艦娘の力、お借りします!! 第3話 私の中の死神
鎮守府の近くにある石碑、通称 錨石。
雪風はここによくお祈りをしに訪れていた。
そんなある日、鎮守府宛に一通の招待状が届くのだが・・・?
第3話です。
1話、2話に比べてかなり長くなってしまった。
文章がおかしかったり、矛盾点あると思いますが優しい目で見てください。
いや、ホントお願いします。(。´Д⊂)
※20197/15 ストーリー修正しました。
待って・・・、置いていかないで・・・
私が・・・皆を守るから!
(無理だよ)
なんで?どうして・・・?
(それは・・・貴女が死神だから)
死神・・・私が?
(貴女がいるから皆沈む)
違う
(貴女は命が消えるのを見ているだけ)
違う、違う!!
(強くなるためにと、変わったのに何も守れない。)
嫌・・・
(そして大切な筈だった皆もいなくなった。)
やめて・・・
(貴女は、どこかで闇を望んでいたんじゃないの?)
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雪風「そんなことっ!!」バッ
響「うわっ!だ、大丈夫かい?雪風」
雪風「えっ、あ、あれ・・・?」アセダク
響「凄くうなされていたよ。悪い夢でも見たの?」スッ
雪風「ありがとう。大丈夫。またあの夢見ただけだから。」
響「そう・・・。大丈夫ならいいんだ。」
雪風は時折悪夢にうなされていた。
その夢にはいくつかの種類があるがその全てが自身にとって良い内容ではなかった。
響「昔、話してくれたあの夢?」
雪風「うん。誰かが戦っていて・・・、それを私は見ているんだけど、それが誰なのか分からなくて・・・。その人は・・・」
言葉に詰まる雪風を見て響は言う
響「もういいよ。話さなくていい。」
雪風「あ、ごめん・・・」
響「ううん。謝らなくていいさ。ほら、これ使って」スッ
響は雪風にタオルを渡す。
雪風「ありがとう。響ちゃん」
今日は長門達、遠方出撃隊が帰還する日だ。
雪風「長門さん達、お昼には戻って来るんだよね?」
響「うん。少し遅れているみたいだけど、今日帰還する予定だよ。」
雪風「よしっ!今日ものお祈り行ってきます。」
響「また、あの石碑の所かい?」
雪風「うん。長門さん達が無事に戻ってこれるようにってお願いしてくる。」
響「うん。今日は私も一緒に行こう。」
鎮守府の近くに昔からある言石碑、通称錨石。(いかりいし)
祈りを捧げると、今自分が一番望んでいることを叶えてくれる伝説がある。
一説ではかつての大戦で轟沈してしまった艦船と乗組員の供養の為に建立したとの話もある。
だが正確な記録もなく、いつからか街の人達からパワースポットの様に扱われていた。
雪風は自身が出撃するしないに限らず、必ず石碑に無事の帰還をお祈りをしていた。
雪風と響は石碑に花を供えて祈る。
二人(皆が無事に戻ってこれますように。)
祈りを終えた二人は石碑を見つめる。
響「私は、ここに来るのは久しぶりだ。雪風はいつもお祈りに?」
雪風「うん。出撃するときはこうやってお祈りしてるんだ。」
雪風は石碑を見ながら言う。
雪風「・・・いかり様はお願いを聞いてくれてるのかな?」
響「いかり様?」
雪風「あ、雪風が勝手にそう呼んでるの。錨石だから、いかり様」
響「成る程。お願い、聞いてくれてると私は思うよ。」
響は石碑に触れながら言う
雪風「うん。そうだといいな!」
響「さあ、鎮守府に戻ろう。」
戻ろうとした響を雪風は呼び止める。
雪風「響ちゃん。」
響「なんだい?」
雪風「前回の出撃の事なんだけど・・・」
響「急にどうしたんだい?」
雪風「その・・・昨日の敵はどうなったんだろう・・・って思って。」
響「・・・」
雪風は禍駆逐災姫のその後が気になっていた。
雪風にしてみれば禍駆逐災姫に掴まれた前後の記憶が曖昧だった。
正直な所、あの状況で自分が生きているのが不思議だったのだ。
雪風「あのね、私が敵に捕まってゼロ距離で主砲を撃たれそうになった時に、誰かが助けてくれたんだ。」
響「誰かって?」
雪風「わからない・・・。その後にすぐ気絶しちゃって。でも・・・」
響「でも?」
雪風「凄く懐かしい様な、雪風の知ってる人の様な感じだったの。」
響(懐かしい・・・? 白瀬さんには会ったばかりのはずだけど・・・。)
響は誰が助けに来たかを知っている。
白瀬が禍駆逐災姫を倒したことも。
だが、それを言ってあげられない。
白瀬が自ら語らない限り、自分が言うわけにはいかなかった。
響「私も気絶してしまっていたから分からないな。でも、もしかしたら雪風の言ういかり様が助けてくれたのかもね。」
雪風「えっ?」
響「いつもお祈りしてる雪風を、いかり様が助けに来てくれた。なんてね。」
雪風「あはは。うん、そうだったら嬉しいな!」
嬉しそうな雪風を他所に、響の表情が曇る
響(ごめんなさい錨石様。貴方の名前で嘘をついて。)
雪風「戻ろっか、響ちゃん。」
響「そうだね。」
二人は石碑を後に鎮守府へ戻っていった。
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執務室には白瀬が訪れていた。
白瀬「本当にお世話になりました。」
提督「こちらこそ。ですが、本当によろしいのですか?」
白瀬「はい。トラブルがあったとは言え、既に2日お世話になってます。何より、私にはひとつの場所に留まるのは性に合わなくて。」
提督「そうですか。それではまた旅に?」
白瀬「そうですね。ですが、暫くはこの近くを見て回るつもりです。」
提督「わかりました。正門まで見送りますよ。」
白瀬「いえ、それには及びません。まだ他の皆さんへ挨拶が出来ていませんので、挨拶が済み次第出発します。本当にありがとうございました。」ペコッ
提督「わかりました、お元気で。旅の安全を祈っています。」
白瀬は提督に挨拶を済まし、執務室を後にした。
提督(結局、白瀬さんには話を聞けなかったな。まあ彼女は一般人だし、俺には尋問まがいなことは出来ん。さて、)スッ
椅子に腰掛け、提督は書類作業を開始した。
コンコン
少しして、雪風と響が入ってくる。
二人「失礼します。」
提督「お疲れ様。どうしたんだ?」
響「長門さん達の帰還する時間を確認に来たんだ。」
雪風「何時頃か、分かりますか?」
提督「ああ。朝に通信が入ってな。ヒトサンマルマルに到着予定だ。」
響「わかった。ありがとう。」
提督「出迎えは皆でしよう。だから、北上を捕まえといてくれ。アイツはサボりそうな予感がする。」
雪風「わかりました!」
提督「そういえば、白瀬さんには会ったか?」
響「いいや、会っていないよ。さっきまで二人で錨石の所にいたから。どうしたんだい?」
提督「白瀬さんは今日、ここを出発するそうだ。」
雪風「えぇっ!?」
響「そんな・・・」
提督「本人が言うんだ。無理に引き留めるのはおかしいだろう。」
提督(一応軍事施設だし)
雪風「白瀬さんはどこに行ったんですか?」ズイ
提督「お、落ち着け。皆に挨拶をしてから出発すると言っていた。まだ鎮守府内にいるハズだよ。」
雪風「わかりました!」ダッ
響「あ、雪風!待って!」ダッ
二人は勢いよく飛び出していった。
普段なら注意する所だが、提督は見逃した。
提督(やけに白瀬さんになついていたな。特にあの二人は。特別な事は・・・なかったはずだが。)パサッ カリカリ
提督は再び書類を手に取り執務を再開した。
暫くして執務室の扉が鳴る。
コンコン
提督「どうぞ。」
大淀「失礼します。明石からの整備報告の書類をお持ちしました。」スッ
提督「ありがとう。」
大淀「それと先程工舎で白瀬さんに会いました。本日ここを発つそうです。それでその挨拶にと。」
提督「ああ。俺もさっき聞いてな。挨拶した所だ。」
大淀「そうでしたか。後は雪風さんと響さんだけらしいのですが、何処にも見当たらないと言っていました。提督ご存じないですか?」
提督「ちょうど二人とも執務室に来ていてな。その話をしたらすぐに白瀬さんを探しに行ったよ。」
大淀「そうでしたか。」
提督「お互い探してるんだ。いずれ見つかるだろう。」
大淀「そうですね。」
大淀は秘書艦用の机に書類を置き、椅子に腰掛ける。
大淀「それにしても、白瀬さん不思議な方でしたね。」
提督「ん?」
大淀「私達艦娘という存在が知られて、既にかなりの月日が経ちました。昔ほどでは無くても、やはり一般の方は艦娘を見る目が違います。なのに当たり前の様に私達艦娘に普通に接してくれて。接して行く中で旨くは言えないのですが、なにか、こう・・・親近感を感じたんです。」
提督「実は俺もなんだ。初対面なのに、初めましてじゃ無いような感じがしてな。」
大淀「提督もでしたか!」
提督「大淀の言うとおりだな。不思議な縁だ。しばらくはこの街にいるそうだから、また何処かで会うかもな。」
大淀「そうですね。会えたら良いなって思います。」
提督「それとな。もうすぐ例の日だからなにか用意しようかと思うんだが、どうだろうか?」
大淀「確かにもうすぐですね。ちゃんと覚えておられたんですね。」
提督「当たり前だ。皆の情報は頭に入ってる。」
大淀「雪風さんが来てもう随分時間が経ちましたね。早いものですね。」
提督「出会い方が特殊だったからな。尚更よく覚えているよ。雪風が来た日も嵐の夜だった。」
大淀「私も覚えています。なにせ、この正面海域に大破状態で浮かんで居たんですから・・・。」
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白瀬「ふう。困った。ここにも居ない。」
あれから二人を白瀬は探し続けていた。
白瀬「ここによく来ていると、間宮さんに聞いたんだけど・・・」キョロキョロ
白瀬は間宮から雪風がよく来ているという錨石の場所を聞き、やって来たのだ。
しかし、肝心の二人は居なかった。
錨石には沢山の供え物がしてあった。
手入れもされており石碑自体も周辺も綺麗だった。
白瀬(お祈りか・・・。昔は私もよくしたっけ。)
白瀬は供え物を見て回る。
その中に一つ気になるものがあった。
白瀬「これは、双眼鏡?なんでこんなものが・・・。あ、片方レンズが無い?」
他の供え物は花や食べ物などだったが一つだけボロボロの双眼鏡が置かれていた。
白瀬(なんでこんな物が・・・。でもこれ、なにか見覚えがあるような・・・?)
