じゃないからさ……」

 

 

山城「……恐いわ」

 

 

乙中将「深海棲艦を滅ぼすことが試合に勝つことなら、こちらの兵士に被害を出さないことが勝負に勝つこと」

 

 

乙中将「彼の場合は学生の時からそれが逆転してるから、成績はよくなかった。軍とは思想がずれてるから教官から評価されなかった人だよ」

 

 

乙中将「人の生死を預かるからね。そういう人は教官が思想を変えるような理不尽なしごきで止めていくのが普通だけど、彼は折れなかった」

 

 

乙中将「教官からも学友からも叩かれ続けただろうに」


 

扶桑「我が身可愛さではないですが、正しいのは軍ですね」

 

 

扶桑「現に深海棲艦は私達の撃沈から産まれるのですから、死なせずに勝つことも敵を増やさないという意味では重要です」

 

 

乙中将「ま、彼は提督よりも本部で対深海棲艦の作戦を練る椅子こそ彼は向いているようにも思えるけどね」


 

神通「…………」

 

 

乙中将「神通?」

 

 

神通「抜錨準備に入ります、ね」

 

 

神通「噂の鎮守府の実力を、拝見させていただきます」

 

 

4

 


阿武隈「……」


 

提督「阿武隈さん、気負わずに。ここに来てからあなたを観察し、トラウマは把握しました」

 

 

提督「あなたは深海棲艦ではなく、生き物に対しての攻撃に躊躇いがある。もちろん艦娘相手でも例外でないことは把握しています」

 

 

提督「あなたにとっても気付けになる1戦になればいいんですけどね」

 

 

阿武隈「……すみません」

 

 

阿武隈「今はただ与えられた役割をこなします」

 

 

提督「はい。もう1度、作戦の要点を」

 

 

提督「まず夜戦に持ち込ませないことを、意識してください」

 

 

提督「皆さん、向こうの艦隊のデータは頭に叩き込んでありますね」

 

 

阿武隈「もちろんです」

 

 

卯月「ぷっぷくぷ。相手は将校だし、準備を怠ればサンドバッグだぴょん」

 

 

伊58「ゴーヤも大丈夫でち」

 

 

瑞鶴「私は計算は苦手だけど覚えるのは得意だし、大丈夫」

 

 

龍驤「将校の戦力は軍学校の時から知ってるし、最近のも網羅しているから大丈夫やでー」


 

わるさめ「お許しを。時間が少なくてー」

 

 

提督「わるさめさん、なにか質問があれば今のうちに。どうせ渡したデータもそれほど頭に入れていないのでは」

 

 

わるさめ「いくつか質問」

 

 

提督「どうぞ」

 

 

わるさめ「こちらは戦艦いませんし、むしろ日が暮れるまで持久戦して夜戦に持ち込んだほうがいいんじゃないですか?」

 

 

提督「いえ、夜戦力では大きく劣っています」

 

 

提督「夜戦での扶桑さんと山城はいわずもがな。向こうは化け物ですよ。二航戦は夜でも航載機を普通に当ててきます。化け物染みたチート艦載機を搭載しています」

 

 

提督「もちろん夕立さんも夜戦では戦艦の装甲を軽く貫いてくるほど強いです」

 

 

提督「いやこの子はギアが入った時が怖いですね。よく読めない動物的なところがあります」

 

 

提督「……神通さんは」

 

 

提督「ただの神通だと思わないでください。適性率10%。あの姿、皆の知っている神通さんとは違いますよね。いえ、軽巡だという認識も外してください」

 

 

提督「ある種の執念で適性の不具合を乗り越えたもはやオリジナルに等しい存在です。恐らくわるさめさんともやりあえます」



提督「なめたちょっかいかければ」

 


提督「沈みます」

 

 

提督「わるさめさん、精神力は数値では測り切れるものではありません。前もって完全に対策することは難しいので、あまり期待はしないでくださいね」

 

 

わるさめ「●ω●」デスハイ♪

 

 

わるさめ「もう一つ」

 

 

わるさめ「私のデータは資料で承知とは思いますが、深海棲艦艤装の使用許可は?」

 

 

提督「認めます。乙中将から、全力で、とお願いされているので」

 

 

提督「しかし、味方への攻撃、妨害、混乱を招くような使用方法は禁じます」

 

 

わるさめ「深海棲艦の姿になっても」

 

 

わるさめ「わるさめちゃんですから、攻撃してこないでくださいね?」

 

 

阿武隈「はい、そこは大丈夫です、けど」

 

 

一同「……」



阿武隈「突っ込みますよ!」



阿武隈「わるさめさんが陰陽服でリュック背負っているんですけど!?」



わるさめ「今回の衣装だから。許可はもらっているからモーマンタイ! リュックにあるのはわるさめちゃんのテンションあげる特製スピーカーだぞ♪」



提督「その子は放置でいいです。さて、皆さん頑張っ……」

 

 

瑞鶴「提督さん、なにか皆の気合いが入るひとこと」

 

 

提督「……え」

 

 

一同「……」ジーッ

 

 

提督「阿武隈さん、正直にいって勝てると思いますか?」

 

 

阿武隈「……わるさめさんも対策されているでしょうし、奇跡かと(メソラシ」

 

 

提督「奇跡で勝てるのなら、なんとかなります」

 

 

提督「まずは、勝てる、という可能性を肯定してください」

 

 

提督「たまたまでもまぐれでも構いません。自らが肯定すれば」

 

 

提督「それは運命です」

 

 

提督「これが信じることの強さだと思います」



提督「皆さんはそれぞれが1度は折れて地を這いつくばり、燻り続けていました」

 

 

提督「もちろん自分も」

 

 

提督「軍学校でも妖精可視の才能はあっても教官からはこの職務には向いていないと、1/5作戦は大和を失ったことで軍の意向を厳守できない人間と判断されました」

 

 

提督「しがみつきながら、ようやく手にしたのがこの鎮守府です」

 

 

提督「相手は乙の旗を掲げた第1艦隊」

 

 

提督「結果を叩き出せば、あなた達はもう落ちこぼれではないと自他ともに認められることになる一戦です」

 

 

提督「運でも構いません」

 

 

提督「自分達の未来のために」

 

 

提督「皆さん、抜錨準備に」

 

 

一同「了解!」



5

 

 

ぷらずま「●ワ●」

 

 

ぷらずま「お隣で我が手足の動きの練度を確認してもいいですか」

 

 

暁「じゃあ電の横にするっ」

 

 

雷「私は司令官の左隣で。響は私の隣でいいわよね。はいこれ椅子」

 

 

響「司令官、さすがに邪魔かい?」

 

 

暁「響、司令官の膝の上から降りなさいよ。レディーとしてはしたないんだから」

 

 

響「雷、場所を変わってもらえないだろうか。この司令官と話をしたいから」

 

 

雷「しょうがないわねえ」

 

 

響「ありがとう」

 

 

提督「6駆の皆さん、ジュースはあるので演習中は静かにお願いしますね」

 

 

響「司令官、乙中将は強いよ。艦隊はもちろん、艦娘のチートが電やわるさめさんなら、提督としてのチートは彼だし」

 

 

提督「彼のことは調べても納得が行きません。状況的に不適切としか思えない指示がなぜか上手くいく」

 

 

提督「鼻が動物的に効く」

 

 

響「開発分野では2、3回で目当ての物を出すことが多いからね」


 

提督「羨ましい限りです」

 

 

ぷらずま「勝てそうですか?」

 

 

提督「勝ちの芽がなければ適当に屁理屈押し付けて断りますよ」

 

 

暁「負けても相手は猛者ばかりなんだから得るものはあるはずじゃない」


 

ぷらずま「少し違うのです」

 

 

提督「ええ、皆さん才覚はあるんです。折れた人達が再び艤装をまとってきた」

 

 

提督「強靭な魂の持ち主」



提督「ゴーヤさんは根性だけでいえばうちで1位だと思います。わるさめさんも本気になれば強いです。最強クラスの深海棲艦とともにいたのですからね」



提督「勝利が最も意味があります」

 

 

提督「精神論は得意ではないのですが、歴史では」

 

 

提督「大きな挫折を乗り越えられる人間が強いことが証明されている」

 

 

提督「自分がかき集めたメンバーは」

 

 

提督「それになり得る人達です」

 

 

提督「初霜さん」

 

 

初霜「はい、目まぐるしく動くであろう戦場のデータはリアルタイムでまとめます」

 

 

初霜「お任せください」

 

 

提督「よろしくお願いします」

 

 

