見えざる手
左腕のない夕張と冴えない研究開発官の僕。僕は普通の日常を送っていたのだが、ある思い出話から夕張がある行動に移る…
夕張改装が来たので書きました。ただ、主人公は提督ではなく、研究官と、少し変えてみました。
筋電義手、義手は昔からあったが、筋電義手とは何だろうか?
一言で説明すると、筋肉に走る電気、これを感知して動作制御される義手のことだ。
なぜこんなことに詳しいか、それは僕が研究開発官だからだ。この深海凄艦との争いが頻発する時代、怪我をする民間人や軍人、艦娘は多い。普通の怪我なら医者にかかれば治る。しかし身体の一部が失われたとき、その時は医者にも治せない。僕はそんな時のために、義手を作りたいと今の職業に就いた。
-開発研究所 実験棟-
「試験終了!」
僕の上司である室長がそのワードを発した時は大体、実験は失敗ということを指す。
「またか!前の試験の時に直すよう言ったよなぁ!」
「はい…すいません…直したつもりではいたのですが…どうも上手く接続が…」
「あぁ?言い訳はいらねぇんだよ!ったく、こんな実験に研究費を割く上の判断が俺にはわからんね!」
まただ…僕にそんなこと言われても困るんだよ…僕は僕の研究に尽力してるだけだ…
「はい、午後は改善案を出して、プログラムを組み直します…」
「チッ…改善案ができたら俺に提出しろ…」
「はい…」
「(この研究はお前だけじゃなくて俺の評価にも繋がる…失敗すんじゃねぇぞ?わかってるな?)」
「…はい。」
やっと室長がいなくなった…
「○○さん!シャッキリしてくださぁい!」
僕の背中を叩きながら励ましてくれる彼女は兵装実験軽巡の夕張だ。
…他の夕張と違うところといえば、左腕がないことだろうか。普通、実験軽巡と言えど各鎮守府に配属される。
「あぁ、ごめんね?それより昼休み終えたらでいいから、今の実験のフィードバック、聞かせてもらえる?」
「えぇ!もちろん!」
そう、言い方が悪いが彼女は被験体だ。実験軽巡という艦種に加え、左腕もない。僕の研究の被験体としては非常にフィットしてる。それに助手も務めてくれる。僕と違って優秀だ。
「ところで○○さん、お昼ご飯持ってきてる?」
「え?いや持ってきてないな…コンビニとかで適当に…いや官舎にもどって適当に作ろうかな…」
「それならよかった!この前、美味しいお蕎麦見つけたんですよ!いきませんか?」
「蕎麦…蕎麦か…いいね、行きたい。」
「じゃあ30分後にエントランスでね!」
「あぁい。」
-30分後 エントランス-
「あっ!○○さん!こっちこっち!」
「大声出さなくても見えてるよ。大げさだなぁ。」
「えぇ、でも○○さん意外と抜けてるところありますからねぇ。」
「…否定できないのが悲しい。」
「まぁまぁ、落ち込まないで!さぁ行きましょう!」
「そういや僕、この辺で蕎麦屋とか見たことないけどどれくらい歩くの?」
「ん〜、大体15分くらいですかね?」
…往復30分、昼休みは1時間。半分も移動にかけるのかと思いつつ、僕は彼女についていくしかなかった。
「そういえば○○さんって、化学系の人でしたよね?」
「ん?そうだよ。大学じゃ化学専攻だったよ。そういう夕張は確か…工学?機械工学だっけ?」
「ん〜、厳密にいうと精密機械工学!私、昔から機械好きでしたからねぇ。」
「そうなんだ。ならこの施設にいる理由もわかるや。」
「でも化学系の○○さんがなんで義手開発室に?これって多分、工学系だと思うけれど…」
「ん〜、目標?目標というか、なんて言うんだろ。入学直後、家の近くの海に怪我した艦娘が流れてきて、その娘の腕、無くなってたんだ。」
「その艦娘…大丈夫だったんですか?」
「いや、僕にはわからない。救急車呼ぼうとしたらね彼女、『もう私は出撃できない…艦娘として死なせてほしい…』…って…だから救急車なんて呼ばずにそっとして欲しいって…」