白瀬が考えていると、後ろから足音がした。
雪風「あ!白瀬さん!」タタッ
響「ここにいたんだ。探したんだよ?」
白瀬「あ、雪風さん、響さん。私も探していたんです。突然ですが私は」スクッ
白瀬の言葉を響が遮る。
響「提督から聞いたんだ。ここを出るんだよね。」
白瀬「はい・・・。お二人ともお世話になりました。」
雪風「ど、どうしても行っちゃうんですか・・・?」ウルウル
雪風は目に涙を浮かべている。
やはり別れが惜しいようだ。
白瀬「ゆ、雪風さん・・・」アセアセ
今にも泣いてしまいそうな雪風を見て、白瀬は焦った。
響「泣いたらダメだよ。白瀬さん、困っているじゃないか・・・」グズッ
そういう響も少し涙目だ。
白瀬「二人ともごめんなさい。私はどうしても行かなくちゃならなくて・・・。」ギュッ
白瀬は二人に近づき、抱き寄せる。
雪風「うぅ。また、会えますか・・・?」
白瀬「また、必ず会えますよ。だって地球は丸いんですから!」
響「なんだいそれ・・・。でも、そうだね。」
二人は白瀬から離れ、笑顔で言った。
雪風「また、遊びましょう!」
響「そうだね。遊びに来てくれたら嬉しいな。」
白瀬「はい!楽しみにしますね。」
響「正門まで一緒に行こう。」
雪風「お見送りします!」ガシッ
白瀬「じゃあ、お願いします。」
3人は手を繋ぎ鎮守府正門へ向かった。
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白瀬が鎮守府を去り、鎮守府の面々は長門達を迎える用意をしていた。
大淀は皆に集合をかけるために執務室にいない。
既に時刻は12時半を指している。
提督「さーて、そろそろ港に行くか」
コンコン
提督「どうぞ。」
青葉「ども。今日の新聞でーす。」
提督「昼頃に来る新聞は要りませーん。」
青葉「まあまあそう言わずに。おまけで郵便物も付けますから。」バサッ
提督「是非おまけの意味を辞典で調べてきてくれ。」
青葉「この新聞が鎮守府の情報そのものと言っても過言じゃありませんよ?」フンス
青葉は自信に溢れている。
提督「殆ど空想小説の様な記事ばっかりじゃねえか。」
青葉「酷い!調べた事柄に対して私なりの意見、感想を織り混ぜているだけなのに!」
提督「それがいかんと言ってるんだ。まったく・・・」
青葉「うぅ・・・。頑張ったのに。」(涙)
提督「泣くな泣くな。読んでやるから。」スッ
青葉「ありがとうございまーす!後で感想聞かせてね。」ケロッ
提督「それ違う娘のセリフな。」
青葉が執務室を出た後、提督は新聞に軽く目を通す。
・鎮守府に珍客?嵐の旅人 Sさん襲来
提督(襲来って、白瀬さんは怪獣か。)
・水道水の異臭問題解決へ。深まる謎のゴミ
提督(この件はまだ調査中だな。だけど青葉の結論が異次元からゴミが降り注いだって。そんな訳無いだろう・・・。)
・遂に我らがビッグセブンが帰還。
・かんたん!間宮流消臭術!
・その他の記事。
提督(読むと言ったからには後でちゃんと読まないとな。さて、こっちは・・・)
提督は一旦新聞を置き、郵便物を手に取り一つ一つ確認する。
提督「んん? なんだこれ、招待状?」
その中の1通が紅鎮守府宛の招待状だった。
提督「誰からだ?どれどれ・・・おお!磯風からか。」
差出人はかつて紅鎮守府に所属していた磯風からだった。
決戦終結後に退役し、今は普通の生活を送っているはずだった。
提督「しかし、招待状とは一体・・・」ガサガサ
手紙の内容は簡単に言えばこうだった。
〔拝啓、紅鎮守府 提督様 艦娘の皆様。 私、磯風はこの度婚約致しました。〕
提督「ふんふん。あー、磯風も婚約したのかぁ・・・え゛っ?」
ゴシゴシ
提督は目を擦り、手紙をよく見る。
何度見ても゛婚約゛と書いてある。
提督「え゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇぇー!?」バターン!
ゴンッ!!
理解した提督は椅子ごと後ろに倒れ、壁に頭を打ってしまった。
提督「おうふっ・・・」ガクッ
青葉「ど、どうしたんですか!?提督!」ガチャッ
提督声を聞いた青葉が戻ってきた。
青葉「提督?!しっかりしてください!」ユサユサ
提督「・・・・・・・・」チーン
青葉「あ、駄目だこりゃ」
時刻は13時が迫っていた。
=====================
パチッ
提督「・・・・あれ?知らない天井だ」
目を覚ました提督が見知らぬ天井を見て声を出す。
困惑していると隣から声がした。
長門「目が覚めましたか。」
提督「おわ!な、長門・・・いつ帰ったんだ?」
長門「提督が気絶している間に帰還しました。執務室で倒れていたそうですが?」
提督「え?あ、もう18時じゃないか。そんなに寝てしまっていたのか・・・。すまん。出迎え出来なくて。」ペコッ
長門「もっと体調には気を配って欲しい。提督の代わりはいないのですから。」
どうやら体調管理を怠ったと思われているようだった。
提督「あぁ。だが今回は過労とかじゃないんだ。」
長門「兎に角。夕食まで休んでおいて頂きたい。戦果報告は明日改めてさせて頂く。」
提督「あ、そうか。間宮さんにお願いしていたんだった。」
長門たちが帰還するにあたり提督は間宮に豪華な食事をお願いしていた。
長門「貴方がいないならどんな豪華な食事も、皆物足りなさを感じてしまう。」
提督「んな大袈裟な。」
長門「提督は自分が思っているより信頼されていると言うことです。さて、気がついたと皆に報告して来よう、と思ったのですが。」チラッ
立ち上がった長門が扉に目をやる。
扉ガラッ
それとほぼ同時に医務室の扉が勢いよく開いた。
提督「ん!?」
葛城&潮「提督へ突撃ー!」
提督「おわぁぁぁあ!?」ダキッ
飛び込んできた潮を提督は受け止める。
潮「提督~」
葛城「帰ってきたら執務室で気絶してたって聞いて、心配したのよ?」
提督「すまんすまん。もう大丈夫だ。」ナデナデ
長門「ほら、言った通りでしょう?」
提督「そうだな・・・。」
葛城「間宮さんが夕食の用意が出来たって!提督、食べれそう?」
潮「ど、どうですか?」
提督「ああ。もちろん一緒に食べるぞ。」
提督はベットから身をお越し、立ち上がる。
提督「さぁ、行こうか、みんな。」
潮「はい!」
葛城「行きましょう。皆待ってますよ。」
長門「ああ。」
四人は医務室を後にして食堂へ向かった。
食堂では既に全員集まっており、準備は整っていた。
隼鷹「提督遅いよ~。」ヒャッハー
そこには別の意味で整っていた隼鷹が居た。
隼鷹「心配してたんだよぉ?」グビグビ
長門「酒瓶片手に言うセリフじゃないな。」
提督「やっぱり先に飲んでやがる」
間宮「すいません。止めたんですけど・・・」
大淀「止められませんでした。」
隼鷹「ごめんって。久しぶりだったからさ~」
大淀と間宮は申し訳無さそうに提督に言った。
提督「よし!今日位はいいだろう!」
隼鷹「流石提督!パーッとやろうぜ!」
提督は皆を席に着かせて挨拶をする。
提督「まず討伐班のみんな。ご苦労だった。全員無事に帰ってきてくれて、嬉しく思う。鎮守府班もご苦労だった。色々と話したい事はあるが、今日は堅苦しい話は無しで楽しんでくれ。それでは、無事を祝って乾杯!」
全員「かんぱーい!」
提督(久しぶりに皆が集まったんだ。これくらい良いだろう。)
その日の宴会は深夜まで続いた。
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長門達の帰還から数日が経った。
執務室に長門を呼び、提督は長門達が不在時の出来事を話した。
長門「私達がいない間にそんな事が・・・」
提督「あぁ。新しい敵だ。今までの深海棲艦とはなにか違うらしい。あの四人が手も足も出なかったんだ。」
長門(今になって新種か・・・。やはり私は残るべきだったか。)
長門「この報告書によれば敵の行方は不明・・・」
提督「そうなんだ。最後は4人とも気絶していた。だが敵の行方はそれ以降不明。なぜ4人を見逃したのか・・・」
提督「それ以外にも謎の人物の存在も気になる。あれから大本営も調査部隊を編成して調べてくれているんだが・・・」
長門「今の所は進展なしですか。」
提督「そう言う事だ。」
提督は白瀬の事は秘密にした。
それは長門達が帰って来る前に鎮守府メンバーにも伝達済みだ。
青葉の新聞も回収し、内容を変更した。
提督(一般人をここに入れたなんて知ったらなに言われるか分からんからな。)
長門「こちらはほぼ報告書の通りですが、ひとつ気になる事がありました。」
提督「気になる事?」
長門「今回出撃した海域近くの町で聞いた話ですが、約一ヶ月前にも深海棲艦の出現があったそうです。」
提督「一ヶ月前?おかしいな・・・。そんな報告はなかったはずだが?」
提督は過去の出撃要請の履歴を見る。
だがそんな報告は存在しなかった。
長門「そう。この件はこちらに出撃要請が来ていません。」
提督「つまり、出現のみで攻撃して来なかったからか?だが通報くらいしてほしいな・・・」
今や深海棲艦も少数となり、闇雲に人類を攻撃してくる事は殆どなくなった。
ゆえに出現したとしても、直ぐに姿を眩ませた場合は通報が無い事もある。
