2015-07-31 21:50:44 更新

概要

そして伝説へ。


前書き

バトル(ストーリー)メインです。
なので車の勉強らしさがないです。そちらを期待してる方には申し訳ありません。


プオオーン


和「あれから梓ちゃんと唯、毎日走り込んでるみたいね」


澪「みたいだなー」


和「唯もつられて走ってるから二人の成長が見えてたのしいわ」


澪「和も前より速くなってるぞ!」


和「ふふ、ありがとう。それにしても本当にあの二人は飽きないわねぇ…」


キュイィィーーン‼ガオッ

ブォンフ!キャリ‼


唯(やっぱりあずにゃん速いなあ…!余裕でついてくるんだもん)キュイィィーーン‼


梓(唯先輩…前より4駆の良さを引き出してる)ブォンフブォンフ‼


梓(でもまだ車のコントロールと…それにライン取りも下手、かな)


キュキャ‼ガコッ

ブォーン‼


澪「うっひゃあ…梓、速いなあ」


和「唯も速くなって…私も追い付かれちゃうわね」


澪「◯◯峠なら、だけどな」


和「そういえば澪は他の峠にはまだ行ったことなかったわね」


澪「他にもあるのか?」


和「◯◯峠の近くだと…そう言っても遠いんだけど□峠と△峠ってのがあって、地図でみると3つの峠が連なってるように見えるから三連峠って呼ばれてるらしいわ」


澪「他の峠でも走ってみたいな!」


和「近いのは△峠だけど、行ってみる?」


澪「行ってみたい!」


和「…じゃあ行ってみる?いまから」


澪「え?いいのか?」


和「まだ8時前だし、あっちについてちょうど走るの始まるくらいじゃないかしら」


澪「い、行く!行きたい!」


和「なら決まりね。あの二人にも声かけてみましょう」






梓「…私はパスで」


和「あら、どうして?」


梓(だって、△峠は…)


和「梓ちゃん?」


梓「へっ?あ、その、今日は◯◯峠で走ってたい気分なので…」


和「そう…唯は?」


唯「行きたいけどあずにゃん一人で残るのは可愛そうだから私も残る!」フンス


梓「なんですか、その理由…」


澪「じゃあ行くのは私と和だけでいいか?」


唯「うん、大丈夫だよー。今度あずにゃんが行くときに私も行ってみるから!」


梓「あはは…」


梓(ごめんなさい、たぶん行きません…)


和「じゃあ私たちは行ってくるわ。それじゃあまたね」


梓「はい、お疲れ様でした」


澪「じゃあまた来週!」ガチャ


ヴォヴォヴォヴォーーン

ブーン


梓「…さてと。まだ走りますか?」


唯「あったりまえだよ!走ろう!あずにゃん!」






△峠


和「思ったより人がいないわ」


澪「本当だ。これから上がってくるのかな?」


和「まあいないほうが走りやすくていいのだけれど」


澪「そうだな…あ、そういえば」


和「どうしたの?」


澪「上がってくる時にすごい段差あっただろ?変に乗っかっちゃってボディ擦っちゃったかもしれないんだ」


和「じゃあ、あそこの明るいところで見ましょ」


澪「いい所に街灯があるな!移動させるよ」ブーン


和「……あー、下を擦ってるわね」


澪「ほんとだ…けっこうショック」


和「このくらいでショック受けてどうするの…」


澪「そ、そうだよな!それに私…」


和「それに、なに?」


澪「あ、あはは!なんていうか、内緒にしようと思ってたけど言いたくなっちゃうな!」


和「…??」


澪「じ、実は車を買い換えることにしてさ…」テレテレ


和「え!そうなの?」


澪「最近ヴィッツじゃ物足りないって感じてて」


澪「買ってからびっくりさせようと思ってたけど、言いたくてうずうずしてたんだ」


和「なに買うの?」


澪「ふふふ!えっとな…」


ヴォン‼ボボボ

プァンプァン‼


和「ん、団体があがってきたわね…」


澪「あ、あれ?こっちに来るぞ」


ガチャ


「おいおい…この街灯の下は俺の定位置なんだよ。どけ」


和「な、なによ急に」


澪「」ガクガクブルブル


「こんな中途半端な車置きやがって…くそが!」ガンッ


澪「!」


和「!」


「廃車にされたくなきゃこのクソ車どかせ」


和「…」ギロッ


「なんだぁ…その目は」


澪「や、やめなよ、和…」


和「友達の車蹴られて、黙ってられないわ…!」


澪「の、和…」


「なんだか知らねえが、喧嘩売ってるってことだよな?」ギロッ


和「あら?買ってくれるの?」


敵リーダー「上等。俺が復活して最初の獲物はてめえだ」










梓「唯先輩はヴィヴィオのメンテナンスしてるんですか?」


唯「え?」


梓「メンテナンスです」


唯「し、してるよぉ」


梓「してませんね」


唯「なにすればいいかわかんないんだもん…」


梓「調べてくださいって…」


唯「あ、じゃあ、あずにゃんと一緒にメンテナンスしたい!」


梓「そう言うと思って…はい、これ。あげます」


唯「なぁに?これ」


梓「えへへ。開けてみてください」


唯「なにかなー♪」ガサガサ


唯「あ!」


梓「この前言ってたやつです」


梓「これで一緒にメンテナンスできますね!」ニコ


唯「つなぎだぁ!ありがとう、あずにゃーん」ギュー


梓「いちいち抱きつかないでください!」


\ キャッキャッ ワイワイ /






ヴォヴォヴォ


澪「ほ、ほんとにやるのか?」


澪「相手のミラージュ、色んなチームステッカーが貼ってあるし…強そうだよ…」


和「もう後には引けないわ」


和「…バトルまでは一時間あるし、何本か練習してくる」


澪「う、うん…」


和「心配しないで。大丈夫だから」


澪「で、でも!あんなルールまでのっかって…EG先輩にも無断で…」


和「私はあの人たちが許せないの。大丈夫、チームの恥になるようなことはしないわ」


澪「…ありがとう。和なら大丈夫だよ」


和「ふふ、お祈りはまかせたわよ」







いちじかんご!


ヴォーーンヴォヴォヴォ


敵「逃げずにちゃんと来たな」


和「あたりまえよ」


敵「負けたらステッカーを渡す。いいな?」


和「異存はないわ」


敵「後追いか先攻は選ばせてやるよ」


和「…後追いにするわ」


敵「へっ…馬鹿が」ボソッ


和「……」


雑魚「準備いいですかー?」


和「大丈夫よ」


敵「いいからさっさと始めろ」


雑魚「…5…4…3…2…1」


雑魚「スタート!」







和(後追いは正解のはずよ…相手はここの峠に慣れてるみたいだし、ラインを真似すれば…)


和(ただそのペースについていけるかどうか…!)プァァアアアン‼





敵(おーおー。熱いなあ。雑魚のくせに煽りやがって…それが命取りなのを教えてやるぜ)


敵(仕掛けるポイントはこのストレート抜けてすぐ…くくく)ブォンカシュッ‼





和(思ったより離されない…もしかしていけるかも!)


