2018-05-08 16:07:03 更新

概要

穂乃果をどうにかしたいという気持ち。穂乃果自身の葛藤。そのぶつかり合いです。


なんだかこの感覚は今までに感じたことのないような気がする。



私自身がそこにいないようなそんな感じ。



ちょっと前から襲われているこの感覚は



最初は嫌だったけど、今は少しだけ違う。



ふと立ち止まって周りを見渡した時、



自分の景色と人の景色が違っていたら



私はそれを怖いと感じるだろう。



でもそれは



自分が人から見られる姿と



自分が自分を見る姿が違ったほうが



本当の意味では怖い。



海未ちゃん



ことりちゃん



私は2人のこと、分かってなかったんだね。



ううん、違う



私は



私のことが分かっていなかったんだ。



8月末日



夏休みも終わりが見えてきた今日この頃



私たちは少し前のように集まって勉強会をしていない。



いえ、勉強会が無くなったのではなく、



穂乃果が参加しなくなってしまいました。



ことりの問いかけは、思いのほか穂乃果に響いた部分があるらしく



連絡すれば返事こそあれど、私たちと会うことは無くなりました。



穂乃果「今は少し距離を置きたいんだ」



穂乃果はそう言って外に出ようとしません。



しかし、家では特に変わった様子もないと雪穂から聞いています。



ですが穂乃果



私は、私たちは諦めません。



海未「ことり、穂乃果のことなのですが・・・」



ことり「うん、少し静観する形をとってきたけど、やっぱり黙っているだけじゃ解決しそうにないね」



海未「ええ、やはり根本的な部分を穂乃果から聞き出さないといけないでしょう。そのためにもあの2人にも力を借りましょう」



ことり「そうだね、私は絵里ちゃんに大体のことは話しておいたよ。海未ちゃんは希ちゃんに伝えてくれた?」



海未「はい、今日は2人も来てくれるはずです。ですが、何度も頼ってしまい申し訳ないです」



ことり「海未ちゃん大丈夫だよ。むしろそんなこと言ったら怒られるだけだと思うなぁ」



海未「それもそうですね。私たちの頼もしい先輩であり友人であり仲間ですからね。甘える部分は甘えましょうか」



ことり「うん、海未ちゃんからそう言ってもらえると嬉しいと思う」



私たちは変わることが出来た。自分の中の自分を閉じ込めずに伝えることが出来た。



私はことりに、ことりは私に。



そして2人とも伝えられたのは穂乃果あなただけなのです。



だから穂乃果。



今度はあなたの気持ちをぶつけてほしい。



あなたの本当の気持ちを・・・



そんな時、呼び出しのインターホンが鳴る。



海未「2人が来たようですね。迎えに行ってきます」



今日は私の家で集合することになっていました。あの2人が来るのはいつぶりでしょうか?