長門「いえ、話はここからです。その深海棲艦は特徴を聞く限りでは”ル級”と思われます。ル級は出現後、直ぐに主砲を発射。砲撃は港にあった漁船に直撃しました。」
提督「被害が出てるじゃないか!」
長門「更に攻撃を継続しようとした時に、一人の艦娘が現れたそうです。そして5分と経たずにこれを撃破。その後、その艦娘は何処かへと去っていったとの事です。」
提督「どう言うことだ?今や鎮守府はここだけで、大本営所属の艦娘が出撃したと言う報告も無い。
提督「しかも一人なのが更におかしい。野良艦娘とは考えられないし一体誰が・・・。」
長門「街の住人はこの鎮守府からの出撃した艦娘と思っていたそうです。」
提督「だから報告があがっていないって事か。うーん、正体不明の艦娘か。」
長門「何かが起こりはじめています。早急な対処が必要かと。」
提督「わかった。大本営と連携して直ぐに対策を練ろう。」
長門「わかりました。では、失礼します。」
提督「ああ、ご苦労様。それと、すまないが雪風に執務室に来るように言ってもらえないか?」
長門「何かあったのですか?」
提督「あー、実はな・・・。これだ。」ガサガサ
提督は先日届いた招待状を長門に見せる
長門「これは招待状ですか」
提督「次の週末に行われる婚約記念のパーティーがある。それの招待状だ。」
長門「実にめでたい話です。ですが、あの磯風が・・・。」
提督「俺も驚いたよ。んで気絶した。」
長門「分かりました。伝えましょう。」
ガタッ
(これはスクープです!さっそく記事にしなければ。)
長門と提督はなにかの気配を感じていた。
長門「止めますか?」
提督「いや、いいよ。 悪い報せじゃないんだ。皆にも伝えようと思ってたしな。」
長門「分かりました。では雪風を呼んできましょう。」
提督「よろしく。」
長門が退出して10分程で雪風がやって来た。
雪風「失礼します。しれぇ!なにかご用でしょうか?」
提督「ああ。ご苦労様。早速だがこれを見てくれ。」スッ
雪風「招待状・・・ですか?誰からでしょう?」
提督「見れば分かるし、驚くぞ。」
雪風は招待状の中身を見る。
雪風「あ!磯風からだ!・・・・えっ!?」
手紙の内容を理解した雪風は小刻みに震えだした。
雪風「っ・・・っ。」プルプル
提督「ゆ、雪風?」
雪風「やったぁぁぁぁっ!」ピョンピョン
雪風は跳び跳ねながら喜んでいる。
提督(自分の事のようにとは、まさにこの事だな。)
雪風は提督に抱きついてくる。
提督「うぉ!」ダキッ
雪風「しれぇ!嬉しいです!凄いです!!めでたいです!!!」ギュウゥゥ
提督「ゆ、雪風っわかったから・・・。く、苦しい・・・」
雪風「あ、すいません!舞い上がってしまって・・・。」
提督(妹の婚約だからな。当たり前か。)
提督は雪風を落ち着かせ、話を再開する。
提督「さて、書いてある通りだが、この週末パーティーがある。参加は俺と雪風の二人で行く。」
雪風「皆と一緒にはいけないんですね。」
提督「気持ちはわかるが、今回は婚約記念の前祝いだからな。招待状にも二人までと書いてある。それに全員で行くと鎮守府が留守になってしまうからな。」
雪風「そっか。そうですね。」
提督「心配しなくても式には皆で出席出来るようにするさ。」
雪風「はいっ!今から凄く楽しみです!」
提督(にしても、パーティーを開くと言うことは相手は良いところの出身なのか?他の娘からも報告とか式の招待状は来たことあるけど、前祝いってのは初めてだな。相手の名前は・・・西円寺か。なんか聞いたことあるな、誰だっけ・・・)
こうして二人はパーティーに参加する事になった。
その後配られた青葉新聞の号外によって参加希望の艦娘が提督に詰め寄ったのだが、招待状のお陰で事なきを得た。
=====================
そして週末。
提督「正装・・・、装着!」ピシッ
北上「おおー。割りと似合うじゃん提督。」
提督「割りととはなんだ。」
正装を着た提督を北見がからかう。
北上「いやぁ、普段は軍服しかみないからさぁ。服装って大事なんだねぇ。」マジマジ
葛城「確かに。」
大淀(格好いい。)ホレボレ
明石「提督ー。雪風ちゃんは準備出来ましたよ?」
雪風を手伝っていた明石がやって来た。
提督「おう。俺も準備出来ているぞ。」
潮「ほら、雪風ちゃん。恥ずかしがらないで。」
響「似合っているから大丈夫だよ。」グイ
潮と響に連れられ雪風が入ってくる。
雪風「うぅ。こんな可愛い服、着た事ありません」カァァァ
青と水色の2色でデザインされたワンピースに身を包み、軽く化粧をした雪風は別人に見えた。
北上「おおー。雪風っち別人じゃん。」
間宮「まあ、凄く可愛いわ。」
長門「うむ。恥ずかしがることは無いぞ、雪風。」
雪風「しれぇ、どうでしょうか・・・?どこか変じゃないですか?」
提督「いいや。とても良く似合っているな。」
北上「提督もそうだけど、雪風っちはもっと新鮮だねぇ。」
隼鷹「かぁー。あたしも行きたいねぇ。」
長門「お前は酒目当てだろうに。」
隼鷹「もちろんさぁ。パーティーで飲まずしてどうするよ。」
提督「皆、式当日は隼鷹が留守番してくれる事が決まったぞ。」
隼鷹「なんでさ!?言ってないよね!?」
騒いでいる所に青葉が入ってきた。
青葉「提督!車が来ました。」
提督「おっと、もう時間か。皆、後をよろしく頼む。長門、大淀、何かあったらすぐ連絡を。」
長門「お気を付けて。」
大淀「分かりました。」
提督「では、行ってくる。」
雪風「行ってきます!」
艦娘s「行ってらっしゃーい」。
青葉「正門までご一緒します。」
提督「?構わんが・・・」
青葉「では行きましょー。」
正門に到着して直ぐに青葉はカメラを取り出す。
青葉「さあさあ、お二人。記念に一枚。」
提督「そんな事だと思ったよ。」
青葉「そう言わずに。ほら、間に合わなくなりますよ?」スッ
提督「わかったよ。雪風もいいか?」
雪風「もちろんです!しれぇとツーショットなんて光栄です!」
雪風は直ぐに提督の横に立つ。
青葉「いきますよぉ。はいっ!チーズ!」カシャッカシャッカシャッカシャッカシャッカシャッカシャッ
提督「一枚じゃ無いじゃないか。」
青葉「細かい事は気にせず気にせず。」
提督「まあいいか。じゃあ留守を頼むな。」
雪風「写真後で下さいね!青葉さん!」
青葉「もちろんです。1番いいやつをお渡ししますね。行ってらっしゃいませー。」
二人は車に乗り込みドアを閉める。
車の発進を見送り、青葉はカメラを見ながらにやける。
青葉「正装の雪風さんに提督。レアなコレクションになりますよこれ」スリスリ
終始にやけながら青葉は鎮守府に戻っていった。
=====================
会場は鎮守府から一時間程の場所にある海岸沿いのホテルだ。
提督「立派なホテルだな。これを貸しきってとは、派手にやるな。」
二人は受付を済ませ、会場に移動していた。
周りから見れば完全に親子連れである。
雪風「わぁ、色んな方がいますね、しれぇ!」
提督「ああ。軍関係者も結構いるな。磯風と面識がある人達か?」
雪風「磯風の婚約相手、気になります!」
提督「そうだな。まだ名前しか分からないしな。でもこの名前、どっかで聞いたことあるんだが・・。」
提督が考えていると聞き覚えのある声がした。
磯風「提督、姉さん!来てくれたのか!」
声のした方を見るとそこには磯風がいた。
雪風「磯風!」
磯風を見た雪風はすぐに駆け寄っていく。
提督「久しぶりだな。まずは婚約おめでとう。元気そうで何よりだ。」
磯風「ありがとう。提督と姉さんも元気そうだな。」
雪風「磯風~。おめでとう!おめでとう!」ダキッ
雪風は祝福しながら磯風に抱き付く。
磯風「ははっ。ありがとう、雪風。」
提督「いい光景だ。磯風の服、似合っているな。」
磯風「そうだろう?彼に選んで貰ったんだ。」
磯風は嬉しそうにドレスを見せてくる。
雪風「磯風に良く似合ってるよ!見違えちゃった!」
磯風「姉さんの方こそ見違えたよ。凄く可愛いな。」
提督達が話していると後ろから青年が声をかけてきた。
???「磯風。ここに居たんですか。」
磯風「ああ。ちょうどいい。紹介しよう、この人が私の夫、西円寺亮だ。」
西円寺「はじめまして。西円寺亮と申します。」ペコッ
提督(おお。好青年・・・。)
西円寺「磯風。こちらの方々は?」
磯風「以前話した私が所属していた鎮守府の提督と、私の姉だ。」
提督「初めまして。紅鎮守府提督の渋川と申します。」ペコッ
雪風「初めまして!磯風の姉、雪風と申します、よろしくお願いします。」ペコッ
西円寺「ああ、お二人が磯風の!お会いできて光栄です。渋川提督。雪風さん。」
雪風「格好いい人だね磯風。」キラキラ
磯風「だろう?なにせ私が選んだ人だからな。」フンス
西円寺「そうだ磯風。そろそろ始まる時間だよ。」
磯風「もうそんな時間か。提督、姉さん。また後でな。」
西円寺「それでは一旦失礼します。」
提督「はい。」
雪風「また後でねー。」ブンブン
雪風は元気良く手を振る。
提督(知らない人が見たら完全に雪風が妹と思うだろうな。)
提督「さて。知った顔が何人か居るし、挨拶して回るか。」
雪風「はいっ!お供します。」
二人はそれから関係者に挨拶をしていった。
提督(見た感じ海軍関係も陸軍の関係者もいるな。西円寺君は軍関係者なのか?西円寺・・・あっ!!思い出した!)
