兄「俺の妹がこんなにお淑やかなわけがない」
初めてのオリジナルです。なので暖かい目で見てくれると助かります!
ある日の朝ーーーーーーーー
妹「ーーーーーー様、ーーーーーい様」
兄「ん……んん……」ムクリ
妹の声で兄は目を醒ました。
妹「おはようございます、兄様♪ 」
兄「あぁおはよう…………って……え?」
妹「?どうかしましたか、兄様?」
兄「いやそれはこっちのセリフなんだが…………」
妹「?兄様はおかしなことを仰るのですね。……取り敢えず下に降りてきてください、ご飯の準備できてますから♪」ニコッ
ガチャッ…………バタン……
兄「待て待て冷静になれ俺、今のは夢だそうに違いない俺は夢を見ているだけなんだよく考えたらいまのが現実なわけ無いじゃないかありえないありえない……」ブツブツ……
どうして俺がこんな発言をするのか、それは普段の妹の態度にある。
普段の妹がどのようなものかと言うと、
妹「兄貴ー、そこの醤油取って」
兄「……自分で取れよ……」
妹「嫌だよ、面倒くさい」
兄「……はぁ……ほらよ」スッ
妹「ん、サンキュ」
とまぁこんな具合に俺を顎で使うようなヤツなのだ。
「そうだこれは夢に違いない絶対そうだこれは夢これは夢これは夢……」
俺がブツブツ独り言のように呟いていると、机の上のパソコンから急に声が飛んできた。
AI「朝からキモさ全開の声出さないでくださいよ、マスター」
兄「おおう!?」ビクゥ!
AI「何驚いてんですか、まったく……」
パソコンの画面につい先日購入した自立行動型AIの姿が映っていた。
1ヶ月前位に買って来たもので、パソコンにインストールしたはいいものの、
「(性格とかの設定出来るはずなのに出来ねぇ……まさか不良品!?)」
気づいた時には時すでに遅し。そして画面上に出て来たのは普段パソコンの画面上に出てくることは滅多にないくらい自由なヤツだった(呼べば反応くらいはしてくれるが)。
兄「……やっぱ夢だなこれは、うん」バタリ
一人で勝手に納得し、二度寝しようと思ったのだが、
AI「遂に現実逃避ですかクズマスター、見ててかなり見苦しいんでやめてくれます?」ニコッ
満面の笑顔でさらっと毒を吐かれました。
てかクズマスターって……俺のことですよね、はい……もうヤダ死にたい……。
兄「……よしもう一度寝ようそうしよう(寝て起きたら元に戻ってる筈だ、うん)」
再度二度寝しようとパソコンの画面に背を向けつつ横になる。
AI「マスター……これ以上ふざけたこと言ってると鳴らしますよ、警鐘音(ブザー)」イライラ
その言葉を聞いた途端、俺はベッドから跳ね起き、
兄「わあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?それだけは!それだけは勘弁してください!!」
どこぞの銀行員もかくやと言うほどの土下座をしていた。
この前も警鐘音(ブザー)を鳴らされて妹に激怒されたばかりなのである。
てか夢なのに土下座しちゃったよ……
AI「なら早く起きてくださいよ……ったく……」
兄「……なぁ一つだけ質問しても良いか?」
俺は地面に顔を向けたままAIに言った。
AI「もう何なんですか一体……ハァ」
兄「(あからさまに溜息つかれちゃったよ……)確認なんだけどさ……これってその……夢、だよな?(むしろそうだと言ってくれ、頼むから!!)」
AI「……警鐘音(ブザー)」ボソッ
兄「ヒイィ!?分かった!!分かったから!(夢じゃ無いんですねそんなんですねおいマジか!?)」
悲痛な叫び声を上げた後、ようやく現実だと気づいた俺は重たい足取りでクローゼットまで行き、寝間着から半袖に着替えそのうえからジャージを羽織り、スウェットを履いた。
パソコンの画面を見てみると、すでにAIの姿は無かった。相変わらず自由すぎる……
兄「……ったく……何なんだ一体……」
そう呟きつつ自室を出て階段を降り、リビングへ向かうとーーーーーーーー
ガチャッ……
妹「あ、やっと起きてきたんですね。私が呼びに言ってから起きて着替えたにしても少し遅いような気がしますが……ナニしてたんですか?」
兄「いや……ちょっとな……ハハハ(今完全に言い方のおかしい部分があったような気が)」
妹「??変な兄様……まぁ良いです。それよりご飯を食べましょう、兄様♪」
兄「お、おぅ……(この性格の変わりよう……ツッコむべきか否か……)」
二人とも向かい合うようにしてイスに座った。
妹「いただきます♪」
兄「い、いただきます……」
妹「……どうですか兄様?お口に合うと良いのですが……」
兄「あっ、あぁ…美味いよ……普通に(いつもと態度が違うからフツーに会話出来ない……)」
妹「普通……ですか……」ショボン
妹が明らかにガッカリした表情を見せたので、俺は慌ててまくしたてるように言った。
兄「いや!かなり美味い!世界一美味い!!宇宙一美味い!」
妹「もう……大袈裟ですよ……」クスクス
兄「……(やっぱり何か可笑しい。俺の妹はもっと傲慢で高圧的な態度がデフォルトの筈……間違ってもこんな大和撫子見たいな奴なわけない)」ジーッ……
妹「あ、あまりジロジロ見ないでください……恥ずかしいです……///」カアァ……!
