2017-01-30 14:49:18 更新

概要

『花言葉シリーズ第四弾』
とある事務所で働くプロデューサー。トップアイドルを目指す彼女たちに、最高のプロデュースを行っていく。
そこなかで行うちょっとした事件。解きなおしていこう。


前書き

花言葉シリーズ、第三話。登場キャラは書いてますがここに書いてあるメンバーが全員言葉を話すわけではありません。このシリーズにして登場するキャラクターです。ご了承ください。
また、口調に違和感を感じるかもしれませんがその時はブラウザバックをしてくださればと思います。
前作【http://sstokosokuho.com/ss/read/9133】


 生意気な奴ってどこにでもいるもんなんだよね。そのうちの一人が杏だって認識?もちろん、あるよ。杏って人からことあるごとに天才とかいろいろ言われてたし。だけど別に望んでそうなったわけじゃない。杏ってさ、確かにほかの人よりも要領がいいんだと思う。要領は少ないけどね(ドヤッ)。

 ともかくさ、そんな感じだし、杏も面倒だったわけだからだらだらしてたわけ。どうせ頑張ってなんかやっても嫉妬されて、やらずにいても嫉妬されてだったらやらないほうがいいもんね。だから杏は怠けるわけ。合理的だよね?まぁ、それでいろいろ言われて極寒の地、北海道から東京に来たわけだけど。一応留年するわけにはいかないから必要最低限の出席だけして(ただし授業を受けるとは言ってない)テストだけうけて、そんな自由気ままな暮らしをしていた。そうしたらさ、物好きな奴に出会ったんだよね。それがプロデューサーってわけ。私を見て働かせようとしたんだよ。だから言ってやったわけ。

『い、いやだっ! 私は働かないぞっ! アイドルだろうとなんだろうと……お断りだーっ!! ……え? アイドルになれば印税で一生楽に生きていける? ほ、本当?……は、話を聞かせてもらおうじゃないか』

 ひどいよねー、実際そんなことはなくて入ってすぐにいろいろレッスンやらされて。なーんかいろいろ屋になっちゃうよ。まぁ、それでも?私を甘やかしてくれる存在はたくさんいるし、テキトーに頑張って生きていくに限るよね。どれだけ頑張ろうが天才の一言で終わってしまうんだもん。





 彼のプロデュースするアイドル達に、彼は勝手に命名した三銃士がいる。その三銃士は困らせ三銃士だ。うまいことクール、キュート、パッションと別れてるのは偶然か否か。

 クール代表は森久保乃々。おなじみのむーりぃーですべてを拒否してくる。

「の、乃々さん!ほらっ、いきましょう!」

「うぅ……ほたるさんもだんだん遠慮がなくなってきましたよね」

 と、言い訳を重ねるもそのままほたるにずるずると引きずられながらレッスンスタジオへと向かう。乃々の場合は拒否しようとも強引な技がきくのでやりやすいし実はそこまで嫌がってないんじゃないかと彼はにらんでいる。本当に嫌なら一番つかまりやすい机の下なんて場所に隠れる必要もないわけだし。

 続いてパッション代表。高森藍子。

「それで~、最近お散歩コースを変えてみたら~、また違った風景が撮れていいんですよね~」

「そうなんですか!ナナも気になります。どのあたりなんですか?」

「えっと、ここをこう言った先にある場所なんですけど~。あっ、そうそう。その近くの喫茶店、パンケーキがおいしいんですよ」

「ナナも行ってみたいです!って、あっ、いつのまにかこんな時間。ナナ、仕事あるんで!行ってきます」

「そうなんですか~。いってらっしゃーい」

 ゆるふわ空間にとらわれれば仕事に遅刻することもある。恐ろしい技だ。菜々は比較的時間を気にするタイプなのでそこまで問題はなかったがあともう少し、気づかないでいたら注意が必要だっただろう。これはこれで困るタイプである。本人の悪気が一切ないわけで。