「艦娘としてのプライド…ですかね?」
「多分ね。かといって見殺しにもできないし、彼女が立ち上がれるようになるまで側に付き添ってたんだ。」
「優しいですねぇ。その艦娘、どんな娘でした?」
「あまりよく覚えてないなぁ…顔とかより、流れてる血とか、見えちゃってる骨とかに目がいっちゃったから。痛々しかったよ…とてもね。」
「ん〜、だから義手を?」
「うん、もしその時あの娘の足がなかったら義足作ってただろうけど…でも、あの娘のお陰で就きたい職業を見つけられたよ。」
「でも8年前の話ですよね?」
「ん〜、意外と覚えてないものなんだよ。多分、当事者じゃないとわからない。」
「髪の色とかも?」
「あ〜…髪の色…え〜何色だったかなぁ…派手な色?派手って言うのかな…変わった色だった気がする。」
「なぁんも覚えてないんですね○○さんは。」
「そう言わないでくれよ…心にくる…」
「…その娘、実は私だったりして!」
「…えっ?マジ?」
「www、そんなわけないじゃないですか!騙されやすすぎますよ!○○さん!」
「えぇ、良い話風だったのに茶化さないでよ〜。」
「風なだけですよ、風なだけ!あ、あそこです!あのお店ですよ!」
なるほど、15.6mほど先の見た目が古い建物と扉に掛けられている藍色の暖簾、見た目からすると美味しい老舗のように見える。
「夕張のオススメとか、なにかある?」
「ん〜天ぷら蕎麦とか!どうです?」
「ん〜天ぷらもいいけど、鴨だし蕎麦もいいな…山菜蕎麦も…」
「まぁまぁ、メニュー見ながら決めましょう。」
15.6mなんてあっという間だ。こんな会話をしてるうちに扉の目の前につくのだから。
「へい大将!まだやってる?」
(おっさんかよ…)
と内心で突っ込む。
「おぉお嬢ちゃん!また来たのか!ん?今度は彼氏さん連れかい?憎いねぇ!」
「あ、いや彼氏では…」
「いいからいいから!あんた!客が来たよ!」
この店員さん、元気だなぁ…と思っていると席に案内されていた。座って品書きでも見てみよう。
「ん〜私、天ぷら蕎麦で!」
「…ん〜、どうしよ。あ〜鴨、鴨だし蕎麦お願いします。」
「あいよッ!」
店員さんはそう言って下がっていった。
「え〜天ぷら蕎麦にしないんですか?」
「ん〜やっぱり鴨だしが食べたかったから。美味しいじゃん?」
「まぁ、美味しいけど…」
僕は少し不貞腐れているように見える彼女の左腕に目をやった。僕の前作の義手を装着してる。見た目に不自然さがない、当時の僕の自信作だ。
「…改良版、早くできるといいですね。」
彼女は僕の視線に気づいたらしい。
「うん、あと3ヶ月以内には作りたいよね。」
「3ヶ月?意外と長いですね?」
「ん〜まぁね。自信ないから…」
「え〜?もうほぼほぼ完成じゃないですか?さっきの実験だって反応が2.3秒遅れただけで…」
「僕は軍人じゃないから、わからないけどさ…戦場だと2.3秒の遅れが命取りになるんじゃないかな?あの室長も前職は最前線に関わる仕事だったらしいし、まぁ失敗であることに変わりはないよ…」
「…まぁ、○○さんならできますよ。」
「だといいけどね…飯の時に仕事の話はやめよう!僕が嫌になっちゃうからさ。他の話、何か他のこと話そう!」
そのあと僕らは談笑しながら蕎麦を食べた。(夕張っていい店知ってるんだな)
そう思いながら僕は食べていた。
-午後の業務時刻 研究室-
「おい!○○!」
「はい、何でしょう?」
「俺、今から直ぐに出張に行かなきゃならないんだ!」
「随分と急ですね…横須賀の近くですか?」
この研究所が置かれてる横須賀の近くなら直ぐ戻ってこれるだろう。ならば特に支障はない。
「いや、それが佐世保なんだよなぁ…めんどくせぇ…」
