提督「何を……間違えた?」
こっちは地の文とか言うのを入れてみた。
表現とかまだまだなんだけどね〜
楽しんで読んでくれたら良いな?
シリアル成分豊富にしてみた!……ん?ちゃう、シリアス成分を豊富にしてみた!
注意事項はキャラ崩壊してるかも?の一点だけだよー!
人に影響を及ぼすために必要な勇気は、その人からされたこと+自分が持ってる倫理観によって左右される。そのための度合いが大きければ大きい程行動するのを躊躇うものだが、最近はそうでも無いように思われる。
これは、私がとあるものによってされたこと。嗚呼、私は一体どこで間違えたのだろうか──
「提督さ〜ん!おはようっぽい!」
「……ああ、夕立か。おはよう」
私の朝は艦娘に起こされることから始まる。情けないことに私は朝起きることが苦手で、誰かが起こしに来てくれなければ昼まで寝てしまうのだ。なので本日の秘書艦にいつも起こしてもらっている。
「提督さん早く起きるっぽい!早く早くー!」
「……ねむい、おやす……み……」
「もう!寝たらダメっぽい!」
あまりにも眠かったためもう一度眠りにつこうとするが、そんなことは許さないとばかりにバシンバシンと布団の上から叩かれた。然しながら眠気には抗えず、私はもう一度夢の世界へ旅立とうとする。
「むうう!ならこうするっぽい!」
バサッと布団を剥ぎ取られた。今の季節は12月、乾燥するためエアコンは付けていない。つまり……寒い。
「寒い……毛布……」
暖かいものを求めて、ずりずりと這いずりながら夕立の元に行く。その様はゾンビのようで夕立は若干引いていた。
「提督さん、そんなに寝たいっぽい?」
「…………、朝は……弱いんだ……」
「でも寝させてあげないっぽい!このまま執務室に引きずってくっぽい!」
そう言って、彼女は私のパジャマの襟を持って執務室まで引きずっていく。く、首が……締まる……!く、苦し……い……!
「着いたっぽい!って、提督さん大丈夫!?」
執務室までの距離はそこまでないとはいえ、呼吸出来ないのは流石にキツく、着いた時には死体みたいにぐでぇっとしていた。まあ、引きずられたおかげでだいぶ目は覚めたが……
「夕立……これからは生命の危機を感じるような運び方はできる限り止めてくれ……」
「わ、分かったっぽい……ごめんなさい」
彼女は素直でいい娘だ、きっと次は死にかけないように優しく起こしてくれるはず。明日はきちんと二度寝しようそうしよう。
「そういえば、明日の秘書艦は誰だったかな」
「夕立以外の人が気になるっぽい?」ハイライトオフ
む、これは不味い。ここ最近夕立のハイライトが消えることが多くなってきた。まあ、その分彼女の私に対する好意が溢れんばかりになってきたが。勿論、好意を寄せられるのは嬉しい、だがあまり他の娘を敵視しないで欲しいものだ。
「気にならないといえば嘘になる。明日は二度寝ができるかどうかが決まるのでな」
「もう、提督さんはお寝坊さんっぽい!」
「それで、誰なんだ?」
「明日は〜、川内さんっぽい!」
「よし、あの夜戦馬鹿か。朝は寝れる!」
川内も私と同じく朝が弱い。あいつの場合は夜遅くまで夜戦をしているから、なのだが。ただ、彼女は私が寝ているとその隣に潜り込んで寝る癖がある。悪い気はしないが……むしろ美少女が隣に寝ているので良い気分ではあるが……他の子が見たら……はぁ……
「提督さん、どうしたの?」
「ん?ああ、今日の課業にやることを考えていてね。少し多くて憂鬱なんだ」
「考えてること違ってたような気がするけど……気の所為っぽい?」
鋭いな、ヤンデレはテレパシーを獲得出来るのか、これからは気をつけねば。
「そんなことより提督さん、今日は何をするっぽい?」
「今日は書類がこれだけと、佐世保鎮守府と呉鎮守府と演習がある」
「演習っぽい?なら夕立頑張るっぽい!」
1VS1で夕立が負けることはほぼ無いだろう、それ程までに彼女の戦闘センスは卓越している。難点は連携が余り出来ず1人で突っ走ることだが、それも周りの仲間がフォローをしてくれる。それにより私の艦隊はほとんど負けることが無かった。
「夕立や他の子達が頑張ってくれるなら、私は安心して吉報を待つことが出来るな」
夕立の頭を撫でながらそんなことを口にする。彼女の雰囲気が少し変わった。何故だが分からないが、少々鳥肌が立ってしまった。気になって彼女の顔を見る。────ああ、これなら恐怖してもおかしくは無いかもしれない。
「夕立、絶対勝つっぽい」
目に一切の光が無い笑顔で彼女は勝利を約束するのだった。
──演習 対佐世保鎮守府
「本日はよろしくお願いする」
「こちらこそよろしくお願いします」
午後、最初に佐世保鎮守府との演習をする。向こうの提督に挨拶をし、私は出撃メンバーに激励をしに行った。出撃メンバーはこうなっている。
舞鶴鎮守府(私の鎮守府)
旗艦:夕立(改二)
扶桑(改二)
大鳳(改)
瑞鶴(改二甲)
北上(改二)
川内(改二)
佐世保鎮守府(相手の鎮守府)
旗艦:暁(改二)
蒼龍(改二)
飛龍(改二)
陸奥(改二)
長門(改二)
雷(改二)
(ふむ……、勝てる。問題は相手空母の装備だな。友永、江草を積まれていたら制空権が危うい)
相手の編成を見て陣形や装備を考えながら廊下を歩く。……いつの間にやら彼女たちが控えている部屋に着いたようだ。──扉を開けようとした。だが、夕立が何か喋っているのが聞こえ、その内容が気になり手を止めてしまった。
「今日の演習、絶対に勝つっぽい」
「どしたの?今日は嫌にやる気だねえ」
「夜戦!今日こそ夜戦!」
「せ、川内さん。夜戦は今回はしないかと……」
「川内はいつも通りか、提督さん明日起きられるかな……」
「空はあんなに青いのに……」
「聞くっぽい!」
「ゆ、夕立さん?」
「ホントにどしたの?」
「やせ……むぐっ」
「はいはい、今は黙ってなさい」
「夕立さん……?」
「朝、提督さんは私や皆が出るなら安心して吉報を待ってられるって言ったっぽい」
「へぇー、嬉しいこと言ってくれるじゃん」
「なら、夜戦前に狩る」
「うわ、川内さんが本気じゃん」
「提督……ふふっ……!」ハイライトオフ
「うふふ……」ハイライトオフ
「大鳳さんと扶桑さんが怖いんだけど!?ハイライトさん仕事してよ!?」
「夕立は提督さんに勝利をお届けするっぽい。だから……大破したらそのまま沈めるから」ハイライトオフ
「それ負けちゃうんだけど!?」
「駆逐艦風情が言うじゃん?MVPは渡さないよ、私が1番提督に褒めてもらうんだかんね。大破したら私が沈めてあげる」ハイライトオフ
「夕立は旗艦だから沈まないわよ!?」
「夜戦に持ってってよ、必ず始末するから。今日は新月だから確実に殺れる」ハイライトオフ
「いや、殺ったらダメでしょ!?」
「ふふふ……私の子達は優秀だもの、必ず……必ず沈ませるわ」ハイライトオフ
「あんたもなの!?ダメだからね!?」
「ふふっ、不幸ね。私じゃないわ……相手よ。沈めてあげる……!」ハイライトオフ
「扶桑さん!?ダメよ!ダメだからね!?」
………中々に凄いことになっている。瑞鶴以外ハイライトさんが仕事をしていない。ふむ、私は彼女らにここまで愛されていたのか。瑞鶴は……ん?
「瑞鶴さんは提督さんに勝利をお届けしたくないの?」
「そんなわけないでしょ!私だって敵を沈めたいわよ!」
「なら……何故?」
「そんなことしたら提督さんの立場が悪くなるじゃない!あんたたちが沈むのはどうでもいいけどもう少し考えなさいよ!」ハイライトオフ
瑞鶴、ハイライトが無い目で言われても困る。それは、私の立場が悪くならなければやりますと言っているのと同じではないか。……実際、やるのだろうな。というか、仲間が沈もうが何しようがどうでも良いのか……。はぁ、これ以上ハイライトさんが仕事しない状態も不味い。そろそろ仕事をしてもらわねば。
「提督……そこに居るんですか?」
なっ……!大鳳が気づいた……!?お、落ち着こう。ここは何も気付かないふりを……いや、意味無いか。ヤンデレはテレパシーを修得するんだったな。
「ああ、居るぞ。入っても良いか?」
「良いっぽい!入って欲しいっぽい!」
ガチャりと扉を開けた。うむ、全員の目に光がない。ある意味圧巻の光景とも言えるだろう。私的には回れ右をして帰りたい気分だ。
「提督さんじゃない!応援に来てくれたの?」
「そうだ、よく分かったな」
「おー、良いねぇ痺れるねぇありがとね!」
「提督、私本日の演習でMVP、取りに行きます。だから……」
大鳳が恥ずかしがりながら何かをお願いしようとする。ハイライトさんが仕事をしてないので割と怖い。しかしお願いか……。大方、頭を撫でたりして欲しいのだろう。
……少し、好奇心が湧いた。このハイライトさんが仕事をしていない状況で1人を選ぶような状況を作ればどうなるのだろうか?
「そうだな、ならばこの演習でMVPを取った子は私と……うむ、1日デートとかで構わないか?」
1日デートと言った瞬間、皆の雰囲気がガラリと変わった。おお、かなり鳥肌が立ってしまった。というかハイライトさん仕事してくれ。今ヒシヒシと死の恐怖を感じているんだ。
「提督さん……それ、本当っぽい?」
「てーとくぅ、嘘じゃ……無いんだよね?」
「提督……それは本当ですか?」
「提督さん、それってホント?」
「提督、ホントなの?」
「提督……本当……ですよね?」
全員がこちらに詰め寄って確認を取ってくる。ふむん、これは嘘と言ったら私が死んでしまうな。事実だと言っても何か不幸が起こりそうだ。……選択を間違えたかもしれない、なぜこんなことを言ったのださっきの私。怖すぎて泣きそうなんだが誰か助けてくれ。
「ああ、事実だとも。今日は2回演習をするから最大2人までだ。足を引っ張り合って負けたならならこの話は無しだ。分かってるね?」
一応釘は刺しておいた、皆は了承してくれたが果たしてどうなる事やら……。取り敢えず、相手の艦娘にはごめんなさいと謝っておかなければ……。そして最後までハイライトさんが復活することはなかったな……。
──演習場(佐世保side)
「ね、ねぇ……相手の人達の殺気が凄いんだけど……」
「分かる、もう帰っていいかな……」
「こ、ここ、こんな時こそ雷を頼っていいのよ?」
「れ、レディに恐れるものなんてないんだから!」
「……私は生きて帰れるだろうか」
「珍しいわね。長門が悲観するなんて」
「……陸奥、私だってそういうことはある。ビッグセブンとはいえ、あの中に突撃しようとは思わない」
「そうね、でも戦わなきゃいけないわ。何か、作戦でもある?」
「……ある」
「あ、あるの!?」
「暁、驚きすぎじゃない?」
「雷、煩いわよ!」
「それで作戦って何?」
「私達は何をすればいいんですか?」
「そろそろ始まるから手短に説明するぞ──」
──演習場(舞鶴side)
「準備は良いっぽい?」ハ
「当たり前じゃない」イ
「早くやーせーんー! 」ラ
「あ、あの……夜戦は次かと……」イ
「さぁてやりますかー!」ト
「負けないわ!」オ
『うふふふふふふふふふふふふふふ』フ
───演習開始の合図が鳴る。ある程度指示は出した、後は彼女たち次第だ。……始まる直前に何故か皆笑っていたな、マジで怖かった。
……ん、制空権は五分、夕立がまた1人で突っ走ってるな。扶桑が遠距離で牽制し、夕立が特攻し撹乱、その隙に北上は魚雷を、川内は回り込み強襲をかける。瑞鶴と大鳳はアウトレンジから一網打尽にする。うむ、いつも通りで何よりだ
「ふん、なんだあの駆逐艦は、周りと連携が取れてないじゃないか。あれでは大規模作戦の時に使えんぞ」
つまらなそうに佐世保鎮守府の提督、湊生(みなせ)1佐は言う、彼の指摘はごもっとなのでなんとも言えない。
「はは、うちは大規模作戦に出れる程の戦果を上げておりませんから……お恥ずかしながらそれ用の隊列、連携を考えておりません」
実際にはあれで深海棲艦を倒せるからあのままにしているだけであり、大規模作戦にお呼ばれされる事も恐らくないので、変えようとしていないだけなのだが。
「それは慢心というもの、貴様の所にもいずれ命令は降りてくる。それに戦果を上げていない?嘘をつくな、艦娘の練度、演習の戦績、普段の海域攻略等、大規模作戦に出れる程の戦果はとうに超えているではないか」
む、意外と人のことを見ているなこの人は。正直、下の階級の事なんぞどうでもいいって人かと思ったがそうでも無いようだ。
「ふん、大方俺が下のやつを見てないとでも思ってそんなことを言うたのだろうが」
まて、どうしてこう私の思ったことをサラリと当ててくるんだ。あれか、私の周りにはエスパーしか居ないのか。それはそれで嫌すぎるからやめて欲しい。……それとも、それほどまでに私は分かりやすいのだろうか?
「覚えておけ、真に上に立つものは下のやつをよく把握しなければならない。でなければ適切な場所に配置出来んからな」
次いでに言うならば貴様はわかりやすい。顔によく出ているから気をつけろ、と彼は指摘する。……そこまで、私は単純だったのか。正直とても落ち込んでいるが、ここで顔に出しては意味が無いというもの。頑張って耐えるとしよう……。
「ふん、落ち込んでいる暇があればさっさと直せ」
ふっ、どうやら隠しきれていないようだ。もう直すのを諦めた方がいいかもしれない……。はぁ……。
「諦めるのが早いのも難点だな。戦場で指揮を執るものがそんなので良いのか?」
……心を読むのを止めてください、心が折れてしまいます。私のメンタルは豆腐より柔いのです。
「その程度で折れるなら海軍を辞めた方が身のためだぞ」
……………………、心を読んでるじゃないですか!?テレパシー使えるんですか!?
「そのような事はどうでも良い」
良くないですよ!?割と大事な事だと思うのですが!?
「そんなことより、演習が終わるぞ」
「そんなことってレベルでは無いのですけど!?」
演習は私の鎮守府の圧勝だった。湊生1佐の子達は全員ボロボロで、泣きじゃくるか震えていた。
………………、誰がトラウマを植え付けろって言った……。この子達、もう戦場に出せないんじゃ……。
「おい、貴様!誰がここまでしろって言った!?見ろ!全員がトラウマを負ってるではないか!」
湊生1佐の最もな指摘が飛んでくる。私としてもここまで徹底的にやるとはおもっていなかったので正直どうしていいかが分からない。
「はぁ……、貴様、暫く様子を見ろ。」
……ふむん?今、湊生1佐は何と仰ったのだろうか。聴き逃してしまった、もう一度聞かねば。
「暫くこやつらの様子を見ろと言ったのだ!」
「何故ですっ!?」
「貴様が子奴らにトラウマを植え付けたからだろうがァ!」
「も、申し訳ありません!?」
つい反射的に謝ってしまった。いや、こちらが全面的に悪い以上、謝るのが道理ではあるのだが。
ああ……、湊生1佐が必死にあの子達を説得している……。滅茶苦茶嫌がっているように見えるのは気のせい……では無いな。
「み、湊生1佐。その子達も嫌がっているようですしその辺にされては……」
「阿呆!このままでは戦場に行けんだろう!それに考えてみろ!給糧艦や工作艦ならまだ戦場に出ずともやれることはある。だが……」
…………、そうか。戦場に出れない艦娘が行き着く先は──
「解体か……」
「そうだ、戦闘に出れんものを置いては置けんという大本営からの通達を忘れたのか」
ちっ、あの忌々しい通達のせいで全員に一定の戦果を出させねばならなくなった。そのせいで余計に捨て艦作戦を行う提督が増えた。解体にも費用がかかるからな。ああ、忌々しい……!
「おい!」
考え込んでいると背後の方から怒声が飛んでくる。何事かと思い振り向くと、呉鎮守府の提督が顔を真っ赤にしてそこに立っていた。……随分とお怒りの様子だがどうしたのだろう。
「お前!私の所との演習はどうしたんだ!」
…………、はて?後1時間は猶予があるはずだが──そう思って時計を見るとまだ30分の余裕がある。30分違いはしたが怒られるような時間ではない。何をそんなに怒っているのだろうか。
「貴方の所とは30分後のはずですが、一体何に怒っていられるのですか?」
「お前……あんな適当な指示で艦娘に出撃させる気か!指示は一言二言!陣形や我々の戦力は一切考慮していないだろう!」
「……流石に戦力は考慮していますよ。ですが、指示なんてそれぐらいで良いでしょう?」
「なっ……」
この人が何を言いたいのか理解できない。通常の海域でも私は情報を渡すのみで指示は余りしない。それは現場を見ていない私よりも現場を経験している彼女らの方が上手く対処できるからだ。
それに海は常に変わる、私が常に状況を把握出来れば良いが、私が現場に赴く訳にも行かない。……どこかの提督たちみたいに深海棲艦と戦闘できるレベルならば喜んでいくのだが私はただの一般人だ、そんな危険は犯せない。
だからこそできる限りの情報を収集し彼女たちに渡す。情報があれば対策も立てやすい上に仮に不測の事態に陥っても対処しやすい。
後は、彼女達の経験を頼るしかない。
……指示ばかりだと指示待ちになってしまう恐れがある。指示がなければ動かないやつなどいらないし、一瞬でも気を抜けば死ぬ、という時に指示を仰いでいては指示に耳を傾けた一瞬の隙に沈んでしまうかもしれない。……極論ではあるのだが。
だから、必要最低限の指示しか出さない。……のだが、この呉鎮守府の初瀬(はつせ)3佐は気に入らないようだ。
「私が最低限の指示しか出さないのは、彼女らに私の指示がなくても戦えるようになって欲しいからです。指示を出しすぎて指示待ちになってもつまらないでしょう?」
「つ、つまらないとはなんだ!提督が的確な指示を出すことで艦娘を導くことがつまらないというのか!」
顔を赤くし彼は反論する、顔が赤いということはそれだけ本気で怒っているということ、何故本気で怒っているのか、私には分からない。
「初瀬3佐、現場を見ているならまだしも、見ていない人間が的確な指示を出せるとお思いですか?」
「出せる。海流、島の地形、砲撃の音の聞こえ方など把握しようはあるだろう。そこから今どうなっているのか、どこを進んでいるのか、どの距離から砲撃されているのか、必要な情報を選び取り適切な指示を出す。どうして出せないんだ」
……中々にハイスペックな人だな。普通の人はそれだけで適切な指示はだせないもんなんだが。……才能があるのは羨ましい、そんなもの私には無いからな
「……貴方は出来るかもしれない。が、私には出来ないのですよ」
「出来ないと思うから出来ないんだ。僕だってここまで来るのに相当な時間がかかった」
ふむ、ここまでくると平行線か。このままグダグダ会話してても仕方ない、この辺りで終わらせよう。どれだけ議論を重ねようと、私は初瀬3佐の考えを受け入れる気は無いからな。
「ふむん、そろそろ時間ですね。この話はここで終わりにして準備を始めましょう」
「お、おい!逃げるのか!」
何をどうしたら逃げるとかいう考えになるのか……、この会話を終わらせる理由は言っているはずなのだが……。はあ、面倒くさいな。
「……そう捉えてもらっても結構です」
「なっ……」
こう言っとけば突っかかって来ることは恐らく無い……筈なんだが。まあ、面倒なことになったならその時に考えるとするか!