絵里「こんにちは、海未、ことり」



希「やっほー」



海未「2人ともこんにちは。今日はご足労かけましてすみません」



絵里「海未は相変わらずね。私たちに遠慮することなんてないのに」



ことり「ほらね、海未ちゃん」



海未「ことりの言う通りのようですね」



不思議な顔で2人はこちらを見ています。やはり甘えるところでは甘えることにしましょうか。



海未「さて、さっそくですが本題に入ってもよろしいですか?」



絵里「ええ、そのために来たわけだし、何より穂乃果が心配よ」



希「相談してくれた時から、穂乃果ちゃんには変化はない感じ?」



海未「はい、最近は会ってすらいませんので詳しいことは分かりませんが」



ことり「前以上に深く考えすぎているみたいなの」



絵里「そもそも、あの穂乃果がなぜそんなにも考え込んでしまっているのかしら?」



ことり「穂乃果ちゃんはどういった自分が皆から求められているかを悩んでいたの」



希「求められている自分に悩む?自分の存在意義とかかな?」



海未「いえ、穂乃果の場合はそういったことではない気がします」



絵里「そう考える理由があるのかしら?」



海未「穂乃果は、基本的にはその時の感情を優先して行動するタイプです。思い立ったら行動とでもいうべきでしょう」



希「まあ、それは今までもそうやったし、それが穂乃果ちゃんって感じもするけどな」



ことり「それが私たちの穂乃果ちゃんのイメージ。それは間違いないの、でもね」



海未「人から見た自分のイメージと自分自身が思う本当の自分が違うことは決して少なくないはずです」



希「例えば、真面目でなんでもこなすイメージがある絵里ちが、本当は暗いところも苦手なポンコツだったみたいなこと?」



絵里「希・・・」



ことり「それは極端かもしれないけど、大体はそんな感じかなぁ」



海未「穂乃果の場合は自分がどういった人間なのかを考える間もなく、これまで行動し、そしてそれは結果として良い方向へと進みました」



海未「ただ、それはよく言えば行動派、悪く言えば考えなしとも捉えることもできます」



絵里「要するに、あくまで予想の範疇ではある話だけど、穂乃果は今まで考えなしに行動してきたこと全てについて、一気に考え始めてしまった可能性があるということかしら?」



ことり「やっぱり絵里ちゃんは凄いね。私たちはやっとそうかもしれないってたどり着いたのに」



絵里「ことり達がそういった考えの下で発言しているから、こちらも分かりやすいだけよ」



希「昔の穂乃果ちゃんのことはウチらには分からないけど、去年スクールアイドルとして活動していただけでも、穂乃果ちゃんが及ぼした影響力は凄かった。ということは・・・」



海未「はい、良し悪しを考えずとも、穂乃果は自分によって影響を受けた、影響させてしまった人たちへの行動を一つひとつ考え直しているのかもしれません」



絵里「だとしたら、今の穂乃果はもしかして・・・」



ことり「自分では処理できない量のことを一度に処理しようとしている」



海未「しかも、穂乃果自身がその問題に向き合うことが出来ていない」



絵里「そんなことになったら、自分を見失ってしまうじゃない。そんなの耐えられないかもしれない」



海未「ええ、だからこそ今までとは違う自分を作ろうとしている。新たに自分の意識下で皆から見られる高坂穂乃果のイメージを再構築しようと」



希「そんなこと考えてできるものなん?ウチやったら壊れてしまいそうやけど」



ことり「だから心配なの。私から見ても穂乃果ちゃんがいつ壊れてもおかしくない状態だと思うから」



絵里「だったら早く穂乃果を開放しないと!」



海未「ダメなんです」



絵里「なぜ!?」



海未「まずはこれがあくまで私たちの想像の話だということ。そして先ほども言ったとおり、想像が当たっていたとすれば穂乃果はこの問題と向き合うことが出来ていません」



ことり「要するに、直接この事を穂乃果ちゃんに言っても・・・」



希「むしろ穂乃果ちゃんを混乱させることになるやろうな」



絵里「でもだからって・・・」



海未「今の穂乃果は簡単に言えば、1+1が2であること。それがなぜそうなったのか、本当にそれで正しいのか分からない状態だと思われます。そんな状態の穂乃果に1+1は2でしかない、それ以上の答えは無いと言っても何の解決にもならないのです」



ことり「きっと穂乃果ちゃんが求めているのは、今まで自分のしてきたことが、穂乃果ちゃん自身が明確な意思を持ってしてきたことである確信だと思うの」



希「でも、それこそ穂乃果ちゃんにしか分からないことだと思うんやけど」



海未「そこが問題なのです。私たちからすれば、穂乃果の行動は、私たちの知っている穂乃果がしてきた行動に間違いありません。ですが、何度も言うようにそれは私たちがイメージする穂乃果の行動でしかないため、穂乃果からすれば、あくまでそれこそが高坂穂乃果であり、そう自分で考えられない今の自分は高坂穂乃果ではないと考えるようになってしまうのです」



