2014-09-12 14:02:32 更新

<23話-2>



 計佑達がバス停についても、硝子の姿はなく。

そして、バスが来る時間になっても硝子は現れず。

多分今は顔を合わせたくないのだろうと、諦めてバスに乗って。

 学校に戻って、夕方になって、アリスや茂武市が合流して──その頃になって、ようやく硝子は戻ってきた。

といっても、硝子は明らかに計佑の事を避けていた。

 雪姫に対しては、昼間の事は戻ってきて早々謝ってきたそうなのだけれど、

計佑に対しては、そんな事は一切なく。

 計佑の方から硝子に話しかけようとしても、

常に茂武市かアリスといるか、すぐに逃げ出すかで、深い話を出来る状況には決してしてくれなかった。

 そして日が完全に暮れて、

夕食を終えても未だ話をさせてくれない硝子に、ついに痺れを切らした少年がとった手段は──


──……なんかちょっとストーカーぽくてアレだけど……もうこんなんしかないじゃん……


……シャワー棟の出口前での、お風呂上りを待ち伏せする事だった。


──いやいや、一応ボディーガード的な意味もあるにはあるし!!


 夜とはいえ、学校の敷地内でそんな必要があるかは微妙だったけれど。

とにかく、計佑は今、シャワー棟そばのベンチに腰掛けて、硝子が出てくるのを待ち受けていた。と──


 ガチャリとドアの開く音がして、一人の少女が姿を見せた。計佑は慌てて立ち上がって、


──……え……誰……?


 一瞬、誰だかわからなかった。


──……あっ!? すっ須々野さんなのか!?


 髪を解いていて、メガネもつけていない硝子は、普段の印象とはまるで違っていて。

いつもよりずっと大人びて見える雰囲気と、なんだか凛々しさを感じさせる顔つきにしばらく見とれてしまった。

 そして、硝子もまた入り口を出てすぐのところで、計佑のほうを見つめたまま立ち尽くしていたのだけれど──

やがて、警戒するように身を竦めるとこちらを睨んできた。


「……目覚くんじゃ、ない、の……?」

「えっ、あっ!? そ、そう、オレだよ、目覚だよ!!」

「……なんだ、やっぱり目覚くんか……じっと黙ってるから、まさか違う人なのかと思った……」


 計佑がようやく口を開くと、硝子がほうっと溜息をついて、肩の力を抜くのが見て取れた。


──あ、そっか……メガネかけてないから、オレだってわかんなかったのか……


 謝りに来たのに、出だしからまたミスしてしまった。


「ご、ごめん……ホント俺気が利かなくて……待ちぶせみたいなコトしといて、

それなのに声もかけずに怯えさせたりして……」

「……ううん。こういうこともあるんじゃないかな、とは予想してたから……

私も、覚悟は決めて出てきたんだ……」


 計佑の謝罪に、硝子が俯いて答えて。メガネをかけると、顔を上げて問いかけてきた。


「……それで? どんな話なの?

……天文部をやめろ? これっきり絶交とか……?」

「ええぇ!? なっなにそれ!? 須々野さんそんなに怒ってるのっ!?」


 寂しそうに苦笑を浮かべながら言う硝子に、大いに慌てた。


──たっ、確かに須々野さんめちゃくちゃキレてたけど……!! まさか、そんなに後を引いちゃうなんて……!!


 ヒスを起こしても、結局はいつだって機嫌を直してくれるまくらや、

なんだかんだで優しい雪姫にばかり慣れてしまっていたのだろうか。


──普通は、女のコってキレさせたらもう終わりなのか……!?


 まさか、部活をやめるとか、絶交なんて話を切り出されるとはまるで予想していなかった少年が、そんな絶望感に襲われた。

 けれど、そんな計佑の反応に、硝子が怪訝そうな表情を浮かべた。


「……え? いえ、私じゃなくて、目覚くんのほうが怒ってるんでしょう?」

「い、いや違うよ!? オレは、昼間のことをちゃんと謝りたくて」


 咬み合わない会話に、きょとんとなる二人。……そして、先に口を開いたのは硝子だった。


「……なんで?  なんで私に謝る必要があるの? 目覚くんが謝らないといけないのは、まくらでしょう……?」

「いや、まくらにも勿論謝るよ。須々野さんに怒られた後、すぐにメールで謝ったし、

明日の朝、まくらが来たらちゃんと面と向かっても謝る。 ……でも、須々野さんにもちゃんと謝らなきゃいけないから」


 硝子の疑問に、計佑が答えた。すると硝子は、計佑から視線を逸らして、


「……だから、どうして私にも、なの? 私なんて、あんなに酷い事を言ったのに……」


 苦しそうな声で、また同じ質問をしてきた。

それに対して計佑は、まっすぐに硝子に向かって頭を下げた。


「須々野さんは、まくらのために、あんなに怒ってくれたんだよね。

気付きもしないで、失礼な態度とってごめんなさい。

須々野さんが教えてくれなかったら、オレはまくらを傷つけた事にも気づけなかったと思う。

……本当にありがとう。そして、本当にごめんなさい。

オレがバカだったせいで、あんなイヤな役回りさせることになってしまって。

……須々野さんは、もうオレに愛想つかしてるのかもしれないけど、

出来れば、その……なんとか許してもらって、まくらだけじゃなくて、オレの友達も、続けてほしい、んだけど……」


 頭を下げたまま、最後まで言い切って。

それでもまだ頭を下げ続けたまま、硝子からの返事を待った。

……やがて、硝子が歩み寄ってくると、肩に手をかけて、計佑の身体を起こしてきた。


「須々野さん……?」


 顔を上げると、硝子が涙を浮かべていて。それに戸惑った。


「……今度こそ、もう終わりかと思ったのに。

目覚くんのあんな怖い顔初めてで、無視までされて、今度こそもう、って……」

「うっ……ほっ、ホントにごめんなさい……!!」


 あの時の事を思い出しているのだろう、悲しそうな顔をする硝子に、慌ててもう一度頭を下げる。

けれど、頭を下げる途中で、硝子が計佑の肩を押さえてそれを止めた。


「いいよ、頭なんて下げなくて……謝らなきゃいけないのは、私のほうでしょう?」


 そう言った硝子が、逆に深々と頭を下げるので、今度は計佑が慌てて硝子の肩に手をかけて、頭を上げさせた。


「ちょっ、ちょっと!? なんで須々野さんが謝るのさ!?」


 慌てる計佑に、硝子は涙を拭いながら苦笑を浮かべた。


「確かに、まくらのために怒ってはいたけど。

……あそこまで酷い事言ったのは、目覚くんの反応が見たいって気持ちもいくらかあったから……」

「……オレの反応?」


 なんの話だかわからなかったけれど、それは大して気になる事ではなかった。


「……よくわかんないけど、一応許してはくれる……ってこと、かな?