提督「さて」

 

 

ぷらずま「生半可な覚悟でうちと演習をやりたいだなんていっているのなら」

 

 

ぷらずま「部下の命で」

 

 

ぷらずま「償う羽目になるのです」

 

 

ぷらずま「●ワ●」ニタニタ

 

 

【8ワ●:鎮守府(闇)VS乙中将第1鉢巻き艦隊】

 

 

1

 

 

瑞鶴「申し訳ないけど、二航戦の相手は今の私には無理ねー……」

 


瑞鶴「やっぱり飛龍と蒼龍が制空権を確保しに来たわね」

 


龍驤「制空権は取る。ことが終われば指示通りの艦載機を放てばそれでいいだけの簡単な指示やで」

 

 

龍驤「卯月、いける?」

 

 

卯月「流星改42機、熟練だと思われる九九艦戦18機、烈風18機、彗星一二甲6機の」

 

 

卯月「計84機」

 

 

卯月「瑞鶴のためにいうけど、装備データからして」

 

 

卯月「飛龍改二、蒼龍改二の3スロットに積んでいるのが流星改」

 


卯月「それぞれ1スロットに積んでいるのが、九九艦戦と烈風、蒼龍の3スロットに彗星一二甲」

 

 

卯月「友永隊と江ノ草隊は温存ぴょん。ま、今の数だけでも改でもない瑞鶴と軽空母龍驤改だけではきつい」

 

 

卯月「アブー、少し前に出るから手伝って。記録偵察機は堕としてはダメぴょん」

 

 

卯月「うーちゃん山城の相手もあるから、半分任せてもいいぴょん?」スイイー

 

 

阿武隈「はい、艦載機相手なら」スイイー

 

 

卯月「それではまず手探りに」

 

 

ドンドン!

 

 

卯月「ふむ、艦載機の熟練度は把握したぴょん」

 

 

卯月「それでは口上を」

 

 

卯月「この威力と距離を犠牲に連射性能を高めた12.7cm連装機銃砲改修装備2丁で」



卯月「防空駆逐不在の穴埋めをしていた睦月型真のガンナーの力、お魅せしましょうびしっ!」




ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!

 

 

2

 


蒼龍「なに、あれ……」

 

 

蒼龍「乙さん乙さん」

 

 

蒼龍「制空権、無理でした。飛龍も含め、発艦した艦載機、ほとんど撃墜されました」

 

 

蒼龍「卯月と阿武隈とかいう」


 

蒼龍「防空に秀でているわけでもない二人に。その後に瑞鶴が流星を発艦し、制空権確保されました」

 

 

蒼龍「いかが致しましょうか」

 

 

乙中将「いーよ。悪い方向だけど想定内でしょ。あの阿武隈は甲さんから声かけされる素質持ち。今はまだ立ち直れていないみたいだけど」

 

 

乙中将「……卯月のほうは想像以上だね。睦月型だとなめないように」

 

 

乙中将「あの卯月は確実に潰す。戦艦と引き換えでも、退場させる。友永隊や江ノ草隊に同じことやられたら」

 

 

乙中将「最悪だからねー……」

 

 

乙中将「作戦通りに」

 

 

乙中将「山城さん聞こえているね?」

 

 

3

 

 

山城「もちろんです」

 

 

山城「やはり予想通りに卯月は戦艦に食いついてきたわね」

 


山城「でも、なによ、分散って」

 

 

山城「陣形もなにもないわね。たかが駆逐艦1匹……」

 

 

ドンドン!

 

 

山城「でも、当たらないわ……」

 

 

山城「なんなのアレ……」マッサオ

 

 

卯月「隙あり」

 

 

ドンドン!

 

 

山城「駆逐艦相手に小破だなんて」

 

 

山城「というかなんで一発も外さないのよ!」

 

 

卯月「外す方がおかしいぴょん。練度あげなきゃ命中に不備があるだなんて才能ないだけだぴょん」

 

 

卯月「戦艦ならうーちゃんが口調付け忘れるくらいの戦いはしてみろっぴょん」

 

 

山城「……まあ、駆逐艦のくせに強いとは聞いていたし、そっちから来てくれたのはありがたいわ」

 

 

山城「早々に沈める予定なのよ」ジャキン

 

 

卯月「やってみたまえ」

 

 

卯月「さすが戦艦のくせにうーちゃんに勝てないだけあって、強さの意味を見誤ってるぴょん」

 

 

山城「うるさいわね、中学生が」

 

 

山城「沈みな……さい!」

 

 

ドオオン!

 

 

卯月「ブラ鎮で鍛えた雑草魂。演習でも人間を仕留める度胸が必要と」

 

 

山城「ほんとに跳躍できるのね! その艤装、無茶苦茶じゃない!」

 

 

卯月「人間が武器持って戦っているだけなのに、大体のやつは馬鹿みたいに砲撃、雷撃、だぴょん」


 

卯月「ほぼ真上を取った!」

 

 

山城「空から撃ってくるのは知ってるわ。だから高角砲を装備してるのよ!」ジャキン

 

 

卯月「もともと無傷で勝とうとは」

 

 

山城「撃って来ないのかしら?」

 

 

卯月「そちらは撃たないと終わる」

 

 

山城「相手が味方でもこの演習では全力なのよ。沈みな、さい!」

 

 

ドオオン!

 

 

山城「……、……」

 

 

山城「はああ!?」

 

 

山城「避けたの!?」

 

 

卯月「これぞ魔改造によるウサギ要素」

 

 

ザッパーン!

 

 

卯月「こつこつ削ってる暇はないし、うーちゃんは早期退場予定」

 

 

ドンドンドン!

 

 

卯月「前進全速」

 

 

山城「近距離から更に寄って……」

 

 

山城「止まりなさいよ! 衝突する気なの!?」

 

 

ドオオン!ドオオン!

 

 

卯月「む、動揺してるのか、まだまだだなー。精度が落ちたぴょん」

 

 

卯月「よし、アタック!」

 

 

山城「いやああああっ!」

 

 

5

 

 

暁・響・雷「」

 

 

ぷらずま「あの卯月はやはり使えますね」

 

 

ぷらずま「右の艤装が犠牲になりましたが、山城を一気に中破まで」

 

 

ぷらずま「艤装が壊れるとバランスが崩れて海上操行が難しくなるのに、卯月さんは普通に動けるのですか」

 

 

ぷらずま「お姉ちゃんズ、駆逐艦でも戦艦に勝てるようなのです」

 

 

暁「あんな風に跳べないわよ!」

 

 

雷「全っ然、参考にならないわ!」

 

 

響「私も跳んでみたいな」

 

 

提督「あれは卯月さんの素質が特異なだけで、同じ性能を宿しても怪我するだけかと」

 

 

響「……山城さんを中破させたとしても、卯月さんも中破だよ?」

 

 

雷「駆逐艦で戦艦と互角ならこちらの勝ちじゃないかしら」

 

 

提督「いや、逆です。卯月さんはただの駆逐艦ではありませんから」

 


提督「戦艦1名の犠牲にあの卯月さんを戦闘不能にされたのなら、こちらの被害のほうが大きいです」

 

 

提督「あの子を防空駆逐として働かせているのはこちらの不備です。空母関係の地力が足りず、その穴埋めをしてもらっています」

 

 

提督「本来の卯月さんは対空、砲雷撃、対潜、夜戦の全てにおいて高性能なオールラウンダーです」

 

 

提督「そのように明石さんが艤装をあの卯月さん用に改造しています」

 


提督「今後あの子の真価を引き出せるように皆さんにも鍛練に励んでもらわなければなりません」

 

 

ぷらずま「●ワ●」

 

 

ぷらずま「さらりと山城さんを見下すそんな司令官が好きなのです」

 

 

提督「決して見下しているわけでは……あの人は粗が目立つだけで、乙中将の艦隊らしく」

 

 

提督「根性値が高いです」

 

 

提督「まあ。そこでもうちの卯月さんが負けてるとは思えませんけどね」

 

 

提督「お茶を」ズズズ

 

 

ぷらずま「これを。山城の後ろに射程長のやつがついているのです」

 

 

ぷらずま「楽しくなってきましたね。乙中将はこちら寄りだと思ってはいたのです」

 

 

ぷらずま「演習とはいえ、囮を使うとは」

 

 

提督「……」ズズズ


 

6

 

 

山城「役割が果たせればそれで」

 

 

卯月「うーちゃんの艤装を離せっぴょん!」

 

 

ドンドンドン

 

 

卯月「馬鹿力だぴょん!」

 

 

ドオン!