ことり「穂乃果ちゃんは私に言ったの。それがことりちゃんが求める高坂穂乃果なんだねって」



絵里「話を聞く限り、これは穂乃果に話をするだけではどうにもならない問題にも感じてきたわ」



希「そうやね、単なる悩みではなくて、穂乃果ちゃんが穂乃果ちゃんであるための解決策が必要やと思う。そんなものがあるのかって感じやけどね」



海未「私とことりもそれを悩んでいました。ですが、このままでは一向にいい方向へは向かう気がしません。そこで2人に提案があります」



ことり「確実な解決策になるとは思えないのだけど、出来ることは全部やりたいから聞いてほしい」



私とことりは悩んだ末に出した方法を2人に説明しました。



分かりやすく要点をまとめ伝える。2人にはそこまで必要なこととは思いませんでしたが、



内容が分かるにつれて、顔色が曇っていく様子はすぐに分かりました。



説明し終わったあと、少しの間の沈黙。そして



絵里「内容は分かったわ。ただし、あまり穂乃果に負担がかかるようなことは出来ないわよ」



希「ウチも穂乃果ちゃんのことを追い込むようなことはしたくないかなぁ」



海未「2人の気持ちも分かります。ですが・・・」



絵里「私が言いたいのは、あなた達2人がそれしかないというのならば協力する。ただし、あまりにも負担が大きいようなら例え途中であっても私は止める」



希「絵里ち・・・」



絵里「あなた達が穂乃果を想う気持ちを改めて見せてもらうわ。その想いの強さで私は私の判断をして行動する。それでもいいかしら?」



海未「それでかまいません。私たちも穂乃果を追い込みたいわけではありませんので」



ことり「海未ちゃん、大丈夫だよ。私たちはそんな簡単に答えを出したわけじゃないんだから」



海未「はい、私たちの想いを見せてあげます。そして、穂乃果にも届けてみせます」



絵里「分かったわ。なら実行するのは来週でもいいかしら?少し落ち着いて考えてみたいの」



海未「はい、来週と言わず絵里と希が協力してくれるタイミングで大丈夫ですよ」



希「ありがとうなぁ、海未ちゃん。ウチも少し整理しておくよ」



ことり「2人とも無理言ってごめんね」



絵里「いいえ、話してくれてありがとう。海未、ことり」



希「ウチらで良かったらいつでも相談のるからね」



海未「2人とも本当にありがとうございます」



穂乃果の話を終え、その後は4人で日ごろの話などをして談笑しました。



今日は来ていないμ'sのメンバー



花陽、凛、真姫、にこ



そして穂乃果。



誰がいなくてもダメなんです。



μ'sとしての9人は



誰一人欠けてはいけない。



μ'sを始めて、そして終わらせた。



穂乃果、あなたが一番分かっているはずです。



だから、もう一度



穂乃果を。





同日 帰り道



絵里「はぁー・・・」



希「どうしたん?そんな大きなため息ついて」



絵里「私、ダメだなぁって思ってたのよ。2人からの相談をあんな風に返してしまって」



希「それが2人のためになるって絵里ちは思ったからそうしたんと違う?」



絵里「それは考えすぎよ。私はその時に思ったことを言っただけ。だからこそ今ため息も出るのよ」



希「まぁ、絵里ちがそう思ってるならそれでもええんじゃない?ウチはそうは思わないけどね」



絵里「どちらにしても穂乃果に負担のかかることだけは避けたいのは事実よ。まだ今の穂乃果がどうゆう状態か現認したわけではないのだから」



希「そうやね。ウチらにも出来ることは限界がある。最後のところは海未ちゃんとことりちゃんに任せないとなぁ」



絵里「だからこそ私たちがやれることは全てやるつもり。穂乃果のため、いえ・・・3人のためにも」



希「絵里ち、大丈夫?無理してない?」



絵里「大丈夫よ、あの頃とは違うわ。希がいて、皆がいるから」



希「ならええよ。ウチは絵里ちにはやりたいようにやってほしいだけやから」



絵里「ありがとう、希」



希「ふふ、どういたしまして」





次の週 日曜日



ことり、絵里、希との話し合いから1週間が経ち、もう8月も残すところ数日となりました。



あの後、絵里と希からはすぐに返事をもらい、本日に穂乃果の下へ行くこととしました。