兄「ッ、す、すいません!(何謝ってんだ俺は!?しかも敬語になってるし!?)」
一呼吸おいて、冷静になった俺は我慢出来ずに妹に聞いてみた。
兄「なぁ、いつもと態度違うみたいだけど何かあったのか?」
妹「?別に何も無いですしいつも通りだと思いますが?」
兄「(いつもと態度が180度違うんですがそれは)」
妹「……やっぱり今日の兄様はどこか変です」
兄「……そ、そうかな?(俺からしたらお前の方が十分変なんだが)」
妹「そうです……ハッ!もしやどこかお体の調子が悪いとか?!」
そう言ったかと思うと、妹は急に慌て始めた。
兄「落ち着け!いたって健康だから!!」
妹「……すいません、少々取り乱しました。でもくれぐれもお体には気をつけてくださいよ?只でさえ兄様はモヤシみたいな体なんですから。」
幾ら俺が運動不足だからって流石にモヤシは酷くないか妹よ……
そう思いつつも、俺は妹に返事をした。
兄「お、おう……肝に銘じとく……ご馳走様」
妹「はい、お粗末様でした♪」ニコッ
兄「……部屋にいるから何かあったら声かけてくれ(こう言う時は部屋に籠って一回状況を整理しよう、幸い今日は休日だしな……)」
妹「わかりました」
ー兄の部屋ー
兄「……(やっぱり今日の妹はどこかおかしい気がする)」
俺が一人ベッドの上で悩んでいると、不意に部屋のドアをノックする音が聞こえた。
兄「(妹……か?)……どうぞー」
俺がテキトーに答えると部屋のドアが開いて、
幼馴染「残念だが君の妹君ではないよ?」ヒョコッ
幼馴染が顔を出した。
兄「幼?なんでまたこんな朝早く?てか勝手に人の心を読んでんじゃねぇよ何なの?お前はエスパーか何かなの?」
幼「第一に君の顔を拝むためさ。第二にボクは心を読んだわけじゃないよ。君の考えそうな事なんて容易に想像がつくだけさ」キリッ
兄「……そうかい……ハァ」
幼「会って早々ため息とは心外だな」
兄「心配すんな、お前に対してじゃないから」
幼「それもそれでどうかと思うのだが……むぅ」
幼馴染がしかめっ面をする。
忘れていたが一応説明しておくと、この幼馴染とは小学校からの付き合いで、家も隣なのでもはや家族同然位に俺は思っていた。
兄「今日は朝からいろいろあって疲れてんだよ……」
幼「そうかい……ボクで良かったら相談に乗るよ?」
急に真面目な顔で言ってくるので、俺は少し反応に困った。
兄「(……まぁ別に隠すようなことでも無いし…いっか)……サンキュな、助かる。実はーーーーー」
俺は起きてから今さっきまでの出来事を簡単に幼馴染に話した。
幼「なるほど……確かに変だな、それは」
兄「だろ?」
幼「……何か思い当たるフシは無いのかい?」
兄「……特には」
幼「そうか……まぁまた何か進展があったら教えてくれ。ボクで良ければ力になるから、さ」
兄「あぁ……」
とその時、
コンコン、ガチャッ……
妹「兄様ー?今から買い物にーーーーって」
幼「やぁ」
妹「何でアンタが居るんだーーですか!この泥棒猫!!」キッ!
