2015-12-10 11:18:30 更新

概要

※11/25修正
奴隷少女「こんにちは どれいしょうじょなの」

奴隷少女「『ちなみにこれは一話で、あらすじはプロローグの方にまとめて載っけてしまってます。ココから読みに来てくれた人で、あらすじどこにあんだよ うらぁ!って方はお手数ですがそっちの概要をお読みください』 ……ってさくしゃが いってるの」

奴隷少女「……あとね、プロローグにひきつづき、よみに きて くれてありがとうー(*´ω`*)」 

奴隷少女「――じゃあ、あたしと じんろーのおはなし、たのしんでって くれたら、うれしい」手ブンブン



奴隷少女「ごしゅじんさまに、なって」人狼「断る」

―――――――――――――――――――

一章《肉とパン》



~~昼間・スラム・大衆食堂店前~~


雑踏『ザワザワ……』


スラム労働者A(以下、労働者A)「――たくよ、国も、ちったあどうにかしろってもんだわ」モグモグ

労働者A「タダでさえ治安も悪いってのに、奴隷ども、あの事件以来 寄生虫みてぇにスラム(ここ)へのさばりやがってよぉ」ゴクッ

スラム労働者B(以下、労働者B)「まったくだ、まったく。てめえで蒔いた種の癖に、役人のやつらは刈り取ろうともしねぇ」ムシャムシャ



遠くの声「――……泥棒だぁー! 捕まえてくれ!!」



労働者A「……ってぇ、言ってるそばからだぜ」

労働者B「ハッ、またか。盗み、殺し、強盗……。ヤツらのおかげで、近頃めっぽう増えた」

労働者A「……少しは俺たちみてえに働けってもんだよな」

労働者B「……まあ、もっとも大半が棄民《ペルデドル》って話じゃねえか……? 誰も金と対価に雇おうとはしねえだろうけどよ」ニヤニヤ

労働者A 「ははっ、違えねぇ」



――声「待てー! 頼む! 誰かそのパン泥棒を!!」


――ジャラジャラジャラ!

奴隷少女「……ハアッ、ハァッ、ハァッ……!

奴隷少女 チラッ (あしの くさり、じゃま……)「っ、ハァッ、ハァッ」


労働者A「――そういえば労働者B、聞いてくれよ、また家の女房がよぉ」肉フリフリ


奴隷少女 「ハア、ハア……」(……あの、おにく、おいし、そう……!)


労働者B「ハッ、こんなときにまでノロケ話なんざ聞きたく……」

……ジャラジャラジャラジャラ  ガッ、パクッ!


労働者B「……。あ?!」

労働者A「っ!? ……っておいこら待てクソガキィ!! 俺の骨付き鶏をおおお!!」


奴隷少女 タタタタタタッ……!〈逃亡〉


労働者B「……あー、やられたなw てめぇがボっとしてるからだわ」


労働者A「……くそ、次見かけたらタダじゃ置かねえ……」

労働者B「まったくだな。ガキの分際で大人から盗みを働こうなんざ……」

(フェードアウト)


雑踏『――ザワザワ……――』



奴隷少女 タタタッ、タタッ!

奴隷少女 チラッ「ハフッ、ハフッ……」〈肉を口にくわえて〉

……テテテテッ〈人の来ない路地裏に逃げ込む〉

奴隷少女「……」チラッ (まい、た?)

奴隷少女 カポッ「っ、……ハァッ、ハァッ……」

奴隷幼女(パンと肉を眺めながら)「ハァッ、ハァッ……っ」

奴隷少女 ゴクリッ

 ――ガツガツムシャムシャガツガツ!!


――――あの解放から一月、あれから奴隷少女は、ずっとこんな生活を送っている。


――――変わったのは、食べ物を主から与えられるか、自分で手に入れるか、それだけの違いだ。

――――いつもお腹をすかせて、自分の他に頼れるものは何もなく、少しの食べ物の為に盗みを働く……。


――――だがそれに、彼女が罪の意識を抱く事はなかった。なぜならこれは生きる為……――息をして、眠るのと同じに――生きていくため必要な術で、ずっと檻の中で生きてきた彼女に、他のやり方なんて思い付きもしなかったのだ。


――ムシャムシャモグモグ……。


弱々しい声(以下、?)「……おい」

奴隷少女「ひ!?」ビクッ

奴隷少女 (――み、みつかった?!)