 そしてキュート代表であり、この三銃士のリーダー。双葉杏。

「んで、確か今日杏と仕事だったよな?プロデューサー」

「まだだ。まだ間に合う。俺はあいつを信じてるぞ」

「アンタは何と闘ってんだよ」

 あきれたように奈緒はツッコム。今日は雑誌のインタビューとしてそれぞれ違うコーナーではあるものの一緒に受けることとなってたはずだ。そのインタビューを受ける場所もわざわざこの事務所内の談話室を用意したほどである。にもかかわらず杏が来ないのだ。

「確かプロデューサーは知ってるんだよな?あいつの家。なら行けばいいのに」

「いや、信じて待つことが大切だ。きっと今頃慌てて向かってきていることだろう」

「あっ、杏からLINE。ポンコツアンドロイドになったから休むって」

「あの野郎!」

 その声とともに彼は机から立ち上がりそのまま事務所を出ていく。

「はだか~になっちゃおっかな~」

「なっちゃえ!」

「卯月と美穂の連係プレイもすごいよな」

 ソファーで話を聞いていたらしい二人が即座に歌いだしたのを軽くツッコム。

 そんなことが起こっているとはつゆ知らず車を飛ばして杏が暮らすマンションまでやってくる。その一室に忍び寄りチャイムを押す。

「すみませ~ん。宅配便で~す」

 嘘をつく。

「アタシポンコツアンドロイドだからわかりませ~ん」

 即バレたらしい。

「杏!いい加減出てこい!というか、せめて中に入れろ」

「う~ん、ちょっと待ってよ。今三日目の追放者会議が終わって誰を追放するか決めているところだから」

「よりにもよって人狼ゲームかよ。あんまり使いたくないんだが」

 ため息をついて懐から合鍵を取り出して部屋に入る。普段ならもう少し粘るところだが、今日は本当に時間がない。最終手段を使うのも仕方があるまい。

 足の踏み場もない、というほどではないがあたりはジュースやお菓子の袋、ゲーム機、雑誌などが散乱している。

「ほらっ、いくぞ」

「うぇ、ちょ、待ってって。あっ、やった。人狼吊れた」

「はいはい、市民チームの勝ちってことでいくず」

「違うよ。狐である杏の一人勝ち」

「狐!?すげー。第三陣営が勝つの見るの実は初めてかも」

「ふっふっふー。じゃあ、そういうことで」

「んなわけいくか。今日は撮影もないし、このままいくぞ」

 働いたら負けと大きくプリントされたTシャツを着た杏を懐に抱えて、そのまま外に連れ出す。その杏は懐にウサギを抱えているわけだが。

「プロデューサー、靴」

「すでにかばんに入ってるから安心しろ。後、そろそろレッスン用のシューズも買い換えろ」

「プロデューサーがやっといてよ」

「はいはい。それぐらいの要求はのむよ。前に買い換えてからそんなにたってないし、同じサイズでいいな」

「そうそう。ついでの要求でプロデューサー、週休8日希望しまーす」

「まずは一週間を8日に変えてくれ。そうしたらいくらでやってやるよ。飴でもなめて黙っててくれ」

 ポイポイと杏と飴の袋を車の中に入れて走り出す。

「頼むから仕事の日は絶対来てくれよ」

「それってレッスンの日は休んでいいってこと?」

「そうじゃないよ。なんとか天才は紙一重っていうけども。はぁ」

「柳の上に猫が乗ってるよ~」

「これが本当のネコヤナギって、うるせぇよ。てか、よく知ってるな、その歌」

「ナナさんが子供のころやってたアニメだね」

「あれやってたの1971年だぞ。俺も再放送で見たけども」

「杏も~」

 というばかげた話をしている束の間に事務所に戻ってくる車で10分と近い場所に杏の家があるのは幸なのか不幸なのか。

 駐車場に車を止めてそのまま上に向かう。

「ただいま戻りました~」

「お帰りなさい、プロデューサーさん」

「ただいまです、ちひろさん。奈緒は……」

「先にインタビュー受けてますよ。ある程度時間を引き延ばしてくれるらしいです」

