緑黄色生命体なるほど芋づるのできる芸術ピカソの防護服クマ男野獣の大速報
朝、防護服のバイザーをかけた男が、ため息混じりに呟いた。
「さんざん焼き払ったのに、もう芽が」
その目の前に広がるのは、どこまでも伸びる緑の糸。生命の躍動がそこに宿っている。
刈り取りのためにやって来た者たちの目には、その様子はあざけりと映った。
「昔から人々の飢餓を救ってきた。だがこれは数の暴力だ」
男たちは赤い三つ葉の印がついた荷物を降ろし、次々に地に埋めていく。
この物語は、未知の緑の生命体と人間との関わりを中心に描かれています。物語の冒頭、ある防護服を身に纏った男が緑の糸のような生命体を目の当たりにします。彼の目に映るのは、生命の躍動と、それを刈り取ろうとする者たちの姿でした。この男の視点を通じて、我々は人間と自然、そして未知の生命体との関わりを深く考えさせられることでしょう。
朝、防護服のバイザーをかけた男が、ため息混じりに呟いた。
「さんざん焼き払ったのに、もう芽が」
その目の前に広がるのは、どこまでも伸びる緑の糸。
生命の躍動がそこに宿っている。
刈り取りのためにやって来た者たちの目には、その様子はあざけりと映った。
「昔から人々の飢餓を救ってきた。
だがこれは数の暴力だ」
男たちは赤い三つ葉の印がついた荷物を降ろし、次々に地に埋めていく。
しかし、そうする間にも新たな芽が生えてきている。
その姿を見つめながら、男は思いを馳せる。
この地は何度も救いの手を差し伸べてきた。
だが、今回のは違う。
これは数の力による蹂躙だ。
彼らはただ、自分たちの生存を守るために、この地を刈り取る。
しかし、その行為が果たして正しいのか、男は迷いを感じていた。
そして、何よりも驚くべきことは、この地が再び生命を宿すことだった。
反応弾で焼き尽くされたはずの地が、もう一度芽吹いている。
男はバイザー越しに口元を歪めた。
「なんて頑強なんだろう、この地は」
彼の言葉は虚しく響いた。
この地は、彼らの手によって傷つけられながらも、その力強さを示している。
男たちは荷物を埋め終え、立ち上がる。
彼らの背中には使命感が宿っている。
「この地は、私たちに訴えかけているんだ。
私たちは何をするべきなのか」
男は自問自答しながら、次の行動を考えた。
彼が選ぶ道は、この地との共存なのか、それとも刈り取りなのか。
「切り開くんだ。
」
未来の行く末が揺れ動く中、男は決意を固めた。
この地とのつながりを守り抜くために、彼は戦い続けるのだろう。
「量子信管の沈埋、完了であります」
曹長の報告を受けて彼は号令した。
「撤収ーーーッ!」
全員が一目散に安全圏めがけて脱出する。
パーソナルジェットに点火。
両翼に突き出したノズルからガスが吹きふわりと浮いた。
その時だ。
グイっと棘が脹脛にのめりこむ。
「うわー!」
掴まれたまま右へ左へ揺さぶられ、地平線が縦になった。
そして彼は割れるような頭痛を一瞬だけ感じた。
◇ ◇ ◇
『おいしいお芋が入荷しました』
「今年もダメだったかー!」
長官はホットニュースをゴミ箱に叩き込んだ。
「量子ホール爆弾でも焼けないんじゃお手上げですよ」
「とかなんとか言いながら俺のチーズ揚げを奪うな~」
食い意地の張った副将からホカホカの皿を奪い返した。
じゅうじゅうとクリームが泡立っている。
「で、どーすんですか。
コレ」
副将の前には山と積まれた|蛇牙芋《ソラニム》と滅茶苦茶に割れた窓枠があった。
大使館裏の加工場が休止になり暇を言い渡された出稼ぎ労働者が投げ込んだのだ。
駐在武官直属護衛司令部の任務は住民との円滑なコミュニケーションなので強く出れない。
鎮圧は治外法権の枠外だ。
「どうするもこうするも煮ても焼いても食えぬ」
長官はこめかみを揉んだ。
惑星ポータスの衛星|薩摩芋《バタタス》はその名の通りデンプンの宝庫だ。
だが原生種は強い毒性があり地球人の食卓には乗らない。