 

 

卯月「射程長の扶桑が来てるぴょん! うーちゃん沈めるための囮の役割とか………」

 

 

山城「素質は認めてあげるわよ……」



山城「砲撃音が聞こえたかしら。直撃でなくとも、あなたの艤装、装甲が死んでるから後一撃で終わるわよね」

 

 

卯月「かくなる上は」 


 

卯月「くれてやるぴょん!」

 

 

ドオンドオン!

 

 

卯月「痛っ……」

 

 

ドンドンドン!

 

 

…………ブチッ


 

卯月「さよならぴょーん。あ、そうそう」クルッ

 

 

山城「え……ええ?」

 

 

山城「右腕を」

 

 

山城「砲撃で切り離した……?」

 

 

卯月「入渠で治るし。というか敵から眼を離すなっぴょん」

 

 

卯月「魚雷、発射」

 

 

山城「距離を考えなさいよ!」

 

 

卯月「お前が眼を離した隙にもうしたぴょーん。ジャーンピング回避っ」

 

 

ドオオオン


 

卯月「おー、飛んできた砲弾も当たってる」

 

 

卯月「大好きなお姉様に沈めてもらって本望じゃ?」

 

 

卯月「ぷっぷくぷ」

 

 

ドオン!

 

 

卯月「……あ」

 

 

山城「くた、ばれ!」

 

 

卯月(まだ、撃つ気力が)

 

 

卯月(……損傷的に誰かを、道連れにしよー)

 

 

卯月(動けは、するし)

 

 

阿武隈「卯月ちゃん! 捕まってください!」

 

 

卯月「まだ、自力で動ける程度の大破だぴょん」

 

 

阿武隈「完全に動けなくさせられる前に、だよ! 卯月ちゃん3人から狙われてるから!」

 

 

山城「……ああ、ごめんなさい。駆逐艦にやられるだなんて、恥を……」

 

 

夕立「乙さんから、卯月は確実に沈めろって命令が来てるっぽい!」



7

 


扶桑「夕立と一緒に追う、のですか?」

 

 

乙中将「うん。完全に動けなくなるまで。後一発で終わるし、阿武隈は卯月を抱えてるから、低速でも追えるよね」

 

 

乙中将「卯月が大破でも離脱せずに海域内に留まるだけでも、両方の艦隊が全滅した場合、大破艦ある向こうの勝ちになるシステム」

 

 

乙中将「沈めてもいいよ。向こうはそういうやつらだから命を気遣って勝ちを遠退かせる遠慮は無礼」

 

 

乙中将「伊58を動かせていないのが気になる。潜水艦に気を付けてね」


 

扶桑「敵陣に切り込む形になって深追いは夕立とともに包囲される危険性が出ますが……」

 

 

乙中将「大丈夫。龍驤……か瑞鶴、それにわるさめちゃんも離れるから」

 

 

乙中将「瑞鶴とやることになりそうだけど、出来れば阿武隈のほうを狙ってね。当たれば卯月も巻き込まれるから」

 

 

扶桑「了解しました」

 

 

8

 

 

ぷらずま「ん、駆逐艦が戦艦を連れて突っ込んできたのです?」

 

 

ぷらずま「わざわざ陣形から離れて瑞鶴さんと龍驤さんとゴーヤちゃんがいるところに」

 

 

ぷらずま「鴨ネギなのです」

 

 

提督「…………」

 

 

雷「電、乙さんのところの夕立はこういう時、化け物みたいに強いわ!」

 

 

ぷらずま「それでもぽんこつ空母がやられる程度じゃないですか」

 

 

提督「いえ、危ないですね……」

 

 

ぷらずま「?」

 

 

提督「さすがの嗅覚です。この段階で伊58さんと阿武隈さん龍驤さんが潰されると敗けが色濃くなります」

 

 

提督「……龍驤さん」

 

 

龍驤「指示?」

 

 

提督「その場から離れて飛龍さんと蒼龍さんのお二人を沈めに」

 

 

提督「阿武隈さんと、わるさめさんをつけます」

 

 

龍驤「さっきからおっそろしいくらい強い天山君達に、瑞鶴とうちの航載機やられて制空権危ういんやけど……」 

 

 

龍驤「それ、ゴーヤちゃんとか戻ってくる卯月に向かうかもしれんよ?」

 

 

提督「構いません。勝ちを狙います」

 

 

提督「その場にいることが不味いのですが、艦載機を相手にしながら離脱で。ゴーヤさん達に向かう艦載機は放置で構いません。大破ですが卯月さんはそれでも弾さえあれば艦載機を墜とします」

 

 

提督「瑞鶴さんに任せるので」

 

 

龍驤「了解」


 

提督「阿武隈さん」

 

 

阿武隈「はい!」

 

 

提督「ゴーヤさんの魚雷の射程距離まで下がったら、卯月さんを置いて龍驤さんと合流して二航戦を沈めに」

 

 

阿武隈「……卯月ちゃん、大丈夫?」

 

 

卯月「まあ、弾も燃料も少し残ってるし、ゴーヤと瑞鶴の援護があれば、なんとかなるし」

 

 

卯月「艦載機……くらいなら、撃ち、墜とせるぴょん」

 

 

阿武隈「……うん、分かった」

 

 

阿武隈「提督、阿武隈すぐに龍驤さん達と合流します」

 

 

9

 

 

龍驤「わるさめ、阿武隈を拾って二航戦を仕留めに行くでー」

 

 

わるさめ「はい、今司令官から指示をもらいました」


 

わるさめ「はい、龍驤さんを護衛しながら二航戦の懐に近づきます!」

 

 

龍驤「しっかしわるさめ、今日なんかいつもとキャラ違うやん」スイイー

 

 

わるさめ「まあ、こっちよりさー」

 

 

わるさめ「春雨ちゃんみたいながんばり屋純真奥手少女のほうが」

 

 

わるさめ「男受けがいいと思うんだよね☆」スイイー

 

 

龍驤「……」

 

 

わるさめ「つーか戦争に身を投じて少女の白さが黄ばまないほうがおかしいでしょお?」

 

 

わるさめ「深海棲艦と一緒にいたし、精神のトチ狂い度なめんな☆」

 


わるさめ「司令官には春雨ちゃんのほうっていってあるけどねー」

 

 

龍驤「絶対バレとるやろ……」

 

 

わるさめ「それでもチクったらー、口に手を突っ込んで体内からその胸のゼロ戦えぐり取るから」

 

 

龍驤「ゼロやない!」

 

 

わるさめ「っと、阿武隈きました」

 

 

阿武隈「お待たせしました。行きましょう!」

 

 

龍驤「よっしゃ。二航戦を潰せばかなり楽になるで」

 

 

10

 

 

わるさめ「なんなのあの艦載機!」ガガガ

 

 

わるさめ「一機も撃ち墜とせない!」

 

 

龍驤「飛龍のチート艦載機の友永隊やって」


 

龍驤「うちの烈風ちゃん達でも6機しか撃墜できんかったし」

 

 

わるさめ「うっとおしいよね。ブンブン耳元で飛び回る蚊はさあ!」ガガガガ

 

 

ドオンドンドンドオン!

 

 

天山君「!」

 

 

ドンドンドンドンドンドオン!

 

 

阿武隈「はい、10機撃墜です!」

 

 

龍驤「アブーすごいやん!」

 

 

わるさめ「昔の面影! やるじゃん!」

 

 

阿武隈「えっへん!」

 

 

阿武隈「砲弾同士をぶつけたり、艦載機を撃ち堕としたりは得意です!」

 

 

龍驤「っく、ほんま敵を攻撃できないのが悔やまれるで」

 

 

阿武隈「できます。当てられないだけで!」

 

 

阿武隈「それより、飛龍さんと蒼龍さんにもっと近づきますよ。龍驤さんのやり方の性質上、近づけるだけ近づいたほうが有利ですから」

 

 

阿武隈「あっ、それと提督からの作戦なんですけど……」

 

 

11

 


飛龍(天山君が半数以上もやられちゃった)

 

 

飛龍(戦果は龍驤小破と瑞鶴小破かー。瑞鶴と違って制空権すっぱり放り投げて烈風は味方の被弾を抑える立ち回りみたいだったし)

 

 

飛龍(龍驤さんが予想よりもつよ……)



飛龍(いや、上手い)

 

 

飛龍(歴戦の空母なだけあるね。加えて空母の私からして喉から手が出るほど欲しい妖精可視の才能持ち)

 

 

飛龍(鼻と目もなかなか。司令官の経験も活きてるね)

 

 

飛龍「まー、まずは蒼龍のほうに行くでしょ」チラッ

 

 

神通「……行きますかね」

 

 

飛龍「私達のところより近いし、それに蒼龍は単艦でいるし」

 

 

飛龍「みんな、砲雷撃戦やるなら友永隊より江ノ草隊のほう潰したがるよ?」

 

 

神通「……動きがありますね」

 

 

神通「駆逐艦春雨が蒼龍さんのほうに向かっています」

 

 

飛龍「龍驤と阿武隈はこっち来たね」

 

 

飛龍(こっちは改二で、向こうの龍驤さんは改止まり、阿武隈なんてそもそも改ですらないのに)

 

 

飛龍(わるさめが囮……で、蒼龍のほうに行ったと見せかけて旋回してくるのはないよね)

 

 

飛龍(挟み撃ち、しかも蒼龍に背中向けるとかただの撃沈志願者だし)

 

 

飛龍(……わざわざ戦力分散させて神通のいるこっちに来るとか)

 

 

飛龍(もしかして)

 

 

飛龍(なめられてる、か、煽られてる?)