先ほどから雪風は招待客を気にしていた。
雪風「しれぇ・・・」
提督「ん?どうした?」
雪風「会場に着いてからから結構時間がたったんですが・・・」
提督「そうだな。」
雪風「他の姉妹の姿が見えなくて・・・」
提督「たしかに・・・。」
雪風「どうしたんでしょうか・・・」
どうやら姉妹の姿を探していた様だった。
雪風の姉妹艦、陽炎型には轟沈した者はいない。
全員が退役し、磯風と同じく普通に暮らしている筈だった。
だが会場に未だに雪風以外が現れなかった。
提督(たしかに、いくら会場が広いと言っても誰とも会わないし、理由があって来れないのはあり得るが、全員はおかしいな)
提督「・・・心配しなくてもきっと大丈夫だよ。」
雪風「はい・・・」
姉妹の事が気になり雪風の表情は少し暗かった。
提督「久しぶりに結構喋ったな。あそこのカウンターで飲み物を貰って少し休むか。」
雪風「分かりました。」
二人は会場の隅にあるバーカウンターに足を運んだ。
提督「すいません。飲み物を頂きたい・・・ん?」
白瀬「はい!何をご希望でしょうか・・・あれ?」
そこにはつい先日別れた筈の白瀬がいた。
雪風「あっ!?し、白瀬さん!」
白瀬「雪風さんまで。どうしてこちらに?」
提督「それはこっちの台詞ですよ。私達二人は招待客です。このパーティーの主役の磯風は、紅鎮守府に所属していた元艦娘なので。」
白瀬「そうでしたか!」
雪風「白瀬さんはどうしてここに?」
白瀬「アルバイトです。旅にはお金は必要不可欠なので。そうでしたか、元艦娘の方だったんですね。」
提督「もしかして今日がどういった内容か、わかって無かったんですか?」
白瀬「実は今日来るはずだったバーテンダーが体調不良でこれなくなったんです。ホテルの近くを通りかかった時に、ちょうど関係者がその話をしていて名乗り出たんです。飛び入りだったので詳細を知らされていなくて・・・。」
提督「そうですか。それにしても、バーテン経験があったんですね。」
白瀬「いいえ、ありません。」キッパリ
雪風「えぇ!?そ、それで大丈夫なんですか?」
白瀬「はい、マニュアルがあるので何とでも。意外とどうにかなるもんですね。」
既に他の客から注文されたドリンクを手際よく作成していく白瀬をみて二人は呆気に取られる
提督「普通は出来ませんよ。白瀬さんは器用なんですね。」
雪風「私もそう思います。」
白瀬「あはは。ありがとうございます。では、何をご希望でしょうか?何でもお作りしますよ。」
提督「あまり酔う訳にいかないので。すいませんがソフトドリンクをお任せで。」
雪風「私は提督と同じが良いです!」
白瀬「分かりました。せっかくなので、私特製のドリンクをお出しします。」
そう言うと白瀬は手際よく、飲み物を用意していく。
白瀬「さあ、どうぞ。」スッ
出てきたのは透明で炭酸系の飲み物だった
提督「ありがとうございます。」
雪風「いただきます!」
ゴクゴク
提督「う、旨い。」
雪風「これ、美味しいです!」
提督「うん。どこか懐かしさも感じる。さっぱりしていて飲みやすいな、これ。」
白瀬「お口に合って良かったです。」
雪風「これ何て言うんですか?」
白瀬「な、名前は決めていなくて。ただ、八割はラムネです。」
提督「あぁ、懐かしさはラムネの味だったのか。」
白瀬の作った特製ラムネにはまった雪風はその後3杯飲んだ。
雪風「・・・」プルプル
白瀬「大丈夫ですか?」
雪風「・・・すみません。ちょっと行ってきます。」
提督「ああ。ここで待ってるよ。」
案の定、雪風は花摘みに向かった。
提督(予想外だったが白瀬さんのおかげで雪風も表情が和らいだな。)
白瀬「雪風さん、何かあったんですか?」
提督「えっ?」
白瀬「いえ、勘違いなら申し訳無いんですが、こういった席なのに何処か表情が暗く感じたので・・・」
提督「よくわかりましたね。実は、雪風の姉妹達の姿がまだ見えなくて。それを気にしていたんです。」
白瀬「そうでしたか。」
提督「でも、白瀬さんを見つけてから表情が明るくなりましたよ。ありがとうございます。」
白瀬「いえいえ、私はなにもしていませんから。」
提督は白瀬と話ながら婚約相手が気になっていた。
提督(西円寺か。たしか陸軍の名家に同じ名前があったな。しかも艦娘の解体推進派の筆頭・・・。なにか、嫌な予感がするんだが・・・)
====================
会場へ戻りながら雪風はやはり姉妹の事が気になっていた。
雪風(しれぇはああ言ってくれたけど、皆どうしちゃったんだろう・・・。)
雪風(後で連絡してみようかな・・・。)
雪風「きゃっ!」ドンッ
考え事をしながら歩いていた為、前を良く見ていなかった雪風は誰かにぶつかってしまう。
雪風「す、すいません。余所見をしていて・・・」
ぶつかった相手は眼鏡を掛けた銀髪の女性だった。
???「おや、ちゃんと前をみないとな。」
雪風「あっ、服に口紅が・・・。」
???「うん?」
雪風がぶつかった場所には口紅の後が付いてしまっていた。
雪風「ごめんなさい!ど、どうしよう・・・」オロオロ
あわてる雪風にその人物は答える。
???「ああ、こんなもの気にしなくて良い。」
雪風「いや、でもそんな訳には、なにかお詫びを・・・」
???「よく出来た娘さんだね。なら、また何処かで会った時になにかお願いをしようか。」
そう言い残しその人物は立ち去ろうとする。
雪風「えっ?それってどういう・・・」クルツ
言葉の意味が理解できない雪風が振り返ったが、その人物は既にいなくなっていた。
雪風「あ、あれ?どこに・・・」キョロキョロ
周囲を見渡すがどこにも見当たらなかった。
雪風「あ、会場に戻らないと!」
雪風が会場へ戻っている途中、通路の奥で亮の姿が見えた。
雪風(あ、西円寺さんだ。)
西円寺「・・・っ。・・・。」
雪風(誰かと喋ってる?磯風かな。)
雪風(あれ?磯風じゃない・・・。男の人?)
亮「どういうことですか!?」
雪風「っ!」ビク
声に驚いた雪風はとっさに身を隠してしまう。
そこには西円寺亮と中年の男性が話をしていた。
亮「おかしいと思ったんです。やっぱり貴方が・・・」
雪風(誰だろう・・・)
亮「磯風の姉妹の方達が雪風さんしか来なかったのは貴方が招待状を揉み消したんですね!?」
???「だったらどうだと言うのだ?私に逆らったのだ。当然だろう。私がここに出席した理由も決して貴様達を祝福する為ではない。」
亮「父さん!何故そこまでするんですか!」
雪風(お父さん!? それに招待状を揉み消したって・・・)
西円寺父「何故?何度いったら分かるのだ。陸軍名家の西円寺家、その正統の長男が兵器と婚約?馬鹿馬鹿しい。」
亮「彼女は兵器じゃ無い!」
西円寺父「ほう、なら貴様は海に浮かべるのか?戦艦と同じ様に砲を背負い弾丸を放てるのか?傷を負っても風呂に入れば塞がるのか?」
亮「そ、それは・・・でも彼女は人間です!」
西円寺父「兎に角、私の制止を振り切ってこのような事をしたのだ。貴様とは西円寺家の縁を切らせてもらう。今日はそれを伝えに来たのだ。もう2度と会うこともあるまい。」
亮「・・・構いません。自分で選んだ道を行きます。」
西円寺父「勝手にしろ。大馬鹿者が」
西円寺父はそう言い残し、その場を立ち去ろうした。
雪風(酷い・・・!)
西円寺父が曲り角を曲がった時、雪風は我慢できずに西円寺父を呼び止める。
雪風「あの!」
西円寺父「なにかな?お嬢さん」
雪風「さっきの言葉、取消して下さい!」
西円寺父「ふむ。盗み聞きとは行儀の悪い。それに、君になんの関係があるのかね?」
雪風「私は磯風の姉、陽炎型8番艦の雪風です!」
それを聞いた途端西円寺父の態度が急変する。
西円寺父「ほう、あの兵器の姉妹兵器か。」
雪風「私達は兵器じゃありません!しれぇも言ってました!感情と魂をもった兵器は存在しないって!両方持ってる艦娘は人間だって!」
西円寺父「なるほど、君の司令官は随分と甘ったれた軍人なのだな。」
雪風「どういう事ですか!」
西円寺父「感情と魂と言ったかね?それこそ海軍が行った研究成果そのものなのだよ。」
西円寺父「軍の研究の1つに魂と感情の理論化と言う物がある。君達はその成功例に過ぎないのだよ。」
雪風「な!?」
西円寺父「やはり知らなかったのか。真実は時として残酷とは正にこの事だな。」
雪風「そんな・・・」
西円寺父「もっと自覚したまえ。死神の雪風。」
雪風「!」
それは・・・・雪風が一番聞きたくない言葉だった。
かつての大戦の武勲艦。
しかしその生存率の高さから異能生存艦や死神と形容される事もあった。
雪風「あ、ああぁ・・・」
西円寺父「君は良くも悪くも有名だ。君と出撃した艦娘は沈むのだろう?」
雪風(嫌、嫌!!)
雪風は耳を塞ぐ。
だが聞こえてくる。
西円寺父「ククク、唯一祝福に来たのがかつて自分に止めを刺した死神とは皮肉なものだな。」
雪風「嫌!聞きたくない!」ダッ
雪風は堪らずそこから走り出した。
西円寺父「ふん。涙まで真似るのか。」
西円寺父はそう言い残し会場から去っていった。
雪風「うっ、えぐっ」タッタッタ
涙を堪えながら夢中で走った。
会場の前を通りすぎた時、提督達は雪風が走って行くのを目撃した。
白瀬「あれ?今の雪風ちゃんじゃありませんでしたか?」
提督「なにかあったのか・・・。すいません、行ってきます。」ダッ
白瀬「わかりました。」
白瀬は提督を見送った。
白瀬(何があったんだろう、大丈夫かな・・・)
提督を見送った会場への入り口を見ていた時、あの人物が現れた。
白瀬「あれはっ!?」
???「・・・」ニヤッ
不気味な笑みを浮かべ、姿を消す。
白瀬「待てっ!」ダッ
白瀬は直ぐに彼女を追った。
曲がり角を曲がった瞬間白瀬を蹴りが襲う。
白瀬「っ!」サッ
当たる直前に上半身を捻って回避した。
白瀬「なんで貴女がここに・・・」
???「探し物をしていてな。そしたら楽しそうな事をしていたから参加しようと思ってね。」
白瀬「今度は何をするつもり・・・?」
???「酷いな。少し覗いただけでそんなことを言うなんて。」ヒュッ
先程まで離れていた距離が一瞬で詰まる。
白瀬も負けじと打撃で応戦する。
白瀬「っ、ふっ!」シュッ
???「はっ!」ドゴッ
白瀬の拳がかわされ腹部に攻撃が入る。
白瀬「がっ、」ガクッ
???「どうした?こんなもんか、今のお前は。」スッ
その手には白瀬のフュージョンリングがあった。
白瀬(いつの間に!?)