和(ブレーキのタイミングも合ってるし、速さはこっちのほうが上だわ!)プァン‼プァン‼





敵(よし、ここだ…)






和(!?)


和(こんなところでブレーキ…?!この先はストレートだった気が…!)


和(ぶつかる…!?間に合わない…!?ッッッブレーキ!)ガフッ


和「え!?」


和(な、なんで離れていくの…!?はっ!)


和「ちょんブレか…!!」プァン‼プァァアアアン‼


(ちょんブレ:一瞬だけ軽くブレーキを踏むこと)



敵(気付いたとこでもうおせーんだよ。昔からここの峠じゃよく使われる技だ。なにも知らないガキに使うにはもってこいだな)


敵(前の車の走りを真似ばかりしてるとそういうことになるんだぜ。勉強になったろ?くくく…)ヴォフ‼カシュッ‼




和(いやだ…!こんな負け方…!!)










敵「約束通り、ステッカーをよこしな」


和「……」


敵「たしかに。往生際がいいじゃねーか」ビリビリ


和「…っ!」


敵「またコレクションが増えたぜ。これに懲りたらもうここには来ないことだな」


敵「さっさとクソ車に乗って帰りやがれ」


澪「の、和…行こう」


和「………」









こんびに!


澪「……」


和「……」


シーン


澪(こういうときなんて声をかければいいんだろう…)


和「……っく」


澪「…和?」


和「ごめん…我慢してたんだけど…ひっく…」


和「うえっ…ううっ…」


和「うわああああん」ポロポロ


澪「和…」










梓「さて、そろそろ帰りますか」


唯「うん、そうだね」


梓「んー…ゆっくり寝よう」


唯「あずにゃん明日休みでしょ?」


梓「じゃなきゃこんな時間までいませんよ」


唯「じゃあ明日さっそくメンテナンス手伝ってくれない?」


梓「あ、はい。いいですよ」


唯「じゃあ起きたら連絡するね!それじゃあ!」


梓「はい。お疲れ様でした」






キュイィィーーン

唯「…ん?」


唯(あれは…澪ちゃんのヴィッツ?)


唯(和ちゃんちに停まってる。どうしたんだろ?)


唯(あ、澪ちゃんだ)


キキィ ガチャ バタン


澪「あ、ああ。唯…」


唯「澪ちゃんどうしたの?△峠どうだったー?」


澪「…それが、かくかくしかじか」


唯「…え。それ、本当?」


澪「………」


唯「許せないよ…そんなの」


澪「お、おい!唯どこ行くんだ!」


唯「決まってるよ!△峠にいく!澪ちゃん案内して!」


澪「だ、だめだよ!そんなことしたらどうなるかわかんないぞ!」


唯「そんなこと言ったって、黙って見過ごすことなんてできないよ!それに私はチームに入ってないし大丈夫だよ!」


澪「で、でも…」


和「…唯」


唯「の、和ちゃん!」


澪「…ごめん、うるさかったな」


和「あれだけ叫べば嫌でも聞こえるわ」


唯「和ちゃん!△峠まで案内してよ!」


和「…いいのよ、唯」


唯「それってどういう…?」


和「もういいの。私は負けた。明日は先輩にお詫びしてくる」


和「チームの顔に泥を塗ってしまったわ」


唯「わ、私が勝てばいいんだよ!そして剥がすように言ってくる!」


和「唯!!!」


唯「…っ」ビクッ


和「もう、いいの…」


唯「和ちゃん…」


和「ごめん。今日は帰って…」


唯「……」


澪「……」


和「…それじゃあね」ガチャバタン


唯「…っ!」ガチャバタン‼


澪「……ごめん、和」









よくじつ!


唯(あんまり眠れなかった…)