 

 

飛龍「色々とずれてきてるね」

 

 

神通「そう、ですね」

 

 

神通「合同演習時で見た限り、向こうは勝ちに固執して、まずは旗艦の扶桑さんを潰しにかかると思ってました」


 

神通「わるさめさんは未知数の部分がありますからね。恐らくそれ頼りだと思います」

 

 

飛龍「……ま、予定調和内だし、蒼龍のほうに残りの天山君、向かわせとくか」


 

飛龍「艦載機、発艦!」

 

 

飛龍「…………うん?」

 

 

神通「龍驤さん達のほうから艦載機が飛んできているみたいです……」

 

 

飛龍「あ、あれ、多すぎない?」


 

神通「30機の流星です」

 

 

飛龍「ちょっとちょっと!」

 

 

飛龍「龍驤改の搭載数は43で、ほとんど烈風だったはず……あれ、数が合わない……」

 

 

飛龍「も、もしかして?」

 

 

神通「……」


 

神通「瑞鶴さんが向こうの戦場を放り出してこちらを潰しに来てますね」

 

 

飛龍「ってことは、大破の卯月と、魚雷命中精度ポンコツの伊58で、扶桑と夕立の相手させてるの……?」

 

 

神通「……まあ」

 

 

神通「そこまでリスクと犠牲を払っている以上」

 

 

神通「凌げば私達の勝利です」

 

 

神通「作戦通り、私は阿武隈さんを重点的に狙いますね」

 

 

12

 

 

山城「戻りました。すみません、不覚を」

 

 

乙中将「役目は果たしてくれたよ。そーいうのは後でね」

 


山城「はい……すみません」

 

 

山城「ところで今の状況」

 


乙中将「阿武隈が友永隊を撃墜できるのなら、まずはあの場で突出した扶桑と夕立を沈めにかかると」


 

乙中将「瑞鶴を飛龍のほうに使う? 大破の卯月とあの伊58で扶桑と夕立を抑えられるだなんて、すごく薄い可能性だし……」

 

 

乙中将「こんなよく分からない博打、らしくないというか……」

 

 

乙中将「うーん……嫌な予感が」

 

 

山城「……」

 

 

乙中将「……、……」

 

 

山城「向こうの提督の指示は効果的でも予想の斜め下ね。それがよく分かりました。大破でも容赦はしない相変わらずの酷使ですね」 

 

 

乙中将「……だよねー」

 

 

乙中将「扶桑、ちょっといい?」

 

 

扶桑「はい。瑞鶴は艦載機を飛龍のほうへと飛ばしていますし、私と夕立だけで必ず……」

 

 

乙中将「艦載機なくても空母は戦えるから気を付けてね」

 

 

扶桑「砲を装備している、ということではしょうか?」

 

 

乙中将「いんや、報告してもらった艦載機情報からして積んでないはずだよ」

 

 

扶桑「……?」

 

 

乙中将「徒手空拳でくるかも」

 

 

扶桑「!?」

 

 

乙中将「甲さんとこの木曾さん江風さん大井さんもそうだったでしょ」

 

 

乙中将「大井さんは滅多にないけど、あの人ら魚雷や砲弾切れたら素手で戦艦だろうともボコり出すからね」


 

13

 

 

瑞鶴「後は私とゴーヤに任せて、卯月は下がってなさい。もう弾もないでしょ?」

 

 

卯月「囮くらいならしてやるぴょん」

 

 

瑞鶴「肝の座った中学生ねえ。うちの提督が声をかけるわけだ」

 

 

卯月「キスカのように虚しく生き残るくらいなら」

 

 

卯月「沈むまで戦う」

 

 

卯月「と、まあ、この通りしゃべる程度の元気はあるし……」

 

 

提督「卯月さん、離脱してください」

 

 

卯月「うん? 使い潰さないぴょん?」

 

 

提督「ここらが引き時でしょう。後は大丈夫ですよ」

 

 

提督「恐らく自分の作戦で勝てると思ってあまりやる気を出さないであろうわるさめさんに追い込みかけるためにも卯月さん離脱を」

 

 

卯月「……了解、先にあがって、入渠させてもらうぴょん」

 

 

提督「それでは瑞鶴さん、お願いします」

 

 

瑞鶴「まっかせて! 太陽が沈みきる前に扶桑と夕立のどちらかは沈めてやるわ!」

 

 

提督「持たせてもらえれば構いません。その時が来るまでゴーヤさんを絶対に沈ませないように守ってください。それ優先で」

 

 

瑞鶴「おっけー」

 

 

提督「ゴーヤさん」

 

 

伊58「提督さん、扶桑が低速とはいえ、多分ゴーヤの魚雷はかなーり近づかないと当たらないでち」

 

 

提督「ご安心を」

 

 

提督「当てなくても構いません。ただ撃つことが大事です」

 

 

伊58「その訳はなんでち?」

 

 

提督「長くなるので割愛します」

 

 

提督「とにかく自分が指示するタイミングで。勝敗には一切影響しない一撃なので」

 


提督「気楽に撃っちゃってくれて構いません」

 

 

伊58「ま、それなら気楽にやらせてもらうでち」

 

 

提督「指示するまで逃げに徹してください。夕立さんが爆雷を積んでいますが、出来れば被弾しないように立ち回り、かつ」

 

 

提督「扶桑さんと瑞鶴さんを1対1の形にするのが理想です」

 

 

伊58「あー、ゴーヤは魚雷へたっぴだけど、そういうのは割といけるでち」

 


提督「幸運の女神をつける方法」

 

 

提督「試してみたく」

 

 

伊58「?」

 

 

伊58「まー、提督さんがそういうのなら従うでち」

 

 

14

 

 

瑞鶴「さて、艦載機も使い切って役目を果たして戻ってくるかも分からないし」スイイー

 

 

瑞鶴「ぽいぬはゴーヤ狙い、と」スイイー

 

 

扶桑「お相手しに参上しました」

 

 

瑞鶴「ご丁寧に通信どーも」

 

 

瑞鶴「瑞鶴。よろし……!?」

 

 

瑞鶴「汚いな! 応答した時に合わせて砲弾飛ばしてきた!」

 


瑞鶴「避けられな……オラア!」


 

扶桑「46cm三連装砲よ。戦艦みたいな真似して殴り落としても」


 

扶桑「腕が破壊されたのではなくて?」

 

 

瑞鶴「……だから?」スイイー

 

 

瑞鶴「なめんじゃないわよ」スイイー

 

 

瑞鶴「撃ってきなさいよ」

 

 

瑞鶴「どんどんと、距離が縮まっているのは分かるでしょ」

 

 

瑞鶴「至近距離、私が飛び込んだら」

 

 

瑞鶴「一撃で砕いてやら」

 

 

15

 

 

扶桑(……速過ぎますね)

 

 

扶桑(あの速力、島風さんを思い出します)

 

 

扶桑「なんで、そんなに……」

 

 

瑞鶴「あっはっは、身軽なのはいいわね。使えないのなら要らないじゃん?」

 

 

扶桑「本当に無茶苦茶やる人達ですね……」

 

 

扶桑「退場なさい!」

 


ドンドンドン!

