2018-06-05 23:06:55 更新

概要

5章です


前書き

注意事項
【勢い】
・ぷらずまさんと称しているだけのクソガキな電ちゃんの形をしたなにか。

・わるさめちゃんと称しているだけの春雨駆逐棲姫の形をしたノリとテンションの女の子。

・明石さんの弟子をしているアッシーという短気で無礼気味な明石君。


もう矛盾あっても直せない恐れあり。チート、にわか知識、オリ設定、独自解釈、日本語崩壊、キャラ崩壊、戦闘描写お粗末、魔改造、スマホ書きスマホ投稿etc.

ダメな方はすぐにブラウザバックお願いします。


【1ワ●:アッキー&アッシー】



間宮「大所帯になってきて、鎮守府らしくなってきましたね」

 

 

提督「まあ、思い通りには進みませんよね。当初の予定ではこんなに人が集まるとは」

 


乙中将「またまたー」


 

乙中将「カ級の捕獲もそうだけど、計画のほうはこの鎮守府に着任するずっと前から練っていたとか?」

 

 

提督「考えることは好きなので、暇さえあれば考えてますよ。もちろんこの戦いのことです」

 

 

提督「ここに来る前は、1/5作戦の処罰として新造の鎮守府の着任予定が白紙になりまして」

 

 

提督「軍の一般適性検査施設にいました」

 

 

提督「その時に面白い子達と出会いましたね。あの子達ももう軍学校を卒業する年です」

 

 

間宮「面白い子達、ですか?」

 

 

提督「はい。妹と兄でここに配属希望をしてくださってます」

 

 

乙中将「すごい優秀な子達だよー。成績は兄妹で一番と二番だったかなー」



提督「といっても今年の卒業生は3人しかいませんし。まあ、ここ5年間では素質としてはかなりのものみたいですが……」



乙中将「珍しくも秋月適性と明石適性があった兄妹なんだよー。明石はしかも男だよ、男!」

 

 

間宮「少年が艦娘の適性?」

 

 

間宮「ああ、そう言えば……」

 

 

龍驤「うちも混ぜてー。2年前くらいに騒ぎになったやつやろ?」

 

 

龍驤「男が、しかも希少な明石艤装の適性が出たーとかなんとかで」

 

 

龍驤「結局、軍の研究部は有利になる情報はないっていうてから、次第に騒ぎは収まったけど」

 

 

初霜「私、知ってます。確かお二人とも今期のホープですよね。でもどうしてこの鎮守府に配属希望なされたのでしょう?」

 

 

初霜「成績上位者は将校の鎮守府にも配属を検討される特権がありますよね」

 

 

初霜「こういってはなんですが、待遇面でもここより破格的に良いはずです」

 

 

間宮「……適性検査施設で、その未成年者を口説きましたか」

 

 

提督「拉致しろと命令されたに等しいといいますか……」

 

 

乙中将「お酒入ると青ちゃんは喋るんだねー」

 

 

乙中将「はい。みんな静かに」

 

 

飛龍・蒼龍「酒の肴と聞いて」

 

 

わるさめ「司令官さんの過去と聞いてわるさめちゃん参上したゾ☆」

 


提督「この話はフィクションです」

 

 

提督「とだけ」

 


乙中将「酔ってるね……色つけてもいいけど、あんまりストーリーはねじ曲げないでね……」

 

 

2 アカデミー工廠にて

 

 

明石さん「おい愛弟子よ」


 

明石「は、はい。姉さんなんすか」ビクビク


 

明石さん「……」


 

明石さん「艤装がなくて工廠が空いてるものでまさかとは思いましたが」

 

 

明石さん「もう少し寝てくればどうです。まだ目の下の隈が取れてませんよ」


 

明石「いえ、やっぱり明石艤装を使えるのは貴重な時間なんで……姉さんはまたすぐにどこか飛ぶだろうし、使える時に使って腕をあげておかねえと」


 

明石さん「書面で見せてもらったけど、酷すぎないですか?」

 

 

明石さん「イージーレベルで失敗しすぎです。装備改修なめていますね?」

 

 

明石「姉さんスンマセン、バーナーの噴射口を向けるの止めていただけると……」

 

 

明石さん「ネジの貴重さ知らないわけないだろうし、ふざけているのかなって」

 

 

明石さん「ん?」

 

 

明石「そんなわけじゃ………」

 

 

明石さん「ですよねー。こんな教え方してないですしね。ただ単に仕事し過ぎでミスってるんですよね」

 


明石さん「ま、改修希望装備はここにまとめて送ってもらっているので、今回は結構滞在できましたし」

 

 

明石さん「愛弟子の腕も、まあ、仕事させられる程度にはマシに成長したかなー」

 

 

明石さん「バラシ分野のセンスだけはまあ、認めてあげます」

 

 

明石「それはありがたい……明日には発つんですよね?」

 

 

明石さん「明日は卯月艤装の状態を見に鎮守府(闇)に行かなきゃなりませんけど」

 

 

明石「へえー。朝早くですか?」

  

 

明石さん「お前ちょっと嬉しそうですね。なんかムカつきます……」 

 


明石「んな理不尽な……」

 

 

明石さん「そういえば愛弟子よ」


 

明石さん「アッキーちゃんと一緒に鎮守府(闇)に配属希望出したみたいじゃないですか。丙さんや乙さんや元帥からもお声がかかった、と聞いていますけど」

 

 

明石「……」

 

 

明石さん「お前、昔話のことになると黙りますよね。アッキーちゃんからも濁らされますし……」

 

 

明石「まー……」


 

明石「あんまり人に語りたい過去じゃないし、俺とアッキーの家庭問題にもどうしても話が行くので」

 

 

明石「もうすぐ卒業だし、聞きたいなら語ってもいいんすけど」

 

 

明石さん「聞かせて欲しいな♪」

 

 

明石さん「お願~い♪」キャピッ



明石(うわ、きつ……)

 

 

 


山風「……アッシーに、明石さん」

 

 

明石さん「おろ、山風ちゃん、どうしました?」

 

 

山風「アッキーが……泡を吹いて倒れた、から、運んで……きた」

 

 

明石さん「ああ、『12時間兄と離れると過呼吸起こしてぶっ倒れてしまう病』の欠陥……」


 

秋月「.。o○」ブクブク

 

 

山風「はやく……なんとか……」

 

 

山風「しろ、アッシー……」

 

 

明石「おい、アッキー」バシバシ

 

 

明石「俺はここにいるぞー」バシバシ

 

 

秋月「(っ゚⊿゚)っ ハッ!」

 

 

秋月「アッシー、生きていましたか」ホッ

 

 

秋月「明石のお姉さんも、山風ちゃんも……」

 

 

山風「気にしなくて、いい……」

 

 

山風「けど、無理やり、その発作で私に構わせるの……止めて……」

 

 

秋月「感謝していますよ! いつものことじゃないですか!」

 

 

山風「ダメだ……こりゃ……」

 

 

明石さん「さー、愛弟子よ、語るといい。あの鎮守府(闇)は悪い噂がありますから」

 

 

明石さん「正直、二人を配属させるのに躊躇いがあるといいますか」

 

 

明石さん「そこら辺のことは後日に出向いて確かめてみるつもりはあるのですが、やっぱりお二人の口から聞きたいんですよねー……」

 

 

明石さん「お父さん殴り込みの件で予想はついていますけど、最後くらいは育ての師匠を安心させてくれてもいいじゃないですか?」

 

 

秋月・明石「……」

 

 

秋月「お兄さんのお話ですね!」

 

 

山風「兄? アッシー、の……こと?」

 

 

秋月「いえ、私とアッシーの恩人です! 私達が勝手にお兄さんと呼んでいるだけでして!」

 

 

秋月「鎮守府(闇)の提督さんなのですが、私達の人生の恩人なんです!」

 

 

秋月「あの人が鎮守府で提督をしているのなら、私達はそこに行きます」

 

 

秋月「そのための、命です!」

 


秋月「早くお兄さんに会いたいです」

 

 

明石「兄妹ともども大きな借りがあるんす。少し長い話になりますけど」

 

 

明石「話しましょーかね……」

 

 

明石さん「待ってました」

 

 

明石さん「それではどうぞ」



【2ワ●:Now is the time】

 

 

1

 


少女「じっと波止場から海を眺めてどうしたんですか?」


 

少年「小さい魚がより小さい魚を食べていた。あれを見ろ」


 

少年「男女が乗ってすいすいと優雅に進むあの黒塗りの外車一つでこの魚の餌を買えば、この魚たちは共食いせずに、どのくらい食べていけるんだろうか?」


 

少女「そんなのどうでもいいから、仕事に行こう?」


 



 

男性「今日は児童館の解体だ。嵐士は机椅子を運び出してから、トイレの金具を外して、扉をぶっこ抜いて壁に立てかけておくとはしごにのぼって天井をパールで叩き割っといてくれ」


 

少年「分かりました。やりなれた解体の、物を壊す作業っすね」


 

少年(ん、この敷かれてる新聞)


 

少年(あー、深海棲艦っつう化け物との戦争の……)


 

少年「それ、今日の新聞すか?」


 

男性「ああ、戦艦大和が沈んだってよ。まだ騒がれているみてえだ」


 

少年「ヤマト? 日本が沈んだんすか? どこら辺?」


 

男性「違えよ……」

 

 

男性「俺も詳しくねえけど、一番強い兵士らしい。軍艦の大和くらい知っているだろ。それをベースにした兵士が殉職したとかなんとか」


 

少年「殉職って、戦死したってことすよね……?」


 

男性「それ以外ないだろ。なにいってんだお前」


 

少年(つってもなー、にわかに信じ難い。自衛隊、とはまた違うんだよな)

 

 

少年(戦争して死ぬ。当たり前だが、周りの景色は平和そのもので、どこか別の世界の出来事みてえだし)


 

少年「…………」


 

男性「どうかしたか」


 

少年「いや、お国のために命を賭けて戦うってのを想像してみてたんですよ。それはどれだけ、生きる、という意味を実感できるんでしょうね」


 

男性「……お前さ、なんか家庭環境でも複雑なのか?」


 

少年「藪から棒になんすか」


 

男性「体が傷だらけだし、見る度に増えている気がする。お前気性は荒いほうだけど、ケンカするようなやつじゃねえだろ」


 

少年「親とよくケンカするだけっす」

 

 

少年「それよりその戦争の兵士は給料いいんすか?」

 


男性「噂ではかなり良いって聞くぞ。街は平和だ。好んで戦争に参加したいやつなんて好きものだろ」

 

 

男性「だから兵士を集めるのに苦労していて、まあ、そういう理由で金払いはよくしているんじゃねえの。所属艦隊だか鎮守府とかの戦績でボーナスとかも出るんだっけか」


 

少年「化け物を殺せば殺すだけ儲かるってことですか。最高すね。どうすれば兵隊になれるんすか」


 

男性「この戦争なら軍学校だったかな。というか男のお前は兵隊にはなれん」


 

少年「ええ? 兵隊って基本的に男がやる仕事でしょ?」


 

男性「興味あるんなら軍の施設にでも行って適性でも調べてこいよ。資格がいるんだよ」

 


少年「兵士の適性というのはまあ、根性なしのやつに生きるか死ぬかの戦いに出てこられるだけ邪魔ですしね」

 

 

少年「だけど、男では無理とはどういう理由ですか。逆ならまだしも」


 

男性「説明すんのだるい」

 

 

2

 

 

――――どうして自分だけが、と思うことがある。


 

――――自分だけが苦しい訳じゃないから、と誰かが歌ってたっけか。


 

――――ったく、正論だ。

 

 

――――正論っていう最強の暴言。

 

 

――――自分だけが苦しいわけじゃないと思うやつは、みんな苦しい世界がおかしいのだ、とは思わないのかね。

 

 

――――みんな同じだから、なんだ。

 

 

――――その洗脳染みた思考放棄の吹き溜まりが、今、なんじゃないのか。

 

 

――――当たり前のその苦しみを和らげることこそ、今を生きる人間が、未来の子供に送る最高のプレゼント。


 

――¥3000


 

――――今月に振り込まれたプレゼント少なすぎだろ。お小遣いじゃねえんだぞ。

 

 

――――朝から晩まで汗水垂らして働いている者の一か月分の給料だと思うと悲惨すぎる。



――――あー、むかつく。

 

 

―――ガキの頃からアルコールとギャンブル中毒で平気で俺達にDV実行、ギャンブルでふくれあがった借金を返すために。

 

 

――――俺達が高校辞めて働いている現状によォ……。


 

――――もっといえば親父は無色で、その金で悠々自適とギャンブルやりやがって。なにが金を稼ぐ仕事だよ。

 

 

――――収支マイナスばっかりじゃねえか。


 

――――いざ前に立つと怖くて足がすくむのどうにかならねえかな。


 

――――ガキの頃から逆らえばどうなるかが、刻まれている恐怖が刷り込まれているせい、だよな。


 

――――この左頬の傷。


 

――――親父に逆らった日に頬に切り刻まれた傷。

 

 

――――妹とおそろいとか笑えないし。


 

――――誰か助けて、と。

 

 

――――いえねえ男の意地はある。

 

 

 

 

――――だから、忘れんようにする。

 

 

――――兄さんが思い出させてくれた、

 

 

――――家族が正常だった頃の、

 

 

――――俺が、きっと、アッキーも。



――――欲しかったもんだと思うしさ。

 

 

3

 

 

少女「アッシー、その傷まだ痛むの?」


 

少年「ンなわけねえだろ。二年前の傷だぞ」


 

少女「なら早く! 卵1パックが売り切れちゃいますよ!」


 

少女「ほら、1000円渡すから買ってこいよ」


 

少年「アッシーも一緒に行こうよ! 精肉屋がウインナーの試食やっていたし!」


 

少年「俺の作業着は泥だらけだからスーパーのなかには行けねえだろ」


 

少年「アッキー、あそこの女子高生を見ろよ」

 


少年「もしも俺達がまともな家庭環境だったら、アッキーはあんな風に華やかにJKライフを遅れていたはずだ。そう思うと、本当に切なくなってこないか?」


 

少年「奴隷のように生きているのはまだいい。本当につらいのは、周りと自分達を比べてしまうんだ、俺はそれが本当に辛くて嫌だ」

 

 

少女「…………仕方、ないよ」


 

少年「あの歩道橋の垂れ幕の『明るい未来』に唾を吐きたくなる。未来ってなんだよ。死ぬまで搾取される自由のことか?」

 


少年「なあ、てのひらに握りしめたお札二枚は今を抗う自由の象徴に見えてきた」


 

少女「なにいっているんですか」


 

少年「ふとこれでどこまで今から逃げ出せるのだろう、と試してみたくなった」


 



 

少女「正気の沙汰とは思えないよ。全財産使って海軍施設にくるとか」


 

少年「昨日、帰りの車のなかで調べたんだよ。俺とアッキーが深海棲艦と戦う兵士になれば今よりずっと幸せになれる。給料だっていいし、軍学校に入れば冷暖房完備の寮住まいで、卒業すれば鎮守府に配属されてそこに住める。あのクソ親父から逃げられるってことだ。いいことづくめだろ?」


 

少女「バカです! アッキーチョップ!」


 

少女「戦争に参加するってことがいいことのわけがないよ!」


 

少年「資格さえあれば優遇されるんだ。貴重な戦力として認められたら軍に大事にしてもらえるから、親父だって簡単に手を出してこねえはずだ。そンて、行くなら二人一緒だ。じゃないと、残ったほうが標的になるだけだからな。二人一緒に逃げ出すんだ」


 

少女「そんな現実逃避のために二千円も使ったんですか!」


 

少年「現実逃避じゃねえよ! 未来のためだ!」


 

足柄「君たち正面玄関前で騒々しいわよー」

 

 

少女「あ、すみません。すぐに帰りますので」

 

 

少年「帰らねえから!」

 

 

少年「あ、そうだおばさん」

 

 

足柄「おば……」ピキッ

 


少女「こら! アッシーの馬鹿!!」


 

少年「俺達、対深海棲艦の兵士になりたくて兵士の適性を受けに来たんですけど……」

 

 

足柄「そちらの女の子、かしら?」

 

 

少年「俺もです」

 

 

足柄「……知らないようだから教えるけど」

 

 

足柄「対深海棲艦の兵士は艦娘っていうのよ。艦隊の艦に女の子の娘。適性はね、女性にしか出ないのよ?」

 

 

少年「受けてみなくちゃ分からないでしょ。やる前から諦めろとか」

 

 

少女「アッシーはこういうやつなんです。すみません……」

 

 

足柄「それに今日はもう締めちゃってるからね。受付時間は朝の9時から夕方の5時までね。また明日おいでなさい」


 

少年「明日来る金なんてないので、そこをなんとか。アッキーも頼め。2000円無駄になっちまう」

 

 

少女「確かに……」

 

 

足柄「ええっと……うーん」

 

 

足柄「ちょっと中で待っててくれる?」

 

 

4

 

 

提督「足柄さん、その子達は」

 

 

少女「ひい!」

 

 

少年「うおっ!」

 

 

少年「暗闇に溶け込むかのような精気のなさ。一瞬幽霊かと思った……」

 

 

足柄「適性検査受けに来たみたいですけど、今から受けさせてくれーって」

 

 

提督「……君達」

 

 

提督「軍に入りたいのですか?」

 

 

少年「おう」

 

 

提督「軍には規律があり、それを守ることは大事です。まずルールは守るよう心がけてください」

 

 

提督「受付は9時から17時です」

 

 

少女「あの、そこをなんとか」ウワメヅカイ

 

 

提督「今日はもう無理です」

 

 

少年「アッキーのお願いでも聞いてもらえないか……」

 

 

少年「仕方ない。アッキー、今日はもう諦めよう」

 

 

少女「うう、アッシーのバカ。2000円なんて大金があれば美味しいものがたくさん食べられたのに……」

 

 

提督「…………」

 

 

5

 

 

提督「あの、なぜ門の前に。今は冬で寒いでしょう。お帰りになられては」

 

 

少年「明日の9時からならいいんですよね。ここらで時間潰します」

 

 

少女「アッシー! そこの商店街のパン屋さんと交渉したらミミをくれた!」トコトコ

 

 

提督「……」

 

 

提督「今は子供がうろついていいような時間ではないです」

 

 

少年「俺はチビだけど、アッキーと同じく18歳だ。働いている。泥だらけの作業着見てわかんだろ」

 

 

少年「聞いてくれよ」

 

 

少年「朝から晩まで働いて毎月、3000円なんだ。健康診断とか税金関連は別にもらえるけど。必要な俺と妹の給料はクソ親父の遊興費に消えてる」

 

 

少年「ここまで来るのに2000円使っちまった」

 

 

提督「そうですか。では自分はこれで」

 

 

少年「冷たいっすね。氷かなんか?」

 

 

提督「ええ、最近自分でもそう思うようになってきてますね……」

 

 

少女「あ、お兄さん、パンのミミあげます! お仕事終わったなら少し質問に応えてもらってもいいですか?」


 

提督「ミミはいいです」

 

 

提督「質問は一つだけですよ」

 

 

提督「あ、少しだけ待ってください。寒いので車のなかの暖房かけておきたいので……」ガチャ

 

 

少女「ありがとうございます!」

 

 

少年「寝床確保ー」

 

 

提督「」

 

 

6

 

 

提督「以上、ですかね」

 

 

少年「深海棲艦をぶち殺せる唯一の武器が艤装ってもんなのは分かったけど、どうして女だけしか無理なの」

 

 

提督「さあ。妖精さんにでも……」

 

 

少年「男はあんたみたいに提督を目指すか、裏方に回るしかないと」

 

 

提督「妖精は映像に映りますが、見える人と見えない人がいるようで、提督を目指すなら可視の素質が必要となりますね……」

 

 

提督「見えますか?」

 

 

少年「お、見えるぞ。このちっこく動き回ってるやつか」

 

 

提督「それはなにより」

 

 

少女「女の人でも提督にはなれるんですよね?」

 

 

提督「ええ。ですが、艤装適性が出て兵士として問題がなさそうなら、軍からそちらを強く押されるかと」

 

 

少女「アッシーが提督で、私が艦娘になれば同じ鎮守府で一緒にいられますか?」

 

 

提督「艦娘のほうは初期配属においての希望はなるべく善処されます」

 

 

少女「アッシーは提督の素質があるから軍学校には入れるんだよね?」

 

 

提督「希望すれば入学テストはそうですね。合格できるか、提督に就けるかどうかは本人次第ですが……」

 

 

少年「学費って奨学金とかは使える?」

 

 

提督「ありますが、条件は厳しいですよ。軍学校には入学テストもありまして、そこで優秀な結果を出したものに限りです」

 

 

提督「艦娘のほうは無条件ですが……」

 

 

少女「アッシー、バカだし厳しいね……」

 

 

少年「なんとかやる」


 

提督「……対深海棲艦の海軍」

 

 

提督「である必要性はあるのですか?」

 

 

少年「金払いがいい」

 


提督「死ぬ危険が高いですよ」

 

 

少年「軍からの庇護が厚い」

 

 

提督「…………」

 

 

少年「家庭環境が劣悪なんだ。あいつが手出しできない場所に行きたいんだよ。アッキーが艦娘になれば、あいつは手出しできねえだろ」

 

 

少女「私はアッシーがだめなら行かない」

 

 

少女「というか初対面の人にそういうこと話すの止めなよ……」

 

 

提督「……少年、名前は?」

 

 

少年「小倉嵐士、妹が秋乃」

 

 

提督「嵐士君、命を賭ける覚悟あります?」

 

 

少年「あるに決まってんだろ」

 

 

提督「対面している家庭問題の解決には命を賭けられないのに、ですか?」


 

少年「……っ」

 

 

提督「半端な覚悟では、今の生活を続けた方がきっとマシです。死ぬ訳ではないのでしょう?」

 

 

少年「あんたになにが分かる。それを選ぶのは俺だ。そうだろ」


 

提督「……まあ、明日秋乃さんの適性検査をしてから、ですね」

 

 

提督「自分は家に物を取りに戻ります」

 

 

少年「なあ」

 

 

提督「……なんです」

 

 

少年「運転下手かよ。ギア間違えてんぞ。後ろの石垣にぶつかった」

 

 

提督「……まあ、ボディの傷を隠すやつが、確かトランクに」

 

 

少女「アッシー、直してあげなよ」

 

 

少年「そうだな。色々教えてもらった礼を兼ねて。鍵借りるなー」

 

 

提督「……大丈夫なんですか?」

 

 

少年「任せろ。俺の得意分野だ」

 

 

少女「一宿一飯の恩ですよ」

 

 

提督「一飯?」

 

 

少女「明日の朝ごはん!」

 

 

提督「イヤです」

 

 

少女「え、もうアッシーが直してますよ?」

 

 

提督(たくましすぎる……)

 

 

7


 

提督「――――え」

 

 

提督「……、……?」

 

 

少女「その反応、アッシー……は男だから違うか! 私に適性あったんですね!」

 

 

少女「戦艦ですか? それとも空母?」

 

 

提督「まあ、駆逐艦、しかも1隻しかありませんが……」

 

 

提督「10年も適性者が見つからなかった激レア艤装の適性です」

 

 

提督「秋月型一番艦、秋月」

 

 

秋月(仮)「へえー! なんかよく分からないけどレアって響きがいいです!」

 

 

秋月(仮)「一番艦ってなんかリーダーとか主役っぽいですし!」

 

 

提督「……隣の待機室に本棚の右上辺りに駆逐艦秋月についての資料があるので、少し読んで待っていてください」

 

 

秋月(仮)「了解!」ビシッ

 

 

秋月(仮)「なんちゃって!」キャッキャ

 

 

8

 

 

少年「同じこと何回もやらせんなよ! 一回ごとに血を抜かれるほうの身にもなれ!」

 

 

提督「……故障じゃなみたいですね。どの装置で何回やっても結果は同じです……」

 

 

少年「……はあ?」

 

 

提督「……あの嵐士君」

 

 

提督「艦娘の適性も、あります」

 

 

少年「どういうことだよ。男はなれないってあんたが力説していたよな?」

 

 

提督「過去に例を見ない事態です」

 

 

提督「大変興味深いですが、これはさすがに上に報告……」

 

 

少年「ちょっとPCの画面見せて」

 

 

少年「この青く光ってる艤装名か?」

 

 

提督「ええ」

 

 

提督「工作艦明石、の適性です」

 

 

少年「……あのクソ親父に」

 

 

少年「○○○片方潰されたせいかね?」

 

 

提督「」

 

 

8

 

 

足柄「本当です、ね……」

 

 

提督「でも、明石艤装は空いていませんよね」

 

 

足柄「解体希望されてましたよ。後任の適性者が見つからないので、軍に頼まれて30年以上も現役やっていただけで」

 

 

足柄「あの人なら後任見つかったのなら喜んで譲るかと。やっと出張の呪いから解放されて機械弄りに没頭できるーとかって」

 

 

提督「明石艤装を手放したら弄れなくなるのでは……」

 

 

足柄「艤装や装備じゃなくても機械ならなんでもいいみたいですよ」

 

 

足柄「東奔西走の出張という呪いがかかった本家艤装とか喜んで手放しますって」

 

 

提督「でもまあ、それなら……」

 

 

提督「嵐士君の希望も通るかもしれませんね」

 

 

足柄「とりあえず私のほうから上に報告しまして、あの二人はいかがなさいます?」

 

 

提督「条件を満たして彼等も希望していますしね……」

 

 

提督「艦娘の場合の定例では必要書類と入学案内をご自宅に送付して……まあ、秋乃さんの入学は最短で一ヶ月くらいですが」

 

 

提督「嵐士君のほうは上も混乱すると思いますので、どうなるか分かりませんよね……」

 

 

足柄「そうですね……」

 

 

足柄「この件を報告すれば、またあなたは目立ちそうですね」

 

 

提督「ホントですよ。また本部に召喚されて丙少将にでも会ったら」

 

 

提督「頬が痛くなってきました……」

 

 