唯(…あずにゃんに連絡してみよう)プルルル


梓『ふわあ…もしもし』


唯「あ、ごめん。まだ寝てた?」


梓『まあ…早起きですね、唯先輩』


唯「う、うん。なんだか寝れなくて」


梓『そんなにメンテナンスが楽しみだったんですね』


唯「そ、そうかも、あはは…」


梓『じゃあ準備できたらいっていいですか?』


唯「あ、うん。待ってるよ」









梓「おまたせしました」


唯「あ、上がって上がって」


梓「いや、メンテするから唯先輩が外に出てください…」


唯「あ、そっか」


梓「あとつなぎ着てください」


唯「なんか綺麗だし、あずにゃんからのプレゼントって思うと着づらくてねー」


梓「はいはい、早く着替えてきてください…憂はいないんですか?」


唯「いるよー。私たちのお昼ご飯つくってくれてる!」


唯「…そして着替えてきた!」ササッ


梓「じゃあお昼までに区切りつけたいんで始めますよ!」


唯「うん」


梓「まずボンネット開けてください」


唯「えと…これかな?」ガチャ


梓「えと、どこかな…あった」カチャカチャ


唯「……」


梓「唯先輩?」


唯「あ、え!?ああ、エンジンルームをまじまじと見るのは初めてかもー」


梓「…なにかあったんですか?」


唯「へ…あ、なんでもないよ」


梓「そうですか…ならいいんですけど」


梓「じゃあ、今から最低限のメンテナンスのやり方を教えてあげますね」


唯「よろしくお願いしますっ」


梓「といっても私たちみたいな素人にできるのは限られてるんですけど…まずオイル系はこまめに自分で見るようにしましょう」


梓「エンジンオイル、パワステオイル、ブレーキオイルの3つは大事ですね。ほら、こことここにあります」


唯「どれがどれ?」


梓「こっちがパワステオイルです。それでこっちがブレーキオイル。ここは中の液体の色が黒くなってきたら交換時期ですね」


唯「エンジンオイルは?」


梓「それはここで見るんです」カチャ スーッ


唯「うわ!なんか伸びた!え!取れた!?」


梓「取れたって…これはオイルゲージといって…あ、ティッシュとか拭くのありますか?」


唯「ティッシュなら車内に…はい」


梓「ありがとうございます。まず綺麗に拭き取ってからまた差し込みます」


唯「うんうん」


梓「そしてまた抜いて…ほら、ここ見てください」


唯「えーと?」


梓「ここのF(上限)とL(下限)の間にあるかどうかをチェックするんです。丁度ラインの間ですね。Lライン以下だったらオイルの補給をするんですよ」


唯「へー。…なんだか面倒くさいね」


梓「な、なにいってるんですか!とても大事なことなので怠らないでくださいね!!」


唯「わ、わかったよ!あずにゃん!」


梓「うーん、ちょっと汚いですね」


唯「茶色だから汚いね」


梓「いやエンジンオイルは大体こんな色ですよ」


唯「え!?透明かと思ってたよ…」


梓「あはは、透明もありますが基本はだいたいこんな色ですよ。たまに赤とか緑に着色してるのもあるみたいですけど…


あ、オイルが綺麗か汚いかの見分けた方は醤油とソースですね」


唯「ふえ?どういうこと?」


梓「醤油みたいにしゃばしゃばだったら汚くて、ソースみたいにどろどろしてたら綺麗な証拠です」


唯「そーなんだー。オイル汚い?」


梓「そう…ですね。そろそろ交換してもいいんじゃないですか?ぶん回してますし」


唯「どうやって交換するの?」


梓「まずオイルを買ってこないとですね。それにジャッキやら色々必要です」


唯「そ、そんなの持ってないよ…」


梓「工具は私の貸してあげます。オイルは今日買いにいきますか?」


唯「うん!さっそく行こう!」


ンキュルルドドドドド


唯「憂はお留守番してるだってー」


梓「そうですか。私、運転するんて乗ってください」


唯「いいの?悪いねえ」


梓「いえ、大丈夫です」


ヴォーーン


唯「……」


梓「……」チラッ


梓「…なにかあったんですか?」


唯「うえ!?な、なんで?」


梓「なんだか元気ないなって」


唯「そ、そんなことないよお」


梓「…嘘です」


唯「うっ」


梓「話してくださいよ。なにかあったんですか?」


唯「じ、実は…」









梓「そんなことが…」


唯「でも和ちゃんはもういいって」


梓「唯先輩」


唯「なに?」


梓「ヴィヴィオのオイル交換終わったら私かえりますね」


唯「え、う、うん」


梓「そして今夜、△峠にいきます」






敵(そろそろ他の峠にも行ってみるか…)


敵(しかし気になるのが◯◯峠の噂だ)


敵(青のデトマソが走ってると耳に入ったが…)


敵(あいつは死んだはず…)


敵(…考えるだけ無駄だな)



ヴォーーンヴォン


敵「ん?この音…」


雑魚「あれはーー…?」


敵(青のデトマソ…?!)


キィ


ガチヤ


梓「……」


敵「てめえは…」


敵(どこかで見たことが…)


敵(…あの時だ。あいつがバトルの時に連れてきた女だ!)


敵(なんでこいつがデトマソを)


梓「…あなたが」


敵「あん?」


梓「あなたがステッカーを…」


梓「…そのステッカーをかけて私と勝負してください。私が勝ったらステッカーを剥がしてもらいます」


敵「これは昨日のインテグラの…敵討ちってか?」


敵「お前誰に勝負挑んでるのかわかってんのか?それにお前はなにを賭けるんだよ」


梓「そんなの負けた後にいくらでも考えます。今はやるのかやらないのか聞いてるんです」


敵「…一時間後だ。用意しとけ」



敵(あいつの車に乗ってるのか…?)


敵(しかし乗ってんのは小娘だ、怖がることはねえ…)





梓(△峠、なつかしいな)


梓(もう来ないと思ってたけど…)


梓(…それより今はどう勝つかだけを考えよう)


梓(昔、言われたことを思い出すんだ)


梓(思い出しながら、一本だけ流してこよう)







いちじかんご!


敵「来たな」


梓「……」


敵「さっさと始めようぜ。その車みてるとイライラしてくんだよ」


敵「先行後追い選ばせてやるよ」


梓「先行で」ガチヤ


敵「…けっ」ガチヤ


雑魚「いいすかー?」


雑魚「じゃ、いきゃーす…5、4、3、2、1」


雑魚「スタート!!」


ヴォンヴォーーン!!!



敵(走りなれてないのに先行だと?なに考えてやがる)キャリリ!!


敵(あの一時間でもさほど練習はしていなかった…しかしこの走り…!)





梓(ラインがわかる。昔と全然違う… )ヴォン!!


梓(これなら、いける)ヴォーーン!!!





敵(なんなんだ、これ…なんなんだよ。あいつの走りに似てる…!)


敵(まるであの女にあいつが乗り移ったような…)


敵(そんなことあるわけねえ!集中しろ…!)ブォンフカシュゥ!!!!





梓(…思ったより差が開いてる)


梓(でも気を抜かないようにしないと…)キャリリ!!ブォーン







敵(そろそろポイントに入る)


敵(後追いでもチャンスがないわけじゃない。ポイント前のストレートで並べば次のヘアピンでインに突っ込める!)


敵(抜かれた動揺から繋がるちょんブレ…効果は絶大だ…)





梓(……来るかな)ヴォンヴォン‼キャリリリリ





敵(よしインに入った!このまま!!)ヴォンパシュ!!





梓(……)クイックイッ





敵(それ以上よせられねえだろ!)キャリリィ!!!





梓(……)ヴォンヴオン!





敵(よし!前に出た!ここだ!)チョン






梓(今!)クイッ ヴォフ!!!





敵(なに!?)


敵(避けて横に並んできやがった…!こいつわかってたな!?)


敵(この狭い道で並んでくるとは…!ミスって死んでもしらねぇぞ…!)






梓(そんな小細工でしか勝つ方法を見出だせない人なんかに、私は負けない…!)ヴォフ‼ヴォーーン!!






敵(このストレートで頭をとったほうの勝ちが決まることは誰でも知っている…)


敵(ここで決まる!!)パシュ‼





梓(……お願い!デトマソ!)ヴォォオオオン!!!!

