「えぇ…遠すぎません?滞在日程は?」
「3日間だ。4日目には帰ってくるが、有給を取るつもりだ。ただその間、お前の実験ができなくなる。」
「…?実験時の代理監察官を誰かに頼めばいいじゃないですか。」
「代理監察官を依頼するのにどれだけ書類が必要だと思ってる!それに時間がねぇんだ!悪いとは思うがよ、この4日間はプログラムとか設計図でも見直しててくれ。5日後に実験するぞ。」
「…あい。」
「…成功させろよな?」
「あい…」
「そうだ、土産なにがいいかメールで送ってくれ。夕張にも聞いとけよ?」
「僕はかんころ餅…おねがいします。」
「ん?かんころ餅な?わかった。じゃあともかく俺はもう帰って準備せないかんから、5日後な!」
「はい、行ってらっしゃい。」
(5日後に再試験か…間に合わせなきゃ…場合によっては3ヶ月以内どころか一週間以内に実地試験に…)
僕はそう思い、改善点と代替案を考え始めた。
「…夕張にも佐世保の土産聞いとくか。」
中々代替案が思い浮かばない…気晴らしも兼ねて夕張のところに向かうことにした。
-第3備品室-
この時間はたしか、彼女はここで備品整理をしてたはずだ。
「夕張、いる?入るよ?」
「はぁ〜い!どうぞ入って入って!」
部屋の中から彼女の明るい声が聞こえる。
「お疲れ様、さっき室長が佐世保に出張だって出ていったよ。5日後に戻るらしい。」
「へぇ〜室長が。随分と急なんですねぇ。」
「あぁ…ところでその備品、どうしたの?」
彼女の手には僕が過去に作った義手があった。
「ん〜懐かしいなって。私と○○さんがここに来て初めて作ったやつじゃないですか。」
「懐かしいなぁ…」
そうだ、僕と夕張はこの施設にほぼ同期で仕事を始めた。
いや、僕の入庁の一週間後に夕張もここに派遣?されて来たのだ。
「あ、そうだ。それでさ、室長が土産なにがいいか、夕張にも聞いてくれって。」
「佐世保だよねぇ…懐かしいなぁ…」
「?」
「あれ?言ってなかったっけ?前まで佐世保にいたって。」
初耳だ。というより今の今まで夕張のことを何か聞いたことがなかった。左腕がない理由も…
「佐世保でしょ〜…なににしよう…あ!からすみ!長崎からすみ食べたい!」
「ん、わかった…メールしとくよ。じゃあ、また後でね。」
「はぁ〜い!」
僕は備品室を出た。
(僕は夕張のことをあまり知らないな。まぁいいけど。)
あくまでも仕事の関係だ。気にしなくていいだろう。
(○○さん、私のこと覚えてないのかなぁ…お昼ご飯の時も何も覚えてないって言ってたし…)
私は残念に思った。
今から8年前のこと、○○さんが海辺で見つけた艦娘は私のことだ。海辺に流された理由?ただの事故だ。もちろん他の艦娘も所属先の提督も私のことを心配してくれていた。○○さんが私のことを見守ってくれた後、無事に鎮守府に戻ることができた。でも、戻るのが遅すぎたみたい。左腕の修復が間に合わなかった…腕がない艦娘が出撃できるわけがない。帰投した翌日、提督から資料整理の職に回された。
ただただショックだった。今まで出撃して、仲間と一緒に戦ってきたのに、もうそれができない…でも仕方がない、腕がないのだから…
私が資料整理の仕事を始めたその時から、○○さんのことを考えるようになった。当時はもちろん名前も知らなかったけど…顔は覚えていた。所謂、一目惚れというやつだった。
(会いたい、会ってお礼を言いたい…そして、『一目惚れしてしまいました!』と伝えたい…)
ずっとそればかり考えていた。
そしてあの時、私は驚いた。軍隊内で配布される広報誌を眺めていると[△△年度、装備庁入庁者一覧]の項目があった。工学部にいた私としては装備庁にも興味があり、今年度はどんな人が入ったんだろ、という気持ちでそのページを開いた。
(へぇ、顔写真付きだ…えっ?)
