2019-01-31 17:18:05 更新

概要

描写を一切しない自分。地の文の練習用短編



私はとある港、元々は鎮守府があった場所で彼を待っていた。



時期は関係なく、きっと彼は何時で会っても来てくれたに違いない。と、勝手に思っている。



約束の時間、それの随分前に到着していたのは、私の期待の裏返しだったのだろうか。とにかく、早く会いたかった。



ただ、随分前に来たのは良かったが、時間を過ぎてもなかなか現れなかった事には少し驚く。



しばらくして、口元に髭を蓄え、顔には幾らかの皺が刻まれた、初老の男性が現れる。遠目に見た時は若々しく、その変化をいざ近くで見ると歳月を感じさせた。



人違いか、軍服と重ねられた階級章を見ればそうではない事は確かだった。それ程までの変化だった。



「 お久しぶりです 」



私は嬉しそうに、いや、実際嬉しかったのだが、驚きの感情がそれを上回っていたのだと思う。相手は照れ臭そうに、しかし慣れているようだった。



「 会えて嬉しい 」



また驚いてしまった、以前の声は、聞くたびに身が引き締まる様な、如何にも軍人らしい凛々しいモノであった。それとはかけ離れていたので、当時の癖で身構えていた分、尚更。



初老の男性、その声にかつての面影は無かった。弱々しく懇篤であったのだ。話す言葉に困ったのか、少し間を置いて。



「 たまに他の娘も来るんだ 」



しかし、他の娘という言葉に引っかかった。今日は私が来たのに、元艦娘は一括と捉えているのだろうか。私はムッとしながら。



「 どういう意味ですか 」



男性は気が付いた様に慌てて、「すまない」と付け足した。ただ単に不器用なだけなのだ。歳月は、彼自身を変えなかったことに少し安堵しながら。



「 握手、しませんか 」














「 握手だと? 」



如何にも軍人、横にも縦にも広く、男性らしい体格をした青年は、不満足そうに。顔をしかめて、目の前の齢二十辺りの小娘に。



「 はい、握手です 」



一方の娘は、全く恐れずにそう続けた。男性の方がその気になれば、折ってしまいそうな華奢な腕を突き出した。男は少し迷って、ため息を一つ。



「 これで満足か 」



心底嫌そうに、嫌味も含めているのか、男の握る手に力が入る。しかし、娘の方は顔色一つ変えずに返した。



「 はい。満足です 」



手を離す直前、娘は軽く力を込める。男は、驚いた様に、そして手を引っ込めた。表情を少し顰めながら。



「 痛かったですか 」



意地悪そうに娘が問いた。



「 ちっとも 」



手を摩りながら男は答える。

















「 握手か 」



初老の男性、身体は歳月を経て皺を刻み、縮み、幾つかの古傷が軍人であった、或いは今も軍人であることを彷彿とさせる。



「 はい。握手です 」



一方の娘は、そう続けた。男の方が、その気になれば折られてしまいそうな、華奢な腕を突き出した。娘は少し驚いて、呼吸を一つ。



「 これで満足です 」



心底嬉しそうに、しかし何処か寂しそうに、娘の握る手に力が入る。そして、男の方は顔色一つ変えずに返した



「 そうか、満足か 」



手を離す直前、男は軽く力を込める。娘は、驚いた様に、そして手を引っ込めた。表情を少し綻ばせながら



「 痛かったか? 」



意地悪そうに男が問いた



「 ちっとも 」



手を摩りながら娘は答える



「 まだまだ現役だ 」   



にやり、と男がそう付け足せば。娘の方は何処か嬉しそうだった






終わり


後書き

同窓会で、恩師が年老いているのを見て、歳月を感じました


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SS好きの名無しさんから
2019-02-07 19:54:21

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2019-02-07 00:42:24

SS好きの名無しさんから
2019-01-31 20:59:38

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