幼「泥棒猫とは心外だな、それにボクはちゃんと玄関から入ってきたよ?」
妹「えっ?!ウソッ!……でしょう?」
幼「残念だが事実だ。まぁ君が洗い物か何かをしている最中だったから気づかないのも無理は無いと思うけどね」
妹「……で、一体何しにきやがったんです?」ニッコォ……
兄「(表面上は笑顔作ってるけど、心の中では絶対笑って無い気がする!!)」
幼「さっき兄にも言ったケド、兄の顔を拝むために」
兄「……さっきから思ってたんだがお前、『拝む』って……神様じゃあるまいし……」
幼「でもボクの中での君はそう言う存在だから♪」
兄「さいですか……(もはやツッコむ気力もない……)」
妹「と、に、か、く!用が無いならさっさと帰って貰えます?」ニコニコ
幼「おいおい、あんまりじゃ無いか、よく知った仲だと言うのに……なぁ、兄?」ギュッ
兄「お……おう……///(当たってる!当たってるから!)」
妹「どさくさに紛れて何してんですか、この万年発情猫!」
幼「ただのスキンシップだよ」ニヤニヤ
妹「いい〜からは〜な〜れて〜く〜だ〜さ〜い〜!」グイグイ
幼「いーやーだー(棒読み)」ギュウゥゥゥゥゥ!
妹が引っ張れば引っ張るほど、幼馴染が俺にしがみついてくる。何でだ。
兄「(てかそろそろ俺の理性がヤバいんですけど……頑張れ俺の理性!!)」
俺は自分を鼓舞したが現実はそんなに甘くは無かった。妹と幼馴染が引っ張り合いをしたせいで俺の体制が傾き、倒れそうになる。
兄「おいお前らそんなに暴れると危なーーー!?」
幼「おっと」
妹「きゃっ!?」
ドシーン!
俺の必死の声も虚しく、俺は妹と幼馴染を巻き込んで床に倒れてしまった。
兄「いってて……ん?」ムギュッ
倒れた拍子に何かを掴んだようで、両手に何か柔らかく弾力のある感触を感じた。
と言うかこれは……
幼「……キミって案外大胆なんだね♪///」
妹「ッ………………!!///」プルプルプル
兄「(あ、これ詰んだわ)」
スパァーン!
兄が死を覚悟した瞬間、妹の平手打ち(食らったら1時間位は跡が残る強烈なやつだ)が炸裂した。
@リビング
妹「全くもう……」プンスカ
兄「俺完全に被害者なんですけど……」
妹「何か言いました?」ゴゴゴゴゴ……
兄「ヒイィィィィィ!?(一瞬で目から色が消えたんですけど?!)」
幼「おいおいあまり責めてやるなよ、誰がどう見てもあれは事故だっただろう?」
妹「元はと言えば貴方の所為なんですからね!?」
幼「テヘペロっ♪v(`ゝω・´)キャピィ☆」
兄「少しは反省しろよ……」
妹「そうですよ!私みたいにお淑やかじゃないとモテませんよ?」ドヤァ……
幼「『お淑やかに』ねぇ……?」ニヤニヤ
妹「ムキーッ!!」
ギャーギャーワーワー……
兄「騒がしいことこの上無いな……った
く……」
やがて両者は走り回り疲れたらしく肩で息をしながら互いを見つめあっていた。
妹「ハァッハァッ……意外と……やりますね……」
幼「……そっちこそ……僕をここまで追い詰めたヤツなんて君の兄貴を覗いたら君が一番さ……ハァッ、ハァッ……」
妹「……取り敢えず、今日のところは引き分けで良しとしましょうか」スッ
幼「……そうだね……それがいい……勝負はお預けだ……」パシッ
そう言って二人は硬く握手をした
兄「どこのスポ根マンガだよ……全く……」
俺が呆れ果てていると、二人は急にこちらを向いて頼みごとをしてきた
妹「それはそうと兄様、喉が渇いたので何か飲み物をください」
幼「ボクにも頼む」
兄「へいへい……(幼はともかく妹よ……さっきまでお淑やかだとか言ってたヤツはどこのどいつなんですかねぇ……?)」
心の中で一人愚痴りながらもお茶を入れたコップを持って兄は2人の元へ向かった
兄「……ほらよ」
妹「ありがとうございます……」
幼「ありがとう……」
兄「それよりさ……2人とも汗かいてんだろ?シャワーでも浴びてこいよ」
兄がそう言ったとおり2人は汗でビショビショだった
妹「そうですね……そうしましょうか」
幼「賛成」
そう言って2人は風呂場へと歩き出した