 

 

瑞鶴「いい砲撃精度ね」

 

 

瑞鶴「飛行甲板盾!」

 

 

扶桑「飛行甲板も弓も艤装を捨てて重量を軽く……正規空母として恥を知るべき愚行だわ」

 

 

瑞鶴「なるほど、鎮守府(闇)に対して品とかそういうこといっちゃうか」

 

 

瑞鶴「早く頭を切り替えないと。あんた遅いから逃げ切れないし、砲撃も外れてる現実」

 

 

瑞鶴「あんたここで沈むよ!」

 

 

扶桑「上等、です。力を活かすケンカ殺法は戦艦として嗜みと、金剛型の皆さんからご教授頂いております」

 

 

扶桑「その砕けた拳でなおも立ち向かう精神力に敬意を表して」

 

 

瑞鶴「……、……捕まえ」


 

瑞鶴「た!」

 

 

ドガッ!

 

 

16

 

 

龍驤「さて、飛龍をやるで!」

 

 

龍驤「艦載機のみんな! お仕事お仕事ー!」

 

 

龍驤「アブー、あの砲撃頼むでー」

 

 

阿武隈「撃ち墜とします!」

 

 

龍驤「なんか突っ込んできた神通の相手も任せるよ」

 

 

龍驤「温存してた残りの友永隊とその他の艦載機は任せとき」

 

 

阿武隈「はい! では作戦通りに!」



17

 

 

飛龍「イタタタタ!」

 

 

飛龍「あの流星、熟練度低いからって数打ちゃ当たるだよ!」

 

 

飛龍「というか、下手すぎて味方の艦載機にも当ててるし!」

 

 

飛龍「あんなのすぐにこっちの熟練九九観戦で撃ち墜としてやる!」

 

 

九九観戦「ビシッ」

 

 

ガガガガ

 


飛龍「よーしよし、阿武隈は神通の相手で龍驤のフォローは無理そうだ」

 

 

龍驤「いっくでー」

 

 

飛龍「突っ込んでくる意味が分からないけど、神通の横は抜けないよ!」

 

 

ドオン!

 

 

飛龍「被弾した! ナイス神通!」

 

 

龍驤「ち、首のアクセサリのギミック知ってるな……」

 

 

飛龍「まだ突っ込んでくるの!」

 

 

神通「抜けられましたが、中破です。艦載機はもう発艦できないはずです!」

 

 

飛龍「ふーむふむ、あの飛行甲板その首のアクセサリのギミックで浮いてんだね」

 

 

龍驤「せやで。おっとっと、飛行甲板が海に沈む」ガシッ

 

 

飛龍(あの烈風の塊、やけに低空飛行してくるなー)

 

 

飛龍「突っ込んで卯月みたいにタックルでもしてくるのかな!」

 

 

ドオオン!

 

 

神通「飛龍さん! 阿武隈がそちらに砲撃しました!」

 

 

ドオオン!

 

 

ザッパァン!

 

 

飛龍「外れ……交叉弾!」

 

 

飛龍「って、水柱から流星が抜けてきた!」

 

 

流星「アテルデ」ガガガ

 

 

飛龍「このくらい避けて!」

 

 

龍驤「上やでー」

 

 

飛龍「……ん?」

 

 

ドオオン!

 

 

彗星一二甲「チョクゲキ」

 

 

飛龍(上手いいい! このタイミングを狙って爆撃!)

 

 

飛龍「というか、いつ、彗星、なんか発艦させて……」

 

 

龍驤「あはは、神通の砲撃当たる瞬間や!」

 

 

龍驤「飛行甲板逆にして背中のほうから見えんようになあ」

 

 

飛龍(あー、あの大量の烈風が低空飛行してたのは、こちらから龍驤の動作を見にくくするためで)

 

 

飛龍(砲撃直撃の火災と煙で)

 

 

飛龍(一艦だけ発艦した彗星、見落としたのか……)

 

 

飛龍(交叉弾の水柱と、そこから出てきた流星に、気を取られるタイミングで、爆撃)

 

 

飛龍「敵ながら、天晴れ……!」

 

 

飛龍「乙さああん、多聞丸うう」

 

 

飛龍「ずみまぜえええん!」

 

 

バチャン

 

 

龍驤(もう暗いなあ……夜戦までに終わらせたかったけども)

 

 

龍驤「さて神通、年貢の納め時やで……って」

 

 

龍驤「なんか艦載機、20機くらいきたんやけど!」

 

 

ドオオン!

 

 

龍驤「あかーん! チート艦爆やん!」

 

 

龍驤「ちょっと待ってー!」

 

 

蒼龍「江ノ草隊! 飛龍の仇を!」

 

 

龍驤「蒼龍!? わるさめはなにしとんの!?」

 

 

龍驤「わるさめ! 聞こえる!?」

 

 

わるさめ「ご、ごめんなさい。ちょっと私には面倒臭いし、可愛い制服が焦げそうなので旋回して逃げてしまいました。後は、丸投げしますから仕留めてみせてくださいねっ」

 

 

龍驤「春雨ちゃんの口調やけど、いってる内容は地のわるさめのほうやん!」

 

 

龍驤「男受けよさそうながんばり屋さんの春雨ちゃんどこ行ったん!?」

 

 

18

 

 

ぷらずま「●ワ●」

 

 

ぷらずま「ケジメ案件なのです」ジャキン


 

提督「落ち着いてください」

 

 

ぷらずま「止めて欲しくないのです。海上であの出来損ないを資材に変換してくるのです」

 

 

龍驤「キミ、聞こ、える……?」

 

 

龍驤「江ノ草隊直撃、大、破や」

 

 

提督「お疲れ様でした。戻ってきて入渠お願いします」

 

 

龍驤「大丈夫なん?」

 

 

提督「ええ、パターン分岐的に敗けの目が出るところまで押し込まれましたが、想定内通りに向こうの狙いは」

 

 

提督「神通でわるさめさんを潰す。そこが勝敗に直結する展開です。余計に居残ると、わるさめさんを追い込めません」



提督「わるさめさんの甘えを削ぐためにも、上がって頂いて構いませんので」



龍驤「勝てる?」



提督「もちろん。万が一はありますが」



提督「孤立した阿武隈さんもすぐにやられてしまうと思います。が、行けます。ゴーヤさんが上手く夕立さんを相手してくれていますので、まだ余裕といってもいいです」

 

 

暁「えっと、相手は扶桑さん、夕立さん、蒼龍さん、神通さんで」

 

 

響「こっちは春雨さん、ゴーヤさん、阿武隈さん、瑞鶴さんだね」

 

 

雷「孤立した阿武隈もすぐにやられちゃうんじゃないかしら。瑞鶴も艦載機ほとんど飛龍のために使い潰したし……」

 

 

暁「えっと……」

 

 

響「暁、こっちが不利だよ」

 

 

暁「わ、分かるわよそのくらい! 失礼ね!」プンスカ

 

 

雷「春雨さんがもう少し抑えといてくれたら龍驤さんも大破しなかったし、こっちが有利になれたわねえ」

 

 

ぷらずま「戦犯は万死」

  

 

19


 

提督「わるさめさん」

 

 

わるさめ「なにかな☆」

 

 

提督「戦う気がないのなら、離脱してもらいたいのですけども」

 

 

わるさめ「怒ってる?」

 

 

わるさめ「提督さんの指示って全て『お願い』なんでしょお?」

 

 

提督「まあ、そうなのですが」

 

 

わるさめ「大丈夫大丈夫。駆逐艦らしく日が暮れたら本気出すからさー」

 

 

ぷらずま「わるさめさん、演習終わったらぷらずまとサシで演習してもらうのです。拒否権はありません」

 

 

ぷらずま「事故死させてやるのです」


 

わるさめ「ちょ、キレすぎ」

 

 

提督「ええと、わるさめさん」

 

 

わるさめ「止めておいて? ね?」

 

 

提督「それも『お願い』となるので、ご理解ご協力をお願いします」

 

 

わるさめ「……っち。結果出せばいいんでしょ結果をさー」

 

 

わるさめ「ぷらずま」

 

 

わるさめ「リクエスト聞いてあげるよ。誰を沈めて欲しい?」

 

 

ぷらずま「ダボが」

 

 

ぷらずま「敵全てに決まってるのです」

 

 

わるさめ「はいはーい♪」

 

 

わるさめ「神通から嫌な気配するけど、どいつも私より強いとは思えないー……」

 

 

わるさめ「提督さん、お願いがあるー」

 

 

提督「はい?」

 

 

わるさめ「大破残しをなくして追い込みかけてる気だろーけどさ、わるさめちゃんやる気が出ねっス」

 

 

提督「……」

 

 

わるさめ「わるさめちゃんが『はいここ』っていったらそこにいる皆と一緒に通信で」

 

 

わるさめ「『わるさめちゃん大好き愛しているキャー!』っていって欲しいかなー」



わるさめ「それならやる気出ると思うんだ」



提督「……分かりました。阿武隈さんから通信来たので切りますね」

 

 

阿武隈「提督さあああん!」

 

 

提督「あ、まだ元気なんですね」

 

 

阿武隈「酷いです!」

 

 

阿武隈「龍驤さんが離脱したので、蒼龍さんと神通さんに追われてます! ど、どうしたら……」

 

 

提督「数分でいいです。なんとか逃げ回ってくれ、としか」

 

 

提督「わるさめさんが来ると思うので」

 

 

提督「大破したら、連絡くださいね」

 

 

阿武隈「し、仕方がない状況ですしね……」

 

 

阿武隈「攻撃しても構いませんか?」

 

 

提督「もちろんです」

 

 

提督「逃げるも攻撃するのも必死になってください。阿武隈さんなら上手く行くと思ってます」

 

 

提督「できますよ。あなたの才能は凄まじいですから」

 

 

阿武隈「……はい! 了解です!」

 

 

20

 

 

ドオン!