?「おい、お前」


奴隷少女「や! な、なんでも するからっ! なんでも するから ゆるして!」ビクビク


?「……頼む……。頼む、水をくれ…」


奴隷少女「……へ? え?」チラッ


〈奥の暗がりから〉

?「聞こえたか、水を……ウッ」ハアッ、ハァッ…


奴隷少女「……こえ、じめんの ちかくから する……? だれか、たおれてるの……」シャラシャラ…


ピトッ…〈突如、足首に弱々しく手が伸ばされる〉


奴隷少女 ビックウッ!「っ、ひっ?!」〈ドタッと尻餅をつく〉

?改め、フードの男「……ウッ……ゲホッ…、…頼む、さすがに耐えきれん。水、をくれ……」

奴隷少女「!?」

奴隷少女(っ! ちだらけ? ケガしてる!)

フードの男「水を……」

奴隷少女「……お、おにいさん おみず ほしいの?? わかった まってて」ゴソゴソ〈食べかけを物陰に隠す〉

タタッ、ジャラジャラ……


~~数分後~~


ジャラジャラ! ……タッタッタ ハアッハアッ!

奴隷少女〈瓶入りの綺麗な水を抱えて〉「とって きたよ おにーさん」ハアッ、ハアッ


フードの男「う……。くれ……」


奴隷少女「……のめる?」チャポン


フードの男 「あ、ああ……。何と、か〈起き上がろうとして〉……ウッ、痛ッ……」ドサッ

奴隷少女「……おにーさん、うでケガしてるの?」


フードの男〈ゴロッと仰向けになって〉「ハハッ、面目ねえ。力も出ねえし、自分じゃ起き上がれんわ……」


奴隷少女「……。じゃあ、あたしがのませてあげるね」キュポッ、クピッ


フードの男〈その様子を見ながら〉「……? おい、お前、なにし……――フグッ?!」

奴隷少女 チュ

フードの男 チュー「~~?! (ゴクッ) っ、ゲホッ、ゲホッ!! ッ痛ったッッ!!」


奴隷少女 プハッ「……だいじょうぶ?」


フードの男 ハァハァ…「ゲ、ホッ、痛ッ、……お、お前……見ず知らずの奴に、よくそんなことできるな……ゲホゲホッ、痛ッ!」


奴隷少女 「お、おかーさんは、びょうにんには 、くちうつし するものって……」


フードの男「……悪いが……ゲホッ、ッ、普通に飲ませてくれ。そのやり方は……」


奴隷少女 オドオド「……お、おこったの? あたしのこと ける?」


フードの男「……ゲホッ、……いや、そういうのは大事にしろ、と」


奴隷少女「(首カクン)……けらないの??」


フードの男「何でそうなる」


奴隷少女 「……なんでって、なんで?」


フードの男 タジッ (なんで、って、言われても……。変な子供だな)

フードの男「……まぁいい。じゃあ悪いが、俺を起こしてくれないか? それで瓶の口を俺の口元に運んでもらえれば、普通に飲めるから。な?」

奴隷少女「……うん」


~~*数分後*~~


フードの男 ……チャポンッ「フハッ…。……もういい」

奴隷少女「うん」


フードの男「で、お前は、奴隷少女って名前なのか」

奴隷少女 コクリ「うん。どれいしょうじょ」


フードの男「……。そうか。見ず知らずの俺にここまでしてくれて、本当に助かった。ありがとな奴隷少女」ニマッ


奴隷少女「……!」


フードの男「だから、」

スッ〈刹那、鋭い表情に切り替わる〉

フードの男「――だから、もういい。もうお前の手助けは要らない。どっか行け」


奴隷少女 ポケッ「…ふしぎ、おにーさん、あたしに ありがとうっていうの」


フードの男「……おい、聞いてるか?」

奴隷少女「……きいてる」

フードの男「じゃあ、」

奴隷少女 ジー「……。いかなかったら なぐる?」


フードの男「は……? いや殴りはしないが。そもそも、今は腕だってこうだしな」


奴隷少女「……じゃあ……じゃあ、これも あげるの」〈さっきの食べかけのパンと肉を差し出す〉


フードの男「……お、おい、なぁ奴隷少女、〈急に困り顔になって〉お前は知らなくて良い話だが、俺も見ての通り、何かとワケアリなんだ。察しろ。お前とずっと話してられる程ヒマでもないんだ。……それに……」