そこには前にいた人の写真があった。
〈欠損部補強兵装研究室 研究官採用 1名 総人数2名配属
室長 (上記写真 右)
氏名 ◇◇ ◽︎
前職 海上自衛隊横須賀補給処補給幕僚
役職 海上自衛隊一等海尉から
日本国海軍設計少佐へ昇格
研究官 (上記写真 左)
氏名 ○○ ⚪︎⚪︎
前職 なし(新卒採用)
役職 装備研究官(一般)
専攻研究分野 義手開発 〉
(新しい研究室が増設されたんだ、気づかなかったわ。室長もベテランさん…そんなことよりこの人、○○さんって言うんだ。こんな所に…すごい偶然ね…ううん、これって運命よね?)
わかってた。あまりにも都合が良すぎる考えって。でも、出撃もできず艦娘としての役割を果たせないと自分を責めていた時に、唯一の光のように感じたの…
そしてある日、とある決意を胸に、私は提督に異動願いを出した。
「もう8年も前かぁ…もうそんなに経ったのね、はっやいなぁ…
…告白、しちゃおうかな。」
ここに来てからの2年間、私は○○さんの助手として近くにいた。その間に私は更に彼に惹かれていた。意外と抜けてるところ、かわいいところ、優しいところ、怒ると無口になるところ…本当に色々なところを見てきた。その一つ一つに私は…ドキドキしていたの。
(室長、出張でしばらくいないって言ってたわね。つまりこの研究室、今は私と○○さんだけ…チャンス、よね?)
神様から私への思し召しだと、こう思うことにした。
-翌日-
「今日から室長いないのかぁ…仕事サボっちゃおうかなぁ〜…」
僕はあくびしながらそんなことを呟いていた。
「…夕張もいるからそういうわけにもいかないか。チクられたらマズイもんなぁ。」
さて、身支度をしなくては…
・・・
支度も終えたし、さて、職場に向かうかと玄関先に向かうと、携帯のメール通知が鳴った。
{from ◇◇ ◽︎
to ○○ ⚪︎⚪︎
要件 佐世保に着いた
おはよう。今佐世保ついた。夕張の土産聞いとけよ?あと、俺がいないからって仕事サボるんじゃねぇぞ?}
忘れてた、からすみって言ってたはずだ。
(おはようございます。夕張はからすみが欲しいと言っておりました…っと…)
よし、返信もしたし出るか。
この時期、朝は相当寒い。研究所まで徒歩1.2分でもコートを羽織り、マフラーに手袋の完全装備で出るくらいだ。
「○○さん?おはようございます!」
夕張が後ろから挨拶してきた。
「おっ、おはよう。時間被るなんて、珍しいね。」
「偶然ですねぇ〜。そういえば○○さん、今夜空いてます?」
「今夜?空いてるけど、なんで?」
「いやぁ、最近料理にハマってて…作りすぎちゃったの。」
「あぁ、そういうことか。じゃあ終業後にタッパー持って向かえばいいかな?」
「タッパー?あ、いや私の家で食べません?」
「ん〜、じゃあお邪魔しちゃおうかな。楽しみだ。」
「ふふ〜ん!楽しみにしててくださいね?」
「まぁ、ひとまずアレだ。仕事だな。研究室に着いたらミーティングだ。」
「はぁ〜い。」
ミーティングは終わったけれども、実験ができないためデータ採集もできないから今日は特にやることがない。私もだけど○○さんも特にすることがなくお互いに暇をしてる。こういう状況になると、することは大体…雑談よね。ということで私はさっきから色々なことを聞いてる。
「え〜じゃあ好きな食べ物ってなんですか?」
「…なんだろ、肉じゃが?次の日とかカレーにできるし。」
「そういう意味じゃなくて、ほら!好物!」
「…肉じゃが?」
「なら良かった〜!私、作りすぎちゃったのがちょうど肉じゃが!」
ううん、知ってたの。○○さんは肉じゃが好きなことを…
「へぇ〜それならなおさら楽しみだなぁ。」
「じゃあさじゃあさ…好きな女の子の…タイプとかは?」
聞いちゃった…一番気になること…
「ん〜、難しいな…大和撫子で誠実な子とか?」
…私とはちょっと違うかな?で、でも私には私の良さがあることをわかってもらえれば!