「それでは、良い演習をしましょう」
「ふん、今に見てろ……!君の所には絶対に負けないからな……!」
……何だろうか、既に初瀬3佐から負けフラグが乱立しているように見える。
──廊下
ふむん、然しながら先程の初瀬3佐の言は些か苛ついたな。何と言うか、押し付けが凄まじいかった。……さて、彼女たちに少しお願いするとしようか。
──舞鶴鎮守府控室
「!提督さんが来たっぽい!」
ドアを開けようとした時、そんな声が聞こえてドアが開かれた。勘が鋭いというか何と言うか、私に盗聴器やGPSといった類は付いていないはずなんだがな……
「提督さん、何をさせたいの?」
「何をさせたい──とは?」
私を見た瑞鶴が唐突に聞いてきた。質問の意味が分からず思わず聞き返す。
「何か私達にやって欲しいんでしょ?何をして欲しいの」
「ふむん?どうしてそう思ったんだ?」
おかしい、顔には出ていなかった筈だ。……まさか表情筋の動きで察知した、とかそんな化け物じみた芸当ができる訳──
「だって、提督さんさっきと様子が違うもん、少しピリピリしてる、そういう時って大体何か頼むから」
……そうか、雰囲気で分かるのか。これはもう隠し事とか出来ないのではないか。というかこれは瑞鶴の持つ特殊技術みたいなものか?それとも他の者もできるのか?……できるのならば私に安息は無いように思えるが……
「ふむん、皆には隠し事が出来ないらしい。他の者も気づいていたのか?」
「んー、あー、確かにちょっと違うっぽい?夕立、分からないっぽいー!」
「……そういったことが分かるのは瑞鶴さんくらいです」
「ええ、私も出来ません。申し訳ありません」
「夜の時なら分かるんだけどなー、昼間は無理だよ」
「幾らスーパーな北上様でもそこまでは無理かなー、私もそこまで出来るようになりたいけどねー」
意外だ、他の者もできると思っていたのだが。……つまり瑞鶴以外には隠し事ができるというこ──
「でも、隠し事とかはして欲しくないかなー」
「そうですね、提督という立場上私達に伝えられないことはあると思いますが、それ以外は隠し事をできる限りして欲しくありません」
「ぽい!隠し事されると夕立悲しくて……提督さんのこと、おしおきしちゃうっぽい」
………………、先手を打たれてしまったな。というか今気づいたんだが、全員ハイライトさんが仕事をしていない。あまりにも普通にいるものだから仕事をしていると思っていたんだが。
「ふぅ……分かった。どうしても話せないことを除き君達に隠し事はしないと誓おう、指切りげんまんでもしておくか?」
「ぽい!するっぽい!」
するりと夕立はポケットからナイフを取り出す。おい、まさか昔ながらの指切りをする気じゃないだろうな──!
そう思ったのも束の間、夕立は左小指に狙いを定め、右手に持ったナイフを振りかぶり──
「夕立ストップ!」
そこで静止をかけた。さすがに見ていられなかったからだ。
「ぽい!」
彼女はそのまま停止する。そしてチラチラとこちらを見ている。……、少し遊ぶとしようか。
「お座り!」
「ぽい!」チョコン
本当に座った。……おかしいな鎮守府でこんなことやった事ないのだが。……これは、あれもできるのか?
「……お手」
「ぼい!」ポン
「おかわり」
「ぽーい!」ポン
本当にやった、本当にやったぞこの娘。ま、まあやったのだから褒めてやらねばなるまい。…………、提督たちからぽいぬの愛称で親しまれる理由が分かった気がする。
「よく出来ました」ワシャワシャ
「ふふん!っぽい!」
……本当に犬みたいだ、犬と言っても狂犬の方だが。それにしても危なかった、本当に小指を切り落とそうとしていた。一切の躊躇無く、だ。幾ら私の為……為?とはいえやりすぎだ。だがおかしい、私は彼女たちに無意味な自傷を禁じて──ああ、意味は……あるのか……
「夕立、指切りは普通にしよう。切り落とさなくてもいいんだ」
「どうして?小指を切って相手に渡すのが指切りってあったっぽい!」
うぅむ、正しい、正しいのだが……どうやって説明しようか……、そう考えていると瑞鶴がぺしんと彼女頭をはたく。
「夕立って馬鹿でしょ」
「むぅ!夕立は馬鹿じゃないっぽい!」
「いや、馬鹿よ。だって今指を切り落としたら砲撃するのに支障が出るじゃない。あなた、指があるのと無いのじゃ違うのよ?」
「あ、気にしてなかったっぽい」
おお、瑞鶴が良いことを言ってくれ──ん?まて、その言い方だとこの演習が終わったら落としていいみたいにならないか?
「そうですよ夕立さん」
ん、今度は大鳳か。よし、行け大鳳!夕立が指を切らないように説得するんだ!私は信じているぞ!
「いま指を切り落としたら完璧な防腐処理ができませんよ、防腐処理は新鮮なうちにしておいた方が綺麗なまま渡す事ができます。それに防腐処理が適当ですと結局腐ってしまうので提督に御迷惑をかけることになりますよ?」
違う、そうじゃない。どうして君たちは指を切ることを許容するんだ。というか!防腐処理してまで夕立の指が欲しいとは思ってないんだが!?普通、他人の指なんて欲しくないだろう!とてつもなく怖いのだが!
「提督〜、そろそろ演習が始まるよ〜」
「む、もうそんな時間か」
こんな状態でなにか頼みたくない……が、初瀬3佐への苛立ちはまだ収まっていない。故に私は彼女達に頼み事をする。──我ながら酷いやつだ、とは思う。言い合いで苛ついたから潰して欲しいとは、なんて餓鬼のような滑稽な頼み事だろうか。
──こんなのだから、私は大人になりきれてないと言われるのだろうか。あいつからも、何時も言われていた。『もっと大人になりなさい』と、今はもう──居ないが。
「さて、皆に頼みたいことがある。今からやる演習で対戦相手を完膚なきまでに叩き潰せ。完全勝利しか認めん、成し遂げたなら私ができる範囲で願いを叶えよう」
彼女達の顔に笑みが浮かぶ。──ああ、光の無い目でそんな笑顔を浮かべないでくれ。この空間から逃げたくなってしまうだろう──
時刻は18時、外は暗く、月はおろか星すらも見えない。周囲の明かりは少なく、ほぼ完全な闇の中、私の艦娘は獰猛な笑みを浮かべて今か今かと演習が始まるのを待っている。開始の合図がなった。──演習が始まる。
繰り広げられたのは一方的な蹂躙。発艦された敵の航空機は全て撃ち落とされ、敵が放つ砲撃は一切当たらず、苦し紛れに放たれた魚雷も逆に味方に当ててしまう始末。
私が徹底的に潰せと言ったからか、時間ギリギリまで彼女たちは相手を攻撃し続けた。1人だけギリギリ動けるようにしておいて、その子以外の子達を砲撃等で痛めつけた。艤装に付いている安全装置のお陰で……この場合はせいで、だな。絶対に沈まないことを逆手に取り限界まで攻撃し続けた。
はっきり言って相手側が不憫に思われるくらいに悲惨で凄惨な試合だった。先程の湊生1佐との試合がまだ可愛らしく思えるほど、それほどまでに惨たらしかった。
……まあ、命じたのは私だがな!後悔はしていない!……だが、流石に私もやりすぎだかなとは思っている。苛立ったからと言ってここまでやって欲しいとは……少しは思っていたが、少ししか思っていない。
とはいえ、彼女たちは要望通りに完膚無きまでに叩き潰し完全勝利を勝ち取ってきた。お願いは叶えてやらなければな
──呉鎮守府控室
そこでは、一人の男が叫んでいた。
「くそっ!何故だっ!何故勝てない!私の考えは正しいはずだ!何が!何がダメだったというのだ!」
男は叫ぶ、何故正しい自分が勝てないのかと、正しいはずなのになぜダメなのかと。その部屋には6名の艦娘も居たが、皆は彼の怒りのせいか、それとも先程の戦闘のせいか、震えて、怯えて、泣いていた。
「くっそおぉぉおおおおおお!!!許さない……!この私をここまでコケにして!許されるとぉ!許されると思うなよぉぉおおお!」
控え室からはしばらくの間、男の慟哭と艦娘の啜り泣く声が聞こえていた──
──作戦室
演習を終えてその振り返りを行う為、各提督が作戦室に集まっていた。開口一番に湊生1佐が口を開く。
「彩々鈊(ささがね)……あれは……やりすぎだろう」
初瀬3佐との試合を見ていたのだろう、言われることは予想はしていた。というか、初めて名前を呼ばれたな。彩々鈊夢為(ささがねむい)それが私の名前だ。階級は1尉……今更だがね。
「ええ、確かにやり過ぎかもしれません。ですが、私の鎮守府はここまで出来ると初瀬3佐には知っておいてもらおうと思いまして」
初瀬3佐の方を見ると恨みがましい目で私を見ている。正直夕立とかの眼の方が怖いのでそこまで怖くない、むしろ可愛らしいくらいだ。
「どうでしたか初瀬3佐、指示を出さなくてもあそこまでやれます。指示を出すだけが全てではないということを少しでも顧慮して頂ければ幸いです」
彼は口を開かない、より一層、恨みの篭った目で見てくるだけだ。……何故だ、確かにやりすぎたかもしれない、けれどここまで恨まれる程のことか?何が彼の逆鱗に触れた?フルボッコにしたことか?だが、それはそんなに怒ることか?……分からない。
「はぁ……おい、此度の演習の振り返りをするぞ」
湊生1佐がやってられない、という感じで溜息を吐く。あの人は初瀬3佐の心が読めているから、もしかしたらそれで辟易しているのかもしれない。……心が読めるというのは大変なんだな。
「貴様、他人事みたいに思うな。会議に参加しろ」
……何故私の時は読んだことを口にするのに彼には言わないのだろう?疑問ではあるがさておき、振り返りか……やりすぎたことしか思い浮かばないな!
「振り返り……ですか、私の場合は少々やり過ぎたことですかね。湊生1佐の艦娘達にトラウマを植え付けてしまったこと、心より深くお詫び申し上げます」
「あ奴らは暫くの間、貴様の所で過ごさせる。トラウマを克服してもらうためにな」
やり方が悪ければ酷くなってしまうが逆に、良ければ早期にトラウマを無くす事が出来る。その原因となった人と一緒に過ごすわけだからな、水が怖いと言う人に最初は水を触れさせることから始める、というのと変わらない。……ん?何か数段飛ばしている気もしなくもないが……気の所為だとしておこう。
「よく艦娘達が納得しましたね、先程は全力で嫌がっていたように見えたのですが」
はぁ、と溜息を吐く湊生1佐。…………、相当苦労したのだろう。その顔には疲れが出ていた。何と言うか、お疲れ様ですと言いたい
「ふん、説得には少々骨が折れたが最終的には納得した。あれらには1ヶ月出張という形で貴様のところに滞在させる」
ふむ、つまりはそれまでの間に彼女たちのトラウマを克服させろということか。1ヶ月……短い気もするが、まあ何とかはなるだろう。だが気になる、何故1ヶ月なのか。もう少し期間を設けるべきでは無いのだろうか?
「1ヶ月の理由だが、あれらは俺の艦隊の主戦力だ。そう長く空けてはおれんのだよ」
oh......、やってしまった。佐世保で1番の戦果をあげている湊生1佐の主戦力が使えないとなると……んん?特に問題は無いように思えるな。彼処には湊生1佐以外にも戦果を稼いでいる提督が存在する。……ふむん、何も問題は無いな。今年は湊生1佐が戦果1位で表彰されないだけだ。
「湊生1佐、彼処には湊生1佐以外にも提督はいらっしゃいます。彼等に任せてみては如何でしょうか?そうすれば彼女たちも長く出張出来るでしょう?」
「阿呆!それだと俺が今年戦果1位を取れんではないか!」
予想の斜め上の答えが返ってきた。この人、戦果1位を狙っていたのか。表彰とかいう面倒くさいことをされたがる理由がよく分からない。
「意外です、湊生1佐は戦果1位狙っていたのですね」
「当たり前だ、上に立つものは常に上を目指さねばらならない。それにだ、戦果1位の報酬は物資や勲章、設計図、カタパルト等様々なものが貰えるぞ」
……………………、嘘だろう!?そんな良い物が貰えるなら狙えばよかったと今更ながらに後悔している!物資はまあどうでもいいがアイテム系、特にカタパルトが今は欲しい。将来翔鶴を他に入れた時に直ぐに改ニにできるようにだ。まあ、もう遅いのだがな!
「……それは早く言って欲しかったですね」
「提督に着任した際、最初に言われたはずだ」
ん?そういえばそんなのこと言っていたか?全く記憶に残っていないが。……あの頃は気にも止めてなかったな。はぁ、それが今の自分の首を絞めることになるとは……。穴があったら入りたい。
「……ふん、そんなのも覚えていないのによく提督をやれるな」
おお、初瀬3佐がやっと喋った。ここで解答を間違えるとまたお怒りになられるからな。言葉には気をつけねば……。
「はは、お恥ずかしい限りです」
よし、無難なこの回答ならどうだ!?これなら何事もなく会話が──
「恥ずかしい?はっ、どうせお前はそんなこと思ってないだろう。思ってもないようなことを口にするんじゃあない!」
んんん?恥ずかしいとは思ってはいたし、そこまで怒るようなことか?訳が分からないのだが。もう私が何を言ってもあの人は怒るのではないか?そんな気がしてきたぞ。
「初瀬落ち着け、お前の怒りは分からんでもないが何時までもそのような状態でいるのはお前の中で最善か?」
「………………、いえ、少し冷静さを欠いていました。申し訳ありません」
「気づけば良い、次は気をつけろよ」
「分かりました」
おお、丸く納まったな、流石は湊生1佐と言うべきか。あれだけ昂っていた感情を一言で落ち着かせるとは、私も見習いたいものだ。
「さて、そろそろ時間だな。これで解散するとしよう。彩々鈊はここに残れ、艦娘の紹介をする」
「分かりました、それでは失礼致します。……次は、次こそは勝つ。首を洗って待っていろ」
「何度でも、勝ってみせます」
初瀬3佐と私の視線が交差する、バチッと火花が散ったような気がした。
「……貴様ら、実は仲が良いだろう」
「「そんなことはありません」」
奇しくも、解答のタイミングが被ってしまいハモってしまう。ちっ、もう少し遅い方が良かったか。
「やはり、仲が良いな」
「有り得ません」「そのようなことはありません」
全力で仲が悪いことをアピールする。私は初瀬3佐のことを好ましく思っていないし、彼もまた私の事は大っ嫌いだろう。
「ふん、まあ良い。お疲れ様、初瀬」
「お疲れ様でした、失礼致します」
バタン、とドアが閉まる。コツコツとドアから足音が離れる音を聞いて私ははぁ、と脱力をした。次いでにあいつを呼ぶか。
「川内」
「呼んだ?」
名前を呼ぶと同時に目の前に川内が現れる。特段驚く要素はなかった為、そのまま川内を抱き抱え椅子に座った。湊生1佐は驚いていたが、急に川内が現れたからだろう。
「貴様、何普通に川内を抱え座っているのだ!?」
あ、そっち!?てっきり川内が急に現れたからだと思っていたのだが、そうではなかったようだ。
「そんなわけが無いだろう。普通、上司がいる前で部下とイチャつくか?しかもこれから紹介するというのにトラウマを連れてきてどうする」
湊生1佐の言い分は最もだ。まあ、やってしまったものは仕方ないと思う。けれどトラウマに関してはおそらく大丈夫なはずだ。
「……多分、大丈夫じゃないですかね?」
「なぜだ?」
「これだけ蕩けた顔をしている娘を怖いとは思わないのでは?」
「………、一理……あるのか?」
思わず納得しそうになる湊生1佐。しばらく悩んでいたが、このまま紹介することにしたようだ。…………、川内がさっきからずっと私の頬にスリスリしてきて心地が良い。
「おい、入ってこい」
そう言うと、6名の艦娘が入ってきた。彼女たちは川内を見るとビクッ、と怯えていたが、彼女の幸せそうな顔を見て少し毒気が抜かれたようだ。
「え、あの、提督。何故、彩々鈊1尉は川内とええと……」
自分たちを紹介すると聞いていたはずなのに、何故彼は堂々とイチャイチャしているのか。長門には全く理解できなかった。
「イチャついているのか?か、この様子を見たら少しは怖くなくなるのでは無いか?という彩々鈊1尉の提案だ」
「なる……ほど?まあ、確かに怖くは……ありませんね。むしろ微笑ましい光景だと思います」
納得はいかないが、理屈は理解出来る。現に私たちは彼女のことを、先程より怖いとは思わない。
今は怖くない、けれど、私たちが怖いのは戦闘時の彼女たち。彼女たちの戦闘を見た時、きっと私たちは震えて動けなくなるのだろう。そんな確信が長門にはあった。
「え、えーと提督?いつ私たちは自己紹介すればいいのかしら?」
「今からでも構わんぞ?」
「あ、そうなの?じゃあ私から、長門型戦艦2番艦の陸奥よ。よろしくね。あまり火遊びはしないでね…お願いよ。」
一瞬、殺気を感じた。それだけで身体が震える。何がダメだったのかは分からないが、自分がこれ以上喋るのは得策ではない。そう思った陸奥は一歩後ろに下がる。
「私が、戦艦長門だ。よろしく頼むぞ。敵戦艦との殴り合いなら任せておけ。」
チラッと川内が長門を見る。けれど、何もしないまま提督とイチャつく。先程から提督の首筋を甘噛みしたり舐めたり、だんだんあれな方向に行ってる気がするが、それは些細な問題だろう。
「え、ええと、航空母艦、飛龍です。空母戦ならおまかせ! どんな苦境でも戦えます!」
川内チェックが入る、……結果は問題なし。イチャつきを続行。
……先程から川内が自己紹介している艦娘を何か判定している気がするのだが。今のところ陸奥のみアウトだったようだ。基準が分からないが……。
「航空母艦、蒼龍です。
空母機動部隊を編制するなら、私もぜひ入れてね!」
川内審議中…………………、アウト、殺意が湧きます。
「ひぃっ!?えっ!?私何かしました!?」
なぜ殺気が放たれているか分からない、という風な蒼龍。私にも分からない、基準が分からないからどうしようもない。だが、最初からこれでは克服できるものもできなくなってしまうだろう。
それは……んん?よく見れば、他の子は青ざめてたり震えてたりするのに蒼龍はそうでも無さそうだ。他の子よりもトラウマになってないらしい。精神が図太いというか、なんというか。
ふむん、ならば蒼龍を介して彼女達のトラウマを克服するとしようか。信頼する仲間の補助があれば、こういうのは解決しやすいからな。
おっと、そろそろ止めさせるとしよう。でなければ次の子の紹介が出来なさそうなのでね。
「川内、そろそろ止めろ」