最近は穂乃果に会っていなかったため、日付の調整や断られることも覚悟し早めに連絡を取りました。



案の定、穂乃果は最初会うことを拒みましたが、どうしても会って伝えたいことがあると念を押したところ、



そこまでして断る理由もないためか会う約束をすることが出来ました。



このこと自体、おかしなことだと私は思います。



穂乃果と会うこと。



なぜこんな当たり前のことが出来なくなってしまったのでしょうか。



私は改めて事の重大さを感じながら、待ち合わせ場所に向かいました。



同日 音ノ木坂学院 3年生 教室



穂乃果「海未ちゃんとの約束は夕方4時。なんで夕方なのかな。何を伝えたいのかな。」



穂乃果「穂乃果は海未ちゃんのこと、海未ちゃんが考えてること分からないんだ」



穂乃果「行けば分かるのかな。それとも終わっちゃうのかな」



穂乃果「その前に別件を済ませておかないとね」



今日は海未ちゃんとの待ち合わせの前に先客がいる。



しかも、待ち合わせ場所が音ノ木坂で同じなんてどうゆうことだろう。



時間が違うから良かったけれど、



あの2人はもう卒業してしまったから、



会うのは本当に久しぶり。



でも、どんな穂乃果で会えばいいのかな。



私の考えを遮るように、教室の扉が開く。



絵里「久しぶりね、穂乃果」



希「穂乃果ちゃん、こんにちは。今日はわざわざごめんなぁ」



穂乃果「ううん、久しぶりに2人に会えて嬉しいよ」



絵里「少し前まで私たちの教室だったのに、今では何だか別世界のように感じるわね」



希「そうかなぁ、絵里ちも歳を取ったってことやな」



絵里「もう・・・希のほうが誕生日早いじゃない」



2人は変わらずに仲が良い。高校から一緒になったのに。



穂乃果「ところで、私に用って何かな?」



絵里「そうだったわね。今日は改めて穂乃果、あなたにお礼を言いに来たのよ」



穂乃果「お礼?いったい何の?」



希「穂乃果ちゃんに対する私たちからのお礼。気づいてないかもしれないけど結構言いそびれてたんよね」



お礼をされるようなことをしたつもりはない。誰に対してのお礼なの?



絵里「少しだけ去年の話をするわね。私たちが3年生、穂乃果はまだ2年生だった。学校が廃校になる知らせが出るまで、穂乃果がスクールアイドルを始めるまで、私たちはほとんどといっていいほど関係性はなかったと思う。現に穂乃果は私が生徒会長だということも知らなかったくらいだもの」



絵里「ことりに理事長の話を聞きに行ったあの時、穂乃果は海未とことりといつものように一緒にいた。私はそのときはその風景に何も感じることは無かったわ。あなた達のことを何も知らなかったから、そう思うのも仕方ないかなって今でも思う」



絵里「それから意見の違う私たちは何度もぶつかり、あなたが挫折しそうな時でも追い込むように私はあなたに質問した。どうするつもり?と。あなたは何て言ったか覚えているわよね」



覚えているよ。あの時はその気持ちしかなかった。海未ちゃんとことりちゃんと一緒に歌って、踊って、廃校のこととか考えてなくて、ただ、やりたいって気持ちでいっぱいだった。



絵里「あの場にはμ'sのメンバーが全員いた。アイドルのライブを見たかった花陽、何も知らず花陽を追ってきた凛、自分の曲が気になった真姫、まだ素直になれず未練のあったにこ、そして・・・」



希「ウチもいた。講堂の中には入らなかったけどね。あの時がμ'sとしてのスタートだったって思ってる。曲とは反対にスタートダッシュではなく、完敗からのスタート。それでもウチには十分だったなぁ」



絵里「私は正直大した出来にもならないと思っていた。周りの様子から生徒が集まらないことも分かっていた。だからあの場にいたのは、自分が正しかったという確信を持つためだったの。だからこそ歌い終えたあなた達に聞いたのよ」



絵里「なのに返ってきた答えは講堂をいっぱいにしてみせる。やってて良かった、やりたいからやる。何一つ諦めるところかさらに前を向いて進み始めた」



絵里「そこからは花陽、凛、真姫、にことメンバーを増やしていった。周りからも支持され始めて、私は正直どうしたらいいか分からなくなって、半分意地になっていた。海未に言ったことも本音であり意地でもあった」