このどうしようもない植民地を厄介払いも同然に「友情の証」として押し付けられた。
活用しないと関係にひびが入ると命令されノイローゼで倒れた前任者の後釜に抜擢された。
それから早五年。
種まきに失敗してきた。
バタタスの繁殖力はすさまじくたった一本の茎の細切れからでも一日に百アール再生するという。
それでも焼き畑を繰り返しわずかな隙間にソラニムを植えては育てた。
しかし人間の支配範囲はどんどん狭まっていく。
「出て行けと言ってますね」
副官が万歳をした。
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「出ていけば『食糧援助を餌に惑星利権を貪るハイエナ』というレッテルが貼られる。
反地球人の思うつぼだ」
大宇宙開拓時代の中庸期、人類は難しい局面にいた。
版図を広げれば広げるほど星際社会の反感も募る。
さりとて膨張する人口をどうしろと。
「全滅したAI兵士の人権を問う決議案が人類圏議会に提出されていますよ」
副将が最新ニュースを示した。
「ほかに打つ手はないのだ。
次は惑星破壊ミサイルでも撃ち込むか?」
長官は売り言葉に買い言葉を返した。
「では、どうすれば?」
二人が途方に暮れているとまた大使館の窓が割られた。
「大使を安全な場所に!」
副将は血相を変えて飛び出していった。
だが突然の騒ぎに、長官は驚きながらもすぐに副将の後を追った。
外に出ると、大使館の周りには暴徒が集まっていた。
彼らは石や棍棒を手にして、大使館に向かって突進している。
「なんてことだ!何が起きているんだ!?」長官が叫ぶと、副将が息を切らせながら説明した。
「大使館の加工場で働いていた労働者たちが、食料を求めて暴動を起こしたようです!」
長官は事態の深刻さを悟った。
もしこのまま放置すれば、大使館は蹂躙され、地球との関係は完全に断たれてしまうかもしれない。
「副将、私たちは何としてでも彼らを止めなければならない。
このままでは全てが終わってしまう!」長官が決意を込めて言った。
副将も頷き、彼と共に大使館に向かって駆け出した。
彼らの使命は、地球との絆を守ること。
果たして彼らは、この困難な状況を乗り越えることができるのか。
その瞬間、長官の胸に一つの思いがよぎった。
「もしかしたら、ハバタスが答えかもしれない」と。
「そんな考察してる場合ですか」
副将が汗をかきかき車椅子を押してきた。
大使の目玉は渦巻いて額に大きなこぶができている。
「せ、宣戦布告を地球に具申したまえ」
彼は意識朦朧としている。
「血迷ったのですか? 煮ても焼いても食えない相手に攻撃など」
「ボイルもベイクもできないなら、フライかスチームはいかが?」
芋の山から少女が飛び出だした。
副将がとっさに銃を構えるが大使が制した。
「要求を聞こうか」
「はい。
私はクリスピーと申します」
地元出身の女子高生はソラニム加工場で奉公をしていたが駐留地球軍の食糧事情が拙く幼い弟たちは工場で配給される芋では足らないという。
そこでバタタス討伐部隊が処分のために持ち帰る芋をこっそり拝借していた。
どう転んでも食えぬ芋を無毒化して姉弟に調理してあげたい。
その一心で毎日レシピを試行錯誤していた。
台所を片付けていると古い食器棚の裏に一冊の絵本を見つけた。
『えほん 焼き芋太郎の戦記』
◇ ◇ ◇
むかしむかし、戦争によって壊滅的な被害を受けた村で、焼け野原の中に一本の石焼き芋が残されていました。
主人公の名前は太郎で、彼は村の若者の中でも特に勇敢な存在でした。
太郎は焼け野原を歩き回り、たった一つ残された石焼き芋を見つけました。
その石焼き芋は黒く焦げていて、まるで焼け野原の中で生き残った一筋の希望のように見えました。
太郎は石焼き芋を手に取り、その芋から発せられる熱を感じました。
それはまるで炎のようで、その炎の中に村の未来を見るかのような予感がありました。
