男の子「いつかさ」女の子「うん」
男の子と、女の子の、いつかのお話。
初めてこういうの書きます。優しい目で見てくださいまし。
男の子「いつか、僕は有名になる」
女の子「うん」
男の子「それで、お父さんとお母さんを楽にさせるんだ」
女の子「うんうん」
男の子「それで、女ちゃんも楽にさせる」
女の子「わたしも?」
男の子「うん」
女の子「そっか。楽しみにしてるね」
男の子「うん!」
女の子「それで、どんなふうに有名になるの?」
男の子「え」
女の子「え?」
男の子「……アイス食べてこよっと!」
女の子「あ、待ってよー」
男の子「いつかさ」 女の子「うん」
男の子「いつか、運動神経をよくするんだ」
女の子「うん」
男の子「それで、先生に褒めてもらう」
女の子「うん」
男の子「あとお父さんとお母さんと、弟と、おばあちゃんと」
女の子「うんうん」
男の子「……」
女の子「どうしたの?」
男の子「女ちゃんも、褒めてくれる?」
女の子「うん。わたしが最初に褒めてあげる」
男の子「ほんと!?だったら、僕がんばるよ!」
女の子「わたしも応援がんばるね!」
男の子「いつかさ」 女の子「うん」
男の子「いつか、あのいじめっ子に勝ってやる」
女の子「うん」
男の子「それで、もう皆をいじめないように僕が教えてやるんだ」
女の子「うん」
男の子「そしたら、皆で仲良くする」
女の子「うんうん」
男の子「あいつ狸っぽい顔してるしきっとすぐ仲良くなれる」
女の子「ふふ」
男の子「よーし、がんばって勝つぞー!」
女の子「がんばってね」
男の子「いつかさ」 女の子「うん」
男の子「いつか、今日みたいに卒業する時が来るんだよね」
女の子「うん」
男の子「それで、何年も一緒だった皆と離れ離れになるのかな」
女の子「うん」
男の子「……女ちゃんは」
女の子「私はいるよ」
男の子「え?」
女の子「私はずっと、男君のそばにいるよ」
男の子「……そっか。じゃあ、僕も」
女の子「ほんと?」
男の子「うん。約束」
女の子「ふふ、約束」
少年「いつかさ」 少女「うん」
少年「いつか、同じクラスになりたいね」
少女「うん」
少年「それで、お昼とか一緒に食べようね」
少女「うん」
少年「友達ちゃんと作るんだよ?皆と仲良くね?」
少女「うんうん」
少年「……そろそろ教室に戻らないとだから、手、離してくれないかな」
少女「だーめ」
少年「いつかさ」 少女「うん」
少年「いつか、球拾いから成長してバッターになるんだ」
少女「うん」
少年「それで、ホームランを打ちまくる」
少女「うん」
少年「体力はまだまだだけど、小学校と比べたら少しは成長したし、いけるはず」
少女「うんうん」
少年「だからまずは球拾いを極める!見てて、ここに落ちてる球全部拾ってくるから!」
少女「はい。全部拾ってきたよ」
少年「僕の話聞いてた?」
少年「いつかさ」 少女「うん」
少年「いつか、僕にもモテ期が来ると思うんだ」
少年「うん」
少年「それで、僕と付き合うことになる子と一緒に遊んだり、ご飯食べたりする」
少女「うん」
少年「その時の為に色々準備してるんだけどね」
少女「うんうん」
少年「女ちゃんと一緒に居ると女の子どころか、皆どっか行っちゃうんだ」
少女「不思議だね」
少年「そうだね。……あ、狸君!一緒にご飯でも……何で逃げて行ったんだろう」
少女「不思議だね」
少年「そうだね」
少年「いつかさ」 少女「うん」
少年「いつか、バッターになるって言ったよね」
少女「うん」
少年「それで、ホームラン打ちまくるって言ったじゃん」
少女「うん」
少年「なんと」
少女「うんうん」
少年「見事ベンチ入りしました!」
少女「わー、おめでとう」
少年「驚いた?ねぇ驚いた?」
少女「そうそう、私も野球部のマネージャーになったよ」
少年「」
少女「驚いた?ねぇ驚いた?」
少年「」
少年「いつかさ」 少女「うん」
少年「いつか、同じクラスになろうねって話したよね」
少女「うん」
少年「それで、僕たち二年生になったよね」
少女「うん」
少年「同じクラスになったね」
少女「うんうん」
少年「嬉しいんだけど僕の隣の席はヤンキーちゃんの席だから女ちゃんの席じゃ」