これまで通り、部活も続けてくれるし、絶交なんかもなし……?」


 恐る恐る確認すると、硝子が軽く吹き出した。


「ぷっ……あはは。よくわかんないのに、そこは気にしないんだ。……やっぱり目覚くんには敵わないね……」


 そして今度は、はっきりと笑顔を浮かべた硝子が手を差し出してきて。計佑の手を握った。


「……うん。これからも、またよろしく、目覚くん……」

「うっうん!! よろしくねっ、須々野さん!!」


 握手した手をぶんぶんと振って、弾んだ声を上げる計佑に、また硝子が吹き出して。


──そんな風に、二人が暖かな雰囲気に包まれていたところで、

シャワー棟のドアが小さな音をたてて、少しだけ開いた。


「しょ、硝子ちゃ~ん……ちゃんと待っててくれてるよね~……?」


 少しだけ開いたドアの向こうから聞こえてきたのは、不安そうな雪姫の声だった。


「あっ、はい!! ちゃんと待ってますから。大丈夫ですよ、白井先輩」

「あっ、うんっ。ごめんね、もうちょっと待っててね」


 返事をした硝子に、雪姫が安心した声を出して。またすぐにドアが閉じた。


──あ、先輩も入ってたんだっけ……で、待っててくれって須々野さんに頼んでいたワケか……


 怖がりな雪姫の事だから、校舎から離れたシャワー棟に一人きりなんて耐えられなかったのだろう。


「……あ、じゃあオレは先に戻ってるね」


 硝子がついてるなら、雪姫のことは大丈夫だろう。

 お風呂上がりを待ち受けているというのも、

なんだかあまり褒められた物ではない気がしていたので、戻ろうとしたのだけれど。

 踵を返そうとした瞬間、硝子が何かを思いついたような顔をした。


「……ねえ、目覚くん。本当に、私に悪い事したって思ってる?」

「えっ? い、いやそれは勿論……本当にごめんなさい」


 また頭を下げようとしたところで、それは硝子が止めてきて。


「ううん、ごめんなさいはもういいの。……でも、本当にそう思ってるんなら、

一つ頼みっていうか……罰ゲームみたいなもの、受けてみてくれる……?」

「……え、罰ゲーム……?」


 上目遣いの硝子に、正直なところ警戒心が湧いた。

硝子の場合、罰ゲームなんて軽い言葉を使いつつも、

実は結構大変な事では──という不安が胸をよぎったのだった。


「うん。……後で、私が尋ねるコトに、頷いてくれるだけでいいんだけど……」

「……え?  それだけ……?」


 随分と簡単そうな罰ゲームに、拍子抜けした。


「なんだ、そんなコトくらいなら全然。それで許してくれるっていうなら全然いいよ」

「ううん、別に拒否してくれてもいいんだよ?  後で『やっぱりこれは無理!!』

ってなっても、許さないとかはないから、そこは安心してね?」


 安請け合いした瞬間、硝子の目がキラン!! と光った気がしたが、そんな光は一瞬で消えて。

後の言葉は、いつも通りの優しげな表情で硝子が言ってきた。


「じゃあとりあえずは、黙ってそこで待っていてね?」

「…………」


 コクンと無言で頷いてみせると、硝子はシャワー棟へと踵を返して。

ドアを少し開いて、中を覗き込みながら、


「白井先輩。私、ちょっと急いで戻らないといけない用事ができちゃって……すいませんが、先に戻りますね」

「えええ!? うっうそっ!! やだやだっっ、待ってよ硝子ちゃんっ!?」


 二人の会話は、計佑には今ひとつ聞き取れなかったが、雪姫の声が何やら焦った様子なのはわかった。


──え、須々野さん……一体なに……?


 不審に思って少年が尋ねようとした瞬間、顔を戻してきた硝子が唇に人差し指を当てて

『まだ黙っていて』と伝えてきた。


……そして、素直にそれに従ってしまうのが、この少年だった。


 そんな計佑を確認した硝子が、また中を覗きこんで。


「……3……に~……いーーーち……すいません、もう待てません」

「や──!!」


 硝子の言葉は、やっぱり計佑にはよく聞こえなかったけれど、雪姫の悲鳴が聞こえかけた気がした。

けれど、硝子がドアを閉じてしまったせいで、やはりはっきりとは聞き取れなくて。

 そして硝子は、素早くドアから数歩離れると。一瞬だけ、ニヤリとした笑みを計佑へと向けてきた。

今ひとつ訳がわからない計佑だったが、次の瞬間、


「やあああ!? まって待ってまって硝子ちゃあああ──!!?」


 バァン!! と扉が開け放たれて、中から雪姫が飛び出してきた。そして躓いて、


「っ! 危ないっ!!」


 転びそうになった雪姫を、ドアの前で待ち構えていた硝子が支えた。


「……っ……! あ、ありがとう硝子ちゃ、ん……」


 硝子に礼を言って身体を起こした雪姫が、計佑に気付いて、そこで固まった。


「……け、計佑くん……?」


 呆然と呟く雪姫。そんな雪姫を、計佑からもはっきり見えるように硝子が身体をずらす。

 そして雪姫の姿をはっきり認めた計佑も、呆気にとられていた。けれど、次の瞬間、


「ぶっ……!! くくっ……!!」


 計佑はつい吹き出してしまった──涙目になっている雪姫の格好が、あまりにも滑稽だったから。

 いつもは絹のように、真っ直ぐ綺麗に伸びている髪が、今はグチャグチャで。

前髪もうねりくねって額にベチャリと張り付いていた。

その頭に、クシャっと乗せられたタオルもまた、愉快なアクセントになっていて。

そして極めつけは、Tシャツの、頭を通す穴から、頭だけではなくて左腕まで一緒に飛び出していて──

片腕だけバンザイしている様な状態だった。


「うっ……く、くくっ……」

「ぷっ……ふふ、ふっ……」


 計佑と硝子が二人揃ってお腹を抱える姿に、ようやく雪姫も我に返った。


「──いやああああああ!!!??」


 雪姫がシャワー室に飛び込んで、ドアが乱暴に閉められて。


──そして、もう笑い声が聞かれる心配がなくなった二人は、それから存分に笑い転げるのだった。



─────────────────────────────────



──やがて、再びドアが開いて。今度は静かに、『いつも通りの美しさの』雪姫が出てきたのだけれど──


「……なんで、計佑くんがここにいるの……?」


 完全に、不機嫌になっていた。


「あっ、ええとその……須々野さんに話があって、ですね……話し込んでいたらその、こんなことに……」


 慌てて頭を下げたのだけれど、雪姫の膨れた顔はそのままだった。


「……ふーん……そのついでに、私にあんなイジワルをしてきたってワケなんだ……」


 プイっと顔を背ける雪姫。

 大好きな少年に、みっともない姿を晒して、大笑いされる羽目になって──

そしてそれが、肝心の少年もグルのイタズラだと考えた雪姫としては、

二重の意味で不機嫌になるのも当然ではあった。

 けれど、計佑としてはまさかの濡れ衣に慌てるしかない。


「いっいや!? 違いますよっ、別に意地悪なんて! オレはただ須々野さん──」

「──すいません、白井先輩。目覚くんが、どうしてもこのイタズラを仕掛けたいって頼み込んでくるものだから」

「ええええぇ!!?」


 慌てて弁解しようとしたところでの、硝子の割り込みに完全に泡を食う。


「ちょっちょっと須々野さんっ!? 一体──」

「──そうだよね、目覚くん?」


 硝子が、ニッコリと微笑みかけてきた──そして、ウインク一つ。


──……あぁっ!? まっまさか、さっき言ってた罰ゲームって……!?


 ようやく理解した少年が、戦慄した。


──や、やっぱり須々野さんの罰ゲームが簡単なワケなかった……!!


 今さら、安請け合いした事を後悔しても遅かった。


「ふーん……ふぅぅ~ん……そうなんだ……硝子ちゃんに頼み込んでまで、また私をイジめたんだ……」


 ジト目の雪姫が、腕組みをして計佑を睨みつけてくる。


──うおおおお!! たっタチが悪すぎるよ須々野さんっ!!!