フードの男 ボソッ「……あんまり、俺と深く関わると死ぬぞ……」


奴隷少女「? しぬ……?」


フードの男「あ、ああ……。いや、深くは訊くなよ。俺だってお前の身なりに気になる点はあるが、訪ねる気はないんだからな。名前もお前が勝手に名乗っただけだし、俺は教える気はないんだ」


奴隷少女「……」パンムシャッ


奴隷少女「……」ジー モグモグ…


奴隷少女 ……スッ(立 ジャラッ…

フードの男「っ?! あー、くそ! わかった貰うから! 俺が動けないのを良いことに! 口移しはやめろとさっき言ったろ!」


奴隷少女「……ふへ、わかった」〈微かに笑む〉


フードの男 (……なんでいま笑う……)


フードの男「……だが、俺がそれ食べ終わったら、もう行けよ。そして二度と来るな」

奴隷少女「……。きたら、おしおきする?」オズオズ

フードの男「いやしな……。…………。(ジロ)……する。殴って蹴ってやる。痛いぞ? だからもう来るなよ」

奴隷少女「……。わかったの……」コクン



~~翌朝、昨日の路地裏手前~~


チュン、チュンチュン……


〈遠巻きに路地裏の入り口見つめながら〉

奴隷少女(……って、おにーさんは いってたけど)ビクビク ジー


奴隷少女(あのおにーさん、かおも ふくも ちまみれで、……うでも ぜんぜん うごかせて なかったの)ジャラジャラ〈歩き出す〉


奴隷少女(……あれじゃ、だれかが、ごはん わけて あげないと、きっと しんじゃうの。――……ごしゅじんさまの ところに いた、あたしの、なかま、みたいに……)


奴隷少女 ポソッ「……ケガしてるから なぐれないって、いってたし……おしおき されない、よね……?」〈自分自身に言い聞かせるように〉


【回想】

男『――本当にありがとうな――』


奴隷少女 「……」ギュッ〈残飯の器と昨日の水を抱えて〉

奴隷少女 ポソ「――ありがとうって、あたしにありがとうって……。……なんでかな?」

奴隷少女「もっと……いって くれる かな……?」テクテクジャラジャラ〈気付かないまま微笑みながら〉


奴隷少女「――それなら あたし、なぐられても いいや……」

 

~~**~~


奴隷少女 ヒョイッ「……おにーさーん。どれいしょうじょなの。ねぇ、いる……?」


――シーン……


奴隷少女 ポツリ「……へんじない……。あたしが きたから おこった? ムシしてる のかな……?」


奴隷少女 ジャラジャラ…〈更に奥へと進む〉


奴隷少女「おにーさーん……?」


〈もぬけの殻〉


奴隷少女「あれ? いない……」


奴隷少女(でも……あのケガで あるける……?)


奴隷少女(どこ、いった……? もっと奥だったっけー……?)キョロキョロ ジャラ…


?「――おい、本当にここで見たのか」

?「――へえ、オレの仲間の話じゃ、間違いなく昨日の晩……」


奴隷少女「?!」ビクッ、サッ〈思わず積んであった木箱の陰へ隠れる〉

奴隷少女 ジッ…〈箱の影から〉


~~路地裏入り口~~

金髪美女(以下美女)「おい、もし『アレ』がここにいるという話……金目当ての嘘なら承知せんぞ」ジャカッ

労働者A ギョッ「うおぅっ?! 物騒なもん向けないでくだせぇ!!」


奴隷少女 ピクッ (わ! でっかい じゅう(銃)!)


