もう勇者やめていいですか?
オリジナルss 世界を救った勇者の次なる人生とは…?
???
「........」
ふと、夢を見た。別段特別な夢などではない。
大事な仲間たちと一緒に過ごす夢。ただそれだけだ。
宿屋の一室。俺はベッドに横たわっていた。
「何を考えているのですか?」
声をかけられ横を見ると赤髪の少女が横にいた。
「なんでもない。ただ、今の生活が心地いいと思っただけだ」
「ふふっ、なんですかそれ」
少女は笑う。そして少女は語りかける
「私も、今の生活すごく好きですよ」
「...そうか」
変わり映えしない日常...そんなものに俺は憧れていた。そして、今もそれに憧れている。
だからこそ、今あるものを守りたい。もう失うのはうんざりだ。そして...
「ん?どうしたんです?じっと見つめて」
「いや、なんでもない」
この少女の笑顔を守りたい。ただそれだけのために。
「さて、ご飯も出来てるしいきましょう」
「あぁ、すぐ行く」
俺は腰を上げ立ち上がる。徐ろに少女の頭に手を置く
「きゃっ、なになに??」
少女は赤面しあたふたしている。不思議と嫌がられてる気はしない...と思う。
「俺が俺である限り、俺の運命は変わらないと思う。」
「いきなりなんですか?」
少女はきょとんとする。まぁ脈絡もなくこんなこと言いだせばそうもなるだろう。
「まぁ聞けよ。俺はこの性がある限り世界の命運は良くも悪くも変わってしまうだろう」
「まぁ...そうですね」
少女は否定しないどころか肯定する。それは俺の正体を知ってのことだろう。
「一時は世界のために俺は戦った。それは世界を守るためにしか俺は動けなかったからだ。あれはもはやただの惰性だな。」
世界を守ることが惰性だなんて、世の全人類からバッシングを受けそうだが事実なのだから仕方がない。
俺は全知全能の神じゃない。好きなこともあれば嫌なことだってある。
「だがここにきて俺は目的ができた。お前たちに出会って俺は希望を見つけた。希望を振りまくことしかできなかった俺に光を与えてくれた」
「.......」
少女は黙って聞いている。だけどその表情にはどこか嬉しさと恥ずかしさが垣間見えた。
「だから今度は世界を救うのが一番の目的じゃなくて...」
ここでぐっと息を吸い、少女の方に向き直る。
「お前たちを守る片手間に、世界も救ってやる。」
「ふふ、無茶苦茶ですよ」
少女はニッコリ笑う。まぁ自分で言っといてなんだが確かに無茶苦茶だな。
でも、それでいい。何もない世界なんて、救う価値はない。
俺はもう人類の希望ではない、ただ、仲間たちの希望になれば、それでいい。
「それじゃ、いい加減に行くか」
「うん」
1つ、歩みを進める。部屋を出て、食堂の方へと目を向けると仲間たちの声がざわざわと聞こえる。
少女がこちらを見る、そして優しい微笑みを浮かべた。
「これからもよろしくね...勇者様」
ここから、名も無き勇者の物語が始まった。
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ここは神と悪魔が創り出した世界。神と悪魔の抗争の中、人類は神々につくことを選んだ。しかし神々は地上に降りることが出来ない。よって、神の分身体ともいえる天使が派遣され、人類に悪魔を倒す術を教えた。
その過程で生まれたのが勇者。人類最強ともいえるその存在は世界の希望へとなっていった。
そしてつい先程、神々と人類の最大の敵である魔王が討たれた。
しかしこれは運命なのだろうか。全ての物語がそこでハッピーエンドを迎えるとは限らない...
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「はぁ...はぁ...」
ここは魔王城...が半壊した跡地。周りに人の気配はなく代わりにあるのが...