兄「……あぁ、脱いだヤツは洗濯機に入れといてくれ。洗っといてやるからさ」
幼「ハッ!……さてはお主私達の脱いだものの臭いを嗅いだりする気だな!?」ササッ
妹「……変態」ジトーッ
兄「いやしねーから、普通に考えて……と言うか妹よ、兄ちゃんに変なレッテルつけ無いでくれませんかねぇ……?」
妹「フンッ」クルッ、スタスタスタ……
幼「……別にボクのだったら……いいよ?」ニヤニヤ
兄「だからしねーっての!!」
その跡風呂場からーキャァァァァァァ!!ーと言う妹の悲鳴に似た声が聞こえたような気がしたが、気にし無いでおくことにした。それから少しして2人は風呂場から出てきて2階に上がっていった。
ー妹の部屋にてー
幼「なぁ妹君、一つ聞きたいことがあるんだが……」
妹「……何ですか」サッ
いつもとは違って歯切れの悪い喋り方だったので私は少し身構えた。
幼「そんなに身構える必要はないよ。なに、ちょっとした確認程度のことなんだが……」
妹「もったいぶらないでくださいよ」
幼「そうだね、すまない……時に妹君よ……キミは兄のことを……どう思っている?」
妹「……何でそんなこと聞くんですか?」ニコッ
幼「茶化さないでくれ、真面目に話してるんだ」
やはり今日の幼馴染はなにかがおかしい。
普段なら自分からは真剣な話などしないと言うのに。とは言え、いつまでも考えていても仕方がないので私は取り敢えず質問に答えることにした。
妹「兄様のことですか……もちろん兄様のことは大切だと思っていますよ?」
幼「それは『兄』としてかい?それともーーーーーームグッ!?」
核心を突かれそうなので私は幼の口を手で塞いだ。
妹「……それ以上は……言わないで。言われたら私は自分の気持ちを隠し通せなくなっちゃうから」
もはや語尾に敬語も付け忘れてしまうほど私は動揺していた。
薄々気付かれているかと疑ったが向こうから話しをして来なかったのであえて言わないでいたのに。
幼「……そうかい。と言うより聞くこと自体が野暮だったようだね」
妹「ううん、そんなことないよ。逆に気持ちの整理が出来た気がすr「なら何で」 」
幼「……なら何で、泣いてるんだい?」
妹「えっ……」スッ……
私は幼馴染に言われて初めて自分が涙を流していることに気がついた。
幼「……本当はまだ諦め切れてないんじゃない?」
妹「……そ、そんなこと…………」
ーそんなことないー
そう言いたいのに言葉が喉から出てこない
妹「……何で……何で……」
幼「…………大丈夫」ダキッ
妹「えっ…………」
気付いた時には私は幼馴染に抱き寄せられていた。
幼「……ボクが側にいてあげる。だから……思ってること全部吐き出していいよ」
そう言われた瞬間、胸の中から熱いものがこみ上げてきた
妹「……何でなの!?何で兄弟なのに……何で……好きになっちゃったんだよ……!普通に考えたらおかしいよ!おかしいのに、こんな思い抱いちゃいけないのに!いくら兄のこと思っていてもいくら好きでも叶う筈ないのに!何でなんだよぉーーーーーーーー!」
とうとう私は声を上げて泣いてしまった
私が泣き止むまで幼馴染はずっと私を抱きしめながら、頭を撫でてくれていた。
幼「(ん?待てよ?何か物凄く大事なことを忘れているようなーーーーーーハッ!)」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
妹「……もう……だいじょぶだから……ありがと」グスッ
幼「そうかい……ところで、泣き止んだところ悪いんだが……今し方重大なことを思い出した……」
妹「……何?」
幼「今の君の涙と独白が全て台無しになるんだが……構わないかい?」
妹「……いいから早く言って」
幼「……わかった……実は君たち兄弟のことなんだが……」
幼「実は君たち兄弟は……『本当の兄弟』ではないんだ」
妹「…………は?」
私には幼馴染の言っていることが理解できなかった。
幼「混乱するのも無理は無いと思う。それともっと早く思い出して置くべきだった……本当にすまない……でも事実なんだ」