???「どうした?取り返してみろよ。」
白瀬「言われなくてもっ!」バッ
白瀬はリングを取り戻そうと何度も殴りかかった。
???「無様だな。白瀬と言うまがい物の名を名乗り、誰かの力を借りなきゃ戦えもしないか?」
白瀬「戯れ言を!お互いさまでしょうが!」ガシッ
白瀬は相手の腕を掴み、手首に膝を入れる。
???「っ」バッ
リングが手から離れ白瀬はリングを回収した。
再び振り返った時には既に相手の姿がなかった。
白瀬「どこに・・・っ!」
すると背後から声がする。
???「完全に錆び付いているわけでは無いようだな。」
白瀬「・・・私を災姫と闘わせてるのは貴女の仕業なんでしょ?何が目的」
???「お前が知る必要はない。また会おう。」スッ
白瀬「待て!!了戒!」(りょうかい)
後ろにいた筈の了戒は姿を消していた。
了戒はその時既にホテルの入り口に居た。
了戒「・・・もうすぐ私は本物になる。まがい物はお前だけだ。」スッ
了戒の手には、ある艦娘のカードが握られていた。
=====================
雪風はいつの間にかホテルの屋上に着いていた。
雪風「うっ、うわぁぁぁぁん」
堪えていた物が一気に溢れ出す。
雪風「うぅ、えぐっ。わだしは・・・私は・・・」
提督「雪風?」
雪風「!」
雪風が振り返るとそこには提督がいた。
提督「どうしたんだ・・・。何があったんだ?」スッ
提督が雪風に近づき涙を拭こうとする。
バシッ
提督「っ・・・。雪風?」
雪風はその手を払いのけた。
雪風「何で私なんかに優しくするんですか・・・」
提督「なんでって、当たり前だろう。雪風は俺の大切な仲間だ。」
雪風「っ!なんで・・・どうして・・・。造られた存在で!兵器で!”死神”なのに!!」
提督「!」
今の雪風からは普段の面影が感じられない。
自分の口からその言葉を言う程に雪風は混乱していた。
提督「誰に言われたんだ・・・?」
雪風「答えてください、しれぇ。私はなんなんですか・・・。軍の研究の成功例なんですか」
提督「なんの話だ?お前は、」ドォォォン
その時だった。
ホテルの付近で爆発が起こった。
提督「爆発!?」
雪風「!?」ダッ
雪風は屋上から付近を確認する。
ホテル近くの施設で火災が発生していた。
提督「事故・・・か?」
ドォォォンッ ドォォォン
提督の考えは外れ、再び轟音が鳴り響く。
提督「違う!砲撃か!一体何処から!?」
雪風「いたっ、あそこです!」
雪風が指差す方向には街へ砲撃する深海棲艦が確認できた。
提督「深海棲艦の残党か!なんたってこんな日に・・・。直ぐに鎮守府に連絡を!」スッ
提督は専用の無線機を取り出す。
雪風「私が、やっつけてやる!」ダッ
提督「雪風!待て・・・くそっ!」ピピッ
提督は鎮守府に連絡をとる
提督「こちら渋川!応答せよ!」
大淀「はい、こちら大淀。」
提督「大淀、よく聞いてくれ!ホテルの近海で深海悽艦が出現。既に町に向かって砲撃をしている。緊急出撃だ!」
提督は無線で連絡をとりつつ雪風を追った。
提督(くそっ!嫌な予感が当たっちまった!)
=====================
街への砲撃はなおも続く。
雪風はホテル近くの海岸に向かっていた。
雪風「敵は・・・4体!私が何とかしないと!」
雪風は艤装を展開しようとする。
バチッ
雪風「痛っ!どうして!?」
艤装は展開されず雪風は弾かれる。
提督「雪風!」
雪風「て、提督!艤装が使えないんです!」
提督「当たり前だ!ドック以外では艤装は装備できない。
無理に展開すれば体にどんな負荷がかかるか分からん!」
雪風「でも、今は私しかいません!やるしかないんです!」グッ
再び艤装を展開しようとする雪風を提督は止める。
提督「今の自分をよく見ろ!そんな状態のお前を行かせられん!」
雪風「!」
雪風の艤装は足元しか装備されていなかった。
提督「耐えてくれ雪風。今鎮守府に連絡した。すぐに皆が到着する。」
雪風「・・・わかり、ました。」ギリッ
雪風(何も出来ないなんて・・・。もっと力が・・・)
=====================
白瀬は状況をホテルの窓から確認し、海岸まで走っていた。
白瀬「こんな時に来るなんて!」スッ
フュージョンリングを手にした白瀬は了戒の言葉を思い出していた。
白瀬「まがい物か・・・。確かにこれは私の力じゃない。でも今は出来ることをっ!」スッ ピュイン
白瀬はカードを取り出し名前を呼ぶ。
白瀬「日向さん!」
〔戦艦 日向!〕
日向(いいだろう。)
白瀬「響さん!」
〔駆逐艦 響!〕
響(うん。)
白瀬「熱いヤツ!頼みますっ!」ギュイン
フュージョンアップ!!
〔航空戦艦 白瀬 フェニックスマイト〕
敵のリ級が更に主砲を発射しようとした時だった。
白瀬「おぉりゃっ!!」バキッ
白瀬は飛び蹴りをお見舞いする。
リ級「!?」
白瀬「紅に、燃えるっ!」
名乗りをあげた白瀬に敵の注意が向く。
白瀬(敵はリ級、ネ級とイ級の4体編成か。了戒の仕業では無さそう。)ガシャッ
白瀬「一気に決める!」ドンドンドンッ!!!
雪風「あ、あれは・・・」
提督「誰なんだ?あの艦娘は・・・。遠くてよく見えない。」
雪風「も、もう敵が一体だけに・・・」
提督(確かに凄い。あれが長門の言っていた正体不明の艦娘なのか?)
白瀬は次々と深海棲艦を沈めていく。
後はネ級一体になっていた。
白瀬「はぁぁぁっ!」ボウッ
白瀬は拳に炎を宿しネ級に向かって突進する。
ネ級「っ!」ドンドンッ!
白瀬「あまいっ!」スッ
突進しつつ砲撃を回避し、ネ級の顔に一撃を入れる。
白瀬「だぁっ!」ドゴッ
ネ級「っ、っ!」
海岸で見守っていた提督と雪風は白瀬の戦闘スタイルを見て驚く。
雪風「凄い・・・。長門さんみたいな戦い方です!」
提督「なんだあの戦い方・・・。普通の艦娘じゃないぞ・・・」
追い詰められたネ級は主砲を乱射し始める。
白瀬「!?往生際が悪い!くっ!」
数発が白瀬の足元に着弾し白瀬は一瞬身動きがとれなくなった
発射された内の一発が海岸に居た二人に向かっていった。
白瀬「し、しまった!危ない!」
提督はそれに逸速く気が付き、雪風を庇う。
提督「危ない!雪風!ぐあぁぁっ!」ドォォォン!
雪風「しれぇっ!?」
深海悽艦の放った砲撃は提督達の近くに着弾した。
雪風「う、うぅぅ・・・はっ、しれぇは!?」
雪風の目に写ったのは自分を庇い、傷を負った提督だった。
雪風「あ、あぁ・・・。」
提督「だ、大・・・丈夫か、雪風」ガクッ
雪風「しれぇ?しれぇ!?しっかりしてください!」
いくら呼んでも返事がなかった。
雪風の瞳から光が失せる。
雪風(ま、また、私が、私のせいだ・・・。私が居たから・・・しれぇは・・・・嫌だ・・・嫌だ嫌だ!)ズズズズッ
雪風の心に呼応するように何処からとも無く、黒い霧が現れる。
白瀬「あれはっ!」
雪風「うわぁぁぁぁぁあぁぁぁぁっ!」
白瀬「駄目っ、雪か・・・うわっ!」ドンッ
雪風に気を取られていると後ろから攻撃を受けた。
白瀬「ぞ、増援!?くっ、こんな時に!」
そこには新たに現れた深海棲艦の姿があった。
=====================
同時刻
その頃鎮守府では提督の連絡うけ、出撃の準備に取り掛かっていた。
長門「その後提督からの連絡は?」
大淀「それが、先程から提督の無線に反応がありません。状況は悪化していると思われます。」
長門「急ごう。潮、北上は葛城に続け!残りの艦娘は私と共に鎮守府及び近海の警護にあたる!」
艦娘S「了解!」
長門の号令で全員が出撃する。
長門ら救援班と別れ、近海警備にあたるメンバーがそれぞれの持ち場に着いた。
そんな中響だけは、異様な空気を感じ取っていた。
響(なんだろう。この感覚・・・。前に白瀬さんがダムに行った時と同じ感覚だ。白瀬さんが私の力を使っている・・・?)
胸騒ぎを抑えながら周囲を警戒していた。
響(なんだろう?あの空・・・)
響が晴天に似つかわしく無い一部だけ黒い空を発見した時だった。
響「雲じゃない・・・?」
その時紅い閃光が走る。
ピカッ
響「うわっ!ら、落雷?」
落雷に気が付いた青葉から通信が入った
青葉「響さん!あなたの近くに落ちましたが、大丈夫ですか!?」
響「うん。私は大丈夫だよ。・・・えっ?」
落雷のあった場所から黒い霧が発生し始めていた。
響「火災・・・?いや、違うっ!」
青葉「どうしました?今向かいます!」
霧は意思を持っているかの如く海面に近付き、次第に形を帯びていく。
響「まさか、またあの敵!?」
青葉「響さん?大丈夫ですか!?」
異変を感じた青葉が合流した。
響「青葉さん、あれ」
青葉「!まさか、この前の!?」
禍駆逐災姫が現れた時と同じような霧。
だが霧が形を成したのは自分達がよく知る顔だった。
青葉「えっ・・・?」
響「ゆ、雪風・・・?」
雪風?「・・・・」ユラッ
青葉と響の声には反応せず、少しずつ近寄ってくる。
青葉「止まりなさい!何者ですか!?」
反応はない。
青葉「それ以上来たら、撃ちますよ!?」ガシャッ
響「青葉さん!待って!」
ドンッ!
青葉が主砲を1発発射する。
弾丸は相手の体をすり抜けた。
スカッ
青葉「えっ!?当たってない?」
響「すり抜けた・・・?」
雪風?「マモラ・・・ナイト・・・、イマ・・・イクカラ・・・」スゥ
すると青葉があけた風穴から霧状になり、空に飛んでいった。
青葉「一体なんだったんでしょう・・・。襲っては来ませんでしたが。」
響「顔は雪風だった。でも雰囲気は別人だったし、艤装も真っ黒でいつものとは違って見えたよ。それと、」
青葉「どうしました?」
響「霧の飛んでいった方角が、提督達がいる方角だった。」
青葉「たしかに!直ぐに連絡を入れます!」
響(嫌な予感がする。雪風、提督。どうか無事でいてほしい。)
===================
雪風「あぁぁぁああぁっ!」
海岸で叫ぶ雪風に呼応する様に空から黒い霧が雪風を取り巻いた。
次第に霧は雪風の中に入り込むように吸収されていく。
霧が完全になくなった時、そこには真っ黒な艤装を展開した雪風が立っていた。
先程と違い艦娘としての戦闘力を感じさせる。
だがその表情には普段の雪風の面影はなくなっていた。
雪風?「・・・。」
白瀬「あの姿はまさか・・・」
雪風が発する異様な気配に気が付いた深海棲艦は主砲を発射する。
白瀬「危ない!」
丹陽「・・・」スッ
ガキンッ!
雪風は右手で弾丸を払いのけた。
雪風の目は赤く染まっている。
丹陽「おまえたちがぁぁぁっ!」ゴウッ
丹陽となった雪風は赤黒いオーラを纏いながら海を滑り、白瀬を通り越して深海棲艦に向かっていく。
白瀬「待って!雪風さん!」ダッ
白瀬も丹陽の後を追う。
丹陽「・・・」ボンボン
白瀬「ば、爆雷!?」
白瀬は爆雷を確認し急ブレーキをかけ、進路を変えようとした。
丹陽「・・・」ドンッ
丹陽はそれを予測するように爆雷に向けて後ろを見ずに主砲を発射する。
白瀬「なっ!うわっ!!」
着水する前の爆雷は白瀬の目の前で爆発し、白瀬は大きなダメージを受ける。
ドオオオオオオンッ!!