労働者A「……ち、違えねぇ、血まみれの男ですよね? どっ、同僚が言うにゃぁ、たっしかに見たって話でしたぜ……!」テクテク アセアセ


奴隷少女(ちま、みれの……? もしかして、あのおにーさん さがしてる の? ……や、こっちくる!)〈もっと隠れる〉


労働者A キョロキョロ…「……。お?!  ほ、ほら見てくだせぇ姐さん!〈地面を指差して〉ここにちゃんと、血の痕がありまさぁ」ドヤ

美女 「何っ?」ツカツカ…

美女スッ「……。うむ、まだ新しい。……嘘は吐いてなかったようだな」ニヤリ


奴隷少女(! おとこ、やっぱり どっか いっちゃったのかな……? でも、あのケガでどうやって)


労働者A ホッ…「……じゃあ姐さん、オレはコレで行きまさぁ。約束通り、金貨一枚を……」


――ジャラ…


美女「……ッッ!? 誰だそこに居るのはッッッ?!」ジャカッ ズガン!! バリバリイッ!!〈木箱の壊れる音〉


奴隷少女・労働者A「「ひゃっいっ?!」」ドテッ ジャラッ


美女「…………」ツカツカツカ


労働者A「―― うおぉぉ?! って、ちょっ、ちょ……! 姐さん! 何いきなりぶっ放してるんですか……! さすがにそんなことしたら憲兵が……」


美女 腕グイッ

奴隷少女「っ!! やっ……」

美女「……ふん、隠れきるつもりが残念だったな。バレバレだ」ジャララッ!

奴隷少女「や、はなしっ……たすけて! なんでもするから!」バタバタジャラジャラ


美女 ジロ「……おい子供。お前は……なんだ? なんで私とコイツを見て隠れてた? アレのいた、この場所で」


奴隷少女「~~?! なに? なに?! あたし、しらない! おにーさんなんてしらないの! はなして! たすけてよぉ!!」ブルブル

美女「ほほう……? 今、おにーさんと言ったか? 誰だそいつは……?」

奴隷少女「!」(い、いっちゃった……?!)


労働者A〈駆け寄ってきて〉ハッ「……あっ、このガキッッ!」


美女「……知り合いか?」

労働者A「いやいや姐さん、奴隷に知り合いなんて冗談じゃねぇです。ただ……コイツにはちっと不愉快なめに遭わされたんで」ペッ


美女「ほう。奴隷……」

   ジッ「……なるほど、だから足にも鎖、か」


美女〈…襟クイッ〉「……ふむ、心臓の上には焼き印、と。……ハッ、お前、奴隷のついでに棄民《ペルデドル》なのか。憐れだな。商人処刑による解放以降、このスラムをうろついてるという話だったが。初めて見たよ」


労働者A「……へ、へへ、姐さん、そいつどうするんで? (ニタニタ) なんなら、俺に引き渡してくれてもいいですぜ……?」

美女〈男をチラと見て〉「……ふふ、ではこうしようか。とりあえず……」


奴隷少女「はな、してよぉー……」ブルブル


美女 ジロリ「……なあ子供、今お前、なんでもすると言ったな?」ガチャン〈頸動脈に銃口を突き付け〉


奴隷少女「……!」ビクン


美女「じゃあ頼む……」

美女 ニヤァ…〈三日月のような笑み〉「頼む、死んでくれ」


奴隷少女「えっ!?」


美女「……私はまどろっこしいのは嫌いなんだ」グリッ

奴隷少女「!」ビクッ

美女「私の銃(相棒)なら、撃てばお前の首ぐらい軽く吹き飛ぶ。残ったお前の頭から記憶を抜き出すのも、私には造作もない。その方が怯えるお前から、無理矢理話を聞き出すよりよっぽど楽だしな。そして残った身体は……、そこのぺドにくれてやる。〈チラッ〉なあ、それでいいだろ?」

労働者A ボソッ「〈引き笑い〉ハ、ハハッ……跳ねっ返りの野良猫みてえな奴だと思ってたら……とんだバケモンだ……。頭までイッちまってるんじゃねえか……?」


奴隷少女「――あ、う……たすけて……」ブルブルブル

奴隷少女(――……あたししぬ? しぬの? しぬ? しぬ? し……)


美女「恨むならあの男を恨めよ? 残念だな――〈ニヤリ〉死ね」〈引き金に指をかけ〉

奴隷少女 ギュッ「~~~~?!」



――ズガアァンッ……!!