 ダラダラと脂汗が流れる。

ついこないだも、まくら曰く『死刑モノ』な失態の数々を重ねたばかりだというのに。

今度こそ、無実の罪を被れというのか──あまりの "罰ゲーム" の厳しさに、完全に凍りつく計佑。


 認めれば、雪姫との仲が。否定すれば──硝子はそうしてもいいとは言っていたが、それでも──硝子との仲が。

単純に、雪姫と硝子どっちをとるか──だったら、正直硝子には悪いが、計佑にとっては雪姫だったけれど。

 けれど、この事態はそう単純でもなかった。

もし否定すれば、自分と硝子の仲だけではなく、雪姫と硝子の仲までおかしくなる可能性があった。

ただでさえ、昼間自分のせいで、硝子と雪姫の仲がおかしくなりかけたのだ。

これ以上、硝子に迷惑をかける訳にはいかない──そう考えた律儀な少年がとれる選択肢は、


「……はい、すいませんでした……」


 結局、一つしかなかった。

 そして、計佑がそういう考え方をするであろう事を、最初から見越して仕掛けた策士が満足そうに微笑んだ。


──のだけれど。


「……いやっ、本当にすいませんでした!

怖がってる時の先輩ってスゴく可愛かったもんだから、ついまた見たいなぁなんて思っちゃって!!」


「えええっっ!!??」

「はああああ!!??」


 雪姫と硝子が、それぞれ違う種類の驚きの声をあげて。結局、天才は腹黒策士の上をいってみせる。


「なっ、なに言ってるの計佑くんっ!? そ、そんなコト言ったって許してなんかあげないんだからねっ!?」


……テンプレツンデレゼリフを口にしながらも、もう表情がゆるんできている単純少女。そんな少女に──


「いやっ、やりすぎちゃったのは本当にすいませでしたっ!!

でも、普段は見れないような先輩の姿を見せてもらえて、なんだか距離が近づけたような気がして、嬉しかったです……」


 計佑は顔を赤くしながらも、しっかりトドメをさす。

 とっさの言い訳──それも硝子のせいでのでっち上げの筈なのに、

本音を混ぜつつ、口説きにかかるような真似まで天然でやってしまえる所は、もう流石としか言い様がない。


「くっ……この天才は、ホントにっ……!!」


 そして、一瞬でピンチをチャンスに切り替えた少年に、硝子は苦りきった顔つきで呻いて。


「も、もぉ……ホント、しょうがないなぁ……こういうイタズラを許してあげるのは、今回だけなんだからね?」


 恥じらいながらも、もうすっかりご機嫌な顔になった雪姫がそう口にした。


 そして、赤い顔をした雪姫が弾むような足取りで計佑に近づいていって。

 対照的に、不機嫌になった硝子は踵を返した。

もうこの場にいても、自分にとっては面白くないものしか見れはしない──そう硝子は考えたからだった。


……しかし、硝子はまだ知らなかったけれど──


「そっ! そういえば、須々野さんって髪おろして、メガネかけてないと全然印象違うよね!?

すごく美人だったから、メチャクチャびっくりしたよ!!」


──この少年は、上げてから落とすのもまた得意なのだった。


「……は……?」


 計佑の言葉に、怪訝そうに硝子が振り返ると、


「……え……?」


 雪姫がポカンとしていた。

まあ、自分を口説くような事を言ってくれていた筈なのに、

突然その矛先が他の女に移ってしまったのだから、無理もなかったけれど。


 硝子としては、上げてから落とされた雪姫の顔が唖然となるのは小気味良くあったが、

計佑が照れ隠しに言い出した事でしかないのはわかりきった事で。だから、


「……目覚くん、そんなとってつけたお世辞なんて、かえって失礼なんだけど……」


 そう言って硝子は計佑を睨みつけてみせたのだが、


「いやいやっ、お世辞なんかじゃないよ!

須々野さんがさっき出てきた時、オレなかなか声かけなかったでしょ?

あれだって、須々野さんに見とれてたからなんだよ?」


──そう、こんな事を言い出したのは確かに照れ隠しからではあったが、

言葉の内容自体は本気で言っている所が、本当にタチの悪いこの少年らしい、天然たらしぶりだった。


「白井先輩に負けないくらい大人びててさっ、

それに先輩とはタイプ違うけど、カッコいい感じの美人っていうか……」


 そして、好きな人に本気で褒められてしまっては、不貞腐れていた筈の硝子も頬に赤みが差すのは無理もなかった。

しかも、雪姫のことを引き合いに出して、見事に硝子のコンプレックスまでも的確に突いてみせているのだから。


「……ほ、本当に……そう思ったんだ……?」


 垂らした左手のヒジを右手で掴んで、斜めに俯いた硝子が計佑をそっと見上げて。

……腹黒乙女も、結局は天才たらしに撃墜されてしまうのだった。


「本当本当! オレみたいな奥手男が、そんなお世辞とか言えるわけないじゃん!!」


 そして少年は、ますます硝子への攻撃を続けて。雪姫がどんどん俯いていく事には気づかない。


──せっかく罠から逃れたというのに。

愚かにも自分からピンチを作り出して、また飛び込んでいく少年だった……


─────────────────────────────────


 そして黙りこんでしまった雪姫を他所に、計佑と硝子との会話は続く。


「どうしてコンタクトにしないの、須々野さん?」

「……私、目つき悪いから……誤魔化すためにもメガネでないと……」

「ええ、そうかなぁ? キリっとした感じの美人だから、きっとモテると思うんだけどなあ……」

「……もっ、もういいから! わかったから、もう褒め殺しはやめて……」


 くるりと硝子が身体を翻した。……けれど、後ろからでも、耳が赤いのがわかった。


──あれ、これはもしかして……?


 硝子の前に回りこんでみた。慌ててまた硝子が後ろを向く。

しかし、その直前の一瞬で硝子の顔色はしっかり確認できた。


──須々野さん、顔真っ赤だ……!


 落ち着いている優しい雰囲気の時か、いきなり怖い顔をしてみせるかの

極端な2パターンが多い硝子だったけれど、こんな状態の硝子は初めて見る気がして。

……だからだろうか、イタズラ心が芽生えてしまった。


──いやいや、さっきのキツすぎる罰ゲームのお返しだと思えば……!


 硝子が打たれ弱いのはわかっているし、いじめるような下手な仕返しは出来ない。

けれど、こうやって褒め殺しにかかる分には、なんだかんだで悪い気ばかりじゃあない筈で。

そして何より、いつも一方的にやられてきた硝子を、今度こそやり込められるかも……!

 そう考えて、根は結構Sな少年が、硝子へと牙を剥いた。


「……あれ?  須々野さん、なんか顔赤くなってない……?」

 

 またも前に回り込みながら、わざとらしく尋ねる。


「なっ、なってない!!  いいからもう、ほっといて……!!」


 またもくるりと回る硝子を、後ろからニヤリと見つめる。硝子の耳に口を近づけて──


「──須々野さんって、こんなに可愛かったんだ……美人なだけじゃなかったんだね」


 ビクっと震える硝子の身体。笑いがこみ上げそうになったが、どうにか堪えて、さらに攻撃を重ねる。


「耳まで真っ赤じゃん……そういうカワイイところ、すごくいいと思うよ」


 ぎゅうう……!! っと硝子が身体を縮めた。そしてブルブル震え始める姿に、また吹き出しそうになる。


──あはははは! 面白いっっ!! ……そっか、こういう感覚なのかっ? 先輩がオレをからかう時のも……!!