提督「彼の明石艤装の適性、見て見ぬふりすればよかったかな……」

 

 

足柄「おい」

 

 

9

 

 

大淀「今、軍もごたついていまして。男性の方の適性は貴重なサンプルだって」

 

 

大淀「出ても適性とは言えない小数点以下の誤差の範囲内でしたのに、60%だなんて……」

 

 

大淀「性転換、性同一性障害等々。そういった方でも適性は出た例はなくて」

 

 

大淀「1/5作戦の処分が気に入らず、変な仕返しを思い付いたとかじゃないですよね……?」

 

 

提督「さすがにそこまで性格悪くないですけど」

 

 

大淀「え」

 

 

提督「……それでどうすれば」

 

 

大淀「秋月、明石、ともにかなり欲しい人材です」

 

 

提督「明石のほうは通常とは違って研究施設に行かせるんですよね。あの子……」

 

 

提督「電さん」

 

 

大淀「電さんとはまたケースが違いますけど、貴重なサンプルとしては同じですね……」

 

 

提督「一刻も早く軍学校に入って兵士として戦いたいみたいで、研究施設に滞在は断られましたけど」

 

 

提督「しかも妹と離れるのなら断るみたいです。いきなり強気な態度に」

 

 

大淀「なんとかなりません?」

 

 

提督「つまり本人をかどかわして軍の意向に従うよう手引きしろ、と」

 

 

大淀「強制ではありません。あくまで任意同行です。ここ大事です」

 

 

提督「まあ、でも金銭で動く子達なので」

 

 

提督「ぶっちゃけ大淀さんのほうからここの経費とか使っていいから、いくらか包んじゃって、とか進言して……」

 

 

大淀「そういうのはなしの方向で♪(デイリー解体スマイル)」

 

 

提督「……上にはまだ報告してませんが、身体検査の結果、家庭環境にも問題があるようで」

 

 

提督「お二人とも栄養失調気味ですし」

 

 

提督「明石君のほうは生々しい外傷が。ハッキリ申し上げますと、DVですね」

 

 

提督「ご家族ともお話する必要がありまして、正直、自分の処理能力では」

 

 

大淀「……そういうの」

 

 

大淀「青山さんの得意分野ですよね」

 

 

提督「得意じゃないです。児童相談所の仕事は畑違いですよ。無理矢理やらそうとするのやめてください」

 

 

大淀「得意になればいいんです。オープンザドアですよ」

 

 

提督「さっきから聞いていれば鬼畜眼鏡ですかあなたは」

 

 

大淀「でも、解決策とか対抗策とか考えるの得意でしょう?」

 

 

大淀「明石君が研究施設に来てもらえるよう、なにか案はありませんか?」

 

 

大淀「可能な限りの協力は致しますし、私に個人的な貸しということでも構いませんので」

 

 

提督「……はあ、分かりました。こっちでなんとかします」

 

 

提督「一ヶ月ください」

 

 

大淀「なんとか1週間で♪」

 

 

提督「……善処します」

 

 

大淀「ありがとうございます。とても有能な方で助かりますよ。大淀、電話越しに頭を下げております」


 

10

 

 

明石(仮)「兵隊にはなれるんだろ。だが、期間未定の研究施設なんて嫌だぞ。その拒否権はあるはずだ」

 

 

秋月(仮)「無理です無理! 私、アッシーと半日以上離れると過呼吸を起こしますからね!」

 

 

提督「……そちらの要望としては」

 

 

提督「軍の研究機関への協力は断る。妹と一緒に行動する。そしてさっさと軍学校に入りたい」

 

 

提督「で、間違いないですか」

 

 

明石(仮)「間違いない」

 

 

提督「男性の兵士は初ケースです。色々と不安要素があるので、軍は研究施設に協力を申し出ない限り、艤装は渡せないとのことで(テキトー)」

 

 

明石(仮)「…………」

 

 

明石(仮)「腹割ろうぜ」

 

 

明石(仮)「なんとなく分かる」

 

 

明石(仮)「本当の言葉で語ってくれるのなら聞いてやってもいい。別に絶対に嫌ってわけでもない。どうせ最悪、アッキーも同行してもらえれば済む話だしさ」

 

 

明石(仮)「さすがに年単位で拘束されるのならあれだが、それならガッコ通いながらにしてもらうさ。俺の身体の情報がこの戦争の役に立つかもしれないっつー」

 

 

明石(仮)「それ自体は本望だからな」

 

 

提督「まあ、あなたが研究体として協力させるように上からいわれまして」

 

 

提督「まあ、それ自体を飲ませるのは容易いです。あなたが手にしたいモノはこちらにあるわけですし……」

 

 

明石(仮)「……なあ、あんたは提督なのか?」

 

 

提督「鎮守府で活動はしておりません。着任のお話が来るかどうかも微妙です」

 

 

提督「ポンコツなので」

 

 

秋月(仮)「なんで提督になったんです?」

 

 

提督「まあ、命を賭けられるほどのやりがいがあるからです。全部を説明するのはめんど臭いです」

 

 

提督「あなた達もなにかないと心が壊れてしまいますよ。死と隣り合わせの毎日は」

 

 

明石(仮)「いつもそうだった。な、アッキー」

 

 

秋月(仮)「まあ、そうだね。毎日デッドオアアライブのその日暮らしだったよね……」

 

 

提督「どちらかが死んでもそんな風にへらへら笑えます?」

 

 

明石(仮)「ならねえ。アッキーは死なせん」

 

 

提督「そんな覚悟で安全が保証されるのなら話は楽です。お互いが大事ならば、戦争なんかに関わらず街で助け合って生きていくほうがいいかと」

 

 

秋月(仮)「はいはい!」キョシュ

 

 

秋月(仮)「秋月艤装で戦えるのは今のところ私だけなんですよね!」

 

 

秋月(仮)「どうせならやりがいがある方がいいです!」

 

 

秋月(仮)「艦娘の皆さんだって死にたくて戦っているわけじゃないですよね!」

 

 

秋月(仮)「だったら私ががんばれば誰かが落とすはずの命も助けられるかもしれません!」

 

 

秋月(仮)「すごくやりがいのあることだと思います!」

 

 

秋月(仮)「やりたいです!」



明石(仮)「……!」



提督「そうですか」

 

 

明石(仮)「…………」

 

 

提督「当ててあげましょうか」

 

 

提督「単に逃げ出す先が、欲しいのでは」

 

 

明石(仮)「それはダメなのか。みんなそんな大層な覚悟持っているわけじゃないだろ」

 

 

提督「まあ、そうですね。理由は表向きのために適当にでっち上げたところでばれませんよ」

 

 

提督「ただあなた達が軍に入るには、解決しなければならない問題があります」

 

 

提督「未成年ですから、この書類」

 

 

提督「保護者の同意がいるんですよ」



11

 

 

提督「現段階でお渡しする書類はご自宅に送付しておきましたから、ご家族で話し合って決めてください。必要書類は持参してまた来てもらうか、ここに郵送してください」

 

 

提督「それでは話は終わりです」


 

明石(仮)「分かった。ちょっと行ってくる」

 


明石(仮)「すぐ戻る。アッキーはここで待ってろよ!」ダッ

 

 

秋月(仮)「あ、行っちゃった。ここから走ったらけっこうかかるのに……」

 

 

提督「では自分も仕事に」


 

12

 

 

秋月(仮)「あ、お疲れ様です!」

 

 

提督「自分の車に寄りかかって……また寝床を確保したいんですか?」

 

 

秋月(仮)「あ、いえ!」

 

 

秋月(仮)「アッシーのことで少しお話しておきたいことがありましてっ!」

 

 

秋月(仮)「お仕事終わるの待たせてもらいました! 本当にただそれだけですっ!」

 

 

秋月(仮)「どうぞ! パンミミです!」

 

 

提督「……」

 

 

秋月(仮)「あ、要らない、ですよね。ごめんなさいっ」

 

 

提督「……いえ、ありがとうございます」パクパク

 

 

秋月(仮)「受け取りましたね! お話を聞いていただきたいのですが!」キラキラ

 

 

提督「どうぞ、あ、車のなかに入りますか。寒いですし」

 

 

秋月(仮)「ありがとうございます!」

 

 

提督「いえいえ。自分、明日は休みですし、多少の長話くらいなら……」

 

 

13

 

 

秋月(仮)「お父さんがおかしくなっちゃったの、お母さんが天国に行ってしまってからなんです」

 

 

秋月(仮)「その時期にこの不況の波が押し寄せてリストラ重なりましたし……」

 

 

秋月(仮)「まあ、もともと教育で手を出す人でしたけど、愛の鞭の範囲を越えたのはお母さんが死んでからで」

 

 

秋月(仮)「アッシーがやんちゃだったのもあると思います。お母さんがいなくなってから更に荒れましたし」

 

 

秋月(仮)「お父さん」

 

 

秋月(仮)「なんか気にくわないことあると、どちらかを殴るんです」

 

 

秋月(仮)「あんまり家にも帰って来ないんですけど、私達のお給料がいつもの日に振り込まれなかったり、額がいつもより少なかったり、支払いの滞納とかそういう連絡が行った時は帰ってきて」

 

 

秋月(仮)「すごく、怒ります」

 

 

秋月(仮)「私は震えているだけで、アッシーがわざと口で挑発して私に矛先が向かないようにボコボコにされるんです」

 

 

秋月(仮)「アッシーが暴力で抵抗した時、ひどい目に会いましたから。私とアッシーの頬の傷、その時にナイフでざっくりと」

 

 

提督「児童相談所……周りの大人には相談しなかったんですか」

 

 

秋月(仮)「そうやって第三者に相談したことをお父さんが知って、対面するようなことがあれば……怖いです」

 

 

秋月(仮)「ニュースで、助けを求めて死んだ子のことが流れていました」

 

 

秋月(仮)「緊急性が、とかなんとかで保護されなくて、家に帰されて」

 

 

秋月(仮)「その日に親に殺されちゃった悲しい事件」

 

 

提督「……」


 

秋月(仮)「信用、できません」

 

 

秋月(仮)「その子には分かりやすい暴力の跡があって、その場で保護するべきでした。どう考えても」

 

 

秋月(仮)「その子は最後の希望、と思って勇気を出して駆け込んだ、と思うんです」

 

 

秋月(仮)「でも、死んじゃって」

 

 

秋月(仮)「別に子供の命が大切だから、そこにいるんじゃないのかもしれないって」

 

 

秋月(仮)「ただお仕事だから、助けるんじゃないかって」

 

 

秋月(仮)「だから、その子は家に帰されたんじゃないのかなって。誰だって規則を破って自分が割りを食うのが嫌です」

 

 

秋月(仮)「そう思うと」

 

 

秋月(仮)「自分のことは自分で何とかするしかないって。結局、最後に頼れるのは自分だけって思えてきたんです」

 

 

秋月(仮)「私にはアッシーがいます。二人で支えあって兄妹で生きていけるだけ、幸せなんでしょうけど……」

 

 

提督「……」

 

 

提督「ご家族の問題は解決する方法はありますよね。あなた達ももう自分の頭で考えて動き出す年頃ですし」


 

秋月(仮)「そうですね。離れようと思えば私とアッシーの二人であの人に見つからないどこかに行けるかも」

 

 

提督「なぜそうしないのか自分には今年一番の謎です」

 

 

秋月(仮)「アッシーは親離れ出来ていないせいです。子供の頃からすごい親になついていましたからね」

 

 

秋月(仮)「またいつかあの頃みたいに」

 

 

秋月(仮)「家族で笑ってちゃぶ台を囲める日を夢見ているんです」


 

秋月(仮)「だから、今もここにいるんです」

 

 

秋月(仮)「今回みたいな突発的な発作はまあ、年に一度はありまして……」

 

 

提督「あなたは」

 

 

提督「夢見ていないんですか?」


 

秋月(仮)「……私は」

 

 

秋月(仮)「まず自分達が幸せになりたいです」

 

 

秋月(仮)「お母さんは死ぬ間際まで、私達のこと、心配してくれていましたから」

 

 

秋月(仮)「自分の思うように生きて」

 

 

秋月(仮)「幸せをつかみとることが一番の親孝行だと思っていますから」

 

 

秋月(仮)「winwinです」

 

 

提督「なるほど」

 

 

提督「……あ、そういえばそろそろここの駐車場締まります」

 

 

提督「帰りに食材買おうと思っていましたから、移動してもいいですかね」


 

秋月(仮)「もちろんです。なんならお手伝いますよ! スーパーでのお買い物術、お見せします!」

 

 

14

 

 

提督「お渡ししておきます。このスーパーの裏手にあるアパートの2階の手前が自分の部屋です」

 

 

秋月(仮)「……あなたはどこに?」

 

 

提督「少しあなた達の家に」


 

秋月(仮)「私も行きますよ!」

 

 

提督「いえ、大事にならないよう少し大人の話をしてくるだけなので。あなたのお兄さんも心配です」

 

 

提督「秋乃さんは待機していてはもらえないでしょうか。住所は覚えているので大丈夫です」

 

 

秋月(仮)「で、でも!」

 

 

提督「話を聞いている感じ、イージー問題です。丸く片付けてくることを約束しますよ」

 

 

提督「ですので、どうか」

 

 

秋月(仮)「……あなたを信用して」

 

 

秋月(仮)「裏切られたくありません」

 

 

提督「なら、今からすることを詳しく説明します」

 

 

提督「――、――ということです」

 

 

秋月(仮)「確かにそれならサインしてもらえるかもです……」

 

 

秋月(仮)「……分かりました。信じて指示通りに待ちます。あなたには色々恩がありますしね」

 

 

秋月(仮)「私は晩ごはん作って待っていますから、アッシーを連れて帰ってきてくださいね!」

 

 

提督「ええ、では」

 

 

バタン

 

 

提督「ええっと、これか」

 

 

提督「大淀さん、出てくれるかな」

 

 

15

 

 

ドガッ

 

 

明石(仮)「ふが!」

 

 

親父「秋ともども仕事サボってなにしてやがった。俺にも連絡来たじゃねえか」

 

 

親父「俺に迷惑かけんなよ」

 

 

明石(仮)「話を聞けよ、クソ野郎!」

 

 

親父「サインしねえよ」

 

 

親父「この海軍から送られてきた書類のことだろ」

 

 

親父「お前らが死んだら俺の生活どうすンだ、あほか」

 

 

明石(仮)「相変わらず絵に書いたようなクソ野郎だな!」


 

明石(仮)「いいからサインしろ!」


 

ドゴッ

 

 

明石(仮)「……ぐっ」

 

 

親父「お前、力仕事してんのに弱えよなあ。そんなんで兵隊とかやれるわけねえだろ」

 

 

明石(仮)「俺らが今までどんな気持ちで耐えてきたのかも知ろうとしないくせに」

 

 

明石(仮)「この奴隷みたいな生活になんで耐えてきたのか、分かろうともしないくせに」

 

 

明石(仮)「俺と秋はやるんだよ」


 

明石(仮)「あの秋が」


 

明石(仮)「やる、じゃなくて」

 

 

明石(仮)「やりたいって初めていった仕事なんだぞ!」

 

 

明石(仮)「再起不能にしてから腕を使って無理矢理にでもサインさせてやらア!」

 

 

親父「相変わらず馬鹿だな」

 

 

親父「まあ……」

 

 

親父「ちょうど今日は負けが混んでイラついてたからちょうどいいわ」

 

 

16

 

 

提督「ここの4号室……」

 

 

ピンポーン

 

 

親父「どなたです」

 

 

提督「対深海棲艦海軍、適性検査支援軍施設の青山と申します」

 

 

提督「小倉嵐士君がこの度の明石適性、そして軍学校入学についての、訪問説明をこの時間に予約されておりまして(テキトー」

 

 

親父「は、はあ。嵐士はいませんよ。連絡が取れないので、どこに行ったのかも分かりませんね」

 

 

提督「あの、最悪を想定しまして警察と救急車を呼んでも構いませんか?」

 

 

親父「突然なにいってるんだあんた」


 

提督「適性検査の際に嵐士君の家庭の問題は把握はしておりますので」


 

提督「今なら嵐士君の無事を確認し、お話を聞いていただければ大事にはしないとお約束できます」

 

 

親父「……、……」

 

 

ガチャ

 

 

親父「…………どうぞ」

 

 

提督(クマみたいにでかい……)

 

 

提督(……奥で死体みたいに転がってる……けど、動いてる)


 

提督(あ、こっち見た)

 

 

親父「話とは」

 

 

提督「送付した書類にサインしてもらいたい。それだけです」

 

 

親父「一軍人風情が家族の問題に首を突っ込む気か?」

 

 

提督「私もなかば左遷のような形で今の施設にいますゆえ、悪目立ちは避けたいのです。お教え致しますが」

 

 

提督「対深海棲艦海軍において」

 

 

提督「男性である彼が兵士としての適性を出したのは、世界初のことです」

 

 

提督「家族の問題ですが、事情はどうあれ軍関係者、メディアなどから目をつけられるのはまず間違いないです」

 

 

提督「公になれば家族の問題では済まされない部分がありますよね?」

 

 

親父「若えの」

 

 

親父「小賢しいな。最もな理屈がどうした。はい、そうですか、と頷かせるにゃ」

 

 

親父「旨味が足りないと思わないか」

 

 

提督「全くです。ご用意させていただきました」

 

 

提督「この書類」ピラ

 

 

提督「賞恤金制度の説明です。その受取人はご親族のみとさせていただいております」

 

 

提督「殉職した場合、ご家族へ支払われる賞恤金は基本一億五千万、兵士の評価によってまだあがります」

 

 

提督「対深海棲艦の兵士は貴重な適性が必要不可欠ゆえに、待遇制度そのものが他の軍と違って破格に設定されていますので」

 

 

親父「へえ、でもよお」

 

 

提督「通常の給金の振込先は、あなたが所持している御二人名義の口座に振り込むことは可能です」

 


提督「上からお二人を早く寄越せ、と催促されているので、これ以上なにかがあれば」

 


提督「不本意ですが、決裂の場合、上の命の遂行が滞った理由が欲しいので、表沙汰にさせていただきます」

 

 

提督「取引は今、だけです」

 

 

提督「お互いにとって利のある取引をこの頭で考えたつもりです。いかがなさいますか」

 

 

親父「……なかば脅しだな」

 

 

親父「あいつ、今あんな怪我してるけどよ、引き渡せば後は上手くやってくれんだよな」

 

 

提督「ええ」

 

 

親父「……ちょっと待ってろ」

 

 

17

 

 

提督「確かに。では早急に彼を……」

 

 

親父「おう、とっとと持って帰……」

 

 

明石(仮)「オラア!」

 

 

バキッ

 

 

親父「痛ッ」

 

 

親父「このクソガキ!」

 

 

ドガッ

 

 

明石(仮)「へへ、ざまあ、みろ……」

 

 

親父「っち、とっとと持ってけ」

 

 

提督「……ええ」

 

 

18

 

 

明石(仮)「……なあ」

 

 

明石(仮)「一発、入れてやったぜ」

 

 

提督「喋る元気が戻ったようでなによりです」

 

 

明石(仮)「このくらいなら、へっちゃらだよ。寝れば、なんとかなる」


 

提督「あの」

  

 

提督「軍施設の医療設備ですが、命に別状はない打撲とすり傷ですが、やっぱりまだ傷みますか?」

 

 

明石(仮)「痛く、ない」


 

提督「む、怪我が痛くて泣いているわけではないのですね」

 

 

明石(仮)「……悲しいんだ」

 

 

提督「上手く事は運びましたよ?」

 

 

明石(仮)「いつか昔みたいに戻れるって期待して生きてた」

 

 

提督「……」

 

 

明石(仮)「上手く、行かない」

 

 

明石(仮)「こんな風に苦労を背負っている人って俺だけじゃなくて、たくさんいるんだよな」

 

 

提督「恐らくは」

 

 

明石(仮)「大事なモノが取り戻せないって、すげー泣けるんだ」

 

 

明石(仮)「俺は馬鹿だから、なにをどうすればいいのか、分かんない」

 

 

明石(仮)「けど」

 

 

明石(仮)「戦争が悲惨なのはさすがに馬鹿な俺でも分かる」

 

 

明石(仮)「だから、そこに行くアッキーを守りてえ」


 

明石(仮)「そんで同じように誰かの大事なやつも、守ってあげたい」

 

 

明石(仮)「戦争が終われば」

 

 

明石(仮)「平和が訪れるとは、いえねえけど」

 

 

明石(仮)「今より少しくらいは平和な世界になるよな?」

 

 

提督「人間次第です」

 

 

明石(仮)「決断と決意をした」

  

 

明石(仮)「というこれどこ向かってんの」

 

 

提督「あ、ここが自分の家です」

 

 

提督「秋乃さんがご飯作って待ってくれています」

 

 

明石(仮)「未成年の女を連れ回して自宅に連れ込んで家政婦みたいなことさせてんのかよ」

 

 

提督「ま、まあ、緊急事態の保護的なあれで(震声」


 

明石(仮)「アッキー、帰ったぞー」

 

 

秋月(仮)「……」


 

提督「泡吹いて倒れてますね。一体なにが……」

 

 

秋月(仮)「……」ブクブク

 

 

明石(仮)「アッキーは俺と半日以上離れると泡吹いて倒れるんだよ」

 

 

提督「それ本当だったんですか……」

 

 

明石(仮)「おい、アッキー」バシバシ


 

秋月(仮)「っは、アッシー!」

 

 

19

 

 

秋月(仮)「アッシー、ボロボロだね……」


 

明石(仮)「その甲斐あって上手く行った。サインはもらえたぞ」


 

秋月(仮)「それ、あの人のお陰でしょう?」

 

 

明石(仮)「そうだな。なんか礼をしねえとな。といっても」

 

 

秋月(仮)「すかんぴんの私達がお礼できることが思いつかない。ご飯は作ったけど、私達が食べさせてもらう身だし……」

 

 

明石(仮)「とのことだ。なんか俺らにして欲しいことはないか」

 

 

秋月(仮)「お助けしてもらったお礼をしなければ気が済みません!」

 

 

提督「助けたというか、まあ、仕事でしたので……まあ、気が済まないというのなら」

 

 

提督「今度はお二人が助けてあげてください」

 

 

提督「海で命が散らないよう」

 

 

提督「自分は戦場に兵士として立てませんから。負けず挫けず、それぞれの使命をやり遂げてください」

 

 

明石(仮)「もともとそのために俺は軍に行くんだろうが」

 

 

秋月(仮)「なら、感謝と尊敬の念を込めてお兄さんと呼ばせてもらいます!」

 

 

明石(仮)「お、それいいな。あんたなら兄さんって呼んでもいいぞ」

 

 

提督「……」

 

 

提督「へっ、ガキはこれだからちょろいぜ」

 

 

明石(仮)「なんか急に悪者みたいなこといいだしたぞ……」

 

 

秋月(仮)「そんなに私達に慕われるのは嫌なんでしょうか……」

 

 

提督「あ、自分は少し電話してくるので外に出ますね」

 

 

20

 

 

明石(仮)「アッキー、いい大人もいるんだな」

 

 

秋月(仮)「……うん。少し変わってる人だけど」

 

 

明石(仮)「俺らみたいなのと関わりたがらないのに」

 

 

明石(仮)「困ったら」

 

 

明石(仮)「大丈夫かって助けてくれる人もいるみたいだ」

 

 

秋月(仮)「そうだね!」

 

 

提督「あの、ここは壁が薄いので大声は自重してくださいね」

 

 

秋月(仮)「あ、はい! すみません!」

 

 

提督「言葉が通じない、だと……」

 

 

明石(仮)「あんたは信用できるって話をアッキーとしてたんだよ」

 

 

提督「……秋乃さんは」

 

 

提督「大人を信用しないのでは」

 

 

秋月(仮)「信用するっていいましたよね! さすがに恩人くらいは信じます! そこまで大人不信ではないです!」

 

 

提督「信用しない方がいいと思いますけどね……」

 

 

提督「大人って馬鹿ばっかりですから」

 

 

明石(仮)「確かに。俺らの問題に首を突っこんでくるあんたもな」

 

 

提督「その通り」

 

 

明石(仮)「ところであの話、どうすんだよ。さすがに給金全部持ってかれたら俺らキツいだろ。ゴミとか漁っていいならやっていけるけどさ」

 

 

秋月(仮)「あ、そういえばお金あげるみたいな取引内容でしたっけ?」

 

 

提督「大淀さ……上に頼んであなた達はもう訓練生として登録されています。書類関連は後日に受理してもらえるように頼んでおきました。まあ、身内として融通利かせておくために」

 

 

提督「明日くらいに口座作りに行ってくださいね」

 

 

提督「まあ、上にも把握してもらってますので、親御さんはとりあえず完全シャットダウンです」

 

 

提督「あなた達のその適性に感謝ですね。軍はかなり欲しがっているみたいなので」

 

 

提督「さすがに国にケンカは売ってこないでしょうし」

 

 

提督「まあ、そういうことでいいですよね?」

 

 

秋月(仮)「本当になにからなにまで……」ウルウル

 

 

提督「仕事なので」

 

 

提督「貴重な兵士のためでもありますからね。どうもあなた達は、悩み、立ち止まる時間よりも、確かな未来に進む方が良きことだと判断しました」

 

 

提督「軍に入りたいのなら」

 

  

提督「今がその時、です」

 

 

秋月(仮)「ナウイズザタイムですね!」



提督「それよりご飯食べましょうよ。そろそろいいですよね」

 

 

秋月(仮)「はい、お鍋いただきましょう!」

 

 

提督・秋月(仮)・明石(仮)「いただきます」

 

 

提督「……」モグモグ

 

 

明石(仮)「……」ポロポロ

 

 

秋月(仮)「アッシー、泣きながらご飯食べるの止めなよ……」

 

 

秋月(仮)「こういう風に食卓囲むの夢だからってさ」

 

 

秋月(仮)「気持ちは分かるけど……」

 

 

明石(仮)「泣いてねえ」ゴシゴシ

 

