2020-03-06 01:22:01 更新

概要

オリジナルss 聖堂に行きつく道中で再び災禍が舞い降りる。


ーーー 数刻前 ノイス聖堂


「おいおい、この俺ぇをいつまで閉じ込めるつもりだぁ?」


聖堂の中、結界に閉じ込められた謎の男はそう呟く。


昨晩、聖堂の結界がこの男によって破られた。その際に素早く神官達は対応し、男を小規模の結界に閉じ込めた。3人がかりの結界だ、破られるはずはないのだが...


「いい加減この中にいるのも退屈だからよぉ...」


男は手を上げ魔力を込める。


大神官「無駄だ、この結界は破れない!」


「まぁ、俺だけじゃぁ厳しいだろぉなぁ?だが忘れてねぇかぁ?...炎竜をよぉ?」


男がそう言った途端、聖堂の天井が大きな音と共に崩壊した。その壊れた隙間から大きな足と爪が見えた。


「グワァァァァァァァ!!!!」


大神官「ぐっ、炎竜が...他の神官たちはやられたのか...!?」


「フヒヒヒッ!!碌に戦闘にも慣れてない神官如きが炎竜に勝てるわけねぇだろぉ!バカかお前らぁ?」


聖堂の天井は完全に崩れ、炎竜が結界を張っている神官たちの前に降り立つ。


「グワァァァァァァァ!!!」


神官「おのれぇ!忌々しい竜め!ならば私1人で...ぐっ...!!ぐわぁぁぁ...!!?」


突如神官の1人が胸を抑え苦しみ出した。呼吸が乱れ、全身から汗が噴き出しやがて膝をついて、悲鳴とも呼べる声を上げながら倒れ込んだ。


「ダメだぜぇ?集中してなきゃ...ほらぁ、結界に穴ができちまったぁ」


神官2「ぐぅぅ、3人がかりでないとやはりこいつは...」


結界がパキパキと音を立て、崩れ去っていく。男の膨大な魔力に耐えきれなくなったのだろう。


少女「大神官さま!私はいいですから、お逃げください!」


隔絶結界の内側にいる私は必死に大神官と呼ばれるノルフという男に声をかける。だが


大神官→ノルフ「ならん、君だけはなんとしてでも守りきる」


少女「大神官さま...!」


神官2「ノルフ様、ここは私めが...ぐっ、あああ...!」


もう1人の神官の男も突然苦しみだし倒れ込む。あの男がなにかしたのだろうか。だけどなにをしたのかさっぱりわからない。


「もう飽きたって言っただろぉ?お前らの時間稼ぎに付き合ってる暇ねぇんだわぁ」


ノルフ「一体...何をしたんだ。そもそも何者なんだ」


謎の男はニヤリと不気味に笑い、問いに答える。


「そう不思議がることねぇよぉ、すぐにお前もわかるさぁ...そして俺はぁ...」


ノルフ「...!!うぉぉぉ...!!」


少女「は...大神官さまぁ!!」


やがて大神官のノルフも他の神官のように苦しみだし、膝をつく。男は更に悪意に満ちた表情をする。


「俺はぁ…聖騎士様たちの4つの翼だ」


ーーーーーー

ーーーーーー

ーーーーーー


現在 聖堂への道中


馬車を走らせること1日、聖堂へと続く森の入り口が遠くに見えてきた。


道中特に障害もなく、スムーズに進むことができた。念のため辺りを警戒しながら進んでいたのだが徒労に終わってしまった。


ナル「ますたぁ、暇なのだぁ」


暇そうにナルがぼやく。まるで子どものように駄々をこねる。生きてる年数は上でも見た目と対して変わらない精神年齢のようだ。


グレン「もう少しで着くから我慢しろ」


ナル「うぅ、マスターが厳しいのだ」


グレン「何言ってんだ、これでも甘々に接してるぞ」


ナル「嘘なのだ!マスターは厳しいのだ!」


グレン「飴あげるから大人しくしとけ」


ナル「わーい!マスター大好き!」


この神様ちょろすぎる、同じくらいの年の子でもさすがに飴1つじゃ釣られないぞ。


カイゼル「レン殿、あの森を抜ければノイス聖堂に着けるが休憩を挟もうか?」