 

 

蒼龍「きゃっ!」

 

 

阿武隈「やった! 1発だけ当てられました!!」

 

 

蒼龍「っく、中破艦載機発艦不可」

 

 

蒼龍「江ノ草隊と神通から逃げ回っておまけに攻撃当ててきて……」

 

 

蒼龍「あの阿武隈、基礎ステータス高過ぎるよ……」

 

 

蒼龍「落ちこぼれってなんだっけ……」ポンポン

 


蒼龍「今忙しいから肩を叩かないで」



蒼龍「……ん?」クルッ

 



















●ω●





蒼龍「う、うわああああああ!?」クルッ、スイイー



蒼龍「い、いつの間に……」



蒼龍「そ、そっか。これが夜のステルスの、怖さ……」




わるさめ「リュックからスピーカーより」



わるさめ「今回のBGMオーン!!!」




下弦の月が 朧に揺れる♪


夜を 包む叢雲♪




蒼龍「この能笛の前奏、そして歌詞は……」



蒼龍「間違いなく、甲賀忍法帖……!!」



蒼龍「甲賀忍法帖」



蒼龍「忍者」



蒼龍「忍ぶ……」



蒼龍「ステルス……」



蒼龍「わるさめちゃんってか!!」ギリッ




磔られた♪

番う雛♪

絡める 非情の罠♪



わるさめ「『はいここ!!』」












提督一同「わるさめちゃん大好き愛しているキャー!!」



わるさめ「……」ゾクゾクッ



わるさめ「トラ☆ンス!」




嗚呼 今も燻ぶ♪




蒼龍「赤い輝きを灯した、艤装……?」

 

 

蒼龍「乙さん! 乙さああああん!」

 

 

乙中将「甲賀忍法帖は聞こえるよ……陰陽服もそういうことだね。ま、あの子の本気は見ておいて損はないから」

 

 

 

 

 

 

 

蒼龍「鬼です鬼です鬼ですう!」

 

 

蒼龍「た、耐久数値500のっ!」

 

 

蒼龍「戦艦水鬼!」

 

 

乙中将「全艦載機をわるさめちゃんに向けて」

 

 

ドオン!

 

 

阿武隈「ぎゃん!」

 

 

蒼龍「あ、神通さんが、ああ、阿武隈を大破させました!」

 

 

乙中将「落ち着きなって」

 

 

乙中将「もう夜戦に突入するよ。扶桑と夕立は足を止められてるけど」

 

 

乙中将「神通と夕立が残るくらいだと思ってたけど、予想よりもかなりやられてないし」

 

 

想い胸に 聢と宿らば♪



蒼龍「あいつ、振り付けも完璧で妙な色気のあるオリジナリティ混ぜて……」



乙中将「く、ガチをコメディに変えてくるこのノリとテンションの異端児……」



蒼龍「踊りながら江ノ草隊を避けて、近付いて」



蒼龍「あ、あ、江ノ草が削ってくれてますけど、無理です。すみません……」

 


殲♪


 

わるさめ「殲ッ!!」

 

 

ドオオン!

 

 

蒼龍「……あ」バチャン

 

 

わるさめ「キャハハ(*≧∀≦*)」

 

 

ヒャッハードンドン!

 

 

わるさめ「艦載機とかいう羽虫うっざいからあなたからー。そんなザコ装備で」

 

 

わるさめ「わるさめちゃん倒せないしー?」

 

 

わるさめ「蚊が細々と血を吸い取って人を殺すより、人間が蚊を叩き潰すのがはやいに決まってんじゃん!」

 

 

わるさめ「にげろにげろー!」

 

 

わるさめ「初期バイオでいうタイラントクラスの敵だぞー!」

 

 

神通「……」


 

わるさめ「●ω●」ア?

 

 

わるさめ「あんたさ、神通っぽくないよねー」

 

 

わるさめ「あの特徴的な前髪じゃないしー。井戸の底から出てくる化け物みたいなキモい髪形だよねー」

 

 

わるさめ「おまけに手足なげーな」



神通「……」ジャキン

 

 

ドオン!

 

 

わるさめ「なんだそりゃ」

 

 

わるさめ「かゆいゾ☆」

 

 

わるさめ「キャハハ! 川内型軽巡一人でなにができるんだっての!」ジャキン

 

 

わるさめ「泣き叫びな!」

 

 

ドオオン!

 

 

21

 

 

瑞鶴「も、もう限界……」

 

 

夕立「今、潜水艦を攻撃するっぽい!」

 

 

伊58「提督さーん! まだでちか!」

 

 

提督「お待たせしました」

 

 

提督「まず瑞鶴さんナイスです。申し分ない時間稼ぎです」

 

 

瑞鶴「あー……今回は地味な活躍だったわ。今度は龍驤のポジやらせなさいよ……」

 

 

提督「……ええ、機会があれば」

 

 

提督「ゴーヤさん、戦艦扶桑にお気楽に魚雷をお願いします」

 

 

伊58「おっけー、魚雷、発射!」

 

 

ドオオン!

 

 

伊58「……め」

 

 

伊58「命中したでち! 扶桑、た、大破!」

 

 

提督「ナイスショットです」

 

 

提督「ではそのまま神通さんのところまで移動で、0距離でもなんでも許可しますので当ててくださいね」

 

 

伊58「うーん、夕立から逃げ切れるかなあ……」

 

 

瑞鶴「逃がしてあげるわよ」

 

 

瑞鶴「動くのでやっとだけど、まあ……数十秒くらいはなんとか……」

 

 

瑞鶴「ゴーヤ、行ってきなー」

 

 

伊58「ありがとう! 今度なにか奢ってやるでち!」スイイ-

 

 

夕立「っぽい!」

 


ドオン!

 


瑞鶴「まだ、まだ……!」



夕立「……」



ドンドンドンドンドン!




瑞鶴「よ、容赦ない、さすが狂犬……」



瑞鶴「やべ……何秒、持った……?」


 

バチャン

 

 

22


 

ぷらずま「勝つためとはいえ、私にあのような屈辱的な台詞を吐かせるとは……!!」



ぷらずま「隔離世までたゆたわせねば……」



暁「せ、戦艦水鬼ってホント?」ナミダメ

 

 

雷「まだ見たことないわねえ……」

 

 

響「見たことない方が幸せだね」

 

 

ぷらずま「わるさめさんのは似て非なるものですけどね」

 

 

響「まあ、驚いたけど、電と同じと聞いたときからなんとなく予想は」

 

 

響「それより司令官、私には伊58の魚雷が当たるのを確信していたように見えたけど、そっちのほうが気になる」

 

 

提督「いや、確信してはないですけど……まあ、データ上からの艦娘の不思議を」

 

 

響「?」

 

 

提督「ほら、うちの阿武隈さんは絶望的なキスカ戦で生き延びたでしょう。史実の軍艦阿武隈も状況は違えど生還しました」

 

 

提督「その他でも例えば艦娘が史実で沈んだ場所で戦うとなぜかトラブルで被弾したり沈みかけたり」


 

提督「そういうのがデータでは多いんですよね。運命染みたなにかがあるとしか思えないくらいです」

 

 

提督「軍では『史実効果』というみたいですね」

 

 

響「そういえば、扶桑さんがと阿武隈さんが沈んだ時って……」

 

 

提督「……まあ、演習ですし、当たればいいな、くらいの実験でしたけど」


 

ぷらずま「●ワ●」

 

 