妹「……誰から聞いたの?」
にわかに信じられなかったが、幼馴染に限ってこんな冗談を話すわけが無いと言うことも、知っていた。
幼「私が聞いたのはーーーーーー他でも無い君のお母さんだ」
妹「冗談言わないで。だって私のお母さんh「十二年前に亡くなった」」
妹「何で……アンタがしってんのよ」
同じ家族の私でさえ、知らされたのは中学入学の時だったと言うのに。
幼「……少し昔の話をしようか……君のお母さんが亡くなったあの日、私はいつものように兄と遊んでいてね。丁度その時、兄のお母さんの容体が急変したと兄のお父さんが呼びに来たんだ。私も同行させてくれと泣いてせがんでね。だからあの時、私も病院に居たんだよ」
ー君は小さかったから覚えていないかもしれないけどー
そう言って幼馴染は一度言葉を切った。
母は元々体が弱かったらしく、私が産まれて少しして、安堵したせいか一度病院内で倒れてしまい、それからはずっと病院生活だったらしい。だから容体が急変したというのも用意に想像がついた。
妹「なるほど、でも何でアンタが……家族でもないアンタがお母さんから聞いてるのよ」キッ
言葉に多少のトゲを含ませながら、私は幼馴染を睨み返した。
幼「家族……というか君たち兄弟では無くて尚且つ君たちと話す機会が多かったからかな」
妹「それだけで……話したって言うの?私達兄弟には何も言わずに?」
私は何も言ってくれなかった母に憤りを感じていた。言ってくれてたならこんなに苦しまずに済んだのに。
幼「君たちはまだ小さかったからショックを受けてしまうんじゃないかって思ったんじゃないかな、多分」
妹「……お父さんだって知ってた筈じ
ゃ……」
幼「君のお父さんはあの後少しして仕事が忙しくなって今でも世界中を飛び回っているからね。伝えられなかったのも無理は無いと思うよ」
確かに父は私が小学校に上がってから仕事で家を空けがちだった(それは今も変わらないが)。
幼「……もう少し昔話に付き合ってくれるかな?」
妹「…………」
私は返事ができなかった。
幼「……病院に着いてから私と兄は君のお父さんに連れられて手術室の前まで行ったんだ……10分後くらいだったかな、手術中のランプが消えてお医者さんが出てきて言ったんだ、何とか一命を取りとめたけどもう先は長くないって」
妹「ッ…………!」
当時のことを聞いていて私は胸が締め付けられるような気持ちになった。そして同時に何も覚えていない悔しさがこみ上げてきた。
幼「……その後君のお母さんは一旦病室に移されて、そこで目を覚ました」
体をワナワナと震わせている私に対し、幼馴染は過去を振り返るかの如く淡々と、しかし沈痛な面持ちで話していた。
幼「その後、兄達と少し喋ったのち、私と二人で話がしたいと言って君たち家族を一旦病室の外に行かせたんだ。当然私は訳も分からず困惑していたんだが」
幼「私と二人っきりになってから少しして君のお母さんは私に話しかけて来たんだ」
ー十二年前、とある病院の一室ー
妹母「……ごめんなさいね。急に変なこと言い出して」
幼馴染(小学生)「いえ……大丈夫です……」
妹母「……実は兄と妹のことなんだけど……」
幼「兄と妹のこと……ですか?(何で私に……?)」
妹母「うん……実はね……あの子達、実の兄弟じゃないのよ」
幼「えっ……」
妹母「だから……あなたの口から伝えて欲しいの。わたしももう長くは生きて居られないし……それにあの人一人に任せるのは心配だから」
幼「そんなこと言わないでください!絶対助かりますから!!」
普段家族の前で上機嫌に話す妹母からは考えられないくらい弱気な発言だった。
妹母「ありがとう……でも、もういいの」
幼「よくないです!あなたが居なくなったら兄や妹や妹父さんが悲しみます!もちろん私も!」
妹母「うん、だから……その時はあなたが支えてあげてね?」
幼「ッ……!」
妹母「ごめんね……我儘なのは分かってる、分かってるんだけど……」
ポタッ、ポタッ……
そう話す妹母の目からは涙が流れていた。