悪魔「グルルル...」
無数にいる悪魔のみ。ただそれは地上にだけではなく空にも数万を超える悪魔の姿があった。
「まったく...魔王を殺したっていうのに、諦めの悪い連中だ」
魔王討伐に来た俺達...いや、今現在は俺のみだが魔王を殺す寸前に悪あがきをしたのだろう、全魔力を空に射ち放ち散らばせた。
魔王の血は悪魔を生む。その血が辺りに散らばったせいで数十万を超える悪魔が生み出された。まったくもって迷惑だ、大人しくくたばっとけばいいものの。
悪魔「グワァァァ!!」
そんな俺の思考も許さないのか次々と悪魔が襲いかかってくる。一体一体手に持つ剣で真っ二つにしていく。
所詮下級悪魔だ、遅れを取ることはない。もちろん剣だけではカバーできない、故に対応できない時は神法を使い撃破する。
何故今仲間がいないのか。何故1人で戦っているのか。
1つめの答えは悪魔は人の手では決して殺せないからである。悪魔は端的に言ってしまえば魔素の集合体で寿命というものがない。その身体を粉々にされようとも一時は無力化はできてもいずれは魔粒子が集まり復活してしまう。
その魔粒子を除去するためには神力というものが必要だ。
その神力を持つためには神から力を授かるか天使の血を分け与えてもらうか。それと神の武器を使うか。もちろん俺の剣もただの剣ではなく神力が宿った武器、神剣"みつるぎ"を装備している。
そして俺は天使と人間のハーフであり体内にも神力を内包しているため神だけが扱える術、神法が多少使える。
2つめの答えは1つめの通り、人間には悪魔は倒せない。もちろん俺の仲間は強い。
圧倒的なパワーで敵を蹴散らす戦士 カル=ラッセル
幾百の魔法を操る女魔法使 ミナ=エルラン
もう1人僧侶がいたが...今はそれはいいだろう。
当然悪魔を無力化する術は持ってはいるがそれはせいぜい無力化できるだけで倒すことはできない。それに流石に数十万もの悪魔と戦うことなどできないだろう。
そして勇者である俺...グレン=ヴァーミリオン
悪魔の大群が出現した時に瞬時に判断した。
もしものための時の転移魔法石でこの場を離脱してもらったのだ。当然反対はされたがな...
....................
と、まぁこれが仲間が今いない理由だ。
俺はそんなことを考えながら悪魔を次々殺していった。しかし思ったよりツラい、あれから何時間経ったのだろうか。
自分の身体は幾多の悪魔の返り血に染まっていた。だが目の前の悪魔の数は一向に減っている気がしない。
身体のあちこちが痛い。
正直言ってかなりヤバい。仮にも人類最大の敵といわれる魔王を倒した直後だ。たとえ下級悪魔であろうとも油断はできなくなっていった。
悪魔「キャァァァァ!!!」
グレン「ぐぅっ...!!」
ガキン!と悪魔の爪と自分の剣が衝突する。悪魔を後ろに押し退け素早く身体を両断して殺す。すると頭上から火の玉が降り注いできた。それを察知し身体を翻しなんとか躱す。
グレン「あっぶね、魔法使ってくるとは、まさか...」
空に目をやると羽根の生えた人型の悪魔がいた。
まるでゴミを見るような視線を向け再び魔法陣を展開し火球を生み出す。
悪魔「ニンゲン...シヌガイイ」
グレン「ちっ、ふざけんな。上級悪魔までいんのかよ」
上級悪魔。下級悪魔とは違い人と近い姿をしている悪魔だ。しかし違うのは姿だけではなく知能を持ち魔法を扱うことだ。その上の階級の六魔というのがいるが...恐らくそれはいないと思われる。
六魔は魔王の血を濃く貰い魔王自身が創造することで作られる悪魔だ。そしてその六魔は旅の途中で全て殺した。
ただの魔王の血で生まれることは絶対にない。が、この状況で複数の魔法を使える悪魔など厄介以外の何者でもない。