手綱を取っていたカイゼルが後ろの荷台に乗っている俺に問いかける。ナルのことを気にかけて提案してくれたのだろうか。


グレン「構わない進めてくれ」


カイゼル「よいのか?」


グレン「あんま甘やかすのもよくないんでな」


カイゼル「レン殿は厳しいな」


グレン「これくらい普通だ」


カイゼルにも厳しいと言われてしまった。俺ってそんなに厳しいこといってるか?


カイゼル「まぁレン殿がそういうのならばこのまま進ませてもらおう」


グレン「あぁ、頼む」


ナル「マスター、もう一個」


グレン「お前なぁ...」


仕方ないので飴をもう一粒あげた。これで大人しくしないようなら馬用の餌を食わせてやろう。




道なりに進み、森の入り口の手前にまで差し掛かったところでカイゼルが突然馬を止めた。


カイゼル「あれは...」


グレン「どうしたカイゼル。ん?あれは...人か?」


森の入り口の木に寄りかかるような体勢で倒れている人物がいた。よく見ると王国騎士団の鎧を身にまとっているのが見えた。


そういえば一度騎士団を聖堂に派遣したといっていたな。


カイゼル「!!おい大丈夫か!?」


カイゼルは馬車を降りその騎士の元へ駆けつけた。それに続いて俺とナルも荷台を降りカイゼルの後ろをついていく。


近づくとわかったが、その騎士はボロボロで鎧の所々にヒビが入っておりとても五体満足とはいえない状態だった。


そして少し、焦げ臭いにおいがした。


「ぐっ...か、団長...?」


カイゼル「そうだ、一体何があった?」


「それは...竜に...炎竜に襲われて...」


カイゼル「炎竜だと!?」


カイゼルが声を荒げる。無理もない、つい先日こちらも炎竜と対峙したばっかなのだ。


同一個体の可能性もあるが...またまた嫌な感じがする。


カイゼル「他の仲間たちはどうした?」


「...すみません、俺、逃げるのに必死で...」


カイゼル「そうか...ここから先は私に任せておけ。今応急手当てをしてやる、少し待っていろ」


「ありがとうございます、団長...」


カイゼルはポーチから瓶に詰めた回復薬を取り出し騎士に飲ませる。鎧を脱がせ、怪我をしている場所にすり潰した薬草を塗りつけ包帯で巻く。


治癒魔法が使えればこういう行程はいらないのだが治癒魔法が使えるのは擬似神聖魔法が使える神官か神力を使った神法のみ。


まぁ神法で治癒をする場合は元々神力を持つ天使の傷を癒すものなので人間が持つ魔力に反発してしまうため効果はあまりないんだが。


カイゼル「これでよし、しばらくここで安静にしておけ。あの馬車の荷台の中で待っていてくれ」


「炎竜を、倒しにいくのですか?」


カイゼル「元々聖堂の安否を確認しにきたんだ。炎竜に会わないに越したことはないが...会った時には倒すしかないな」


「そんな無茶です...いくら団長でも」


カイゼル「安心してくれ、強力な助っ人がいるからな」


グレン「ん?」


カイゼルは俺の方に目を向ける。いきなり話を向けられたので若干反応が遅れる。


「あなたは...?」


グレン「俺はレン。まぁ世界中を旅してる旅人だ。こっちがナル」


ナル「うむ」


軽く自己紹介をし挨拶を済ました。実際に世界を周ってたんだ、嘘は言っていない。200年後のここは全く知らないが。


しかしすっかりこの偽名にもなれてしまった。偽名というほどでもないけど。


「そうですか...ですがやはり炎竜には」


カイゼル「大丈夫だ、なにせ炎竜は一度...」


と、言いかけたところで僅かながら空気の振動が伝わった。森の木々に潜む鳥たちが一斉に飛び立ち周りの気配が変わる。なにかが近づいてくる。




「グワァァァァァァァ...!!!」





森の方から空を切って巨大な何かが雄叫びをあげて近づいてくる。言わずもか、これは...


