竜と龍
男「お前だな」
魔剣「お主は誰じゃ」
男「すべての竜を殺す。そのためにお前の力をよこせ」
魔剣「ほう、わしの力をよこせじゃと?何を馬鹿なことを・・・」
男「よこす気がないなら力ずくででもいただくぞ」
魔剣「出来るものならやってみろ!」[バチバチッ]
男「ぐああああああああああああああああ」
魔剣「お主程度の人間は、お主自身の憎しみで消えてしまうのが良いじゃろ。分不相応な人間にはちょうど良い」
男「この程度・・・」
魔剣「何?」
男「この程度、喰らい尽くす!」
魔剣(こやつ、力ずくでねじ伏せおったわ・・・恐ろしいものよ・・・)
男「お前の力をいただくとしよう」
魔剣「・・・わしの負けじゃ」
男「そうか、ではいただくとしよう」
魔剣「・・・その前に聞きたい」
男「なんだ」
魔剣「お主はなぜ、そこまで龍を憎む」
男「・・・俺の村を竜が焼き払い、皆をなぶり殺しにされたからだ」
魔剣「ならばなぜお主は生きておる」
男「その竜に見逃された」
魔剣「見逃された?」
男「貴様を生かすのは我の気まぐれだと、力無き者よ我を憎め、我を恐れよ、我と戦う力を得て我を楽しませよ、と」
魔剣(おかしい、儂が文献で読んだ龍はそこまでおぞましいものではなかったはずじゃ・・・)
男「・・・話は終わりだ。貴様の力をいただくぞ」[ドスッ]
魔剣「ぐふっ、儂の力が・・・抜けていきおる・・・」
男「・・・もう二度と会うこともないだろう」
魔剣?「ぐ、う」[ドサッ]
(儂は、ここで死ぬのか・・・それもまた、仕方のないことかもしれぬ・・・じゃが、もっと、世界を見たかったな・・・)
ー魔剣の居た場所の近くの小屋ー
魔剣?「う・・・儂は・・・生きておるのか・・・」
少女「お目覚めですか?」
魔剣?「お主は・・・?」
少女「この小屋に住んでいるものですよ」
魔剣?「そうか、お主がここまでわしを運んできてくれたのか・・・?」
少女「いえ、私ではないですよ?」
魔剣?「じゃあ、誰が・・・」
少年「姉さん、怪我してた人は目を覚ました?」
少女「ちょうどいいところんきたわね、この子があなたをここまで連れてきたんですよ」
魔剣?「お主が助けてくれたのか。礼を言う」
少年「いえ、気にしないでください。薬草採取の帰りに倒れていたので驚きましたよ・・・」
魔剣 ?「そういえば、傷の手当てもしてもらったようじゃな・・・少年、お主がしてくれたのか?」
少年「応急処置はしましたが、本格的な治療は姉さんがしてくれました」
魔剣?「そうか・・・助けていただき感謝する」
少女「良いんですよ、助け合うことも時には大切ですから。ところで、質問なのですが」
魔剣?「わしに応えられることであればお答えしよう」
少女「あなたの傷を診させていただいたたのですが、あなたから何かを強引に引き剥がしたような痕があったのですが何かあったんですか?」
魔剣?「それは・・・」
(どう答えれば良いのじゃ・・・)
少年「姉さん、流石に踏み込みすぎだよ・・・」
少女「ごめんなさい、答えにくいようなことをお聞きしてしまって・・・」
魔剣?「い、いや気にしてないから大丈夫じゃ。儂からもひとつ質問しても良いか?」
少女「私達にお答え出来る様な事でしたら」
魔剣 ?「龍とはいったいなんなのかをお聞きしたい」
少女「人が存在するよりも昔からこの世界に存在し不死の象徴や自然の恐ろしさを象徴する存在。
龍は滅多に人前に姿を表す事は無く、その姿を見ることが出来た者は幸せに暮らせる等の伝承がある
故に、その力を手に入れようとした者もいたとされ、龍を狩ろうとするものも多くいたとされている
しかし、龍の力を手に入れようとした者達は悲惨な最後を遂げていると言われていますね」
魔剣?「やはり、儂のもつ情報と同じじゃな・・・」
少女「すみません、お役に立てるような情報がなくて・・・」
魔剣?「気にせんでくれ。少し気になった事があった故、お聞きしたのじゃ」
少女「なら良いんですけど・・・」
魔剣?「ところで、儂の傷はどうなのじゃ?」
少女「・・・深刻ですね。気の流れが無理矢理変化させられた痕がありました」
魔剣?「気の流れ?」
少女「わかりやすく言い換えますと
これは全ての生物に言えることなのですが、体内に自然のエネルギーを取り込み、それを自身の体内で変換、使用することです」
魔剣?「それを使用することは誰でもできるのか?」