グレン「くそ、あんま調子に...乗ってんじゃねぇ!!」
地面を踏みしめ空中へ飛び上がり上級悪魔を有無も言わず斬り伏せる。
上級悪魔と言えどここまで登りつめてきた今の俺の敵ではない。
そのついでで神力を練り上げ空中にいる悪魔たちに両手を構える。
グレン「ホーリーレイ!!」
陣が展開し光の槍が無数悪魔に突き刺さり光と共に悪魔が消滅する。
そのまま地面に着地し立ち上がる。息は荒れ、視界も多少グラつくが問題ない。俺は再び悪魔共に向き直り言い放つ。
グレン「お前ら俺を殺したいんだろ!?だったらもっと本気でこいよ!じゃねぇと俺が一瞬で終わらせちまうぞ!!」
自らの闘志を奮い立たせる。ここで俺が一瞬でも弱気になったら一気に潰される。そうなったら終わりだ。
「グワァァァ!!!」
「ギャァァァ!!!」
「コロス...コロス!!」
悪魔共がいっせいに襲いかかる。もはや敵は俺だけともいうように。
グレン「...すぅ、はぁぁぁ....」
深呼吸をする。もう腹は決まってるんだ。俺の闘志は止まることはねぇ。
グレン「うおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!」
叫びとととに悪魔の軍勢に飛び込む。俺は止まらない、勇者として、人類の希望として、この悪魔共を一匹残らず...
ー殺す
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ーーーーー
回想
数時間前...魔王城の跡地。
カル『ふざけるなグレン!ここまで来て俺様がお前を見捨てるとでも思ってんのか!?』
ミナ『そうよグレンくん!私達仲間でしょ!?』
グレン『そういってくれるのは仲間として嬉しいがな、戦いとしては邪魔だ』
カル『なっ...!?』
ミナ『っ...!?』
2人の顔は信じられないといった表情をしていた。それもそうだ、今まで信頼して一緒に戦ってきた仲間にそんなことを言われれば嫌でもそうなるだろう。
カル『てめぇグレン、それ本気で言ってんのか?』
怒りと驚きが混じった声でカルが聞いてくる。
グレン『逆に聞くがカル。この状況で冗談言っているように聞こえるか?』
俺は冷たい目でカルを睨みつける。
冗談ではないことを悟ったのか、カルは怒りを上げ俺に迫った。
カル『グレン...本気で言ってんなら悪いが俺様は逃げる気はねぇぞ』
グレン『........』
『そうよグレンくん。私達がグレンくんだけ置いてくわけないでしょ?一緒に戦うわ』
ミナも杖を振りかざし戦う意思を見せる。
まったく...どうやら俺の仲間達は相当なお人好しのようだ。こんな悪魔の大群、死ぬ確率の方が高いって言うのに...
だからこそ...だからこそこいつらを死なせるわけにはいかない。もう二度と目の前で"仲間を失う"のは懲り懲りだ。失うのは、俺の命だけでいい。だからこそ俺は...
グレン『...はっ、仲間?ふざけてんのか?』
俺は気持ちとは裏腹に冷たい言葉を吐いていく
グレン『てめぇらは俺を仲間だと思っているようだが俺はこれっぽっちも思ってない』
思ってもいない言葉が次々と出てくる。あぁ、これ程心苦しい嘘を付いたのは初めてだ。
グレン『お前らは俺にとって道具でしかないんだよ。その道具がもう使い物にならないと俺は判断した』
胸が苦しい...今すぐにでも否定したい気分だ。だがここは堪える、仲間を死なせないためにも
グレン『だからもう用済みだ。とっとと使えない道具は目の前から消えろ』
いい切った、これでこいつらも俺に失望し離れてくれるだろう。そう思ったんだが...