幼「……取り敢えず分かりました。ですがその我儘は、あなたが、生きて……生きて、二人に伝えてあげて下さい……絶対に……『約束』ですよ?」
妹母「……うん」グスッ
だがしかし、その約束が果たされることは無かったーーーーーーーー
幼「……と言うことなんだけど…………」
妹「ウゥッ……ヒグッ……グスッ」
幼馴染が話終わる頃には妹は涙で顔がグシャグシャになっていた
幼「伝えるのが遅くなって本当にすまない……代わりと言ってはなんだが、思う存分泣いていいよ。全部……受け止めてあげるから」
妹「うぅ……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」
幼「……ゴメン……ゴメン……」ポロッ、ポロ……
二人は抱き合いながら暫くの間泣いていた。
・
・
・
兄「……ったくビックリしたぞ、昼飯ができたから呼びに行ったら二人して抱き合いながら泣いてんだもん」
妹「うっ……///」
幼「あはは……ところで兄、一つ大事な話があるんだが……」
兄「何だよ急に、しかもそんな改まって」
幼「落ち着いて聞いて欲しいんだけど……君と妹君は『本当の兄弟』じゃないんだ……」
兄「何だ、そんなことか」
幼「……へ?」
妹「お兄様、知ってたんですか?」
兄「知ってたって言うか……気づいたって言った方が正しいかな。それと妹よ、いい加減そのキャラやめてくれ、何か違和感あり過ぎて怖い」
妹「ガ―(´○ω○|||)―ン!!(お兄ちゃんに気に入って貰えると思ってやってたのに!?)」
幼「……いつから気づいていたんだい?」
兄「2、3年前かな」
妹「かなり前じゃん!何で言ってくれなかったの!?」
兄「いやだってそりゃあお前……確証があった訳じゃねーし、何より『兄貴と兄弟じゃなくて良かった〜』って言われると思ったし……」
妹「そんなこと言う訳ないじゃん!バカ!!」
幼「あはは……(結局ブラコン&シスコン兄弟と言う訳か……勝ち目が無いな、全く…まぁでも諦めるつもりは無いんだけどね♪)」
兄「あ、そーだ。幼」
幼「ん?何だい?」
兄「『本当の兄妹じゃない』って伝えたってことは、妹に教えたのか?『あの日』のこと」
幼「……あぁ。すまないね、家族の君を差し置いてボクが話してしまって」
兄「いや、良いんだ。むしろ感謝してるくらいだよ。俺なんて未だに話せてなかったし。だから、ありがとな」ニコッ、ナデナデ
幼「と、当然のことをしたまでだよ///」
妹「あ〜兄様ずる〜い。私にも〜」
兄「はいはい、てか兄様言うな……」ナデナデ
妹「や〜♪」
幼「なぁ兄〜、妹君ばかり可愛いがってないで私も可愛がってくれよ〜」ギュウゥゥゥゥ
兄「ええい!腕にしがみつくんじゃない!あと女の子がそんなはしたないこと言うもんじゃありません!!」
幼「嬉しいくせに〜♪」ニヤニヤ
兄「う、嬉しくなんか……///」
妹「あ〜に〜さ〜ま〜?」ゴゴゴゴゴ……
兄「ヒィィィィィィィ!?」
幼「きゃー、こわーい♪(棒読み)」ギュゥゥゥ
幼馴染がさらに強く腕に抱きついてきた
兄「だからくっつくなっての!(当たりすぎて変形してるから!)」
幼「当ててるんだよ♪」フフン
兄「人の心を読むなぁぁぁぁぁぁ!」
ワーワーギャーギャー!
多少の紆余曲折はあったものの、今日も我が家は平和なのであったーーーーーー
ー完ー
初めてのオリジナル執筆、今感じてるこの感覚ががくぅ(疲)と言うヤツなんですかね(笑)
なにせ少ししか小説を書いたことがないので。
少しでも面白いSSだと思ってくれたら嬉しいです!
またちょくちょく書いてこうと思いますので、暇な時にでも見てくれたら幸いです。
それでは〜ノシ
初めまして、physixです。
簡潔ですがコメントさせていただきます。
最初はパラレル系かなと思いましたが、どうやら的外れな予想で、しかも最後までお淑やかではなく少し残念な気もしますが、やはり妹というのはいいなーと実感しました!兄妹SS大好きなんでね!
本当はもう少し書きたいのですが時間がない...ナンテコトダ
次回作楽しみにしてます!他の作品も後々読みます!