梓「約束通り、ステッカーを剥がしてもらいます」


敵「……ああ」



キュウイィーーン


梓「ん?このエンジン音…」


唯「あずにゃーーーん!!!」


梓「唯先輩!?」


キィ ガチヤ


唯「あずにゃん!大丈夫!?」


梓「大丈夫です…っていうか来ないでくださいって言ったじゃないですか!」


唯「心配でいてもたってもいられなかったんだよ!」


梓「は、はあ…」


ガチヤ


和「……」


梓「…いまさっきステッカーを剥がしてもらいました」


和「ありがとう。本当にありがとう…」


梓「いえ、とんでもないです」


梓「それはともかく」


敵「……」


梓「…なんでまたこんなことを始めたんですか?」


敵「…理由なんてねーよ」


梓「あの人が理由なんですよね」


敵「!?」


梓「…なんとなくですけど」


敵「……あいつが羨ましたかったんだ」


敵「みんなに慕われて…なにより車も速い。最初は憧れだったんだ」


敵「チームも活気があった。だから俺は他の峠でも勝負を挑んでチームの名を広めたいと思ったんだ」


敵「でもあいつは地元以外は走らないと言った」


敵「俺は毎日あいつに言った。でも絶対に認めてはくれなかった」


敵「俺が走るのは速さを自慢するためじゃない。みんなで楽しく走ることなんだ…そう言って聞く耳をもたなかった」


敵「だだの力の持ち腐れ…俺は腹がたった」


敵「そんなやつに下には居れねえ…俺は自分の手でやってやろうと思ったんだ」


敵「強さの証が欲しかった…だから分かりやすく負けた奴のステッカーを車に貼ったんだ」


敵「何回もバトルに勝っていくうちに、あいつの背中が見えた気がした」


敵「…でも現実はそう甘くない」


敵「お前がいたあの晩、俺がバトルで負けた後…」







敵『話…だと?』


『ステッカーは返す。だからもうこんなバトルはやめるんだ』


敵『……』


『お前の走りは輝いてる。もっと伸びるはずだ。こんなことしたってお前のタメにならない』


『よく考えてこい。それまで峠には来るな』


『俺が言いたいのはそれだけだ。またお前と楽しく走れる日を楽しみにしてる。それじゃあな』チャリ


敵『……ちくしょう』








梓「…じゃあなんでまた」


敵「…死んじまったじゃねぇか」


梓「……ッ」


敵「俺は毎日考えてた…どうすべきか…」


敵「考え抜いて…またあいつと一緒に走りたいと思った。もう勝ち負けなんかいいって」


敵「でもあいつは死んじまった」


敵「俺はどうすればいいかわかんなくなっちまった…」


梓「だからってこんなバトルを続けなくても…」


敵「あいつが死んだ今、俺には一緒に走りたいやつはいねえ」


敵「続けた理由は、ただそれだけだ」


梓「…じゃあ今日できっぱりやめてください」


敵「なんでお前にそんなこと言われなきゃなんねーんだよ…」


梓「私が勝ったからです」


敵「ステッカーは返したろ」


梓「はあ…ああいえばこういう」


敵「う、うるせえ!」


梓「なら私と一緒に走りませんか?」


敵「なに…?」


梓「走りたい人がいないんですよね?私は代わりになれませんか?」


敵「……」


梓「まだまだあの人には届きませんが…いつでも◯◯峠で待ってます」


敵「……チッ」ガチャ



ヴォーーーン






唯「行っちゃったねー」


和「…なにか昔に色々あったみたいね」


梓「あはは…そうなんです」


唯「だからデトマソは受け取ったって言ってたんだ」


梓「すみません。言うべきだったのかもしれませんがあまり思い出したくなくて…」


唯「全然いいよ~」


梓「ありがとうございます…私たちも帰りましょうか」


和「そうね。本当に今日はありがとう」


梓「いえいえ。ではまた」







こうして△峠でのバトルは幕を閉じました。


△峠での噂は広まりあずにゃんの青のデトマソは瞬く間に注目を浴びることになりました。


最近では◯◯峠でも群を抜いて速く、バトルの申込みも増えたみたい。


ちなみに△峠での和ちゃんの行動をEG先輩は褒めてくれたそうです。







梓「あ、来ましたよ」


唯「おおー、綺麗」


ヴォンフ‼


和「なんでこうマイナーな車ばっかり集まるのかしら…」


澪「えへへ…///」


梓「渋い…トヨタのカレンですね」


澪「かっこいいだろ!」


和「そういえば私たちのチームに入る話はどうする?」


澪「うん。入ることにするよ」


和「そう。じゃあステッカー作っておくように先輩に伝えておくわ」


澪「唯と梓も入ればいいのに」


梓「いえ、私はいいんです」


唯「別に私もいいかなー。理由とかは特にないんだけどね」


和「まあ気が向いたら言ってね」


梓「わかりました」



ヴォンフカシュ キィ



梓・唯・和・澪「…あ」


ガチャバタン


敵「走りに…来てやったぞ」


梓「なに、賭けますか?」


敵「…そこの自販機で飲み物一本ってのはどうだ?」


梓「…悪くないですね」ニコ






1か月後



梓「澪先輩、すごく速くなりましたよ」


澪「そ、そうか!?」


和「ええ。車も変わって前より熱心に走り込んでるから成長が見えるもの」


唯「澪ちゃん褒められていいなあ~」


澪「えへへへへ…///」


澪「カレンはほんとに良い子だ!よしよし」ナデナデ


梓「そういえば和先輩たちのチーム、今度サーキットの大会に出るんですよね?」


和「ええ、そうよ。一応私たちも出る予定なの」


澪「……」


和「…澪?」


澪「はっ!?き、きき、緊張なんかしてないからな!」


梓(わかりやすい)


澪「うう…みんなに見られながら走るなんて恥ずかしいよお…カレン~」シクシク


和「ミスしても誰も笑わないわよ」


唯「その大会ってチームに入ってない人も出られるの?」


和「出られるわよ。自分の力を試すにはいい機会じゃないかしら」


梓「唯先輩でたらどうですか?」


唯「いいよいいよー。私は山で走ってたいし」


梓「あー…なんとなくわかります」


唯「応援にはいくよ!」


和「ふふ。よろしく頼むわね」


敵「よお」


梓「あ、来てたんですか」


敵「ああ。△峠にも行ったんだがデトマソ待ちがけっこういたぜ」


梓「はあ…なんだか最近走りにくいんですよね」


敵「有名になっちまったからな」


唯「なんだかんだいってミラージュも有名だったからねー。それに勝ったからあたりまえだよ!」


敵「なんだかんだってなんだ、なんだかんだって」


澪「梓は△峠に行ってないのか?」


梓「そうですね。一回行ったんですけどバトルの申込みがいっぱいあって…最近はなんだか行きづらいです」


唯「バトルはしたの?」


梓「スイフトスポーツとシルビアとだけバトルしましたよ」


唯「勝った?」


梓「ええ、まあ…」


唯「…ふーん。すごいね」


唯(最近あずにゃんがどんどん有名になってく…)


唯(前は私の方が速かったのに…澪ちゃんもだんだん上手くなってきて)


唯(和ちゃんにも勝てないし)


唯(なんだか、悔しいな…この四人で一番遅いのは私)


唯(私だけ、置いてかれてる)