頭を撫でながら言うと、ふにゃぁ、と蕩けた顔をしてイチャつきを開始する。おい待て、耳を甘噛みするまでは許そう。だが、腰をグリグリと押し付けてくるんじゃない。色んな意味で危険だ。
「……貴様、それ、どうにかならんのか?見ているこっちが砂糖を吐きそうなんだが」
ああ、湊生1佐が呆れ返っておられる。当たり前か。上司の前でこんなことするやつは、本来なら怒られるどころの騒ぎじゃないからな。
……しょうがない、名残惜しいが川内には離れて貰うしかないか。
「……川内」
「……はーい」
名前を呼ぶと、彼女は名残惜しそうに離れていった。そして、私の後方で待機する。ん、名前を呼んだだけでして欲しいことが分かるのは流石だな。後で自室で甘やかそう、ついでに盗聴器と監視カメラも見つけてもらわねば。
「ふぅ、では次の方、自己紹介をお願いします」
後は駆逐艦の2人、川内チェックはどうなるんだろうな?少し気になる。
「い、雷よ!かみなりじゃないわ!そこのとこもよろしく頼むわねっ」
む、殺気が……あぁ、雷が怯えている。本当に何がダメなんだ……?何を基準に殺気を放っていたのか聞いてみるとしよう。
「あっ、あああ暁よ!い、一人前のレディーとして!あ、扱ってよね!」
ふむん?今度は何も無い、寧ろ仔犬や仔猫が遊んでいるのを見ている親ような、子供の成長を見ている母親のような、そんな目で暁を見ている。……何故だ?まあ、それも後で聞けばいいか。
「これで全員ですかね?では、案内は……大和ー」
すると10秒もしないうちに扉がガチャりと開けられる。……ふむん?大和はこの時間、道場に居るはずなんだが……?道場からここまでは10分以上かかるはず……。
「はい、大和をお呼びでしょうか?」
呼んでおいて来ると思っていなかった私を余所に大和は周囲を見渡し、何をすべきか理解したようで。
「こちらの方たちを外来に案内すればよろしいのですね、分かりました」
「泊まる場所もだが、鎮守府内も案内してくれ。今日から1ヶ月、この人達はここに滞在する。訓練等も一緒に参加させる故、他の者にも伝えておいてくれ。歓迎会は明後日しようと思う」
「分かりました、大和にお任せ下さい」
トトっと駆けていく音が聞こえた。足音的に夕立だろう、きっと歓迎会をやると聞いて鳳翔さんや間宮さんのところに行ったに違いない。
ん、彼女らは大和に付いて行ったか。大和に任せれば案内関係は大丈夫だろう。
「………………、貴様の所の艦娘は一体どうなっておるのだ」
私の心を読んだのか、それとも大和の心を読んだのか、或いは川内かもしれないが、湊生1佐は困惑した表情で私を見ている。
誠に残念ながら、その問いに関する答えを私は持っていない。寧ろ私が知りたい、私の艦娘の常軌を逸した行動の理由を。
私が呼べばすぐに来る、私が命令すればどんな命令でも聞く。私の邪魔をすることは例え仲間でも許さない。敵は全てぶちのめす。
…………、やったことは無いが恐らく私が身体を差し出せと言えば喜んで差し出すだろうし、死ぬまで出撃しろといえば、本当に死ぬまで出撃するのだろう。
彼女らの献身がとても怖い、が、それを心地よく感じている私もどこかに居て。……いや、怖いという感情よりも、嬉しいという感情の方が大きい。
私の為にそこまでやってくれる、提督という役職だからじゃない。私だからこそ、私の為だけにここまで尽くしてくれる。ああ、これを嬉しいと言わずなんと表現すれば良いのだろうか。
「貴様は……そうか」
何かを悟ったかのように憐れみの目を向けられる。おかしい、私はそんな目を向けられるようなことは何一つしていないはずだ。
「彩々鈊、お前は……」
ふと、湊生1佐が川内の方を見る。後ろにいる彼女の表情をこちらから伺うことは出来ない。後ろを見れば良いだけなのだがそれをしてはいけないような気がして。ただ、湊生1佐の言葉を待った。だが……
「いや、何も言うまい。これは、お前が気づくべき問題だ」
湊生1佐は何も言わず、この部屋から出ていった。立ち去り際『お疲れ様』とは言ったが、彼が何を伝えたかったのか、それだけが──分からない。
「提督、余り深く考えない方が良いよ」
そう、川内が慰めて?くれる。……確かに此処で幾ら考えても分からないものは分からないだろう。ならば次やることに目を向けるべきだな。
「川内」
「うん♪」
名前を呼ぶと即座に彼女はこちらに擦り寄って抱きついてきた。ふむん、やはり川内が1番抱っこしていて心地よい。他の者も良いのだが、今のところ川内を超える心地良さの者は居ない。
「そうだ、川内」
「ん?私が殺気を出てた基準かな?」
「よく分かったな」
「提督なら聞いてきそうって思ってたからね」
そんなものか、まあ、私が分からないものをそのままにせず聞くのは知っている。ならばそれくらいの予想はつくか。
「んーとね、殺気を出てたのは提督を取ろうとする泥棒猫にかな、暁ちゃんはなんて言うか、私の事怖いはずなのに私のことを見て自己紹介してるのが微笑ましくて……」
ふむん、言わんとすることは分かる。つまり殺気を出していた相手は私とすぐに仲良くなれる子なのだろう。で、暁はと言うと、一生懸命頑張っている子を見ると微笑ましい気持ちになるだろう?つまりはそういうことだ。
ふむん、確かに蒼龍や陸奥、雷は誰とでも仲良くなれそうな雰囲気ではあった。……然し、それなら泥棒猫、という表現はしないはずだ。
泥棒猫というのなら、彼女らが私に好意を持つ前提で話が進んでいる。……好意を持つか?トラウマを植え付けた艦隊の長に?
だが、川内がそう感じたならそうなってしまう気がするのも確か。彼女はそういった色恋沙汰に敏感だ、外れた事は余り無い。
ふむん……だが、彼女らとはほぼ初対面。一目見ただけでそんなのが分かるはずも無い、とも思う。
……はぁ、結局のところ、私には分からない。まあ、どうせ1ヶ月だけだ。そんな短期間で惚れた腫れたの騒ぎになるわけが無い。
「ん、川内が彼女らに殺気やらなんやらを向けていた理由はわかった」
「次の言葉を当てようか?『だが、それにしても腰を下半身に押し付けるんじゃない。思わず元気になりそうだったぞ』と言う!」
「だが、それにしても腰を下半身に押し付けるんじゃない。思わず元気になりそうだったぞ……はっ!」
いや、何でわかったんだ!?1字1句間違ってないのだが!?何であいつジョ○ョみたいなことができるのだ!?
「ふっふーん!提督のことなら何でもお見通しだよ!今は夜だしね!」
……そういえば夜なら分かるとか言っていたな。……ん?まて、瑞鶴は雰囲気でして欲しいことが分かると言っていた。
だが、今やった事はなんだ?次に話すことを当てているんだぞ?して欲しいことは予想がつく、だが、喋る内容を1字1句間違えずに予想できるものか?雰囲気だけで?
それは、本当に艦娘ができる芸当なのか──?
「できるかできないかで言えば、出来ないと思うよ」
ポツリと、川内が呟いた。俯いているせいか、彼女の表情を読み取ることが出来ない。だから、次の言葉を待つしか無かった。
彼女の次の言葉を待っていると、ふっ、と彼女が顔を上げる。笑顔だった……口だけは。目が……目が、笑っていない。ハイライトさんも……消えていた。
「でも私は提督が好きだから、愛しているから、できたんだ。夜限定だけどね」
慄然(りつぜん)とした。本能が死の恐怖を感じている、このままでは危険だと告げている。だが、身動きすることが出来ない。
たらりと脂汗がながれてくる。すると、ふ、と川内の目にハイライトさんが復活した。それだけで緊張していた身体が弛緩する。時間にしてほんの数秒だったが、私にとっては永遠のようだった。
「……川内?」
彼女の名を呼ぶ、本当に大丈夫なのかを確かめるように。
「大丈夫だよ、提督」
彼女はニコッといつもの笑顔で応えた。ああ、良かった。これなら大丈夫だ。そう思ったのも束の間、私は川内に抱きつかれた。
「うわっと、川内?」
そのままぐりぐりと私の息子にお尻を押し付ける。落ち着け、我が息子……!まだ起きるときでは無い……!
「せ、川内、一旦それを止めようか?でないと色々と不味いのだが……」
「ヤダ、このまま夜戦しよ?」
まさかの返しに一瞬だけ、ヤるかと考えたが他の艦娘に見つかると文字通り生命の危機を迎えるためここは金剛石の意思で思い止まる。
「んー、反応が悪いなー。ならこれは?」
「……っ!?」
ただ押し付けていただけだったのが、今度は前後のグラインドに変わる。ば、馬鹿な……いつの間にこんな腰使いを覚えたのだ……!?
「んっ……///これ、反応良いね……っ///」
危険だ、これ以上私の息子が耐えることは出来そうにない……。先程から擦る度に川内が『あっ……///』とか『んっ……///』とか言っていて理性も崩れそうだ。
先程からくちゅくちゅと水音が聞こえ、私のズボンが濡れてるのは気の所為だろう。気のせいだ、きっとそうだ。
「せ、川内……」
「ん……?///シて、くれるの……?///」
大変だ、川内がエロ可愛い。淫靡な表情を浮かべ、ハァハァと喘ぎながら腰を振る姿に、私の理性は崩れ去る。と、同時に息子も完全に起きた。
「あはっ///提督の、大きくなった///」
カチャカチャと私のズボンのベルトを外し、チーっとチャックを開く。そして彼女は、物欲しそうな顔でパンツから窮屈そうにしていた私の息子を取り出した。
「じゃあ、前戯も必要ないし……入れるね///」
そう言って彼女は私の息子の上に腰を落とそうとする。私もぽたぽたと愛液が落ちてくる程濡れた彼女の秘部に、息子を突き立てようとした。
ガチャッ
「「ッ!?」」
突然、扉が開いた
「てーいーとーくー?ナニ、してんのー?」
そこに現れたのは北上だった。その声色ははいつもの様に軽薄で親しみやすいものだったし、その表情には微笑みを浮かべていたが……。
その身には有り得ないほどの昏いオーラを身に纏っていた。まるで、死神が魂を狩りに来たようだ。それほど迄に恐ろしかった。
そんな様子の北上が、1歩、また1歩とこちらに歩を進めてくる。正直生きた心地がしない。私は今日だけで何回死を感じれば良いのだろう。
私が一体、何をしたって言うのだ……
「き、北上っ!?こ、これはだな……むぐっ?」
少しでも生存していたかった私は、ドラマでありがちな浮気した夫のように言い訳を始めようとする。が、川内に口を塞がれた(物理的に)そして──
「ナニって、見ればわかるでしょ?」
ズブッと、彼女は腰を落とし、私の息子を呑み込んだ。勝ち誇ったような笑顔で。
「んなっ!?」
流石に想定外だったのか、北上が唖然としている。そんなことに構うとことなく、川内は先程のように腰を振り刺激を与えてきた。
「うぁっ……な、なぜ、こんなに……!」
ツーっと、彼女の内股に赤い雫が線をつける。それを見れば彼女が初めてであることなど明白だ。なのに、何故彼女はこれほどの技量を持っているのだろう?
「んふふ、色々、練習したっ、からっ///」
むぅ……このままでは不味い。川内が抱きついているせいで抜くことが出来ない。このままでは中に……。
…………、待て、そもそも艦娘って孕むのか?彼女らは建造、つまり鉄や燃料といった無機物から生まれてきているのだぞ?
ふむん……だが、生殖器はあるし、月のものも来ているから……生殖能力はあるとみて良いのだろう、恐らくではあるが。
ん、興味が湧いた。川内を孕ますとしよ……
……………………………。いや待て!?私は一体何をしようとしているのだ!?孕ます!?馬鹿か!?
そんな無責任にやって良いことではないだろう!?私はまだ子供を育てれるような環境を作れてないのだぞ!?環境を作ってから子供はつくるものだ、こんなその場の勢いで作るものでは無い!
そ、そうと決まれば──うおっ!?
「川内、提督から離れて」
いつの間にここまで近づいていたのだろうか、北上が川内に向けて砲を構えていた。だが、そこに驚いたのではない。私が驚いたのは、その顔。
目が、黒い絵の具で塗りつぶしたように光がない。表情も、まるで能面のように不気味だ。
「やだ、私はこのまま提督と繋がってるの。邪魔しないで」
方や表情がなく、方や勝ち誇った笑みを浮かべている。その両者の間にバチバチと、火花が散る。
……だけならまだ可愛らしかっただろう。ピシピシッ、メキメキッと周りの陶器や硝子にヒビが入る。
それほどまでの2人の圧が、殺気が、ぶつけられていた。その空間にいる私の心境は、まあ、察しの通りだ。
………お気づきだと思うが、今、私と川内は行為の最中である。このような状態で昂れると思うか?
否、無理だ。今も萎えそうなのを必死に耐えているところである。萎えてしまったら何か嫌な予感がする。経験則でわかる、ここで萎えたら不味いと。
かと言って、このまま続けれるかと言われたらNOと答えるしかない。こんな空気の中でやれる人はある意味凄いやつだと思う。
……………。私の川内、こんな状況でも腰を振ってるな。というか、この顔。この状況をとても愉しんでいるように見えるのだが?
……………………。誰だ、私の川内をこんな風にしたのは!幾ら温厚な私でも赦さんぞ!
……………、虚しいな。こんな風にしたのは私だと言うのに。
「もう一度だけ言うよ、離れろ」
殺気の中に怒気を込め、北上が最後通牒を送る。これを断れば、恐らく一切の躊躇(ちゅうちょ)無く彼女はそれを撃つだろう。
「嫌だ」
川内も1歩も引かない。彼女は今、砲を向けられているというのにその顔は笑顔のままだ。
「そう、じゃあ、死ね」
「待て!それを撃つと私が死ぬのだが!?」
慌ててわたしは制止させる。こんなところで砲等放たれたらまず間違いなく私が死ぬ。川内は……うむ、生き残りそうだ。
暫く砲を構えたまま考え込む北上。このまま思いとどまってくれると良いのだが……
「そう、だね。これだと提督が死んじゃうね」
よし!このまま終わってくれ……!何事もなく!
「でも、提督が死んでも大丈夫」
「な、何が大丈夫なんだ……?」
何が!?何もかも大丈夫じゃ無いのだが!?
私はもっと生きたいぞ!?勝手に殺さないで欲しいのだが!?
「死んだら、私とずぅっと一緒に居れるよ」
ここで彼女は初めて笑顔になった。ハイライトさん、いい加減仕事をしてくれ。怖い。
そして、恐怖でいっぱいいっぱいの私。ここで最悪の発言をする。
「え、嫌なのだが?」
「………え?」
拒絶されるとは思わなかったのだろう。彼女は半狂乱になって川内を押し退け、私に掴みかかった。
「何で!?どうして!?私じゃダメなの!?」
子供のように喚く北上。一方で、私は他人事の様に冷静に彼女を観察していた。
「何で、何でダメなの……?……あぁ、そっか、その女か。その女が居るからダメなんだ」
北上はぐるりと、顔だけを川内に向けた。このままでは本当に川内を殺してしまいそうだ。
さて、どうやって止めよう。時間もない、考える暇もない。………なるようにしかならないか。頑張れ、数分後の私。
「待て、北上。川内を殺すことは許さん」
そう言って彼女を抱きしめる。下半身が丸出しではあるが知ったことではない。今は彼女を止めることが先決だ。
「北上、なぜ私が拒否をしたか分かるか?」
「あの女が居るからでしょ、そうなんだよね?」
「残念ながら違う。北上、私が死ねないのはな、私に夢があるからなんだよ」
「…………夢?」
「そうだ、私には夢がある。何かわかるか?」
優しく、諭すように私は話す。このままこちらに気を向けていて欲しいものだ。
「…………そういえば、知らない」
「私も、提督の夢って何?」
さて、誰にも話したことの無いこの話をすることで、明日からどんなことになるのか……うむ、考えるのはやめておこう。
「私は……家族を持ち、子を育てる事が夢なんだ」
「え……」
「そう、なんだ……」
おおう、何かよからぬ事を考えている気がするぞう。
「このご時世だ、いつ死ぬとも限らん」
すぐさま否定の言葉が飛んでくる。
「そんな事させない!」
「絶対に無いから!」
「無い、とは言いきれん。深海棲艦に攻め落とされるかもしれんし、身内に殺されるかもしれん。はたまた誰かに嵌められるかもしれん、それは分からん、分からんが、絶対とは言いきれんのだよ」
「なら、その全てを私が始末すれば良いだけだね」
「任せて、私、今すぐやってくるよ」
血気盛んだな、良い子ではあるが、少しばかり忠誠心が高すぎないか?心配だぞ、私ではなく私の部下が。憲兵さんとか大丈夫だよな?……大丈夫だよな?
「おいおい、可能性の話だ。深海棲艦は潰してもらうが、他は止めてくれ。……まあ、それで、だ。そんな危険な場所に居るんだ、だからこそ、家族を養い、子を育てる、というのに憧れるんだ」
さて、彼女たちはどう動く……、正直『なら私がお母さんになって子供を産んであげる』とか言われてもおかしくッ……無いッ……!
そんな環境、一切整ってないのだがな!せめて整えさせてからにして欲しい!(願望)
「なるほどね……青葉ー」
「呼ばれて飛び出て青葉です!ってきゃあっ!///」
川内が、青葉を呼び、青葉が私を見て悲鳴をあげる。はて、何が……………うおぉぉぉぉぉぉ!?忘れていた!早く仕舞わなければ!
「え、えぇと……な、ナニをしていたかはき、聞きません!///それで川内さん、なんの御用ですか?」
くっ、川内は服を脱いでないし、パンツをズラしてただけだから気づかな……、ん?流れてた血と液体は、いつの間に拭いたんだ?まあ、良いか。
「えっとね、明日の新聞にごにょごにょって書いて欲しいんだけど」
「え?…………ェェエェェエェエェΣ(゚Д゚;)エェェエェェエ !?」
青葉が目が飛び出そうなくらい驚いている、川内、一体何を言ったんだ……?おっと、北上も何か青葉に耳打ちしてるな。気になるが……どうせ明日分かるからとはぐらかされるのだろうなぁ……
はぁ、もう夜も遅い、このまま別れて寝るとしよう。明日も、生き残る事だけを考えねば……
───次の日
朝目が覚めて、真っ先に思い浮かんだのは昨日のことだった。北上と川内が青葉に何を吹き込んだのか……本当に気になる。気になって夜しか眠れない程だ。
ん?食堂前の掲示板に人が集まってるな、青葉の新聞が更新されたのか?……急いで行くか。
む、更新されてるな。えー、【速報】提督の夢【やっちゃえ】……だとぉ!?な、内容など読むべくもない!今はこの空間から逃走するのみ!全速力でな!幸い、皆は新聞に夢中だ!このまま気配を消して逃げるっ!