 

明石(仮)「忘れてたんだよ」

 

 

明石(仮)「アッキーの飯」

 

 

秋月(仮)「自信作です。あ、美味しさのあまりに感動したんだね!」

 

 

明石(仮)「非現実的な味がすること」

 

 

オロロロロ

 

 

提督「?」モグモグ

 

 

明石(仮)「兄さんは、すごいな」

 

 

明石(仮)「あんた、もうアッキー嫁にもらったらどうだ。この飯マズでも食えるならアッキーにうってつけだ」

 

 

秋月(仮)「し、失礼な! アッシーの味覚がおかしいんですよ!」

 

 

秋月(仮)「そ、それに変なこといわないでください」

 

 

秋月(仮)「お、お嫁さんなんて私にはまだまだ早いです!」

 

 

明石(仮)「……やべ」


 

明石(仮)(今、アッキーのドレス姿を思い浮かべたら)

 

 

明石(仮)(幸せそうに笑ってるアッキーの顔が……)

 

 

明石(仮)(……見えたよ)

 

 

明石(仮)「……」ポロポロ

 

 

秋月(仮)「そこまで不味いのなら無理して食べなくてもいいです!」

 

 

秋月(仮)「アッシーの馬鹿!」



22

 

 

提督「ということがありまして」

 

 

提督「あ、一部、自分の想像入ってます」

 

 

龍驤「キミ、さすがやで!」

 

 

龍驤「よーやった! でもキミもその親父に1発ぶちかませばよかったんやで!」

 

 

初霜「想像以上の重さです……」

 

 

間宮「誰も死なずに済んでよかったです……」ホッ

 

 

乙中将「あー……」

 

 

飛龍「その二人がここに配属を希望する理由も分かったなー……」

 

 

蒼龍「というかこの人、めちゃくちゃ誤解されているだけで」

 

 

蒼龍「実はいい人なのでは……」

 

 

乙中将「少なくとも青ちゃんは苦労人だよね」

 

 

わるさめ「なにー、司令官って年下萌えだったの?」

 

 

わるさめ「おにいちゃーん」ウワメヅカイ

 

 

提督「そんな解釈をされるのは想定外です」

 

 

わるさめ「思い出はいつも綺麗だけどー、不幸話だけじゃお腹が空くわー」

 

 

わるさめ「まあ、家庭問題の不幸ってわるさめちゃん的にはすげー同情するけどね……」

 

 

わるさめ「今の話をしたらぷらずまのやつ面白い反応しそう」

 

 

提督「……」

 

 

わるさめ「それに聞いていた限り、明石のほうはぷらずまのやつと相性悪そうじゃん。まあ、司令官への忠誠度によってはむしろ仲良くやれるかもだけどー」

 

 

提督「彼等の配属を受け入れるかどうかはぷらずまさんの判断に委ねようかと」

 

 

提督「ぷらずまさんは戦争終結においてのプラスマイナスの勘定できるはずですし、私情は混ぜないはずです」

 

 

提督「使えるか使えないかで判断します」

 

 

わるさめ「提督さんの弱点はねー」

 

 

わるさめ「人の心の機微に疎すぎること☆」

 

 

わるさめ「女心とか全く分かんないタイプだもんねー」

 

 

龍驤「せやな」

 

 

間宮「ですね」

 

 

提督「最近必要性を感じて勉強中ですから……」

 

 

乙中将「ま、面白い話も聞けたし、開発やってくるよ。執務室にあるリスト借りるねー」

 

 

乙中将「それと明日は朝早くに発つからお見送りも要らないからね」

 

 

乙中将「あ、夕立がきた」

 

 

夕立「っぽい! 鎮守府(闇)の提督さん!」

 

 

夕立「卯月ちゃんから!」

 


夕立「電ちゃんと小学校でお友達だったって聞いたけどほんとっぽい?」

 

 

提督「いいえ」

 

 

乙中将「へえ。間宮さん」

 

 

飛龍「お酒を」


 

蒼龍「追加で」

 

 

間宮「はい、ただいま」

 

 

提督「夕立さん……悪夢を運んでこないでください……」

 

 

夕立「ぽい?」

 

 

龍驤「どんまい」

 


【3ワ●:明石さんの提督調査】

 

 

1

 

 

提督「…………」

 

 

コンコン

 

 

瑞鳳「失礼します。司令室にいらっしゃらなかったので自室にお伺いしました」

 

 

提督「あ、どうぞ」

 

 

瑞鳳(自室、書物だらけ……)

 

 

瑞鳳「陽炎さんと不知火さん、それと希望されたので秋月さんも連れて、夜間哨戒行ってきてもよろしいですか?」


 

提督「お願いします」


 

提督「瑞鳳さん」


 

瑞鳳「はい」


 

提督「深海棲艦との戦争の始まりをご存じですか?」


 

瑞鳳「座学での知識程度ですが……」


 

瑞鳳「確か深海棲艦が先で、その後に妖精と艤装の発見、深海棲艦と妖精は爆発的に出現したみたいですね」

 

 

提督「しかし、深海棲艦を深海妖精が建造するとしたら初めに現れたのは妖精でなくては矛盾が生じますよね」

 

 

瑞鳳「ええ」

 

 

提督「もっといえば深海棲艦を作るのに、艤装と人間が必要ならば、一番後に現れたのが深海棲艦でないとおかしいです」

 

 

瑞鳳「……はい」

 

 

瑞鳳「だからこそ深海妖精の発見がここまで騒がれているんじゃないですか」

 

 

瑞鳳「最もこれといった進展は聞きませんけど。こっちでは上が進展がないのか秘匿しているのかも分かりませんけど……」

 

 

提督「初期に発見された艤装は、吹雪、五月雨、電、漣、叢雲。共通点はあっても特別な意味が思い付きませんし」

 

 

提督「そもそも妖精って死ぬんでしょうか」

 

 

瑞鳳「?」

 

 

瑞鳳「艦載機の操縦する妖精さんは撃ち墜とされて海に還りますよ?」


 

提督「……還る……」

 

 

提督「って、死ぬんでしょうか」

 

 

瑞鳳「皆、無限に沸いてきますからね……」

 

 

提督「いくつか深海妖精を陸地に誘う方法を考えていますが、しらみ潰しは時間がかかりすぎるので1つに絞ろうと考えているんですけど」

 

 

提督「下手な人体実験は、あなた達から将校に漏れますし……」

 

 

瑞鳳「それはなによりです。私達を物扱いはさせませんよー……」

 

 

瑞鳳「あ、妖精のことなら明石さんに聞いたらどうです?」

 

 

瑞鳳「明日来ると、はっつんから聞きましたし」

 

 

瑞鳳「あの人、妖精可視の才がありますし、30年も明石さんやっていますからなにか参考になるお話が聞けるかもです」

 

 

提督「……ありがとうございます。それがよさそうです」

 

 

2

 

 

初霜「提督、先ほど明石さんから連絡がありまして、フタマルマルに到着するとのことです」

 

 

提督「やっと、ですか」

 

 

初霜「あの方も多忙ですからね」

 

 

初霜「明石艤装は例の彼に引き渡してはいないのですね」

 

 

提督「あー、後で軍学校に行って正式に引き渡すらしいです。明石さん、1年間血を吐きながら各鎮守府を回ったらしく」

 

 

提督「引き渡しの際に明石がしばらく配属された鎮守府に滞在できるよう、ここに改修装備を届けてもらって仕事するみたいです」

 

 

初霜「優しい人なのですね」

 

 

初霜「ところで提督、改修する装備はお決まりなんですか?」

 

 

提督「いえ、卯月艤装のメンテナンスをお願いしたくて」

 

 

初霜「そういえば、あの艤装は明石さんが魔改造したものなんですよね?」


 

提督「ええ、そのようです」

 

 

提督「あの人も妖精可視の才能があるみたいですね。なにやら妖精さんの技術を参考に頑張った結果があれだそうです。すごいですよね」

 

 

提督「天才かポンコツかの判断に困りますけど」

 


卯月「ポンコツだぴょん」

 

 

卯月「元に戻せません、はい!」

 

 

卯月「あれが成功作なのかも怪しいぴょん」

 

 

初霜「提督はあの艤装をもとに戻せるとしたら、戻すつもりもないのですか?」

 

 

提督「自分はあのままでも。卯月さん次第ですかね」

 


卯月「もー、あの艤装が馴染んでるし」

 

 

卯月「はっつんもあんな特殊な動きしたくはないぴょん?」

 

 

卯月「一人で輪形陣組む勢いの対空射撃を可能にする砲改造とか」


 

卯月「お祝い事があると、輪形陣を組みたがるって風の噂で聞いたぴょん」

 

 

初霜「いえ、そういうわけでは、ないですけど……私はどんなイメージなんですか」

 

 

卯月「器用貧乏」

 

 

初霜「う……」

 

 

卯月「中途半端」

 

 

初霜「……うぅ」

 

 

卯月「まあ、それでも」


 

卯月「駆逐艦卯月よりはマシだぴょん」


 

卯月「最弱レベルの卯月よりは、初霜のほうが誰だっていいし」


 

卯月「うーちゃんは砲撃、雷撃、回避、どれを取っても一流で、学校時でもトップだったぴょん。けど、適性という才能は乏しかったから」

 

 

卯月「『戦艦の適性があれば』」

 

 

卯月「頑張れば頑張るほど、そーいう風にいわれてきたぴょん」


 

卯月「駆逐艦卯月になりたかったわけじゃないし。選択肢さえあれば誰がこんな最弱艤装選ぶもんか」


 

卯月「強くなれるのなら手段は問わない。この司令官についている1つの理由でもあるぴょん」

 

 

初霜「……乙中将との演習時ですが、自分の傷を躊躇わない戦い方、怖くはないのですか?」


 

卯月「痛いのも怖いのも嫌いだぴょん。深海棲艦との戦いで負けて失うことはもっと怖いし。アブーは死なせん」

 

 

卯月「だから、戦ってる。シンプルだぴょん」


 

初霜「……なんだかすごく大人な感じが」

 

 

卯月「数年単位で殺し合い続けていれば大人っぽくもなるぴょん」

 

 

卯月「辛気臭いやつめ」


 

卯月「そ~ら~っ」ピラッ

 

 

初霜「きゃ」

 

 

初霜「卯月さん、提督の前で、そういうことは止めてください!」

 

 

卯月「司令官、見えたぴょん?」

 

 

提督「……」

 

 

卯月「駆逐艦はストライクじゃないぴょん?」

 

 

提督「初霜さん」

 

 

提督「申し訳ありません」ペコリ

 

 

初霜「い、いえ、別に構いません。というか、お見苦しいところをお見せして、申し訳ありません」ペコリ

 

 

卯月「む、司令官に触られても怒らないぴょん?」

 

 

初霜「その必要性さえあれば一向に構いませんが……」

 

 

提督「まあ、怪我や病気した時のような緊急性があれば……」

 

 

卯月「司令官ってホモ?」

 

 

提督「同姓に恋愛感情も性欲も持ったことはありませんが」

 

 

卯月「異性には」

 

 

提督「あまり記憶にありません(メソラシ」

 

 

卯月「恋したいとかは?」

 

 

提督「卯月さん、今は」

 

 

卯月「戦争中ですから、とかそういうのはなしで」

 

 

提督「特にはありません」

 

 

卯月「でーすーよーねー」

 

 

卯月「わるさめが来てからかなり明るくなった気はするけど」

 

 

卯月「うーちゃんが来た時、ここほどラブ勢のいない鎮守府は珍しいと思ったぴょん。ま、言い方を変えれば、適切な距離感保ててる鎮守府も」

 

 

卯月「うーちゃん的には実に」

 

 

卯月「つまらないぴょん」ピラッ

 

 

初霜「スカートをめくるのは止めてください!」

 

 

提督「……まあ」

 

 

提督「家族は欲しい、かも?」

 

 

卯月「む、それは面白そうなこと聞いたぴょーん」

 

 

卯月「ぷっぷくぷー。アブーとゴーヤ誘ってゲームしてくるー」

 

 

3

 

 

明石さん「工作艦明石です!」ビシッ

 

 

明石さん「例の卯月艤装のメンテナンスの施工に伺いました!」

 

 

提督「はい、よろしくお願いします」

 

 

提督「ところで卯月艤装、妖精の開発技術を見よう見真似で作ったと聞き及んでおりますが、本当なんですか?」

 

 

明石さん「あー、それよく聞かれますね。わたしは提督の素質もあって妖精さんが見えますし、意思疏通もある程度出来るんです。提督さんもですよね?」

 

 

提督「ええ、まあ……」

 

 

明石さん「わたしはその分野に才能あったみたいで、妖精さんに意思を伝えたり、なにを伝えたいのか、すごくよく分かるんです。もちろん比較的、ですよ?」


 

明石さん「乙中将なんかはすごいですよ。妖精コミュでは歴代提督のトップです。あの人、噂では動物とも会話できるとか」アハハ


 

明石さん「まあ、大事なのは諦めないハートですよ。回数が全てだ回せってやつです」

 

 

明石さん「妖精の技術は資材と開発資材を使いますが、最も重要なのは、妖精さん自身の能力ですしね」

 

 

提督「謎が多い、ですよね」

 

 

明石さん「未知の技術ですよね。彼らはどこでどうやって誕生したのかはまだまだ謎ばかりです」

 

 

提督「オカルトの一種かと。幽霊みたいなものじゃないですかね。ほら、幽霊も物理的にポルターガイストとか起こしますし」

 

 

明石さん「幽霊頼りの軍とか笑っちゃいますよね」

 

 

提督「超能力捜査を政府がやりますし、時代の流れですかね……」

 

 

明石さん「わたし達も見える側ですねー」

 

 

明石さん「さて、始めますか!」

 

 

4

 

 

明石さん「ん、見ていて楽しいですか?」

 

 

提督「ええ。やはり明石さんは装備を弄って艤装自体の改造は妖精さんにお任せしているんですね」

 

 

明石さん「まー、わたし一人で出来るのは取り外し可能装備の改修くらいで未知を扱う部分は私一人では無理ですから」

 

 

提督「なぜ卯月艤装だったのです。やはり弱いからですか?」

 

 

明石さん「うーん、今の卯月ちゃんの才能に艤装が応えられていなかったんですよねー……」

 

 

明石さん「兵士のポテンシャルを持て余すのは単純に損害でしたし、そこにやりがいを感じてしまいまして」

 

 

明石さん「面白い試みでもありましたし。まー、思い立ったが吉日だったので、すごい怒られましたけど……」

 

 

提督(そこら辺が卯月さんからポンコツといわれるゆえんですかね……)

 

 

明石さん「そう言えば、軍は隠していますが」

 

 

明石さん「今、世間を騒がしている」

 

 

明石さん「深海妖精は甲大将ではなく、あなたが発見したそうですね?」

 

 

4

 

 

明石さん「すごく興味があるんですけど、詳しいことは調査中とのことです。軍でも最新情報は一部しか知らないみたいで、おまけに箝口令も」

 

 

提督「その件は自分も存在を確認した程度で」

 

 

明石さん「まっさかー。深海になにかあると睨んだのは、あなただけではないです。たくさんの先人が調査したじゃないですか」

 

 

明石さん「あなたは当たりをつけていたと、わたしは考えていまして」

 

 

明石さん「多分、ずっと前から。戦争のことばかり考えて自由時間を有効に使ったんじゃ?」

 

 

提督「まあ、実際に艦娘を沈めて観察することはやりたいことではありましたが、人体実験です。自分だけが思い付いたことではないと思います。自分が出来る立場だっただけで」

 

 

明石さん「駆逐艦電のいるこの鎮守府に来たがっていたのも、そのためでは?」

 

 

提督「……」

 

 

提督「調べたのですか?」

 

 

明石さん「教えてくださいよー」

 

 

明石さん「その代わり、わたしも妖精さんの秘密を教えますから。確信はないですし、小話程度の面白い発見してしまいまして」

 

 

提督「……どんな発見ですか?」

 

 

明石さん「妖精にも色々と役割がありまして。開発妖精、廃棄妖精、建造妖精、解体妖精、装備妖精」

 

 

明石さん「全ての鎮守府にいるわけではありませんが、奇妙な妖精さんが稀におりまして」

 

 

明石さん「明石さん的発見が」

 

 

明石さん「そこの明石さんミステリーの深い話を」

 

 

提督「……」

 

 

提督「…………へえ」

 

 

提督「何が聞きたいですか。答えられる範囲であれば」

 

 

明石さん「私からじゃないんですね。信用してくれてありがとうございますー」

 

 

明石さん「あ、お互い黙っておきましょうね。私はあくまで興味本意ですから」

 

 

提督「ええ。そのほうが賢明ですね」

 

 

明石さん「深海棲艦は深海妖精が沈んだ艦娘から建造しているのですよね」

 

 

提督「確定かと」

 

 

明石さん「でもそれじゃ説明できない点があります。深海棲艦には色々な種類がいるじゃないですか?」

 

 

明石さん「過去に殉職した艦娘と数、合いませんよね。深海棲艦は遥かに多いです。これのからくりは知っていますか。あ、予想でも構いません」


 

提督「……予想になりますね」

 

 

提督「深海棲艦の建造行程は通常建造とは異なり、肉体に艤装を適応させるのではなく、艤装を肉体に適応させる」

 

 

提督「ですが撃沈時の艦娘の損傷具合は様々です。むしろ五体満足のまま沈むほうが少ないです」

 

 

提督「例えばですが」

 

 

提督「一部の艤装と肉体からも建造可能なのではないでしょうか」

 

 

明石さん「なるほどー……納得行く予想です」

 

 

明石さん「深海棲艦って顔に艤装つけたようなやつとか、体のどこかが欠けたような、体の一部そのものが艤装になっているような見た目、多いですもんね」

 

 

明石さん「引きちぎれた腕と、艤装の欠片をベースに作れるのなら、あんなに数が多いのも説明はできますね」

 

 

明石さん「もう1つ」

 

 

明石さん「深海棲艦が艦娘だとしたら、あいつらの艤装って艦娘の艤装とは性能が比較にならないほど上等なものもあるみたいで。改修では説明がつかない次元で」

 

 

提督「すみません。深海妖精は未知でして、彼らの技術が関係しているであろう、としか」

 

 

明石さん「もっと具体的な予想は?」キラキラ

 

 

提督「……これらの情報を魔改造に利用しないでくださいよ?」

 

 

提督「恐らく、艦娘と同じように条件があり、深海棲艦の種類が分かれるのかと。知能を宿すには完全に死亡していない。まあ、五体満足、生きている状態だと、恐らくそのまま人間レベルの知能が引き継がれる、かも?」

 

 

提督「姫級や鬼級は一体ではなく、複数の撃沈者から成り立っている可能性も。艤装の点については例えば駆逐艦が轟沈したとして」

 

 

提督「戦艦の擬装にその駆逐艦適性者の肉体を装備させる、とか」

 


提督「深海妖精の……技術の範囲では?」

 

 

明石さん「……、……」



明石さん「確かに、深海棲艦に対して魔改造が出来ると仮定したら、可能性はありますね」

 

 

提督「そうせざるを得ないのですよ。壊れた艤装を機能させるために」

 

 

提督「……確信が欲しいのですけどね」

 

  

明石さん「……でも艤装に人間のような意思があって、手足を得たから動き出したといっているようなものですよ?」

 

 

提督「龍驤さんと同じ疑問ですね」

 

 

提督「それが深海棲艦の正体ですし、あなた達が艤装を身に付けると実際、その艤装の過去を夢に見たりすると聞きますが……」

 

 

提督「艤装は疑似生命とかそんなんじゃないんですかね……」

 

 

明石さん「……、……」ウズウズ

 

 

明石さん「この卯月艤装に」

 

 

提督「はい?」


 

明石さん「ヨンロク砲いってみていいですか」

 

 

提督「絶対にやめてください」

 

 

5

 

 

提督「妖精は使命を受けて鎮守府に居着くということは」

 

 

明石さん「うーん、中には嫌々といった感じで仕事する子がいるんですよ」


 

明石さん「これあくまでわたしがそう見えるってレベルの反応です」

 

 

提督「……そうなんですか?」

 

 

明石さん「まあ、じっくり観察していないと分かりませんよ。わたしも何十年もお仕事していて、あれれーって気付いたくらいですから」

 

 

提督「例えば?」

 


明石さん「もしかしてその子達は役割が違うんじゃないかなと。その役割は分かりませんけど、嫌々、鎮守府でお仕事してるとか?」 


 

明石さん「わたしも最前線で砲雷撃戦やれとか言われたらやる気出ませんし」

 

 

明石さん「でも、やらなきゃ」

 

 

明石さん「命令が出たのなら」


 

明石さん「建造妖精はですね、少しだけ解体が出来るんです。開発妖精も少しだけ廃棄妖精の仕事が出来ます。やらせると、嫌々といった風です。解体は建造が出来れば、まあ、出来ないことはないし、開発だってそうです。ま、未知の部分があるので、あくまでわたしはそう思う、なのですが」

 


明石さん「わたしは妖精さんとともに30年以上の人生を歩んでいますから、妖精さん観察するのも意思疏通のレベルが高いのもそのせい、かも」

 


明石さん「テンションあがった卯月艤装魔改造の時に4日徹夜して、その時は建造妖精と解体妖精、開発妖精と廃棄妖精と四六時中一緒にいたんですけど」



明石さん「そこにいたはずの建造妖精さんがパッと消えて、あれ、なんでそんなに解体できるの? あれ、いつの間に建造妖精さんは、解体妖精さんと、立ち位置、入れ替わったんです? みたいに」



明石さん「ま、妖精さんはロストでしたっけ。たまーにそれするので、その間に入れ替わっただけかもしれないですけど」



明石さん「これはわたしが寝惚けていただけの一度きりのなーんとなくの恥ずかしい話なの胸に秘めてます♪」キャピッ



提督「そうですね」



明石さん「ですよねー。あなたという人が分かってきた気がしますー」



提督「まあ、自分は浅いですしね。よく初対面の人に見抜かれます」




提督「……、……」

 

 

提督「………、………」

 

 

提督「…………、…………」ツー

 

 

明石さん「鼻血出てますけど……」

 

 

提督「お気に、なさらず」

 


提督「そのやる気のない妖精、どの子ですか」

 

 

明石さん「手伝ってくれてるこの子です」

 


提督「うちのなかば深海棲艦化した子達を知っていますか?」

 

 

明石さん「ええと電さんと春雨さんですよね」

 

 

提督「これは可能性は極薄かと思いますが、彼女らの解体を頼んでも」

 

 

明石さん「それは実に面白い発想です!」キラキラ

 

 

提督「明石さん、妖精の種類は建造妖精、解体妖精、開発妖精、廃棄妖精、パイロット含む装備妖精、それぞれが……」

 

 

明石さん「?」

 

 

提督「すみません。明石君が来てから頼もうと思っていたのですが、装備改修の他に地下に置いてある水槽とその機材もろもろに」

 


提督「出来る限り海の状態と同じに調整してもらって構いませんか」

 


明石さん「……、……なぜです?」

 

 

提督「確信に変わったのです。明石さんのその妖精とともに生きたその人生が、ピースの1つになり得ました」

 

 

提督「これでやっと」

 

 

提督「暁の水平線」

 

 

提督「の影が」

 

 

提督「踏めます」

 

 

明石さん「……大淀さんがいっていた通り奇妙な頭をしている人ですね」

 

 

明石さん「あなたの頭をかち割って覗いてみたいです」

 


提督「この戦争が終わった時まだ自分が生きていたら、どうぞ」

 

 

6

 

 

ぷらずま「司令官さん、私は遠慮するのです」

 

 

提督「……了解です」

 

 

わるさめ「司令官マジ? わるさめちゃん普通の女の子に戻れるかもしれないって……?」キラキラ

 

 

わるさめ「わるさめちゃんは感動しました」キラキラ

 

 

わるさめ「割とマジで結婚前提のお付き合いお願いします」キラキラ

 

 

ぷらずま「●ワ●」

 

 

明石さん「では妖精さーん、やってみて」

 

 

妖精「……」ハア

 

 

明石さん「……あれ?」

 

 

カーンカーン

 

ブチッ

 

 

わるさめ「う、腕ぎゃもげあああ!」

 

 

わるさめ「くぁwせdrftgyふじこlp」

 

 

明石さん「す、ストップ! 中断!」


 

ぷらずま「●ワ●」

 

 

ぷらずま「妖精さん、続けるべきかと。良い仕事しているのです」 

  

 

カーンカーン

 

グチュ

 

 

わるさめ「目が、右目の視神経があ!」

 

 

ぷらずま「●ワ●」キャッキャ

 

 

明石さん「ぐろ……オエップ」

 

 

提督「妖精さん、ストップで」

 

 

提督「わるさめさん」

 

 

わるさめ「なんスかー……」

 

 

提督「この手、もらいますね?」

 

 

わるさめ「司令官さん、いくらわるさめちゃんでもさすがにそんなアブノな性癖は受け止めきれねっスよ……?」

 

 

提督「地下に大きな水槽があるので、そこに切断した身体の一部を入れておきたい」

 

 

提督「まあ、さすがにお願いできる相手は限られてるので」

 

 

わるさめ「ぷらずまじゃなくってわるさめちゃんってことは」

 

 

わるさめ「女の子に戻れる可能性のある実験ってことかな?」

 

 

提督「深海妖精を陸地に誘います」

 

 

ぷらずま「!!」

 

 

ぷらずま「司令官さん、このダボが断るのなら私でも構いません」

 

 

わるさめ「●ω●」

 

 

わるさめ「よろしい。高速修復剤は使わせてもらうからね」

 

 

わるさめ「つか、段々あいつみたいになってきてるね。いっちまわないように気を付けなよ?」

 

 

提督「心配ご無用」

 

 

わるさめ「ならよろしい」

 

 

提督「ぷらずまさん、電艤装も展開できますね?」

 

 

ぷらずま「ええ、初期装備+拳銃砲の固定装備となりますが」

 

 