あの頃の絵里ちゃんは私たちの踊りをそう言えるだけの自信があったもんね。だって凄かったもん絵里ちゃんの踊り。



絵里「そんなことを言われても、むしろ言われたからこそ私に指導してほしいと言ってきたのは驚いたわ。何もかも私の思うように事が運ばなくて自暴自棄になりそうだったわ」



希「あの時の絵里ちは本当に見ていて辛かった。志が高いことが弊害になって周りが見えていなかった。絵里ちがすることは上手くいかないのに穂乃果ちゃん達はどんどん学校のためになっていった」



絵里「そして希に言われたの。絵里ちの本当にやりたいことは!?ってね。そしたら聞こえてきたの、あなた達が練習する声が。」



絵里「結果論と言われればそうかもしれない。でも、穂乃果はやりたい気持ちを全面に出して前に進んでいた。それがあの時の私には本当に眩しく見えたわ」



絵里「穂乃果がμ'sを辞めると言ったとき、私は素直な気持ちをあなたに伝えた。私の弱さをあなたに伝えた。そしてあなたに救われたことも伝えた。変わることを恐れない勇気をあなたは私にくれた。何度でも言うわ。あなたの差し出してくれた手に私は救われた」



絵里「穂乃果、今あなたが座っている席。あの時私が座っていた場所と同じね」



たしかにそうだ。絵里ちゃんはあの時ここに座っていた。



絵里「その席がいけないのかしら?穂乃果の顔をそんなにも雲わせてしまっている」



私の顔が曇っている?それっていったいどんな顔?



絵里「海未とことりから聞いたの。あの時、穂乃果は言った。どんなことよりも歌うことが好きでそれだけは譲れない、迷惑をかけてしまうかもしれないけど追いかけていきたい。いつか離れてしまうかもしれないけど、一緒にスクールアイドルをやりたいと」



絵里「あなたは私やことりのように離れようとする人には自分の気持ちをまっすぐに伝えて一緒にやろうと言える気持ちがある。にこや真姫のように素直になれない人にはその道を相手に委ねる言葉や行動が出来る」



絵里「何でもは出来ない、失敗もする、迷惑もかける。それが当たり前で穂乃果ももちろんそうだった。それに気づいたからこそ新たなスタートが切れたと私は思う」



絵里ちゃんが思う穂乃果。それが穂乃果なのかな。



ことりちゃんに言った色んな自分を全部含めてその人が作られているということ。



だけど私はどの穂乃果にも自分だという自信がない。



私と穂乃果ではひとつになれない。



だからこそ私は私であろうとしているの。



希「穂乃果ちゃん、これはウチの独り言だから聞き流してくれてもええよ」



希「ウチはずっと1人だった。小さいころから転校ばかりで、家に帰っても1人ぼっちだった。それが普通で当たり前、だからその境遇を恨んだりしたことはなかったんよ。でもね、穂乃果ちゃんみたいな信頼できる幼馴染みがいる子はやっぱり羨ましかったんやと思う。音ノ木坂に入って、絵里ちと出会って、1人で頑張るにこっちを見てきて、生徒会に入って、穂乃果ちゃん達が後輩になった」



希「ウチね、なんでも知ってるように行動してきたけど、本当はそうじゃないんよ。ずっとずっと怖かったから、1人になるのが怖かったから、そうゆうふりをしてきただけなんよ。同じような話はスノハレを作った時にも聞いてもらったと思う。1人だった自宅には、皆がいてくれて、1人で食べたご飯は、皆で食べるほむまんに変わってた。それが凄く嬉しかった、やっと友達が出来たって思えたんや」



希「全部が全部上手い方向に進んだわけやないけど、それでも今のウチがいて、皆がいて、穂乃果ちゃんがいる。ウチにとっては穂乃果ちゃんがいてくれたからとか、そうゆう話をしたいんやない。あの時の9人はその9人でしかないんや」



希「だからね穂乃果ちゃん。ウチは今までのことが誰のおかげとか関係ない。今までのことを考えるよりもっともっとこの9人で色んな事がしたい。ウチの大切な友達とこれから先も歩んでいきたい。例え別の道に進んだとしても、今までのことがなくなるわけやないんだからね」