「奈緒、様々だな」

「じゃあ、もう杏いいじゃん。面倒くさい」

「おまえのためにコラムを作ってくれてるんだから、いってこい」

 そう言いながらスペシャル飴を渡す。

「あーむ。しょーがないなぁ」

 そんなことを言いながらもやっとのこさ二足歩行を開始して談話室へと向かってくれた。

「あのさ、プロデューサー」

「おお、凜。いたのか、気づいていなかったよ」

「まぁ、隅の方にいたしね。それでさ、時々杏に渡してる飴って、あれ何なの?」

「その、スペシャル飴って?」

「まあ、簡単に言えば俺お手製の飴って言うこと」

「プロデューサーの?」

「うん。といっても足したものじゃないよ?練り飴の延長戦みたいな感じ。元は緊急で作ったものをアレンジしだした感じ」

「へー、そうなんだ。プロデューサー、私ももらっていい?」

「ああ、いいぞ。ほらっ」

 凜はそのまま飴をなめる。

「おいしい。杏がはまるのもわかるな」

「まぁ、こっちの方が俺がカロリーとかもコントロールできるから楽なんだよな」

「杏ってさ、太るの?」

「栄養素は全てはき出してるようなやつだけど、一応太るんじゃないのか?でも、小食というわけではないけどなぁ」

「年齢の割には食べてないよ。体と比べると妥当だけども」

「ややこしいやつだ」

 肩をすくめてみせる。凜もそれに併せてクスクスと笑う。

「ま、杏もある意味うらやましい存在だよね。天性のものを持ってるわけだから」

「天性か……。天才ではあるだろうが、どうなんだろうな」

「えっ?どういうこと?」

「なんでもない。ところで、凜。『柳の上に猫がいる』というワードから何を思いつく?」

「……うちの店、柳おいてないけど」

「だよなー。あっ、じゃあ『西から上ったお日様が』だと?」

「なんだっけ、アニメの歌でそんなのあったよね。奈緒と一緒に見たよ」

「奈緒と?」

「深夜アニメで、ギャグアニメっぽい感じ。あと、召喚獣?とかついてた」

「あー、そっちか」

 ジェネレーションギャップを感じながら彼は仕事へと戻った。




「あ~、疲れた。杏はもう働かないぞ~」

「今日はもう仕事内からな。ゆっくり休んだらいいさ。明日も仕事だけどな」

「うぇ~。杏の印税生活はいづこへ~」

 だらけきった杏を励ますようにまた、飴を差し出す。とりあえずこれをやっておけばいいという認識が少しある。

「奈緒もどうだ?」

「あー、サンキュ、プロデューサー」

 素直に好意を受け取ってなめる。これはスペシャル飴ではなく市販の飴だ。

「にしても、大変だったんだぞ?今日はなんか全体的に杏、機嫌悪くなかったか?」

「プロデューサーに無理矢理連れてこられたからね。あー、だまされた。楽な仕事って言ってた割には面倒だったし。ちょっとねとくねぇ」

 そのままぐぅと寝息を立て始める。

「ふぅん……」

 どこか納得のいってない様子の奈緒。

「でも、プロデューサー。あたし、もうあそこの雑誌いやだな」

「えっ?奈緒がそんなことを言うなんて珍しいな……。どうしたんだ?」

「あたしは別にいいんだけどさ、杏のことあんまわかってないのに面白半分の取材というかさ」

「どういうことだ?確か今日は杏の特集だったんだよな?」

「そうなんだけどよ……アイツに対する質問ていうか、その節々に天才だとかだらけとかさ、なんていうんだろ、真の部分がわかってないんだろうなって」

「……なるほどな」

 少しだけ納得する。ちらりと杏を伺うと気にしたそぶりも見せずにウサギを抱いたま寝息を立てている。

「それでか、納得いったな。俺も仕事を選ぶ必要がありそうだ。奈緒はさ、杏についてどう考えてるんだ?」

「杏か?うぅん……天才だよな。確かに才能は他の奴らと比べものにならないほどある。だけど、その才能ってアイドル後からとか勉学とか、そういうことじゃないんだろうな。時間の使い方、だろうな」

