2017-07-21 00:54:57 更新

概要

提督の事が嫌いな比叡のお話。


司令が嫌いだ・・・


いいえ・・・嫌いってだけで済むレベルじゃない!


だい、だい、だい・・・大っ嫌い!!


私から金剛お姉さまを奪った挙句、私が心を込めて作った料理を・・・


「こんな不味いもん食えるか!」


ショックだった・・・部屋で泣いた。


司令のバカ! アホ! 人でなし!


お姉さまや皆には褒めるのに私だけ何でそんなに貶すんですか・・・


・・・・・・


今日は私が給仕の日・・・比叡なりに頑張ってカレーを作りました。


結果はいつも通り・・・「お前はカレーすらまともに作れないのか?」


悔しかった・・・いつも通り部屋に戻って泣いた・・・


「比叡! どうしたネ~?」


お姉さまが泣いている私を見て話しかけてきました。


「また提督に怒られたノ? 比叡は怒られるの好きネ~。」


お姉さまはいつもこんな感じ、私を心配しているのかしてないのか・・・


「でも、提督は優しいヨ~、比叡もめげずに頑張るデス~!」


頑張れって言われても・・・何を頑張ればいいのですか?


・・・・・・


今日は司令と私の2人だけ、はっきり言って最悪の日・・・


昼食は当然、私が担当・・・


頑張って比叡風スパゲッティを作りました。


司令は食べるまでもなく、


「お前は一体何回食料を無駄にすれば気が済むんだ?」


その言葉に私の堪忍袋の緒が切れて、大喧嘩!


「そんなに比叡の料理が気に入らないなら自分で作って下さい!!」


そう叫ぶと、司令は一人で厨房へ行き、本当に一人で調理して食べていました。


しかも、私が作った昼食より遥かにおいしそうな料理を・・・


そこまで見せられたら、私は惨め以外のなにものでもなかった。


悔しい・・・本当に悔しい!




・・・・・・


・・・あれ?


何で私・・・こんなに悔しがっているんだろう?


司令の事が嫌いだから、料理なんてわざわざ作らなくてもいいはずなのに・・・


・・・・・・


理由は簡単、作らずに逃げれば私の負けだから・・・


今まで比叡が自信満々で作った料理を自分自身で「不味い」と認めてしまうことになるから・・・


だから、司令に怒られながらも私はめげずに作り続けているのは、


司令の口から「美味い」と聞きたかったからである。


本当にただそれだけ・・・


・・・・・・


その日から私はひたすら作り続けた。


当然司令からの文句はその度に響く。


でも、負けたくなかった・・・逃げたくなかった。


「またお前は・・・」 「もうやめろ!」 悔しい・・・悔しいけど、


絶対「美味い」って言わせてやるんだから!!


・・・しばらくして、


金剛お姉さまや皆から「おいしい」って言われるようになりました。


昔は気を遣った口調で「おいしい」と言っていたけど今では笑顔で言ってくれています。


私は本当は知っていたんです、料理が上手くないことを・・・


司令は素直に言っていただけなんです、皆が言わないから司令が自ら悪役になって私に言っていただけ。


私自身、自覚はしていても受け入れることができなかった。


気合を入れて気丈を装っていたけど、私は本当は内面が弱い女の子・・・


だからすぐに傷ついたし、悔しかった。


でも、皆が喜んでくれているから今度は大丈夫だよね?


これなら司令も喜んでくれるはずだよね?


よし! 気合入れて! 明日、司令に出そう!


そう決めたのに・・・


司令は鎮守府から去った。


単独で出撃して、消息が途絶え・・・後に死亡と判断されたと・・・そんなことはどうだっていいです!


どうして・・・どうしてですか?


どうして司令はいつも勝手なんですか?


司令はまだ私の料理を食べて「美味い」と言ってませんよね?


司令はまだ料理を口にすらしていませんよね?


散々私に文句言って・・・私に悔しがらせて・・・


勝手に一人で戦場へ行って・・・勝手に・・・勝手に死ぬなんて・・・




卑怯者ぉ!!!!  ふざけるなぁ!!!!




また部屋で泣いた。




ふざけるなぁ・・・ふざけるなぁ・・・司令のバカぁ!!




・・・・・・


結局私は司令の口から「美味い」と言わせることができませんでした。





司令の死後、


妹の霧島が司令の遺志を継ぎ、提督として就任した。


艦娘と提督の両方をするのはとても大変な事だけど、それだけ霧島は司令の事が好きだったということ。


霧島だけでなく鎮守府の皆は司令の事が好きである。


指輪をもらったもらっていない、ではなく司令は隔たりなく皆に愛情を注いでいましたから・・・


私の場合は愛情というより、教育だったかもね・・・



ある日のお昼に、


霧島に昼食を作ってあげた。


比叡風スパゲッティ・・・霧島が食べて、


「おいしいです、比叡姉さま。」


笑顔で言う霧島を見て、私は顔を赤くする。



本当は司令にも食べてほしかったけどね・・・



「比叡姉さまは本当に司令の事が好きだったんですね。」


と言われ、私は拒否したけど・・・


「だって、あんなに文句言われても司令のために作っていたんですから、私たちから見れば


 よっぽどおいしい料理を食べてほしかったんだなぁって・・・」


・・・・・・


まぁ・・・そうかもしれないね。


でも、霧島・・・勘違いしないでほしいけど・・・私は今でも司令の事は嫌いだよ。


嫌いだったからこそ、ここまで頑張れた・・・私を認めてほしかった。


そのおかげで今は皆においしい料理を出せる。






・・・何度も言いますよ?






私は・・・司令の事が・・・嫌いです。






「提督と比叡」 終






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このSSへのコメント

2件コメントされています

1: SS好きの名無しさん 2017-05-31 08:18:49 ID: 1FpkKSeJ

短くまとまってていいね
でも単独で出撃は意味がわからない

2: キリンちゃん 2017-05-31 10:35:59 ID: mUbIVKn0

1FpkKSeJさんコメントありがとうございます。
この物語の提督は艦娘と同じ、戦うことができるんです。
時系列で言うと 「提督と霧島」2 の時の話になります。
新手の深海棲艦に対抗できない艦娘たちの代わりに提督自ら
出撃して敵の防御を無力化させた内容です。
その後、消息を絶って皆死んだと思ったような話です。


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