少女「誰にでもできますよ」
魔剣?「そうなのか?」
少女「ですが、意識してできるのは身体能力を僅かに上げることや、体温を上げること等の日常生活では使える程度のことですよ」
魔剣?「では、それ以上のことを出来る人間はいるのか?」
少女「そうですね・・・生まれ持って出来るか、龍かですね」
魔剣?「それ以外ではないのか?」
少女「それ以外だと確か・・・体内の自然エネルギーを変換、使用するのを強引にこじ開けることで、できるようになると聞いたことがあります」
魔剣?「その方法で力を得ようとする人間は多そうじゃな」
少女「その方法で、力を得ようとした者は、ほとんどがこじ開ける際に、自らが開こうとしているエネルギーに飲み込まれるか、運良く生き残ったとしても
肉体が、耐え切れず急激な老化現象がおこる。そう聞いたことがあります」
魔剣?「そうなのか・・・」
少女「それで、話を戻しますとあなたの場合はその自然エネルギーを変換、使用する場所が強引に変更させられていました」
魔剣?「その・・・儂は、もう力を使えんのか?」
少女「不思議なことに、あなたの場合は自然エネルギーの変換、使用を行う場所が二つあったようなので片方だけ無事でした。しばらくすれば治りますよ
あと、剣のようなものでの刺し傷もあったのでそれが完全に塞がるまでは安静にしていてください」
魔剣?「わかった、感謝する」
少女「それと、あなたの本来の力は発揮できないことを覚えていてください」
魔剣?「そう・・・か・・・」
(つまり、儂の魔の部分はないということか・・・これでは魔剣などと名乗れぬな・・・)
少女「ところで、お聞きしたいことがあるのですが」
聖剣「なんじゃ?」
少女「本来、人は自然エネルギー変換、使用する場所は一つしか存在しません」
聖剣「第二の心臓ということか?」
少女「そうですね、そう考えてもらったほうがわかりやすいです。あなたには、それが二つあった」
聖剣「・・・」
少女「一応、あなたが何者かお聞きしてもよろしいですか」
聖剣「儂は、魔剣と呼ばれていたものじゃ」
少女「魔剣?」
聖剣「うむ、とはいえ儂は魔剣としての力を失ったからの、聖剣とでも呼んでくれ」
少女「その、名前はないんですか?」
聖剣「じゃから聖剣と」
少女「いえ、聖剣という呼び方ではなくてですね、その本名の方を・・・」
聖剣「・・・儂に名はない」
少女「・・・え?」
聖剣「儂を創った者も儂に名を吹き込む前に亡くなってしまったのじゃ・・・」
少女「ごめんなさい・・・」
聖剣「気にするな、仕方のないことじゃ」
少年「聖剣さん」
聖剣「なんじゃ」
少年「きっと、その人が亡くなったことであなたは完成したんだと思いますよ」
聖剣「何故じゃ」
少年「・・・きっとその人は自分自身の最後の作品のために自分を捧げたんでしょう。そもそも、自然エネルギーを扱う第二の心臓がひとつしかない理由
わかりますか?」
聖剣「知らん」
少年「・・・過度なエネルギーの使用やバランスを傾けすぎた場合、普通なら存在が崩壊して消滅するんですよ」
聖剣「なら何故儂は生きておる」
少年「理由は二つ、一つは姉さんの処置のおかげです。もう一つはバランスを保つことができたから」
聖剣「バランス?なんのバランスじゃ」
少年「これは全ての生物に対して言えることですが、環境によってバランスを崩すことがあるんです。それによって体内の気の巡りが悪くなるんですよ」
聖剣「体調を崩して風邪をひくようなものか?」
少年「そんな感じです。あなたの場合は、風邪ひいてるのにその状態で外で走り回って風邪が悪化してるのに気付いていないような状態でした」
聖剣「・・・お主、儂のことを馬鹿にしておらぬか」
少年「馬鹿にはしてません、ただ呆れているだけです」
聖剣「・・・呆れられるのも仕方のないことなの知れぬ」
少女「あの、聖剣さん」
聖剣「なんじゃ」
少女「その、なにか理由があってその場所にいたんですか?」
聖剣「それは・・・すまぬ、よく覚えておらんのじゃ」
少女「いえ・・・気にしないでください」
(意図的に記憶を消されている・・・でも、いったい誰が・・・)
少年「・・・姉さん、少し良い?」
少女「え、うん。すみません聖剣さん」
聖剣「かまわぬ、儂も少し一人眠ろうと思っておったところじゃ」
少女「ありがとうございます、また戻ってきますので」