白瀬「ぐうっ・・・。直撃は、避けたけど・・・」フラッ
日向(くっ、損傷は大きいな・・・)
響(不死鳥の名は、伊達じゃない・・・)
白瀬「この装甲がなかったら終わってたかも・・・」中破
思いもよらない攻撃にフュージョンが解除しかかっていた
丹陽は先程出現した深海棲艦に単艦で突っ込む。
リ級とネ級に加えて今度はヲ級がいる10体ほどの編成。
だが丹陽となった雪風の相手は務まらなかった。
主砲と魚雷を精確に当てていく。
反対に相手の攻撃には全く被弾しない。
ヲ級の艦載機の攻撃も全て避けきった
命中、回避が100%だった。
そしてなにより、必要以上に相手に弾丸を撃ち込んでいく
数分もしない内に敵はヲ級ただ一人となった。
ヲ級「・・・!」
最後に残ったヲ級も艦載機をすべて失った。
丹陽「どうしたの?もうおわり?」ドンドンドンドンッ‼
丹陽はヲ級の手足を撃ち抜き身動きが取れないようにする
ヲ級「ヲ!・・・っ!」ガクガク
丹陽「ははっ、おまえたちもきょうふをかんじるんだ。でもね?」ズリュッ
ヲ級「ヲッ・・・」ゴフッ
丹陽「そんなものきょうふのうちにはいらないよ」グリッ
ヲ級「ッ・・・」
丹陽「このままうったらどうなるとおもう?」
ヲ級「!」ドンッ!
丹陽「せいかいはきえてなくなるんだよ」
丹陽はヲ級に砲身を突き刺しそのまま発射した。
木端微塵となった相手を見て丹陽は笑う。
丹陽「あははははっ!やったよ?てきをたおしたよ?あれ?なんで?・・・なんでだれもいないの?あ、あぁぁぁぁっ!!」
白瀬(駄目だ、正気を失ってる・・・目を覚まさせないと!)
白瀬はゆっくりと雪風に近付き声をかける。
白瀬「雪風さん・・・」
丹陽「!」キッ
白瀬に気が付いた丹陽は笑う。
丹陽「なんだぁ。さっきたおしたとおもったらまだいたんだぁ。」ドンッ!
白瀬「!」サッ
白瀬に対してなんの躊躇いもなく主砲を頭めがけて発射した。
白瀬「雪風さん!しっかりして!」
丹陽「ゆきかぜ?」フッ
白瀬「消えたっ!?」
白瀬の目の前にいた筈の丹陽が消える。
丹陽「だぁれ、それ?」ドガァァン!
白瀬「ぐぁぁあぁぁあっ!」大破
丹陽「すごいなぁ。いまのでしずまないなんて。でももうおわりでしょ?」
白瀬「ぐっ、ぅう」ガクッ
白瀬(ギリギリ耐えれた・・・けど、)
砲身は刺さらなかったがほぼゼロ距離の砲撃に白瀬は大破に追い込まれた。
日向(しっかりしろ!一旦融合を解け!)
白瀬(!?ダメです!今フュージョンを解除したらほとんどのダメージが二人に行きます!そんなことをしたら二人は魂に傷を負ってしまいます!)
響(かまわないよ!そうしないと貴女が沈んじゃう!)
日向(私達は大丈夫だっ!安心しろ!上手くやる!)
白瀬「で、でもっ!」
日向(えぇい!まどろっこしい!響、やるぞ!)
響(はい!)
丹陽「なにをひとりでしゃべってるの?あなたもわたしがこわい?だからおかしくなった?」
白瀬「ま、まっ」ピカッ
丹陽「!?」
次の瞬間、白瀬は粒子となって丹陽の前から姿を消した。
丹陽「あれ?どこいったんだろう。いいよ、さがすのはとくいだから。」スッ
シュウウゥ
白瀬は丹陽から少し離れた岩礁の裏で再生した。
白瀬「はぁはぁっ!お二人は!?」スッ
日向(まあ、こうなるな。)大破
響(問題、ないよ。)大破
白瀬「どこがですか!傷だらけじゃないですか!」
日向(上手くやると言っただろう?)
白瀬「兎に角!今は休んでください!」カシャン スッスッ
白瀬は二人のカードをホルスターにしまった。
白瀬(この中なら入渠と同じく回復できる。二人のおかげで私は傷が少ない無いけど・・・、どうする?)
岩礁から少し顔を覗かせる。
丹陽は先程の場所から動いていなかった。
白瀬(索敵してるか。あれ?あの双眼鏡は・・・石碑に供えられていたのと同じだ・・・)
丹陽は片方のレンズがない双眼鏡で辺りを見ていた
丹陽「みいつけた。」クルッ
白瀬「嘘っ!見つかった!?」
丹陽はとてつもないスピードで白瀬に向かってくる。
白瀬「こうなったら、取って置きの力を!」スッ ピュィィン
白瀬はリングを取り出し名前を呼ぶ
白瀬「夕立さん!」
〔駆逐艦 夕立!〕
夕立(任せるっぽい!)
白瀬「綾波さん!」
〔駆逐艦 綾波!〕
綾波(任せてください!)
白瀬「悪夢と鬼神の力、お借りします!」ギュイン
フュージョンアップッ!!!
〔駆逐艦 白瀬 ナイトメアバーサーカー〕
白瀬「はぁぁぁっ!はっ!!」シュウウゥ
丹陽「あれ?ふくがわたしみたいになった。」
白瀬「逆境、不屈!闇を討つ!」
丹陽「それでわたしにかつつもり?」
白瀬「私は、勝つつもりはありません!」
綾波(そう。私達は友達を!)
夕立(貴女を助けるっぽい!)
丹陽「あれ?さんにんくらいこえがする。おかしいな?でも」ドンッ!
白瀬「!」サッ
丹陽「あなたをこわせばわかるよね。みんなをまもれるよね。」
白瀬「雪風さん!」ヒュンッ
白瀬(今の雪風さんの力はまさに改二。この世界にはまだ存在しないはずなのに。)
白瀬(存在しないはずの力故に、受け止めきれていない・・・)スチャッ ドンドンッ!
丹陽「あははははっ!」
白瀬は考えていた。
雪風に取り込まれた霧を晴らすには一度雪風を気絶させなければ難しい。
丹陽となり駆逐艦とは思えない強力な力を使う雪風をどう対処するのか。
丹陽「あなたつよいね。さっきのきずはもうないし、こんなたたかいはひさしぶりだなぁ。」
夕立と綾波の力で駆逐艦となり、回避率とスピードは丹陽に引けを取らなくなった。
白瀬「弾は回避出来るようになったけど・・・くっ!」ヒュンッ
だが互いに当たらないのでは、白瀬の活動時間が限界を迎えてしまう。
白瀬(いくら狙っても当たらない。これじゃ、フュージョンしていられる時間が持たないかもしれない・・・)
白瀬「魚雷発射!」バシュッ
丹陽は魚雷を回避するために左に避ける。
丹陽「わかりきったこうげきだね。」ヒョイ
丹陽は魚雷をいとも簡単に魚雷を避ける。
白瀬「魚雷は布石!ここのタイミングなら!」
丹陽が回避したのに合わせて足元目掛けて主砲を放つ。
丹陽「!」ドガァァン!
白瀬「今のは当たった!この火力なら・・・」
弾は足元に着弾し、爆発がおこる
丹陽「ゆだんたいてき・・・」ドンドンドンドンッ!
白瀬「なっ!?」バッ
煙りの中から丹陽が現れ主砲を乱射してくる。
白瀬「ーーっ!!」
白瀬は間一髪で攻撃を避け、体勢を立て直す。
白瀬「当たったはずなのに!?」
丹陽「あたったよぉ?」スッ
丹陽は白瀬に足を見せる。
丹陽の左足は確かに当たった痕跡があった。
白瀬(効いていない・・・?)
丹陽「あなたやっぱりすごいね。ほとんどあたったことないのに。でもざんねん。わたしね、あたってもぜんぜんきずがつかないんだぁ。」
白瀬(これが雪風さんの・・・丹陽の力!)
強運
かつての大戦でもその類い稀な強運が雪風を生かした。
被弾率の低さ、たとえ被弾しても致命傷にならなかった。
今の丹陽にはその力が存分に発揮されていた。
丹陽「きかないんだ、なにも、わたしには、だって、わたしは・・・死神だから、あははははっ!」
白瀬「・・・」ギリッ
白瀬(夕立さん、綾波さん・・・お願いがあります。)
夕立(・・・言わなくても分かるっぽい)
綾波(今の私達の力じゃとても雪風さんを助けられません。)
白瀬(お二人にかなりの負担をかけます。それでも信じてくれますか?)
夕立(私達の事は気にしなくていいっぽい!)
綾波(貴女を信じています。だから解放してください!)
夕立(悪夢と!)
綾波(鬼神の!)
夕立&綾波(真の力を!)
白瀬(はいっ!お二人の力、お借りします!)
浮かび上がった夕立と綾波の姿が改二となり白瀬の体に再び融合する
白瀬「はぁぁぁっ!、だぁぁぁぁっ!!」ゴウッ‼
〔駆逐艦 白瀬ナイトメアバーサーカー 改二〕
丹陽「えっ?あれ?」
白瀬「・・・」シュウウゥ
丹陽「ふんいきが・・・かわった?」
白瀬の目が青から赤く染まる。
白瀬「さぁ、素敵なパーティーにしましょう!」ヒュンッ
丹陽「き、きえた!?」
白瀬は一瞬にして丹陽の後ろに回り込み背後を取る。
白瀬「いきますよっ!」ドンッドンッ
丹陽「きゃあっ!」
白瀬は丹陽の艤装を攻撃する。
白瀬(改二の力を借りたこの姿で居られるのは、多分2分もない・・・。早くしないと!まずは艤装の機能を停止させる!)
爆雷を投下する背面の艤装は機能を停止した。
丹陽「いたいっ!くらえっ!」スッ カチン
丹陽の主砲は発射されなかった。
丹陽「な、なんで!?」
先程の攻撃で主砲は既に破壊されていた。
白瀬「隙ありっ!」ヒュンッ
ドンッ!
