「リベッチオの願い」
年に一度に開催される「グルメ試食会」。今年はとある理由で参加数が減少する中、ある艦娘と出会い・・・
参考までにキャラ紹介。
提督:真面目でのんびり。艦娘のためなら何でもしてしまう他では類を見ない提督。
サラトガ:提督に恋する正規空母の艦娘、今回はグルメ試食会の調理担当係。
村雨:提督の事が好きな白露型の女の子、今回はグルメ試食会の案内役。
リベッチオ:グルメ試食会に来ていたイタリア艦。
ローマ:リベッチオと一緒に来ていたイタリア艦の艦娘。
年に2回開催されるイベント「グルメ試食会」。
各鎮守府で人気の食事を出し合って競うイベントで、多くの人々が行き交うのだが・・・
今年の2回目のグルメ試食会の参加人数は半数程しか集まらなかった・・・その原因として、
食品の急激な価格高騰
連日の悪天候による農作物の不作、深海棲艦の襲撃により貿易船に被害・・・物資の損失。 それらが積み重なった結果、
価格が(特に食料)高騰してしまったのだ。
米や豆はもちろんの事・・・貿易品に至ってはほとんどが品薄となり、特に海外艦たちの主食はほぼ発注不可となってしまった。
間宮・伊良湖さんの店でも一部の料理が注文不可となり、ほとんどの料理が値上がりと悪いことが重なるばかりである。
それでグルメ試食会の参加者が半数まで減ってしまったのだ。
それでも、このイベントで得る貴重な収入を目的とした提督たちもいるため、多少の値上がりを覚悟で料理を出品する鎮守府も多くいた。
・・・・・・
「出来上がったばかりの唐揚げだよ~!」
「浦風特製の広島お好み焼き! 安いよ~!」
「定食弁当3種、値段はお値打ち400円! 早い者勝ちだ~!」
各売店で食事が売り出される中、1人の艦娘が売店を探し回っていた。
イタリア艦のリベッチオ・・・彼女は何かを探しているようで、各売店を見回っていた。
「・・・ここもない・・・あっちは・・・やっぱりない。」
目的の売店が見つからなかったようでその場を後にした。
「リベッチオはどこに行ったのかしら?」
リベッチオを探しているもう1人のイタリア艦ローマ・・・彼女はリベッチオと一緒にこのイベントに来場していたようだ。
「あ、いた・・・リベッチオ~!!」
ローマが叫ぶとリベッチオがそれに気づき、
「探したわよ・・・勝手に1人で行っちゃいけないって言ったでしょ。」
「ごめんなさい・・・。」
「・・・それで、どうだった? リベッチオのお目当ての売店は見つかった?」
「・・・・・・」
首を横に振っていて・・・
「そう・・・残念ね・・・」
ローマはリベッチオの肩に手を置いて、
「どうするの? もう帰る? それとももう少し探す?」
「・・・もうちょっと見たい!」
「・・・わかった、でも、一緒に探しましょ。」
そう言って2人で各売店を見回るのだった。
・・・・・・
「各鎮守府の料理もそれなりにおいしそうな物が売っているけど・・・」
ローマはリベッチオの方を向き・・・
「リベッチオの目的の料理は・・・見つからないわね。」
そう呟いていると、目の前に一際変わった売店が・・・
「はいは~い♪ 皆注目~!!」
やたら元気な駆逐艦(村雨だけど)が皆の注目を集めていた。
「今日私たちの鎮守府が出す料理は・・・じゃん!! サンドイッチで~す!!」
彼女の案内と共にたくさんの人だかりができる。
「調理はサラトガさん・・・そして料理の案内役はこの私・・・村雨がやらせていただきま~す♪」
ローマたちもその場にやってきた。
「まずは定番の・・・卵を使ったエッグサンド! そして、新鮮なレタスを挟んだレタスサンド! ハムとチーズを挟んだハムサンド!
今、サラトガさんが調理したところです! 値段は一律250円! お買い得です! さぁ、どんどん買って行ってください~♪」
村雨の号令と共に人々がどんどんと買っていく。
「は~い、皆さん! また注目~! 今回はサラトガさんの新作サンドイッチが出ます! それは・・・何と!」
皆の前に出したのが・・・ステーキ!
「この焼き上げたステーキを・・・秘伝のタレに浸けて・・・一口サイズに切ってそれを・・・何と・・・パンで挟んじゃう!!