「あれ?提督じゃん!おっはよー!」
那珂ァァァァァァァ!!!そんな大声で私の名前を呼ぶなぁぁぁぁぁぁぁ!!!
ゾクリと寒気がした。ギギギギと擬音がなりそうな程ぎこちない動きで後ろを向く。幾つもの眼が、私の姿を……捉えていた。
それを見た私は、皆に微笑みを向け全速力で逃走した。勿論、その際に那珂を盾にすることも忘れない。後ろから「キャー!」と言う叫び声が聞こえても知らん振りをして、ただ逃げることだけを考えていた。
どれだけ逃げ回ったことだろうか。今、私は私室の隠し通路を通って逃げている。昔、戯れで作ったこの通路が役に立つとは思わなかった。
この通路は、大人一人分が通れるかどうかの幅しかなく、艤装をつけて追いかけることなど不可能。他にも罠も仕掛けている為、追跡はさらに困難となる。
因みに、出口は4箇所。表門の傍、憲兵隊の待機所、鎮守府から3km離れた私の仮住まい、鎮守府の裏にある山の中腹だ。
これを全部一人でやった……と言いたい所だが、殆ど妖精さんがやってくれた。私がやったのは設計図と罠の仕掛け場所の指示だけだ。
さて、どの出口に行くべきか……
①~④の数字を選びコメントをして下さい。
尚、1週間後に数字のコメントがない場合は私が決めさせて頂きます。
①表門の傍(位置的には鎮守府外)
②憲兵隊の待機所
③鎮守府から3km離れた私の仮住まい(一軒家)
④鎮守府裏にある山の中腹(洞穴の中)
(さて、私の仮住まいに行くとするか)
あそこならば1週間は籠城できる。いや、籠城する必要は無いのだが。
壁にあるボタンを押し、他の通路の罠を作動させる。これでどこに行ったかは分からなくなった筈だ。
問題は15分以内にここを脱出しなければ罠に囚われてしまうことだが、走れば大丈夫な為問題ない。
──提督、全力疾走中
あ……危なかった……!まさか、15分ではなく13分だったとは……!後ろから罠が作動していくのだが、罠の作動速度が速くなっていて思わず全力で走ってしまった。
他の罠も、作動速度は速くなってるとみて良さそうだな。………………、誰か弄ったな、これ。
私と妖精さん以外の誰かがこれを弄っているということは、この手の罠は全て突破出来るとみて良いのだろうな。
ドアを開けて通路を出る、その際に厳重にドアを封鎖するのを忘れない。久しぶりの仮住まいはとても綺麗だった。
………………は?待て待て待て、ここはそんなに使ってはいない。ならば何故埃っぽくないのだ?まるで誰かが定期的に掃除をしに来ているようでは────
(………嘘だといってよ、バーニィ)
隠し通路のある部屋から出ようとした時、扉の前に気配を3つ感じた。早い、早すぎる。まるで隠し通路が通じている場所を知っていたみたいではないか。
否、みたい、では無く知っていた、のだろうな……。私のプライベートは何処に言ったのだ?
気配の正体は分かっている。諦めるしかあるまい、この鬼ごっこは私の負けだ。いや、別に勝負をしていた訳では無いがね。
「はぁ……夕立、瑞鶴、球磨。いつからそこに居たのだ」
扉を開けると、3人の娘が元気よく答えた。
「提督さんが隠し通路に入ったときからっぽい!」
「外なら艤装を使えるからそれで時間短縮したの」
「他の人たちはそれぞれの場所で待機してるはずクマ」
まあ、ここにいるということは他にもいるに決まっているか。では何処に誰がいるのだろうか?聞いてみるとしよう。
「他の場所には誰がいるんだ?」
「表門の傍の出口には北上と川内と那珂ちゃんが居るっぽい!」
むふん、と得意げに答える夕立はとてもかわいい。思わず頭を撫でてしまった。
突然撫でられたからかぼふんっ、と擬音が聞こえてきそうな程の勢いで夕立の顔が真っ赤に染ったが、嬉しそうなのでまあ良いだろう
反対に瑞鶴と球磨が一瞬冷たい目で夕立を見た気がするが、きっと気の所為だ。
「憲兵さんの待機所には扶桑さんと大鳳と多摩さんが居るわ」
…………、瑞鶴が何かを期待した目でこちらを見てきた。まあ、普段から私の為に色々としてくれるからな。その期待に応えてやるとしよう。
夕立を撫でるのを止め、瑞鶴を撫で始める。よく分かってるじゃない、と彼女は目で伝えてくる。
夕立が撫でるのをやめたからか 、むぅー、と不満気な顔をする。そして、チラッと瑞鶴の方を見た。その瞳に殺気を込めて。
瑞鶴は意に介せず撫でられていたが、私としては撫でる如きで殺気を放つんじゃないと切に思う。
「洞穴の方には大井と神通と不知火がいるクマ」
おおっと、この光景はさっきも見たぞ。期待した目で球磨が私を見ているな。仕方あるまい、球磨も撫でて──
球磨を撫でようとした時、背中に悪寒が走った。なんだ、この誰かに見られているような感覚は……?
撫でようと伸ばした手が途中で止まったからか、球磨はどうしたクマ?と言いたげな目でこちらを見る。
それに構うことなく私は当たりを見回す。……………あった、巧妙に隠されてはいたがあんな所に隠しカメラが───!
くいっと袖を引っ張られた。何事かとそちらの方を見る。球磨がハイライトさんが仕事をしていない目でこちらを見ていた。
「なんで……なでなでしてくれないクマ?」
お前いつもぬいぐるみ扱いするなと言って、撫でたら文句言うでは無いか、という言葉は飲み込んで、彼女に理由を説明する。
「先程、誰かの視線を感じてな、誰かに見られてるのではないかと思い監視カメラを探していたのだ」
「監視カメラ……?どこに───あ、あんな所にあるクマ」
相変わらず見つけるのが早い、ならばこの調子で他のも見つけてもらうとしようか。その方が私も楽をできるからな。
「球磨、頼みがあるのだが」
「何だクマ?」
ふむん?いつの間にかハイライトさんが仕事をしている。いつもこれくらい早くハイライトさんには仕事に復帰してもらいたいものだ。
「今日の夜、お前と同衾してやるからこの家の監視カメラや盗聴器その他諸々、余すことなく撤去してくれ」
「わかったクマ!」
そう返事をしたと同時に彼女は動いた。私の近くにあった監視カメラを初め、色々な物が撤去されていく。
おい待て、どれだけ付けられているんだ。多すぎやしないか?どれだけ私のプライベートが知りたいと言うんだ、怖いのだが。
おおっと、夕立と瑞鶴にも何かを頼むとしよう。でなければまたハイライトさんが仕事をしなくなるのでね。
「瑞鶴、夕立」
「なに?」
「どうかしたっぽい?」
危ない、仕事をしなくなる1歩手前だったか。本当にうちのハイライトさんらは仕事をサボり気味で困る。
「夕立には朝食を作ってきて欲しい。褒美はそうだな……朝食を食べてから昼食を作るまでの間はほぼずっと抱っこしてやろう」
「今すぐやってくるっぽい!」
風の速さで夕立がキッチンに向かっていく。どれだけ抱っこされたいんだ……
「瑞鶴には昼食を作って欲しい。その代わり昼食後から夕食を作るまでの間は抱っこしてやる」
「やってやろうじゃない!」
返事が早い。まあ、私としては役得だから問題ないのだが。そんなことを思っていると球磨がゴミ袋を持ってこちらにきた。因みに90Lだ。
「提督、終わったクマ。こんなにあったクマ」
カメラや盗聴器、その他諸々の多さに私は頭を抱える。幾ら何でも多すぎだ、私にプライベートをくれ、頼むから……
っと、落ち込んでいる場合ではない、そろそろ朝食ができる頃合いだ。リビングに向かうとしようか。
出てきた朝食はまさに日本の朝食といったものだった。ご飯に豆腐の味噌汁、鮭におひたし、卵焼き。
ふむん、見た目はとても美味しそうだが味はどうだろうか?まあ、不味いということは無いだろうが。
──提督達、食事中
……………、嘘だろう?あの間宮さんとほぼ同レベルの料理の腕だぞ。朝食はとても美味しかった、瑞鶴も球磨もむむむ、と唸る程だ。
正直に言えば、夕立がこれ程まで料理ができるとは思っていなかった。人は見かけによらないものだな。
さて、朝食は食べ終えた。約束通り夕立を抱っこするとしよう。私はソファに座りポンポンと膝を叩く。とても嬉しそうに彼女は私の膝の上に乗った。
ん、今日の仕事はどうしようか。幸いにも急を要する書類等は昨日終わらしているからな、演習等も入っていない、ぶっちゃけて言えば今日はすることはない。
………………、なんで今日私は休みを取らなかったのだ?代休も溜まっていたし取ればよかったか。
と、軽く後悔したがまあいい。大淀に何て伝えようか?そんなことを考えているとテーブルの上にぐでぇ、と突っ伏していた瑞鶴が
「あ、大淀さんには提督は1週間お休みするって伝えておいたから」
と言われた。そうか、伝えてあるなら何も問題はな───ん?1週間?なんで1週間なんだ?
「だって提督さん、ここ最近休めてないでしょ?だから休ませようって前からみんなで話してたの」
ナチュラルに思考を読んでくる瑞鶴に若干の恐れを抱きつつ、そこまで部下に思われていたことに私は嬉しくなった。
いつ休めるかは各鎮守府に一任されているため書類さえきちんと書けば代筆であっても問題は無い。印鑑は机の上に置いてあるしな。
そうか、1週間も休めるのか、久しぶりの休みだ。できれば1人で休みたいが、まあそれは後からでもできる。
余り構うことが出来なかった分、この一週間は全力で構ってやろう。…………他の子達はどうしようか?その辺も考えているのか?
ふむん……スケジュール的には次は3ヶ月後ぐらいか?まとめて休みが取れるとしたら。その時に今回構えなかった子達からまた何人か抽出して構うとしよう。
さて、何をしようか?実の所、私は複数人で休日を過ごすということを余りしたことがない。女の子と遊ぶなぞついぞしたことが無い。
おいそこのお前、今ぼっちとか思ったな?その通りだ。私に友人は余りいない。狭く深くの付き合いしかしてこなかったのでな。
まあ、そんなことはどうでもいい。
「なあ」
「あ、提督さん。遊びに行くなら私たちのうち誰か一人を連れていってね」
待て待て待て、先回りしすぎだぞ瑞鶴!凄いを通り越して本当に怖いのだが!?
…………だが、これ程先回りができるのなら、今後は秘書艦を任せても良いやもしれん。今まで任せていなかったが、これならもっと業務が効率よく回るだろう。
「瑞鶴」
「1人なのは単純にデートしたいからかな。他の人たちに家の事を任せれば、家の事は気にしなくて済むし」
…………慣れるしかないか。今日は午前も午後も誰かを抱っこすると決めている。明日からは──瑞鶴→夕立→球磨の順で遊ぶとしようか
「そうか」
「明日のデートは私よね?今日は午後から私を抱っこしてくれるもの」
「その通りだ、今日はいかないが明日から瑞鶴から順に遊びに行こうと思う」
その言葉を聞いた2人がガバッとこちらを向く。夕立の頭が、私の顎にヒットした。ゴンッと鈍い音が鳴る。
「…………っ!」
視界が、眩む。どうやら脳震盪を起こしているらしい。意識が────
意識が落ちる寸前、夕立が何か言っている気がしたが────、きっと気の所為だろう。
夢を────、見た。
多くの艦娘に囲まれた提督が、楽しそうに鎮守府を歩いている。時には艦娘と遊び、時には情欲に身を任せ、実に自然な笑顔で彼女たちと接している。
────私は今、心から笑えているのだろうか。彼女たちを恐れ、怖がり、距離を取っている私は…………本当に笑えているのだろうか。
彼女たちをあんな風にしたのは私だと言うのに、私から距離を取ってしまっている。この恐れは────どうしたら取り除けるのだろうな…………。
彼女たちはあんなにも私のことを信頼し、好いてくれているというのに。私がその好意と信頼に応えられていない。
変わらなければならないのは分かっている。だが教えてくれ、命の危険を感じるような相手に、私はどうやって心を開けば良いのだ?
彼女たちの献身はとても嬉しいのに、最後の一線で拒絶をしてしまう。確かに、彼女たちを好きではいられる、いられるのだ。
けれど、愛せない。愛することが……どうしてもできないのだ。家族のように感じているはずなのに、家族愛さえ持つ事が出来ない。
私があと一歩進めば良いだけなのは分かっている、その1歩の進み方を誰か、誰か…………私に教えてくれ……。
なあ、夢のお前、口調のおかしなお前。どうしたら────お前のように笑えるんだ?
─────目が、覚めた。
気がつくと私はベッドの上に寝ていた。まだ頭がぐわんぐわんと揺れている感じがするが、起きる分には問題ない。
「提督さん!あっ……」
ベッドから身を起こすと近くにいた夕立がこちらに抱きつこうとして、しかし先程のことを思い出してか途中で止めてしまった。
全く、あれくらいでは気にしないというのに……。やはり優しいな、夕立は。
「夕立」
名前を呼ぶと、悪い事がバレて叱られる子供のような反応をする。目には少し涙が浮かんでいた。…………そんな泣きそうになるほどか?
「夕立、こっちにおいで」
子供をあやすような声音で、彼女を呼ぶ。一瞬彼女は飛びつこうとしていたが、思いとどまり普通にベッドの上に腰をかけた。
「全く、あれぐらいでは気にせんというのに」
グイッと、彼女の身体を私の腿の上に移動させる。彼女はくるっと、私の方を向く。……対面座位のような格好だが気にはするまい。
「提督さん、大丈夫……?」
「問題ない、だが次は気をつけて欲しいものだな?」
沈黙が流れる。
必然と、夕立から良い香りがするとか夕立の臀部が柔らかいなど、そんなことを思い浮かんでしまうのは男として正しい反応だと思うのだがどうだろうか?
……………これは不味い、今はシリアスな雰囲気だと言うのにこんな下世話かことを思い浮かぶとか二重の意味で不味い!
《起きてもよろしい?》
宜しくない!腰の神よ、鎮まり給え!
《黙れ小僧!お前に子が孕ませられるか!》
煩い!空気を読め空気を!そんな雰囲気でないのは明白であろうが!切り落とすぞ!
《ひえっ……》
私の脳内でくだらない争いが繰り広げられている間、夕立は──
(………あれ?この体勢、もしかして提督さんを襲えるっぽい?で、でもさっきのことがあるし……)
(それにしても提督さん、いい匂いがするっぽい……。私のお尻の所に提督さんのアレがあると思うと熱くなってくるっぽい……)
(はっ!ダメ、さっきのこともあるのにそれじゃあ提督さんに怒られる……我慢、我慢)
と、同じことを考えていたらしい。
ん?何で考えていたことがわかるのか、だと?簡単だ、後で聞いた。私にそんな超能力じみたことは出来ないのでね。
さて、沈黙が流れる状態で考えていることは同じ。2人とも自分を抑えるのに集中しすぎて会話の糸口などあったものでは無い。
まあ、どうなるかは明白だろう。先に反応し始めたのは夕立だった。急にズボンが濡れ始めたのだ。
「あっ……」
夕立が焦った表情でこちらを見た。その表情に少し期待が混ざっていたのは、見間違えではないだろう。
ぎゅうっと、抱きしめてみる。それだけで彼女は熱を帯びた息を吐く。ふむ、駆逐艦に手を出すと憲兵が煩いのだが。まあ、大丈夫か?
「夕立」
「なぁに、提督さん///」
「このままいっても大丈夫か?時間は……2時間半ぐらいだな」
お昼を迎える前にシャワー位は浴びておきたい。そういえば、何故瑞鶴も球磨も居ないんだ?それだけが気になる。
「うんっ、提督さんなら……良い!///」
さて、許可も得たことだ、抑える必要もあるまい。しばし情欲に溺れるとしようか──
────見せられないよ!
提督さんが夕立と性交をしているのを、私たちはただ見ているだけだった。
提督さんが他の娘とヤってると言うだけでなんとも言えない感情が私を支配しそうになるけど、お昼から私が相手をしてもらえるんだと思うとそれだけで身体が昂ってくるのが分かる。
だってほら、私のアソコ、もうこんなに濡れてるもの。ぐちゅぐちゅと私は秘部を弄る。あっ、提督のあんなに大きんだぁ……
さらに興奮してきた私は提督の使用済みパンツをポケットから取り出し、その匂いを嗅ぎながら掻き回す。2人が終わるまで、何回イけるかなぁ……///
クマ、提督と夕立がヤってるクマ。で、隠れて瑞鶴も1人でヤってるクマ。なら、私も1人でヤっても問題ないクマね?
提督のアレがよく見える位置に隠れ、私は玩具と提督の下着を取り出したクマ。玩具の大きさはもちろん提督と同じサイズクマよ?ちゃんと測ったから間違いないクマ。
うわぁ……///激しいクマ、夜はあんな感じでヤラれるクマね?興奮してきたクマぁ……///
提督の性交を見て、胸や秘部を弄る手が加速する。あんなふうにされるんだと思うと手が止められないクマ。
提督の下着の匂いを嗅ぎながら、提督と同じサイズの玩具で秘部を掻き回す。 ぐっちゅぐっちゅと淫靡な音がする。
もしかしたら提督達にも聞こえているかもしれない。それがさらに私を興奮させる。絶頂が近づいてきた。
んぁッ……///イッちゃったクマぁ……
ふふっ///……あと何回……できるくまぁ?///
ふむん。瑞鶴と球磨が私たちをオカズにしているようだが、まあ気にするまい。おっと、そろそろ時間になるか、ではスパートを掛けて終わらせるとしようか!
ぱちゅんぱちゅん!と水が打ち付けられる音がする。夕立、半分トんでいるが大丈夫か?おっと、夕立の中が締まってきた。そろそろイキそうだな?
更に腰の振りを加速する。ビクンと夕立の身体が跳ね、中がよりきつく締まる、それにより私も達してしまう。中に液体が飛び出す。何回も出したというのにまだまだ量は多い。
ぬぽんと抜くと、どろりと大量の液体が溢れ出す。彼女の愛液だけでは無いのは明白だ。
疲れて肩で息をしている夕立を優しく撫でる。えへへ、と彼女は嬉しそうにそれを受け入れた。
さて、あの二人は────。どこかに行ったか、恐らくシャワーだと思うが。
それにしても夕立の中良かったな。入口はキツいが中はふわふわだった。語彙力が低下するレベルで良いものだったと思う。
っと、そろそろ昼飯時だ。シャワーを浴びてご飯を食べるとしよう。夕立もつれていかねば……
この時私はまだ知らなかった。共にシャワーを浴びるということがどういうことかを……。
結論から言えばシャワーを浴びながらもう1回やるハメになったのだが、それは割愛するとしよう。
───食事中
ふむん、瑞鶴の料理はやはり美味い。偶に作ってもらっているが、相変わらずの美味さだ。
というか、ちらりと冷蔵庫の中身を見たのだが、何故あんなに食材が豊富なんだ……。いつの間に買ってきたのだ?いや、持ってきた可能性もあるか。
…………まあいい、昼食は食べ終わった。やけに精のつくものが多かった気がするが、きっと気の所為だろう。さてと、次は瑞鶴の時間か。
ん?瑞鶴が手招きしているが……部屋?部屋に来いということか?