白瀬はさらにもう片方の主砲を破壊した。
丹陽「あうっ!わたしが、まけるわけない!」
白瀬(もう少し!後は、魚雷!)グッ
白瀬は更に丹陽を撹乱しようとスピードをあげる。
丹陽「は、はやい!私が追えないなんて!」
二人の改二の力を借りた今の白瀬は丹陽の全てを上回っていた。
丹陽「おちろっ!おちろっ!」バシュッ
白瀬「当たらないっ!」ガシッ
魚雷を回避した白瀬は、発射の際に足の止まった丹陽を捕まえる。
丹陽「はなしてっ!」
白瀬「これをとったら離します!」バキッバキッ
白瀬は丹陽の魚雷を取り外し、破壊した。
白瀬「ごめんなさい!」グイ
白瀬はそのまま丹陽を岸に向かって投げ飛ばす。
白瀬「うぅりゃっ!」ブン
丹陽「うわっ!、あうっ!」
丹陽は飛沫をあげて水面を滑るように転がっていく。
丹陽「ぶはっ!このっ! はっ!?」
丹陽は自分の艤装が全て破壊された事に気付く。
白瀬は間髪入れずに丹陽を捕まえる
白瀬「雪風さん!目を覚ましてください!」ガシッ
丹陽「いやだ・・・、いやだ!わたしは、死神は、」グイ
白瀬「しっかりしなさい!陽炎型八番艦!」
丹陽「えっ・・・」
丹陽の目が一瞬元に戻る
白瀬「貴女は死神じゃない。そんな名前他人が勝手に付けただけなんです!なのに、自分で認めてしまってどうするんですか!」
丹陽「あ・・・」
白瀬(もう少し!)
白瀬「答えて下さい。貴女は誰ですか?」
丹陽「わ、わたしは・・・」
ドクンッ!
白瀬「がっ!」ドクンドクンッ
丹陽「・・・?」
白瀬(か、身体が、動かない・・・。時間切れ!?そ、そんな・・・あと少しなのに!)ドクンッ!!!
白瀬「あぐっ、うぅ!」ドクンッ
丹陽の目が再び赤く染まる。
丹陽「やっぱりわたしをだれもとめられないんだよ。」ガシ
白瀬「ぐっ、かはっ、」グググ
丹陽「ぎそうはなくてもこうすればいいよね。」メキッ
白瀬「雪、風さ、ん!がはっ」メキメキッ
丹陽は動けない白瀬の首を掴み力を込める。
丹陽「うれしいな、やっとみんなをまもれる・・・」
丹陽の顔は笑っていた。
だがその紅い瞳からは涙が溢れていた。
白瀬(っ、あなたは・・)
丹陽が更に力を込めようとしたその時だった。
???「やめろ!雪風ぇぇぇっ!!」バッ
丹陽「うわ!?」バシッ
白瀬「くっ・・・はぁはぁはぁっ」ガクッ
白瀬(駄目だ・・・、力が抜けていく・・・)スウ
ナイトメアバーサーカーの改二状態が解除されていく。
丹陽「あなた、だれ?」
提督「俺が誰かもわからないのか?」
そこにいたのは先程気を失ったはずの提督がいた。
意識を取り戻し海岸近くで戦闘していた二人を見て駆けつけたのだった。
丹陽「しらない、しらない!おまえなんかしらない!」
提督「ならそれでいい。聞け」ザブザブ
丹陽「こないで、こないでよ・・・。」
提督は雪風にゆっくり近付く。
ガシッ
雪風の肩を掴み提督は話始めた。
提督「俺が提督になってからもう15年だ。沢山出逢った。でも沢山なくした。」
丹陽「・・・」
提督「もう、無くすわけにはいかないんだ。雪風、お前も、もうその一部なんだよ。」
丹陽「いやだ、はなして!私は死神・・・」
提督「駄目だ、離さん。」
丹陽「わたしといたらしんでしまう!わたしのせいできずだらけになったのに!」
傷つけてしまった。
自分を庇ったせいで。
提督「だからなんだ、こんな傷ですんだんだ。それで・・・」
丹陽「わたしなんかをまもって!なんのいみもない!」
提督「!」
丹陽「わたしといたからけがしたんだよ!?わたしは、へいきで、死神で・・・。にせもののいのちなんだ!」
提督「だったらそれでいい。」
丹陽「えっ?」
提督「そもそも偽物の命ってなんだ。どうして本物じゃないと駄目なんだ。なにをもって本物になるんだ?」
丹陽「いやだ・・・」
提督「偽物だろうがなんだろうが、俺がそれでいいと言っている。だからそれが本物なん、がっ!」ガシッ
丹陽「こうなるから!はなれてっていたのに!」グググ
白瀬「!」ガクッ
白瀬は提督を助けようとするが膝が落ちてしまった。
白瀬(そんな!ここまで消耗が激しいなんて!?)ガクガク
提督「かはっ・・・」
提督(はは、俺は無力だな。この子を護ってやらなきゃならんのに、何にもない。だけど・・・)
丹陽(やりたくないのにかってにちからがはいるんだ・・・)グググッ
丹陽の瞳からはまた涙が溢れていた。
提督「そんな、顔みて・・・」ガシッ グググッ
提督「離れられるかあぁぁっ!」バシッ
提督は力を振り絞り、雪風の拘束を解く
丹陽「うそ・・・ただのにんげんが・・・」
提督(口下手は苦労するな。こういう時になにも浮かばんとは・・・。いっそのこと思いを伝えてやろうか)ザブザブ
提督は再び雪風に近付き、今度は抱き締める。
丹陽「な、なんで・・・」
提督「さっき屋上で聞かれた事、答えてなかったな。お前達は・・・俺の゛家族゛だ。」ギュウッ
丹陽「!!」
提督「俺はお前達艦娘を、家族を心の底から、大切に思っているよ。」
雪風が纏っていたオーラが無くなっていく。
黒い艤装もなくなり、眼も元の色に戻った。
次第にいつもの雪風へと戻っていく。
雪風「あ、あぁ」ポロポロ
雪風(あった・・・ 私が私である為の・・・ 兵器でも、死神でもない。)
提督「昔言ったな。魂と感情をもっている。だから君達は兵器じゃないって。」
雪風「はい・・・」ポロポロ
提督「実はな、あの理由にはもうひとつあるんだ。」スッ
提督は雪風の涙を拭ってあげた。
提督「三つ目の理由、それは・・・”涙の味”を知っている事だよ。」
雪風「しれぇ!しれぇ・・・!」ギュウッ
提督「よく頑張ったな。」
雪風「うぐっ、グズッ、駆逐艦、雪風・・・、只今帰還しましたあぁぁぁ」
提督「ああ。お帰り。」ナデナデ
白瀬(もう安心かな。・・・凄いですね、渋川提督・・・)フッ
二人の姿を見つつ白瀬は静かに姿を消した。
その白瀬を追うように雪風の背中から光の粒が現れ同じく消える。
雪風「痛っ!」
提督「だ、大丈夫か?」
雪風「・・・急に身体が痛くなってきて・・・」
提督(無理な力を使った反動が来てるんだな。早く治してやりたいが・・・痛ててっ!俺も急に痛み出してきたな・・・そう言えば、もう一人の艦娘は・・・)キョロキョロ
提督(あれ、どこ行ったんだ・・・?)
提督は辺りを見回したが既に白瀬の姿はなかった。
北上「おぉーい、二人ともー!」
提督「おぉ、来てくれたか。」クルッ
声に反応した提督は葛城達を視認する。
北上「っ!提督、その傷・・・」
潮「雪風ちゃん!」
葛城「酷い怪我・・・、早く手当てを!」
提督「見た目ほど大したことないよ。それより雪風をみてやってくれ。一人で頑張って、敵を追っ払ってくれた。」
雪風「えっ?」
提督(しーっ、そう言うことにしとくんだ。いいな?)コソコソ
雪風(は、はい・・・。)
北上「やるじゃん。雪風っち。」
潮「無事でよかった・・・。」
提督「皆、悪いが雪風を運んでやってくれ。」
明石「私にお任せください!」スッ
雪風「明石さん!」
提督「なんで明石まで来てるんだ?」
明石「なんでって酷くないですか?」
提督「いや、そういう意味じゃない。長門の編成にしては、意外だっただけだ。」
全員で二人を浜辺まで移動した。
葛城「響さんと青葉さんのおかげよ。」
雪風「二人の?」
明石「ええ。初めは私は編成に入っていませんでした。しかし二人から正体不明の黒い霧が提督達のいる方角へ向かったとの通信が入りました。それを聞いた長門さんは急遽私を出撃させたんです。」
提督「そうだったのか。ナイス判断だ。」
明石「と、言うことで。念のためバケツを持ってきました!」スッ
雪風「ありがとうございます」
明石「じゃあ、行きますよぉ!」バシャッ
明石は雪風に修復材をかける。
提督「どうだ?まだ痛むか?」
雪風「いえ、治りました!明石さん、ありがとうございます!」
明石「ひとまず雪風さんは安心ですね。」
北上「提督もバケツかけてもらったら?」
提督「俺にとってはただの水だ。それに見た目ほど大したことない!。」スクッ
葛城「駄目よ!無理しないで。」
提督「俺は海軍の渋川だぞ!?こんな傷ぐらいどうって・・・事・・・あれ・・・」バタッ
明石「て、提督!しっかりしてください!」
葛城「早く病院に!」
提督はそのまま気を失い、近隣の病院に運ばれた。
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西円寺父「ちゃんと記録したな?」
側近「はい。始めから終わりまで全て記録致しました。」
西円寺父「奴等の襲撃は予想外だったが、おかげで良いものが撮れた。これがあれば艦娘などと言ったふざけた存在が消える日も遠くあるまい。」
側近「おっしゃる通りです。艦娘の暴走、同士討ち、提督への反逆行為。充分すぎる映像です。」
西円寺父「うむ。よく撮れているな。早くこの映像を発表する場を設ける準備をしなければな。」カチャッ
側近「かしこまりました。戻り次第すぐに手配を・・・」
???「楽しそうだな?私にも見せてくれよ」スッ
西円寺父「なっ!?」
側近「だ、誰だっ!?」
了戒「敵だよ。」ヒュンッ
側近「きえ、ぐはっ!」ドゴッ
了戒「弱いな、厭きれるほどに・・・」
西円寺父「な、貴様艦娘かっ!?私を誰だと思っている!私に手を出せばどうなるか分かっているのか!?」
了戒「知ったことか」
西円寺父「これが有れば貴様らを消すことなど容易な・・・!?カ、カメラは?」
了戒「ククク。探し物は、これですか?」ヒョイッ
その手には先程まで西円寺父が持っていたカメラがあった。
西円寺父「貴様っ!いつの間に・・・それを返せ!さもなくば今すぐ撃ち殺してくれる!」スチャッ
西円寺父は了戒へ銃を向ける。
了戒はあきれた表情で西円寺父の顔を見る。
了戒「そんなにほしけりゃ、返すよ。」ブン
了戒はカメラを上に放り投げる。
西円寺父「なっ!?」バッ
西円寺父はカメラを掴むため両手を上げる
了戒「ふっ!」ドゴッ
そこへ了戒の蹴りがまともに入る。
西円寺父「グエェッ」ガクッ
激痛に耐えかねその場に蹲る。
了戒「カッコ悪いな、え?」ガシッ
バキッバキッ
了戒は落ちてきたカメラ掴みそのまま握りつぶした。
了戒「証拠は消した。もちろん、証人もけさなくちゃなぁ。」ガシッ
了戒は西円寺父を持ち上げ首を折ろうとする。
だが、了戒は直ぐに手を離した。
了戒「また、お前か・・・」ズキッ
???(・・・・)
了戒「ぐっ、や、めろっ。私に、干渉、するな!」ズキズキ
???(・・・・)
了戒「チッ」バチッ
倒れている西円寺父の頭を掴み、右手から閃光を走らせる
了戒は西円寺父を離し、今度は側近に近付き頭を掴み同じく閃光を走らせる。
了戒「どいつもこいつも・・・鬱陶しい。まあいいさ、アレを回収しに行くか。」
了戒はそう言い残し、姿を消してしまった。
数分後
西円寺父「う、ううん・・・こ、ここは一体・・・」
側近「あ、あれ?私達はなぜここに?」
目を覚ました二人は一連の記憶を失っていた。
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二人の前から消えた後、白瀬は現場から離れた近くにあった小屋にいた。
白瀬「はぁっ、はぁっ。こんなに、反動が来るなんて・・・」カシュッ
白瀬は小屋で倒れこみ身体を休めていた。
カードホルスターを開け、夕立と綾波を確認する。
白瀬「よかった。お二人とも無事で」
夕立(私達は大丈夫っぽい。)大破
綾波(ごめんなさい。貴女に傷を負わせて・・・)中破
夕立(ちゃんと貴女にあわせてあげられなかったっぽい。)
白瀬「お二人は悪くありません。私が未熟でした。それに結果的にあの力があったから雪風さんを止めることが出来ました。」
夕立(次はちゃんとあわせるっぽい。)
綾波(今度は絶対力になります!)