カル『ぷっ...その状況でそれはねぇだろ。バレバレだっつーの』
グレン『は?』
カルの答えに思わず反応してしまった。割と迫真の演技だと思ったんだがどうやら見破られてしまったらしい。何故だ
ミナ『確かにグレンくんの言い方にはムカついたけど、この大量の悪魔に囲まれた状況、私達じゃどうにもなりそうになかったからそんなこと言ったんでしょ?この状況で本当は仲間と思ってなかったーなんて言われてもね』
...まいったな、そこまで見透かされているとは。まぁ確かによく考えれば本当に仲間と思ってないならわざわざ逃げろなんて言わないで自分だけ逃げればいい話だしな。
わざわざ自分が残るメリットはない。仲間を逃すのに必死でそこまで頭が回らなかった。
ミナ『それにグレンくん嘘下手だし。嘘付いてる時とても悲しい目をしてたよ』
グレン『ぐっ...』
どうやら迫真の演技だと思っていたのは気のせいらしい。俺に演技の才能は無かった。
カル『こういう時こそ俺様達を信じろよ』
カルがニッと笑う。
グレン『はぁ...わかった』
俺は決意し2人に呼びかける
グレン『そんじゃ行くぞカル、ミナ。悪魔共を殲滅する!』
カル『おう!』
ミナ『えぇ!』
2人が構える、基本は前衛は俺とカル、ミナは魔法で後方支援をする陣形を組むがその前に俺はミナに指示を飛ばした。
グレン『ミナ!後方に岩の壁を作ってくれ!』
ミナ『え?なんで?』
グレン『後ろから攻撃されると厄介だからな、そのための戦略だ』
ミナ『了解!』
グレン『後カルはミナと後方に下がれ!』
カル『はぁ?なんでだよ』
グレン『ミナの魔法展開が済むまでだ!早く!』
カル『お、おう、わかった!』
もっともな意見を出しカルを後方に下がらせる。それと同時に自分の懐に手を忍ばせる。
そう、俺は決意したんだ...だがその決意は仲間と一緒に戦うことではない...仲間を必ず生還させる決意だ。
俺は懐から転移魔法石を出し起動させる。魔法石は青く発光し魔法陣を展開させ転移の準備段階に入った。
そしてカルの方に向けその魔法石を投げつけた。
グレン『受け取れカル!』
カル『はっ!?なんだこれって...まさか!?』
カルが受け取った瞬間カルとミナに魔法陣が展開し青いオーラが包み込んだ。
カル『くそ!グレンてめぇ最初から!』
ミナ『嘘でしょグレンくん!?』
転移魔法石に気づいたもののもう間に合わない。みるみる2人を青い光が包み込む。
グレン『じゃあな、2人とも。楽しかったぜ』
『グレン!』
『グレンくん!』
名前を呼んだその後に青い光と共に2人は姿を消した。おそらく転移に成功したのだろう。
転移先はここから最低でも5日はかかる距離はある。2人が仮に戻って来たとしてもこの戦いは終わっているだろう。
悪魔『グルルル...!!』
さっきの光で悪魔共が集まったのだろう。気がつけば陸も空も一面悪魔だらけになっていた。
グレン『待たせたな、じゃあ始めようか...クソ悪魔共が!』
剣を掲げ敵を迎え撃つ。その姿はまるで光の勇者のようであった。
.............