瑞鶴について行き部屋に入ると、ドン、と背中を押される。少しよろけて数歩前に出てしまった。
「瑞鶴、何を──」
するんだ、とまでは言えなかった。更にタックルされ、ベッドに押し倒される。あ、危なかった……!もう少し手前なら床に押し倒されるところだった……!
「提督さぁん///」
甘い声で私を呼ぶ。…………ふぅ、まあ、仕方あるまい。期待には応えてやらねばなるまい。
時間は…………5時間くらいか?いや、余裕を持って4時間ぐらいだろうな。
と、考え事をしている間に瑞鶴は服を脱ぎ始めていた。全く……いつからこんな淫乱な子になったんだ。
何か不思議な感情が込み上げて、彼女の頬を撫でる。彼女は嬉しそうにされるがままだ。
おっと、全て脱ぎ終えたようだ。脱ぐのが速いな、おい。
初めて瑞鶴の裸を見たが……。モデルのようにすらっとした手足。余分な肉の付いていないシュッと締まった身体……。
ふむん、エロい。この身体を抱けるのかと思うと私の息子もフルチャージするというものだ。現に先程よりも力を貯めている。
……夕立、なんか済まない。
……………。さて、戻ったら夕立に何かされそうなフラグが立ったが……、まあ、どうにかなるだろう。頑張れ、4時間後の私。
では、しばらく情欲に溺れるとしようか──
…………。球磨、また見てるな……。
──4時間経過
「はぁっ……/// はぁっ……///」
やりすぎたか?瑞鶴の意識がトンでいるのだが。というか、これだけヤっても私の息子が萎える気配がないのだが……。意外と絶倫だったのだな、私は。
まあ、絶倫で良かった。これで球磨の時に勃たないとなると、何をされるか分かったものでは無い。
「すー」
あ、瑞鶴が寝た。全く、せめて布団か何かを被って寝れと言うのに。仕方あるまい。
部屋に置いてあるタンスからタオルを取り出し、身体を拭いてやる。
途中で色っぽい反応をされ、息子が滾ってきそうになったが、この後夕食を作らねばならないので鋼の意思でこれを鎮めていた。
「……さて、何を作ろうか」
身体を拭き終わったあとシャワーを浴びた私は、夕食のメニューに悩んでいた。カレー?シチュー?鍋?…………悩むな。
だんだん考えるのが面倒になってきた。ビーフシチューで良いか……。
ふむん、久しぶりに作ってみるとしようか!
────提督調理中
圧力鍋があったのは幸いだった。お陰でかなりの時短ができた。だが…………。
夕立や瑞鶴と同じくらい美味いか、と言われると否と言うしかない……。くっ、自分の舌には嘘をつけない……!もっと練習をしなければ……!
……まあ、夕食自体は好評だった。嬉しい限りである。ふむん、帰ったら間宮さんに料理を教わるとしよう。
夕食を食べ終え、1人、ゆったりとした時間を過ごす。ちなみに瑞鶴は疲れているらしく、まだベッドで眠っている。
そういえば、最近小説を買っていたな。まだ手をつけていなかったが……、寝るまでまだ3時間もある、この際だ、読んでしまおう。
タイトルは────
『さまよう刃』
…………重っ!凡そ3時間かけて500頁くらいを読み終えたが、内容が重たい。
娘を殺された父親の復讐劇。法とは、正義とは何か、を考えさせられる作品だった。
後、陰鬱になる描写が多かったな。だが、次の頁を捲る手が止まらなかった。
家族……か。私は……どうだろうか?もし私の部下が同じような目にあったら……
…………。嗚呼、まず間違いなく殺しに行くな。復讐なんてすべきで無い?そんな理想論なぞどうでも良い。例え彼女らから殺されかけようとも、彼女らは私の家族だ。
まあ、彼女らがどうにかされるなんて未来は有り得ないだろう。姫すらも余裕で潰してくれる私の自慢の艦娘たちだ。
……さて、時刻は23時を過ぎている。そろそろ球磨が来る頃合か?そう考えているとガチャり、と扉が開けられた。
ああ、来たか──とそちらに目を向けた私は、それを見た瞬間固まってしまう。
球磨が身につけていたのは、とても扇情的な下着だった。…………、ああいうの、本当に売っているのだな……。
……あ、瑞鶴を忘れて──。そう思いベッドの方を見ると、いつの間にやら瑞鶴は居なくなっていた。読書している間に出ていったのだろうか?シーツまで変えられている、流石だな。
「提督、ナニをするクマ?///」
物欲しそうな、期待した目で球磨は私を見る。さて、球磨には何をしてやろうか──。
「球磨、こっちに来い」
「くまぁ///」
─────夜戦中
ジュップジュップと液体を掻き混ぜるような音が、球磨の淫靡な息遣いが、夜の部屋に木霊する。
2人とも汗だくで、下腹部の結合部からは愛液と精液が混じり合い垂れていた。ベッドは既に2人の体液でぐっしょりと濡れている。
もう夜の2時か……、ふと時計を見て私は今日の一日を振り返る。
ご飯を食べ、情欲に溺れた。ただそれだけの1日だった。命の危険も何も感じない、素晴らしい一日だ。
これがあと6日続くかもしれないことを思うと、何故だか分からないが虚しい気持ちになった。
どうやら、私はスリルのある日々を過ごしたいらしい。我ながらアレな奴だな……と自分でも思う。
…………、1週間後が待ち遠しいな、他の者はどうなっているだろう?
そう思った瞬間、ぞわり、と寒気を感じた。何事かと球磨の方を見る。
「てーとく……他の娘のこと……いま、考えてたくまぁ?」
あ、終わった、私の人生はここで終了か。本能でそう思わせるほどのナニカがそこにはあった。
まあ、行為の最中に他の人のことを考える私が最低なだけであるが……。さて、どう切り抜けようか!?
「まあ、1週間後には今日より多くの娘が求めに来るだろうからな。今日だけでかなりの疲労が溜まっている。…………帰ったら、私死ぬのではないか……?そう考えていた」
敢えて嘘は吐かない。というか、この状況で嘘をついたら文字通り死ぬ。だからこそ球磨が何かしてあげれる状況を作って逃げなければ。
「そんなことにはならないクマ、向こうでは大淀が主体となって提督の夜伽の表を作ってるクマ」
理由に納得したのか、目に光が戻った。危ないな、本当に。
だが、嘘だろ大淀。お前はそんなことしないと思っていたのだが……。
「……それ大丈夫か?毎日だと私は本当に腹上死するしか無くなるぞ?」
「そこん所はきちんと考えてるって言ってたクマ、悩み事はもうないクマ?」
「考えてあるなら大丈夫だ。……済まないな球磨」
そう言って頭を撫でる、球磨は嬉しそうにそれを受け入れた。だが……
「大丈夫クマ、ただ……次はないかもしれないクマよ?」
ハイライトさんがまた仕事をサボる。止めてくれ、夜の2時を回っているんだ、怖いだろう。
「球磨、あとどれだけヤリたい」
「ん……、朝までお願いしても良いぐらいくま?///」
まあ、行為の最中に他の子のことを考えたお詫びとして、朝まで貪るとしようか──
────翌朝
珍しく早くに目が覚め起き上がろうとすると、ふにゅん、と何か柔らかいものに当たった。寝ぼけていた為、なんだこれは?とその柔らかいものを揉みしだく。
んっ……///とか、あっ……///とか色っぽい声が聞こえている気がするが、そもそも私の部屋に女の子が居るはずが無いので、気の所為だろう。
柔らかいものの感触が面白くて、つついたり別の角度から触ってみようとすると、何か突起物が手に当たった。
なんだこれは……と、ここでやっと目視をする。…………、布団が不自然に膨らんでいた。まるで誰かが入っているような────。
そしてやっと頭が冴えてきた。そうだ、昨日私は球磨と一緒に寝たのだった。…………今何時だ?
時計を見ると9時を指している。ふむん寝たのが5時くらいだから4時間は寝ていたのか。まあいい、とりあえずシャワーを浴びて遅めの朝食を取るとしよう。
今日は瑞鶴とデートの日だ。
シャワーを浴び終えリビングの方に行くと瑞鶴と夕立がテレビを見ていた。リビングに来たのにいち早く気づいた夕立が私に向かって飛び込んでくる。
「提督さん!おはようっぽい!」
「ああ、夕立、おはよう」
彼女を受け止めつつ挨拶を交わす。相変わらず衝撃は強いが、まあ受け止めきれない訳では無い。…………一瞬だけ呼吸出来なくなるのは内緒だ。
「おはよ、提督さん」
「おはよう、瑞鶴」
テレビを切りこちらに顔を向け、彼女は挨拶をする。そのまま立ち上がりキッチンの方に向かっていった。朝食の準備をしてくれるようだ。
キッチンに残っていた僅かな香りから本日の朝食にはトーストとコンソメ系のスープがあることが分かった。おかずが何か、気になるな。
5分程して出てきたのは2枚のトースト、目玉焼き、野菜スープ、サラダだった。ふむん、朝はあまり食べないからこういうのはありがたい。
まあ昨日の朝食も、私が食べれる位の量に調整されていたから全然良かったのだが。
いただきます、と私は先ず目玉焼きに手を伸ばした。そして黄身を箸でつつく。さて、どうだろうか。
ふむん?目玉焼きが半熟ではない……!実は半熟は苦手だからこういうのはありがたい。食堂の目玉焼きは……半熟なのだ……。
目玉焼きに醤油を掛け、食す。ふむん、美味い。塩胡椒の加減が絶妙だ。次はトースト、焼きたてのそれにバターを塗り砂糖をかける。マーマレードもあったが、私はこれが好きなのだ。……さて、それでは黙々と食べるとしようか。
────提督食事中
サラダやスープも美味かったな。ふむん……時刻は9時15分、10時から行動を開始するとしようか。それまでにどこを回るか決めね……
「あ、提督さん。私、今日回りたいところがあるんだけど」
……決めねば、と思っていたがどうやらその必要は無いようだ。しかしどこに行きたいというのだろう?
「場所はここね」
そう言って瑞鶴はスマホを私の前に突き出す。その画面には『水族館』という文字が映し出されていた。
ふむん、水族館か……。子供の時に行ったきりで久しく行ったことがないな。
ふふふ、年甲斐もなく楽しみになってきた。まだ24歳だがな!……いや、もう24歳と言うべきなのか。
まあ、私の年齢などどうでも良い。そこなら車で1時間とかからない。準備をして行くとしよう。
「さて、何処から回る?」
準備を終え、車で移動すること凡そ1時間。水族館に着いた。正直にいえばもう楽しみで仕方がない。ペンギンやウツボ、ハリセンボンと見たいものがいっぱいだ。
だが、これは瑞鶴とのデート。私ばかりが楽しんでは瑞鶴に申し訳がないというもの。彼女が見たいものを見るとしよう。
「ん?んー、とりあえず全部見たいんだけど良い?」
「構わないぞ」
声がほんの少しうわずってしまったか?だが仕方あるまい、見たいものが全て見れるのだ。嬉しくなってしまうのはどうしようもない。
「そっか、じゃあ提督さん!行こっか!」
そういうと彼女は私の手を取り入口へと向かう。繋いだ手が恋人繋ぎなのは……まあ良いか。というか、周りの視線が気になるのだが……何故だ?
む、そうだ、そんなことよりも……
「待て瑞鶴、提督さんはやめておこうか。それでは海軍の人だと思われてしまう」
「え?実際そうじゃない」
「そうだから困るのだ。外の人達は艦娘や我々に否定的な人もいる。せっかくの休みに変な諍(いさか)いは起こしたくないだろう?」
楽しい時間を台無しにされるのも嫌だが、それよりも瑞鶴が危険な目に会うのが嫌だ。艦娘反対派の奴らに知られれば最悪の場合、暴力沙汰になりかねない。
「……そう、ね。えぇと、じゃあ……夢為……さん……///」
まて、なんでそこで照れる。私まで恥ずかしくなってくるだろう?……ごほん。さて、気を取り直して水族館を回るとしよう!
「では、行くぞ」
恥ずかしさを押し込め、私は瑞鶴の手を握り、水族館の中を進んでいく。きっと、私の顔は赤くなっているだろう。後ろからついて来る彼女の顔は分からないが──きっと、嬉しそうな表情をしているはずだ。
それから、幸せな時間を過ごした。アザラシを見て喜んだり、大きなカニを見て驚いたり、アシカのショーを楽しんだり……子供のように私たちははしゃいだ。
水族館を回っている途中で、子供の頃を思い出し、得も言われぬ寂しさが浮かび上がってきたが……それは心の内に仕舞っておくとしよう。
楽しい時間が過ぎるのは早いもので、気づけば14時を過ぎていた。見たいところももう見終わった、遅めの昼食を食べることにするとしよう。
レストランでご飯を食べたあと、瑞鶴の提案で私たちは舞鶴の街を見て回ることにした。彼女たちは、休みの日いつも行っている場所ではあるが、私はと言うと実はきちんと街を見たことがない。
休みの日は大体鎮守府の私室に居て外に出ることなどほとんどしない。鎮守府の外に出る時は出張の時ぐらい……か?あとは昨日のように逃走する時ぐらいだろう。
川内や大和辺りに何度か買い物に付き合って欲しいと誘われたことがあるが、鎮守府内に居る方が心地よいので断った。
おいそこ、そこのお前だ。今、NEETみたいな生活をしてると思ったな?悪かったな、休みの日はベッドからあまり出たくないのだ。食事と手洗い、あとは風呂か?それぐらいしかベッドから出たくない。
ん?じゃあなんで今は外に出てデートしているのか……だと?
……………………ふむん?なんでだろうな?
私にも分からん。多分、今週はそんな気分なのだろう。
……もしくは、昨日の1件で彼女たちの願いを聞いてみようと心境が変わったのかもしれないな。自分のことではあるが、てんでわからん。
ふむん、まあ、こんな自分語りなぞどうでもいいだろう。私と瑞鶴の午後のデートの話をするとしよう。
舞鶴の街に着いた。ふむん、観光地なだけあって人がまあ居るな。博物館や塔、自然文化園もある。……街自体も活気づいていた。
ここには鎮守府がある。故に深海棲艦が襲ってくる頻度も多い。街に被害が出たことなど数多くある。それでも、この街は活気に溢れていた。
あぁ、そうか、これが────
私たちが必死になって護っていたものなのだ。
命を賭してまで、護っているものなのだ。
チラリ、と瑞鶴を見る。彼女はこちらに微笑みを向けていた。そうか、彼女は私にこの光景を見せようと──。
「──ははっ」
私は笑みを浮かべ、彼女の頭を撫でる。急に撫でられた彼女は、驚き、顔を恥ずかしそうに紅く染めながらもそれを受け入れる。しばらく続けていると、私たちの傍に小さな子供が寄ってきて。
「おにいさんたち、こいびとなの?」
と、急に聞いてきた。ぶふっ、と吹き出す私とぼふんと顔を真っ赤にする瑞鶴。即座に冷静さを取り戻し、私は『違うよ』と言おうとしたが──
「違うよー、てーとくは私の恋人。この人はいもーとさんだぞ、ガキンチョ」
ぎゅっと、反対側の腕を組まれる。oh......この聞き覚えのある軽薄そうな声は──。
「まあ、何故ここに居るかは問うまい。だが、仕事はどうした?北上」
「んー?今日わたし休みだよー?」
「そんなはずは無い、今週分の書類をお前には渡していた筈だ。それはどうした?」
「あー、あの海域データのまとめとか敵の戦力のまとめとかでしょ?昨日終わらせたよー。何なら大淀に確認してもらっても構わんよ?」
…………ふむん、嘘をついているようには見えない。まあ、嘘をついたならそれ相応のお仕置きが待っているが……北上はそんなことはしないだろう。
「まあ、お前ならそんなことはせんだろう」
「ひゅー、さっすが提督わかってるー。んで、それはそうとさ……なんで他の女の香りがするわけ?それもあっちの方の」
おい待て、今ここで病むんじゃない。殺気を出すんじゃない!子供が!いたいけな子供が見ているだろう!というか、お前もどっか行けよ!答えは(間違ってはいるが)教えてもらっただろう!?死にたいのか!?
ほ、ほら!見ろ!瑞鶴もデート邪魔されて怒ってんだよ!この子、なんでこの空気を感じ取れんのだ!?普通ビビって逃げるだろ!?
「なになに!?しゅらば!?」
どこでそんな言葉覚えてくるのだ!おい!この子の親は一体どこに……。…………あ、あんなところでビビってやがる……。
…………それは、そうだろうな……。こんな修羅場の中に突入しようなんて言う阿呆は居るまい。どんな飛び火が来るか、分からんからな……。
じゃない!このままでは何の発言が起爆剤になるか分からない!下手な発言は控えつつ子供をどうにかせねば!
「そこの子、今すぐここから離れてお母さんの元に戻れ」
「やだ」
なんで即答なんだよ!戻れよ!目をキラキラさせてんじゃねぇよ!ここは本当に危険なのだ!
ふむん……どうする……!どうすれば……この修羅場を乗り越えれる……!というか、なんだか人集りができ始めたのだが……。くそ!これは見世物では無いのだぞ!?
よし、先ずは北上から宥めるとしよう。瑞鶴なら何故北上から宥めるか分かってくれるはずだ……。
「あー、北上?」
「ねぇ、なんで他の雌の匂いがするの?」
やばい、目が……目に光が……無い。これは不味い、選択を間違えれば殺されかねんぞ……私が……。
「夢の話はしたよな?」
「したよ、でもそれとこれとはカンケーないよね」
ぎゅうっと、組まれた腕が締められる。骨が悲鳴を上げ始めていた。もう少し力を込められれば、私の腕は折れてしまうだろう。
「関係ある。皆、私の夢を叶えてくれようとしているのだから」
「その夢を叶えるの、私だけでもいいよね?他の娘は必要ないよね?」
おおっと、正論が来たぞ。これ、どう対処すれば良いのだ……
……待て、これはまずい。思いつきはしたがこの案では鎮守府で争い事が発生しかねない。どうにか、どうにかして争いを起こさないように言いくるめねば……
「北上、確かに私の夢を叶えてくれるのは1人だけでも良いかもしれん」
「なら、いますぐ──」
「だが、その1人を決めるのは今ではない。私の夢を叶えるための理想の人を、私は探しているのだ。その人は1人かもしれないしもしかすれば複数人かもしれん」
「つまり?」
「うむ、先ずは全員と試してみて、私の理想に近ければアレを送ろうと思う」
アレ、とはケッコンカッコカリの指輪のことだ。よしよし、これで全員とヤッても文句は言われまい。………多分。
「アレって……、ふーん、そっか」
oh......、駄目だ、目が純粋に黒い。ハイライトさんが仕事をしてくれない。そして瑞鶴、さりげなく私と腕を組むのは良い、が、痛い!ミシミシ……と腕が悲鳴を上げているのだが!?