「へ、へぇ〜…彼女さんとかは?」
いない…よね?
「あぁ、実はいるんだ。まぁ、今は別居っていうのかな?彼女は今、他の職場にいるんだ。」
「…そ、そうだったんだ!彼女さんはどんな人なんですか?」
「たしか机の引き出しに写真が…あっ、これだ。この人だよ。」
「…どこかで見たことありますねこの人。」
「あぁ、同じ艦娘なら見たことあるかもな。」
「扶桑…さんですか?」
「そうだよ。彼女はよくできた人で僕にはまったくもって勿体ない人だよ…本当に…」
「…そ、そうなんですか〜。あっ、もうこんな時間!ちょっと席外しますね?」
「ん?お、おう。」
(彼女がいることなんて知らなかった…これは作戦変更する必要がありそうね…)
そう思いながら私は調剤室へ向かった。
-終業時刻-
「はぁい○○さん?早速私の部屋に行きましょう!」
「ん?あぁもう終業時刻か…報告書書いてないや…あとで合流じゃダメかな?」
「ん〜了解!じゃっ、また後でね?」
「あ〜い。」
私は先に研究所を出た。
(あとは計画通りに…この薬で…)
私が仕事中に調剤室に行った理由、それはこの睡眠薬を手に入れるため…医務官には前の職務によるPTSDと伝えたら簡単にもらえた。こういう時、職場と自分の住む部屋が近いというのはとてもありがたい。すぐにでも準備したかったのだから…
・・・・数十分後
(さて、報告書も書き終えたし、夕張の部屋に行くか。たしか部屋の番号は…あぁ、ここね。)
僕はようやく業務を終え、彼女の部屋へ向かうことにした。
(肉じゃがかぁ〜楽しみだ。なにか手土産…手土産にできるもの持ってないな…)
しまった、もし相手が同性なら酒でも持って行ったが、相手は女性…酒を持って行くことによって深読みされるのも嫌だな…
(近くのケーキ屋、寄って行くか…)
長考の末、ケーキを渡すことにした。
-業務後 夕張の部屋-
(マズイ…思ったより遅くなっちゃった…)
そう思いながら僕はインターホンを押した。
「はいは〜い!」
中からドタバタと彼女の足音が聞こえる。
「待ちくたびれましたよ!○○さん!はい、上がって上がって!」
「あ、お邪魔します…それと、これつまらないものだけど…ごめんねこの程度のもので…」
そう言いながら先ほど買ったケーキの箱を彼女に渡した。
「え、いいの?やったぁ!ほら、玄関で立ってないで靴脱いで上がって!」
「あぁ、うん。
…いい匂いだね。」
「え…///」
「あ、いやごめん誤解させる言い方して。肉じゃがのいい匂いがするねって…」
「あっ、なんだそういうことかぁ〜!驚いたなぁ。美味しそうな匂いでしょ?」
「あぁ、嗅いでるとお腹が減って来ちゃったよ。」
「もう準備はできてるからこっちの席に座ってね。」
いただきますの挨拶をしてから30分ほど経った。彼女の料理はとても美味しく、ひさびさにおかわりをするくらいだった。
「○○さん、コーヒーと紅茶、どっちがいい?」
「ん〜、コーヒーお願いしようかな?」
「は〜い…あっ、ケーキ美味しそ〜。○○さんどっち食べます?」
僕はたしかショートケーキとチョコケーキを買って来たはず…
「どっちでもいいよ。夕張の好きな方を選んで。」
「じゃあ私は…チョコケーキにしよっ!」
「はいっ、粗茶ですが…」
「コーヒーに粗茶ってあるのかね。」
「多分ないと思うけど、形式的な?」
「十分美味しそうなコーヒーだよ…」