転移先に着いたカルとミナは街の人に祝福をあげられていた。
『英雄達の帰還だー!!』
『今夜は宴じゃー!』
カル『......』
ミナ『......』
当然2人はそんな気分ではない。街の人には構ってられず急いで街を出ようとする。
街の人『ちょ、ちょっと待ってください2人とも!どうしたのですか?』
カル『くっ、どけ!俺様達はまだやるべきことが...!!』
街の人はポカンとし少し真面目に尋ねてきた
街の人『魔王を倒したのではないのですか?』
カル『それは...魔王は確かに倒したが...』
街の人『おお!やはり英雄の帰還でしたか!ですがやるべきこととは?というか肝心の勇者様がいないようですが...』
カルはミナに頷きその時起こった事情を説明した。
街の人『なんと、悪魔がそんなに...』
カル『あぁだから早く戻らねぇと!』
ミナ『...ねぇカル、グレンくんはもう...』
ミナが俯き、諦めを含んだ言葉をいう。
ミナ『ここからどんなに早く行っても5日はかかる。その時にはもうグレンくんは...』
カル『...うるせぇ!』
カルも心の底ではわかっていた。どう考えても間に合わないことは。あの悪魔の数だ、いくら勇者が強くても限度ってものがある。おそらく生き残る確率は...ほぼゼロ。
カルも頭ではわかっているが感情がそうはさせない。
カル『それでも俺は行くぞ!ここで行かなかったら本当に見捨てた事になっちまう!』
ミナ『...わかった、私も行くわ。私も気が気でないもの。おじさん、馬車借りるわね。』
街の人『そ、そりゃもちろん!』
ミナも決心し街の出口へ足を運ぶ。
ミナ『一応生き残りの悪魔対策のために聖水も持っていきましょうか』
カル『あぁ...』
カルも気が気でない様子だ。当然だ、あんな突然別れを告げられて死同然の道を行く仲間を見捨てられるはずがない。もし...考えたくもないけど、死んでいたとしても、必ず死体は持ち帰ってお墓を立てる。それだけは絶対にしよう。
カル『あの野郎、会ったら軽くぶん殴ってやる』
ミナ『そうね、少し叱ってあげないと』
私達を想っての行動なんだろうけどそれでも一緒に最後まで戦いたかった。だから一度離れても絶対に戻るよ。グレンくんを絶対に助けるんだから。
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そして現在…
仲間を逃して...あれから1日経っただろうか。
朝日はすっかり登っており辺りは明るくなっていた。
悪魔の数もさっきまで周りを覆い尽くすほどにいたのに、今や数体の悪魔が地に伏せ、浄化されかかっているだけだった。
悪魔「グワァァァ....」
悪魔が唸り声を上げながらもがいている。当然だ、神力を秘めた剣で斬られれば悪魔にダメージが通るのだから。だが...
グレン「...おい」
上級悪魔の左胸辺りを足で踏みつけ動けなくする。そして目玉に剣を突き刺した。
悪魔「グワァァァ...!!!」
悪魔とは思えない悲鳴をあげる。まったく嘆かわしい...なんで悪魔如きが悲鳴をあげる?こいつは人ではないのに、ふざけたことをする。
悪魔「グゥゥゥゥ...ニンゲン...ガ...!」
グレン「あぁ?なんか言ったかクソ悪魔」
悪魔「グワァァァ...!!」
剣で更に目玉をぐりぐり抉る。快感だ、さっきまで勝ち誇っていた悪魔共がたった1人の人間に敗北したのだ。散々人間を見下していた悪魔が1人の人間に全滅させられた。悔しいだろう、そう思うと自然と笑いが止まらなくなっていた。
グレン「はっはっは!!雑魚共が!死ね!死ね!!」
疲れが限界を超え気がおかしくなっているのか、どす黒い感情が精神を侵す。俺は自分が何故こんなことをしているのかわからなくなっていた。
踏みつけている悪魔に何度も何度も何度も何度も笑いながら剣を突き刺し続ける。その衝撃で飛び血が身体中に付く。
側から見ればどちらが悪魔なのか...今この瞬間勇者としての神々しさがまるでない。
やがて悪魔は神力で浄化され消え去った。
まだだ...まだこんなんじゃ足りない。
世界にはまだ隠れ潜んでいる悪魔共がいるはずだ。それを根絶やしにしないと気が済まない。
殺意と憎悪が膨らむ。やがて悪魔を殺すことだけが目的になっていった。
グレン「くそ悪魔共を...皆殺しにしなきゃ...あ?」
首元から小さな物が地面に落ちた。
地に目を向けるとそこには銀のペンダントがあった。
グレン「こ...れは...」
それは俺がいつも首にかけているペンダントだった。俺の命よりも大事な物...俺が一番守りたかった人の形見。と、そこでふと我に返った。
グレン「...っ!!」
なんだ、さっきの俺の行動は。まるで別人になった気分だ...生死を彷徨い続けておかしくなってしまったか...?