もう一度! 焼きたてのステーキを・・・レタスで包んで・・・パンと一緒に挟んで・・・ほら! ステーキサンド!
どう? おいしそうでしょう♪」
新作を見せると一部の提督達がよだれを垂らす。
「今価格が高騰していますが、私たちは食べてくれる皆さんのために頑張って奮発しました~♪ 何も気にしなくていいんです!
皆さんが笑顔でおいしく召し上がってくれれば私たちも頑張った甲斐があります! 値段も奮発して・・・
1つ300円! どうですか、1つ300円ですよ~! お買い得ですよ~! これはもう食べるしかありませんよ!!」
気づくと提督達以外の他の一般客も集まっていて、一斉に買っていった。
「・・・すごい。」
その場を見ていたローマはただ立ちすくんでいた。
・・・・・・
「完売しちゃいましたね~♪」
「予定よりも早く完売しましたね・・・それにしても村雨ちゃん・・・結構看板役向いているんじゃない?」
「そうですか~? てへへ♪」
褒められて喜ぶ村雨。
「・・・あら?」
目の前にイタリア艦の2人がいるのに気づいて・・・
「ごめんなさ~い、今完売しちゃった所なの。また来年起こしくださいね♪」
「・・・あの。」
「? 何でしょう?」
「来年は・・・どんなメニューを出す予定かしら?」
「そうですね~・・・提督と相談してみないとわかりませんね~。」
「・・・そう。」
ローマはまたがっかりする・・・そこに、
「お疲れ様・・・どうだ、売れたか?」
この売店の提督が現れて、
「あ、提督。 見てください! 提督の思惑通り、完売しましたよ~!」
「そうかそうか。 よくやった! 2人とも!」
提督は村雨から資金袋を受け取って・・・
「・・・上出来だ。 ここから鎮守府資金を引いて・・・と。」
残りを村雨に渡して・・・
「残りは村雨とサラで山分けしろ。」
そう言って提督はその場を後にした。
「ひい・・・ふう・・・みい・・・全部で10万円ありますよ!?」
「じゃあ・・・山分けですから・・・1人、5万円ですか?」
「やったぁ~! 春雨のために何か買ってあげよう!」
「そうですね~・・・私はアイオワとビスマルクと飲むビールでも買おうかしら。」
2人は上機嫌だ。
・・・・・・
「提督、少しいいかしら?」
ローマが止める、
「? お前は確か・・・前のグルメ試食会で会ったな?」
「はい・・・一度お会いしました。」
「・・・それで、オレに何か用か?」
「・・・来年の。」
「? 来年?」
「来年に出す料理はもう決まっているのかしら?」
「・・・いや、まだだが・・・どうして?」
「・・・・・・」
ローマが急に口を閉じて、
「・・・何か事情があるようだな、わかった・・・話くらいは聞こう。」
提督とローマは近くの喫茶店に入った。
・・・・・・
「それで? どうしてまた来年のメニューを聞きに?」
「実は・・・」
ローマが打ち明けた。
「私と一緒に住んでいる艦娘のリベッチオがいて・・・」
「ふむ・・・」
「あの子が「故郷の味」が食べたい・・・と。」
「・・・それって、つまり?」
「パスタやピザの事です。」
「・・・・・・」
「私たちがいる鎮守府も主食以外のほとんどが注文不可になっていて、パスタやピザの素となる麺類やチーズも
入荷未定で・・・今後回復するかどうかもわからなくて・・・」
「・・・・・・」
「それで、もしこの状態が来年にも続くようだったら、提督の今度の料理を「イタリア系料理」にして欲しかったんです。」
「なるほどねぇ・・・」
「・・・・・・」
「でも、来年にならないとわからないからな・・・今、決めることではないからね~。」
「そう・・・そうですね。」
ローマは下を向くが・・・
「要は・・・そのリベッチオにパスタやピザを食べさせたい・・・ってことだろ?」
「・・・・・・」
ローマは首を縦に振る。
「なら、オレがその子に食べさせてやるよ。」
「えっ?」
「場所はどこだ? メモとペンを渡すから、鎮守府の場所と日程を書いてほしい。」
「・・・・・・」
ローマが鎮守府名と希望日時を記入して・・・
「・・・よし、わかった。 では、その日にお前の鎮守府で会おう。」
そう言って提督は代金を置いて喫茶店から出た。
・・・・・・
ローマは鎮守府へ戻り、リベッチオにその事を伝えた・・・もちろん「やったぁ~!」と喜んでいて、
その日から窓から顔を出し、提督が来るのをずっと待ち続けていた。
・・・・・・
「提督さん、まだかなぁ~。」
リベッチオは窓から顔を出しながら、ずっと来るのを待ち続けている。
「まだ3日しか経ってないわよ・・・そんなに顔を出したら危ないわ!」
ローマに怒られて「てへへ。」と反省するリベッチオ、余程提督が作ってくれると言う約束に喜んだようだ。
「・・・・・・」
ローマは思った。
「本当は・・・ただのその場しのぎよね・・・」
チーズも麺類も注文できない状況で、どうやって食べることが出来るの? 素直にできないって言えばこっちも
諦めがつくのに・・・「鎮守府名と希望日時を書いて」って予定まで書かせて・・・リベッチオに期待させて・・・
「・・・・・・」
約束の日に来ないのがわかりきっている・・・リベッチオががっかりする光景が見えるのはわかりきっている、
ちっくしょう! 最初から相談なんかするんじゃなかった!