少女「うんうん」
少年「聞いてる?」
少女「うんうん」
少年「いつかさ」 少女「うん」
少年「いつか、運動神経良くなりたいって話したでしょ?」
少女「うん」
少年「それで、昨日体力測定あったじゃん」
少女「うん」
少年「小学生の時と比べられないくらい成長しててね。びっくりしちゃった」
少女「うんうん」
少年「ひょっとしたらさ、本当にレギュラーになれたりして……なんてね」
少女「……」
少年「どうしたの?」
少女「なれたりして、じゃなくて、なろうよ」
少年「え?」
少女「男君ならできるよ。私は男君の事全部知ってるからわかるもん」
少年「……うん。そうだね。なる。僕、なるよ。レギュラー取る!」
少女「うんうん」
少年「でも本当に全部知ってるの?流石に僕の昨日の晩御飯は」
少女「オムライス」
少年「え?」
少女「その前の日は親子丼」
少年「え?」
少女「その前の日は野菜炒めで、その前は」
少年「待って。ねぇ待って」
少年「いつかさ」 少女「うん」
少年「いつか、女ちゃんが休んだ時にヤンキーちゃんが教科書を忘れちゃってね」
少女「うん」
少年「ちょっと怖かったけど机くっつけて教科書見せたんだ」
少女「うん」
少年「そしたら、ヤンキーちゃん意外と面白い子でね。二人で話してたら先生に怒られちゃって」
少女「うんうん」
少年「怖い子だと思ったけどとってもいい子だったよ。だからその振り上げた腕をね」
少女「うんうん」
少年「ヤンキーちゃんも対抗しないで。待って止まって。狸君どこ行くの待って僕を置いていかないで」
少年「いつかさ」 少女「うん」
少年「いつか、馬鹿は風邪引かないって話したじゃん」
少女「うん」
少年「それで、僕は馬鹿だから風邪引かないなって思ってたんだけど」
少女「うん」
少年「見事に引いちゃったね。ごめんね?宿題持ってきてもらっちゃって」
少女「気にしないで。大丈夫?」
少年「うん。ありがとう」
少女「良かった。こっちこそありがとうね」
少年「うん。何に対してのありがとうかわからないけど、とりあえずその落ちてた僕のシャツカバンにしまうのやめようよ」
少女「ふふ」
少年「怖い怖い怖い」
少年「いつかさ」 狸「」
少年「いつか、狸君と仲良くなった時に話したと思うけど」
狸「」
少年「それで、女ちゃんはほんといい子だったんだよ。いや今もいい子だけどね?」
狸「」
少年「でも最近というか、入学してから何か変わったというか」
狸「」
少年「狸君、何か知らない?僕には検討もつかなくて」
狸「」
少年「狸君?」
狸の中から少女「うんうん」
少年「」
少女「びっくりした?」
少年「」
少年「……ハッ!?夢か……」
少年「いつかさ」 少女「うん」
少年「いつか、レギュラー取るって言ってたじゃん」
少女「うん」
少年「それで、昨日監督に呼び出されてね」
少女「うん」
少年「……レギュラー、なっちゃった」
少女「おめでとう」
少年「あはは、ありがとう。でも、これからだね。これからがスタートだ」
少女「うんうん」
少年「ねぇ」
少女「うん?」
少年「ありがとね」
少女「……私も、ありがとう」
少年「いつかさ」 少女「うん」
少年「いつか、モテ期が来るって話したじゃん」
少女「うん」
少年「それで、昨日練習してたらさ」
少女「うん」
少年「後輩の女の子に声かけられてね。告白されちゃった」
少女「うんうん」
少年「でも今は野球に集中したいからちゃんと断っておいた」
少女「うん」
少年「?」
少女「うん?どうしたの?」
少年「いや、なんていうか、嫉妬?みたいにならないかなーって」
少女「大丈夫だよ」
少年「うん?」
少女「男君が絶対断るって、私知ってたから」
少年「」
少女「ふふ」
少年「」
少年「いつかさ」 少女「うん」
少年「いつか、試合に出れるかもって思ってたんだ」
少女「うん」
少年「それで、明日試合じゃん」
少女「うん」
少年「緊張しすぎて眠れない」
少女「うんうん」
少年「だからと言ってね、一人で眠れないとは言ってない」
少女「うんうん」
少年「電話で眠れないんだって言っただけなのに、わざわざお泊り道具持って家に来るとは思わなかった」