ぷらずま「結果が全て、なのです」

 

 

提督「びっくりです。不確定要素が多すぎて作戦の主軸には組み込めませんが、実に想像が膨らみます」

 

 

響「ハラショー」

 

 

暁「ぷんすか! というかまずはゴーヤが成長したっていう可能性を考えてあげなさいよね!」

 

 

提督「そうですね。彼女のデータからしてあまりプレッシャーかけずに撃たせることで、かなり精度に影響するのかも、とは思って」

 

 

提督「当てなくていい、撃つことに意味がある、と強く伝えておきました。こちらかもしれません」

 

 

ぷらずま「多分そっちなのです。ゴーヤちゃんは練習時はよく当てるようになってますから。本番になると気負うタイプなのです」

 

 

雷「春雨、伊58と、神通、夕立。皆、夜戦で活躍できる艦ね」

 

 

暁「春雨さんなんて見当たらないわ。もはや春雨の形もしてないなにかじゃないっ!」

 

 

提督「そろそろ夜戦、ですね」

 

 

提督(神通さんと夕立さん)

 

 

提督(あの2隻……いや、今日の夕立さんはあまりギアが入っていない、ですね)

 

 

提督(神通、こいつにわるさめさんがやられる危険が、ある)



提督「こっちはわるさめさんというチート使っているのに、さすがです。乙中将艦隊、予想よりも食いついてきますね……」

 

 

提督(……少し博打を打ちますか)

 

 

ぷらずま「● ●」



23

 

 

わるさめ「神通大破確認。残りのぽ犬はすぐに海にポイしてやるぜ」

 

 

わるさめ「っと、飛んできたこれ、通信機?」

 

 

わるさめ「もしもーし! 乙中将?」

 

 

わるさめ「ざまあ!」

 

 

わるさめ「丙少将襲った時に右目を持っていかれたお礼参りしたかったんだよね。だから参戦したんだぞー」

 

 

乙中将「君が? 神通を?」

 

 

乙中将「まさか」

 

 

乙中将「あの子が恐ろしいのは」

 

 

――――ギュッ

 

 

わるさめ(ん、鉢巻きを、絞め直した?)

 

 

乙中将「大破してからだし!」

 

 

神通「……」キッ

 

 

わるさめ「眩しっ! た、探照灯!」

 

 

ドン!

 

 

わるさめ「っきゃ!」

 

 

わるさめ(……ハア? たかが軽巡の砲撃一発で鬼艤装の右装甲が半壊したあ?)

 

 

わるさめ「構わん! そのまま突っ込んで鬼艤装でブン殴ーる!」バキッ

 

 

神通「……っ」

 

 

わるさめ「夜だとあんたもチートみたいだし、遠慮はしないことにする!」

 

 

わるさめ「沈、メ!」

 

 

神通「…………」

 

 

ドオンドオン!

 

ドンドンドン!

 

 

わるさめ「ハアアア?」

 

 

わるさめ「高練度の戦艦でもないやつが単艦で……」

 

 

わるさめ「わるさめちゃん戦艦水鬼verと五分でやり合うとかふざけんなし!」

 

 

わるさめ「プライドに傷がついたっ! とことん付き合ってやら!」

 

 

ドンドンドン!

 

ドオオン!

 

 

わるさめ「うそうそ、うそォ!」

 

 

わるさめ「わるさめちゃんが……!」

 

 

わるさめ「押し負けて……!」

 

 

神通「……」ギロ

 

 

わるさめ「こ、怖、い……」ナミダメ

 

 

ドオオン!

 

 

神通「……あ」

 

 

神通「……、……」バチャン

 

 

わるさめ「だ、誰の、攻撃?」

 

 

伊58「探照灯装備で狙いやすいよ! 今日はよく魚雷が当たるでち!」キャッキャ

 

 

わるさめ「でち公、いや、でち様! でかしたあ!」

 

 

夕立「まだ夕立がいるっぽい!」

 

 

ドンドンドン!

 

 

わるさめ「く……ふざけた口調とキャラのくせに神通みたいな威力して!」

 

 

夕立「口調とかキャラのことはあなたにいわれたくないっぽい!」ドンドン!

 

 

わるさめ「トランス!」

 

 

わるさめ「いっくぞー、突、撃!」

 

 

夕立「駆逐棲姫っぽい!?」


ドン!

 

夕立「しかも、すごく速いっぽい!?」


ドンドン!

 

 

わるさめ「よし! ぽいぬ捕まえたぞー!」

 

 

夕立「く、離して欲しいっぽい!」

 

 

わるさめ「でち様、私に構わずっ!」

 

 

ドオオン!

 

 

伊58「すでに」

 

 

伊58「0距離、でち」

 

 

夕立「ぽ、ぽいい~……」バチャン

 

 

わるさめ「あー、だる……」

  

 

伊58「また、勝ってしまった」

 

 

伊58「敗北を、知りた……」

 


ドオン!

 

 

伊58「あ、れ……」

 

 

バチャン

 

 

神通「甘いです、ね。対潜装備は、ないので」

 

 

神通「海面に出てくるのを、待ってました」

 

 

神通「私を、倒すのなら」

 

 

神通「装備を損傷させないと」

 

 

神通「……さあ、わるさめさん」

 

 

神通「続き、やりましょうか」

 

 

わるさめ「……、……」

 

 

わるさめ「根性ってレベルじゃねえ……もはや特殊能力だよ」

 

 

わるさめ「顔面欠損して笑ってる艦娘なんて初めて見た。おぞましいやつだねー」


 

神通「死んだフリは、得意です」

 

 

わるさめ「涼しい顔をしやがって」

 

 

神通「そうしたほうが……」

 

 

わるさめ(ヤベ、死にたくねえ)

 

 

神通「痛く、されませんでしたから」

 

 

わるさめ(腹くくったイジメられっ子ね……)

 

 

わるさめ「強い人種っスね……」

 

 

神通「あなたのような自分勝手に、まるで弱い者イジメを楽しむ化物を見ると」

 

 

神通「身体が、火照ってきます」

 

 

わるさめ(命を天秤にかけねえと)

 

 

神通「勝利を、乙中将に」ジャキン

 

 

わるさめ「……勝てねーや」

 

 

ドオオン!

 

 

24

 

 

わるさめ(……沈んでしまった)

 

 

わるさめ(負けたら、ヤバい)

 

 

わるさめ(……、……)

 

 

わるさめ(……なめんなよ)

 

 

わるさめ(チューキちゃんやリコリスママ、スイキちゃんレッちゃんネッちゃんセンキ婆)

 

 

わるさめ(最強クラスの深海棲艦との)

 

 

わるさめ(演習という名の殺し合いは)

 

 

わるさめ(顔面欠損くらいじゃ済まねーんスよ……)

 

 

神通「海面から、砲、口?」

 

 

わるさめ「トランス!」

 

 

神通(そう、か。艤装を引っ込めれば、生身で艤装の重さに、縛られず、浮上でき……)

 

 

わるさめ「駆逐ロ級」ドオン!

 

 

わるさめ「可愛い、砲撃」

 

 

神通「~~っ!」フラッ

 

 

わるさめ「お前、かなーり強かったゾ☆」


 

ドンドンドンドン!!

ドオオン!

 

 

わるさめ「ま、やっぱりわるさめちゃんには」

 

 

わるさめ「まだ及ばないけどねっ!」

 

 

わるさめ「そこの偵察機ー! 今のわるさめちゃんの勇姿を記録したかー!」



わるさめ「司令官とたゆたう隔離世まで!!」




ヒャッハードンドン!