梓「唯先輩?聞いてますか?」


唯「ほえ?ごめん、聞いてなかった」


梓「ちょっと早いですけど私たちはもう帰ります。唯先輩はどうするんですか?」


唯「んーもうちょっとだけ走ってくよ」


梓「…私、残りましょうか?なにかあった時のために」


唯「大丈夫大丈夫~。さらっと流すだけだからさ!」


梓「そう、ですか」


澪「じゃあな唯。また来週」


唯「うん、みんなバイバーイ」フリフリ


唯「…私も頑張らないと」








2週間後


梓「…今週も唯先輩きませんね」


和「メールはしてるんだけど返信がないのよ」


澪「先週も来てないし…どうしちゃったんだろ」


和「私が家を出るときにはヴィヴィオはなかったわ」


梓「なにかあったんですかね」


和「…最近走りが安定してないのが原因かしら?」


梓「…やっぱり気付いてましたか」


和「ええ。澪はコツコツ教えられた通りに練習したから伸びてるけど」


梓「最近、唯先輩は感覚で走ってますね」


澪「え、え…そうなのか?」


和「ここのところ基本を忘れて自分の走りをしているように見えるわ」


梓「ですね。なので走りにもムラが出て前より遅くなってます」


和「遅いってわけじゃないのだけれど、速くなることもなければ遅くもならない。これから伸びる走りをしてないのよ」


澪「二人ともよく見てるな」


梓「正直伸び悩んでると思います」


澪「…走るの嫌になっちゃったのかな」


和「それはないと思うけど。またひょっこり戻ってくるわよ」


梓「いまはそっとしておきましょう。時期を見計らってアドバイスすれば大丈夫だと思います」


澪「そうだな…」


和「元々、私たちも放っておいたのが悪かったわ…」


梓「そうですね…。私は楽しく走れればいいと思ってましたが唯先輩は違ってたみたいです」


澪「どういうこと?」


和「唯は私達より速く走りたいっていう願望が強かったの」








梓「ふう…今日はここまでにしときます」


澪「そうか。じゃあ次、私が行ってくるよ」


「澪ちゃん走るのー?」


澪「あ、はい!」


「じゃあ俺と走らない?」


澪「いいですよー」


澪「じゃあ行ってくる」


梓「はい、気を付けて」


梓(…唯先輩、今週も来ないのかな)



ヴォボボボ

キィ



ガチャ ガチャ バタン バタン


梓(誰だろう…?)


梓(あのチーム名…男さんの所だ!)


「…君だったのか」


梓「…あ、あなたは」


「昔にちょっと△峠で顔会わせただけだったね。その時は車も知らない女の子だったが…」


「俺はいま、このチームのリーダーをやらせてもらっている」









「そして前のリーダーの車…そのデトマソは本当は俺が乗るはずだったんだ」








梓「え…?」










「なので悪いがデトマソをかけて勝負をしてほしい」


梓「デトマソを…」


「ああ。これならお互いが納得できると思ったんだが…」


梓「……」


梓「……わかりました」


「…決まりだ。時間は来週の日曜日、場所は□峠でどうだ?」


梓「□峠、ですか…」


「みんながそいつの帰りを待ってる。そいつも□峠を走りたがってる。…昔のように」


梓「……わかりました。□峠でやりましょう」


「決まりだな。じゃあ来週楽しみにしてるよ」


ヴォン‼ヴォボボボ


梓「…」


和「ねえ、いまの…」


梓「□峠の人たちみたいです」


和「…いつ?」


梓「来週の日曜日です」


和「□峠は強者ばかりよ…大丈夫?」


梓「わかりません。明日から□峠の下見に行ってきます」








梓(デトマソは…私が乗るべきじゃない…)


梓(ちゃんと乗ってくれる人がいたんだ)


梓(バトルに勝っても負けても悔いが残りそう…だったらバトルはしないでそのまま返したほうがいいのかな)


梓(…とにかく今日は□峠に行ってみよう)




ヴォン‼キィ


梓(これが、男さんが走っていた場所…)


梓(初めて走ったけどけっこう距離がある。そして高速コーナーが目立つな…)


梓(タイヤがたれる前に勝負が付けばいいけど…)


「おい、あれ」


「…男さんのデトマソだ」


「帰ってきた…」


梓(…今度はさっきより速く走ってみよう)ガチャ


ヴォーン


梓(まず最初のストレート…ここを曲がったら最初の高速コーナー)ヴォン‼


梓(速度が上がると分かる…路面がひどい)


梓(ハンドルが持っていかれる)


梓(左足ブレーキを使ってラインを調整して…)


梓(二つ目のストレート…先行ならここで離せれば有利になるかも)


梓(ここを抜けてヘアピン…からの緩いコーナー)クイッ




「上手いな」


「ああ。噂になるだけある」


「…どうなると思う?」




「さてな。やるのは俺じゃない」


「俺はあの子を信じるだけさ」





梓「こんなものかな」


梓(やっぱり私は…デトマソに乗っていたい…)


梓(勝てるかな…)


梓(ねえデトマソ…お前はどっちに乗られたい…?)ナデナデ


デトマソ「……」


梓(…今日はもう帰ろう)





梓の練習は毎日続いた。



そして日曜日。











□峠 麓付近(ゴールライン)


「…来たか」


梓「こんばんは」


「じゃあさっそく始めようか」


梓「はい」


「おい、始まるぞ!」


「今夜、三連峠で一番速い奴が決まる…!」


「ひえー俺まで緊張してきたよ…」


梓(相手はスターレット…加速についていけるといいけど)


「言うのを忘れてたが、相手は俺じゃない」


梓「…え?」


「君の相手はこの子にまかせてある」


唯「久しぶり。あずにゃん」スッ


梓「え、あ、…唯、先輩?」


梓「な、なんでここに唯先輩が…」


唯「実はね、この前」





ーーーーーー


3週間前




唯「…私も頑張らないと」


唯(ヴィヴィオのこと、だんだんわかってきたけどやっぱり最近は馬力に不満があるんだよね)


唯(ヴィヴィオに飽きたわけじゃないけど、やっぱり排気量の差は感じるよー)


唯(正直あずにゃんがミラに乗ってた時はお互い軽だったし楽しかったけど…)


唯(最近は私と走ってくれないんだよなあ)


ブォンフ キィ


唯(…ん?あれは)


「……」ガチャ


唯(スターレット…グランツァ)


「…そこの君。ちょっといいか?」


唯「…なんですか?」


「最近◯◯峠と△峠で青のデトマソが走ってると聞いてね」


唯(また、デトマソ…)


「ここらじゃ一番速いんじゃないかって噂だ」


「君も◯◯峠を走ってるんだろ?なにか知らないか?」


唯「…その人、私の知り合いです」


「なら話は早い。バトルを申し込みたいんだが」


唯「……です」


「ん?なにか言った?」


唯「…私に勝てたら伝えておいてあげます」


「…なるほど」


唯「どうしますか?」


「やるしかないだろう」


唯「よろしくお願いします」


「俺は□峠から来た。今日はよろしく頼む」


唯「あ、はい」


唯(□峠からなんて珍しいなあ…)


「俺は後追いでいいかい?」


唯「…大丈夫ですよ」







ヴォボボボキュゥインキュゥイン


ブォンフカシュブォンフカシュ


唯(うわー…知らない人とのバトルってこんな緊張するんだ…!)