さて……どうしようか、このままでは両腕がお亡くなりになる。そんなことになった暁には明石とキャッキャウフフ生活が始まるぞ……。
羨ましいと思ったやつ、ハイライトさんが常に仕事をしておらず、不用意な発言をすれば殺気を叩きつけられ、やることを断れば襲われるような人と一緒にいたいか?
救いなのは明石は照れるとハイライトさんが戻る。嬉しい時だと……偶にか。
だからどうにかして照れさせ安全を確保してきた。だが、必要でもない限り私はあいつの元に行きたくない……。
「ねぇ、てーとく」
「なんだ?」
ん?いつの間にかハイライトさんが戻ってきている。ついでに腕の力も弛めて欲しいが……。
「期間とか、決めてるのー?」
「1年だな、青葉に伝えておいてくれ」
「りょーかい、このまま一緒にいてもいい?」
「残念ながら今は瑞鶴を試している、北上は……そうだな、来週以降、試されたい時に来てくれ」
ちぇー、と残念そうにしながら北上は腕を離してくれた。そしてばいばーい、とその場をあとにする。いつの間にやら観衆は居なくなっていた。子供は居たが。
…………え!?な……ん、だと……!?自分を優先されなかったのに腕を離し、その場を去った……だと……!?
今までならありえない事だ、なにが……あぁ、理想の人に近づく為か。ここで不況を買えば貰えないと思ったか?
ま、まあ良い。小さな変化だが、私にとっては天地がひっくり返るような出来事だ。それほどまでに喜ばしい。
……ふむん?そういえば、私はなにか忘れているような気がするのだが……なんだ?
「瑞鶴、明日、もしかしなくとも何かあるよな?」
「ふんっ、教えてあげない!」
ご機嫌ななめだ。当たり前か、デートの邪魔をされたのだから。さて、どう宥めよう。取り敢えず頭は撫でておくか。
「済まない、こういう時謝ることしかできないが……許してはくれないか?」
「あ、あたまをな、なでられたって許してあげないんだから!」
声が上擦ってるぞ、瑞鶴。顔が蕩けてるぞ、瑞鶴。ふむん、これなら……
「ぅえっ!?///」
抱き寄せてみた、面白いように顔が紅くなっていく。さらに耳元で囁いてみた。
「頼む、瑞鶴。教えてはくれないか……?」
ぷしゅー、と顔が耳まで真っ赤になった。子供が目をキラキラさせてみている。おい、見世物では無いのだぞ。
おかしいな、ヒソヒソと話し声が聞こえた。どうやら再び観衆が集まってきたようだ。写真やら動画やらを撮るものもいる。
……苛々してきた。人を見世物のように扱いおって……!
私が何かを言おうとした時、ビクリ、と観衆が何かに怯えるような反応をした。そうして蜘蛛の子を散らすようにその場を去っていく。
何事かと私も周りを見る……が、蕩けた顔をしている瑞鶴が居るだけで他には誰もいない。
まさか瑞鶴が……?
…………いや、違うな。瑞鶴はこんな器用なことは出来ない、ならば誰だ……?
ふと、何かの視線を感じる。そちらに目をやるとその子はササッと物陰に隠れた。
ふむん、不知火か。確かに彼女なら私達に何かを感じさせないように調整ができる。彼女は器用な子だ。
………難点を挙げるならば、叱られる為にわざと失敗をするところだな。わざと叱られる為に作戦自体は成功させるが、自身の評価を貶める行為をする。
更に叱ってもあまり効果がない。罵倒すれば何故か(隠しているつもりではあるのだろうが)喜ぶし、この前は体罰で臀部を引っぱたいたのだが………彼女は恍惚の表情を浮かべていた。
どうすれば……良いのだろうな……。
おっと、そういえば瑞鶴はどうなっている?抱きしめて撫で回したまんまなのだが。
…………あぁ、駄目だ。蕩けきった顔をしている。これでは聞き出せないではないか。何処か座れるところは……っと、あそこに公園があるな?あそこまで瑞鶴を連れていくとしようか。
公園まで瑞鶴を連れていき、そこで2人並んで座る。ピッタリと寄り添い手は恋人繋ぎで、だ。
昔はリア充爆発しろとか言っていたが、今は言われる側になるとはついぞ思わなかった。だから敢えて言わせてもらおう。どうだ、羨ましいか!とな。
…………ふむん、誰に向かって言ってるのだろうな、私は。まあ良いか、幸せなのは変わりない。背後から視線を送られ続けてはいるが先程のこともある、いてくれた方が有難い。
しかし、どうしたものか……。瑞鶴が起きねば明日、何があるのか分から……ん?いや、別に瑞鶴出なくとも良いのか、不知火が居るではないか!
ならば話は早い、早速不知火に聞くとしよう。
「不知火、お前は明日何があるか知っているか?」
「明日は佐世保鎮守府の方たちの歓迎会があります」
ん゛っ!?そういえばそんなのもあったな!完全に忘れていた!不味い!不味いぞ!ただでさえ明日は危険な奴と一緒にいると言うのに!
反故にすればまず間違いなく死ぬ!俺もだが佐世保から来たあの子たちが!
どうする……!どうすればこの危機を脱することができる……!?
ふむん……?待てよ……、私は瑞鶴から順にとしか私は言ってない。であれば夕立からでなく球磨からにすれば……?
ふむん、それならば行けそうな気がするな。頑張ってくれ明日の私。
ふと後ろが気になってチラリと後方を見る、不知火がなにかして欲しそうにこちらを見ていた。
ふむん……何か礼をしたいが……、今までやってきたことは外ではやり辛い。どうするべきか……
それにしても、不知火のような子を一体何と呼ぶのだろうか……。帰ってから調べてみるとしようか。何か分かれば彼女に対する接し方も分かるやもしれん。
「不知火」
「なんですか司令」
だからそんな物欲しそうな目で私を見るな、何かしたくなってしまうだろう……!
周りに人は……居ないな?ならば……
「不知火、いつもの奴をつけて座ってなさい」
「っ!はいっ!司令!」
私が言うと直ぐに首輪と犬耳のカチューシャと……尻尾をつけて私の近くに犬のように座る。
何で普段から持っているんだ、と突っ込みたくはなるが……、まあ良い。さて、リミットは瑞鶴が起きるま…………起きてる、起きてるぞ!この娘!
いま、私は見た!薄らと目を開け、不知火を見た瞬間、(私は何も見てないわ)みたいな感じですっと目を閉じたのを見たぞ!
「瑞鶴、眠ったふりは止めないか」
「目の前でSMプレイが始まってたら目も閉じたくなるわよ……」
ん?SMプレイと言ったか。あれだろう、加虐趣味の奴が被虐趣味の奴を苛めるやつのことだろう。……これが?ただ犬のコスプレをしているだけなのでは?
「提督、言っとくけど不知火はドMよ?超が付くほどのマゾヒストよ?」
…………なんということだろう、私の不知火は被虐趣味だったのか……、はぁ……。一応、どうされるのが好きか聞いてみるか……。
「不知火、何処がお前の許容範囲内だ?」
「全てです、司令から頂けるもの全てが私の悦びです」
何で誇らしげなのだ……チラリと瑞鶴を見る。
これはどうしようもないわ、と目線で返してきた。
どうしろと、と目線で送る。苛めなさいよ、それが彼女の望みでしょ、と目線で返ってきた。
……目線ひとつの情報量が多いのだが。
傍から見れば犬の格好をした少女が地べたに座っている中、男女が見つめあっているとか言う中々にカオスな光景だっただろう。
さて、どうするべきか。私的にはここで不知火を引っぱたくのも有りではないのか?と、意味不明な思考をし始めているため、早々に決めてしまわねばなるまい。
「ふぅ……仕方あるまい、戻るか、家に」
「提督がそれで良いなら良いよ」
「司令に従います」
家に戻ると聞いて、若干瑞鶴がムッとしたが直ぐに戻った。恐らく、不知火の状態に気づいたからだろう。
不知火は表情にこそ出てないが、身体は疼きっぱなしのようで……腿から液が僅かに垂れている。犬の格好でも興奮するのか……。
不知火が紐を手渡してきたので、それを貰い引っ張る。……不知火の首輪が引っ張られた。
……この紐、リードか。そこまでして犬のような扱いをされたいのか……。
良かろう、知らん私はもう知らん。駐車場まで不知火を犬のように連れてってやろう。周りの目など知ったことこか。
「不知火、駐車場まで犬のように着いてこい。良いな?私に迷惑をかけることは許さんぞ駄犬が」
「ひゃい!///悦んで!///」
凄く喜んでいる……、こんな扱いの何が良いのか分からんが、彼女に命令するのは嫌いではない。
「犬が人の言葉を喋るな、犬は犬らしくしていろ、駄犬」
「っ!///わんっ!///」
瑞鶴がうわぁ……、と引いた様子ではあるが、仕方あるまい?こういうのが彼女は好きなようなのだから。
「意外と様になっててびっくりしたんだけど」
「似たようなことを普段からやっているからな」
「え、嘘。誰と?」
思い当たる子が居ないのか、意外という顔つきで聞いてきた。
「若葉だ。あいつも相当なものだぞ」
「あー……若葉ちゃんかー」
この反応を見るに心当たりが有るのだろう。が、少し待ってくれ、ボソッと「ジャアアノコモカナ…」と言うのを止めてくれないか?他にもいるのかと思うと怖いのだが?
おっと、駄犬もとい不知火が移動したそうにこちらを見ているな。そろそろ移動するとしようか。
──提督達、駐車場まで移動中
……奇跡的に通行人に見られなかったな。正直良かったと思っている。写真を取られでもしたら目も当てられないからな……、青葉に処理をやって貰わねばならないところだった。
「瑞鶴と駄犬は乗ったか?出発するぞ」
「良いわよ」
「わん!」
おっと、駐車場までだったな……。呼び方を戻さねば。
「不知火、もう犬の飾りは外せ」
「……はい」
……少し残念そうにしながら外すんじゃあない。なんで残念そうなのだ、何でなのだ……。
まあ良い、出発するとしようか。
それから車で移動している間、私は不知火達と楽しく談話した。今、鎮守府はどうなっているか、やこちらの状況などが主要な内容であったが。
こちらの状況を話した時、不知火も参加したいと言ってきたため。許可は出したが……2人にはどう説明したものだろうか……。
というか、北上にバレたら非常に不味い気がするのは私だけなのだろうか……?
よし、気の所為だ、そう思うことにしよう。そうでも思っていないとやってられないのでね。
まあ、そんなことよりも目下明日のことだ。歓迎会を開くと言った本人が休みでいません、とか普通ありえないだろう……。
……大淀にメールを送って時間を確認するとしようか。開始15分前に居れば大丈夫だろう。
ふむん、そうこうしているうちに着いたな。案外早いものだ。ん、そういえば……
「今日の夕飯は誰が作っているのだ?」
「夕立が作るって言ってたわよ」
ふむん、ならば味は心配しなくても大丈夫だろう。夕立の料理は美味しいからな。
「ただいま」
「おかえりなさい!もうすぐ夕飯ができる……っぽ…い?」
おおう、夕立が固まっているな。まあ、予期せぬ来客が来ればそんなものか。連れてきたのは私だが。
「てーとくさん、どうして不知火がいるの?」
既に雰囲気が不穏だな。まあ、これくらいならまだ大丈夫だろうが。
「外出していた時に色々あってな、不知火はそれを助けてくれた。故に褒美としてここに連れてきたのだ」
「色々……?っ!提督さん!腕!どうしたの!?」
「うで……?うおっ!?」
今まで気づいていなかったが、私の腕は両方とも鬱血し色が変わっていた。こんなにまでなるほど私の腕は強く組まれていたのか……。
「……誰?こんなことしたの」
人形のような顔をして、夕立が問うてくる。僅かではあるが、怒りに混じり殺気も漏れ出ていた。かなり怒っているようだ……。
さて、どうするべきか。このまま正直に答えれば瑞鶴と北上は大怪我を負うだろう。死にはせんだろうが……。
嘘を言えば私が夕立に殺されそうだ。『どうして嘘をつくの──』と言われるのが目に見えている。
どうしたものかと悩んでいると、隣から声が上がった。
「私と北上さんがやったわ」
…………………………、っ!?瑞鶴っ!?
馬鹿な!何故、自白した!?そんなことをすれば、夕立が取る行動など決まっているだろう──!
「……そう、じゃあ、同じことを──してあげる」
光の無い目で瑞鶴を睨みながら、ぎゅうっと夕立が瑞鶴の腕を握る。ミシミシミシィッ、という音が聞こえてきた。瑞鶴は顔を少し顰めたものの、抵抗もせずに受け入れている。
…………何故だ?彼女は、まるでその罰が当然の様に受け入れている。提督を傷つけたのだから罰を受けるのは必然だ、と言わんばかりに。
そんな訳が無い、そのようなことがあって良い筈が無い。そのような感情を持っているならば、私は、私はッ!今まで【こんな】思いはしなくてよかったはずだ──!
理由(わけ)が、分からない!何だ、何が原因だ!?今までそんな殊勝な態度を取ってなかっただろう!────何故だ!
私は努めて無表情で夕立たちを見ていた。が、内面は怒りや驚愕などが綯い交ぜになり、自分でも理由が分からなくなっていた。
やがて仕置が終わったのか、夕立が手を離す。瑞鶴の腕は、私のよりもより酷く色が変わっていた。…………折れては、いないようだ。
「それじゃあ、北上のところに行ってくるっぽい」
「行ってらっしゃい」
何事も無かったのように会話をする2人、いつもなら、殺し合いに発展してもおかしくないというのに……。
………………………ふぅ。……ふむん、少し、落ち着いた。瑞鶴が変わった理由、夕立が変わった理由、それは分からない。
けれど、私が見る限りは良い方向に変わっていってるように思う。ならば、私はそれを受け入れよう。仲間同士で殺し合わなくなっただけ、今までより遥かに良い事だ。
「……夕立が戻るまで、私は部屋で休ませてもらおう。少し、頭の中を整理したい」
「了解しました」
「分かったわ、帰ってきたら呼ぶから」
「ああ、助かる」
自室に入り、ベッドに寝転ぶ。思い出すのは昔のこと、私の艦娘たちのハイライトが消えることが多くなってきた頃。と言っても、ここ2、3年のことではあるが──
あの頃は、私が傷つこうものなら殺し合いが起きていた。夕立、瑞鶴を筆頭に、不知火、北上、多摩、若葉……あと3、4人いるな。こいつらは私が傷ついたら傷つけたやつを殺しに行っていた。
最初は驚いたものだ。ちょっとしたイタズラで私が腕を折った時か……。イタズラを仕掛けた子は直ぐに謝ってきた。泣きながら、何度も『ごめんなさい……ごめんなさい……』と。
当然、私はそれを許した。私は落とし穴に嵌って怪我をしてしまったのだが、偶々落とし穴の前で躓いてしまい、落とし穴に予想外の嵌り方をしてしまったのだ。
作った側も、まさか落とし穴の手前で躓くと思っていなかっただろう。こればかりは仕方の無いことだ。
彼女が泣き止むまで私は宥め続け、泣き止んでからも頻りに謝っていたが、私が「ふむん、悲しいことだ。いつから私の言うことを聞いてはくれない悪い子になったのだ?」と言うと、すぐさま「そんなことはないぴょん!」と言うことを聞いてくれたが。
次の日、彼女の姿が見えなかった。
いつもなら朝礼の時、何かイタズラをされるのだが今日はそれがなかった。その時は珍しいこともあるものだと気にしなかったが、その日の昼の演習の時、彼女はいつまで経っても姿を現さなかった。
仕方がないので、空いていた夕立を呼んだのだが……。おかしい、いつもなら彼女は30分も前に来て私と一緒に会話したりするのだ。演習の時は毎回やっていたことだ。今日は彼女から体調不良で休む、という報告も受けていない。
一体何が──。そう考え事をしていると、ドン、と何かと衝突し転倒してしまった。
「ああ済まない!大丈夫か!?」
どうやら長門とぶつかってしまったようだ。息を切らしている、何をそんなに急いでいたというのだろう?
「私は大丈夫だ。しかし長門、一体何をそんなに急いでいるのだ?」
「瑞鶴達と一緒に間宮で食べる約束をしていてな、その時間に遅れそうなんだ!済まない提督!急いでいるからこれで失礼する!」
そう言うが否や長門は走り去って行った。全く……。まあ、艦娘同士の仲が良いのは良い事だ。
……っ痛ぅ。
どうやら先程転倒した時に腰を打ち付けたようだ。流石は戦艦と言ったところか?まあ、業務には支障はない、このまま執務を続けるとしよう。
この時私は気づいていなかった、壁から覗く視線に。それがどういったことを引き起こすのかを。
いつもより遅く執務を終え、眠気もまだ来ていなかったため、私は鎮守府内を散歩することにした。
──あの日は、寒かった。冬の、凍てつく風が私の身体を凍えさせた。雪の降らない、ただただ寒いだけの夜だった。
何分、何十分散歩をしていただろう。ふと、誰かの声が聞こえた気がした。
流石に気のせいか、そう思ったが、また聞こえた。気になって声がする方へと足を向ける。進めば進むほど声の主がはっきりとしてきた。
この声は────長門?
何を言っているのかまでは分からないが、長門が何を言っているのかは──、いや、これは………、さ、叫び声?
私は走った、声のする方へ、1分でも早く、1秒でも早く着くように。そして着いた、今ではほとんど使われていない倉庫に。
長門がこんな所で叫び声をあげているということは、中に長門を害する者がいるということなのに、私はそれを頭から除けたまま、倉庫の中に突入した。
「長門!だいじょ……うぶ……は?」
月明かりに照らされた倉庫の中は、その場にいたものをはっきりと写し出していた。そこには、大怪我をし、縛られ、口には猿轡を噛まされた長門と……不知火、夕立、北上が居た。
不知火たちは手に武器を持っている。それから滴り落ちる血を見れば、彼女達が長門を攻撃したのは明白だろう。
「……お前たち、何を……している?」
頭に血が登りそうになるのを必死に抑えながら、務めて冷静に私は彼女たちに質問した。
「お仕置っぽい」
最初に答えたのは夕立だ。
「お仕置……?この惨状がか、どう見ても拷問だろう」
「この人は司令に怪我をさせました。であれば苦しませて殺すのは道理でしょう?」
……次に答えたのは不知火だ。……しかし、殺す、殺すだと……?こいつらは何を言っているんだ……?
「私のてーとくに怪我をさせたんだよ?殺すのは当たり前だと思うんだ。というか、私がムカつく」
ブチンと、何かが切れる音がした。私はツカツカと彼女たちの元に行く。長門が必死の形相でこちらに来るなと目で訴えるが、知ったことではない。
彼女たちの前にたち、私は、本気で彼女たちの頬を打った。北上はたたらを踏んだだけだが、夕立や不知火は倒れてしまう。
彼女たちが何かを言う前に私は怒鳴った。
「お前ら!一体何をしてんのかわかってんのか!?」
ビクリと、3人は萎縮する。
「私が怪我をした如きで仲間を殺す!?そんな阿呆なことを誰がしろと言った!」
先程の不知火の言葉から、あの子は……。
それが、どうしても許せなかった。あの子は常に周りの事を考えていた、周りのために自分にできることで周りを楽しませようとしていた。
なのに、それを、私欲のために殺すだと──?