奴隷少女「…………」


奴隷少女(…………)


奴隷少女(……あ、れ? あたし、いきてる……?)〈薄目〉


――フードの男の声 「……チッ、くっそ。めんどくせー事に首突っ込んじまった」


奴隷少女「?!」ジャラッ!「……えっ? えっ……? 」ブラーン


〈奴隷少女を脇に抱えて〉

フードの男「よぉ。怪我ないか」

奴隷少女 ビクッ「う、うん……?!」

フードの男「お前の騒ぐ声がして、戻って来ちまった。ホントはもうお前と顔合わせるつもりなんぞもなかったんだが――」

フードの男 チャリ〈奴隷少女を後ろに下ろす〉


フードの男 ジロ「この女……『魔祓い』の血の気の多さが、どーうにも目に余ってな」


美女(以下、魔祓い) 〈憤怒の形相で〉「――っ見つけたぞ人狼ぉおおぉ~~っ!!!」グワッ

労働者A「は? え? じ、人狼?! 姐さんの探してた奴って じ、人狼属なんですかい……?!」アセアセッ


奴隷少女「……じ、じんろーぞく? ……じんろー……? おにーさんの、ほんとうの なまえ?」

男(以下、人狼)「……チッ、くそ、色々障るからその名は隠してたのに」


奴隷少女〈改めて人狼を見上げて〉

奴隷少女 ハッ「っあ…?! ねえ、ねえおにーさん、そういえば、ケガは?! だいじょうぶなの?」

人狼 「……。心配してくれるのか」頭ポンポン

奴隷少女「っ!」ビクッ

人狼「……ありがとうな」

奴隷少女「?!」

 

人狼 クルッ「……なあ魔払い。俺を傷つけるのはいい。俺を殺したいほど憎んでるのもわかってる。だが」

人狼 ……ギロッ

人狼 「――俺の居所をつかむために、関係ない奴に手をかけるのはやめてもらおうか」


魔祓い「……。ほう……貴様……――そいつに執着してるのか……?」ジロ


奴隷少女 ビクッ

人狼「……魔祓い、このガキには昨日すこーしばかり助けて貰っただけだ。俺との関わりはそれだけだし、ちょっかいかけんじゃねぇよ」

魔祓い「ふふ、口ではどうとでも言える」ニヤ


魔祓い「そいつを殺したら、貴様はどんな顔をするだろう……?!」ジャカッ!


人狼「……チッ、相変わらずだ」ダキッ、ジャラッ 

奴隷少女 ビクッ「ひぇ? ふぇ……!?」


――ズガァンッ!!


労働者A( ゚д゚)ポカーン「」

魔祓い「……。くそっ!」


魔払い「くそっ! 逃がしたっ!!」ダッ


労働者A「……は……? え……? あの男いま跳んでった……? ガキ抱えて二階の屋根までビョンて、そんで走って……え?!」

     アワアワアワアワ「あ……あ……ねねね姐さん! いいい今の動き!! あの男、本当に人狼だったんですかい?!」


……。


労働者A「姐さんっ?!」クルッ

    「……って居ねえし!」


労働者A「……あ! くそ、金貨貰い損ねたじゃねぇか! あの女郎!!」



~~**~~


――スタンッ シタンッ…

…ヒュオオォ……


奴隷少女「~~っ!」ヒシッ!


人狼「……おい、奴隷少女。大丈夫だから目ぇ開けてみろ。……屋根より高いとこ跳ね回るって、普通に生きてたら滅多にある話じゃねえぞ?」スタンッ、シタンッ!


奴隷少女「~~……」


奴隷少女 ソッ


奴隷少女「!!」


――ヒョオオオオオオォォ……!〈頬に風を受けて〉


奴隷少女「す……ごい! はやい」ポカン


    「いえも、けしきも どんどん うしろに……!」

人狼「だろ?」ニマッ


人狼〈西を示して〉「見えるか? あっちの荒れ野の山向こうに、国境線がある。ちなみに俺は、あっちから来た」


人狼〈更に反対の東を指差して〉「……で、あっちに見えるのが、この辺で一番でっかい、都市だそうだが」


奴隷少女「……きれいなの。おひさまにキラキラしてて、すごくおっきい」〈作者注※井上直久氏の『イバラード』みたいな町を想像して欲しい。わかんない奴はググれ〉


人狼「……。お前、ここに住んでて見たこと無いのか……?」

奴隷少女 フルフル


奴隷少女「ずっーと にげて、はしって ばっかりで、うえなんて みたことなかったの」


人狼(……足の鎖といい、こいつ、一体どんな生活を……)