少女「大丈夫」
少年「僕としては大丈夫じゃないかなぁ。両親の視線が痛い」
少年「いつかさ」 少女「うん」
少年「いつか、ヤンキーちゃんと話しててさ」
少女「うん」
少年「僕に気があるのかなーって感じでいっつも近かったから緊張してたんだけど」
少女「うん」
少年「まさか狸君の事が好きとは思わなかった。しかも両思いと来た」
少女「うんうん」
少年「……お似合いだよねあの二人。いいなぁ」
少女「……羨ましい?」
少年「んー。そうでもないかな」
少女「?」
少年「だって、僕の側にはいつも女ちゃんがいるから」
少女「」
少年「えへへ。いつもの仕返し」
少女「」
少年「あれ?……息してない」
少年「いつかさ」 少女「うん」
少年「いつか、僕が活躍した試合を両親と弟に見せようとずっと思ってたんだ」
少女「うん」
少年「それで、今日僕は活躍した。皆、喜んでくれるって思ってた」
少女「うん」
少年「でもさ」
少女「……」
少年「生きて見てくれなきゃ、何の意味もないじゃん」
少女「……うん」
少年「……どうしてかな。どうして、今日に限って事故に遭うのかな」
少女「……」
少年「ねぇお父さんお母さん。弟。僕、取ったよ。ホームラン、取ったよ」
少女「……」
少年「僕頑張ったよね?ねぇ女ちゃん、僕、がんばって……うわぁぁぁぁぁぁ!!」
少女「……うん、頑張ったよ、男君は……」
少年「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
男性「いつかさ」 女性「うん」
男性「いつか、僕がホームランを取った日があったじゃん」
女性「うん」
男性「それで、すごく嬉しくて、そしてすごく悲しい日だった」
女性「……」
男性「あの時思ったんだ。僕の知らないところで、僕の大切な人が亡くなっていくのは嫌だって」
女性「うん」
男性「だからさ」
女性「うん?」
男性「僕と、ずっと、ずっと、一緒に居てほしい。これから先も」
女性「……」
男性「ダメかな」
女性「……昔、約束した事覚えてる?」
男性「一緒にいるって約束?」
女性「うん。その時から、答えは出てたよ」
男性「……そっか」
女性「うん」
男性「……それじゃ、これからもよろしくね」
女性「うん。こちらこそ、宜しくお願いします」
お爺さん「いつか」 お婆さん「はい」
お爺さん「いつか、お前に聞きたい事があったんだ」
お婆さん「はい」
お爺さん「それで、お前は、私と居て幸せだったか?」
お婆さん「……」
お爺さん「こんな小さい頃から一緒に居て、ずっと一緒に歩んで」
お婆さん「……」
お爺さん「お前の好意に気付いたのもあの日以降で、鈍い男で、自分勝手で」
お婆さん「……」
お爺さん「成人してからもお前には苦労ばかりかけて……私との人生は、幸せだったか?」
お婆さん「……貴方」
お爺さん「ん」
お婆さん「かっこつけようとしてますけど、カッコ悪いですよ」
お爺さん「」
お婆さん「貴方だから、私はずっと一緒に居ました。貴方だから、私は今日まで生きてこれました」
お爺さん「そんな大げさな」
お婆さん「いいえ。あの日、私がいじめられているところを助けてくれた貴方。貴方がいなければ、私もここにいなかった」
お婆さん「ありがとう。男君」
お爺さん「……僕の方こそ、ありがとう女ちゃん」
お婆さん「ふふ、久々にその呼び方してくれましたね」
お爺さん「恥ずかしいからもうしないぞ」
お婆さん「うんうん」
お爺さん「そんな顔しても絶対に……待って待って女ちゃん待って怖い」
お婆さん「ふふ」
お爺さん「はぁ、昔と本当、変わらないな」
お婆さん「男君こそ」
お爺さん「……これからも、一緒に居よう」
お婆さん「ふふ……うん」
「いつか」 「うん」
「いつか、僕のお爺さんが昔話をしてくれてね」
「うん」
「それで、お爺さんとお婆さんはずっと一緒に居たんだって。小さい頃から」
「うん」
「すごいよね。僕、感動してね。僕もそうなりたいなって思ったんだ」
「うんうん」
「ねぇ」
「うん?」
「僕たちも、ずっとずっと、一緒に居ようね」
「……ふふ、うん!」
このSSへのコメント