 

 


25


 

初霜「わるさめさんがいるとはいえ、乙中将に……!」



ぷらずま「か」

 

 

提督「か?」

 

 

ぷらずま「勝てたのです司令官さんっ!」ダキッ

 

 

提督「……?」

 

 

提督「ぷらずまさんが腕に抱き付いてくるとは……よほど嬉しいようですね……」

 

 

ぷらずま「●ワ●」

 

 

ぷらずま「ごめんなさい」

 

 

ぷらずま「……なのです」

 

 

暁「やっぱり」

 

 

雷「根っこは電よねえ」

 

 

響「スパシーバ」

 

 

響「乙中将の1軍に勝利はすごい」

 

 

提督「まあ、わるさめさんは反則みたいなものですけど」

 

 

提督「勝ちは勝ちです」

 

 

26

 

 

乙中将「……敗けた、かあ」

 

 

乙中将「倒せなくはなかった、のに」

 

 

乙中将「いや、神通ならいつかサシで倒してくれる」

 

 

乙中将「惜しかったけど、敗けたんだ。うん、敗けは敗けだ」

 

 

乙中将「……悔しいね」

 

 

飛龍「鞭打つなら電ちゃんは出てません……」

 

 

蒼龍「あのわるさめさん色々な意味でいかれてるよ……」



乙中将「加えていえばあの子達まだまだ強くなるよ。僕も勉強しなきゃダメだね……」


 

乙中将「さてと、切り替えて」

 

 

乙中将「皆が入渠終えたら、向こうに挨拶」

 


27

 

 

鹿島(仮)「これはひどいです……」

 

 

鹿島(仮)「でも、勝ち、ました」

 

 

鹿島(仮)「将校相手に……」

 

 

鹿島(仮)「ひどいけど、すごいです……」

 

 

鹿島(仮)「おざなりな基礎を鍛えれば、もっと輝きそうです、ね」

 

 

わるさめ「あの、見ててくれましたか?」

 

 

鹿島(仮)「……はい、用意していただいたここで」

 

 

わるさめ「精度はあの頃と同じく残念ですけど、強くなりました」

 

 

わるさめ「人としての全てを犠牲に」

 

 

鹿島(仮)「その身体は……」


 

わるさめ「……まあ、深海棲艦化のことは隠していましたし、この身体はあん時の提督が私に行った実験のせいです」

 

 

わるさめ「私が連れ去られたのも、他の子が全滅したのも鹿島っちのせいじゃないです」

 

 

わるさめ「ま、向こうの狙いは私だったんだろーし」

 

 

わるさめ「春雨ちゃんのせいかな」

 

 

わるさめ「今の司令官は私のこの身体をどうにかしてくれるっていってくれたから、この鎮守府(闇)に協力していますね」

 

 

鹿島(仮)「……そう、ですか」

 

 

わるさめ「ここの慰霊碑は綺麗ですよね」

 

 

わるさめ「電と間宮さんがずっとここに残ってお掃除してくれているみたいです」

 

 

わるさめ「さりげなく私の名前も刻まれてら。そっかそっか。世代的に私は5代目春雨ちゃんだったっけ」

 

 

鹿島(仮)「……知らない子の名前も増えてますね」

 

 

わるさめ「増えますよ。終わらない限り、これからも」

 

 

提督(……感動のシーンなのでしょうが)

 

 

提督(わるさめさんの陰陽服のせいでシュールすぎる……)



提督「わるさめさん、皆の入渠が終わり次第、整列です」

 

 

わるさめ「まだ大丈夫じゃん」

 

 

提督「……鹿島さん、返事は決まりましたか?」

 

 

鹿島「なんか色々とすごい提督さんですよね」

 

 

提督「誉められている気はしませんね……」

 

 

提督「……」

 

 

鹿島(仮)「いえ、そんなことはありませんよ。素晴らしい能力をお持ちの方です」

 

 

提督「?」

 

 

提督「この仕事なんかなくなったほうがいいのですけどね」

 

 

鹿島(仮)「だからこそ、終わらそうとしているのでは?」

 

 

鹿島(仮)「とても素敵なことだと思います」

 

 

提督「こんなことをいうと、気分を害すると思いますが、鹿島さんあなたがいた頃に着任されていた提督もそうではないか、と思います」

 

 

提督「まあ、戦争を終わらせるためだったのか、ただの狂人だったのかは存じ上げませんが」

 

 

提督「ぷらずまさんやわるさめさんの存在は、終わりの幕開けといえるほどの情報の塊でしたから」

 

 

わるさめ「まあ、少し冷徹に聞こえるけど、根っこは悪いやつじゃないと思うよ?」

 

 

鹿島(仮)「……」

 

 

提督「この程度だと、これから先、撃沈者が必ず出ます」

 

 

鹿島(仮)「………無茶を?」

 

 

提督「いえ、無理を、です」

 

 

提督「あなたが彼女達に貢献していただけたのなら、犠牲者は出ないかもしれません」

 

 

鹿島(仮)「お断りすれば」

 

 

提督「誰一人として無駄死にだけはさせません」

 

 

提督「それをよし、としてくれる人達を集めたつもりです」

 

 

わるさめ「まあ、そだね。ここにいるやつらは根性はあるよね」

 

 

鹿島「また後日、連絡します、ね」



わるさめ「早くしてよねー。わるさめちゃんも死にたくねっス」



鹿島「……はい」



わるさめ「司令官、なんかわるさめちゃん褒めてー」



提督「よくやってくれましたね。それと、そろそろ整列の時間です」

 

 

わるさめ「こーいうやつだゾ☆」



鹿島「……うふふっ」



28

 

 

飛龍「あの艦載機の撃ち方教えてよー。砲をつけてさー、航空戦艦空母みたいな戦い方してみたいよね」

 

 

龍驤「飛龍はうちと違うやろ……式紙式でもないし、その36スロット寄越せっちゅうねん」

 

 

龍驤「むしろこっちの瑞鶴に教えたってーな」

 

 

瑞鶴「私、がんばったわよ!?」

 

 

飛龍「あ、あははー。まだまだ延び代があるし、腐っても五航戦だよ」

 

 

瑞鶴「なんか試合に勝って勝負に敗けた感じね……その通りだけど」

 

 

蒼龍「次は、負けませんよ!」

 

 

わるさめ「次は出たくないっス……」

 

 

神通「ダメです。あれを負けとは認めたくないです」

 

 

わるさめ「特にあんたとはイヤ☆ 今度来たら除霊してやるからな!」

 

 

夕立「夕立、あんまり活躍できなかったっぽい~」

 

 

伊58「それ、山城と扶桑の前でもいえるんでちか?」

 

 

山城・扶桑「……」ズーン

 

 

卯月「まあ、山城はうーちゃん相手によく持ったほうだぴょん」

 

 

瑞鶴「扶桑さんも私を大破させたじゃん。落ち込まれるとこっちがへこむわ」

 

 

扶桑「いえ、そういうつもりではありません……艦載機発艦できない状態のあなたに勝つのは当然ですし……」

 

 

山城「開幕で駆逐艦卯月にぼこられる高練度戦艦になにか……」

 

 

卯月「いや、山城はかなり強いぴょん。うーちゃん長門や大和と戦ったことあるけど、無傷だったぴょん」

 

 

山城「え、マジ?」

 

 

卯月「うっそぴょーん!」ゲラゲラ

 

 

提督「やめなさい」チョップ

 

 

卯月「痛いぴょん!」

 

 

提督「すみません、後で教育しておくので……」

 

 

山城「不幸だわ……」

 

 

乙中将「阿武隈さんうち来ない?」

 

 

阿武隈「え、ええ?」

 

 

阿武隈「それはちょっと……」

 

 

乙中将「それは残念。阿武隈は適性者いなかったけど、欲しかったんだよね。甲さんとこも欲しがってた」

 

 

乙中将「もちろん卯月さんも」

 

 

卯月「将校のところとかめんどそーなのでパスだぴょん」

 

 

卯月「そして無論、アブーも渡さんっ!」

 

 

提督「乙中将」


 

提督「ありがとうございました」

 

 

乙中将「こちらこそ。金剛さん達のことよろしくね」

 

 

提督「はい」

 


乙中将「さて出発は明日だし、なにか欲しい装備あるなら開発を手伝っていってあげようか?」

 

 

提督「マジ助かります」

 

 

乙中将「その前に覚えてるよねー?」

 

 

乙中将「青ちゃんの一般適性施設にいた時のことで気になることに答えてー」

 

 

提督「……、……」

 

 

提督「開発資材節約のほうが魅力的ですね」

 

 

提督「了解しました」





【●ワ●:4章終:●ω●】


後書き

4章終わりです。
読んでくれてありがとう。


5章のお話

【1ワ●:アッキー&アッシー】

【2ワ●:Now is the time】

【3ワ●:明石さんの提督調査】

【4ワ●:VSアッキー&アッシー+山風ちゃん】

【5ワ●:保護したのは江風】

【6ワ●:鹿島さんの告白】

【7ワ●:おろろろ秋津洲】

【8ワ●:アッキー&アッシー着任】

【9ワ●:ラブコメ謹慎物語】

4章2017.1/2~


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2017-01-09 21:00:08

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1: SS好きの名無しさん 2017-01-09 02:53:21 ID: jr8yOqcn

やはり面白い!


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1: SS好きの名無しさん 2017-01-09 02:53:24 ID: jr8yOqcn

オリジナル設定とか気にしないなら、
このシリーズは必見。


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