白瀬「はい、またお借りします。あとは、これね・・・」スッ
それは丹陽が持っていた双眼鏡だった。
白瀬が消えると同時に現れ、移動する白瀬を追ってきた光の正体だった。
白瀬「やっぱり、あの石碑にあった双眼鏡だ。レンズが片方無い・・・」
白瀬(真ん中に・・・なにか入れるスペースがある・・・開くのかな?)
シュウゥゥゥゥ
白瀬が調べていると突如双眼鏡が光に包まれた
白瀬「これって・・・陽炎型の力を感じる!」スッ
白瀬はフュージョンリングを取りだし双眼鏡に向ける。
光はリングに集り、やがて艦娘カードが出現した。
白瀬「嵐さんでしたか!」
嵐(姉さんを止めてくれてありがとう。私の魂の力じゃ姉さんを抑えきれなかった・・・。すまない)
白瀬「そんな、謝らないで下さい。それに私1人の力ではありませんから。」
嵐(ありがとうな。もう、あの時みたいに誰かの最後を見届けるのはゴメンだからな。これから俺の力、存分に使ってくれ。)
白瀬「はい!よろしくお願いしますね。」カシュッ スッ
白瀬「それにしても・・・つ、疲れた」ガクッ バタッ
白瀬はカードを戻すと壁に凭れ掛かり、気を失うように眠りについた。
ガタガタ
白瀬が眠ってから少しして、誰かが小屋に入ってくる。
???「ポ・・・?」
===================
ホテルの騒ぎが収束し、磯風と亮は提督と雪風を探していた
磯風「海岸へ走っていくのが見えたと聞いたが何処だ?」キョロキョロ
西円寺亮「あ、あそこだ!」
磯風「よし、行こう!」ダッ
二人が発見した時には既に葛城達が到着していた。
磯風「みんなっ!大丈夫か!」
北上「お、磯風じゃん。久しぶり~」
葛城「大丈夫よ。提督は気を失ってしまったけど」
亮「大変だ、すぐに救急車を」バッ
亮は携帯を取り出し救急車を呼ぶ
磯風「ありがとう、亮。皆もありがとう。」
折角の催しが台無しになってしまった。
潮「磯風さん・・・」
葛城「今は、おめでとうとは言えないね・・・」
北上「とんだ記念パーティになっちゃったねぇ」
雪風「ごめんね磯風。せっかくのパーティが」
磯風「姉さんが謝る必要はない。確かに今日は残念だが機会なんてこれからもあるさ。それにどうやら今の所死傷者はいない。姉さんのおかげさ。」
雪風「ううん、私の力じゃないよ・・・」
亮「皆さん、救急車が到着しました!」
磯風「わかった。」
明石「私が付き添いましょう。」
葛城「お願い。」
救急車を見送り磯風と亮は皆に挨拶をする。
磯風「皆、こんな時にだが紹介させてくれ。この人が私の夫だ」
亮「改めまして、皆様。西円寺亮と申します。」
北上「おぉ、よく見るとイケメンじゃん」
葛城「それに西円寺って、あの陸軍名家の!?」
潮「知ってるんですか?葛城さん。」
葛城「ええ。陸軍の西円寺と言えば超有名なお家柄よ!」
北上「へぇー、玉の輿ってヤツ?」
潮「ええ!?そうなんですか!?」
亮「はい。私は西円寺家の長男・・・でした。」
葛城「でした?でしたって・・・」
磯風「あー、実は今回の婚約、本当は亮の両親、親族に認められていないんだ。」
葛城「えっ?」
北上「それって・・・」
磯風「ああ、私達は反対を押しきって強引に婚約をすすめたんだ。」
亮「・・・西円寺家は、元々海軍関係者と昔からいざこざが絶えませんでした。当然艦娘の存在も全否定の家でした。私も幼少期からそう言った教育を受けて育ち、今まで艦娘は兵器と認識していました。父は陸軍の高官です。貴女方が聞きたくもない事を沢山してきました。」
雪風「・・・」
磯風「陽炎型姉妹に送った招待状も親父さんに消されてしまってな。だから皆来てないんだ」
潮「そんな・・・」
亮「ですが!私は磯風と出逢ってそれが間違いだと気付きました!」
雪風「!」
亮「今まで教えられてきた事の何も当てはまらない。自分と何も変わらない。喜んで、怒って、哀しんで、笑って・・・。彼女達を兵器と呼称するのは間違っていると!磯風と交流する内に彼女に惹かれていったんです。」
磯風「お、おい・・・」カオマッカ
北上「言うねぇ」
亮「磯風から聞いた話だと、提督と艦娘にはケッコンカッコカリなるものがあると聞きました。艦娘と提督さんが強い絆を結ぶ・・・その時思ったんです。この゛人゛と一緒にな」バシッ
磯風は耐えきれず亮の頭を叩く。
亮「痛いっ!」
磯風「余計な事まで言い過ぎだ!」プシュー
亮「余計なものか!私は君を愛している!」
磯風「っ!も、もう喋るな!」クチフサギ
北上「なにこれ。何見せられてんの」
磯風「と、兎に角だ。それで今日まで強引に進めた・・・」
亮「パーティを開催したのは西円寺家の長男と言う立場の人間が元艦娘の人と結婚すると発表する事で世間の艦娘に対する認識が少しでも変わればと、二人で相談して開催しました。結果、私は西円寺家から絶縁されましたが。」
潮「ぜ、絶縁・・・」
雪風「そ、そこまでして」
亮「たしかに今までの家は失ってしまったかも知れません。ですが後悔なんてしていません。だって」グイッ
磯風「ちょっ!」
亮は磯風を抱き寄せ言った。
亮「新しい家族が出来ましたから!」ギュッ
「Σ(゚Д゚〃)」
潮「(*/□\*)」
磯風「もう、なにも言わん・・・勝手にしろ・・・」
磯風の顔は正に火が出そうな位赤かった
葛城「いい人、見つけたね磯風」
潮「感動しました!」ウルッ
北上「ま、お幸せに~。ってあれ?雪風っち、どしたの?」
雪風は泣いていた。
提督以外にも自分達を認めてくれる人がいる。
その事実が何よりも嬉しかった。
雪風「・・・」ポロポロ
潮「だ、大丈夫?」
葛城「何処か痛いの?」
雪風は首を振り、涙を拭って二人に向かって走り出した。
雪風「大丈夫です・・・」ダッ
二人「うわっ!」ドサッ
磯風「雪風?」
亮「どうしたんですか?」
ギュウ
雪風「本当に、本当におめでとう!」
磯風「うん。ありがとう・・・」
亮「ありがとうございます。」
雪風(歩いて行こう。私達を見てくれてる人がいる限り。ずっと・・・)
後日、この出来事を知った長女・陽炎の提案で陽炎型全員集合の記念パーティが紅鎮守府で行われたのはまた別のお話し。
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ホテルの襲撃が終息してから数時間後
錨石の前に了戒がいた。
了戒「ここにあったのか・・・。見つからない筈だ。」スッ
シュゥゥゥ
了戒は紅く光る黒いリングを取りだし、錨石から光を回収する。
回収した光は艦娘カードの一部となった。
了戒「これで・・・後1つ。もう少しでヤツを呼び出せる。そして私も出来損ないでは無くなる。」
そうつぶやき、了戒は闇へ消えていった。
了戒は気がつかなかったが一連の行動を目撃していた人物がいた
???(あの娘・・・一体なにをしていたんだ?)
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セーカイジュウガー♪キミヲマッテイルー♪
卑劣な深海棲艦の策略で青葉さんが捕まってしまいました
全く、危険も考えず突っ込んで行くから困ったものです
しかも敵は今までの私を分析しているときました!
こうなったら私も新なカードを切りましょう!
先輩方、私に新な力を貸してください!
次回〔逃げない心〕
光を越えて闇を切る!
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今回のフュージョンの構成は完全に思い付きです。
駆逐艦雪風の改ニはまだありませんが仮に改ニ゛丹陽゛となったらどれぐらいなんだろうと思い、今回敵側として登場させました。
また、それに対抗できる力として雪風と同じく武勲艦として知られる夕立、綾波をチョイスしました。
1話で綾波の配役と後書きで書いたのはこれです。
丹陽の強さを際立たせたくて通常のフュージョンでは対抗出来ないと言う流れにして、改ニが実装されている夕立と綾波の二人の力を更に借りる形で丹陽に対抗出来る様にしました。
ナイトメア→言わずと知れた夕立の二つ名、ソロモンの悪夢から
バーサーカー→綾波は黒豹や鬼神と呼ばれていました。ですが黒豹は表現が難しいので鬼神で考えることに。
でも鬼神を調べるとデーモンって出てくるんです。
ですが綾波はデーモンって感じじゃないなぁ・・・と思っていた所、バーサーカーと思い付きピタッと自分の中でハマり、かつ語呂が良かったので
゛ナイトメアバーサーカー゛としました。
近日4話、5話更新します。
もうしばらくお待ちください。
頑張って下さい!✨
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ありがとうございます。遅くなってすいません。これからも頑張ります。
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