提督「構いません。その艤装の一部でも構いません」

 

 

提督「龍驤さん、瑞鶴さん、瑞鳳さんに頼んで艦載機発艦してもらって、その艦載機を撃ち落とし、その艦載機を水面に触れる前に確保」

 


提督「艤装の一部とともに水槽に入れてもらって、地下にあるストップウォッチを水槽にくっつけてタイマーを」

 

 

わるさめ「カ級捕まえてた時も思ったけど、相変わらず変なこと思い付くっスねー……」


 

提督「それと、通常の艦娘の肉、訓練時スパルタでやってあなた方以外の通常の艦娘の体の1部、この手くらいで構いません」



提督「地下の冷蔵庫に入れて保管しておいてください」



明石さん(うわー……)



ぷらずま「●ワ●」



ぷらずま「了解」

 

 

ぷらずま「なのです」

 

 

提督「………もう、1つ。これは後々で構いませんが、ぷらずまさんわるさめさん」



提督「あなた達をその身体にした司令官が作った暗号、何種類くらいありました?」



わるさめ「んー、4種類くらいかな?」



ぷらずま「ダボが。その倍の8種類です」



ぷらずま「文字から作ったと思われる暗号が、恐らくSSS、そこから順に下がっていく、かもしれません。下位の暗号でも私にもよく分からなかったので、わるさめさんには分かるはずがないのです」



わるさめ「あ、でも、むかーしリコリスママがどうでもいいから見せてあげるよって、見せてくれた資料があったかな。チューキさんは嫌そうな顔をしてたけど、誰もリコリスママには逆えないからね。その暗号が……」



わるさめ「比較的簡単だってママが」



ぷらずま「どういう文字列なのです?」



わるさめ「よく覚えてないゾ☆」



提督「あなた深海棲艦と志を共にした仲間ではなく、情報引き出そうと思っていたんですよね? マジで向こうでただ遊んで過ごしていたんじゃないですよね……?」



わるさめ「わるさめちゃん、ノリとテンションで生きてるから」



提督「……」



わるさめ「……(メソラシ」



ぷらずま「司令官さん、ほんとこのダボは使えねーので資材に変換してもいいですか……?」



わるさめ「……あ、そうだ。ヒントもらってたんだった。レッちゃん&ネッちゃんがもっと賢くなるかもーって、リコリスママからお勉強させられてて、わるさめちゃんも一緒に遊んでた」



提督「やっぱり遊んでたんじゃ…………」



わるさめ「アルファベットの文字列に、日本の海辺と、そこに咲いている代表的な花言葉を考えて解くと文字が出てくるって」



わるさめ「確かそれがキーワードになって、その他の文字は携帯知っていれば解けるって」



わるさめ「ポクポクポク、ちょっとお待ちくださーいー………」



わるさめ「レッちゃん達と解いて、文字列で遊んでたー。『チューキさん! リコリスママ! プレイステーションがタウイタウイ、おっぱいがお空にかかる虹、夢が新潟の土佐犬、ミッドウェーが三越デパート本店になるよ!』」



わるさめ「キャハハハハ! って感じで笑ってたかな。そんくらいしか覚えてねっス……」



提督「っく、全く意味が分からないどころか、あなたの記憶をまるで信用できない自分が」



ぷらずま「ま、私が覚えている限りの文字列を資料として作成して置いておくのです」



ぷらずま「軍でも解けていねーのでリコリス棲姫と中枢棲姫以外には絶対に分からないよう出来ているとは思いますが」



提督「ですよねー……」



明石さん「電ちゃんも春雨さんも」



ぷらずま・わるさめ「?」



明石さん「この人のこと大好きなんですね」



わるさめ「そうですね。でもこいつ無機物なんで愛の言葉を投げても、壁にボール放り投げたかのように虚しくわるさめちゃんに戻ってくるんです。提督の修理……」



わるさめ「いや、こいつの場合は装備改修かな。お願いしますねー」



ぷらずま「くだらねー……」



ぷらずま「私は与えられた使命をこなすので、ここらでさよーなら、なのです」



7

 


提督「ありがとうございます。お疲れ様でした。間宮さんがお食事を作って待ってくれていますので……」

 

 

明石さん「ところで」

 

 

明石さん「わたしの弟子とその妹がこの鎮守府に配属希望しているんですけども」


 

提督「ええ、通達は来ています」

 

 

明石さん「過去のことは聞きました。なんとなく察してはいたんですけどね。大淀ちゃんからも話は濁されてはいたんですけど」

 

 

明石さん「二人の親父さんがアカデミーまで来ましたから」

 

 

明石さん「そこらも解決してくれればよかったのに」

 

 

明石さん「今からでもしてくれません?」


 

 

 

 



 










 

無茶苦茶いわないでください。絶対あなた大淀さんの親友でしょ。

 

 

 

 

明石さん「冗談ですよ。二人の親父さんは話が通じなくて、わたしがその時身体を張りました。ボコボコにされましたが、ボコボコにし返してやりました」

 

 

提督「男気ありますね……」

 

 

提督「それに、来たんですか……あの熊みたいな人……」

 

 

明石さん「元帥さんは歳のせいでしょうね。若者に優しいというべきか、甘いというべきか悩みますけど」

 

 

明石さん「その人をほぼ無理矢理、軍に押し込んで陸のほうで後方支援部隊のお仕事させているみたいです」

 

 

提督「そう、ですか。さすがですね。自分ではそこまで出来ませんでした」

 

 

明石さん「多少は元に修理できるかもしれません」

 

 

明石さん「だから、いつの日か」

 

 

明石さん「また家族で笑い合える日が来るのかもしれません」

 

 

明石さん「なのにあの子達は、その命はあなたのために使いたいっていうんです」

 

 

明石さん「きっかけである大淀さんも技術を教えたわたしもそうですが、あなたにも、あの子達をそうした責任があります」

 

 

明石さん「そういった責に報いることが、司令官として指揮を執ることだとわたしは常々思っています」

 

 

明石さん「あの子達が幸せなら、わたしは戦争なんか終わらなくたっていいです」

 

 

明石さん「あんまり感じたことなかったのですが、母性、がわたしにもあるのですかね。あの子達の幸せだけを切に、願っております」


 

明石さん「あなたはどうですか?」

 

 

提督「失ってしまった、ではなく、意図して死なせた。無駄死にだけはさせません。そしてその終点は全て」

 

 

提督「戦争の終わりへの布石です」

 

 

提督「以上です」

 

 

明石さん「よろしい。即答できなかったらお仕置きしてました」

 

 

提督「そうですか」

 

 

明石さん「わたし、独り身の一人っ子でして。30年近くも軍組織で浮いた話ひとつもなく、務めを果たしてきました」

 

 

明石さん「だから気持ちを完全に表に出してみますと、こんな感じです」

 

 

提督「?」

 

 

 

 

秋月ちゃんマジ人なつっこくて、妹可愛い。あの子のあの太陽のような笑顔でお姉さんと呼ばれるたびに息が桃色的に荒くなる始末でして。


 

 

 

愛弟子のほうはやんちゃなところがありますが、そこも含めて弟として見るとめちゃくちゃ可愛く思えてきて、ついつい意地悪してしまいますね。





今年は山風ちゃんもいるんですが、すぐにすねて「構わないで(プイッ」とかって頬をふくらますあの可愛さ、頬擦りしたい。なんとか私が出産したことにしたいほどです。


 

 

 

 

提督「正体を」

 

 

提督「現しましたね?」

 

 

明石さん「(*ノ▽ノ)イヤン♪」

 

 

明石さん「なので、提督さんがダメダメならどんな手を使おうとも、アッキーとアッシーはここに来させない。そういう腹積もりでした」

 

 

明石さん「ですけど」

 

 

明石さん「まあ、お話している感じ、最低ラインは越えてはいない、といったところでギリギリセーフですね」

 

 

明石さん「秋月さんもかなりの才能です。特に対空射撃は目を見張るものがあります」

 

 

明石さん「愛弟子は、なかなか機械弄りのセンスがありまして、工作艦としてのセンス自体は私より上です」

 

 

明石さん「時間の許す限り、私の30年に及ぶ明石さん人生のノウハウを叩き込んでおります」

 

 

明石さん「可愛がってあげてくださいね! 泣かせたらついでにこの明石さんも泣くと思ってくださいね!」

 

 

提督「正直、あの二人が最も性能を発揮するのは丙少将の指揮だと思うんですけどね……」

 

 

提督「丙少将は防空駆逐を欲しがってたはずですし、なにより秋月さんのあの味方の被弾を抑える立ち回り」

 

 

提督「明石君は工作艦性能はもちろん、彼のあの海上修理は『海上で入渠が可能』となる技能です。丙少将が欲しがるところだと思います」

 

 

明石さん「まー……きっとあなたはそういうところで苦労してそうですよね」

 

 

明石さん「あの二人がここに来たいっていうんです。あの二人の性格はご存じですよね。ならばここがあの二人のポテンシャルを最も引き出せるかと」


 

明石さん「素質、はお分かりですよね。心のあり方ってすごく大事です」

 

 

提督「……」

 

 

提督「ぷらずまさんのお眼鏡にかなえば歓迎しますよ。明石さんの艤装、彼に明け渡すのですよね?」

 

 

明石さん「はい。それで話は変わりますが、300日くらいです」

 

 

提督「といいますと」

 

 

明石さん「わたしの有休、ほぼ使ってません。30年間」

 

 

提督「本当に、本当に、お疲れ様です」ビシッ

 

 

明石さん「元帥さんと大淀ちゃんに祝いとして、300日の有休を消化しまして」

 

 

明石さん「あの子に艤装を貸し出し……いえ、渡すのは明後日です。つまり愛弟子は出張という明石艤装の呪いから300日間、解き放たれます」

 

 

提督「まさかそのためにここ1年ほど超過密スケジュールを」

 

 

明石さん「ええ。寄り道できる時はあの子のところに直接寄って、装備改修もアカデミーに送ってもらって、そうやって時間を作って技術と魔改造も教えてあります」

 

 

明石さん「まだ不十分です」

 

 

提督「魔改造はあまり教えなくても……」

 

 

明石さん「とんでもないです。あれこそが装備改修工作艦の至るところです」

 

 

明石さん「あ、これからわたしは引退式やら挨拶やらでしばらく走り回るんですが、それが終わってからの300日は」

 

 

明石さん「後任への指導の任につきます」

 

 

明石さん「また後で提督にお話はくると思いますが、あの二人がここに着任した場合」

 

 

明石さん「艤装はありませんが、しばらくの後、わたしもここに滞在することになると思いますのでよろしくお願いします!」

 

 

提督「はい、その際はよろしくお願いします」フカブカ



【4ワ●:VSアッキー&アッシー+山風ちゃん】

 

 

1

 

 

提督「お願いできますか。学校のほうからも、ぜひあなた達に、と」

 

 

ぷらずま「●ワ●」ナノデス♪



わるさめ「●ω●」デスハイ♪

 

 

ぷらずま「対深海棲艦海軍の将校、丙乙甲の誘いを蹴ってまでもこの鎮守府(闇)で戦死したい、というのですか」

 

 

ぷらずま「学校もなかなかお友達の成績のつけ方を理解してきたようでなによりなのです」

 

 

わるさめ「ま、使えるかどうかの判断は必要だよねー。私は面白そうだからカモンだけどー」


 

わるさめ「ぷらずまとは馬が合うかだよね。一応、こいつの運用目的の鎮守府だし」



わるさめ「一肌脱いでやるよー!」

 

 

ぷらずま「司令官さん」



ぷらずま「その特異な明石君は、なにか特異な力があるのです?」



提督「知らないのならお楽しみということで」



2

 

 

秋月「先発組が帰ってくるまで待機ですね。帰投したらすぐに出撃みたいです」

 

 

山風「私には……構わない方向で……」

 

 

秋月「構いますよ!? 山風ちゃんも行くんですから!」

 

 

明石(仮)「ほっとけ。そいつは言葉が拙いやつで、やる気がないわけじゃないからな。そうだろ?」

 

 

山風「……うん」

 

 

秋月「アッシーは戻ってくるの遅かったですし」

 

 

明石(仮)「俺が使えるトイレが遠い職員用か工廠に置いた仮説しかねえのが悪いと思うよ」

 

 

秋月「まあ、アッシーが来る前の常駐男性は少しの先生と用務員くらいしかいなかったみたいですし」

 

 

明石「みたいだなー……」



秋月「もうすぐこの3人で出撃ですからね!」

 

 

秋月「ここで結果を出さないと鎮守府(闇)に受け入れてもらえないんですから、頑張らないと!」

 

 

明石(仮)「兄さんのとこじゃないと嫌だ」

 

 

秋月「私もお兄さんのところがいいです!」キラキラ

 

 

明石(仮)「山風さんの配属希望は江風さんのいる……えーっと」

 

 

山風「甲、大将の……鎮守府」

 

 

明石(仮)「大将んとことか、すごいな」

 

 

山風「うん、すごい……二人の希望、する……鎮守府(闇)のほうは」

 

 

山風「ヤバイ、と……思う……」

 

 

明石(仮)「あー、合同練を見学した時か」

 

 

明石(仮)「甘さのない見事な戦いだった。プライドもなにもかも捨てて、地を這ってまでも戦う姿勢はいいね」

 

 

秋月「瑞鳳さんが可哀想でしたけど、戦いですからね!」

 

 

山風「……そう、だね」

 

 

秋月「あ、抜錨命令が届きました!」

 

 

秋月「ゴー、とのことです!」

 

 

明石「……まあ、とっとと行こうぜ。俺が先頭で、後ろに山風さん、殿がアッキーでいいんだよな」

 

 

山風「……アッシーはスカートを見るから先頭以外……だめ……振り返ってもだめ」

 

 

山風「死んで……」

 

 

明石「死んで!?」

 

 

明石「見ねえよ……そこまで気楽に海に出ねえから」

 

 

秋月「ですね! では抜錨しましょう!」

 

 

3

 

 

山風「えと、電探。反応、あり……」

 

 

山風「この反応……あ、故障、かな」

 

 

明石「どれ見せてみ」スイイー

 

 

明石「……んー、正常」

 

 

山風「反応……駆逐棲姫……?」

 

 

秋月「」

 

 

秋月「……っは、一瞬意識が」

 

 

山風「でも、ちょっと、違う……よく、分からない」

 

 

4

 

 

わるさめ「訓練生ども! ここを通りたくば!」

 

 

わるさめ「わるさめちゃんの屍を越えて行けー!」

 

 

ぷらずま「……はあ、一応、予期せぬ深海棲艦との遭遇トラブルという前提があるのですが」


 

わるさめ「一緒一緒。深海棲艦の姿だろうと艦娘の姿だろうと、産声上げた赤ん坊どもに沈む恐怖は与えられるし?」


 

明石「あー、そういうことか」

 

 

ぷらずま「明石さんみたいに髪の色、ピンクかと思いきや、メッシュみたいに1部だけぴんくなのですね」

 

 

わるさめ「なんかチャラそうw」

 

 

秋月「止めてあげてください! アッシーはチャラくないです! それどころか周りは可愛い女の子ばかりなのに浮いた話の一つもないんですよ!」

 

 

明石「お前が止めろよ!」

 

 

ぷらずま「明石君、秋月さん、私達どちらか片方でも小破まで追い込めたら」

 

 

ぷらずま「鎮守府(闇)に歓迎するのです」

 

 

ぷらずま「山風さんは、まあ、配属決定しているみたいですが」

 

 

ぷらずま「訓練の一環なので、がんばって欲しいのです」

 

 

山風「……は、はい」

 

 

ぷらずま「明石君は、なぜドラム艦装備。しかもそのドラム缶、やけに大きい、のです」

 

 

明石「気にしないでくれ」

 

 

ぷらずま「……」

 

 

わるさめ「わるさめちゃん一人で十分だ。いっくぞー!」

 

 

ぷらずま「では、私はこのタボがやられるまで後方で艦載機でも飛ばすのです」

 

 

5

 

 

ぷらずま「……む」

 

 

ぷらずま(秋月さんのほうは防空駆逐なので、艦載機くらいは墜とすとは思っていましたが……)

 

 

ぷらずま(片っ端からではなく、墜とす優先順位の判断が的確で速いですね)

 

 

ぷらずま(うちに来れば卯月さんをようやく防空駆逐縛りから解放できるのです)

 

 

ぷらずま「優秀じゃないですか」

 

 

ぷらずま(……山風さんは姫の姿にビビってますね)

 

 

ぷらずま(まあ、山風艤装でよくがんばってはいるほうですか。まあ、あいつは甲のところに行くのでどうでもいいですね。むしろもう少し弱い方がありがたいのです)

 

 

ぷらずま(明石、あいつがヤバイ)

 

 

ぷらずま(悪い意味で。全力回避しても被弾してすでに中破……)

 

 

ぷらずま「まあ、もう少し観察してみるのです」


 

ぷらずま「●ワ●」

 

 

6

 

 

ドンドン!

 

 

秋月「この人、硬いです!」

 

 

わるさめ「キャハハ! 昼戦の駆逐艦でも姫を小破くらいはがんばれー!」

 

 

わるさめ「わるさめちゃん、これまで数多くの艦娘を脱がして参りました」

 

 

わるさめ「が」

 

 

わるさめ「ヤローを脱がすのは初めてでテンション高いゾ☆」

 

 

秋月「アッシーは弱いから狙わないであげてください!」

 

 

秋月「アッシーの成績がいいのは戦闘ではなく、装備改修のほうに才能あったからなんですからね!」

 

 

わるさめ「深海棲艦役なのでそんなことどーでもいいでーす!」

 

 

ドスッ

 

 

わるさめ「痛っ!」

 

 

明石「よーし、ぺちゃくちゃ喋っているおかけで狙いが定まった」

 

 

わるさめ「なんだこれ!? 錨!?」

 

 

ドスッドスッ

 

 

明石「アッキー、山風さん」

 

 

山風「……はい」

 

 

秋月「それは工作艦の錨を改造したアンカー弾ですよ!」

 

 

わるさめ「女の子のお腹に錨ぶっ刺して動き封じるとか容赦なさすぎィ!」

 

 

明石「腕にもアンカー巻き付けたから、砲もろくに狙いつけられんだろ」

 

 

わるさめ「ぐぎぎ、これ引っ張ってお前を一本釣りしてやら!」

 

 

ドンドンドン!

 

 

わるさめ「ぎゃん!」

 

 

秋月「させませんよ!」

 

 

わるさめ「ぐ、引っ張り寄せられない……明石のあの馬力なんスか……」

 

 

わるさめ「だが、もらった」

 

 

ジャキン

 

 

わるさめ「沈め秋月ちゃん!」

 

 

秋月「肩から砲口出せるんですか!」

 

 

わるさめ「ロ級可愛いゾ☆砲撃っ」

 

 

ドオン!

 

 

秋月「……か、はっ……」


 

明石「おいアッキー、なにあんな面白生物なんかにやられてんだ……」

 

 

わるさめ「やられた味方に駆け付けるために、アンカー離すとは」

 

 

わるさめ「可愛いなー……」

 

 

わるさめ「そして背後から狙ってる山風たんにも教えてあげよう! 背中からも出せるぞー!」

 

 

ドオンドオン

 

 

山風「危なかった……」

 

 

山風「……びっくり、生物……」


 

わるさめ「っち、仕留め切れなかったかー」

 

 

わるさめ「ひよこちゃん達は日が沈む前まで耐えられるかなー」

 

 

山風「…………後ろ」

 

 

7


 

秋月「もらい、ました!」

 

 

ドオンドオン!

 

 

わるさめ「痛いっ!」

 

 

わるさめ「秋月!? 中破させたのにその威力、なんでなんでえ!」クルッ

 


わるさめ「……」



明石「……」



秋月「……」



わるさめ「……おい、秋月」






















ドラム缶風呂に入ってんじゃねえよw





秋月「いい湯加減です!」


 

わるさめ「そーじゃねーダルオオオ!?」



わるさめ「ストップストップ! 君達、横に並んで整列! 秋月もお風呂から出なさい!」

 

 

わるさめ「これ特別教官からの命令!」

 

 

山風「……はい」

 

 

秋月「分かりました!」

 

 

わるさめ「秋月ちゃん明石くーん」

 

 

秋月「あー……チートみたいで悪いんですが」

 

 

秋月「アッシーは艤装の損傷ですが、海上で修理できるんです。それも、かなり速く」

 


秋月「センスによる神業だって、明石のお姉さんは」


 

わるさめ「ふ・ざ・け・ん・な?」

 

 

わるさめ「なら、そのドラム缶風呂は?」



秋月「巨大なドラム缶に入ってるのは資材、高速修復剤ですね!」

 

 

明石「それと妖精な」



明石「装備も艤装も妖精がいれば直せるだろ。俺は提督才能もあるからさ、このドラム缶風呂に入れば妖精との意思疏通で、兵士の艤装と装備を資材で直して」



山風「お風呂にしておくことで入渠も……」



山風「艤装と服を身につけたまま、ドボン」



秋月「工作艦は本当に面白いです!」



わるさめ「ヤベ、こーいうのわるさめちゃん大好きー!!」ヒャッハー、ドンドン!



明石「まあ。アンカーの製作は俺だが、この海上修理機能は俺じゃなくて姉さん発案……」

 

 

わるさめ「ねーさん?」

 

 

明石「明石さんで分かる?」

 

 

わるさめ「あー……おう」



わるさめ「その明石艤装、回避性能がゴミだけど、なかなかイケメンな戦い方してるじゃん」

 

 

わるさめ「敵を倒すんじゃなくて」

 

 

わるさめ「味方の命を繋ぎ止めるー!」

 

 

秋月「これがベストなんです!」

 

 

明石「明石艤装で前に出てもたかが知れてるからなー……艦娘相手だとやりようあるけど、深海棲艦相手はキツい」

 

 

わるさめ「まあ、そだね」

 

 

秋月「でも繋ぎ止めるというか」

 

 

山風「直されたら、また前に出なきゃ……いけない」

 

 

山風「だから、お尻を叩く?」

 

 

秋月「海では陸と女と男の役割が逆。by 明石の姉さんです!」

 

 

わるさめ「キャハハ!」

 

 

わるさめ「面白い子達だなもう!」

 

 

わるさめ「鎮守府(闇)に来たがるだけのことはあるじゃんよー!」

 

 

山風「日は、落ちました……」

 

 

わるさめ「小破させてみなよ」

 

 

秋月「馬鹿にしないでくださいね!」

 

 

明石「大破させてやら」

 

 

秋月「アッシー!」


 

明石「改造照明弾!」

 

 

ヒュルルル


 

わるさめ「ん?」

 

 

パーン

 

 

わるさめ「あはっ」

 

 

わるさめ「花火仕様かよw」

 

 

山風「たー……まー……やー……」

 

 

秋月「匠の技に見とれましたね!」

 

 

ドオン!

 

 

わるさめ「ぐあっw しまったw」

 

 

わるさめ「もうなんか負けでいいやw」

 

 

秋月「アッシー! 山風ちゃん! 勝ちましたよ!」

 

 

明石「なんかこの人が馬鹿な感じで助かったな」

 

 

山風「うん……」

 

 

わるさめ「馬鹿とか、お前らに言われたくねっス……」

 

 

8

 

 

わるさめ「ごめーん、やられてしまったぜ☆」

 

 

ぷらずま「まあ……」

 

 

明石「なにか文句でもあるのか?」

 

 

明石「電さんだったか。合同演習の不意打ち騙し討ちお見事」

 

 

明石「過程はどうあれ、結果で語る。あんたらの流儀だろ?」

 

 

ぷらずま「はい。文句はありませんよ。あなた達はわるさめさんを小破させました。それが結果なのです」

 

 

ぷらずま「歓迎するのです」

 

 

秋月「やりました! お兄さんのところに行けますよ!」

 

 

明石「そうだな。ようやく加われる」

 

 

秋月「あの人の本当の家族になるために私がお嫁に行ければいいんですけど」テレテレ

 

 

明石「アリだなそれ」

 

 

秋月「それとなくがんばります!」

 

 

ぷらずま「●ワ●」ハ?