彼はふと、この芋の力を利用して村を守ることができるのではないかと思いつきました。
しかし、その瞬間、敵の戦闘機が現れました。
太郎は焼き芋を手にしたまま、戦闘機との闘いに身を投じることになります。
戦闘機は急接近し、太郎は焼き芋を投げつけて戦闘機を撃墜しました。
戦闘機は爆発し、焼け野原には煙が立ち込めました。
太郎は一瞬の間に村を守ったという安堵感を感じながら、焼け野原を見渡しました。
しかし、戦闘機の攻撃によって焼け野原は一層焼け落ち、村は壊滅的な状態になりました。
家々は煙に包まれ、人々の叫び声が響き渡ります。
太郎は焼け野原の中で孤独に立つことを余儀なくされました。
そこで、太郎は焼け野原の奥深くに潜む、かつての村人たちの思い出と絆を探し始めました。
彼は焼き芋を再び育て、石焼き芋の力を通じて村を再建しようと決意しました。
太郎は焼け野原に残された戦闘機の残骸を使って、特別な焼き芋を育てるための施設を建設しました。
それは「焼き芋の炎」と名付けられた場所で、石焼き芋を育てるための技術と知識が集まる場所でした。
新しい焼き芋の産業が興り、村人たちは再び希望を見出しました。
彼らは太郎の石焼き芋の力を信じ、村を再建する使命に取り組みました。
そして、焼き芋の炎を背負って、村と共に新たな未来へと歩み始めるのでした。
太郎は焼き芋が持つ力を最大限に引き出し、村を次第に復興させていきました。
焼け野原は緑豊かな畑に変わり、人々の笑顔が戻ってきました。
彼は石焼き芋の炎が村を守り、再び希望を与える存在であることを知りました。
そして、太郎は焼き芋と石焼き芋の魔法のような力を信じ、村を再建する使命に取り組むのでした。
炎の重さを背負って、太郎は村と共に新たな未来へと歩み始めました。
そして、彼の努力と石焼き芋の力で、村は再び繁栄を取り戻すことができました。
太郎の物語は、焼け野原から芽吹く希望と絆の物語でした。
彼は一人の若者の力で、村を救い、未来を切り拓いたのです。
おしまい。
◇ ◇ ◇
「太郎というのはタロス将軍のことかね?」
長官はクリスピーに問いただした。
「さぁ、そこまでは。
でも父は戦争に行ったと」
「それでご両親は?」
「わかりません。
でも私に何か伝えようと」
クリスピーは手作りらしき絵本を差し出した。
巻末に簡単なレシピがあった。
「この星と地球の間に戦争なんかあったのか? 初めて聞いたぞ」
大使は驚きを隠せない。
「とりあえずハバタスに赴こう。
君もだ」
大使が探検隊を組織した。
その様子を副将が遠巻きに報告する。
「タロス将軍、娘が釣れました」
薄暗い
地下洞に湿った声が響く。
「そうか、焼き芋の炎がソラニムを焦がす日が来たか」
彼は痛恨の日々を述懐した。
タロスは国連の人道支援隊として惑星ポータスに派遣された。
住民を飢饉を救う途中で多くの同僚が喰われた。
それでも彼は衛星ハバタスで食い物の恨みから生じる内戦を食い止めた。
絵本はほぼ史実だ。
「俺は守らねばならぬのだ。
準備に抜かりはないか?」
「はい。
娘さんにはブツを持たせました」
◇ ◇ ◇
「これはお父さんから預かったお守りです」
とうとつに炎色の首飾りを渡されクリスピーは驚く。
そして返礼に副将は微笑んだ。
「似合ってますよ」
この物語を通じて、多くの読者が人間と自然、そして未知の存在との関わりや、それらの関係性について考える機会を得たことでしょう。物語の中で描かれる緑の糸の生命体は、私たちに自然や未知の存在の大切さを教えてくれます。また、物語の中のキャラクターたちは、それぞれの立場や背景から異なる視点で物事を捉え、様々な感情や考えを抱いています。私たちも日常の中で、自然や他者との関わりをどのように築いていくかを考えることの重要さを再認識することができるでしょう。最後に、この物語を手に取ってくださったすべての読者に心から感謝申し上げます。
このSSへのコメント