2020-08-17 15:30:09 更新

私ははじめ事務員としてこの鎮守府に配属となった。


自ら試験を受けたわけでもなく上から話があったわけでもなく今は提督としてここの運営を任されている。


傍から見れは出世し羨ましがられると思うのだが実際はそうではない。


出撃こそ稀にしかないのに命の危険を感じる。


男の人ならばそれを更に感じるだろう。


女の私が任命されたのは合理的な判断だったと思いたい。


秘書艦


秘書艦とは提督の補佐を行う者の俗称だ。


秘書官と艦娘を合わせて秘書艦と呼んでいるらしい。


普通なら2、3人が専属で行うのだがここでは希望者が多く日替わりの交代制を布いている。


今日の担当は嵐だ。


正直に言って心の支えだ。


出会ったのは半年ほど前なのだが幼馴染のような感覚で接することができ、ちょっと問題のある子が多い中で“普通”の子だからだ。


問題って?


まぁ追々分かることですよ。


嵐「いよっ司令、各資源の在庫調べ終わったぜ。」


提督「ありがと~、助かるわ~。」


大規模作戦の後方支援が終わり残務処理に手をやいていた。


嵐はどんな雑用を頼んでも嫌な顔一つせず対処してくれる。


提督「嵐、嵐。」


嵐「んぉ?」


提督「ん!」


ちょいちょいと手招きをし近くに呼び寄せる。


提督「疲れたでしょ?肩揉んであげる。」


嵐「おっ、気が利くね~。お言葉に甘えるよ。」


提督の膝の上にちょこんと座り揉んでもらう。


嵐「お゛ぅ、気持ちいいねぇ~。」


提督「そーでしょそーでしょ?肩もみだけは上手いって皆からほめれてるんだ~。」


一見男の子に見えなくもない嵐だが程よい肉づきの太ももをはじめ躯体に触れるのはこちらも気持ちよく唯一の癒しと言っても過言ではない。


提督「あ~結構凝ってるね。」


嵐「そりゃあ艤装を担ぐからなぁ。」


提督「あれ?嵐、シャンプー変えた?」


嵐「よく分かったな。いつものやつ売り切れだったから違うの買ってみたんだ。」


提督「一応私も女の子だからね。結構分かるものよ?」


嵐「へぇ~。」


提督「おしゃれはしないの?私服ってどういうの持ってるの?」


嵐「私服?んー・・・そういえば私服ってないかもな。」


提督「うそぉ?」


嵐「休みの日も制服か支給品のジャージ着てるの多いしな。」


提督「なんでよ~、嵐可愛いのにおしゃれしないなんてもったいないよ。」


嵐「そうは言っても一応は非常時だろ。何があってもいいようにしておかないとな。」


提督「ンモー!真面目可愛いなぁ!」


嵐「わっ!?」


ぎゅっと抱き寄せ頭を撫でる。


至福の時だったが突き刺さる視線を感じる。


執務室のドアからだ。


そこに目を向けると・・・。


萩風「・・・。」


じっとこちらを見つめている。


提督「うわっ、びっくりした!」


嵐「はぎーじゃん、何してんだ?」


萩風「そろそろ休憩の時間だと思いお茶をお持ちしたのですが・・・。」


嵐「あぁもうそんな時間か。」


萩風「司令、どうぞ。」


提督「ありがとー。」


ポットから熱々のお茶を注がれ渡される。


嵐「はぎ、俺の分は?」


萩風「ありません。」


嵐「へ?」


萩風「司令に失礼を働く方の分は無いと申し上げたのですが?」


不敵な笑みで嵐を見つめる。


嵐「失礼ってなんだよ。」


萩風「あら分からないのですか?司令の部下である貴女が司令の上に座るなんていい身分になったものですね。」


提督「あぁ、これは私から提案したんだから別に失礼どうこうってことじゃないよ?」


嵐「そうだぞけちんぼー!」


萩風「・・・。」


提督(あっ、怒ってる・・・どうしたものか・・・。そうだ!)