 異性をからかう面白さにまで目覚めて、ますます凶悪になってしまった天然たらし。

……しかし、考えていることは相変わらずのズレっぷりだった。

雪姫が計佑をからかうのと、今自分がやっている事ではその意味合いがまるで違うというのに。


 いずれふらなければいけない相手を口説いてみせる。それも、応えようと考えている人の目の前で、だ。

──もはや鈍感を通り越して、恐ろしいほど色々と間違ったまま突き進む少年。


 そして、そんな少年にとうとう耐え切れなくなったのか、硝子が突然足早に歩き出した。


……のだけれど、ドSモードに移行してしまった少年は、すぐに追いついて、あろうことか硝子の腕まで捕まえて。


「……どうして逃げるの須々野さん? オレ、なんか悪いこと言ったかなぁ?」


 ドS魂全開で、わざとらしくそんな風にまで尋ねてみせる。

 硝子は逃げる事も許されず、腕まで掴まれてしまった状態に、とうとう完全に限界を迎えた。

掴まれてない方の手を振り回しながら、

──本来なら、今は自分にとって最高に都合のいい状況であるにも関わらず──

逃げるためについ、雪姫の事を口にしてしまった。


「いっいいの目覚くんっ!? 先輩の目の前で、他の女のコの事口説いたりして!!」

 

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 計佑が、硝子を誉めそやし始めて。

硝子の気分が高揚するのに反比例して、雪姫の心はどんどん沈んでいった。


──……またこのパターンなんだ……


 持ち上げてきたと思ったら、また落とすんだ。アリスの時と同じように。

……けれど、心情はその時とは、随分違いがあった。

 

 あの時よりも、ずっと不安で。あの時にはあった怒りがなくて。

そして、あの時にはなかった、ズキズキと胸を締め上げる痛みがあった。

 この感覚には、覚えがあった。今のこの感覚は、もっと前──

旅先からまくらの元へと、計佑が慌てて帰って行った時。

 そして計佑が、まくらの上に馬乗りになってじゃれているのを見た時に感じたような。


──……そうだったんだ。私、アリスに対しては本気で嫉妬していた訳じゃなかったんだ……


 なんだかんだ言っても、結局根っこでは、アリスが本当に恋敵になりうるとは思っていなかったのだと気付かされた。

 だって、アリスを本当にそういう存在だと思っていたのなら。

弱い自分だったら、今のように不安で押しつぶされそうになるばかりで、

慌てふためいてアクションの数々を起こすなんて余裕すら、絶対になかった筈なのだから。


 今回の流れ、恐らく計佑は照れ隠しで硝子も褒め始めただろう事は、前回の事からも察しはついた。

 そして今、計佑が浮かべているニヤニヤとした表情からして、

多分からかう以上の意味はないだろう事も分かりはした。

……けれど、それでも。

計佑が同年代の女の子を褒め続ける所なんて、見たくも聞きたくもなかった。


──……だって、計佑くんはお世辞なんて絶対言ってない。今、本気で硝子ちゃんの事褒めてるんだもん……


 目的はからかう為だったとしても。この少年だったら、本音を口にしている筈で。

 つまり、計佑にとって硝子は

『2つも歳上の雪姫と同じくらい大人びていて、とてもカッコいい美人で、カワイイ女の子』だと云う事なのだ。


 かつて、計佑に "綺麗" と言われた事が、告白への最後の後押しになった。

 あの時の言葉は、ささやかな自信となって自分を支えてくれていたのに。


──……時々私のこと褒めてくれたりしてたのも、本当は、計佑くんにとっては大した意味はなかったんだ……


 先日の公園での、計佑の発言のあれこれを思い返せば、決してそんな筈がないのは分かりきった事だったけれど。

 心までか弱い少女は、不安で心を塗りつぶされてしまい。

硝子と計佑が足早に歩き出しても、項垂れたままその場に立ち尽くしていた。


─────────────────────────────────


「……え……?」


 硝子の言葉で、我に返った計佑が雪姫を振り返って。

それで、怖がりの雪姫が自分たちについても来ないで、離れた場所に俯いたまま突っ立っている事に気づいた。


──し、しまった……!?


 アリスのようなお子様相手にすら、妬いた事がある雪姫なのに。


──これが須々野さん相手って事になったら、先輩どれくらいキレるんだ──!?


 ようやく自分のやらかした愚行に気付いて、


「ごめんっ、須々野さん。しつこく絡んだりしてっ」


 一言硝子に謝って、慌てて雪姫の元へと向かった。

……それに、硝子が複雑そうな顔つきになるが、

もう硝子に背を向けて雪姫の方しか向いていない計佑が気付く筈もなかった。


「先輩っ、あの……!」


 雪姫の元へと駆け戻った計佑だったが、雪姫は俯いたまま顔を上げてはくれなかった。


──む、無視……!!?