「・・・・・・」
約束の日まで後数日・・・来なかったら後日提督に文句言ってやる!
そう思いつつ、ローマは希望日時まで待つのであった。
・・・・・・
・・・
・
約束の日、
提督は・・・やってきた。
「厨房を貸してくれ。」
提督に許可を貰うと、彼は支度を始める。
「提督さん!」
リベッチオがやってきて、
「お前がリベッチオかな? 約束通り「故郷の味」を届けに来たぞ。」
「わ~い♪」
「・・・・・・」
ローマが見た光景・・・厨房に並んでいる麺類にチーズ等・・・注文が困難な食品が並んでいて・・・
「どうやって仕入れたんです?」
気になって聞いてみたが、
「別に・・・高くてもいいから注文しただけだ。」
「今、貿易品の価格は急騰してるわよね?」 とまた聞くが、
「だから、高くてもいいから注文しただけ・・・それだけだ。」
「・・・・・・」
この提督の考えがわからない・・・そんな単純でいいものなの?
「そこで立っているなら、麺をゆでて欲しいのだが?」
「・・・わかったわ。」
ローマは提督と一緒に調理を始めた。
・・・・・・
「今日は特別にリクエストがあったから出張に来た・・・さぁ、皆! 不況に負けず食べて元気だしな!」
と、食堂にパスタ・ピザ・グラタン等のイタリア料理が並んだ。
「う~~っん・・・おいしい~!!」
ピザを食べてリベッチオは喜んだ。
「ありがとう! 提督さん!」
リベッチオは満足そうだ。
「喜んでくれて何よりだ。」
提督は身支度をして、
「それでは・・・オレは失礼する・・・後は皆で楽しみな。」
そう言って厨房から出て行く提督。
・・・・・・
「あの、提督。」
ローマが呼び止めて、
「あの・・・今日は・・・ありがとう。」
「・・・・・・」
「来ないと思っていたから・・・でも、リベッチオも喜んでいたし・・・本当に、ありがとう。」
「ああ、早くリベッチオのところへ行ってやれ。」
「・・・・・・」
ローマは礼をして食堂に戻っていき、提督は自分の鎮守府に戻った。
・・・・・・
「ただいま~。」
提督が帰還して、サラが迎える。
「おかえりなさい、提督♪」
「ただいま・・・オレがいない間、変わったことはあった?」
「う~ん、特にありませんが・・・そう言えば。」
「?」
「今日、鎮守府に出張しに行かれた後、何枚かの手紙を届きましたが。」
「・・・わかった・・・机に置いてあるな?」
「はい♪」
「確認する・・・ありがとう。」
提督は執務室に向かう。
「なになに・・・」
手紙を開けると・・・
”提督の行動には目を見張るものがあります・・・次は〇〇鎮守府への出張を依頼します!”
「またか・・・」
提督はため息をついて、
「少し休息をしたいのだけど・・・」
希望日時は”今日”と・・・急を要する事態らしい。
「仕方ない・・・サラに代行を任せて行くとするか。」
帰ってきたばかりだと言うのに、また支度をする。
・・・・・・
「サラ、悪いけどまた代行を頼む。」
「わかりました・・・提督も無理をなさらないように。」
「わかってる・・・それでは、行ってくる。」
サラに見送られ、提督はまた鎮守府へと出張に向かうのであった。
「リベッチオの願い」 終
提督イケメンすぎる