零の艦隊 #2 かつての戦友
血湧き肉躍る大海戦の物語…その2話
#1の続きです。
先ずは状況を整理するところから始めよう。
天候が大きく変わっていること、また氷山が欠片も残っていないことから恐らく北極海では無いだろう。
波動砲の暴発で天候まで吹き飛ばしたのなら自艦が浮いてる訳もないのでこれは多分確実。
ではどこかに飛ばされていたとしてここは何処だろうか。
今までにもあった転移艦の事例から考えるに、ここが今までと同じ世界なのかも怪しいものだ。
しかし、今までの転移艦はすべて歩んだ歴史が違えど、同じ地形や地名などを持つ地球…つまりパラレルワールドからやってきたという点で共通している。
我々の世界から別世界へ転移された事例は観測されていないからこの限りとも言い切れないが、われわれが今いるところが異世界だとしても言語や地名が共通している可能性は極めて高いだろう。
「艦長…艦長!!」
現状の把握に大半のリソースを食い散らされていた私の脳みそは、副長のコールによって呼び覚まされた。
「すまない。どうした?」
深刻そうな声音の割に落ち着いた様子の副官に問うと、
「正面4浬の距離に所属不明艦が2隻航行している模様です。如何致しましょう。」
「2隻だな。交信を試みつつ接近しろ、おそらく我々の言葉は通じるはずだ。」
「了解、交信を試みます」
どうやら、転移後の海で初めての他艦とコンタクトが取れる事になりそうだ。
「不明艦、交信出来ません!」
副官の声音は深刻さをいくらか増していた。
イレギュラーが起きているか、あるいは何か理由があるか…
「なんにせよ視認すればわかるだろう。接近を続けろ。視認したら視程ぎりぎりの距離を保つように。」
電探にノイズは乗っていない。超兵器の類では無いだろう。
「不明艦、見えました!」
見張りから連絡が入る。
「よくやった。どんなだ!?」
「日本海軍の扶桑型戦艦です!ですが…」
聞き知った単語に私は心を躍らせる。
我々の世界ならば日本軍は共に戦った友軍のはずだ。
しかし、彼の艦は戦争の途中に2隻とも撃沈されていたはずだ。
「2隻とも大破しています!」
どうやら相手も手負いらしい。
我々の戦っていた帝国は占領した国の兵器をそっくりそのまま複製して使うことが多かった。
沈んだ味方の同型艦が浮いているということは…ここが異世界じゃなければあれは敵だ。
「交信を続けつつ不明艦の軍艦旗を確認しろ!
ここが異世界じゃなけりゃあれは敵だ!敵だとわかったら同航戦に持ち込むぞ!」
我々だって先ほどまでの戦いで少なく無い被害を受けている。
しかし、帝国との建艦競争を繰り広げた結果、大和型でさえ中の下に成り下がった時代の最新鋭艦が損傷した扶桑2隻に負けるほど我々も落ちぶれていない。
「不明艦、大日本帝国海軍旗及び解放軍旗を掲揚しています!味方です!」
よくわからないことになった。
日本海軍旗を掲げているならばあれは少なくとも日本の艦だ。
これだけならここが同じ国家が存在する異世界なのだろうと納得できた。
しかし解放軍旗を掲げているならば話は違う。
突如勃興して世界侵略を開始した帝国に対して世界は結託して抗戦した。
それが解放軍だ。つまりこれは我々の歴史であるが我々の知識によればあの船は沈んだはずだ。矛盾している。
「あれは味方じゃ無い!気を抜くな!」
同じことを考えたのだろう。副長が叫んだ。
「南から不明艦がさらに接近中!うわぁぁぁ!」
動転した様子でレーダー監視員も叫んでいた。
扶桑2隻が自艦の右舷2浬を南下中。さらに南からこちらに迫ってきているとなると…
挟まれる。流石に我々の艦でも挟撃されると耐えられるかわからない。
「規模は!艦種は!機動部隊は随伴しているか!?」
「駆逐艦4に軽巡1!水雷戦隊です!」
我々は選択に迫られた。
敵と確定していない相手に先制攻撃をするか、この危機的状況から逃げ、形勢を立て直すか、あるいは敵では無いことを祈って正面の水雷戦隊とすれ違うか。
しかしこのいずれでも無い結果となった。
「敵艦、扶桑型!発砲しました!」
撃ちやがった。同じ日本軍、解放軍の旗を掲げている我々に。
彼の船は戦いの火蓋を切って見せた。
「先頭の艦を狙え!撃ち方始めェッ!」
我々は最早、応戦するしかなかったのだった。
そういえば艦これの世界観もくろがねの咆哮の世界観も独自解釈や妄想強めです。くろがねの世界はPS版のウォーシップガンナーとコマンダーをごった煮にした感じだと思ってます。こんなストーリーない!って思った方はごめんなさい。
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