 雪姫の事だから、まくらのように鉄拳を飛ばしてくる事はないだろうと思いたかったが、

いつぞやの事を思えば、また脛くらいは蹴られる事も覚悟していた。

 けれど、まさかの無視攻撃は、正直かなりキツかった。


「え、えっと……あの、ですね先輩……?」


 それでも、どうにか反応をもらおうと試みる。

 どんなに雪姫が怒っていようとも、もうヘタれたままにだけはなりたくない。

かつての反省から、少しは進歩した計佑が、そんな思いで雪姫の顔を下から覗き込もうとすると、


「……計佑くんは、誰にだって簡単にキレイとか言えちゃうんだね……」


 ようやく顔を上げてくれた雪姫が、口も開いてくれて。

一瞬、ちょっとだけ安心しかけたのだけれど、その表情を見て、意表を突かれた。

 てっきり、目を釣り上げているか、最低でもジト目くらいにはなってるだろうと思っていたのに。

実際の雪姫の表情は、眉をハの字にした……とても悲しそうな顔だった。

 そんな雪姫が、そっと計佑の裾を掴んでくる。


「……やっぱり計佑くんなんて、ヒドイ女ったらしで、最低のプレイボーイだよ……」


 言葉や口調こそ、拗ねたような感じだったけれど。

雪姫の泣き出しそうな顔を見れば、本気で不安にさせてしまったという事は流石にわかった。


「……ごめんなさい、先輩」


──本当に、まくらの言うとおりだ……確かにオレは死刑もんなんだろうな……


 いつもいつも雪姫の事を傷つけて。

 自己嫌悪と、雪姫への申し訳なさが胸を占めかけたけれど、反省は後回しにして。

今はとにかく、雪姫の事を──


 悲しそうな雪姫の姿に、スイッチの切り替わった計佑が、彼女の耳元へと口を近づけて囁く。

 幸い、硝子はさっきの場所で立ち尽くしたままだ。

だったら、ささやき声が硝子に聞こえる事は絶対ない──そんな風に考えての行動だった。



──そう、確かにこの距離では、小声など聞こえる筈はなかった。

 けれど、計佑が雪姫の耳へと顔を近づけて囁きだした瞬間、硝子の拳がぎゅうっと握りしめられて。

 そして、不安の色に染まりきっていた雪姫の顔から、暗い色が一気に流し落とされていって、

ふわりと花開くように笑顔へと移り変わっていくのを見た硝子が、

ギリッと立てた歯ぎしりの音もまた──計佑たちに聞こえる筈はないのだった。



─────────────────────────────────



 それからしばらくたって、計佑たち五人は今、校舎の屋上へと来ていた。

 ちなみに、顧問はこの場にはいない。

基本的にいつも放任な人ではあったが、夜の活動という事で流石に今回は──

と思っていたのだが、宿直室に伺いをたてにいったところ、

携帯ゲーム機で遊びながら『白井がいるんなら大丈夫だろ、まかせたぞー』の一言しかなかった。

……まあ、いつも放任の顧問にしては、

泊まりの行事に一応付き合って学校まで来てくれただけでも有難いのかもしれない。

 それに、大人抜きで自由にやらせてもらうほうが気楽なのも確かだ。


 という訳で、屋上にシートを2枚敷いて、

2つのグループに分かれて皆寝転がって、天体観測を楽しむことにして。

 班分けは茂武市、硝子の組と、計佑、雪姫、アリスの組となった。

これは、主に硝子の希望が通った形だった。

雪姫としては大歓迎だったし、アリスも問題はなし。

茂武市は、女子と一対一と言う状況に言うまでもなく大賛成だった。

 勿論計佑としても不満がある訳ではなかったのだが、自分たちから随分離れた場所に陣取る硝子の姿に、

『さっきからかいすぎちゃったかなぁ……またちょっと怒らせちゃったのかも』

と微妙に心配にはなっていた。


 まあ、言動はいつも通りの落ち着いた硝子だったから、そんなに強く怒っている訳でもないのだろう、

明日になっても微妙なようだったら、その時に改めてまた謝ればいいか……などと考える少年だった。


─────────────────────────────────


 そんな風に始まった天体観測だったけれど──今、雪姫達の班には、ちょっと不穏な空気が流れていた。

といっても、計佑はまるでそんなものを感じておらず、

アリスは気にしていない……というより、むしろその空気を楽しんでおり。

そういう訳で、微妙な緊張感を醸し出しているのは雪姫だけだった。

 そんな雪姫をそっちのけで、


「おい、アリス……重いとまでは言わないけど、軽いとも流石に言えないぞ……?」

「え~? ケチケチすんなよ……コドモに優しくすんのはオトナの義務なんだろ?」

「そんなコト、言った覚えないっての」


 計佑とアリスが。いちゃついていた。

……雪姫には、いちゃついているとしか思えない有様だった。

何故なら、アリスが寝転がっているのは、なんと計佑の身体の上で。

そして計佑のほうも、アリスの髪に指を通したり、くるくるとその髪を弄び続けて。


……もうこれは、雪姫以外の人間から見てもそうとしか見えないかもしれなかった。


──くっ……!!  落ち着いて、落ち着いて……平常心、平常心……!!


 計佑をベッドにしたアリスがご機嫌な様子で、時折雪姫のほうを伺ってくる。

その様子を見れば、アリスが自分への当てつけで計佑に乗っかったりしているのは分かりきった事で。

 先日の一件以来、

とにかくアリスは自分をからかってばかり来るが、それに慌ててみせたりするから調子に乗っているのだ。

毅然とした態度をとっていれば、面白みがなくなったと、アリスも諦めて計佑に絡む事はなくなる筈で。

だから、今はとにかく我慢だ。


──そうよっ、それに今の私なら、この程度のコト、なんてコトないハズだもん……!!


 ついさっきの、硝子との一件。

 あれではっきりと分かったじゃないか。

結局のところ、自分にとってアリスは本当に脅威という訳ではないのだ。

勿論、面白くはないし、完全に平常心とはいかないけれど、慌てるような事でもないのだ。


──だって、計佑くんはやっぱり、全然アリスのコト意識してないもんね……!!


 指先こそアリスの髪に絡み続けているが、少年の視線も意識も、もう完全に空に釘付けだ。

 それに、さっきかけてもらった言葉もある。

先ほどの計佑の表情と言葉を思い出して、また顔が熱くなった。

 そうして、完全に余裕を取り戻して。

またこちらの様子を伺ってきたアリスに対して、微笑を返してやった。

 その雪姫の余裕に、アリスがむっとした顔になる。


──勝った……!!


 最近は、なんだか立場が逆になりつつあったけれど。

ようやく、以前の関係に戻れたと、雪姫の笑みが深くなった。

 そして、そんな雪姫の表情に、

ますますアリスが頬をふくらませていって──しかし突然、ニマっとした顔つきになった。

 その笑みに、なんだかイヤな予感を覚えてギクリとする。


 次の瞬間、あろうことかアリスは──身体をひっくり返して。計佑と抱き合うような姿勢になってみせた。


──!!!??!!?!!


 声を出さずに済んだのは、ちょっとした奇跡だった。けれど、もはや余裕なんて完全に吹き飛んでいた。

アワアワと口をパクパクさせる雪姫に、アリスが、ますますニンマリとした笑みを深めてみせるのだった。



─────────────────────────────────



「……? おい、アリス。なんだよこれは。うつ伏せじゃあ、星なんて見えないだろ」

「寝返りだよ、寝返り。ちょっとくらい、いーだろ?」


 アリスの突然の "寝返り" で、空から意識を引き戻されてしまった計佑。

流石にその状態は見過ごせずに注意したが、アリスは気にも留めない。


「……といってもなぁ。お前、ホントはもう眠いだけなんじゃないだろうな?」


 今の状態では、計佑からはアリスのつむじしか見えない。

アリスの返事は一応はっきりしてはいたが、その頭は全然動かず、顔は横を向いたままだ。


 まあ、アリスとしては雪姫の様子を楽しむのに忙しくて、計佑に視線を合わせないだけなのだけれど、

そんな事に気付く筈もない少年は、眠いせいで頭を動かすのも億劫なのか? などと考えていた。


「やっぱお前はお子様だよなぁ……なんだったら、無理しないでもうオネムしてもいーんだぞ?」


 からかうつもりで、ニヤつきながらそう言ってみせた。

 それに対して、アリスの事だからきっとキャンキャンと噛み付いてくるだろうと予測していたのだけれど、


「お子様、ねぇ……」


 ようやく顔を上げて、計佑の顔を見上げてきたアリスの表情は、ニヤニヤとした予想外のものだった。


「なぁけーすけ、知ってるか? おねーちゃんって、実はアタシより子供っぽいかもしんないんだぞ?」

「はぁ? あるワケないだろそんなコト」


 確かに、雪姫に子供っぽい一面がある事は知っている。けれど、いくらなんでもアリスよりなんて。


「ありえないですよねぇ、先輩?」


 首を回して、雪姫のほうを向く。


「えっええ!?  そっそうよねっ、ありえないよねそんなコト!!」


 顔を向けた瞬間、何だか雪姫の顔つきが凄い事になっていた気もしたが、多分気のせいだろう。

今はいつも通り……いや、なにやら焦った様子なのがちょっと気になった。


「……どうしました先輩? なんかちょっと様子が……」

「なっなんでもない何でもない!! 私は全然平気だから!!」


 ブンブンと首をふってみせる雪姫に、やはり不審感が湧いてくる。


──といってもなぁ……まさか、またアリスに妬いてるなんてコトはないだろうし……


……正解に一応辿り着きながらも、結局は否定してしまっている少年。

この少年は、先日の『いいよ。計佑くんは、思うままにアリスに接してあげて』

という雪姫の言葉を完全に鵜呑みにしていて、

もうアリスに対しては妬いたりしないだろう、などと思い込んでいるのだった。


「ふーん……ありえない、ねぇ……」


 そんな言葉を呟いたアリスが、計佑の胸に頬ずりをしてきた。

『んなっ!』とばかりに雪姫の口があんぐりと開いたが、アリスに視線を戻した計佑は気づかない。


「……んん? どうした? お前がそんな風に甘えてくんのはなんか珍しいな……?」


 いつもと様子が違うアリスに問いかけてみると、アリスはまた顔を上げて。


「……なんか、パパのコト思いだしちゃって……おじさん達の家に来てから、もう随分会えてないしさ……」


 寂しそうな表情で、そんな事を言ってきて。また顔を計佑の胸へと乗せると、すぐに横──雪姫の方へと向けた。

そのアリスの表情を見た雪姫が、いよいよブルブルと震えはじめたのだけれど、この少年はやっぱり気付く事もなく。


──……そっか、先輩のお父さんも忙しいって話だったし……大人の男の人に甘えられる環境にないから……?