唯(負けたく、ないな…)


唯(ていうか、なんであんなこと言っちゃったんだろ…私)


唯(ええっとハザードをたいて…)


唯(…いくよ、ヴィヴィオ!)キュィイイン!!








「じゃあよろしく頼むよ」


唯「………」


「…そんなに落ち込まないでくれ」


唯「…はい」


「どの世界にも上には上がいる」


唯「……」


「三連峠じゃ□峠が一番レベルが高い。そう悔やむことじゃない」


唯「□峠…あなたみたいに速い人がたくさんいるんですか?」


「ああ。一応俺は□峠の頭をやってる」


唯「なんでそんな人が◯◯峠に…?」


「元々デトマソは俺が乗るはずだったんだ」


唯「え!」


「前のリーダーが、もしデトマソを降りるようなことがあれば俺が乗り継ぐことになってたんだ」


「でもリーダーが亡くなって、その人の奥さんが車を処理してしまったと聞いた。勝手に廃車にされたかと思っていたが」


「調べてみたら奥さんの知り合いが今の乗り手の人に渡してしまっていたんだ」


唯「…あの」


「なんだい?」


唯「私もあなたみたいに速くなれますか?」


「…正直いうと厳しいと思う。車の制御も雑で性能を出しきれてない」


唯「そうですか…」


「…今から□峠にくるか?」


唯「え…?」


「速くなりたいんだろ?だったらついてくるといい」











「…驚いたよ。まさか2週間でここまで成長するとは」


唯「ありがとうございます!」


「センス…ってのは本当にあるんだな」


唯「センス、ですか?」


「ああ。君には俺から教えることはもうない」


唯「え…わ、私はもっと速くなりたいです!」


「充分速いさ。今だって俺が抜かれちまってる」


「君が俺に勝った事は事実。□峠じゃこのヴィヴィオの話題で持ちきりさ」


唯「そうなんですか?」


「ああ。天才が現れた、ってね」


唯「え、えへへ///」


「君には教えてくれる人がいなかった。だから伸びなかった。ただそれだけだったんだよ」


唯「…感謝してます」


「じゃあ感謝の印に1つ頼まれてくれないか?◯◯峠のデトマソについてなんだが」


唯「え、あ、はい」


「君が俺の代わりにバトルしてくれないか?」


唯「…え!?」


「デトマソに勝ちたかったんだろ?」


唯「たしかに、そう、ですけど…」


「じゃあ勝てば一石二鳥ってわけだ」


「それに俺も唯ちゃんとデトマソの走りが見たくなってね」


唯「で、でも負けたら…」


「その時はその時さ。悔いはない」


「やってもらえないか?」


唯「……わかりました。やります。私、やります!」


「よし決まりだ!もう一本走ろうか!」


唯「はい!!」





ーーーーーー




梓「だから◯◯峠には顔を出さなかったんですね…」


唯「うん」


唯「私ね、ずっとみんなの背中を見てた」


唯「みんな速くて、置いてかれてた」


唯「でもね、今は違うよ」


唯「私とあずにゃん、どっちが速いかな?」


梓「唯先輩…私は…」


唯「私は勝つよ。あずにゃんに勝って三連峠で一番になる」


唯「…じゃ始めよっか」









□峠 二つ目のストレート(ギャラリーポイント)



澪「和のやつ、遅いなあ」ソワソワ


澪「まだ仕事終わらないのかな?」


和「ふう、おまたせ」


澪「やっと来たか!もうすぐで始まっちゃうとこだったよ」


和「仕事を早めに切り上げるのに苦労したわ」


澪「間に合ってよかった」


和「…それにしても梓ちゃんとは随分、差が開いちゃったわね」


澪「そうだな。梓はもう私達のいる場所とは違う…ずっと上のステージにいる」


和「なんだか、嬉しいわね」


澪「ああ。誇らしいよ」


和「今日の相手はスターレットだったわよね?」


澪「うん。三連峠だと一番速いんじゃないかって」


和「手強そうね」


澪「先輩が言ってたけど梓が勝てば…」


和「そのままの通り、三連峠で一番速いことになるわね」


澪「…緊張してきた」


和「…私も」





ヴォヴォーン


「お、上がってきたぞー」


澪「梓だ!」


和「ま、待って…あれは…」


キィーン


澪「え…!あれは唯のヴィヴィオ?」


和「そ、そうみたいね…でもなんで」


「いま下から報告あったぞ!スターレットに勝ったヴィヴィオがデトマソの相手をするらしい!」


「まじかよ。あのスターレットに勝つなんて…」


「最近噂になってたろ。天才のヴィヴィオ乗りが現れたって」


「本当だったんだな…」


澪「き、聞いた?」


和「うん…私にはは何がなんだか」






□峠 下りスタートライン


ガチャ バタン


梓「…本当にやるんですか」


唯「やるよ。私ははっきりさせたいの。どっちが速いか」


梓「私は唯先輩と楽しく走れればそれで…」


唯「…私が嫌なの。もう置いてきぼりは嫌」


梓「置いてきぼりなんて…してませんよ!」


唯「…怖いの?私に負けるのが」


梓「…は?」


唯「どうなの?」


梓「…上等です。相手してあげますよ」


唯「30分後に、スタートね」









「あのヴィヴィオ、短期間で力を伸ばしてったらしいぜ」


「うげー。センスの塊ってわけか。いいよなーそういうやつ」


「相手のデトマソは努力の積み重ねでここまで登り詰めたらしいぞ」


「勝つのはセンスか…努力か…」






澪「なんだか複雑なことになってるな…」


和「さっきあそこにいる人たちに聞いたんだけど、唯は最近□峠で練習してたみたい」


澪「なんでだろう…」


和「後から本人に聞いてみればわかるわ。それより今はこのバトルを見届けましょう」









「よーし、じゃあ始めるぞー」


キュゥインキュゥイン‼ヴォボボボ

ヴォンフ‼ヴォンフゥ‼



梓(唯先輩…なんでそんなに速さにこだわるんですか)


梓(みんなで楽しく走れればそれでいいじゃないですか…)




「5…4…3…2…1…」




唯(私は速い。誰にも負けない)


唯(もう誰も私の前を走らせない…!)