「些細な喧嘩なら見過ごしたがこれは見過ごせるか!仲間を殺そうとするお前らなんか……」
解体してやる、と言いかけて彼女たちの方を見た。彼女たちは私の言葉をただ黙って聞いている。それを見て少し冷静になった。
……やってしまったな、怒りに身を任せ手を挙げ、声を荒らげるなど、やってはいけない事だったのに。
すっ、と地べたに座って私の話を聞いていた2人に手を差し伸べる。2人は顔を見合わせておずおずと私の手を取った。2人を立たせる。
「……、貴様ら、しばらく謹慎だ。自分が何をしたか、よぅく考えるが良い。」
その暴力は……敵に向けて欲しかった……。
そう最後に言って、私は長門を解放し、長門をおぶってドックに連れていく。
3人は、ただ、私が去るのをじっと見ていた。
──提督と長門が去った後
「提督さんがあんなに怒ったの初めてっぽい?」
「…………」
キョトンとした顔で夕立が聞く、その質問に対し北上は頷き不知火は俯くのみだ
「不知火?どうしたっぽい?」
夕立に問われ、不知火は顔をあげる。その顔は恍惚の表情に満たされていた。
「はぁ……/// 司令のあの一撃、とても良かったわ……///」
「うわぁ……流石はドMっぽい。ドン引きっぽい」
「司令以外に罵倒をされても気持ちよくないのだけど」
「そんなの知ったことじゃないっぽい」
心外だ、とでも言わんばかりの不知火に対し夕立はどうでもいいとでも言わんばかりだ。実際、どうでもいいのだろう。
「てーとく、最後、何言おうとしてたんだろーね」
「解体してやる、だと思う」
1番に夕立が答える。その答えに北上は不思議そうな顔をした。
「どうして?てーとくが1番嫌いな言葉だよ?」
「それぐらい怒っていたということでは?」
先程怒鳴っていたこともある。考えられるのはそれぐらいだろうと不知火は思った。
「何をそんなに怒ってたんだろってこと」
「恐らくですが……司令は使える駒が減るのが嫌なのでは?」
不知火にも何が理由で怒っていたのかは分からない。そう、分からないのだ。
「代替が効くのに?」
「効くけどまた1から育てるのって結構面倒臭いっぽい。それよりは使える子を残しておきたいんじゃないかなって」
「ふーん、それじゃあ……なんで私たちは解体してやるなんて言われるんだろーね……」
「それが分かれば苦労しないっぽい」
「そうですね、私たちは提督の兵器(もの)なのに何がダメだったのでしょう?」
持ち主を傷つける兵器(もの)は要らない。例え偶然であってもそのようなことはあってはならないこと。そう考える3人には、提督が怒った理由が分からない。
分からないから私たちは考えた。けれどどうしても、分からなかった。そうして夜が更けていく──
── 一方その頃
長門をドッグに運んだ後、私は地下の牢屋に行くことにした。そこは深海棲艦や罪人を閉じ込めていく部屋で、広さ2畳ほどに必要最低限の生活用品が置いてあるだけの部屋だ。
特段理由はない。ただ、昔から何か考え事をする時、不安に駆られた時、狭く薄暗い場所にいると落ち着くからそこに行くだけだ。
タンッ、タンッと階段を降りる音のみが響く地下。私がどの部屋に入ろうかと見ていると、ふと、ひとつの部屋に目が止まった。
何か、その部屋にいる。まさかと思いその部屋に近寄った。
「おい、もしかしてお前は──」
「………?……っ!し、しれぇかん!」
嗚呼……良かった……。生きて……いてくれたか……。どうしようかと思った……。
直ぐに助け出そうとする、が、鍵がかかっていて開かない。彼女も鎖に繋がれていて動けそうにない。……こうなれば。
「青葉」
「はいっ!呼ばれて飛び出てきましたよ!青葉です!」
……ふっ、相変わらず神出鬼没な奴だ。呼べば直ぐに来る。少し怖いがこういう時にはとても便利だ。
「ここの鍵を」
「こちらに」
欲しいものを知っていたかのように即座に差し出された。……こいつのこういう所が怖い。まるで見透かしているかのように、私のして欲しいことを平然とする。……本当は見ていたんじゃないのかと思うぐらいに。
ガチャり、と鍵を開けた。彼女の前まで行き、彼女の拘束を解く。自由になった彼女は私に抱きつき
「うぇええええええええええん!!」
泣き始めた。おいおい、私の服で鼻をかむんじゃない。…………はぁ、まあ良いか。怖かっただろう、辛かっただろう、今は好きなだけ泣かせておこうか──
それは良いんだが、先程から私のものの位置に彼女が臀部を合わせてこようとするのは気のせいか……?いや、気の所為だな……、彼女は幼い。私が穢れているからこのような阿呆な考えに至ってしまうのだろう……。精進せねば……それはそれとして大きくなってしまうのは勘弁して欲しい。
しばらく泣き続けたあと、彼女はガバッと身を起こし俊敏な動作で私の元から離れる。暗くてよく見えないがその仕草から恥ずかしがっているのは分かった。
「し、ししししれいかん!うーちゃんはこれにてしつれいするぴょん!ありがとうっぴょん!」
あとごちそうさまだっぴょん!
そうまくしたてて彼女は走り去って行った。…………、ごちそうさまの意味が分からないのだが私だけだろうか……?
「チッ、あの子上手くやりましたね」(ボソ)
舌打ちが聞こえた気がしたので青葉の方を見る。一瞬、怖い顔ではあったが即座にいつもの青葉に戻った。何か青葉の怒りに触れるようなことがあったのだろうか……?
不思議に思っていると一瞬青葉が消え、次の瞬間にはシャツを持った青葉が現れた。
「いや……、確かにシャツを欲しいとは思ったが……。その技、本当に凄いな」
呆気に取られる私に青葉はにひひっと悪戯が成功した子供のような笑顔を浮かべる。その顔が可愛かったので私は彼女の頭を撫でた。
「……………ふぇっ!?///」
ボンッと昔の漫画の女の子のように顔を紅くする青葉。そういう反応も可愛い。だからこそやるのだが。
暫く撫でられていた青葉だが、やがて満足したのか私の手を取り、その手に私のシャツを渡す。
「名残惜しいですが、このままですと司令官の寝る時間がありませんから」
そう言われて私は腕時計を確認する。時刻は3時を回ろうとしていた。
「気遣い、感謝する。やはり良いやつだな、貴様は」
「そうでしょう?嫁に貰ってくれても良いんですよ?」
むふんと胸を張る青葉。仕草がいちいち可愛いな。なんというか、親のために一生懸命になる子供を見ている気分だ。私に実子がいた事はないがね。……独身故に。
「ふむん、まあ、考えなくもないが……その話題はまた今度だな」
「それは残念。まあ、考えなくもないという評価を頂けただけマシだと思いましょうか」
そう言って青葉はその場から消えた。
……さて、着替えるとしようか。明日は、否、今日は北上と夕立と不知火に謝らなければ……
そうして夜は更けていく──
回想終了
そうか他にもやられた奴は居たが、殺そうとするだけで実際に殺したやつはいないのか……。
痛めつけるだけ痛めつけて、けれど最終的には私に解放されている。……ふむん、どういうことなのだ……?これではまるで──
……まあ良い、いま考えても分かりはしまい。全てを理解する必要も無いしな。私は彼女たちを護り、彼女たちは私の剱となりて敵を撃ち砕く。それで良いじゃないか。
コンコン、とノックされる。恐らく瑞鶴だろう。……ん?いや、この気配は──
「不知火、どうした?」
「そろそろ司令の考えがまとまる頃だと瑞鶴さんに言われまして、夕食の用意も出来ましたのでお呼びに来ました」
ふむん、タイミングが良いな流石は瑞鶴。そう思いつつガチャりとドアを開ける。目の前には……んぅ?何故、何故目の前の不知火は犬の格好をしているのだ……?
……………、まあ、まあ良いか。ふむん、これ以上考えるのをやめよう。これ以上考えてはいけないような気がする。
「そうか、なら行こうか」
犬の格好をした不知火と共にリビングへと向かう。……先程考えないようにしていたが、あの尻尾はどうやって取り付けているのだろうか……?
気になったので不知火がドアを開けた瞬間、私は尻尾を引っ張った。
「っひぃんっ!///」
と嬌声を上げ、不知火は床にへたり込む。割と強い力で引っ張ったからか尻尾は抜けてしまった。……………ってこれはア○ルプラグではないかっ!
「…………てーとくさん、何やってるの……?」
瑞鶴が呆れた顔で聞いてくる。そんなことを言われても尻尾がアレだなんて一体誰が思うだろうか。
「まあ、なんだ、その、……済まん」
やってしまったなあと思い、ポリポリと頭を搔く。苦笑いを浮かべつつ、腰が抜けてしまいへたり込んでしまった不知火を抱き抱えて、椅子の方まで連れていった。
やれやれと肩を竦める瑞鶴。と、球磨が料理を持ってきた。本日のメニューは和風パスタのようだ。出汁の香りで食欲がそそられる。
「ただいま戻ったっぽいー」
配膳が終わったタイミングで夕立が帰ってきた、と
「やっほー、ヤってるー?」
北上も付いてきたようだ、恐らく不知火が居ると知ったからだろう。
「てーとく、私は来週以降って言われたけど、不知火がいるなら別段良いよね?不知火が良くて私がダメな理由なんてないもんね?ね、てーとく、ないよね?ね?」
おかしいな……、表情は笑顔のはずなのに、目が、目が一切笑っていないのだが?ハイライトさんも仕事をしていないのだが?
…………ハイライトさんに給料が発生しているのならば、減給すべきだと思うのは私だけなのだろうか……。
おっとハイライトさんはどうでもいい、今はこの状況をどうにかせねばな。……とは言うものの、許可を出せば良いだけなのだが……、昼間の言をどう撤回するべきだろうか……。
………あ、そういえば来週ならば北上はアレがあったな……、それをダシにして撤回しようか
「ふむん、来週以降ならば確か北上が秘書艦だったはず、故にそこをフルに使ってやれば良いと思ったのだが……今が良いか?」
うちの秘書艦制度は月から水の3日間着くものと木から日の4日間つくものに分かれている。北上は来週の木曜から上番する予定だ。
「今がいい、来週は来週で独占するし」
「ふむん?……………ああそうか、そうだな。そちらの方がお前にとっては得か」
少し考えれば分かることではないか。秘書艦ということはほぼ四六時中一緒にいるということ。ならば今やるほうが圧倒的に得というもの。
「分かった。……ふむん、ならば明日以降どうするべきか……」
2人も入るとなると計画を大幅に変更せねばなるまい。悩むな……、残り5日で4人か……。
「それについては明日、提督さんが歓迎会に行っている間に決めるわ」
ふむん、瑞鶴がそういうならば大丈夫か。
……、しかし今考えると2人増えてくれて助かったと言うべきか。2人増えなかったら球磨か夕立の時間が減っていたからな。
……もしかすればそのせいでハイライトさんが仕事をしなくなるかもしれないし、逆にくっつきすぎているせいで他の娘のハイライトさんが仕事をしなくなるかもしれないところだった。
……危なかったな、流石だ、私。私の無計画性がここで役に立つとは。
……いや、本当ならばダメなのだがな……。上に立つものが無計画に行動することほど業務に支障をきたしたり、部下に迷惑をかけたりするものは無いのだ。
まあ、それはおいおい直していけばいいだろう。今は食事だ、夕立がせっかく作ってくれたのに冷めてしまう。
「ふむん、瑞鶴に任せれば悪いようにはなるまい。では食事をするとしようか」
そういえば2人分増えてはいるが大丈夫なのだろうか?量が足りなければ何か作らなければなるまい。
「2人分増えているが大丈夫か?」
「多めに作ったから問題ないっぽい!」
ならば問題ないか、食事を楽しむとしよう。
……不知火と瑞鶴には申し訳ないがリビングの方で食べてもらわなければならないのは申し訳ないな……。
──提督たち食事中──
……………ふぅ、美味しかったな。
夕立が秘書艦の時はご飯を作ってもらうとしよう。間宮さんはハイライトさんがすぐに消えるような人ではないし大丈夫だろう(フラグ)
さて、お風呂に入ってくるとするか。ここの風呂は鎮守府と違って狭いが、まあ仕方あるまい。今はその狭さを楽しむとしようか。
「1時間ほど席を外す、皆で歓談でもしておいてくれ」
「タオルと下着、後で持っていくからそのままお風呂に入ってきていいよ」
さも当然のように瑞鶴が言う。それはありがたい、だから私はお礼を言おうとし──気づいた。私は席を外すとしか言っていない、なぜ風呂に入るとわかった?
「おぉ、ありが……、まてなんで分かった?」
「んー、勘?」
「勘で次の行動がわかるというのは最早凄いと言うより恐怖の域だぞ……」
呆れたように私は言う。すごいという言葉に反応してか瑞鶴はドヤ顔だ。見ていてイラッとした。どうせ風呂に入っている時に乱入してくるだろうからその時に仕返しをするとしよう。
「まあ良い、では風呂に──いや待てよ、ここは鎮守府の中では無かったな」
鎮守府であればお風呂はもう沸いているのだが、そういえば今仮住まいに居るのだった。
そうか、昨日はシャワーしか浴びていなかったから風呂を沸かす必要性がなかったな。故に自分たちで沸かさなければならないことを忘れてきた。……面倒だな。
「そう言うと思って既に沸かしておいたクマ」
「なに?天才か貴様」
沸かしておいたという言葉に反応して反射的に言ってしまった。阿呆か、貴様とか普通使わんだろう……
まあ、褒めたので気を悪くすることは無いだろうが一応フォローを……
「ふっふーん♪もっと褒めるクマほら褒めろクマ!」
いや、必要ないな。むしろ態度にイラついた。夕立と北上に目線で合図する。こくりと2人は頷いたので、球磨は軽いイタズラをされることだろう。ざまあみろ。
「ふむん、沸いているのならばさっさと入るとするか」
クイクイと裾を引かれた。何事かと振り向くと不知火がお座りの姿勢で上目遣いで何かをしてほしそうにこちらを見ている。
じっと不知火を見つめる。それだけで興奮するのかだんだん息遣いも荒くなり始めた。ニコリと笑う。彼女は嬉しそうな顔をした。それを見た私は────
もちろん放置して1人で風呂場に向かった。今日は本来瑞鶴の時間だ。彼女にうつつを抜かしている場合ではない。というか、最悪瑞鶴に殺されかねない。今日はもう、そういうのはお腹いっぱいだ、平穏に過ごしたい。
風呂場に着いた私は脱衣場で服を脱ぎ風呂場の扉を開けようとした……したのだが何か嫌な予感がしてその手を止めた。
おかしい、何かがいる気配がする。リビングから風呂場まで一直線で、回り込めるような道はないはずなのだが?
しかし考えていても埒が明かない。覚悟を決めた私は勢いよく扉を開けた。そこには──
何もいなかった。
気のせいか……と、ふと足元を見るとそこには
テラテラと光る黒いやつが2、3匹、カサカサと動いていた。それを視認した私は
「ヾ(叫゚Д゚)ノキャァァァァァァァァァ!!!!!!」
乙女の悲鳴のような甲高い声で叫んだ。
「提督さんどうしたの!?」
私の叫び声を聞いていの一番に夕立が飛び込んできた。……脱衣場に。
「ウオオオオオオアアアアアアアアアアーーーーーッッッッ!!??」
「ぽぉぉおおおおおっっいいいいいいぃぃぃぃ!?!?」
急に夕立が来たことによる驚きと生まれたままの姿を見られたことによる羞恥で私は更に絶叫をあげる。それに吃驚した夕立もまた叫んだ。
それにびびったのかGが1匹、飛翔した。ブーンと辺りを飛んで……………こちらに向かってくる。
「に゛ゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あああぁぁぁ!!!???」
パニックになった私は持っていたタオルで黒い彗星を叩き落とす、が何か硬いものが落ちたような音はしなかった。
恐る恐るタオルを見る。
そこには、黒い悪魔が…………くっ付いていた。
「ヒィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!(゚Д゚ノ)ノ」
持っていたタオルをぶん投げる、壁に当たって落ちたそれからカサカサと黒走蟲が這い出てきた。
パニックになってどうしようと悩んでいるとサワッと足になにかが触れた。最悪の想像をしながら足元を見る………2匹の迫り来る黒い恐怖がそこにいた。
「‼?;'="””;]$$¥@]¥&¥♪'({☆;_](-'$!!??」
声にならない叫び声を上げ、その場から飛び退き夕立の背後に隠れ、ぎゅっと背中に抱きつく。素っ裸だとか、息子が当たってるとか、いい匂いがするとか、そんなことはどうでも良い。
この世でいちばん嫌いなもの、数多の異名を持つあの黒い虫。
『ゴキブリ』、それさえ駆除されるならばそれ以外のことはどうでも良いのだ─────!!!
「瑞鶴!不知火!北上!球磨!頼む!頼むからあの黒い奴らを何とかしてくれぇぇぇええ!」
言うが早いか全員が脱衣所に入ってくる。
「全く……ゴキブリぐらい1人で何とかしなさいよ……」
スパン、スパンと瑞鶴がGを2匹とも仕留め
「仕方ありません、人には誰しも苦手なものがありますから」
即座に不知火が始末した物を回収し廃棄
「けど、Gが苦手ってのは可愛いよね〜」
「それには同意するクマ」
北上と球磨が手分けして風呂場、脱衣所にもう奴が居ないかを確認する
1分にも満たない時間でそれをしてくれた彼女たちには感謝しかない。夕立も盾になってくれて本当にありがたい。
その頃夕立はと言うと
(……せ、背中に提督さんのあれが……♡♡け、けどここで襲ったら他の人に邪魔されるのは明白っぽい、今は我慢するしかないっぽい)
と、葛藤していたらしい。夕立らしいというかなんというか……
というか皆、Gは平気なのだな。こういうのは女の子の方が苦手なイメージがあるが……。まあ苦手でなければ良いのだ、これでまた出ても処理を頼める……。
「てーとくさん、あいつ、もう居ないわよ。そろそろ夕立から離れたら?」
やれやれと嘆息しながら瑞鶴が言う。
確かにそうだ、と夕立から離れふと、踵の方を見た。
カサカサ……と彼奴がいた。
「なっ!?私達の哨戒を潜り抜けた!?」
「ありえないクマ!見落としはどこにもなかったずだクマ!」
そんな声が聞こえた気がするが、パニックになった私には聞こえていない。自分が出せる最速の速度でそこから飛び退き、不知火を盾にする。
瑞鶴がすぐさまスパンッ!と音速の一撃を繰り出すが──
カサカサ──!
奴は神速を用てその音速を躱した──!!