 

 

ぷらずま「あ?」ジャキン

 

 

わるさめ「あー……地雷を」

 

 

ドオンドオン

 

 

明石「」

 

 

秋月「」

 

 

ぷらずま「あの司令官さんとなにがあったのか興味はありませんが」

 

 

ぷらずま「中枢棲姫勢力との決戦が控えるこの時期に、頭のなかまでぴんくだと」

 

 

ぷらずま「1ヶ月持ちませんよ」

 

 

ぷらずま「……帰るのです」

 

 

わるさめ「それじゃねー。着任するのはもう少し後みたいだけど」

 

 

わるさめ「よろろーん!」

 

 

ヒャッハードンドン

 

 

ぷらずま「山風さん」

 

 

ぷらずま「●ワ●」

 

 

ぷらずま「そこの鉄屑二隻のことはよろしく頼むのです。重たいのなら道中で捨てても構いません」

 

 

山風「……は、はい」ビシッ



【5ワ●:保護したのは江風】

 


1

 

 

 

提督「乙中将と明石さん、それに龍驤さんにもですね、開発してもらいましたところ、成功率がダンチだったので捗りました」

 

 

卯月「あー、あいつまだいるぴょん?」

 

 

提督「演習で卯月さんの艤装の具合を確認してから帰るみたいです」

 

 

卯月「ふーん、一応聞くぴょん。変な改造してないよね?」

 

 

提督「大丈夫かと。釘を指しておきましたので」

 

 

陽炎「司令、聞こえるー?」

 

 

提督「……む?」

 

 

陽炎「帰りに救難信号キャッチしたのよ。大破の艦娘拾ったから連れて帰るからー」

 


提督「どなたを保護したのです?」

 

 

陽炎「江風」


 

2

 

 

レ級「うっわ、酷い」

 

 

ネ級「酷すぎる……!」

 

 

レ級「アジトが原型を留めていないね。仲間も全部、バラバラのミンチに……」

 

 

ネ級「人間、怖い……!」

 

 

レ級「きっとわるさめが裏切ったせいだなー……」

 

 

ネ級「わるさめのやついなくなってから、ネッちゃん少し寂しい……」

 

 

レ級「思えば面白いやつだったよね。かなりうざかったけどさー……」

 

 

レ級「でも、ネっちゃんは生きてるんだ。というか、ロープで拘束されてるの?」

 

 

レ級「ギャグ?」

 

 

ネ級「伝言を頼まれてる……!」

 

 

 

江風「きひひっ!」

 

 

江風「お前らマジで人並みに喋れンのな! 仲間を想う心はまだあるのか?」

 

 

レ級「ええと、艦娘が一人で残っているの。伝言の意味あるの。なに? バカなの死ぬの?」

 

 

レ級「というか、君は……」

 

 

レ級「ここを襲ったの甲大将?」

 

 

江風「うちの艦隊は一芸に秀でているからなー、ご挨拶代わりの一芸を特別に見せてやろう。早口言葉だからな」

 

 

江風 「生まれも育ちもガチで東京葛飾柴又です。人呼んで轟撃と発します。皆様共々ネオン・ジャズ高鳴る大東京に仮の住居罷りあります。不思議な縁もちましてたった一人の妹のために粉骨砕身、売に励もうと思います。西へ行きましても、東へ行きましても、とかく土地土地のお兄さんお姉さんに御厄介かけがちなる若造でござんす」

 

 

レ級「!?」

 

 

江風「以後、見苦しき面体お見知りおかれまして今日後万端引き立って宜しく御頼ん申します!」

 

 

レ級「え? え?」

 

 

江風「深海棲艦にはこの口上のかっこよさがわかんねーかなー」

 

 

江風「甲大将の懐刀、白露型駆逐艦九番艦改白露型の江風だぜ」

 

 

レ級「最初からそう名乗れよ……」

 

 

江風「江風さんのプロフィールなンだぞ。大将に拾ってもらって江風艤装を頂戴する前は風来坊してた」

 

 

レ級「なかなか粋な女の子だねえ」

 

 

江風「おう。ドカンとどてがい花火を日々打ち上げる日常を好ンでいるからな」

 

 

江風「それに比べてテメエらは」

 

 

江風「こそこそと何十年もよく隠れていやがったな」

 

 

江風「陸にあがってる。流暢に喋れもするし、意思疏通も普通に出きてンな」

 

 

江風「表に出てこれば捗ったものをよー」

 

 

レ級「……で、お仲間は?」

 

 

江風「先に帰投させて旗艦の江風だけが残った」

 

 

江風「なにもねえ。深海妖精のいる工廠でもあれば最高だったのにな」

 

 

江風「現場で気になることばかり見つけてよー。手ぶらで帰れば大将の名に傷がついちまう」

 

 

レ級「君の独断行動はどうなのそれ」


 

江風「色々と壊れちまったから連絡が取れねえのもあって先に帰らせたんだよ。こういう時は旗艦が江風と木曾さんの場合に限り、判断は任されてンだ」

 

 

江風「さて、ネ級は喋れるがちとお粗末だ。お前は違うみてえだ」

 

 

江風「半殺しにして連れて帰ってやるぜ。色々と面白いことが聞けそうだ」

 

 

レ級「あーあ……わるさめのやつにはあんまり教えてなかったんだっけなー……」

 

 

レ級「……」

 

 


 


レ級「って、こんな距離から撃って来るなって!」


 

江風「日も暮れたし夜戦だア! 突撃!」

 

 

レ級(頼まれた仕事とはいえ、チューキさんは危ない話を渡らせるなー……)

 

 

レ級「……仕方ないか」ジャキン

 

 

ドン!

 

 

ドンドン

 

 

ドオン!


 

レ級「あれれー、僕ばかり被弾してるんだけど、この子強くないかー……」

 

 

江風「駆逐艦こそ艦娘最強だからな! つまり江風こそ艦娘最強だ!」


 

レ級「負けそうだから逃げる!」クルッ

 

 

江風「逃がさん」

 

 

レ級「…………」

 

 

江風「観念してお縄に……」

 

 

カチッ

 

 

江風「かちっ?」

 

 

レ級「どーん」

 

 

ドオオン!

 

 

レ級「そこの地雷、機能して助かった……さてネっちゃんを助けて」

 

 

江風「ナメンな。こちとらいくつの死線を経験してきたと」

 

 

江風「大将の第1艦隊だぞ」

 

 

レ級「……」

 

 

レ級「あーもう、ギャグ展開のうちが花だって」

 

 

レ級「もうすぐ決戦だろーに」

 

 

ジャキン

 

 

レ級「笑えないのは、嫌いだな」

 

 

レ級「ガ!」

 

 

レ級「オー!」

 

 

3

 

 

江風「色々かなり省いたが、つー訳だ。油断しちまった」

 

 

提督「……無茶しますね」

 

 

江風「助けてもらってなンだけど、お前にはいわれたくないね」

 

 

提督「ま、よかったですね。多分、殺されなかったのなら、もともと殺すつもりはなかったのかと」

 

 

提督「手のひらで遊ばれてますね」

 

 

江風「……」

 

 

江風「まあ、あそこの捜索はした。すでに設備としては空でも幹部には接触したし、最低限の任務は果たしたから問題ねーよ」

 

 

江風「深海妖精はいなかったけど」

 

 

江風「つーかその黒外套返してもらうぜ。これがないと落ち着かねーンだよな」

 

 

江風「カッコいいだろ。大将と木曾さんとのおそろいだ」

 

 

提督「そうですか」

 

 

江風「なんだその返しはー……聞いていた通りのつまらないやつだなー」

 

 

江風「面白いのは名前だけー?」

 

 

提督「……知ってるならそこは触れないでいただきたいです。コンプレックスの一つなので」

 

 

提督「まあ、うちの龍驤さんにもいえますけど、江風さんは木曾さんとは違ってカッコつけても」

 

 

提督「声が可愛すぎますよね」

 

 

江風「……っく」

 

 

提督「こほん」

 

 

提督「甲大将からです。早く帰ってこい、とのことで、向こうから迎えを手配してくれるそうです。明後日になりますが」

 

 

江風「そうかそうか。時間あるから助けてもらった恩を返すよ」

 

 

江風「お前、今晩空いてるなら食べて飲んで騒ごうよ。ここ、なンたって間宮さんいるしなー」

 

 

提督「なにか自分に御用が?」

 

 

江風「実はうちの大将がな、えらくお前に興味持ってンだ。あの人が兵士ではなく提督に興味を持つのはすごく珍しいことだよ?」

 

 

提督「……」

 

 

江風「露骨に嫌そうな顔するなよ。理由は至極単純だ」

 

 

江風「今回の任務はもともとお前が深海妖精を発見したからこそ、命令されたもン」

 

 

江風「いくら同志とはいえ、階級下のお前の功績のお手伝いをさせられてンだ」

 

 

江風「あの例のビデオは闇に葬られて、全く別の方法でうちの大将が深海妖精を発見、そして、今回の任務はその裏付けだ」

 

 

江風「表向きにはうちの大将が深海妖精発見の功労者になるわけだ。お前が電で人体実験せず、別の方法で見つけてりゃ英雄になれたものを」

 

 

提督「甲大将から恨みを?」

 

 

江風「うちの大将はそんな小さいやつじゃないよ」

 

 

江風「単純にお前を称賛していたくらいだ。だからこそお前の手柄を奪うような展開に思うところがあるンだろ」

 

 

江風「そこンとこの話は前に大将のほうからしただろーがよ」

 

 

江風「お前と腹割って話すのは大将への土産になりそうだってこった」

 

 

提督「あなたから言い出した恩返しが行方不明なんですが……」

 

 

江風「お前んとこの艦隊は弱い」

 

 

江風「自覚してるよな。合同演習は電ありきで、乙ちゃんは春雨ありきだ」

 

 

江風「丙ちゃんと乙ちゃんのところのやつどもは置いて、龍驤と卯月はまあ、強いが、それ以外はお粗末だろ」

 

 

江風「この江風様が教えられること、あると思う。ってことで恩を返すよ」

 

 

提督「……いえ、結構です」

 

 

提督「鹿島さんがいるので」

 

 

江風「鹿島? 新しく引き入れた?」

 

 

提督「ええ」

 

 

江風「うーん、江風は戦い以外に能がないからなあ」

 

 

江風「じゃ」

 

 

江風「なンでもいうこと一つ聞いてやるよ。文字通り、なンでも、だぜ?」

 

 

提督「……期限は」

 

 

江風「まあ、なしでいいぜ。ただ明後日には帰るから出きればそれまでをお勧めだ。会う機会が少ないからな」

 

 

提督「では保留で」

 

 

江風「ホントつまンねーなー……」

 

 

提督「戦争は楽しいですか?」

 

 

江風「……嫌味臭え」

 

 

江風「いおうとしていることは分かるが、いつ死ぬか分かんないからこそ、楽しくしてりゃいーだろーが?」

 

 

提督「いえ、自分は理由の1つとして、この戦争兵士は未成年も多いです。戦争楽しもうとか」

 

 

提督「そういう残念な子供が生まれるので、早く終わらせたいですね」

 

 

江風「あーもう! お前嫌い!」



【6ワ●:鹿島さんの告白】


 

1

 

 

鹿島「鹿島、無事に建造完了しました。提督、よろしくお願いします」

 

 

提督「よろしくお願いします」

 

 

提督「さて、まずは皆さんの様子でも見てきますか? 午後から演習しますので」

 

 

鹿島「例のお話は夜でも構いませんか?」

 

 

提督「はい。鹿島さんの心が決まったのならあなたのタイミングで構いません」

 

 

鹿島「ありがとうございます。それではまず久々に抜錨してきますね♪」

 

 

提督「はい。その前に一応、ここでお渡しする書類ですので、一読くださいね。この鎮守府は特殊ですので」

 

 

鹿島「了解です」

 

 

2



提督「午後からは二艦隊に別れて演習してもらいますから、みなさん準備を忘れないように」

 

 

提督「自分は外せない仕事があるので第1艦隊は龍驤さん、第2艦隊は初霜さんが司令官やってくださいね」

 

 

龍驤「初霜、うちとメンバーの選定ジャンケンしよやー。勝ったほうから交互に選べるってことで」

 

 

龍驤「あ、瑞鶴と瑞鳳はどっちか一人で」

 

 

初霜「空母は平等に、ですね。了解です」

 

 

ジャーンケンポイッ

 

 

初霜「では、私から。まずは榛名さんで」

 

 

龍驤「卯月やなー」

 

 

初霜「阿武隈さん」

 

 

龍驤「瑞鳳」

 

 

初霜「……あっ、しまっ」

 

 

伊58「瑞鶴はどこ行くんでち」

 

 

瑞鶴「ちょっと泣く」

 

 

初霜「い、いえっ! そういう意味では!」

 

 

初霜「龍驤さんと瑞鳳さんはお互いを知り尽くしていると思うので、組ませると厄介かな、と……」

 

 

瑞鶴「そこは正規空母の性能で埋めれるから……」

 

 

初霜「そう、ですね。では、響さん」

 

 

龍驤「暁」

 

 

初霜「ゴーヤさん」

 

 

龍驤「雷」

 

 

初霜「わるさめさん」

 

 

龍驤「電」

 

 

龍驤「で、鹿島が練巡としてデータ取りやな」

 

 

提督「ぷらずまさんとわるさめさんの深海棲艦化は禁止にしておきます」

 

 

龍驤「そのほうが助かる」

 

 

初霜「装備はどうしましょう」

 

 

提督「取り合う必要もないくらいに大量に作っておきましたから、どれでもお好きなのを」

 

 

初霜「それはすごいわ。この鎮守府の問題点の一つが解決したのですね」

 

 

提督「皆が資材集めに従事してくれたお陰です」


 

3

 

 

初霜「負けてしまいました」

 

 

初霜「5回やって、全敗だなんて皆さんに申し訳が……」

 

 

わるさめ「龍驤が大人げないよね。駆逐艦しかも司令官やるの初めてのはっつんなのにさー」

 

 

龍驤「愛の鞭やからね」

 

 

提督「……む、これはなかなか」

 

 

初霜「演習のデータ、ですか」

 

 

提督「鹿島さん、今日の5回の演習の後、練度数値を測定したのですが」

 

 

鹿島「一応、練巡の能力は発揮したつもりですが、ど、どうでしょう?」

 

 

提督「鹿島さんの入った艦隊のほうが成長率が上ですね。ぷらずまさんの砲撃も徐々に精度があがっているみたいですし、同じくゴーヤさんや瑞鶴さんにも成長が見受けられます」

 

 

鹿島「やったあ……」ホッ

 

 

鹿島「でも得意距離でのおろそかな砲撃精度の上昇は比較的、簡単な部分ですから、今後の成長率は今日のようにあげるのは難しくなってくると思います……」

 

 

提督「意味が出ていることが重要ですから、ゆっくりでも試行錯誤しながらでも構いません」

 

 

提督「ともに学んで行きましょう」

 

 

提督「お疲れ様でした」

 


4 

 

 

江風「名前、みるくせいきっていうの?」

 

 

龍驤「江風、なぜそれを……」プルプル

 

 

江風「お酒飲んだ大淀から聞いた」

 

 

龍驤「大淀オオオオ!」

 

 

カキカキ

 

 

わるさめ「漢字では白濁性器って書くんですか☆」

 

 

龍驤「下ネタやないか!」

 

 

龍驤「お前はさっさと純真でがんばり屋の春雨ちゃんに戻れや!」

 

 

榛名「榛名はっ! とっても可愛らしい名前だと思います!」

 

 

龍驤「榛名あ……!」

 

 

江風「安心しろ。江風も好きだぜ。インパクトがあるし、可愛いじゃンか?」

 


江風「お前の名前、悪くねーと思うぜ。きひひ!」

 

 

龍驤「めっちゃわろてるやん!」

 

 

江風「さて、酔いも回ってきて楽しくなってきた。次は」

 

 

江風「鹿島んとこー!」

 

 

江風「……あれ、鹿島は?」

 

 

わるさめ「今、提督さんと個人面談中ー」

 

 

5

 

 

提督「話す気になってもらえましたか」


  

鹿島「もう一度、艤装を身に付ける以上は」

 

 

鹿島「……ケジメ、かと」

 

 

提督「助かります。わるさめさんからある程度は聞いているとはいえ、あなたの口から出る言葉と照らし合わせてようやく確信が持てますから」

 

 

鹿島「今はお仲間でしょう? 信用していない、のですか?」

 

 

提督「深海棲艦についていたので全面的には。多くの命を預かる身なので彼女の信用云々は……追々ですね」

 

 

鹿島「……まず私が遭遇したレ級とネ級と水母棲姫は」

 

 

提督「水母棲姫……」

 

 

鹿島「酷く人間的でした」

 

 

鹿島「それこそ今の提督さんと私のように会話が可能なレベルの知能がありまして」

 

 

鹿島「姫級や鬼級、一部の深海棲艦は人語を喋ると知識では知っていたはずですが、あのレ級とネ級は私達が知っている以上に、その人間的だったので」

 

 

提督「知っておきたいのは、どういう会話をしてきたのか、です」

 

 

鹿島「会話は本当にあまり覚えていません」

 

 

鹿島「不意を突かれ、私と春雨さんを除いて全滅しました」

 

 

鹿島「レ級とネ級と春雨さんが、なにか話していましたが、私の命を見逃すための取引のようですね。ただ私は、皆の死体を返して、と水母棲姫に懇願していただけです。最後に」

 

 

鹿島「ごめんね、と謝って撤退していきました」

 

 

鹿島「……」

 

 

鹿島「彼等とは戦うしか、ないでしょう?」

 

 

提督「まあ、深海棲艦と共存共栄は無理でしょうね。殺人衝動常駐の隣人とか怖すぎますし……」

 

 

鹿島「……この星は、いえ、今はもう宇宙にも進出してますね」

 

 

鹿島「海や空にも見えない線が引かれていて、深海棲艦の居場所なんてありません」

 

 

鹿島「そして提督さんのいった通り、私達は深海棲艦を滅ぼすしかありません。私達と同じ知能を持ちながら、手を取り合えない以上、戦うしかありませんから……」

 

 

鹿島「……聞き流すにはあまりにも、理解可能な謝罪でした。だからこそです。ごめんね、と深海棲艦から謝られた私は」

 

 

鹿島「ふざけるなって……」ポロ

 

 

鹿島「後日にいつか必ず仕留めてやる、と誓いながら、解体申請の願書を提出してました……」ポロポロ 

 


鹿島「完全に、壊れてた」ポロポロ


 

提督「…………」

 

 

提督「すみません。嫌な話をさせてしまって」

 

 

鹿島「……いえ」

 

 

鹿島「レ級とネ級は私を人質に春雨、わるさめさんを抑えてから、なにかを話してました。その後にすぐに大破させました」

 

 

鹿島「……そして水母棲姫が現れまして、死体をもらう、と他の艦隊メンバーをさらっていきました」

 

 

提督「……はい」

 

 

鹿島「……、……」

 

 

鹿島「後、気になっていたことなのですが、水母棲姫がその際に」

 

 

鹿島「空に舞っていた艦載機を撃ち堕とし、何故かは分かりませんけど」

 

 

鹿島「持ち帰っていきました」

 

 

提督「……やはり、その方法」

 

 

鹿島「その後に救助艦隊の接近に気付いたのか、素早く撤退していきました」

 

 

鹿島「以上です」

 

 

提督「ありがとうございます」

 

 

鹿島「なにかお分かりになりましたか」

 

 

提督「ええ。想像以上の情報です。かなり効率的に次の段階に進めそうです。貴重な情報提供、ありがとうございます」

 

 

提督「まあ、やはり深海棲艦は滅ぼすのがいいですね。亡霊はあの世に返してあげるのが一番です」

 

 

提督「鹿島さんは、大丈夫そうですか?」

 

 

鹿島「はい。なにが大事かは戦線を離れていた間に痛感しましたから」

 

 

提督「あなたは姉の香取さんと比較されて、散々な目にあったとか」

 

 

鹿島「優秀すぎる姉妹艦を持つがゆえですね。香取姉のことは今でも尊敬しています。いつの日か」

 

 

鹿島「自分に負い目を感じずに卑下せず、胸を張って隣に並びたいですね」

 

 

提督「才能、ですか。あるに越したことはありませんよね」

 

 

提督「まあ、あっても決して楽ではないでしょうけども」

 

 

鹿島「提督さんはありますよね。この鎮守府のこと、色々と聞きましたけど、すごい活躍です」

 

 

提督「……あ、どうぞ」っ椅子

 

 

鹿島「ありがとうございます」

 

 

提督「香取さんみたいに自分にも才能があるように見えるのなら嬉しいですね」

 

 

鹿島「合同演習時に武蔵さんや長門さんや赤城さんに勝って、先の防衛戦でもS勝利、さらに乙中将にも勝ちました。さすがに自信を持ってもいいかと……」

 

 

提督「軍学校では散々でしたけどね。特に身体面では教官にそこらの小学生レベルだと……試験も落ちまくりましたし、筆記もまあ、中の下くらいの成績でした」

 

 

提督「自分に才能があるように見えるのなら努力の賜物かと……そう信じたいですね」

 

 

鹿島「……むむ」

 

 

提督「鹿島さんにも出来ることです」

 

 

提督「自信を持ってください」

 

 

提督「というか」

 

 

提督「自分がこれまでにスカウトした人達は、ちょっとここをどうにかしてあげれば優秀なのに、という人多いですし……」

 

 

鹿島「卯月さんにも驚かされましたが、阿武隈さんの素質の総合力は」

 


鹿島「私が知る全ての兵士のなかでトップだと判断します」

 

 

鹿島「なぜか攻撃しようとすると目を閉じたり体が震えたり躊躇いが、ありますね。例のキスカでの件から立ち直ってはいないの、ですね」

 

 

鹿島「ただ阿武隈さんは、敵に攻撃しない、という前提で撃たせれば融通は聞きます」

 

 

鹿島「撃たせる砲撃を敵に当てる攻撃だと認識させなければ、今の状態でも」

 

 

提督「その手がありましたか……」

 

 

鹿島「ゴーヤさんは魚雷命中の射程距離が装備に対してすごく短いですし、それらを自覚しているみたいです」

 

 

鹿島「データを見る限り、どうにか力になってあげたい子が多いです」

 

 

鹿島「今は春雨さんではなく、わるさめさん、でしたか。わるさめさんと例の電さんは砲撃精度がお粗末、ですね。でも、データは見せてもらいましたので、長い目でなんとか出来ると思います」

 

 

提督「やはりそういうのは自分では指導が難しいところなので、よろしくお願いします」

 

 

鹿島「はい。お任せください」

 

 

提督「それと、近々秋月さんと明石君が着任します」

 

 

鹿島「あの例の明石君、ですね。秋月さん、もですか。かなり頼りになる戦力です」

 

 

提督「ええ、その二人において戦闘面の心配はしていないのですが」

 

 

提督「もう一人来るんです。異動を希望している子がいまして」

 


提督「そちらの子をなんとか戦えるまでに見てあげて欲しいのです」

 

 

鹿島「構いませんよ。その子はなにか支障を来す問題をお持ちなんですか?」

 

 

提督「ええ、実は前にこちらから声をかけていたのですが、返事がこなかったのです。恐らく悪評ゆえ」

 

 

提督「乙中将に勝ったからでしょうね。妙な誤解を一部から受けているようでして」

 

 

提督「うちに異動を希望したのは『どんな欠陥艦娘でも強くして活躍させてくれる鎮守府』というイメージが出来たからみたいで」

 

 

提督「海に出ると酔う艦の兵士」

 

 

提督「通称――――」

 

 

提督「『おろろろ秋津洲』」

 

 

鹿島「すみません、医療方面の問題は私には荷が重いです……」

 

 

提督「酔いはメンタル部分でなんとかなると思うんです。そこを見てあげて欲しいんです。練巡の鹿島さんになら、相談役としても力になってもらえるかな、と」


 

鹿島「精一杯やりますが……まずは会ってみないと分かりませんね」

 

 

提督「ですね。この話は追々」

 

 

提督「それと」

 

 

提督「えっと、女性寮内の生徒指導してもらって良いですかね」

 

 

鹿島「生徒、指導?」

 

 

提督「駆逐艦には一応就寝時間や門限を決めていまして、その時間に見回りとか、そういった風紀面を……」

 

 

提督「年頃の娘も多く、男の自分だけだと難しいところもあるので……」

 

 

鹿島「なるほど。承知しました」 

 

 

提督「助かります。最後に」

 

 

鹿島「はい?」

 

 

提督「戻って来てくれて、ありがとうございます」

 

 

提督「自分も含め、精進が必要な子が多いです。ご迷惑をおかけしますが、どうか、ご助力を」

 

 

提督「よろしくお願いします」フカブカ

 

 

鹿島「……はい!」

 

 

鹿島(よかったあ……)

 

 

鹿島(噂よりもずっと良い人かも……)

 

 

鹿島「うふふ♪」

 

 

提督「?」

 

 


 

 

江風「…………ふーん」

 

 

4

 

 

鹿島「就寝のお時間ですよー♪」コツコツ

 

 

『第6駆のお部屋♪』

 

 

鹿島「寝ましたかー?」チラッ

 

 

雷「おっと!」

 

 

雷「皆は寝かしつけたわ! ぐっすりね!」

 

 

鹿島「雷さんも早く就寝してくださいね。明日は朝早くから輸送任務でしょう?」

 

 

――――ワン!