「スタート!!」






ヴォンキャリリ‼

キュイン‼キュイン‼




「頭はデトマソだ!」


「ヴィヴィオも負けてないぞ!」






梓(やっぱり加速はこっちが上…でも下りで馬力はアテにならない)





唯(出だしで負けるのはいつものこと…)


唯(ここでは高速コーナーで勝負が決まるんだ…!)






ヴォンフ‼キャキャ‼


梓(最初の高速コーナー…!)


梓(左足を使ってギリギリに……)チラッ


梓(!?)






唯(甘いよ…!)キャリリ!!!!






梓(もう仕掛けてきた…!?)





唯(……)クイッ





梓(ん…!?)


梓(アウトから来るなんて舐めた真似してくれるじゃないですか…!)ヴォンフ‼





唯(これは抜きに行くためじゃない…プレッシャーをかけるだけ)


唯(これ位で動じてもらっちゃ困るよ)






梓(路面が悪くて車が跳ねる…!)


梓(…よし、1つ目のコーナーは抜けた!)


梓(まさかこんなに早く仕掛けてくるなんて…)





唯(少しだけど車の挙動がブレた…案外精神面は脆いのかな)


唯(…いや何回も戦ってきてる。このくらいじゃ崩れるわけない)


唯(…でも絶対崩れないってわけじゃない!)ヴォンフ‼キュイイイン!!!!






梓(ここのストレートで離す…!)ヴォンフ‼






唯(離される…でもコーナーが続いてわかってきた…)


唯(あずにゃんは対向車の恐怖感からセンターを割って走ってない。先行を走る時、それは後々命取りになる)


唯(その分後ろは気にしなくていい)


唯(…今ならわかる。あずにゃんが走ろうとしてるラインが)





梓(ヘアピン…来る?!)チラッ


梓(来た!!)


梓(またアウトから…!)クイッ





唯(少しでいい…少しでもプレッシャーを感じてくれれば)





梓(くっ…)


梓(させませんよ…!)






唯(防がれた、か…まあここで抜く気はないからいいんだけど)


唯(防がれたってことはプレッシャーを感じてるってこと)


唯(面白いくらい予想通りの展開だよ)






梓(いつでも抜けるっていうサインなの…?)


梓(…ッッ!)ヴォンフ‼





唯(…ペースが上がった?)


唯(…あはは、この先でそれはまずいよ)キュイン‼キャキャ





梓「あ!!」


梓(この先は高速コーナー…!焦ってコースを読み間違った…!)






唯(ここだ!)グイッ





梓(やっぱり来た…!!)


梓(オーバースピード…インにつけない!!)






唯(この先で抜くつもりだったけど、こんなに早くチャンスが来るなんてあっけなかったな)


唯(この勝負、もらった!)キィイイイン!!!!






梓(並ばれた…!このままじゃ前を取られる…!)クイックイッ


梓「くそ…ッッ」







唯(取った…前を取った以上このまま行かせてもらうよ!)


唯(どこまで付いてこれるかな…?)







梓(なにを焦ってたんだ私は…こんなんじゃ勝てるわけない)


梓(いつもの走りをすれば必ず…!)ヴォオオォン







唯(…この先はまた緩いコーナー。ほんとはここで抜くつもりだった)


唯(□峠の走り方、見せてあげるよ…!)キャリリ‼







梓(!?)


梓(唯先輩…そっちは側溝ですよ…!)




キャキャー





梓(綺麗に曲がっていく!?)







唯(蓋のない側溝で車体の荷重をめいいっぱい外側の後輪にかければ蓋のない部分をショートカットできる…だからギリギリ一杯で曲がっていくことが出来る)


唯(後ろを走ってる時はインのさらにインにつけることが出来るんだよ!





梓(なにが起こったの…!ヴィヴィオのタイヤが側溝の真上を走っていった…?)


梓(なにか…なにかあるはず!)







唯(これが□峠の走り方…!)








梓(離された…!)ヴォンフ‼


梓(このままじゃ…!)ヴォオオォン








唯(差は縮まらないよ…ここからもっと勾配がキツくなる)


唯(タイヤの食い付きもある。でもこの一本で勝つためにフルで使っていくよ…!)キャキャ‼







梓(ペースが上がった?…なにか変だ)ヴォオオォン


梓(…ブレーキだ!ブレーキのタイミングがおかしい!)


梓(さっきより大分速くコーナーに突っ込んでる)


梓(それじゃタイヤがもたないですよ…!)








唯(差が縮まらない…?)


唯(付いてくる気がないの…?)


唯(…じゃあ遠慮なく行かせてもらうよ!)キュイン‼







梓(くッッ…)


梓(でもこのペースに付いていかないと負ける)


梓(行くしかない…!)ヴォオオォン‼






唯(来たねあずにゃん)


唯(ゴールまであと半分…)


唯(絶対に抜かせない…!)






梓(二つ目の長いストレート…ここで少しでも…!)ヴォンフ‼





キャキャーキュイン‼

ヴォオオォンキャキャ‼






澪「ゆ、唯が先行だぞ!」


和「梓ちゃん、抜かれたのね…!」


澪「あ、あんなに速かったのか、唯のやつ…」


和「□峠でとんでとない怪物になっていたのね…」


澪「梓…大丈夫かな」








唯(少し差が縮まった…)


唯(でも私の勝ちは変わらない…!)






梓(これじゃダメだ…!差が縮まっても抜くチャンスが少ない!)


梓(コーナーも残り少ない…)


梓(どうすれば……!)


梓(……アレ、やってみるか!)ヴォオオォン


梓(仕掛けるのは最後のコーナー抜けてのゴールまでのストレート!!)ヴォンフ‼







唯(もう少し…もう少しで私が一番なる)


唯(デトマソは可哀想だけど、賭けにのった自分を恨んでね…!)


唯(ここのコーナー抜ければ終わりだよ!)キャキャー‼


唯(…最後のコーナーでも仕掛けてこない?あとはストレートしかないけどそこで抜けるわけがない)


唯(諦めたの…?!)









梓(今だ!!)パチッ









唯(!?)


唯(デトマソが消えた!?)







梓(ブラインドアタック…)


梓(ある漫画の手だけど…場数が少ない唯先輩には効果的なはず…!)


梓(ヴィヴィオは車体が小さい…道幅が広いほど頭を入れられる!)






唯(デトマソは…!?さっきまで後ろにいたのに!)


ヴォオオォン!!!!


唯(!?)


唯(これはヴィヴィオの音じゃない!)







梓(並んだ!)パチッ







唯(な、なんで横に…!)


唯(そ、そんな!横に無理矢理つっこんでくるなんて!)






梓(いっけえええええええ!!)ヴォオオォン!!!!


