「提督と比叡」
提督の事が嫌いな比叡のお話。
司令が嫌いだ・・・
いいえ・・・嫌いってだけで済むレベルじゃない!
だい、だい、だい・・・大っ嫌い!!
私から金剛お姉さまを奪った挙句、私が心を込めて作った料理を・・・
「こんな不味いもん食えるか!」
ショックだった・・・部屋で泣いた。
司令のバカ! アホ! 人でなし!
お姉さまや皆には褒めるのに私だけ何でそんなに貶すんですか・・・
・・・・・・
今日は私が給仕の日・・・比叡なりに頑張ってカレーを作りました。
結果はいつも通り・・・「お前はカレーすらまともに作れないのか?」
悔しかった・・・いつも通り部屋に戻って泣いた・・・
「比叡! どうしたネ~?」
お姉さまが泣いている私を見て話しかけてきました。
「また提督に怒られたノ? 比叡は怒られるの好きネ~。」
お姉さまはいつもこんな感じ、私を心配しているのかしてないのか・・・
「でも、提督は優しいヨ~、比叡もめげずに頑張るデス~!」
頑張れって言われても・・・何を頑張ればいいのですか?
・・・・・・
今日は司令と私の2人だけ、はっきり言って最悪の日・・・
昼食は当然、私が担当・・・
頑張って比叡風スパゲッティを作りました。
司令は食べるまでもなく、
「お前は一体何回食料を無駄にすれば気が済むんだ?」
その言葉に私の堪忍袋の緒が切れて、大喧嘩!
「そんなに比叡の料理が気に入らないなら自分で作って下さい!!」
そう叫ぶと、司令は一人で厨房へ行き、本当に一人で調理して食べていました。
しかも、私が作った昼食より遥かにおいしそうな料理を・・・
そこまで見せられたら、私は惨め以外のなにものでもなかった。
悔しい・・・本当に悔しい!
・・・・・・
・・・あれ?
何で私・・・こんなに悔しがっているんだろう?
司令の事が嫌いだから、料理なんてわざわざ作らなくてもいいはずなのに・・・
・・・・・・
理由は簡単、作らずに逃げれば私の負けだから・・・
今まで比叡が自信満々で作った料理を自分自身で「不味い」と認めてしまうことになるから・・・
だから、司令に怒られながらも私はめげずに作り続けているのは、
司令の口から「美味い」と聞きたかったからである。
本当にただそれだけ・・・
・・・・・・
その日から私はひたすら作り続けた。
当然司令からの文句はその度に響く。
でも、負けたくなかった・・・逃げたくなかった。
「またお前は・・・」 「もうやめろ!」 悔しい・・・悔しいけど、
絶対「美味い」って言わせてやるんだから!!
・・・しばらくして、
金剛お姉さまや皆から「おいしい」って言われるようになりました。
昔は気を遣った口調で「おいしい」と言っていたけど今では笑顔で言ってくれています。
私は本当は知っていたんです、料理が上手くないことを・・・
司令は素直に言っていただけなんです、皆が言わないから司令が自ら悪役になって私に言っていただけ。
私自身、自覚はしていても受け入れることができなかった。
気合を入れて気丈を装っていたけど、私は本当は内面が弱い女の子・・・
だからすぐに傷ついたし、悔しかった。
でも、皆が喜んでくれているから今度は大丈夫だよね?
これなら司令も喜んでくれるはずだよね?
よし! 気合入れて! 明日、司令に出そう!
そう決めたのに・・・
司令は鎮守府から去った。
単独で出撃して、消息が途絶え・・・後に死亡と判断されたと・・・そんなことはどうだっていいです!
どうして・・・どうしてですか?
どうして司令はいつも勝手なんですか?
司令はまだ私の料理を食べて「美味い」と言ってませんよね?
司令はまだ料理を口にすらしていませんよね?
散々私に文句言って・・・私に悔しがらせて・・・
勝手に一人で戦場へ行って・・・勝手に・・・勝手に死ぬなんて・・・
卑怯者ぉ!!!! ふざけるなぁ!!!!
また部屋で泣いた。
ふざけるなぁ・・・ふざけるなぁ・・・司令のバカぁ!!
・・・・・・
結局私は司令の口から「美味い」と言わせることができませんでした。
司令の死後、
妹の霧島が司令の遺志を継ぎ、提督として就任した。
艦娘と提督の両方をするのはとても大変な事だけど、それだけ霧島は司令の事が好きだったということ。
霧島だけでなく鎮守府の皆は司令の事が好きである。
指輪をもらったもらっていない、ではなく司令は隔たりなく皆に愛情を注いでいましたから・・・
私の場合は愛情というより、教育だったかもね・・・
ある日のお昼に、
霧島に昼食を作ってあげた。
比叡風スパゲッティ・・・霧島が食べて、
「おいしいです、比叡姉さま。」
笑顔で言う霧島を見て、私は顔を赤くする。
本当は司令にも食べてほしかったけどね・・・
「比叡姉さまは本当に司令の事が好きだったんですね。」
と言われ、私は拒否したけど・・・
「だって、あんなに文句言われても司令のために作っていたんですから、私たちから見れば
よっぽどおいしい料理を食べてほしかったんだなぁって・・・」
・・・・・・
まぁ・・・そうかもしれないね。
でも、霧島・・・勘違いしないでほしいけど・・・私は今でも司令の事は嫌いだよ。
嫌いだったからこそ、ここまで頑張れた・・・私を認めてほしかった。
そのおかげで今は皆においしい料理を出せる。
・・・何度も言いますよ?
私は・・・司令の事が・・・嫌いです。
「提督と比叡」 終
短くまとまってていいね
でも単独で出撃は意味がわからない
1FpkKSeJさんコメントありがとうございます。
この物語の提督は艦娘と同じ、戦うことができるんです。
時系列で言うと 「提督と霧島」2 の時の話になります。
新手の深海棲艦に対抗できない艦娘たちの代わりに提督自ら
出撃して敵の防御を無力化させた内容です。
その後、消息を絶って皆死んだと思ったような話です。