 

 

鹿島「?」

 

 

雷「………あっ」

 

 

鹿島「今の鳴き声はお部屋から聞こえたようですが……」

 

 

雷「わ、わん!」

 

 

雷「最近、皆で犬の鳴き真似を練習してて…………!」

 

 

雷「わん!」

 

 

暁「雷ぃ、なんだかあの子がお腹減ったみたいで……あ」

 

 

鹿島「入りますね?」

 

 

暁「く、くぅ~ん……」

 

 

わんこ「ワン!」尻尾フリフリ

 

 

響「猫じゃらしに反応しない。やはりボールを持ってくるべきだった」

 

 

鹿島「わんちゃんなんてどこから……」

 

 

響「街に出掛けた時、ダンボール箱があったんだ。そのなかに」

 

 

ぷらずま「●ワ●」

 

 

ぷらずま「あーあ……」

 

 

ぷらずま「だから戻してこいとあれほど。大人に見つかったからには」

 

 

ぷらずま「殺処分なのです」

 

 

暁・響・雷「させない」キッ

 

 

鹿島「そんな酷いことしませんっ!」

 

 

暁「じゃあ飼ってもいいのね!」キラキラ 

 

 

響「スパシーバ」

 

 

鹿島「えっと、さすがにそれは」

 

 

龍驤「夜中にうっさいでー……下まで聞こえる……」

 

 

鹿島「あ、起こしてしまってごめんなさい」

 

 

龍驤「その犬っころ……」

 

 

雷「面倒は見るわ!」

 

 

龍驤「ダメダメ! 可愛がるだけで結局おかんが面倒見ることになるんやから!」

 

 

響「捨ててこなきゃダメかい?」

 

 

龍驤「ダメやろ……」

 

 

鹿島「……提督さんに相談してきます」

 

 

ぷらずま「ついていくのです」

 

 

6

 

 

鹿島「という訳でして」

 

 

わんこ「わん」

 

 

雷「問題ないわよね!」

 

 

響「第6駆の一生のお願いをここで使う」

 

 

暁「司令官……」

 

 

提督「あのですね」

 

 

提督「認めた場合、例えば陽炎さん達も連れてきたらそれもオーケーしないと不公平になります」

 

 

提督「ご理解ご協力を」

 

 

暁「しれいかぁーん……」

 

 

ぷらずま「私が責任を持って捨てて来るのです」

 

 

提督「ええ」

 

 

ぷらずま「……では」

 

 

鹿島「えっと」

 

 

龍驤「ま、仕方ないわなー……」

 

 

提督「…………」

 

 

~10分後~

 

 

ぷらずま「捨ててきました」

 

 

わんこ「くーん」

 

 

ぷらずま「ついてくるのです」

 

 

雷「司令官!」

 

 

提督「…………はあ」

 

 

提督「まあ……番犬として置いておきますか……」

 

 

第6駆「!」

 

 

鹿島「いいの、ですか?」

 

 

提督「生き物を飼う……動物と接することは、確かなケア……まあ、支援施設の側面的に認可されていることではありますし」

 

 

龍驤「あー、ここって、そんなんやったなあ……」

 

 

ぷらずま「でもそれは正規の手続きが必要だったはずなのです」

 

 

提督「そのくらいはなんとかなります。まあ、なにかあれば責任は自分が取ることに、それが面倒です」

 

 

提督「後日、病院に連れていって検査してもらって、健康状態を調べてきます。病気持っていたら大変ですからね」

 

 

提督「後、犬に人間の食べ物はあげないこと。躾は小さいうちからするのが肝心です。そこらの本も手配しておくので、命を大切にするように」

 

 

鹿島(すごく良い人だ……)

 

 

龍驤「キミ、いーい感じやで」


 

提督「きちっとすべきところですから」

 

 

暁「司令官!」

 

 

雷「お世話はちゃんとするから!」

 

 

響「そこは安心して欲しい」

 

 

ぷらずま「名前はクローズド・ドアーとかどうです」

 

 

提督「なぜ対をなしてきたのか」

 

 

龍驤「どこで飼うん? さすがに中はあかんやろーし」

 

 

提督「玄関先はダメですね。お客さんが来る時に不衛生だと気を悪くしかねないので。支援施設の中庭でいいんじゃないですかね」

 

 

提督「あなた達が就寝時間を過ぎて構ったり、無駄吼えによる苦情がくる等々の問題が起きれば、考えますので。そこは妥協しません」

 

 

第6駆「(∀`*ゞ」

 

 

提督「とりあえずぷらずまさんを除く第6駆の皆さんは早く寝てください。明日はお仕事です」

 

 

7

 

 

瑞鶴「あー、夜中に大人集めて大工仕事とかブラックね」


 

龍驤「お前、自分から手伝いに来たくせになにいっとん」

 

 

瑞鶴「えー、犬は可愛いし、見に来たいじゃん。というかこの鎮守府は色々融通きいていいわね」

 

 

提督「本当は問題があるんですけどね」

 


鹿島「そうなんですか?」

 

 

提督「自分達が全滅した場合、お世話する人がいなくなりますし」

 

 

鹿島「しませんよ!?」


 

瑞鶴「犬小屋は完成したわねー」

 

 

わんこ「わんわん!」

 

 

鹿島「うふふ、お礼をいってくれているんですかね」

 

 

瑞鶴「よーしよし」ナデナデ

 

 

わんこ「くぅーん」フリフリ

 

 

瑞鶴「人なつっこいね。名前は?」

 

 

龍驤「第6駆がまだ考えとるよ」

 

 

龍驤「変な名前は許さんで」


 

提督「同意です」

 

 

瑞鶴「そーいえば提督さん」

 

 

提督「はい」

 

 

瑞鶴「軽巡もう一人なんとかならないかな。うちアブーだけじゃん。遠征に出撃に大変そうだからさ」

 

 

提督「一人いるだけでも。軽巡の艤装、余りが少なくて阿武隈さん以外だと那加さんですけどあの人は今をときめいてますからスカウトは難しく……」

 

 

提督「一応、上に要望は送ってありますが、まだ具体的な返事がありません」

 

 

提督「難しいかと。今月の阿武隈さんのスケジュールはなるべく遠征は少なく組んでおいてありますので……」

 

 

提督「あ、そうです」

 

 

提督「明日に秋津洲さんが異動してきます」

 

 

龍驤「秋津洲? やったやん。貴重な水上機母艦や」

 

 

瑞鶴「……あの秋津洲よね?」

 

 

瑞鶴「海に出ると吐く欠陥持ちの」

 

 

龍驤「」



【7ワ●:おろろろ秋津洲】

 

 

1

 

 

――――マニラ行ってー。



――――ドカーン。



――――って感じで、沈んだかも。



――――あたしの夢に出てくる秋津洲。



――――水上機母艦、なんだけど。



――――あたしは、ちとちよさんの活躍を聞くと、思うかも。



――――秋津洲は水上機母艦として、活躍できているのかは分からない。



――――そう、分からないのは



――――考えないようにしているから。



答えは――――してない。



――――欠陥がある。素質もない。直す努力すら諦めた。だから相手にもされない。



――――ゴーヤちゃんみたいに、弱いといわれてもお仕事とやる気があった人とは違う。



――――それを受け入れても、秋津洲は代わりがいないと、留まってくれ、と軍からいわれて鎮守府に残り、本当に、本当に。



――――そこにいるだけになっちゃった。



――――そんな時、ゴーヤちゃんが異動していった例の鎮守府(闇)から――――――――




『魔改造してうちに来ませんか。どんな欠陥持ちでも大歓迎。笑顔と流血の絶えないアットホームな鎮守府です:●ワ●♪』



――――って勧誘がきたかも。



――――噂は聞いてたから、行きたくなかった。でも、なんとなくな迷いがあってお断りの返事は出さなかったんだ。



――――少し、くすって、笑えた。



――――がんばっていた頃は努力が実らなくて、声が届かなくて悔しくて、本気で泣いてた。



――――でも、でも、成長してたかも。



――――段々と涙は見せなくなっていたから!



――――この前、乙中将と鎮守府(闇)の演習の映像を見た。



――――あたしと大して変わらなかったゴーヤちゃんの活躍を間の当たりにして見て――――



――――あたしは、またあの頃みたいに



――――本気で泣いた。



――――悔しい、羨ましい。あんな風になりたい。じゃなくて、あのはしゃぐ姿を見て気付いた。



――――ずっと前に比べて泣かなくなったあたしだったけど、



――――笑うことも少なくなってた、かも。



――――大人になったって、勘違いしてた。



――――傷みに慣れていた、だけ。



――――それに、あの鎮守府の提督は、どんな艦娘でも役割を与えて、活躍させてくれる。無駄には使わない。そんな指揮。



――――怖いけど、挑戦しようと。



――――艤装を身につけ、新たな船出。



――――揺れる波に、酔う海を往く。









おろろろって、吐きながらだけど。



2



提督「…………」

 

 

ぷらずま「配置陣形を見つめながらどうしたのです。なにか問題が」

 

 

提督「通達がありまして。総指揮は甲大将、自分達の艦隊は丙少将のいる右翼なのですが、なにやら」

 


提督「裏切らないのなら、指示した作戦の範囲で好きに動いて構わない、と」

 

 

ぷらずま「●ワ●」

 

 

ぷらずま「ようやく私達の使い方を心得たやつが現れたようでなによりなのです」

 

 

江風「迎えに来る連中とこの作戦中、丙のところの指揮下に入れっていわれたんだが……なぜ丙なんだろ」

 

 

江風「そのままここでいいじゃん」

 

 

提督「死なせたくないからでは。自分は江風さんほどの強さなら危ない橋を渡らせるでしょうし」

 

 

江風「まあ、丙ならその点かなりマシか」

 

 

江風「お前んとこのが性に合ってんだけどなー。後ろで見てるのは好きじゃないし」

 

 

江風「つか、この決戦で役割こなせば昇級できるぜ。気合い入れろよな」

 

 

提督「まあ、やるべきことをやるだけなので……」

 

 

ぷらずま「私以外の第6駆は鎮守府の守りに残しておくといいのです。まだまだうちのやり方には適応できません」

 

 

提督「支援艦隊は全員着任予定となりますが、明石君、秋月さん、秋津洲さん、ですね」


 

提督「第一艦隊は龍驤さん、暁さん、響さん、雷さん、榛名さん、瑞鶴さん」

 

 

提督「第二艦隊は阿武隈さん、陽炎さん、不知火さん、瑞鳳さん。こちらに支援艦隊の明石君、秋月さん、秋津洲さんを回そうかと」


 

提督「そして幹部と接触してもらう最重要の第3艦隊はぷらずまさん、わるさめさん」



提督「出来ればこの形が理想です」

 

 

江風「着任予定って、ちゃんと連携取れんのかよ?」

 

 

ぷらずま「江風さんもその点に関しては他人の心配している暇ねーのです」

 

 

ぷらずま「ただでさえ脳筋なのに、保守的な丙の指揮下に入るのですから」

 

 

江風「なめんななめんな。伊達に大将のお側つきやってねえ」

 

 

江風「お前とやっても負ける気はしねーぞコラ」

 

 

ぷらずま「チンピラがお側つきとは大将さんの格が下がるのです」

 

 

江風「ああ?」

 

 

ぷらずま「なにか間違ったことをいったのです?」

 

 

提督「こほん」

 

 

提督「ここももう立派な戦力として計算されていますね……」

 

 

江風「喜ぶところだろー? 嫌そうな顔すんなよなー……」

 

 

ぷらずま「目的は」

 

 

ぷらずま「勝利のみですか?」

 

 

提督「出来れば、ですが、第1艦隊にはレ級、もしくはあのレベルの敵との接触、会話をして深海妖精の情報を引き出して欲しいです」



提督「ぷらずまさんには単独行動をさせると思います。かなり危険な橋を渡らせます」

 


ぷらずま「構わないのです」


 

提督「まあ」

 

 

提督「恐らく大物1隻はこっちを狙うと思います。機会はあるかと」

 

 

提督「そしてもう自分のやろうとしていることはバレていると思います」

 

 

提督「そのレ級の価値も」

 

 

ぷらずま「……今回の戦いでは勝利とともに身内同士の功績の取り合いになるということですか?」

 

 

提督「まあ……そういう作戦です。殲滅戦ではなく、情報を取りに行くんです。混乱を招かないために色々と決まりはありますけどね」



提督「ぷらずまさんに質問が」

 

 

ぷらずま「なんなのです?」

 

 

提督「レ級と接点を持ったことは?」

 

 

ぷらずま「直接しゃべったことはないですが、ネ級を介して情報のやり取りをしたことはあります、ね」

 

 

ぷらずま「ガキというイメージなのです。ま、こちらに従うようなタマではねーのです」

 

 

提督「こちらが持っている情報と知り合いではあるなら、その分アドバンテージですよ」

 

 

ぷらずま「わるさめさんは顔見知りのはずです。さらったのはレ級ですよね?」

 

 

提督「わるさめさん、本当に向こうで遊んでたんじゃないかなって思うくらいに中枢棲姫勢力の重要情報を持っていませんし……あの子の性格的に不向きな任務ですから」

 

 

ぷらずま「まあ、ぽんこつなのです。先を見据えて行動できないのですか。使えねーのです」

 

 

江風「お前らこの場でンなこといっていいのかよ。このこと大将や丙のやつに報告するかもだぞ?」

 

 

提督「いえ、むしろこちらから報告するべきことです」

 

 

ぷらずま「そしたらレ級と接触して情報引き出し役に私のいる艦隊が抜擢されるかもなのです。私はこの人以外には従う気はありませんしね」

 

 

江風「…………む」

 

 

ぷらずま「はわわ、江風さん」

 

 

ぷらずま「頭、悪いんですか?」ニタニタ

 

 

江風「てんめ……」

 

 

提督「止めてくださいよ……」

 

 

提督「ぷらずまさんも自重で。江風さんもいちいち挑発に乗るのは……」

 

 

江風「……そだな」

 

 

江風「それじゃあたしはこれにてさらばだ。抜錨地点で迎えを待つよ」

 

 

江風「世話んなったな。して欲しい恩返しの内容、なんか考えとけよー」

 

 

江風「またな!」

 

 

ガチャッ、バタン。

 

 

ぷらずま「司令官さん、恩返しの内容、とは何のことです?」

 

 

提督「助けてもらったお礼に一つだけ何でもいうこと聞いてくれるみたいです」

 

 

ぷらずま「…………」

 

 

ぷらずま「ふーん」ニタニタ

 

 

3

 

 

秋津洲「い~た~い~」

 

 

秋津洲「かもおおお!」

 

 

ぷらずま「●ワ●」

 

 

伊58「あれ? 秋津洲きたんでち?」

 

 

伊58「犬に追いかけ回されてるでち」

 

 

ワンワンワン!

 

 

ぷらずま「苺みるくさん」

 

 

ぷらずま「そんな粗大ゴミ食べちゃダメなのです」

 

 

苺みるく「ワン!」ピタッ

 

 

伊58「名前……」

 

 

ぷらずま「暁お姉ちゃん命名なのです」

 

 

秋津洲「助かったかも~……」

 

 

秋津洲「けど、あたしは粗大ゴミじゃないかも!」

 

 

ぷらずま「今のご自分の姿を鏡で見てください」

 

 

ぷらずま「子犬相手に追いかけ回さ逃げ回り、中破のごときお姿……艦娘とは思えないのです」

 

 

秋津洲「違う、かもー。深海棲艦に追いかけ回されて、ここまで来たから……」



秋津洲「でも、うう、なんで鎮守府にわんちゃんが……」

 

 

秋津洲「撫でようとしたら追いかけ回されたかも~」

 

 

ぷらずま「苺みるくさんは耳に触れると怒りますのでお気をつけください」

 

 

秋津洲「ふむふむ……そー」

 

 

ナデナデ

 

 

苺みるく「くぅん」

 

 

秋津洲「♪」ナデナデ

 

 

ぷらずま「司令官さんのところには行ったのですか?」

 

 

秋津洲「ここ、広くて迷っていたかも~」

 

 

伊58「娯楽、たくさんあっていいところだよ」

 

 

秋津洲「ゴーヤちゃん久し振りかも」

 

 

伊58「でちねー。元気してた?」

 

 

秋津洲「相変わらず休みばかりだったかも……」

 

 

伊58「クルージングで死にかけるよりマシでち」

 

 

ぷらずま「知り合いなのです?」

 

 

伊58「前の鎮守府で一緒だったよ」

 

 

ぷらずま「あそこの、ですか」

 

 

ぷらずま「ま、司令官さんから聞いているのです。あなたには価値があると」

 

 

秋津洲「ところで提督はどこに……」

 

 

ぷらずま「秋津洲さんから見て正面の建物1階です。司令官さんが待っているはずなので行ってきてください」


 

秋津洲「分かったかも~」

 

 

伊58「あ、金剛達が遠征から帰投したみたいでち」

 

 

金剛「……」ペタペタ

 

 

陽炎「……」ペタペタ

 

 

不知火「……」ペタペタ

 

 

伊58「まるでゾンビでち……」


 

秋津洲「噂ではここの提督は実はいい人って。でも、やっぱりブラ鎮だったかも……?」

 

 

ぷらずま「ああ、あれは司令官さんの家の不法侵入者どもに対する罰、過密スケジュールの遠征任務なので」


 

ぷらずま「まあ、この鎮守府に黒さというか、容赦のなさがあるのは否定しないのです」

 

 

伊58「前は人が少なくて個々に対する負担が大きかっただけでち。最近は賑やかになったし、心配するなでち」


 

秋津洲「あたしでも役に立てる、かも?」

 

 

ぷらずま「●ワ●」

 

 

ぷらずま「格上相手に間宮さんですら勝利に導いた人ですよ」

 

 

ぷらずま「役に立てる場面はいくらでも用意してくれるのです」

 

 

伊58「新人はたくさん働いて先輩を楽にさせるんでちよ」

 

 

秋津洲「うん! 心機一転、がんばるかも!」

 

 

ぷらずま「行ってしまいましたか」

 

 

ぷらずま「あのあられもない姿のまま……」


 

4


 

龍驤「今日は初霜さんがついて行ってたんか。お疲れなー」

 

 

初霜「はい。卯月さん阿武隈さん、第6駆逐隊でローテで回して……」

 

 

金剛「テー……ト……クー……」


 

陽炎「ここ最近の過密スケジュール、なし遂げた、わ……」


 

不知火「死ぬ、かと……」

 


初霜「お疲れ様でした」

 

 

陽炎「金剛さんなんか、最初は『遠征に出るのは初めてデース!』ってはしゃいで、たけど……」

 

 

金剛「……遠征、嫌いデース……」

 

 

金剛「駆逐艦の皆は、こんなのをひたすらこなして……すごすぎマス……」


 

不知火「さあ、報告も終えましたし……」


 

提督「ええ、しばしの休暇を満喫してください」

 

 

提督「懲りてくださいね。なにか自分やぷらずまさんのことが知りたいのなら聞けば答えますので」


 

秋津洲「秋津洲です。お邪魔するかも!」


 

龍驤「邪魔するんなら帰ってやー」

 

 

秋津洲「分かったかも~」


 

ガチャッ

 

 

秋津洲「って、なんでやねん!」ビシー

 

 

秋津洲「土曜日のお昼はテレビ見てたし、前の鎮守府での週6暇人をなめて欲しくないかも!」フンスッ

 

 

龍驤「……って」

 

 

龍驤「ちょ、秋津洲……!」


 

提督「…………(メソラシ」

 

 

秋津洲「?」

 


金剛「テートクウ! 見てはいけまセーン!」

 

 

初霜「えっと、深海棲艦と戦いを……?」

 

 

秋津洲「かも?」

 

 

龍驤「色々と見えとるで……なにがあったんや……」

 

 

秋津洲「あ」

 

 

秋津洲「え、うえぇ~っ!?」

 

 

龍驤「着替え貸したるから、ちょっち行くでー」

 

 

秋津洲「あ、ありがとう! 提督、また後で来るかも!」

 

 

5

 

 

秋津洲「ジャージなのは許して欲しいかも……」

 

 

提督「構いませんよ。災難でしたね……」

 

 

提督「これから、よろしくお願いしますね」

 

 

秋津洲「(`・ω・´)ゝ」

 

 

提督「しかし、また随分と急なお返事でしたね。てっきり悪評ゆえスルーされていたものかと……」

 

 

秋津洲「うう、ごめんなさい。届いていて、行きたかった、けど、ここは色々と良くない噂を聞いていたから踏ん切りがつかなかった……かも」

 

 

初霜「こちらからお声を?」

 

 

提督「はい。ゴーヤさんと同時期にその旨をこっそりと送ったのでかなり前ですね……。前の所属もゴーヤさんと同じ鎮守府です」

 

 

秋津洲「ゴーヤちゃんの活躍は聞いているかも」

 

 

秋津洲「あたしはなにやってもいまいち。秋津洲艤装をもて余していて、お仕事はたまに鎮守府正面海域の哨戒についていくくらい……」

 

 

提督「まあ、人出が欲しかったのでそのような状況ならぜひうちに、と思いまして……」

 

 

秋津洲「提督」

 

 

秋津洲「ここではあたしでも、たくさん活躍できる、かも?」

 

 

提督「もちろん。期待しています」

 

 

提督「近日に実施される作戦では支援艦隊に入って戦場に出てもらいます」

 

 

秋津洲「見せて欲しいかも!」

 

 

秋津洲「工作艦明石、秋月」

 

 

秋津洲「あたしが明石や秋月と、こんなすごいメンバーに混ざって、戦えるとか……」

 

 

初霜「これから、よろしくお願いしますね」

 

 

秋津洲「うん!」

 

 

提督「秋津洲さんは、明日から対潜と機銃装備を積んでひたすら演習して練度をあげてください」

 

 

提督「ゴーヤさんと鹿島さんにお付き合いをお願いしてありますから」

 

 

秋津洲「練巡さんまで!」キラキラ 

 

 

秋津洲「提督、ここでなら私の真の実力を出せそうかも!」

 

 

提督「かも、では困るので」

 

 

提督「秋津洲さんに活躍して欲しい分野は支援です。前に出てドンドンやるよりも、性能的にかなり活躍できると思います」

 

 

秋津洲「遠征とかもやりたいかも!」

 

 

提督「魔改造と、クレーンつけます」

 

 

秋津洲「工作艦のお手伝いは嫌かも!?」



6

 

 

伊58「秋津洲ー。お前、あの格好で……お、着替えているでち」

 

 

秋津洲「ゴーヤちゃん……た、確かにあたしは砲雷撃戦は苦手かも……」


 

伊58「うん?」

 

 

提督「あなたに限らず、歴代秋津洲全員にいえることですね。しかし、皆さん前で活躍したがる方が多いのもあって、まあ、秋津洲のイメージは」

 

 

秋津洲「弱い、かも~……」

 

 

提督「いえ、正確には持て余している、ですね。あなたの活路に頭を悩ませる提督も多いですが」

 

 

提督「やはりどう考えても秋津洲艤装の真骨頂は補助艦艇としての役割」

 

 

秋津洲「でも、お役に立てるのなら、支援でもあたしはがんばりたいかも!」

 

 

提督「うちには面白い子がいまして」

 


提督「この鎮守府(闇)にいる卯月さんについてはご存じでしょうか」

 

 

秋津洲「卯月、すごいかも! 乙中将との制空権の取り合いで貢献して、山城さんと互角にやり合ったとか!」

 

 

秋津洲「卯月のイメージをひっくり返したかも!」クワッ

 

 

提督「ええ、あなたも可能です。支援分野になりますが、かなりの功績を出すことが出来ます」

 

 

提督「魔改造によっては更に」

 

 

秋津洲「!?」

 


提督「まあ、適性ではなく、あなたの素質に合わせた艤装に調整する、といったものです。動きやすくなる……服装でいう袖合わせ、でしょうかね。こちらは希望があれば」

 

 

提督「が、あなたは支援として働いてもらいたいので、基本的には工作艦と一緒に動いてもらうことになります」

 

 

提督「多大な戦果を残せると思います」

 

 

秋津洲「多大な、戦果……」ゴクリ

 

 

伊58「どこかで見た光景……」

 

 

伊58(そういえばゴーヤは長期休暇で釣り上げられたっけなー……)

 


伊58(……まあ、なんだかんだでここに来てからのゴーヤは覚醒してるし、黙っておくでち)

 


秋津洲「提督、秋津洲は進化したいかも……!」

 

 

提督「お任せください。提督として秋津洲さんの性能を極限まで引き出します。その前に1つ」

 

 

提督「うちに来る予定の明石君はご存じでしょうか?」

 

 

秋津洲「う、うん。男の子、だよね?」

 

 

提督「そうです。アカデミーでも問題になったのですが」

 

 

提督「艦娘の皆さん、彼と隊列を組むのあまり好まないようでして。ほらあなた方スカートの子が多いですし」

 

 

秋津洲「(〃ω〃)」

 


提督「ゴーヤさんの海兵服を見てもらえば分かると思うのですが、うちは一部軍の決まりが緩いので」

 

 

提督「ご希望があれば服装の変更を承っています」

 

 

伊58「でもゴーヤのは提督さんが」

 


提督「さすがにスク水は思うところがあるので……というかあれ、軍にもかなりの苦情と」

 

 

伊58「少しの賛美があったでち」

 

 

伊58「まー……ゴーヤはマシな部類でち。イクとかニムとか一部ヤバイのがいるでち。台詞も相まって」

 


秋津洲「台詞に関してはゴーヤちゃんもなかなか際どいかも」

 

 

伊58「? どこが際どいんでち?」

 


秋津洲「あたしの口からは、い、いわないかも」

 

 

提督「そして秋津洲さん、あなたの艦娘としての例のあれですが」

 

 

秋津洲「……」

 

 

秋津洲「よ、酔い止めのお薬で少しは持つかも……ほんの、少し」

 

 

提督「そちらもなんとかします。鹿島さんが抜錨地点で待っているので、おろろろ秋津洲のおろろろをどうにか消してください。まずはそこからです」

 

 

提督「戦場でのコンディションは生死に直結しますので、次の作戦の出撃はそれが治った場合です。無駄死にの危険が跳ねあがりますので」

 

 

提督「そのままで戦場に出たければ、決死の覚悟をお持ちのうえ、自分へどうぞ。無駄死ににならない作戦を練り上げますので」

 

 

秋津洲「鹿島さんのところ、い、行ってくるかも!」

 


伊58「ゴーヤも行こうかな。乙中将との戦いでの感覚を身体で覚えておきたいでち」

 

 

提督「ええ。あの時のゴーヤさんは輝いていましたね」

 

 

伊58「あはは、提督のお陰でち」

 

 

提督「む」

 

 

伊58「それじゃ行ってくるよー」



ガチャ

 


伊58「お、はっつん、秘書官がんばるでちー」

 

 

初霜「はい! お任せくださいっ! ゴーヤさんもがんばってくださいね!」



初霜「鉢巻き貸しますよ!」



伊58「遠慮しとくでち……」

 

 

7

 


秋津洲「……」オロロロ

 


鹿島「」

 

 

ぷらずま「●ワ●」


 

ぷらずま「お友達視察に来てみればまた艦載機撃てないぽんこつ空母並みのやつが来たのです」


 

ぷらずま「ま、あいつとは違ってこの程度、すぐに修整してやるのです」

 

 

鹿島「慣れ、ですよね。1度、陸に戻って」

 

 

ぷらずま「いえ、こういうやつは甘えさせてはダメなのです。死に物狂いにさせないと」ジャキン

 

 

ドオン!