 計佑としては、今日の事で改めて自分の小ささを思い知らされた訳で、

本当の大人みたいにアリスを包みこんでやれる気は、まるでしなかったけれど。

それでも、この人のいい少年は、せめて自分にできる事をしてやろう──そんな気持ちになっていた。

 アリスの頭に手を乗せて。そして、精一杯の慈しみを込めて撫でる。

計佑が、アリスの頭に手を伸ばす時──それはどちらかというと、アリスを愛でるというより

アリスの髪の感触を楽しむという、自分の嗜好のための意味合いが強かった。

 無意識の内に、アリスの髪をくるくると弄ぶことが多いのもその証拠だった。

けれどこの時、計佑はいつもとは違い完全にアリスの為だけを想って、精一杯の優しさを込めてアリスを撫でていた。

その手つきは、ホタルの頭を撫でている時と同じような──

そして、いつもとは違うその動きに……アリスの身体が、ピクンと震えた。


─────────────────────────────────


──あ、あわ……あああ……!!


 計佑の胸板に頬ずりをしてみせるアリスを前にして、雪姫は半ばパニック状態に陥っていた。

 アリスの攻撃に『ありえないでしょう?』と、苦笑しながら計佑が振り向いてきた瞬間には

まだぎりぎり取り繕えたが、いよいよもう限界を迎えそうだった。


──おっ、おおお落ち着いて……!! 慌てたら負けなの……!!

  そうっ、計佑くんは子供で、

  アリスは計佑くんのことを子供としか思ってないんだから何も慌てる必要なんて……!!


 思考まであべこべになってしまってきている雪姫。それでも、声に出したら負けだと、まだどうにか抑える。

しかし、アリスの攻撃はまだまだ止まらなかった。

『父親に会えなくて寂しい……』みたいな事を口にして、計佑の気を引いてみせようとする。


──ウソつきぃぃぃ!! ずるいずるいずるいっっ、そんな風な言い方するなんてぇぇええ!!!


 いや、正確には嘘という訳でもない。確かに、アリスは随分父親と会ってはいない。

 でもアリスの両親は、定期的にアリスに会おうとして白井家を訪れているのだ。

なのに、親に対して何やら拗ねたままのアリスが、部屋に閉じこもって会おうとしないだけで。

 だというのに、真実を都合よく編集してみせるアリスに、雪姫は地団駄を踏む思いだった。

 そして、計佑に寂しそうな顔を見せたと思ったら、また計佑の胸に頭をあずけて、

すぐにこちらに顔を向けてくると──ニヤァ、としてやったりの笑みを浮かべてくる子悪魔。

 そんな小悪魔に、いよいよ全身が震えだしてしまう。アリスの視線から逃れるように、計佑の顔へと視線を移せば、


──だめぇぇええ!? 他のコに、そんな顔しちゃだめぇええ!!!


 恐れた通り、計佑がすごく優しい顔になってアリスの頭を見下ろしていた。

 アリスに対しては、いつもはさっぱりした態度しかとらない筈なのに。

けれど、あんな事を言われてしまえば、優しい少年だったらこうなってしまうのは当然の結果だった。


──ううぅぅうう!! やっぱりずるすぎるっっ、アリスのバカぁああ!!!


 自分にだって、滅多に見せてくれない表情なのにっ。 そんな特別の顔を、騙すようなやり方で引き出すなんて!!


……自分も同じような事をやらかした経験がありながら、そんな風に棚上げ少女が憤る。

 ただ、あの時の雪姫には、"計佑にひどく傷つけられた" という名分がまだあった。

けれど、アリスが今やっている事は、雪姫への当てつけの為だけの筈で。

その為に計佑を騙してまでみせるアリスに、腸が煮えくり返る思いだった。

 キリキリと目を吊り上げる雪姫に、アリスが、んふーっ、と満足気に大きく鼻息をついて。

……けれどそこで、アリスの様子が突然変わった。

突然、ピクリと震えると──その表情からはニヤニヤとしたものが消えていく。


──……え……?


 一瞬、何が起こったのかわからなかった。

 けれど、疑問が浮かんだ事で少し心が落ち着くと、

いつの間にか計佑がアリスの頭を撫で始めている事に気がついた。


──ちょ、ちょっと……?


 アリスの目がトロンとしていき。


──あ、あああ……!?


 アリスの口が半開きになって。


──あああ当てつけにしちゃああ……!!!


 アリスの身体から力が抜けていき、計佑の上で完全に溶けていくのが傍目にも見て取れた。


──いくらなんでもやり過ぎじゃないのぉぉおお!!??


 とても演技とは思えないアリスの暴挙に、改めてパニックに陥りかける。

 そんな雪姫が視界の中心にある筈なのに、アリスの目はトロンと蕩けていて──

慌てる雪姫の姿を信号として脳に送る仕事もせず、ただ雪姫の顔を反射しているだけだ。


 そして、またもあろうことか……アリスの両手が、すりすりと計佑の胸板を撫で回し始めた。


──だ、だめぇぇぇええええ!!?!!??


 もう限界だ。

 こんな状況で、勝ち負けとかそんな事を気にしてなんていられない。

声を上げて、乱暴だろうとアリスを計佑の上から──

そんな行動に移ろうとした瞬間、アリスの目にハッと光が戻る。

 そして、計佑の胸板の上にあったアリスの両手が

素早く動くと──計佑の顔を掴んで、グリッと捻りこちらへと向けてきた。


──……あ……


……今度は、顔を取り繕う余裕はなかった。


─────────────────────────────────


「いっ……! いきなり何す、んだ……」


 アリスにいきなり首を捻られて計佑が上げようとした非難の声は、尻すぼみに消えていった。


──せ、先輩……!?


 何故なら、目の前にある雪姫の顔が凄い事になっていたからだった。

ここまで左右非対称になっている雪姫の顔は初めてで。

 絶句する計佑が見つめている内に、雪姫の顔はみるみる赤く染まっていく。


「ぷぷっ……!! ほらほらっ、オコサマ相手に、

こ~んな顔してヤキモチやいちゃうなんて、大人のやることだと思うかけーすけぇ?」


──や、焼きもち、だと……?


 そんな筈はない。

だって、アリスに関しては、もうはっきりと許可だってもらっているのだから。

 そんな、何を言い出すんだという気持ちでアリスに視線を戻すと、

計佑の身体に肘をついて身を起こしたアリスの、ニヤニヤと雪姫を見下ろしている横顔が目に入った。


──あ、あれ……?