聖剣「うむ、おやすみ・・・」
ー別室ー
少女「それで、どうしたの?」
少年「最近、ちょっとここら辺の気の流れがおかしい気がするんだ・・・」
少女「そう?言われてみるとそうかも・・・」
少年「多分、聖剣さんが関係しているような気がする」
少女「つまり、もう一度あの場所に行かないといけないってこと?」
少年「うん・・・多分、姉さんの力も借りないといけなくなるかもしれない」
少女「場が嫌な感じだから行きたくない・・・」
少年「姉さん・・・」
少女「冗談よ・・・ちゃんと私も行くわよ・・・」
少年「ありがとう」
少女「でも、聖剣さんが完治してからね」
少年「・・・そうだね」
ー数ヵ月後ー
聖剣「やっと治った・・・今まで苦労をおかけした・・・」
少女「気にしないでください」
聖剣「そうか、そう言ってもらえるとありがたい」
少年「二人共ちょっといいかな」
聖剣「どうかしたのか?」
少年「聖剣さんのいた場所の淀みがひどくなってるからなんとかしに行かないと」
聖剣「少年・・・儂はもう聖剣という名ではないと言っておるじゃろ、お主がつけてくれたアイという名前がある」
少年「ごめんなさい、つい・・・って、それを言うなら僕だって少年じゃなくてユウって名前があるんですよ」
アイ「そうじゃったな、すまぬ」
少女「それじゃあ、本題に入りましょ、ね?」
ユウ「うん、聖剣・・・じゃなかった、アイの居た場所の気の流れが相当悪くなってるからなんとかしに行かないと」
アイ「儂が居た頃から淀んでいたのではないのか?」
ユウ「正確にはもっと悪くなってる」
少女「・・・それじゃ、今から出発しましょう」
アイ「い、今からじゃと!?急すぎんか?」
少女「多分、今行かないと危険な気がするんです・・・」
アイ「・・・わかった、お主の勘はよく当たるからな」
ユウ「それじゃ、行きましょう」
ー聖剣の墓場ー
アイ「なんじゃ・・・ここは・・・!?」
ユウ「ここが元々アイが居た場所だよ」
アイ「お主、話し方が変わっておらぬか」
ユウ「ここは・・・墓場だったんだね・・・強力な結界でわからないようになってたのか・・・」
アイ「・・・聞いておらぬな」
ユウ「姉さんはどう思う?」
少女「かなり厄介ね・・・というより面倒かも・・・あれを使う必要があるかも」
ユウ「そうか・・・とりあえず、終わらせようか」
少女「そうね」
ユウ「アイ、ちょっと」
アイ「なんじゃ」
ユウ「今からここの流れを通したいから強力して欲しいんだ」
アイ「・・・良かろう、で、なにをすればいいんじゃ」
ユウ「契約をして欲しい」
アイ「良いのか・・・危険を伴うぞ、失敗すれば・・・お主は死ぬ」
ユウ「大丈夫、やろう」
アイ「わかった・・・では、いくぞ」
ー深淵ー
ユウ「ここは・・・」
「ここはお前の心の闇だよ」
ユウ「君は?」
「お前自身さ・・・お前が殺してきた、隠してきた、見ないできた存在だよ」
ユウ「そうか」
「だから・・・貴様の肉体を頂くぞ!」
ユウ「・・・悪いんだけどさ」
「何!?」
ユウ「その手の搦手はもう飽きたんだよね、だから・・・ここの場と一緒に消すね」[スッ]
「う、動けない・・・嫌だっ!死にたくない・・・死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない」
ユウ「もうそこにしがみつく必要はないんだよ」
「そんなことはっ!」
ユウ「ないと言えるのかい?生きるのではなく、死ぬわけでもなく、そこに存在し続け苦しみ続けるだけ、それのどこが良いのさ」
「・・・」
ユウ「それじゃあ、さよならだ」
「ガァァァァァァァァァァァ」[サラサラ]
ユウ「最後は、綺麗に去ることができたね」
ー聖剣の墓場ー
[ズズズ]
???「そっかぁ、彼はそういう選択をするんだね・・・」
少女「誰、ですか・・・さっきから」
???「そんなに殺気を出さないでよ、怖いなぁ」
少女「・・・何故此処に居るんですか」
???「一応ここの管轄なんでね」
少女「ならなんでここまで放置してたんですか?」
???「あくまで観察役でしかないからね、干渉することは許されないのさ」
少女「なら私と話をすることも許されないんじゃないですか?」
???「あー、君は別だよ」
少女「・・・」
???「龍であり、人と生きることを選択した者、今はー・・・アジュールって呼ぶんだほうが良いのかな?」