「その理由は?」

「杏はあの体型だ。たぶん、燃費は必要以上に悪いんだろうな。だからこそ短期間に全部を押し込めて頭にたたき込む。体がうまくいかないならそれ以上に頭を使う。それと同時に休みながら行うことで体力も温存する。決して怠けているわけではないんだろうな。アイツはある意味人一倍自分の体を理解しているからこそ努力をしてるんだろうな」

「……だってさ、杏」

「へっ?」

「……杏は寝てるよー」

「なっ、おいおい。起きてって、プロデューサー!おまえ知ってたのかよ!!」

 顔を赤くさせて彼にくってかかる。彼も彼で気にしたそぶりも見せずにどこ吹く風で言葉を続ける。

「杏はどう思ってるんだ?」

「別にー。天才って言われるならそれでいいよ、別に。もう聞き慣れた言葉だし」

「まぁ、杏の才能を天才と言わずして、という点は確かにあるな。それでもアイドルとして頑張ってくれている事実もある」

「おい、プロデューサー!話聞けって」

「頑張りたくなんかなーい。杏は印税生活さえできたらいいんだよー」

「おいっ!プロデューサー……ってそうだ。前から気になってタンだけど、杏のそれって結構矛盾してるよな」

「えっ?な、なにがだよ」

「アタシたちがアイドルをやってるのは多かれ少なかれアイドルという世界にあこがれを持ってるからだ。もちろん、お金のためと言うのもあるけど……それ以上の目的がある。杏はよく印税生活とか言ってるけど、それなら別の手法があるはず。倍率も高くて、例えあたったとしてもそれで安定した収入が来るかどうかは微妙だ……。それがギャンブルであることが杏ならよくわかってるんじゃないのか」

「…………」

 さすがの杏もだんまりを決めこむ。だからか変わりにプロデューサーが口を挟む。

「ここからは俺の予想だけど、その不確定さが楽しかったんじゃないのか?杏はその理論立てた効率性でたいていのことはうまくやってしまう。だけど、アイドル業だけはそうはいかない。天性的なもの以外にも必死に覚える必要性があると言うことだ」

「杏は別にそんなこと考えてないよ」

 ぷいとそっぽを向く杏。理論立てた彼女の前には推測でしかないこの言葉で打ち崩すことはできない。それを打ち崩すには決定的証拠が必要ということだろう。

「奈緒」

「うん?」

「奈緒のレッスン用のシューズってどれくらいで使い物にならなくなる?」

「結構持つと思うけど……。うちのレッスンスタジオは床も綺麗だし設備も整ってるしな」

「だよな。杏はそのあたりどうなんだ?練習をしてないならそんなに頻繁にレッスンシューズを替える必要もないんじゃないのか?」

「……何のこと?」

 とぼける杏だが奈緒は合点のいったように頷く。

「なるほどな。杏の靴ってやたらと汚れたりしてることもあったんだよ。気になっていたんだが、隠れたところで」

「そ、想像で語らないでほしいな」

「ついでだ。今回の雑誌の傾向も知ってたんだろ?だからこそ、今回の取材に渋った」

「どういうことだ、プロデューサー?」

「杏は自分でいろいろ調べるんだよ。その上で最適に、かつ時間が延びないような回答をするために雑誌に対して研究をする。杏の部屋に入ったとき、今回の雑誌の切れ端が見つかったよ」

「うぐぅ……あー、もう杏はねる!」

「寝やがった……。まぁ、杏らしいな」

 奈緒は苦笑いを浮かべる。たしかにらしいなと同意をする。

「にしても、俺もきちんと調べる必要性がありそうだな向こうサイドも悪気があるわけではないんだろうが……」

「それはアタシもわかってるよ。ま、杏の中の考えとかわかってちょっと面白かったよ」

「面白いいうなー」

「やっぱ、おきてんじゃねーか」

 笑いながら突っ込みつつ杏のことを小さく笑ってみた。


後書き

双葉杏編、終了。
ヤナギの花言葉は、従順、自由。ネコヤナギは努力が報われる等です。
次話【まだ】


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