 その姿に違和感を覚える。

しかし計佑がその事を口にする前に、アリスは


「くくくっ……あーっ面白かった! 私、ちょっとトイレ行ってくるっ」


 ぴょんと立ち上がると、あっという間に走り去る。

 それを見送りながら、改めてさっきの疑問を口にした。


「せ、先輩……なんかアリス、変じゃないですか? アイツ、先輩にはすごい懐いてたハズなのに……」


 最近は、雪姫とアリスが一緒にいるところはあまり見てなかったけれど、

アリスの雪姫への懐きようは相当なものだった筈で。

 なのに、茂武市とかにならともかく、雪姫相手にあんな生意気な顔をするなんて──

そんな疑問を投げかけてから雪姫に目をやると、


「もおおお!! アリスがあんな風になっちゃったのは、計佑くんのせいなんだからねっっ!!」

「へっ!?  なっなんですかそれ?」


 涙目の雪姫に、いきなり怒られてしまった。


 先日の雪姫たちの "力関係の逆転劇" など知る由もない少年としては、何のことやらさっぱりな非難。

けれど、べそまでかき始めそうな少女相手では、強く言い返す訳にもいかなくて。

 言葉を失い、ただただ雪姫を見つめるしか出来ない計佑に、

雪姫は「う~~~っ!!」と唸ると、いきなり頭を突き出してきた。


「ほらっ! 私の事も、アリスみたいに撫でてよぉ!!」

「はぁあ!? なっ、なんで!?  さっきから、先輩が何を言ってるのかさっぱりわかりませんよっ」


 滅茶苦茶な言動(としか計佑には思えない)をとる雪姫に、流石にちょっと引いてしまう。

 身体をずらして、少し雪姫から距離をとろうともしたが、すかさず雪姫が詰め寄ってきて、

肩の辺りに頭頂部をこすりつけてくる。


「ちょっちょっと!? 何してるんですか先輩っ」


 慌てて止めようとしても、相変わらずイヤイヤをするかのように頭を擦り続けてくる雪姫。


──こ、これってまさか……!?


 先のアリスのセリフと合わせて考えれば、流石の鈍感王でも、理解出来てしまった。


「せ、先輩、まさか……またアリスに焼きもち妬いてるんですか!?」


 そう計佑が口にした途端、雪姫はガバっと顔を上げると、計佑の脇腹をつねってきた。


「──もぉおお!! だからなんでそういう事を指摘してくるのっ!?

島での時といい……デリカシー無さすぎだよっ!!」

「いたっ、いたた! せっ先輩、爪はやめて……」


 ヒートアップした雪姫が、

意識しての事ではないのだろうけれど途中から爪まで立ててきてしまい、悲鳴をあげてしまう。

 そんな計佑に、指を離してはくれたが、わがまま少女は決して落ち着いた訳ではなかった。


「私が今言って欲しいのは、そういうコトじゃないのっ!!!

……今聞きたいのは、そうっ、さっき言ってくれたようなコトだよ!! 『先輩だけが、オレを──』」

「わあああああああ!?  なっ何言い出すんですかっ、やめてくださいよ!?」


 シャワー棟の前で口にした『恥ずかしい言葉』を復唱されかけて、慌てて遮った。

 

 この少年は、非常事態だったからこそ『恥ずかしいセリフ』を口に出来たのだ。

あるいは天然状態でしかそんな言葉を口に出来る筈もない奥手少年が、きっぱり拒否してみせる。


「だめっ! もうムリです!!  今日は、さっきのでもう打ち止めです!!」


『これだけは譲れない!』と、断固たる意思をもって、

顔を熱くしながらもキッと厳しい表情を作ってみせると、

またも「う~~~~……っ!!」と雪姫が唸って。

 やがて、雪姫は頬を赤く染め始めて、ぎゅうっときつく目を閉じると、深く俯いてみせた。

そして次の瞬間、さらに計佑との距離を詰めてきて。

計佑の二の腕を手に取ると──自分の胸へと力一杯抱き込んでみせた。


──……え……えええええ!!?


 一瞬、雪姫が何を始めたのか理解できなかった。

けれど、そんな思考空白の時間はすぐに終わり、動揺時間を迎える事になる。

 全力で押し付けてこられるそれは、やはり圧巻の柔らかさとボリューム感で。

それが心地いいのは否めないけれど、奥手少年としては気恥ずかしい思いのほうが遙かに上回る。

慌てて引き離そうとするも、雪姫は両腕でがっちりとこちらの二の腕を巻き込んでいて、

ちょっとやそっとでは引き離せそうにない。


「ちょっ、な! 何やってんですか先輩っ」

「だって! 結局、私がアリスに勝てるトコなんてこれしかないんだものっ!!」


 声を上げても、それ以上の声量で返してくる雪姫。

 計佑の肩に額を押し付けてきていて、隠れた表情は良く見えないけれど、

耳が赤く染まっているところを見れば、雪姫とて相当無理をしていることが分かる。


──~~~!! ほんとに、何なんだよこの人は~~!!?


 硝子の時のような、本気で泣かれそうになるのは論外だけれど。

こんな風に全力で焼きもちを妬かれるというのも、初心な自分には手に余る。

 正直、『なんて面倒な人なんだ……!!』 そんな思いが浮かんだ。


──けれど。

泣き出しそうなほど不安がったり、子供相手に必死になったりと、

全身全霊で自分を想ってくれるこの人が──堪らなく可愛くて、嬉しくて……愛しくもあって。

そんな気持ちのほうが、ずっと強かった。


 そんな本音を抱いている少年だったから、結局雪姫を振りほどくことも出来ずに。じわじわと顔が緩んでいく。


……しかし、この場所にいるのは、決して計佑達二人だけではなかった。


「な、なにやってんすか、一体……」


 いつの間にか、どうやらトイレへと向かおうとしていたらしい茂武市がすぐ傍に立っていた。


「えっ、や!? きゃっ」

「なっいやっ、別にこれは!」


 茂武市の声で我に返った雪姫が、慌てて計佑から離れて、くるりと背を向ける。

計佑もまた、雪姫とは反対方向に90度身体を回転させて横向きになると、茂武市を見上げて。

 そして茂武市は、珍しく白い目で雪姫たちを見下ろし続けてくる。


「先輩、今は合宿中っすよ……先生いないのは、

一応信頼されてのコトなんすから、最低限の節度は持ちましょうヨ……」


 よりにもよって茂武市に正論で叱られて、もう身を小さくする事しか出来ない雪姫。


「班分け……やり直したほうがいいんじゃねーか、色ボケ部長さんよー……」


 冷たい茂武市の声に反比例して、どんどん体温が上昇してしまう計佑。


──今は背中を向け合う二人だったけれど、身をすくめて、恥ずかしさに全身を熱くするのは共通していて。

そんな気の合う、つがいな二人を、何も言わずに見下ろしてくれるのは──満点の星空だけなのだった。



─────────────────────────────────



<23話のあとがき>


ホタルが吹き飛ばしたあの雑誌には、深い意味はないです。

決して某パジャマ漫画を打ち切った事に対する……とかではないです、ホントですよ?

打ち切られたすぐは、まあアレでしたけど……今ではちゃんと感謝してます。

なんだかんだいってもジャンプの存在あってこそ、雪姫先輩が生まれた訳ですもんね……

まあ厳しいあの雑誌だからこそ、短い時間しか楽しめなくもあった訳ですが(T_T)


今回は、原作だとまくらへの気持ちを自覚してしまうソフト観戦を、

まくらが計佑を諦めてしまう? 為の展開に利用するという、鬼畜な原作レイプぶりでした(-_-;)


ソフトの試合後、硝子が暴露した計佑の情けない一面を雪姫が気にしないのは……

……つい最近、自分もアリスに弄られるようになったせいで、何となくツラさが解るから……かなぁ。


15話でもちょっと書いたけど、今回また先輩の問題がちょっと出ちゃいました。

計佑が本気で凹んでると、この世界では計佑に依存している先輩だと何も出来ない、みたいなとこです。

いや、15話に比べたら全然頑張った筈なんだけど……結局なぁなぁにしかなってない……?

これがまくらだと、ニコニコ笑顔で引張あげる。硝子なら今回みたいに叱り飛ばす(?)

といった形が想像出来るんですけど、雪姫先輩だと……んん?