「あら、そう?」
食後のデザートタイムだ。最近甘いものなんて食べてなかったなぁ、と思いつつ買ってきたショートケーキを口に運び、コーヒーも飲んだ。
いろんな話をした。職場の話、室長の愚痴、学生時代の話、本当に色々だ。しかし、楽しい時間というのはすぐに過ぎてし…
「あれ?○○さんどうしました?」
「…んっ…んん…眠いなぁって…」
「○○さん、結構食べてましたから…血糖値が一気に上がっちゃったんでしょうね。」
「あぁ…そうかも…今日はあり・・・・・」
…どうやら寝てしまったらしい。周りはもう明るい日差しがさして…
「○○さん起きた?あっ!二度寝しちゃダァメェ!」
「んっ…ん〜!ん?」
夕張の声でしっかりと目が覚め、体を伸ばそうとしたが上手くいかない。理由はすぐにわかった。手が紐か何かで拘束されてる。
「え?え?え?」
「あっ!そんなに暴れないで〜!」
「なんで?え?縄?紐?え?何?なんで?」
「○○さんの義手、すごいですよね。」
「え?何今それどころじゃないよ!」
「だってほら…こんな丁寧に紐で縛れたんですもの!」
「夕張!君のせいか!なんで?なんでこんなことするの!」
「そんなことよりちょっと昔の話しません?」
僕がそこで聞いたのは8年前、僕が海辺で見守った艦娘は夕張だったということ、そのあと閑職に飛ばされて僕のことを考えてたこと、広報誌で僕がここにいることを知って異動してきたこと。そして何より、僕に恋していたこと。彼女は話を聞いてる最中に何度も「マーキング♡」と囁きながらキスをしてきた。もちろん僕は拒んだ。「僕には彼女がいるんだ!もうやめてくれ!」と…
「はぁ…キスマーク…たくさん付いちゃいましたね…これで私のこと、思い出してくれましたか?」
「もうやめてよ…こんな…こんなのもうやめてよ…」
僕は弱々しく「やめて」ということしか出来なかった。
「毎日会えないような彼女さんのことなんて忘れて、私と結婚しちゃいましょうよ。」
「ダメ…僕には…僕には扶桑が…」
「そんなこと言って…もう○○さんは私と付き合うしかないんですよ?
あっ!もうこんな時間!私、所長に○○さんの退職願、出してきますね?私がこれから支えるから安心してね?」
彼女はそういうと、僕に目隠しをつけてこう言った。
「それと結婚の件、
あ と で 良 い お 返 事 聞 か せ て ね ?」
そう聞こえたあと、ドアの開け閉めをする音が聞こえた。
pixivで「H N」という名前でss投稿しているものです。pixivであげた「見えざる手」をここにも投稿させてもらいました。
目的としては、いろんな人の感想(酷評含む)を聞きたいのでこちらでも投稿させていただきました。後々、pixivであげている他の作品も投稿したいと思います。ぜひ何かしらの感想をください。作者が喜びます。
また、長いssを書きたくなった場合はこちらを利用するつもりです。
まぁ悪くはないんだけど、所々言ってることが分かりにくかったり表現が理解できなかったりとりあえず完結させたのか、ちょっと急ぎ過ぎに感じたり、ヤンデレ感があまり出てなかったり別に要らなかったんじゃないかっていう設定があったりするのは考えものですね。
特に室長さんは登場させる意味ありましたか?
又、艦娘と一般人が簡単に会えるのかとか扶桑との話や背景描写がちょっとあった方がよかったかな~