 

 

秋津洲「」

 

 

ぷらずま「私の射撃は至近距離以外はお粗末なのです。鬼ごっこ。10回避ければ」

 

 

ぷらずま「陸に上がらせてあげるのです」

 

 

秋津洲「ひいぃ……」

 

 

鹿島「秋津洲さん、げ、限界が来たら無理せずに」

 


ぷらずま「鹿島さん、テメーはそういう甘さが欠陥の根源なのです。姉の香取は見た限り、教えに甘さがない」

 

 

ぷらずま「私的にはこいつが死のうが生きようがどーでもいーのですが、戦場でそんなこと考えてくれる深海棲艦はいないのですよ?」

 

 

ぷらずま「そこのとこ、死神の異名に繋がる要素なのでは……?」

 

 

鹿島「……」

 

 

秋津洲「砲撃くらい、避けてやるかも!」クルッ、スイイー

 

 

ぷらずま「やる気はある、と。司令官さんが声をかけるだけはあるのです」

 

 

ぷらずま「とはいいません」

 

 

ぷらずま「当たり前のことだ」


 

秋津洲「……」オロロロ

 

 

鹿島「嘔吐しながら……」

 

 

ぷらずま「●ワ●」キャッキャ

 

 

ぷらずま「それでは1発目、艦載機発艦、行きますよ」

 

 

秋津洲「砲撃、じゃない……」

 

 

オロロロ

 

 

ぷらずま「ああ、あの嘔吐現象を観ているだけではお暇でしょうし、鹿島さんも攻撃対象なのです」

 

 

ぷらずま「大破してもそのまま夜間哨戒にGOさせるので、私を味方だと思わないで欲しいのです♪」

 

 

ぷらずま「一晩で生まれ変わらせてあげるのです」

 

 

ぷらずま「●ワ●」

 

 

鹿島(提督さん……私は泣きそうです)



【8ワ●:アッキー&アッシー着任】

 

 

1



龍驤「瑞鶴お前なにしとんの?」

 

 

瑞鶴「見てわかるでしょ。艦載機発艦の練習」

 

 

龍驤「いやいや、なんで弓使わずに矢を遠投しとるん?」

 

 

瑞鶴「えー、龍驤みたいにトリッキーな発艦の仕方できないかなって」

 

 

瑞鶴「野球の変化球みたいに曲げられたら面白くない?」


 

龍驤「……」

 

 

龍驤「軍学校で座学でも受け直してこいや……」

 

 

瑞鶴「うーん、頭では分かってるんだけどなあ……」

 

 

龍驤「空母の役割はなんやの」

 

 

瑞鶴「戦闘機のための海上拠点だったっけ」

 

 

龍驤「せや。ちょい飛ぶけど、乙中将との演習時、なんでうちに前行かせて瑞鶴は後ろにいさせたか分かる?」

 

 

瑞鶴「えっと、卯月をマークして、卯月の奮闘で戦線が割れて、飛龍さんと蒼龍さんを叩くチャンスができたから?」

 

 

瑞鶴「それが重要だから、私より空母としての腕のいい龍驤さんを阿武隈とわるさめの支援につけたんじゃないの?」

 

 

龍驤「前半は正解やけど」

 

 

龍驤「後半はほぼ間違い」

 

 

瑞鶴「え、ならなに?」

 

 

龍驤「普通、正規空母のサポートすんの軽空母のうちな。うちが夕立と扶桑を相手しといたほうがええわ。二航戦二人の相手は軽空母には荷が重いで」

 

 

龍驤「ハッキリいうけど、瑞鶴、お前の練度が低すぎるからやで」

 

 

龍驤「扶桑、夕立相手なら制空権確実に確保できるやろ。だけどもお前、あの二人の対空射撃に手こずってたか知らんけど、時間かかったやろ?」

 

 

瑞鶴「でも、時間差で飛ばしたのは効果的だったじゃん」

 

 

龍驤「それ、結果論やし、そもそも司令官の指示やったんちゃう?」

 

 

瑞鶴「……」



龍驤「夕立と扶桑が弱いとはいわんよ。というか、かなり強いやろ」

 

 

龍驤「でも、あの二人相手に制空権の確保に手こずる今の瑞鶴が二航戦二人とやれば」

 

 

龍驤「わるさめは未知数やから、おいといても、アブーはやられとったで」

 

 

瑞鶴「もしかして」

 

 

瑞鶴「私、あんまり期待されてないどころか……」

 

 

瑞鶴「迷惑かけてる……?」

 

 

龍驤「ちゃうちゃう」

 

 

龍驤「役には立ってる」

 

 

龍驤「期待に応えられてないだけやねんて」

 

 

瑞鶴「あの提督から、期待、されているのかなあ……」

 

 

龍驤「あの卯月やアブーよりも、瑞鶴のほうを先に欲しがったわけやし。空母のあまりはもっとあったはず」

 

 

龍驤「期待されてると思うで」

 

 

瑞鶴「確かに……わざわざ私を選んで声をかけたわけよね……」

 

 

瑞鶴「提督が瑞鶴ファンとか?」

 

 

龍驤「……そんな風に見えるん?」

 

 

瑞鶴「自分からいっといてなんだけど、100%ないわね」

 

 

龍驤「うちから見たら瑞鶴はかなり長い目で開花するタイプ。改二甲になれば素質とも合う。加賀のやつともやりあえると思うで」

 

 

龍驤「だから早期に引き入れようとしたんやと思うよ」

 

 

瑞鶴「なるほどー……」

 

 

龍驤「まあ、真っ直ぐに目的地まで皆を飛ばしてやり」

 

 

龍驤「正規空母はそれだけで強いんやから」

 

 

龍驤「変な色気出すのはその後でええって」

 

 

龍驤「ちなみになに積んでる?」

 

 

瑞鶴「適当に持ってきた九々艦爆と九々艦攻と12.7㎝連装高角砲」

 

 

龍驤「じゃ、比較的練度低いやつら連れてくるから演習形式でやろ。空母はうちと瑞鶴の二人で敵同士な」

 

 

龍驤「正攻法だけしか使わんし、同じ艦載機を使うから」

 

 

龍驤「発艦数、場所、タイミング、さばき方、全てのレベルを思い知らせたるわ」

 

 

瑞鶴「私と龍驤さんの二人でもよくない?」

 

 

龍驤「……せっかくやし、練度低い子の経験値にさせたほうがええやん」


 

 

瑞鶴「あー……まあ」

 

 

龍驤「こっちばかり求めてばかりではなくてさ」

 

 

龍驤「艦娘になったんだから相応の覚悟を持ってきたはず。こっちもそういう考え方に基づいた指揮に適応させたらんと」

 

 

龍驤「合同演習の時、うちは沈ませへん戦い方をしとったから、最後に引いた」

 

 

龍驤「ま、うちもあの指揮に関しては否定せんけど好かんなー。丙ちゃんと同じ意見や」

 

 

瑞鶴「そうねえ。でもこの海ではああいうやり方も必要なのはあるかも」

 

 

瑞鶴「土壇場でしかやらないより、始めからやるほうが被害が少なくなるのはあいつが1/5作戦で証明してるし」

 

 

龍驤「うん。だから嫌いっていうのは止めたよ。うちがその役割やりたないって駄々こねとるみたいやし」

 

 

ヒュー

 

 

龍驤「なあ、白昼夢かな? なんかこっちに砲弾飛んできとらん?」

 

 

龍驤「いやいや、確実に飛んできとるやん!」

 

 

瑞鶴「鹿島さんが秋津洲とゴーヤ連れて向こうのほうに。秋津洲がなにもかもできないらしいから鍛えるとかって」

 

 

龍驤「死ぬわ!」

 

 

瑞鶴「仕方ないわねえ」

 

 

ドオン

 

 

龍驤「……うん?」

 

 

龍驤「瑞鶴、今のどうやったん?」

 

 

瑞鶴「12.7㎝高角連装砲で撃ち落としただけじゃん。見てたでしょ」

 

 

龍驤「振り向き様、即座に?」

 

 

瑞鶴「そこら辺は感覚で。アブーだって出来るじゃん」


 

龍驤「……いいもん持っとるやん」

 

 

龍驤「空母の面白い戦い方教えたるわ!」

 

 

龍驤「まず艦載機の扱い方上手くなるのが先やけどな!」

 

 

瑞鶴「?」

 

 

龍驤「助けてくれてありがとなあ! とりあえず抜錨したら秋津洲シメてくるからその後で!」

 

 

2


 

龍驤「抜錨ー、秋津洲あ……鎮守府のほうに砲撃するとかキツくいったらんと」

 

 

龍驤「……うん?」

 

 

秋月「アッシー、さっきの砲撃、誰も怪我してないかな……」

 

 

明石「大丈夫だ。見てたけど、瑞鶴さんが撃ち落としてただろ。それよりあんなところでタコヤキ舞わせてるほうが頭おかしい」

 

 

明石「着任初日から怒られるから、なかったことにしとこーぜ」


 

龍驤「お前らの仕業か!」

 

 

龍驤「っていうか誰やの!」

 

 

龍驤「片方ずいぶんと男っぽいな」

 

 

秋月「あ、龍驤さんじゃないですか!」

 

 

秋月「フラット5を生で見るの初めてです!」

 

 

龍驤「誰のどこがフラットやねん!」

 

 

龍驤「胴か。ってやかましいわ」ビシッ

 

 

秋月「ビデオですけど、演習の指揮を見たときからファンになりまして! これ、怪しいショップで買った市販の龍嬢洗濯板です!」

 

 

龍驤「なんで一般企業が個人に嫌がらせしとん!?」

 

 

龍驤「うち別にまな板売りにしとる芸人でもないんやで! 大体漢字も嬢じゃなくて驤やし、服の模様も微妙に違うし、パチもんやないか!」

 

 

秋月「あっ、本当です……」

 

 

明石「………」ソロソロ

 

ガシッ

 

龍驤「逃がさん。待ち」

 

 

明石「すみませんでした(土下座」

 

 

龍驤「考えれば鹿島の指導のもとやし、そんなミスを起こすのも考えにくいわ」

 

 

龍驤「うちは龍驤やけど、君らは」

 

 

秋月「駆逐艦秋月型一番艦秋月です」

 

 

龍驤「これまた適性者の少ないレア艦が来たなあ。君は」

 

 

明石「工作艦の明石です」

 

 

龍驤「男やのに?」

 

 

明石「まあ」

 

 

龍驤「…………」

 

 

龍驤「あー、例の……」

 

 

秋月「ともに本日付けで着任です!」

 

 

龍驤「まあ、洒落にならんから気ぃ付けたってな」

 

 

明石「……気を付けます」

 

 

龍驤「ここから正面の建物の1階やで。無駄に広いから迷わんようにな!」

 

 

秋月「はい! ありがとうございます!」

 

 

明石「ども」

 

 

3

 

 

初霜「例の明石さん、本当に男性です」

 

 

提督「ようこそ」

 

 

秋月「おっにっいっさーん!!」

 

 

提督「痛いです。金剛さんみたいな突撃は止めてください」

 

 

秋月「はい! 分かりました!」ビシッ

 

 

秋月「でもお兄さんともっとこう一晩中、遊びたいくらいの気持ちです」

 

 

提督「相変わらず元気なようでなによりです……」

 

 

明石「卒業してきたぞー」

 

 

明石「俺はなにすればいい」

 

 

提督「まずは装備の改修と」

 

 

明石「装備改修は本家より時間はかかる。一時間で出来ることは俺がやっても三時間はかかる。それで見積もってくれ」

 

 

秋月「明石のお姉さんがすごすぎるだけですよ! アッシーもセンスあるって誉められてましたしね!」

 

 

明石「別にフォロー要らねえ。事前に俺らの詳細は事前にこっち来てるはずだし。まあ、そういうことで」

 

 

秋月「そちらは初霜さんですか!」

 

 

初霜「は、はい。秘書官をさせていただいております」

 

 

初霜「よろしくお願いします」ペコリ

 

 

初霜「明石さんに改修して欲しい装備のリストです。ここに書いてあるのでなにかご質問があれば提督か私に」

 

 

初霜「秋月さんは鹿島さんの指示に従って3日間の訓練です、ね」

 

 

秋月「了解!」

 

 

明石「了解」

 

 

明石「んで俺の部屋どこ?」

 

 

提督「自分の隣です。まあ、男ですから他の皆さんとは別棟となりますね。そのリストの下に分けて色々と書いてあるのでご確認を」

 

 

提督「敷地内に無断侵入すれば、一部の女性陣によって半殺しの目に遭うと思うので、注意してくださいね」

 

 

明石「例の発作覚えてるか? アッキーに電話しても?」

 

 

提督「もちろん」

 

 

秋月「積もる話があるんです!」

 

 

提督「今は職務中なので、仕事が終わった後で声かけますね」

 

 

明石「あいよ。それじゃ仕事するわ」

 

 

4

 

 

明石「なんだ、あの趣味悪い地下室。なんか変な趣味あんの……?」

 

 

提督「前に着任した方が作った部屋ですよ。なにかと闇の鎮守府のようでして」

 

 

明石「兄さんの趣味じゃなくて安心した」

 

 

明石「っと、明石の姉さんだけあって、兄さんの希望に不備はないよ。大丈夫だ」

 

 

提督「ありがとうございます」

 

 

提督「それと明石君、秋月さんとともに中枢棲姫勢力との決戦に支援艦隊として参加してもらいます」

 

 

明石「着任初日から色々と注文を。黒いっつう噂は本当だな……まあ、いいけど」

 

 

わるさめ「明石クーン、センソーしてんだ。この程度で根をあげるとかダサいぞ男の子☆」

 

 

明石「うるせえ死ね」

 

 

わるさめ「あー、今夜は寝かせねっス……表出ろ?」

 

 

明石「うるせえ死ね」

 

 

わるさめ「そのヤンキー特有の語彙のなさも含めて色々と口の聞き方、教えてやるゾ☆」

 

 

明石「かったるいやつだなー」

 

 

パタン

 

 

提督「わるさめさん」

 

 

提督「水槽の見張りお願いしますね」

 

 

わるさめ「あいあいさ。交代くるまでそこで漫画でも読んどくよー」

 

 

わるさめ「あ、カバンに詰めた漫画持ってくんの忘れた。ちょっと取ってくるから待っててねー」

 

 

5

 

 

ぷらずま「……」

 

 

わるさめ「まーた花壇を眺めてんのー?」

 

 

わるさめ「あんたは暗いよねー。もともと明るいやつじゃなかったけどさあ」

 

 

わるさめ「いつまで生きられるか分からないし、素直に生きたほうがいいとわるさめちゃんは思うゾ?」

 

 

ぷらずま「信じてはもらえないでしょうが、黙っておきます」

 

 

ぷらずま「わるさめさんは次の戦いで」


 

ぷらずま「裏切るつもりはありますか?」

 

 

わるさめ「●ω●;」


 

わるさめ「はあ?」

 

 

ぷらずま「中枢棲姫勢力が深海妖精を扱える存在だとして、あなたを解体し、普通に戻すことを引き換えに寝返りを要求したら応じますか?」

 

 

わるさめ「…………」

 

 

わるさめ「信用できたら、の話だね」

 

 

わるさめ「今はあの司令官さんのほうが信じられるし」

 

 

ぷらずま「そうですか。では私は裏切りを頭に入れて動くのです」

 

 

わるさめ「あんたは、戻りたくないの?」

 

 

わるさめ「この身体だと、自分以外と共生しているみたいで気持ち悪くない? 寄生虫とかマジ勘弁」

 

 

わるさめ「そのせいで深海棲艦がどうして戦っているか分かるしさー」

 

 

わるさめ「ただの艦娘ならともかく、あんたがこんな虚しいセンソーに関わりたいとか、頭、沸いていると思う」

 

 

ぷらずま「街がここよりマシだという価値観が理解困難です」

 

 

わるさめ「……は?」

 

 

ぷらずま「砲撃がなく、深海棲艦に人が殺されない世界でも、人は不当に死にますよ?」

 

 

ぷらずま「街は怖いのです」

 

 

ぷらずま「だって、本当に恐ろしいのは人に殺されることではなく」

 

 

ぷらずま「自分で自分を殺す選択をすることだと思いますから」

 

 

わるさめ「……」

 

 

ぷらずま「このセンソーに身を投じていれば、生きていられます。だって、街中とは違って」

 

 

ぷらずま「自殺する人はいませんよ」

 

 

わるさめ「……」

 

 

ぷらずま「ほとんどが自分のせいにされる世界よりも、深海棲艦のせいで死ねるのは」

 

 

ぷらずま「弱い人に、優しいじゃないですか」

 

 

ぷらずま「戦争的に砲弾を撃ち合うのと、平和的に話し合いで殺し合う」

 

 

ぷらずま「私はセンソーに身を投じていたほうがいいです」

 

 

わるさめ「このセンソーは終わるよ?」

 

 

わるさめ「その後、世界の紛争に首突っ込む傭兵でもやんの?」

 

 

ぷらずま「生き残るつもりはありませんが?」

 

 

ぷらずま「あの人は約束を守ってくれるでしょうから、そんな未来はありませんね」

 

 

わるさめ「約束とか知らないけどさー、変にわるさめちゃんの目的の邪魔しないでよ?」

 

 

ぷらずま「しませんよ。さっさと有像無象に成り下がって街に失せて欲しいですから」

 

 

わるさめ「●ω●」ア?

 

 

ぷらずま「●ワ●」ハ?

 

 

ドゴッ

 

 

瑞鶴「綺麗なクロスカウンターね……」

 

 

瑞鶴「あんたら、ほどほどにしときなさいよ」

 

 

わるさめ「ずいずい聞いて? やっぱこいつ腹立つ♪」

 

 

ぷらずま「なのです♪」

 

 

瑞鶴「街に出掛けるけど、あんたらなんか欲しいものある?」

 

 

わるさめ「普通の身体」

 

 

ぷらずま「戦争の終結」

 

 

瑞鶴「はいはい。そういう内容の漫画でも買ってきてあげるわ」



6

 


提督「もう21時ですか……」


 

提督(工廠はまだ灯りがついてる、か)

 

 

瑞鳳「男の子ですね」ジーッ

 

 

榛名「はい」ジーッ

 

 

陽炎「ツナギっていうのかしら」ジーッ

 

 

不知火「ヤンキーオーラがありますね」ヌイッ

 

 

提督「皆さん、なにを」

 

 

瑞鳳「……あっ、お疲れ様です」

 

 

陽炎「いや、話には聞いていたけど、同僚で男とか初ケースだからねー」

 

 

不知火「観察してます」

 

 

提督「そうですか」

 

 

提督「仲良くしてあげてくださいね」

 

 

不知火「……」

 

 

榛名「はい! 榛名は大丈夫です!」

 

 

提督「不知火さん、なにか」

 

 

不知火「いえ、司令が仲良くしてあげて、とか、彼に思い入れがあるのかな、と思いまして」

 

 

提督「まあ、少し」

 

 

提督「失礼します、明石さ、君」

 

 

明石「あ、兄さん」

 

 

提督「提督でお願いしたいのですけども……」

 

 

明石「すんません、まだリストの1/3も終わってないス」

 

 

提督「期限はまだ余裕があります。張り切りすぎて体調壊さないでくださいね」

 

 

明石「このくらいなんてことないスよ。俺とアッキーは体が丈夫なのが取り柄だし」

 

 

提督「あの、他の方達が明石君に興味津々みたいですし、暇があればコミュのほうも」

 

 

明石「学校でもそうだったなー。周りで騒がれたけど、周りもすぐに馴れるだろ。別に街での暮らしを経験してないやつなんかいないだろーし」

 

 

提督「まあ、そうですね」

 

 

明石「あんま積極的に関わる気はないっすね。女という生き物に深入りしてもろくなことがない」

 

 

明石「軍学校で学んだんで……」

 

 

提督「苦労してそうですね……」

 

 

明石「つうか艦娘の人達は癖あるの多すぎじゃねえかな」

 

 

提督「完全に同意です」

 

 

明石「でもまあ、今日はキリのいいし、このくらいであがろうかね。ほら、10㎝連装高角砲+94式高射装置だ」

 

 

提督「ありがとうございます。色々と捗ります」

 

 

提督「改修には詳しくないですが、やっぱり相当訓練したんですか?」

 

 

明石「明石の姉さんが『若いし、男なんだから私の倍は働いてください』って機械弄りのノウハウを叩き込まれたんで……」

 

 

明石「あ、間宮さんとこで飯食いに行きません? けっこう楽しみにしてたんで」

 

 

明石「二十歳なんで酒もいける」

 

 

提督「行きましょうか。明石君に話したいこともありますし」

 

 

7

 

 

間宮「!」

 

 

明石「あ、遅い時間にすみませんね。お邪魔しても大丈夫ですか?」

 

 

提督(かなり礼儀正しくなってる……)

 

 

間宮「あ、はい。いらっしゃい」

 

 

明石「なんか昭和の食堂みたいで落ち着くお店っすね」

 

 

明石「間宮さんがより綺麗に見える場所です」

 

 

間宮「あ、ありがとうございます」テレッ

 

 

提督「明石君……できますね」

 

 

間宮「ええ、お上手ですね……」

 

 

明石「まあ、女だらけでの場所ではこんな風に世辞いっておくのが処世術だと学んでるんで」

 

 

間宮「別にあげて落とす必要ないですよね!?」

 

 

明石「冗談ですよ。ビールくれビール。兄さんの分も。後、適当に飯。量があるやつ」

 

 

間宮「男の子ですねえ」

 

 

間宮「とりあえず飲み物、どうぞ」

 

 

提督「どうも」

 

 

明石「あざーす」

 

 

提督「あれから大丈夫でした?」

 

 

明石「問題ないです。親父が来たらしいすけど、追っ払ってもらってて、諦めたみたいですし」

 

 

提督「そうですか。それと……」

 

 

明石「あー、カ級の残骸も調べました。んでぷらずまさんとわるさめさんのデータ調べて分かったんだけどさ」

 

 

明石「工作艦の領分じゃない。ありゃ明らかに明石の姉さんの魔改造技術とは畑違いっすね」

 

 

明石「分かりやすくいうのなら、魔改造はもとを加工しようで、あの二人は人間とサルのDNAでサル人間作ろうっていう医学とか遺伝子学とかそっち系統の領分じゃねーかな……」

 

 

明石「着手したやつは頭おかしいし、なんか俺らが知らない妙な知識と技術持ってる」

 

 

明石「十中八九、妖精の技術だろ」

 

 

提督「技術も知識も深海妖精の確保で明確になればいいのですが……」

 

 

明石「俺からも妖精に聞いてみたけど、しらばっくれてるなー。まあ、脅してもしゃべらんことはしゃべらないやつらだし……」

 

 

提督「………」

 

 

8

 

 

阿武隈「なんか、男の人二人で飲んでる時って」

 

 

瑞鶴「少し入りにくい」

 

 

金剛「私は行けるけど、お仕事の話してるから止めておきマース」

 

 

明石「あ、そういえば提督」

 

 

提督「なんです」

 

 

明石「彼女はいないの?」

 


金剛「!?」

 

 

阿武隈「金剛さんが露骨に反応しましたね……」

 

 

金剛「……どういうこと?」


 

金剛「明石君、提督のこと気になってる……?」

 

 

阿武隈「金剛さんが変な方向に……」

 

 

 

提督「いません」

 

 

明石「でも提督ってモテるって聞くぞ。実際気になるやつとか」

 

 

提督「いえ、特に」

 

 

明石「結婚願望は」


 

提督「ないです」

 

 

明石「まあ、その候補なんだが……」

 

 

金剛「ヘイ明石君ストップ!」

 

 

金剛「黙って聞いていれば、着任初日から攻めすぎネ!」

 

 

明石「いや、金剛さんだっけ。大事なことだから」

 

 

金剛「あなたと提督のラヴは認めまセーン!」

 

 

明石「」

 


金剛「非生産的デース!」

 

 

金剛「開拓者なのに!」

 

 

金剛「非生産的デース!」

 

 

瑞鶴「ぶはっw」

 

 

瑞鶴「金剛さん不意打ち止めてw」

 

 

提督「明石君、さすがに違いますよね……?」

 

 

明石「たりめーでしょ。アッキーはどうだって聞こうとしたんだよ……」

 

 

明石「歳は一回りも離れてないし、ほら、あいつ可愛いだろ?」

 

 

提督「……上が騒がしいですね」


 

明石「露骨に逸らしたなー……」

 

 

間宮「ええ、着任された方の歓迎会という名の大宴会中ですから。鹿島さんと秋津洲さんが見当たりませんが……」

 

 

提督「ぷらずまさんの姿も見えないので恐らくあの子が連れ回しているのかと……」

 

 

明石「俺はいいや。騒がしいの苦手だし」

 

 

瑞鶴「明石も行ってきなー。皆に挨拶してきな」

 

 

明石「そこにある靴のサイズ的に駆逐艦ばっかだろ。めんどくせ……」

 

 

阿武隈「明石君、駆逐艦なめたらダメですよ……特にうちでは」

 

 

金剛「あの電ちゃんとわるさめちゃんも一応登録上では駆逐艦デース」

 

 

瑞鶴「そいつらは鬼畜艦だから」

 

 

明石「そういや卯月さんとはあの艤装のこともあるから話しておかねえと」

 

 

明石「兄さん、上には行かねえの?」

 

 

瑞鶴「お? ついていって欲しいみたいな可愛い顔が出来るんじゃん」

 

 

明石「ええと、瑞鶴さん?」

 

 

瑞鶴「それ以外の何に見えると」

 

 

明石「なんかイメージと違って。確か凛々しくて頼もしそうな」


 

明石「スマホに入ってる。これこれ」

 

 

『翔鶴型航空母艦2番艦、瑞鶴です。

翔鶴姉と共に、ミッドウェーの後の第一機動部隊の中核として、矢尽き刀折れるまで奮戦しました。文字通り、最後の機動部隊が壊滅するその日まで。でも、今度は違うの。改装された本格正規空母の力存分に魅せるわ! 翔鶴姉、やろう!』

 

 

提督「知らない子です。こんな頼もしそうな瑞鶴さん欲しいですねー……」

 

 

明石「この頼もしそうな瑞鶴さんに比べて」

 

 

明石「なんかあの瑞鶴、そこらの瑞鶴似の女子大生がコスプレしてるみたいな、軽さがあんだけど」

 

 

瑞鶴「やかましい! そんなこといったらお前こそ明石じゃないじゃん!」

 

 

瑞鶴「そんで提督さんはいい加減、私を改造しなさいよ!」

 

 

提督「勝手が変わると、また艦載機に関しての不備が出ないか心配でして。中枢棲姫勢力のこともあるので、後日の作戦が終わったら、と考えてます」

 

 

提督「あなたは改二甲の素質があるので、そこまであげたいと」

 