──そんな風な考え方していくと、計佑のパートナーとして先輩ちょっとアレになっちゃうかなぁ(T_T)

……って、一時期考えてたんですけど。

一応、先輩なりの慰め方? というとちょっと違うかもだけど、

とにかくまあ自分なりに一つ思いつけたので、それを次回に盛り込んでみる予定です。


この世界の硝子は、まくらと雪姫それぞれに強いコンプレックスがあるイメージです。

まくらに対しては正の、自分とはまるで正反対な人柄に対するあこがれ。

雪姫に対しては負の。臆病な性格を仮面でごまかしてるようなとこは自分と同じなのに

あっちは人気者で、美人で……みたいな妬みとか。近親憎悪ってやつですかね。


勢いだけで書いてみたけど、硝子が計佑を怒らせる必要はあったのか……

わかってて怒らせた体だけど……うーん。いつもみたいに笑っていなされたくなかったから……

ちゃんと本音を引き出したかった?


原作では、計佑がヘタレまくっていいトコなかったソフトの所だけど、

こちらでは一応硝子に言われっぱなしにはしたくなかったのです。

まあ、女のコ相手にキレるという無茶なトコだけど、ある程度説得力を持たせたくて、

硝子の言葉をかなりキツくして、まくらとの絆からめて正当化させてみたつもり。

……上手くいってるかはアレですけど(-_-;)

んで、硝子の真意に気付いてからは、男らしく硝子の怒りを全部受け止めようと。

雪姫庇いつつ、硝子のことも思いやったりと、一応計佑を持ち上げてみようとはしたつもり……


キレられるのにはまだ耐えられても、無視には耐え切れず泣いてしまう硝子ちゃん……

……うん、シカトはつらいよね……やっぱりあの原作のラストはないよね(´Д⊂ヽ


もしかすると、随分硝子が怖く思われてるかもしれないんですけど……

僕ん中では、これでも一応いいコのほうなんですよ?

計佑に嫌われるの覚悟で、まくらの為にソフトのとこでキレてみたり。

シャワーのとこで、雪姫をひっかけようとはしてますが、転びそうな所ではちゃんと支えたりと、

決して悪いコじゃあないんだよ……? というのを一応書いてはみたつもりなのですが。

……結局、歯ぎしりで台無しかな(^_^;)


顧問のタロウマル先生はこちらでは出ません。

あの人絡めて、雪姫先輩を美味しく出来るネタは思いつけなかった……

うーん……「白井は男に困らないんでしょ~……なんか攻略法教えてよ~……」

みたいな雪姫に絡むとか? ……ウザイだけだし(-_-;)

んー……それに対して

「何も特別なことは……そもそも、お目当ての人には応えてもらえないし」

とか計佑見やって、計佑ともども赤くなる、くらいしか思いつけない……その程度なら、特にいらないかなって。


どっかで見た意見で、うろ覚えなんでちょっと違ってるかもしれないんですけど、

パジャカノの欠点で、縦の繋がりというか、歴史の積み重ね? だか、

過去のイベントを現在のイベントにつなげてない、みたいな非難を見たような記憶があるんですが……

まあ、そんな風になってしまうのは無理もない話だと……

"大人の事情"で、話を随分と無理やり変更させられたりする中で、

そんな紐付けとかそうそう出来るわきゃないのです……(-_-;)


それでも、なんか印象に残った指摘だったので、

こちらの話では意識的にそういう要素を増やしてみたり。

例えば14話では、4話での事を雪姫が語ったり。

その次の15話で、計佑がキスしてしまった時の事を回想したり。

20話で、クマストラップの話が出てきたり。

前回の22話でも、温泉の時に硝子が言っていたことを振り返ったり、

前日、前々日の計佑と雪姫の様子についてまくらが語ったり。

まあ他にも、ちょくちょくそれを意識して書いてきてます。


20から22話までは自分好みのラブコメに出来たのに、今回は、うーん……でした。

最初は、今回の23話では殆どコメディ入れられないかと思ってたぐらいなんですけど、

シャワーのとこの、先輩のに多少と、

あと前回雪姫とアリスの関係を改変しちゃったお陰で、ラストにも入れることが出来ました。

いや~……最初はいらんコと思ってたアリスが、ここまで役に立つとは本当に想像もしてなかった。

アリスがいなかったら、屋上のシーンはもしかしたら全くなくて、

硝子の歯ぎしりで今回は締めという可能性もあったワケで。

……もしそんな事になっていたら、17話のラストどころじゃないですね^^;


……ただ、アリスのキャラがブレすぎではありますけどね(-_-;)

出てきたばっかの頃は超お子様だった筈なのに大胆すぎる(汗)

うーん……アリスの表面意識では、もう計佑は家族みたいなモンってことにしといてくださいm(__)m


でも、原作でのアリスって、濱田先生は本当はどういう目的で登場させたのかな、ってふと気になりました。

もし雪姫が本命ってことなら、

僕が書いてるような方向性でもそんな間違ったアレではなさそうと思ってんですけど、

原作はまくらが本命なワケで……うーん。

アリスが妹ポジにおさまって、それで今まで妹みたいに思ってたまくらへの本当の気持ちを自覚する、とか?

にしたって、原作のほうは計佑×まくらに兄妹テイストはあんまなかったしな……

単純に、ひっかきまわしキャラとかの予定だったんでしょうか……


計佑、雪姫、アリスで三すくみが出来ましたね……勿論狙ったワケではなく、たまたまなんですが(汗)

……そもそも、三すくみが出来たからといってどうなるワケでもないけど(-_-;)

アリスは硝子に弱くて、硝子はまくらに弱くて、まくらは雪姫に弱い……ってまで広げると、

ヒロイン達の間では綺麗に環が出来ますね。……って、あ!! ホタル忘れてる(汗)

……んー、まあホタルはジョーカーみたいなもんだしいっか(^_^;)


計佑が硝子のシャワーあがりを待つ所。

あんだけ人の心読める硝子なのに、計佑が許すことは予想してないのか……?

……といっても、話作りの都合上、それを予想されちゃうと厳しすぎるので(T_T)

でもそれだけで片付けてもダメですかね……ええと、

半ば予想していても、嫌われたのではという不安は、やはり乙女としては大きくて、

理性だけでは読み切れないとか。


なんか誤解させてしまってる事もありえるかもなので言い訳しとくと、

計佑が言った雪姫に負けないくらい……のやつは大人びた部分だけであって、

美人度数まで雪姫と同等……って思ってるワケではないんですよ? 計佑にとって。


シャワー棟前で、いったい計佑はどんな愛の言葉を雪姫に囁いたのか……

まあ、そんなすごい殺し文句は思いつけなかったから、あんな感じに誤魔化しましたm(__)m

でもでも、こういうのは読み手の想像にまかせたほうが美味しいってとこ、ありますよ……ね?


そして、落ち込んでた先輩がコロっと立ち直るパターンは、これまた18話でも書いてたりした筈……


幼児のようにキラキラした目で空を見つめる計佑に『カワイイなぁ……』

ってなる雪姫ってのもありかなぁとは思ったけど、

ヤキモチネタのほうが僕ぁ好みなもんで、徹底的にヤキモチ尽くしにしてみました。


ここでの発見役を茂武市にしたのは、勿論、硝子だと怖くなりすぎるかと思って、

そしておちゃらけキャラの茂武市に呆れさせる事で、

より雪姫たちのバカップルぶりが引き立つかなぁという、2つの理由からでした。


レンジマンに出てきた女マネージャーのセリフで、

『欠点が目についても好きでいられるのは本物の恋』

みたいなのがあって、それは雪姫がもう体現してるので、

計佑のほうでは更に進んで、欠点 (嫉妬深すぎるトコ) すら愛しいって感じにしてやりました(≧∇≦)/



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