「ひぃっ、え、えええ炎竜!?」


騎士が狼狽える。殺されかけた敵が目の前に現れたためか顔が真っ青になり冷や汗をびっしりかいていた。


カイゼル「レン殿」


グレン「あぁ、まさか二体目とはな」


こんな短期間に竜に二体出くわすとは。しかもカイゼルによると竜自体が珍しいとか。


これは裏でなにかあるんじゃないか。竜は気性が荒いやつがいるとはいえ見境なく襲ってくるとは思えない...なにかあるのかもな、それこそ人為的ななにかが。


カイゼル「どうするレン殿」


グレン「そうだな...ここは俺1人でやる」


カイゼル「それは...レン殿なら問題はないとは思うが」


グレン「カイゼルは先に聖堂に行って様子を確認してきてくれ。さっきこの炎竜、聖堂の方から来たようだったからな。なにか起こってるかもしれない」


カイゼル「そういうことか、わかった。ここはレン殿に任せる」


グレン「終わったらすぐ行く」


カイゼルは1人、森の中へと進んで行った。仮にも騎士団長様だ、森の中に危獣種がいたとしてもなんなく対処できるだろう。


「ひぃぃ...死ぬ、俺はここで死ぬんだぁぁ...」


残された騎士の1人が頭を抱え怯えている。余程のトラウマを植え付けられたのか?怖がり方が尋常じゃないな。


...いや、あの様子じゃ仲間が目の前でやられたんだろう。普通の精神状態じゃ気に病むのが普通か。やはり今の俺は...


「グワァァァァァァァ!!!」


っと、そんなこと考えてる場合じゃないな。まずはこの場から離れないと。


ここで戦ったらあの騎士と馬車を巻き込んでしまう。炎竜を少し遠くに誘導しなきゃな。


グレン「ナルはここで待ってろよ?」


ナル「うむ...本当はわたしが剣化できればよかったのだが」


グレン「なーに、神力が戻ったら頼りにするさ。だから今は待っとけ」


ナル「うむ!気をつけるのだぞマスター」


グレン「任せろ」


足元にある手頃な石を拾い上げ付加術で腕力を強化させ、炎竜に向かってその石を投げつける。


まるで弾丸のように放たれた石は炎竜の鱗にぶつかり砕け散った。


「グワァァァァァ.....!!!」


もちろん石をぶつけられた程度では傷の1つも負わないだろうが、注意をこちらに向けることには成功したようだ。


グレン「こっちだ炎竜、付いて来い!」


「グワァァァァァァァ!!!」


俺が走り出したと同時に炎竜は翼を羽ばたかせ着いてきた。よし、なんとか誘導することができそうだ。




炎竜が俺を追いかけて来ている途中で火のブレスを後ろから吐いてきたりしたがそれを巧みに躱し、こちら以外に注意を向けないよう度々石を投げつけ挑発する。


戦いやすい場所に誘導しつつ、馬車が見えなくなったところで足を止めた。これ以上離れる必要はないだろう。


「グワァァァァァァァ!!!!!!」


炎竜は挑発され続けて怒り狂っているのだろうか、もうこちらにしか眼中にないとでもいうように鋭い眼球で睨みつける。誘導は大成功だな。


グレン「悪かったな、おちょくるような真似をして。こっからは真面目に戦ってやるから許してくれよな」


「グワァァァァァァァ!!!」


もはや怒り狂っていてとても冷静ではいられないようだ。それも好都合、俺にしか目を向けられないのならば他を気にする必要もない。


腰にある剣を抜き構える。先日の炎竜には油断していてダメージを負わなかったのはともかく、不覚にも攻撃を加えられてしまったからな。今度は油断抜きでいかせてもらおう。


グレン「それじゃ...始めようか」


炎竜討伐、2回戦目だ。




後書き

前に書いてたものをss風に直して書きました。ほぼ思いつきです、ご了承ください


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