唯(させない…!絶対私が勝つんだ…!)キィイイイイイン!!!!








「来たぞ!」


「どっちが前だ!」



ヴォオオォン‼ キィイイイイン‼













「デトマソだあ!!」


「まじかよ!抜き返したのか!」


「今夜のバトルはデトマソの勝ち!デトマソの勝ちだ!」











唯「……」


「ありがとう唯ちゃん。よくここまでやってくれた」


唯「ごめん、なさい」


「いいんだ。どの道俺がやってたとしても負けていたさ」


唯「ぅうっ…ヒック…」ポロポロ


梓「…唯先輩」


唯「勝ちたかったよお…」ポロポロ


梓「やっぱり唯先輩はすごいです」


唯「ふえ…?」


梓「小細工を使わないと勝てなかったので…本当に速かった」


梓「でもこの勝負に勝って思ったことがあります。私はまだまだ上に行きたい」


梓「どの世界にも上には上がいます。私はその人たちと戦ってみたい」


梓「でも立ち向かうのは一人じゃ無理です。…唯先輩、私と一緒に戦ってくれませんか?」


唯「あず、にゃん…」


梓「もちろん勝ち負けが大事ではないです。私はみんなと楽しく走れればそれでいいんです」


梓「車は速ければいいってもんじゃないんですよ。一緒に楽しんで行きましょう?」


唯「あずにゃん…ごめん、わたし…」ポロポロ


梓「いいんですよ。速さを求めることは悪いことじゃありません」


梓「でも勝敗ばかり気にしてると周りが付いてきてくれません」


唯「うん…うん…!」


梓「そうならないために…ちゃんと私が付いててあげますから」


唯「ありがどう…ぐすっ」ポロポロ












(いいオーナーに乗ってもらったな、デトマソ…)


(お前はそういうオーナーを引き付ける何かを持ってるのかもしれないな)


(俺には…乗れないわけだ)









男「…なあ」


「ん、どうしました?」


男「…結婚したらこいつをどうするか迷ってるんだ」


「デトマソを、ですか…?」


男「ああ…誰かに乗ってもらいたいんだが」


「え、手放すんですか?走りを辞めるならわかりますが何も車まで…」


男「しっかり区切りをつけたいと思ってな」


「……でしたら俺に乗らせてください」


男「…お前は、ダメだ」


「な、なんでですか!」


男「お前は速い。だが速さばかりを求めてる」


「それはそうですよ!勝たなきゃ意味ないじゃないですか!」


男「…それじゃあ本当の速さというモノにはたどり着けない」


「それはどういう…」


男「それが分からない内はこいつは渡せない」


「……」









(あれから男さんが死んで、俺はリーダーになった)


(でもチームのメンバーは明らかに減っていた)


(速さを求めすぎて、付いてこれない奴等は辞めていった)


(どうしようもなく『デトマソが戻ってくれば』…そんな考えに至ってしまったわけだが)


(はは…なにがいけなかったか、今わかりましたよ)


(もう三連峠はこの子達にまかせても大丈夫…)


(ですよね…男さん)



澪「おーい、唯ー!梓ー!」


和「どうやら決まったみたいね」


唯「のどがぢゃぁああん!」\ア,コラ‼ハナミズツケナイデ‼/


梓「…あはは」









後に青のデトマソと赤のヴィヴィオが全国の峠に名を轟かせることになることはまた別のお話。















唯「あずにゃーん」


梓「どうしました?」


唯「なんかね、見たことない車が止まってるんだー」


梓「あれは…プジョーですね」


唯「ええ?日本の車?」


梓「いえ。フランスです、たしか」


唯「…走ってる人かな?」


梓「どうでしょうね」


「あら。唯ちゃん、梓ちゃん、久しぶりね♪」


梓「へ?」


唯「む、ムギちゃん?!」


紬「そうよ♪」


梓「仕事でフランスに行ってたんじゃ…まさか」


紬「仕事は一段落したから戻ってきたの」


紬「色々噂聞いたわよー。二人とも速いそうじゃない♪」


唯「…あー。そういうことかー」


紬「実はあっちにいる時にりっちゃんから電話があって、みんな車に夢中っていうから仲間外れは嫌だなって思ったの!」フンスッ


紬「それからいつ日本帰ってきてもいいようにサーキットで腕を磨いたのー♪」


紬「ねえ。一本、私と走らない?」


梓「……唯先輩、ここは私にまかせてください」


唯「えー!あずにゃんずるい!私にやらせて!」


紬「もー。ちゃんと二人とも相手にしてあげるから♪」


梓・唯(上から目線…)イラッ


梓・唯「サーキットで意気がって峠を舐めると痛い目にあいますよ(あうよ)」


紬「うふふ、楽しみだわ♪」





こうして◯◯峠の夜は更けていくのでした。










唯「あずにゃんが走り屋に?」 完




後書き

ぐだぐだでしたが、無事終わらせることができました。
無理矢理終らせた感が半端ない。
いいオチが思い付いてなかったのが駄目でしたね。

ちなみに続編も頭の中には出来上がってます。書くかは未定です。


そして余談ですが私の愛車はデトマソです。もちろん青。
これをずっと書いてたら「あれこれあずにゃん乗ってたんじゃね?」というほどまで錯覚してしまう始末(アカン)


とにかくこれにて終わりです。
本当に読んでくださった方、ありがとうございました。


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せれねさんから
2015-07-29 14:42:01

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せれねさんから
2015-07-29 14:42:02

このSSへのコメント

6件コメントされています

1: せれね 2015-07-30 19:41:14 ID: jHYlHJbr

ここにきて唯と梓の闘いかー
熱くなってきましたなぁ

2: すめし 2015-07-30 22:17:21 ID: hEFrws1Q

せれねさん
前回もコメントありがとうございます。
コメント頂けると思っていなかったので凄く感激でした。

色々ぐだぐだとパクりがありますがもう少しお付きあいください。

3: せれね 2015-08-01 14:03:16 ID: AsqZobD6

完結お疲れ様です。
続きが気になる展開ですが....面白かったです。

4: すめし 2015-08-02 22:41:44 ID: gReU4_ep

ほんとに見てくださってありがとうございました。
気が向けば続編かきます。長編は疲れたので変なss書いてきます。

5: SS好きの名無しさん 2019-06-23 19:31:22 ID: S:kb4OZe

これは、面白い!とても続編が気になります!作品一覧を見るともう書いていないようですね、、、、、残念です、こんなに面白いのに、、、また気が向いたらぜひ作ってくださいね!

6: SS好きの名無しさん 2019-10-27 23:27:14 ID: S:j7xjXI

今更だけと、ムギちゃん最後にチラッと出てるのにタグ付けされてない(´・ω・`)


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