提督「嵐、ちょっと降りてくれる?」コソコソ


嵐「ん、どうしてだ?」コソコソ


提督「いいから。」コソコソ


嵐「ん・・・?あぁ。」コソコソ


渋々提督の上からおりる。


提督「萩風ちゃん♪」


萩風「・・・はい?」


提督「こっちこっち。」


嵐にしたように手招きをし呼び寄せる。


萩風「なんでしょうか?」


提督「あっち向いて?」


萩風「あちら・・・ですか?」


提督「うん♪」


提督とは反対側のほうを指示される。」


提督「そぉい!」


萩風「きゃあっ!?」


嵐「おぉっ。」


脇の下から手を入れ強引に抱えて膝の上に乗せる。」


萩風「し、司令・・・なにを!?」


提督「萩風ちゃんはさぁ、とっても真面目で規律も守るしいい子だと思うよ?」


萩風「あぅ///」


提督「でも私ってこんなのだしそんなぎちぎちにしなくてもいいんだよ。」


萩風「し、しかし一度緩み切ってしまったら手遅れになるのではないでしょうか?」


提督「んー・・・まぁ大丈夫でしょ?」


萩風「な、なにを証拠に言うのですか?」


提督「証拠は・・・無い!けど皆を信じてるし第一、かわい子ちゃんたちとスキンシップ出来なくなるじゃん?」


萩風「そんな理由で・・・。」


提督「うん、こんな理由で。」ナデナデ


萩風「うぅ///」


嵐「おっ?はぎ、赤くなってんぜ?」


萩風「なってません。」


嵐「いーや、なってるね。」


萩風「嵐のバカぁ!」


嵐「わぁっ!?」


膝の上から飛び降り嵐を突き飛ばし逃げて行った。


提督「・・・大丈夫?」


嵐「ああ・・・。司令、はぎのこと嫌いにならないでくれよ?」


提督「なんで嫌いにならなくちゃいけないの?ちょっと怖かったけれど・・・。嵐こそ姉妹なんだから喧嘩しないでね?」


嵐「むぅ・・・努力はするよ。」


提督「うん、偉い偉い♪」



工作艦


工作艦とはその名の通り工廠にての作業を主とする艦娘のことだ。


ここには明石と言う子が着任している。


背丈は私より少し大きいくらいで容姿は絵に描いたようにかわいい。


腕も確かで木端微塵となった艤装でさえ完全に修復できる。


ただし性格は・・・。


こんな感じなのだ。


提督「明石ぃ~、明石ちゃん居る~?」


デイリー業務の進捗状況を確認の為、工廠を訪れる。


提督「どこに行ったのかなぁ・・・。って、資材が減ってないし今日の分やってないな。」


前日に準備しておいた資材が手つかずなことを確認する。


提督「もう・・・大淀ちゃんに怒られるの私なんだよぉ。」


明石「あれ?提督、こんな時間に何か用ですか?」


裏口のドアから彼女が入ってきた。


提督「何か用?じゃないでしょ~!デイリー業務ほったらかしにしてどこに行ってたの?」


明石「あぁすみません。ちょっと急用がありまして。」


提督「急用?」


明石「ええ。知人から深海棲艦を鹵獲したと連絡が入りまして調査に行ってました。」


提督「鹵獲?ここらで?」


明石「はい。W島付近で漂流していたそうですよ。」


提督「隣の管轄だねぇ、人型だったの?」


明石「そうですね、おそらくリ級かと。今回も私が引き取ってきました。」


提督「へぇ・・・今回も・・・もっ!?」


明石「あれ、言ってませんでしたっけ?」


提督「初耳!初耳だよ!?」


明石「いやぁ美味しそうだからつい。」


提督「おい・・・!?食べるの!?」


明石「やだな~提督、いつも食べてるじゃないですかぁ~」


提督「えっ・・・?」


明石「ほら、私がたまに料理してご馳走してたでしょ?」


提督「明石ちゃんの料理・・・、ハンバーグ?」


明石「正解です!深海棲艦のお肉って意外と臭みがなくておいしいですよねぇ。」


ニタァと笑いこちらを流し目で見つめてくる。


これが背筋が凍るほどの寒気を誘うのだ。


イ級とかならまだしも人型とあっては話が違う。


想像しただけで具合が悪くなる。


それを見て悦んでいる明石の姿があった。


明石(ふふ、これだから提督いじりはやめられないんです♪)


余談だが鹵獲した深海棲艦は明石がちょうきょ・・・ゲフンゲフン。


教育したのちに開放しているそうだ。


もちろん明石無しでは生きられないような體にして、だそうだが。


午後のひと時


今日も雲ひとつなく晴れた青空から容赦なく太陽が執務室をのぞき込む。


クーラーはあるが上から節電に努めるようお達しがあり正直効いているのかわからない。


提督「・・・私はアジ。アジの開きよ・・・。」


今日中に提出しなければならない書類があったがこの暑さで乾物になった気持ちになっておりペンを持つことを放棄している。


提督「何か・・・何か冷たいもの無いかな・・・?」


足元にある小型の冷蔵庫を開けるがすっからかんである。


提督「・・・。」


そっと閉じまたうなだれる。


そのときコンコンコンとノックの音がした。


雷「司令官、雷よ。」


提督「んぁ・・・?入っていいよ~」


雷「失礼するわ。」


提督「ん・・・どったの雷ちゃん?」


雷「お疲れ様、司令官が疲れているころかと思ってかき氷を持ってきたわ。」


ニコっと笑いトレーに乗せたかき氷を見せる。


提督「ありがと~、ちょうど冷たいものが食べたかったんだ~」


雷「ふふっ、雷お手製イチゴかき氷よ。召し上がれ♪」


提督「うん、いただきまぁす♪」


真っ白な氷に真っ赤なシロップのコントラストが美しく食べるのが持ったないような気がしたが食欲のほうが勝り口にする。


提督「あむっ、美味しい!・・・美味しい?」


確かに甘く美味しいのだがかすかに鉄のような味がし満面の笑みから表情が変わる。


雷「司令官どうしたの?美味しくない?」


提督「ううん、美味しいけど鉄みたいな味がするような・・・?」


雷「鉄・・・?ああ、もしかして缶詰のシロップを使ったからそれかもしれないわ。」


提督「缶詰、どうりで。雷ちゃんも食べる?」


スプーンですくい雷の口元まで運ぶ。


雷「私はいいわ。さっきみんなで食べたからこれ以上食べたらおなかを壊すわ。」


提督「そお?」


それを自分の口に入れる。


提督「・・・あれ?雷ちゃんケガしてるの?」


トレーの陰で見えづらかったが手のひらから手首にかけて包帯が巻かれていた。


雷「これ?ちょっと転んで擦りむいただけよ。」


えへへと笑い背後に隠す。


提督「そうなの?無理しちゃだめだよ。何なら午後の課業は休んでも・・・」


雷「もう司令官は過保護なんだから、これくらい平気よ。それじゃ持ち場に戻るわね!」


提督「うん、ありがとうね。」


雷「ええ、また夕食のときにね!」


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雷(やった・・・雷の血を食べてもらえた・・・!これで司令官の中に雷が・・・)


今後、雷の行為がエスカレートするのを提督は未だ知らないのであった。












後書き

1年+αぶりの執筆
感覚が掴めないorz


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