アジュール「あの子が付けてくれた名前なので軽々しく呼ばれたくはありませんが・・・今回は許します」
???「ふーん、ま、いいや。ここいらで私は退散しておくとしよう」
アジュール「どういうことです?」
???「そろそろ彼が起きそうな時間だからね」
アジュール「そうですか、次はお会いしないことを心から願っていますね」
???「では、私はその反対を願ってあげよう・・・なんてね。それじゃあね」
ー深淵ー
アイ「ようやく、たどり着いたな」
ユウ「ごめん、少し時間がかかった」
アイ「かまわぬ、では結ぼうか」
ユウ「わかった・・・契約の儀を此処に為す」
アイ「我はこの者を主とし」
ユウ「我はこの者を剣とする」
アイとユウ「よって、此処に新たなる契約を結び記す!」
【光がそっと、二人を包み込んだ・・・】
{少年は少女が一人泣いているのを見た・・・}
{少女は少年が一人死にそうになっているのを見た}
ユウ「大丈夫・・・君はもう、一人じゃないから」
アイ「安心しろ、お主はもう死ぬ必要がないのじゃからな」
ー聖剣の墓場ー
アジュール「・・・そろそろね」
[スゥーッ]
ユウ「帰って・・・来れたのか・・・」
アイ「そのよう・・・じゃな」
アジュール「お帰りなさい、二人共」
アイ「うむ、ただ今戻ったぞ」
ユウ「ただいま、姉さん」
アジュール「滞りなく終わったみたいね」
ユウ「うん、これでここを一気に流せるよ」
アイ「では、やるか」
ユウ「うん」
アジュール「結界は張ったから
そこまで切らないでね?」
アイ「き、気を付けよう・・・自信はないが」
ユウ「まぁ、なんとかなるよ・・・多分」
アジュール「それじゃあ、行ってらっしゃい」
アイ「うむ」
ー淀みの中心地ー
ユウ「・・・ここみたいだね」
アイ「そうじゃな、早く終わらせて・・・」
『・・・』
アイ「?何か言ったか」
ユウ「いや、何も言ってないけど?」
『言いましたけど?』
アイ「じゃからなにを・・・」
『どうも』
アイ「ぽやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
ユウ「ど、どうしたの?」
アイ「知るかッ、なんじゃコイツはっ!」
『こんちわー』
ユウ「あれ、なんでここに?」
『お久しぶりですー』
アイ(ゾンビと楽しそうに話しとる・・・儂の目がおかしくなったのか・・・それとも・・・)
「の、のう」
ユウ「うん?どしたの」
アイ「二つ聞いても良いか?」
『どうぞ』
アイ「最初に・・・知り合いなのか?」
ユウ「うん、ちょこちょこ確認には来てたからね」
『そのこともあって仲良くなったんですよ』
アイ「そ、そうか、では二つ目じゃが・・・お主はなんじゃ?」
『何・・・と言われますと?』
アイ「その、姿が透けているような・・・」
ユウ「うん、だって幽霊?だもの」
『正確には亡霊みたいなものですけどね~』
アイ「そ、そうなのか」
『そんなことより、あれなんとかしなくていいんです?』
アイとユウ「ん?」
<オオオオオオオオオオオオオ>
〈空気の重みが急激に増し、巨大な獣が出現した、獣は苦しげに唸りながら、ユウ達を〉
アイ「な、なんだか危険なのではないか」
ユウ「あー、今すぐなんとかしないとね」
アイ「うむ、任せろ!」
ユウ「往くよ、ベリアルエッジ」
<ガアアアアアアアアアアアア>[ドゴォッ]
〈場の淀みが生み出した獣の攻撃が降り注ぐ〉
ユウ「遅いよ」[スッ]
アイ『ユウ、一撃で決めるぞ!』
ユウ「うん、君も・・・もう、お休み」[ザンッ]
〈ユウの放った一撃が獣を切り裂き、淀んでた空気を浄化した〉
アイ『終わったな』
ユウ「そうだね、アイもお疲れ様」
『いやー、お疲れ様でした~』
アイ「ふぅ、やはり疲れるのぅ・・・なぜまだいるんじゃ」
『さぁ、私にもわからないです・・・』
アイ「わからぬって、お主な・・・」
アジュール「二人共~、お疲れ様~」
ユウ「姉さん、ありがとね」
アイ「感謝する」
アジュール「ところで・・・その人は?」
『私ですか?私は亡霊さんです!』
アイ「成仏(強制)させてやろうか」
『ひいっ、ごめんなさい、ごめんなさい!許してください!』
ー続く?ー
ここまで読んでいただきありがとうございました。
リクエストがございましたらコメントしていただけると幸いです。
それでは、また別の作品でお会いできることを楽しみにしております
イテテ