2023-11-06 12:27:37 更新

概要

研究予算削減に直面したM博士は、副業として惑星マイナシの開拓団引率を請け負う。そこで彼は無の環境を逆手に取り、地球から持ち込んだ鵜と藻を使い、名もない星に文化と味の名物を創造する。しかし、この新たな名物がもたらす影響は、博士の期待をはるかに超えるものだった。


前書き

月明かりが照らす研究室で、M博士は今日も頭を抱えていた。厳しい予算の削減は彼の研究を停滞させ、科学者としての誇りを傷つけるに足りていた。しかし、挫けるわけにはいかない。博士の心にはある計画があった―惑星マイナシを舞台に、星ごとの名物を作り出すという大胆な計画だ。

惑星マイナシは、特徴のない豊かな自然を持つ、ごく普通の星。だが、博士はそれを利点と見た。目立たない星に、唯一無二の名物を創造すれば、観光客は殺到する。そこで彼は地球から鵜と藻を持ち込んだ。鵜飼いのショーと藻のシンプルなスープは、訪れる者たちに新鮮な体験を提供した。

やがて、「惑星鵜マイ藻のナシ」として知られるようになったこの星は、名物「名物煮・鵜MY藻のナシ」で賑わう場所へと変貌を遂げる。だが、博士のこの成功は、ただの始まりに過ぎなかった。予想外の展開が博士を待ち受けている―開拓団の人々との出会い、予期せぬ文化の衝突、そして、星を超える名物の旅が始まろうとしていたのだ。

この物語は、博士の冒険と、彼が織りなす人間模様、そして星々の未来に名物をもたらす喜びと葛藤を描く。簡単ではない挑戦に立ち向かうM博士の姿を、どうぞご覧あれ。​


「それはお前の都合じゃ! 払えないなら儂にも考えがある!!」

M博士は満月のような|禿頭《とくとう》を朝日に変えた。クライアントのガチャ切りが彼をさらにたぎらせた。開拓団の引率を請け負い期日通り到着させた。本来の研究テーマと乖離するが研究予算が削りに削られやむなく始めた副業である。背に腹は代えられぬとはいえ忸怩たる思いで旅行代理店から最初の仕事を請け負った。惑星マイナシはこれといった特徴のない惑星で豊かな自然も銀河に掃いて捨てるほどある。そこでM博士は平凡な環境を逆手に取った。何もないならゼロをマイナスにすればいい。どこも1を足そうと躍起になっている。その無理やりが個性を失わせている、と博士は結論付けた。

そこで地球から鵜と藻を持ち込み客にふるまうことにした。鵜飼いを観ながら藻のスープを啜るなど面白味もなにもないのだが集まったモニター達はこの体験を喜んだ。

スープは塩コショウで味付けしただけのそっけない物であったが「名物煮・鵜MY藻のナシ」として飛ぶように売れた。

M博士は「惑星鵜マイ藻のナシ」の改名を国際天文機構に提案し受理された。

その実績を買われて開発コンサルタントを副業にしている。

だが今回ばかりは彼の手腕を超えている。

プラネット・ムウンは褐色矮星に潮汐ロックされた地球型惑星である。公転周期24時間の月が1つ。衛星も恒星の影響を受けるため常に同じ面をむけている。従って満月が観られる。調査ドローンとAIの報告によれば地球の月と互角に戦えるほど美しいという。観光会社は満を持してゴーサインを出した。

だが……。

「コンパートメントを取り違えるとはどういう事じゃ!」

「どうにもこうにも通関に手違いがあったらしく」

空港と激論したあげく引き返す義務はM博士の側にあると結論した。

旅行会社に現状を訴えると「私共は博士なら出来る!…と。契約の不履行に報酬は払えませんな」とにべもない。「月見の習慣がない民族にどう開拓させろというのじゃ」

博士は頭を抱えた。

まずは常套手段である。地球から月見の素晴らしさを訴えるコンテンツを山ほどダウンロードし乗員にオリエンテーションを催した。さらに転送機で月見うどんやバーガーを取り寄せた食事会は反応がイマイチ。

乗員は白夜世界の出身で衛星を愛でる文化がない。習慣に変化を起こそうとしても無理がある。

「梃子でも動かぬ昼型人間をどうするか」

M博士は次善の策を考えた。乗員にシフト制を導入し少しずつ体内時計をずらしてみた。

ルーティーンを導入するためには阻害要因の解消が有効である。しかし乗員は月がなくても困らないという。作戦は失敗した。

そうこうするうちに成果報告の日が近づいてきた。

「おや、S子君。そのペンダントはどうしたのかね?」

助手のアクセサリが目に留まった。

「彼氏が地球から転送してくれたんです」

「どうしてじゃ?」

問い詰めると月子は顔をあからめた。「女性に歳を聞くなんて」

「そういうことか、すまんの」と口ごもった。その瞬間、電球が灯った。

「これじゃ。イベントに月見を関連付けるのじゃ」

M博士は月子をモデルケースにして白夜世界の人々にプレゼントの習慣を教えた。

「はぁ? 誕生日? 俺らの世界はずっと恒星が輝いてますぜ。特別な日って何です」

若者にスルーされ見事玉砕した。

白夜世界には闇がないためすべてを白紙にして再スタートを切る概念がイメージできないのだ。日々という自然があれば今日の失敗を翌日に取り戻そうとか過ぎ去った昨日を忘れることが出来る。

そして節目を作ることでサイクルが完成しルーティーンワークの同期に誤差が発生することで個人差があらわれ競争原理につながる。しかし白夜世界の乗員にはない。

それどころか早く帰りたいというクレームが来た。

「帰りの燃料だけでも負担してもらおう」

M博士は旅行会社に苦情を申し立てた。返事は来ず代わりにミサイルが飛んできた。


後書き

月見団子は、中秋の名月を祝う日本の伝統的なお菓子です。ここでは簡単な月見団子のレシピをご紹介します。

材料
白玉粉:100g
砂糖:大さじ1
水:約120ml(適宜加減)
きな粉:適量
黒ゴマ(お好みで):適量
塩:ひとつまみ
作り方
生地作り:

白玉粉に砂糖と塩を加えてよく混ぜ合わせます。
徐々に水を加えながら、耳たぶくらいの柔らかさになるまで混ぜます。水は少しずつ加え、生地が柔らかすぎず硬すぎないように調整します。
丸める:

生地を適量ずつ取り、手のひらで丸めて団子にします。大小様々な月をイメージして、異なる大きさにしても楽しいでしょう。
茹でる:

大きめの鍋にたっぷりの水を沸騰させ、団子をやさしく入れます。
団子が水面に浮かび上がってきたら、さらに1〜2分茹でてから取り出し、冷水にとって冷まします。
仕上げ:

団子を水気を切ってから、きな粉をまぶすか、お好みで黒ゴマをトッピングします。
盛り付け:

お皿に団子を盛り付け、お茶やお好みの飲み物と共にお楽しみください。
このレシピは基本的な月見団子の作り方ですが、お好みであんこや抹茶パウダーを加えたり、色々なアレンジを楽しむことができます。中秋の名月の夜に、お家で簡単に作れる和菓子として、ぜひお試しください。


このSSへの評価

このSSへの応援

このSSへのコメント


このSSへのオススメ


オススメ度を★で指定してください