悪魔を殺していると徐々に思考が鈍くなっていく感覚はあった。やがて殺意が芽生え、それが膨らみ抑えきれなくなっていった。
自分の精神状態が正常ではないことを知ってしまった。
グレン「ん...?がはっ...!!」
我に返ったのも束の間、急に身体中に激痛が走り吐血する。さすがに身体を酷使しすぎたのかもしれない。限界点を突破し続けてきたんだ、無理も無い。むしろここまで良く持った方である。
身体中の神経が切れたように力が抜けてそのまま地面へと倒れていく。
グレン「はぁ...はぁ...」
もはや体を動かすことも言葉を発することも出来ない。これは嫌でもわかる、死が近づいてきているのだ。
痛い、痛い、苦しい、重い、冷たい、痛い
色々な感覚が同時にやってきて気持ちが悪い。死ぬのがこんなに苦しいなんて、通りで人は死を恐れるわけだ。こんな経験二度は味わいたくないだろう。
しばらくすると色々な感覚が麻痺してきた。そろそろ死ぬのだろうか。長かったようで短かった勇者の旅...願うならば勇者以外の人生も歩みたかったな。
他の人生を送るなら何がいいだろうか。田舎町でのんびり農作業?それとも大きい国に行って騎士団にでも入るか?気ままに冒険者ってのもいいな。
それよりもあの2人は無事なのだろうか。俺の故郷は今どうなっているんだろうか。
色々な思いを馳せていく内に視界が霞んでいく。あぁもう終わりか...せめて次の人生くらい考えさせてほしかったな...
身体から力が抜けていく、まるで魂か抜けるかの様に。この人生に悔いが無いと言えば嘘になる。いや、悔いだらけだ。だが、叶うならばもう一度...あいつに想いを伝えたかった...
そうして俺は完全に意識を失った。
..............
...なんだか身体が軽い。俺は死んだのか?にしては意識がはっきりしてる気がするな。どういうことだ?
すると頭の中から声が聞こえてくる。
「...ないで」
...は?なんだ今の声は。明らかに俺の声ではない。そもそも聞こえたのは女の子の声だ。
誰か、いるのか?
もう一度声が聞こえてくる。
「...死なないで」
死なないで?馬鹿言うな、俺はもう死んでる。タチの悪い幻聴だ、いいからさっさと俺をあの世に連れて行ってくれよ。
意識が再び薄れていく、ようやく本当に死ねるようだ。まったく無駄に焦らしやがって。ようやく輪廻の旅に行けるってもんだ。
意識を失う直前、また声が聞こえた気がした。
「ー死なないで。」
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魔王を倒してから5日がたち、目的地に着いた私たちはその光景をみて驚愕してしまう。これは運命なのだろうか、それとも私たちだけが生き残ってしまった報いなのだろうか。
一面血で赤く染まった魔王城の跡地
そしてそこに、勇者の姿は無かった。
プロフィール
グレン=ヴァーミリオン
本作主人公ポジ。18歳、白髪の青少年。勇者。
カル=ラッセル
斧槍を扱う戦士。大柄な男で超脳筋。戦闘の腕は一流。
ミナ=エルラン
色んな魔法操る女魔法使。小柄な体型、意外と気にしてる。怒らせると怖い。
魔王
悪魔を生み出した元凶。悪魔の長。討伐済み。
悪魔
魔王の血から生まれた有象無象。姿は弱いほど獣に近く、強いほど人の姿に近くなり知能も高くなる。
前に書いてたものをss風に直して書きました。ほぼ思いつきです、ご了承ください。
このSSへのコメント