「んなっ!?私の最速を避けたって言うの!?ただの虫が!?」
唖然とする瑞鶴を他所に、夕立も黒い閃光を潰そうと瑞鶴から貰った新聞を丸めて目にも止まらぬ早さでGを殴る。
だが、やつには当たらない──
2人が攻めあぐねていると、Gは飛翔を始めた。
ブーンと、空中を飛ぶ奴。
「ちっ、あんなに動き回られたら当てにくいじゃない」
「提督さんに当てる訳にも行かないっぽい」
そして奴は狙いを定め、そこに向かって翔る!
やつの狙いは──
「って私か!?」
何と、私に向かって飛んできていた。だ、だが大丈夫だ!私には盾(不知火)がある!
「司令には足1本すら触れさせません!」
「不知火、これ使うっぽい!」
私に触れさせまいと息巻く不知火に、夕立は聖剣(新聞紙を丸めたもの)を投げ渡す。
華麗にそれをキャッチした彼女はそのままGに向かって振り下ろす。その瞬間、瑞鶴は何故か横に躱した。
ヒュンッ、と空気を裂く音がした。と共にその直線上にいた瑞鶴の髪が少し斬れ、後ろの壁に綺麗な縦線が刻まれた。あのまま躱さなければ瑞鶴も斬れていたかもしれない。
「ちょっと!殺す気!?」
「………嘘」
危うく斬られそうになり、怒る瑞鶴を後目に不知火は驚愕の表情をしていた。
……そう、斬れていなかったのだ。
やつは既のところでその剣閃を避け飛び続けていた。
おかしい!と皆が思った。たかが虫の1匹、殺せないのはおかしいと。だが現にこのGは殺せていない。
一体なぜ────
そう思っていた時、音楽が鳴った。
全員が自分の携帯を確認する。
その間もGは飛翔し続けていた。
どうやら音の主は北上らしい、彼女は電話に出た。
「もしもーし、どしたのー?」
『ねぇ!そっちに変なゴキブリ行ってない!?』
「……来てるけど」
変なゴキブリと言った時点で電話の主がゴキブリになにかやったことは明白だ。問題は何をしたか、というところだがそれは問いただせば良いだろう。
『ああああああああぁぁぁ!どうしよう!』
「今度は何やったのさ……、夕張メロン」
焦り具合から危険なことをやったか処理がとてつもなく面倒臭いかのどちらかだと分かった。勘弁して欲しい。
『誰がメロンか!じゃなくて、その虫、私の開発中だった身体能力とか脳の処理能力とかその他諸々を劇的に向上する薬を飲んだみたいなの!』
「つまり?」
『処理がすごく面倒臭い』
「よし、帰ったら○す」
こいつは帰ったら殺す、てーとくに迷惑をかけたし(それはそれとして怯える提督は可愛かった)私達のプライドを傷つけたし。
『ひいいいい!ごめんなさい!ごめんなさい!』
「許すわけないじゃん、現在進行形で提督にめーわくかかってんだよ?なんでよりによっててーとくの嫌いなGに飲ませたの?」
『……えぇっと』
「何さ?」
『ゴキブリに怯える提督を助けたら好感度上がらないかなーって、だから提督を追跡するように薬も混ぜました……』
「みんな、聞いた〜?」
えぇっと、と言った時点でスピーカーにしみんなに聞こえるようにした。
恐らくみんなの思っていることは一致しているはずだ。【あいつ、許さない】
「……不知火、夕立、瑞鶴、北上、球磨。こいつの処理が終わったら明日締めに行くぞ」
「「「「「了解!」」」」」
『イヤアアァァァァアアアァァァァアアア!!!!ゴメンナサイ!!ゴメンナサイ!!ゴメンナサイ!!』
プツンと電話を切った。今頃、慌てて逃げる準備をしているに違いない。まあ、恐らく明石がそれを許さないだろうけれど。
それよりも先ずこいつの処理だ。私達の中で3番目に速い不知火の一閃を躱したこの虫は並大抵の速さでは狩るは愚か触れることすら出来ないだろう。
というか、なんか飛びながら分身し始めてる。もう虫のスペックを完全に超えてる。
え、なんなの?なんでここまで強化しちゃったの?バカなの?アホなの?
あの夕張メロンにこいつが狩れるとは到底思えないんだけど……、でも飲ませたということはこいつを狩る算段があいつにはあったってこと。
……しまった、電話を切る前に聞いておくべきだった。そしたらこんな面倒なことを考えなくて済んだのに。
……もしも、を考えてもしょうがない、今はこいつをどうやって処分するかを考えないと。
と、不意に空中で分身していたGが提督に狙いを定める。マズいと思ったその瞬間、提督目掛けてやつは突っ込んで行った!
不知火が提督に触れさせまいとするが、それは総て避けられ、やつは──
───ペトリ、と提督の頭に乗っかった。
一瞬、何が起こったか私には理解できなかった。やつが私に向かって飛んできていたのも、不知火がそれを阻止しようとしたのも覚えている。
カサリ、と頭の上を何かが這っている感触がした。嫌な予感がして鏡の方を向く。そこには──
──私と、私の頭に乗っているGの姿が映し出されていた
「───────っ」
鏡に映し出された私の姿を理解するのに凡そ10秒。すべてを理解してしまった私は抵抗することなく自らの意識を投げ出した。
パタリ、と司令が倒れた。
それを見た私はえも言われぬ怒りに襲われる。コイツは殺す、絶対に。他の人たちも同じ気持ちでしょう。
ヒュンッ!と何かが私の頬を掠めた。
そして司令の頭にいるゴキブリにささ……っていない。寸前で飛んで逃げたらしい。因みに掠めたものはフォークだった。
「チッ」
投げた本人である球磨は当たらなかったことに苛ついてか舌打ちをした。やつは飛んだまま分身をし始める。
「まーまー、ムカつくのはわかるけど落ち着きなよ」
「なんで?夕立、早く殺したいっぽい」
「私も」
「クマ」
「私も早く殺したいのですが」
はやる4人に北上さんは手で制す、そして
「ゲームをしよう」
「この虫を殺した人が夜の提督を独占できるって言うゲーム。もちろん、乗るよね?」
そんな提案を、してきた。私たちから見ればそれはとても魅力的な提案。
「我が妹ながら魅力的な提案をするクマね、けどその提案は意味をなさないクマよ?」
今日は瑞鶴の日と提督が決めてるからクマ、と球磨は付け足す。そう、瑞鶴さんにとってはそれは魅力的でもなんでもない、提督と一緒にいれる時間を奪われるだけの意味の無いゲーム。
「チッ、イケルオモッタノニ。……まあ取り敢えず提案してみただけだから、ちゃっちゃと殺そう」
そう言って彼女は分身しているゴキブリに相対する。
(改めて考えると、ゴキブリが飛びながら分身するって中々の悪夢ね……、一体どれ程強化されているのかしら……)
それから、数時間に渡る激闘があった。
奴のスペックが彼女らの予想よりも高かったためだ。元々、ゴキブリの知能は高い。高い知能に高い身体能力が合わさり、文字通り最強となっていた。
薬の効力が時間が経つ事に弱まっていったことが不幸中の幸いと言えるだろう。そうでもなければ黒い稲妻を殺すことなど不可能に近かった。……………残念ながら。
因みにその激闘の中、提督はひたすら放置されていた。…………そう、裸のままで。
つまり────
次の日、提督は風邪を引いた。
「ゴホッゴホッ………これは、今日の歓迎会は行けそうにないな……」
「申し訳ありません……やつを退治しようと躍起になる余り司令のことを蔑ろにしてしまいました……」
しょぼん、と落ち込んだ様子で不知火は言う。
そんなに落ち込むことはないだろうに……、彼女らは私が死ぬほど嫌いなあいつを頑張って退治してくれていたのだ。少し放置していたからと言って……
いや待て、裸で放置は流石にどうなのだろうか?せめて服を着せてくれても良いのではないか?5人も居たのだ、1人くらいそうしてくれても良かったのでは?
…………これ以上考えるのはよそう、どんどん悪い方向に考えていってしまう。
さて、さしあたり今夜の歓迎会をどうするか……だ。今の状態ではとてもでは無いが行けそうにない。身体がだるおも……と言うやつだ。
ふむん……然しながら彼女らの紹介に私が同席しないのもどうなのだろうか?というか、彼女らだけでやると何か嫌な予感がするのだが?
……ふむん、こういう時の予感は当たる。明石に電話をして何か薬でも作ってもらおうか。……この際、媚薬関係を混ぜたものを飲まされるのは諦めよう。
「不知火、明石に電話をする。携帯を──」
「こちらに」
「ん、ありがとう」
電話をかけようとすると、着信音が鳴り響いた。驚いてしまって思わず携帯をぶん投げる。
ぶん投げられた携帯はあさっての方向に飛んでいき、あわや部屋の窓に当たろうとした
が、次の瞬間には不知火の手の中にあった。
「済まない、不知火。ありがとう助かった。危うく窓ガラスを割ってしまうところだった」
「いえ、この程度造作もありません」
ふぅ、と息を落ち着かせ電話に出る。
電話をしてきたのは明石だった。
『もしもし?提督?』
「明石か、どうした?」
『風邪をひいてるみたいだから今薬を持って行って───あ、着いたよー』
ピンポーンと、呼び鈴が鳴る。え、まさか本当にこっちに来て──
『んー、窓から入った方が早いか』
言うやいなや窓に影が差し込んだ。バッとそちらを向くと明石がそこに居た。彼女は窓を開け(硝子を音を立てないように割って侵入)満面の笑顔で私の横に座る。
「提督、貴方の明石が来ましたよ!」
「ふむん、タイミングが良すぎて怖いが……まあ、どうせ何処かに何かを仕掛けてるのだろうから置いておこう。明石、薬は?」
そういうと明石は舌を出す。見たところ何も無いが……。…………、まさか……。
「まさかとは思うが、今度は唾液が薬とは言うまいな?」
「まったまたー、分かってるでしょう?」
明石のことだ、薬か何かを使って唾液に薬効成分が含まれるようにしたのだろう。私とキスをしたいがために。……いつもの事だ。そういうことをしたいがために、彼女は自身に改造を施す。
「あ、不知火ちゃんは6時間ぐらい外にいてくれるー?」
「何故あなたに──」
「行ってくれる?」
互いの殺気がぶつかる。2人の圧で家具が、壁が、ミシミシと悲鳴を上げる。何分、何時間、そうしていただろう。実際には1分も満たない時間、だが私にはそれほどまでに長く感じた。
そして2人の圧に耐えられなかった家具が幾らか壊れた。少し、落ち込んだ。
「はぁ、仕方ありません。これ以上やれば司令の物を傷つけてしまいます。ここは退散しましょう」
「もう幾らか壊れてるけどね?私は頑張って壊さないようにしてたのに貴女は考え無しにやるから」
煽るな煽るな、また家具が壊れてしまうだろう。既にお気に入りのマグカップは割れたのだ。これ以上お気に入りの家具を壊されては堪らない。
私は目で不知火に合図をする。それを察した彼女は明石を睨みつけた後、退出した。
にっしし、と明石は勝ち誇った笑みを浮かべ私の方に向く。と同時に唇を奪われた。
フレンチな方ではなくディープな方を1分、2分と続けられる。舌を絡め、吸い、互いの唾液を交換する。
するとどうだろう、あれ程だるかった身体が嘘だったかのように快調になっていると同時に、明石に対して異常なまでの劣情を催した。
「あ、明石……!今度は何を……混ぜた……!」
「むふふ、媚薬に決まってるじゃないですか」
効果としては男性ならば艦娘に対して、艦娘なら提督に対して強制的に発情させます。と、してやったりと彼女は嗤う。見たところ彼女に効いている様子は無い。が、一応聞いた方が良いだろう。
「お前以外に効く──のか?」
「いいえ?私にも効きますよ」
明石にも効く。……おかしい、ならば何故彼女には効いていない?媚薬に耐性があるとは言い難いが、それでもこれはかなり強力なものだ。
…………もしかして、常にこの媚薬と同等の、もしくはそれ以上の状態なのか……?
少し、薄ら寒い気持ちになったが、それも、媚薬の効果で掻き消された。
「────そうか。……明石、もう、良いな?」
「ええ、提督のお好きなように。私は提督のものですから」
聖女のような微笑みを浮かべ、彼女は私を抱きしめる。
───つかまえた
そう、聞こえたのは、幻聴だったのだろうか
媚薬に溺れ、思考もままならなくなった私は。これ以上考えるのを辞め、目の前の快楽に身を委ねた──
提督が獣のように明石を求めている最中、リビングに居る5人の艦娘は誰が明日からデートをするか揉めていた。
「1番は私が貰うよ!」
「いいえ、私です」
「私に決まってるじゃない!」
「私に決まってるクマ!」
「ぽい?夕立は別にどこでも良いっぽい」
皆が意外そうな顔で夕立を見る。北上が他3名の意見を代表して問うた。
「ありゃ?夕立こそ1番を取りたいって言いそうなのにどうしたの?」
「最終的に提督さんに良い思い出を残せれば良いっぽい。なら別に最初でなくても、ううん、むしろ他の人と比べられた方が提督さんの性格上、絶対に何らかの思い出は残せるっぽい」
さも当然のように言う夕立に一同はその考えもあるのか……と、納得した。
そうして一同は言い争うのではなく熟考を始める。最初にデートをして相手に印象づけるのか、何番目かにデートをして相手と比べさせるのか……
相手の性格とデートプランを考慮し、さらに自分のデートプランをよりよくするため、彼女たちは考える。
そうして考えて、瑞鶴以外の4人は疑問に思った。
"あれ?なんで最初にデートをした瑞鶴が参加してるの?"
と。4人が瑞鶴の方を見る。イタズラがバレた子供みたいな顔をしていた。
「あちゃーバレたか(そのまま気づかなきゃ私がもう一度デートできたのに……)」
ボソッと言ったその言葉を夕立は聞き逃さない。ジトーっと瑞鶴を見つめる。
「ハイハイ、邪魔者は退いてるわよ。そろそろ明石をボッコボコにしたいしね。(私の時間奪いやがって、無惨な姿にしてあげるわ)」
「行ってらっしゃいっぽい、最後のセリフには夕立も賛成だから人が欲しかったら言って欲しいっぽい!」
「そ、ありがと(やっぱ、聞こえてたか)」
そう言って瑞鶴は2階へと上がって行った。
──その頃、提督たちは
「っはぁ♡あっ♡ってぇ♡とくっ♡」
提督の上に跨り嬌声をあげながら腰を振る明石
対して提督は媚薬が切れた反動か、その行為を
至って冷静に眺めていた。
(何と言うのだろうか。快感は感じている、実際とても気持ちが良い、だが、心は風の吹かぬ水面のように落ち着いている)
心と身体の乖離のせいで、よく分からない状況に落ちいってしまっている提督。本人は気づかせないように振舞っているつもりだが、明石は気づいていた。
(あぁ……提督の戸惑っている顔、好きぃ……♡)
(でも……おかしい。どうしてもう媚薬が効かないの?)
(これはそんじょそこらの媚薬とは違う。私が1から作った特製の媚薬……)
(並大抵の薬物耐性なら効かなくなる……なんてことはないのだけど……。)
(んー、これは1回検査してみるかなー?)
コンコンコン
唐突にノックの音が響いた。その音に驚いた提督はビクッ!として腰を浮かせ、勢いよく明石の腟内、子宮口を突き上げる。
「んひゃうっ!♡♡♡」
意識がドアに行っていたため、不意を突かれた形で腟内を突き上げられた明石はその刺激でイッてしまう。
「うぉっ…!」
イッた拍子に腟内をきゅうっと締められ、快感に耐えきれず彼も明石の腟内に精を吐き出した。
その熱の気持ちよさに、彼女の腟内は小刻みに痙攣する。どうやらそれだけで軽くイッているようだ。散々イッて疲れたのか、くたぁ、と提督に抱きつく形で上に倒れ込む。
「入るわよー、ってどんだけやったのよ!?」
明石の状態を見た瑞鶴が思わず叫ぶ。
……手に拘束具とバイブ等の玩具を持っていることには突っ込むまい。
「ん、瑞鶴か。どうした?」
「どうした?じゃないわよ、今日は私の時間なのになんで明石とやってるの?ねぇ、なんで?」
「あ、え、ええとそれはだな……」
「………ま、明石がてーとくさんに媚薬を盛ったのは知ってるわ」
「いや、知ってならなぜ問いつめるのだ」
「それはそれ、これはこれよ」
そういう……ものか?
ま、まぁ何はともあれ私に命の危険はないようだ。ならばそれで良い……本当に……
「それはそうと瑞鶴、その拘束具等は一体……?」
「ん?明石を気絶するまで虐めてあげようって思ったんだけど……」
もうしてるみたいだから良いわ、と私の上でくたぁっとなっている明石を見て言った。
少し羨ましそうに見ていたのは気のせいだろう、そうだと信じたい。……………、流石に連続はきついぞ……。
「それよりも、あと2時間ほどで歓迎会が始まるから準備しておいてね?」
………………、あっ!
完全に忘れていた……。そうか、今日は歓迎会だったか……
明石を抱き抱え急いでお風呂場へと向かう。
きっと瑞鶴か不知火が沸かしてくれているはずだ。
───風呂場───
行ってみると、お風呂は沸いていた。
既に裸なので明石と共にお風呂へ入る。
ヘタっている彼女の身体と自分の身体を洗い、明石を先に湯船に浸からせてから私も入った。
「ふむん……良い湯加減だ。…………私の好きな湯船の温度、彼女らに言ったことはあったか?無い気がするのだが」
まあ、今更か。とため息をつきながら言う。
「提督のことなら何でも知ってますよ。私たちは提督が好きですから。貴方が気付いていないようなことも知っています」
…………そうなのか。
自分の知らないことまで知られているというのはもう恐怖でしかないような気もするが。
まあでも、そこまで私を好いてくれるというは、やっぱり、少し、嬉しかったりもする。
にやけそうになる顔を隠すため、ちゃぷんと顔まで湯につける。けれど彼女は分かっているのだろう。ニヤついた顔で私の事をじっと見ている。
30分ほど浸かっていただろうか。不知火が呼びに来た。どうやら歓迎会が始まる1時間前になったらしい。
着替えるため湯船から上がろうとすると、運んでーと言わんばかりに明石がしがみついてきたが、ぺいっと湯船の中に放置して風呂から上がった。
さて、歓迎会では何も無いと良いのだがな──
……To be continued
シリーズモノにするかは不明なのだよー
11/21:祝!100PV越え!有難う!
12/2:PV500越え!感謝なのです!
12/22:PV1000超えたー!目指せ!2000!有難う!
1/24:PV2000超えたの!次は5000なの!見てくれてありがとなのー!
7/1:PV5000超えまちた!ありがとでち!
5/5:何か急に文消えちゃったから1万字くらい書き直し〜。だから割と変わってるかもしれないー(´・ω・`)
12/19:あれぇ、Gのくだり長くね?と思いながら書いている今日この頃。ってか、思いつきで書いてるから話の流れががが\(^o^)/
小説書いてる人って本当にすごいなあ……
佐世保ってブラ鎮なのかな?
わざとトラウマになったフリして
最終的に異動する作戦か?
私的にはヤンデレ川内が見れたから満足です!(o^-^o)
↑に同じなの~
③で!
川内にきじょーいでスケベか…
閃いた!!
続きまってますねー。
頑張ってください
提督がどうしていくか気になりますね
頑張ってください