提督「設計図は阿武隈さんの分は用意してありますけど、あなたはカタパルト設計図も用意しなければならないので、まだ準備できてません」

 

 

瑞鶴「おっけ、なるべく早く頼む」

 

 

阿武隈「あ、そういえばあたしはもう改二にできますね」


 

阿武隈「まだトラウマを完全に克服出来ていない状態ですけど……」


 

提督「阿武隈さん、色々と真面目なお話がありますので明日の6時に執務室にお越しください」

 

 

阿武隈「? 分かりました」

 

 

金剛「テイトク! 私も改造して欲しいデース!」

 

 

提督「あなたも榛名さんも改二なんでそれは無理です。魔改造くらいしか」

 

 

金剛「それは嫌ネ……」


 

明石「あんた日本語覚えた中国人みたいなしゃべり方だよな」

 


金剛「ヘイ明石ボーイ! 淑女なミーですが、ケンカなら買ってやるから表に出ろデース!」

 

 

明石「俺をただの工作艦だと思うなよー」

 

 

明石「お前らを知り尽くしている工作艦こそ最強だとは思わないのかね?」

 

 

明石「海の上でバラすよー」

 

 

金剛「私達を知り尽くしているだなんて、卑猥デース!」

 

 

阿武隈「金剛さん……」

 

 

瑞鶴「酔ってるわね……」

 

 

明石「だる」

 

 

提督「皆さん酔うのもほどほどに」

 

 

提督「では、ごゆっくり。少し上に顔を出してきますね」

 

 

金剛「へいテートクゥ! もっと構ってくれないと寂しいデース!!」

 

 

提督「自分ではそういうコミュは努力しても適応するの難しいので、あなたは自分のところに来たのが間違いなんですって……」

 

 

金剛「バニングラブ! そんなことないデース!」スリスリ

 

 

提督「瑞鶴さん、阿武隈さん、なんとかしてくださいよ……」

 

 

瑞鶴「少しは男として喜べばいいと思うんだけどなー。金剛さんに抱きつかれているんだし」

 

 

阿武隈「そこはさすがとしか……最近、提督はあたし達より深海棲艦のほうが好きなんじゃないかと思いますし、はい……」

 

 

提督「また妙な誤解が……」



明石「おいえせ淑女、離れろ。俺ら上に顔を出していくから」

 

 

金剛「嫌デース……」

 

 

提督「重……こほん。このまま引きずって行きますか」



9


 

卯月「秋月、なんか面白い話どうぞっぴょん」

 

 

卯月「アカデミー初の男の同級生がいるだけに、なにかありそうだぴょん」

 


暁「恋のお話は?」キラキラ

 


秋月「いえ、残念ながらそこはさすが私の兄といいますか、全くありません」

 

 

秋月「バレンタインに私と山風さんと明石の姉さんからチョコを贈ったことはありますけど」

 

 

暁「……」キラキラ

 

 

秋月「どれも恋のない義理愛のチョコです」

 

 

雷「もしかして明石君も、ダメなところがあるのかしら」キラ

 

 

秋月「雷さん、なぜ目を輝かせて」

 

 

響 「こういう子なんだ。安心してくれていい。善意しかないよ」

 

 

響「そういえばバレンタインデー。やっぱり司令官と明石君に渡したほうがいいのかな」

 

 

わるさめ「ぷらずまのやつなら、明石君はともかく司令官さんがホワイトデーとか要らんこと気にするからやらなくていいっていうゾ☆」

 

 

暁「で、でも、あげないと嫌われてる、とか思うかも」

 

 

わるさめ「あの司令官さんはンなこと気にするやつじゃねーだろ。あげたところで喜ぶ精神構造もしてねっス」

 

 

わるさめ「わるさめちゃんは自分そのままレベルの本命あげるけどね?」

 

 

秋月「私もお兄さんにあげたいです! あ、後アッシーにも!」

 

 

卯月「悲しいことに今の司令官だと形式的に『どうも』と礼をいって終わりな気はするぴょん……」

 

 

陽炎「去年は丙さんにあげたけど、普通に喜んでたわねー」

 

 

不知火「聞いた話では乙中将と甲大将のところもあげているみたいです」

 

 

暁「多分、喜んでくれるわよっ。想いの込められたものをもらって、嬉しくないわけないじゃない」

 

 

響「上司にあげて同僚にあげないというのは、どうなんだろう。やはりここは二人にあげるべきだろうね」

 

 

瑞鳳「私はあげようと思っていますけど……」

 

 

瑞鳳「本命ならそれはまた個人の自由にして、義理のほうは皆で作るのはどうです?」

 

 

陽炎「ナイスアイデア! それなら皆で作ったものを二人にあげればいいわね!」

 

 

わるさめ「OLみたいな会話繰り広げてんじゃねっス……」

 

 

わるさめ「アッキー昔話はよ。私は明石君の弱味を握って、からかいたいのだよー」

 

 

卯月「うーちゃんもそっちー」

 

 

秋月「軍学校の定例で毎年、新入生の抱負を代表がいうんですけど、その時、歴史初の男の兵士ということで、アッシーが請け負うことになったのですが……」

 

 

秋月「その時、面白いハプニングが起きまして、そのエピソードを。あえて多少色をつけてお話しましょう!」

 

 

卯月「ではどうぞっぴょん!」

 

 

【9ワ●:ラブコメ謹慎物語】

 

 

1

 

 

ザワザワ

 

本当に男だー。

 

ザワザワ

  ザワザワ

 

 

明石「んだよ、居心地悪いな……」


 

秋月「仕方ないですよ。艦娘っていうほどなんですから、男のアッシーは目立ちます」

 

 

秋月「でも可愛い子ばっかりですね! ラノベのような夢の展開です!」

 

 

明石「さすが俺の妹というか、見た感じ、アッキーが一番可愛いと思うんだけどなー……」

 

 

秋月「気持ち悪いです! そういうのいい加減やめて妹離れしてください!」

 

 

明石「お前こそ発作はやく治せよな……」

 

 

秋雲「あ゛ぁ゛~捗るわ~」カキカキ

 

 

秋雲「男の子とか、あ゛ぁ゛~捗るわ~」カキカキカキ


 

明石「なんかやべえぞあいつ……」


 

秋雲「雁首そろえてー、いらっしゃいませ!」


 

明石「雁首? ケンカ売ってる?」

 

 

秋月「アッシー、止めてください! そんなに乱暴なこといってるから子供の頃からクラスで浮いたりするんです!」

 


明石「お前はなにかある度に俺をとぼしめるの止めろよ!」

 

 

秋雲「おはよー、秋雲ね。新入生は毎年そんなにいなくて、今年はなんと3人ぽっきりだよ~」

 

 

秋月「秋雲さん、よろしくお願いします! 私が秋月でこっちが明石君です!」

 

 

秋雲「よろしくねー。そっかそっかー。明石さんと明石君で区別しないと紛らわしいか」

 

 

秋雲「ちなみに秋雲は生徒会長だよ。2年だから先輩に当たるねぇ。お絵描き興味あればぜひ漫研においで~」

 

 

明石「読み専だからいいや」

 

 

秋雲「少年、秋雲は全ジャンルいけるからもしもご入り用ならお望みの漫画も書いてあげてもいいよ」


 

明石「うっす、秋雲先輩っすね。覚えときます」

 

 

秋月「なんか友情が下卑てますけど、アッシーにお友達が出来るなんて、私は妹として嬉しいです!」



秋雲「まーまー、秋月ちゃんはなんかイメージより少しロリな感じでそそるー」

 

 

秋月「興味を持ってもらえたようでなによりです!」

 


明石「なあ、あの頭ボサボサでふわふわしていて寝惚けてる感じの子が3人目の新入生?」

 

 

山風「 (σω-)。о゜」

 

 

秋月「耳にイヤホンつけて、眠そうに歩いていますね」

 

 

山風「♪」

 

 ♪

 

  ♪

 

まだ誰も知らない あの空の果てはー♪

 

きっと 眩しすぎ~る ガラスの扉~♪


どるふぃんきっくでしびれてみたいなー……


  ♪

 

 ♪

 

 

明石「ぽわぽわした感じでなんか歌ってるなー。聞いたことあるけど、多分俺がめっちゃ小さい頃だわ」

 

 

秋月「なんか最後すごくテンション落ちてましたね。しびれてみたいなー……↓みたいな……」

 

 

秋雲「……」

 

 

山風「……」カア

 

 

山風「っ!」タタッ

 

 

秋雲「あ、目があったら顔を真っ赤にして逃げていった」

 

 

明石「あるある。誰もいないと思って歌ってたら人がいて恥ずかし! みたいなパターン」

 

 

秋月「目が空いていれば普通に人が見えるはずなんですけどね。寝ぼけていたのでしょうか……」

 

 

秋雲「ま、少年! これね! 校内説明のDVDを渡しとくよ」

 

 

秋雲「体育館の壇上で明石君が舞台で挨拶してから、そこにある機材に入れてスイッチ押せばスクリーンに流れるから、よっろしっくねー」

 

 

秋雲「お二人にジュースもあげるよ。先輩からの入学祝いだよー」

 

 

秋月「ジュースなんて高価なものを! ありがとうございます!」

 

 

明石「はいよ。ところで工廠ってどこにある? 明石艤装は訳あって毎日使えないみたいで、艤装使わない弄りを主にやるみたいでさ」

 

 

明石「俺の職場だから見ておきたいんだよな」

 

 

秋雲「校舎裏の隅っこに倉庫みたいな建物あるからそこー」

 

 

明石「どうも。アッキー行こうぜ」

 


秋月「はい!」

 

 

2

 

 

明石「トイレ行きてえ。ジュースなんか飲むんじゃなかった……」

 

 

明石「なー、男性用のトイレがねえんだけど……」

 

 

秋月「艦娘学校は女性ばかりですし、でも教官には男性もいるって聞いたことありますし、どこかにあるはずです」

 

 

明石「ダメだ。持たね……」

 

 

明石「アッキー、そこの女子トイレなかに誰もいないか見てきてくれ……」

 

 

秋月「致し方ないですね。少し見てくるので待っててください!」

 

 

タタタ

 

 

秋月「大丈夫です! 入り口で見張っていますのでさっさと済ませて戻ってきてくださいね!」

 

 

明石「おう、あんがと……」

 

 

明石「……」ガチャ

 

 




 

 

 

 

 

 

 

 

山風「?」

 

 

明石「▂▅▇█▓▒ (’ω’) ▒▓█▇▅▂うわぁぁぁ!」

 

 

山風「……あ……ふぇ」グル

 

 

山風「……あ、あ」グルグル

 

 

明石「大変失礼しましたア!!」バタン

 

 

明石「くっそ、持たねえ! もうなんか今ので吹っ切れたわ!」ガチャ


 

明石さん「うわ、株価下がってる」

 

 

明石「」

 

 

明石さん「ん? 覗きですか少年」

 

 

明石「アッキィィィィ!!」

 


タタタ

 

 

秋月「どうかしましたか!?」

 

 

明石「どうかしまくってるよ! 確認してくれてねえじゃん!? 誰もいないどころか満室気味なんですけど!?」

 

 

明石「なんか新聞広げてるおっさんみたいなやつもいたしさ!?」

 

 

秋月「あれ、鍵は全部青で、どこもしまっていなかったはずなんですけど……」

 

 

明石「もう外で立ちションしてくる! 自首するから警察呼んどいて!」

 

 

タタタ

 

 

秋月「刑務所はなりません! わ、私のミスです! 皆さんに謝ってきます!」

 

 

山風「……へ、変質者、け、憲兵に……」

 

 

秋月「ご、ごめんなさい! それだけは!」

 

 

秋月「さっきの少年は私の兄貴なんです! 男性用のトイレが見当たらなくて! 私が確認したつもりが……その!」

 

 

秋月「何卒お許しを……!!」ペコペコ

 

 

明石さん「あー、あの子が例の男の子ですか」

 

 

明石さん「山風ちゃん、明石のお姉さんがあいつにキツくいっておくから今回は許してあげてくれません?」


 

山風「……分かり、ました……でも」

 

 

山風「謝って……もらいます……」

 

 

タタタ

 

 

明石さん「あの木の陰にいますねー。ツナギいいなあ。夕張ちゃんはけっこう似合うんですけど、わたしには合わないんですよねー……」



明石さん「というか山風ちゃん、今、少年はお取り込み中だから行くのは……」

 

 

山風「謝、れ……」

 

 

明石「おいちょっと待て! こっち来んな、KY(危険予知)しろよ! 二次災害一直線だからさあ!?」

 


山風「なに、いって……誠心誠意、謝れ……!」

 

 

山風「……、……」

 


山風「」パタリ

 

 

秋月「大丈夫ですか!?」

 

 

秋月「アッシー! いい加減にしてください! 私のせいとはいえ、女の子に粗相した挙げ句に誠心誠意謝るどころか、更なる粗相を重ねるなんて!」

 

 

秋月「見損ないましたよ!」キッ

 

 

明石「キッ、じゃなくてさ!」

 

 

明石「立ちションしながら誠心誠意謝罪する方法を教えていただけませんかねえ!? わかんねえから後で知恵袋で質問しとくわクソが!」

 

 

明石さん「あーあ、君はなかなかのトラブル体質ですねー」

 

 

明石「あ、さっきのおっさん」

 

 

明石さん「あ?」

 


秋月「アッシーの馬鹿!!」

 

 

明石さん「工作艦明石です。泊地での応急修理ならお任せください、ネ?」

 

 

明石「あ、あんたが、現行明石?」

 

 

明石さん「そうです。君に色々と教える師匠となる明石さんです」

 


明石さん「とりあえず弟子は山風ちゃん起きるまでその場で土下座です♪」

 

 

明石「そうさせていただきます……」

 

 

………………

 

………………

 

………………

 

 

山風「男性用は、職員室の、ところに……ある」

 

 

山風「……次は、撃つからね」

 

 

山風「アッキーの、クラスメイトの、お兄さんということで、許す」

 

 

秋月「あ、ありがとうございます! 山風さん、これからよろしくお願いします!」

 

 

明石「俺もクラスメイトなんだけど……」

 

 

山風「お前は私に、構わなくていい……」

 

 

明石「了解しました……」

 

 

秋月「山風さん、こんな馬鹿兄貴は放っておいて体育館に行きましょう!」

 

 

山風「……うん」

 

 

明石「現行明石さんも色々とすみませんでした……」

 

 

明石さん「あー、いいです。でも装備改修と魔改造だけは甘えなくビシバシ行きますから覚悟しといてください」

 

 

明石さん「明石にはですね、求められるものが秋月ちゃんや山風ちゃんとは違いますから、技術が不安定なままで明石艤装引き継ぎはおろか卒業さえさせません」

 

 

明石「大丈夫、やり遂げるよ」

 

 

明石さん「……む」


 

明石「おいアッキー、待ってくれよ!」

 

 

タタタ

 


3

 

 

明石「――――、――――です」

 

 

パチパチパチ

 

 

明石(ふう、やっとスピーチ終わった。長い文覚えるのに苦労したなあ……)



明石「ん、この機材にDVD入れてっと、席に戻ろ……」


コツコツ

 

明石「あー、やっと座れた……」

 

 

山風「……」プルプル



秋月「信じられません……」

 

 

秋月「アッシーがこんなアグレッシブな変態さんだったなんて、お兄さんになんて」

 

 

秋月「謝れば……うえええん」ポロポロ

 

 

明石「……はあ?」

 

 

ガラッ

 

 

秋雲「間違えたやっべー明石君!」

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

渡したの資料用のホモビだった!!

 


 

 

明石「」


  

3

 


暁・不知火「」

 

  

卯月・わるさめ「キャハハハハ!」

 

 

卯月「ぷ、ぷく、ぷ……お腹が、よじれ……!」

 


秋月「最悪の幕開けでしたが、今ではもう1つの思い出ですね!」

 

 

陽炎「なんか災難なやつねー……」

 

 

瑞鳳「不幸体質ですねえ……」

 

 

響「正直にいうと」

 

 

響「お手洗いの下りは」


 

雷「そうね……山風さんを見てすぐに出るべきだったわね」

 

 

わるさめ「秋雲も相当だよねー……」


 

秋月「なんだかんだいって山風さんはアッシーと仲良しになりましたし、終わりよければ全てよし、です!」

 

 

瑞鳳「それはなによりです。思えばチョコあげたわけですしね」ホッ

 

 


 

提督・明石「……」

 

 

提督「明石君、お行きなさい」

 

 

明石「絶対に嫌なんだけど!?」

 

 

わるさめ「司令官に明石君! こっちおいでよー! 酌してあげるからさあ!」

 

 

提督「自分は夜間哨戒メンバーの迎えがあるので抜錨地点に行くんです」

 

 

明石「兄さんしか味方になってくれそうな人がいないんだけど!」

 

 

提督「求められているのなら、交流すればいいかと。なに、死ぬわけではありません。それでは」

 


提督「あ、寝てる金剛さんは置いておきますね」 



4

 

 

秋月「間宮さん、ごちそうさまでした! お料理とっても美味しかったです!」パアア

 

 

間宮(きゅん)

 

 

間宮「お腹が空いたらいつでも来てくださいね。和洋中、腕によりをかけてお作りしますので」


 

秋月「はい! ありがとうございます!」

 

 

秋月「おっにっい! さーん!」

 

 

秋月「待ってくださーい!」

 

 

5



提督「……」

 

 

秋月「相変わらず、ですよね! 見た目も髪が少し伸びたくらいですね!」

 

 

提督「あなたは変わってないですね。変わらないのは、一種の美徳です」

 

 

秋月「建造してから成長も止まりますし! でも変わりましたよ!」

 

 

提督「相変わらず声が大きいところも」

 

 

秋月「失礼しました(小声」


 

秋月「ほら、日本語も通じるようになりましたよ?」

 


提督「……秋月さん」

 

 

提督「自分の1/5作戦、そしてこの鎮守府(闇)に着任してからの出来事を知ってなおここに配属希望を?」

 

 

秋月「もちろんです。色々と悪くいう人はいますけど、私はそうは思っていません。この今の私とアッシーはお兄さんにもらったようなものですし」

 

 

提督「……あなた達の不遇は周りの大人に頼る勇気があれば解決できた問題です。それほどの傷が明石君の身体にありました」

 

 

提督「たまたま自分だっただけで、しかもそれはお二人のためを考えての行動ではなく」

 

 

提督「上にそうしろ、と頼まれたからに過ぎません」

 

 

提督「今の鎮守府は賑やかですが、その半数が将校から見張りのために寄越された人達ですし」

 

 

秋月「でも仕事だから。その理由だけでいるようには思えませんでしたよ。皆、楽しそうです。正直」

 

 

秋月「ここまで明るい鎮守府だとは予想していなかっただけに、すっごく嬉しいです」


 

提督「抱えている闇は深い子も多いです。きっと強いから笑えているのか、そうあろうとしている姿です」

 

 

秋月「おにいさん」

 

 

秋月「たまたま助けたのが自分だっただけ、といいましたけど」

 

 

秋月「助けてくれたのはおにいさんなんです。その動機がどうあれ、この事実は変わらず、そして」

 

 

秋月「私とアッシーは感謝しています。アッシーは素直じゃないから借りを返す、とかっていいますけど」

 

 

秋月「力になりたい、んです」

 

 

秋月「そこからスタートしてここまで来ました。私とアッシーにとってはそれだけの出会いと物語だったんです」

 

 

秋月「理解しています。どうぞ私の命を駒として盤面に置いてください。私が選んだ道です」

 

 

秋月「おにいさんの指揮は兵士を無駄死に、にはさせない。そうでしょう。そして誰よりも大きな一歩で未来に進むような指揮だと思っています」

 

 

秋月「丙乙甲の将校のどなたよりも」

 

 

秋月「命を灯火にして、例えその灯りが消えようともまた誰かが命を燃やして遠くの海に進むかのような、そんな鎮守府だと思っています」



秋月「色々といわれるかもしれません。でも、私も流儀に反って結果を叩きつけてあげます」

 

  

秋月「私とアッシーは、強いです」

 

 

提督「正直にいうと、なーんにも心に響かないです。頭では分かるんですけどね。なんでしょう。喜怒哀楽も経験しているはずなのに、なにかが欠けているみたいでして」

 

 

秋月「そうですか! でも、そこも含めて秋月はおにいさんのことが大好きです!」

 


秋月「それで充分なんです!」

 

  

提督「ご期待に添えるようがんばります。そのあなたが吸い寄せられた灯りが殺虫灯の灯りだった、というオチにはならないように……」

 

 

秋月「はい! じゃあ歩くの疲れたのでおんぶしてください!」

 

 

秋月「とうっ!」

 

 

提督「重……こほん、軽いもんです」

 

 

秋月「私、軽いほうですからね。というかどこに向かっているんです?」

 

 

提督「抜錨ポイントです」

 

 

提督「今日はスケジュール合わせてあなた達の他にも鹿島さんと秋津洲さんの歓迎会も兼ねていたのですが」

 

 

提督「お二人が帰ってきません。まあ、ぷらずまさんに振り回されているんでしょうけど……」

 

 

秋月「ぷらずまさん、例の電さんですね。私はあの人のことも好きです。アッシーとも意外に相性いい気がします」

 

 

提督「どうでしょうね。ぷらずまさんは割と引き金が軽いですから。わるさめさんも相当軽いですけど」

 

 

秋月「ちなみに鹿島さんですが、妹の目からしてアッシーのタイプです」

 

 

提督「そこら辺、彼に警告しておかないとぷらずまさんが暴れる危険がありますね……」



6


 

秋津洲「」

 

 

ぷらずま「気絶してんじゃねーのです」ゲシゲシ

 

 

ぷらずま「そろそろ起きやがれなのです」ジャキン

 


鹿島「うふふ……」グル

 

 

鹿島「うぷぷぷぷ」グルグル

 

 

提督「惨事ですね……」

 

 

ぷらずま「司令官さんとダボーとの秋月さんですか」

 

 

秋月「ダボーとではなく妹です!」

 

 

提督「ぷらずまさん、報告を」

 

 

ぷらずま「●ワ●」

 

 

ぷらずま「まず今の夜間哨戒は龍驤さんと榛名さんに」

 


ぷらずま「秋津洲は86回目の大破でようやくゲロ吐きが収まりました。鹿島のやつは秋津洲をかばうことが多く、94回大破。こいつらは夜間哨戒に連れ出し、それぞれ大破撃沈1回ずつ。私が連れ出して入渠施設にぶちこみ、出撃、入渠の繰り返しです」

 

 

秋月「鬼過ぎます……」

 

 

提督「御苦労様です」

 

 

提督「秋津洲さん、生きてますかー?」

 

 

秋津洲「うーん、生きては、いる、かも……」パチリ

 

 

秋津洲「でも、最後は酔うこともなかったかも……」

 

 

秋津洲「昔の鉄棒を、思い出して」

 

 

秋津洲「何回も、失敗して、転んで、頭も打って、すりむいて」

 

 

秋津洲「だけど、なんとか、出来るようになった、そんな感じ、かも……」

 

 

提督「根性あるんですね。素晴らしいです」

 

 

提督「鹿島さんもありがとうございました。恐らくあなたがついていなければ……最悪の事態も……」

 

 

鹿島「いえ……明日の朝陽が拝めることの喜びを、改めて、知りました」

 

 

鹿島「きっと、役に立つ、経験です」

 

 

鹿島「……はい」

 

 

秋月「皆さん、根性がすごいですね」

 

 

ぷらずま「なければ消えて欲しいのです。このくらいの海も越えないで、この戦いでなにをほざくのです?」

 

 

ぷらずま「それに二人はまだまだ。この鎮守府(闇)では根性においては私とゴーヤちゃんのツートップだと思うのです。その後にぽんこつ空母、卯月さんです」

 

 

提督「秋月さんと明石君もゴーヤさん並みにあると思いますよ」

 

 

ぷらずま「それはなにより。うちを知りながら来たいということ、アカデミー卒業したばかりの赤子であることを」

 

 

ぷらずま「踏まえると」

 

 

ぷらずま「なかなか使えるお友達ですね」

 

 

秋月「はい! お友達ですか! 仲良くしましょうね!」

 

 

ぷらずま「なのです。戦場では我が手足として使い潰してあげるので覚悟しといて欲しいのです」ジャキン

 

 

秋月「了解です!」

 

 

ぷらずま「ほう……」

 

 

ぷらずま「即答できますか」

 

 

ぷらずま「●ワ●」キャッキャ



7



提督「ぷらずまさん」



提督「中枢棲姫勢力との決戦」



提督「あなたは単艦で幹部数名と接触してもらいます。そこについての詳細を改めて説明するので空いた時間に執務室へ」



ぷらずま「了解、なのです」



ぷらずま「よーやくあの勢力に長年の恨みをぶつけられます。お約束するのです」



ぷらずま「リコリス」



ぷらずま「中枢棲姫の」



ぷらずま「首は必ず持ち帰ります」



提督「……そのことについても」



提督「中枢棲姫、リコリス棲姫のどちらかは今後のためにも生かしておきたいので」



ぷらずま「……」





【●ワ●:5章終:●ω●】


後書き

ここまで読んでくれてありがとう。

6章のお話。

【1ワ●:例の北方棲姫】

【2ワ●:中枢棲姫勢力、前夜の祭】

【3ワ●:決戦開始】

【4ワ●:勇気はあるかい?】

【5ワ●:見えた暁の水平線:長ったらしい人間(ファンタジー)の話】

【6ワ●:例の北方棲姫 2】

【7ワ●:スイキの心】

【8ワ●:ネッちゃんの心】

【9ワ●:『私達』】

【10ワ●:レッちゃんの心】

【11ワ●:例の北方棲姫 3】

【12ワ●:例の北方棲姫 4】

【13ワ●:決戦からの帰投】

【14ワ●:海の傷痕:本体】


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2017-01-10 08:40:01

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1: SS好きの名無しさん 2017-01-09 19:33:01 ID: jr8yOqcn

●ワ●


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