穂乃果「希ちゃんはもう怖くないの?怖いことはないの?」



希「ないわけじゃないかな。ないわけじゃない。でも、これから先もっとたくさんのことを経験するにしても音ノ木坂での出来事には及ばんと思ってる。だから怖いことよりも何かあっても大丈夫って気持ちのほうが強いんや。だって何かあっても皆がいてくれるから」



穂乃果「でも私は、前みたいに自分の気持ちに素直になれないかもしれない。自分自身が何か分からない・・・考えても考えても私は穂乃果が分からないの!!」



希「穂乃果ちゃんが穂乃果ちゃんのことを分からないのはおかしな話やね。まあウチには何でそんな考えになっているかは分かるんやけど」



穂乃果「!!!」



絵里「希、穂乃果が混乱してしまうわ」



希「行き過ぎだと思ったら絵里ちが止めてくれればええ。ウチはウチの気持ちを伝える」



絵里「希・・・」



希「穂乃果ちゃんは今まで自分がしてきたことに対して、無我夢中で深く考えることをしていなかったんや。それが悪いわけやない、ただ良いことでもない」



希「人間だれしも自分のすることにはそれなりの責任というものがある。もう高校3年生の穂乃果ちゃんなら分かっとるとは思う。その責任というものは自分に対して行うことよりも、他人に影響する部分において大きく発生するものや。穂乃果ちゃんはその影響を知らず知らずの内に広げていったんやね」



穂乃果「私が誰かに影響していたの・・・、私の行動が・・・」



希「何も穂乃果ちゃんの行動が悪いことだったわけやない。むしろウチや絵里ちに関しては感謝してもしきれないことをしてもらったと思ってる。多分やけどμ'sの皆もそう思ってるんじゃないかな」



穂乃果「だったら私はいったい何に悩んでいるの?」



希「穂乃果ちゃん気づいてる?さっきから自分のことずっと”私”って呼んでること」



穂乃果「私は私だからおかしくないよ・・・いつだってそうだったし」



希「ただの呼び方かもしれない。でもね、私と穂乃果っていうのでくくりをつけてるんと違う?」



希「皆が望むのはμ'sのリーダーで、生徒会長で、ちょっと抜けたところもあるけど芯はしっかりしている”高坂穂乃果”であって”私”ではないって」



そうだ、その通りだ。だから私は穂乃果ではなく私という存在を確認したいのだ。



だから自分に出来ることをやり始めた。



μ'sがない今、学生の本分である勉強をしたり、約束事をしっかり守ってきた。



そうすることで私がそこにいることを確かめてきた。



今までの高坂穂乃果がしてこなかったことをすることで、



私は私を作ろうとしてきたの。



希「ウチはそれが間違っているとは思わないんよ。自分って何なんだろうって思うことは間違っていない。だからそれ自体は間違いじゃない」



穂乃果「だったら私はどうすればいいの?私ではなく、今までの高坂穂乃果に戻ればいいの?」



希「それはウチからは言えない。ウチの気持ちはあくまでウチだけの気持ち。穂乃果ちゃんに強要することはできんからね」



穂乃果「でも私は分からないよ。どうしたらいいのか分からないよ」



そう発して2人を見たとき、私の目の前に1つの手が差し出されていた。



絵里「穂乃果、いえ高坂穂乃果。あなたが分からない事は教えてくれる人がいる。だから逃げないで、あなたがあの2人にしてように、あなたも2人に頼りなさい。誰よりもあなたを大切に想う2人がいるはずよ」



私を大切に想う2人・・・



絵里「私のこの手はあなたを救い出すことは出来ないと思う。それでもあなたを連れていくことは出来る。今のあなたを連れ出すことは出来る。だから・・・」



希「久しぶりにウチらのわがまま聞いてくれたら嬉しいな」



私にはまだ分からない。自分がどうあるべきなのか。



でも、今は知りたい。



私は高坂穂乃果。



それだけを確かめたい。



穂乃果「絵里ちゃん、希ちゃん行こう!」



握った手は温かく、どこか安心する気持ちにさせてくれた。



今は向かおう。



海未ちゃんのところへ。


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