奴隷少女「それにー、あたし じゆうに なってから、そんなに たって ないから」

人狼「……あ? 自由?」


奴隷少女「……あたし、どれいなの。おかあさんも どれいだったけど、ごしゅじんさまに いじめられて しんじゃって、ごしゅじんさまは、おやくにんさまに ころされたの。それで、ここにいる」

人狼「だから足に鎖、か……。ひでぇ世の中だな」ボソッ


奴隷少女 オズオズ「……ねぇじんろーおにーさん、それよりなんでこんなコトできるの? なんでケガ、ぜんぶ なおってるの?」

人狼「あ? ああ……はは、それはだな……」〈苦笑い〉


奴隷少女「……それにその」ジッ

パタパタ……〈風圧で外れたフードの中身を見て〉


奴隷少女「あたまに はえてる とんがりみみは、ほんもの……?」

人狼 ハッ「うお!? くそ、見られた!」バッ〈慌てて隠す〉


奴隷少女「あと、さっきの こわーい おんなの ひと、なんで あんなに じんろーに おこってたの? うしろの おじさんが いってた、『じんろーぞく』って、なあに? それに なんで なまえ、かくして たの?」


人狼「――~~ッあーッ! くそっ! ガキにありがちな質問攻めはやめろー!」

奴隷少女「ひっ! ごめんなさいっ!」ビクッ


~~**~~


~~スラムの北端 通称《ミドロ橋》たもと~~


人狼「さて……。魔祓いは流石にまいたよな」キョロキョロ


ジャラ…〈奴隷少女を地面に降ろす〉


人狼「大丈夫か?」


奴隷少女 ジッ「……」ビクビク


人狼「……奴隷少女、お前、さっきからなんか変だぞ。途中から黙りこくって……執拗に怯えてないか? ……俺がなんかしたか……?」


奴隷少女 ピクッ「……。じんろー、おこってるの? お、おもい、だしたの。おしおき……」 ビクビク

人狼「……は?」


奴隷少女 「だ、だって、おしおき しないの……?」

人狼「『おしおき』……? ん? まってくれ、分かるように説明しろ」

奴隷少女「だって、うでも りょうほう、なおってるし……」


【回想】

――――奴隷少女「……。きたら、おしおきする?」オズオズ

人狼「いやしな……。…………。(ジロ)……する。殴って蹴ってやる。痛いぞ? だからもう来るなよ」――――


人狼 耳ピク「……あ。ああ? そういえばそんな事も言ったな」

奴隷少女 ビクビク

人狼「……あ? もしかしてお前、あんなのまだ覚えて信じてたのか?」

奴隷少女「え? え?」キョドキョド


人狼「ははっ、よくわからないが、あん時お前が、俺に許可を求めるのにいちいち『殴るか?』とか『蹴るか?』とか聞いてきていたからな、ああ言えばもう来ないと思った。こうなった以上、もうただのハッタリ(ブラフ)だな」


奴隷少女「……」〈困り顔〉


人狼 ヘラッ?〈戸惑うように笑いながら〉「……な、なんだ? その顔。おかしな奴だな、ホントに殴るわけないだろ」


奴隷少女「……。じんろーって、やっぱりへん」〈焦点の合ってない目で人狼を見つめながら〉


人狼〈耳ピク〉「……。俺の、見た目が……、か? それとも傷の治りがか……?」


奴隷少女 フルフルフル 


奴隷少女「あたしのこと、たたいたり けったり しないの……」


人狼「……は?」


奴隷少女「それに、あたしに わらって ありがとうって いう」


人狼「……。なんだそれ、なにいって――」


奴隷少女 バッ「ふ、ふしぎなのっ。ごしゅじんさまも、ごしゅじんさまの なかまも あたしを いじめたし、ほかの どれいもね、よわい ひとには いばって たの。やさしく みえる ひとも、ほんとは そうじゃないの。この まちの ひとも そう。ごはん ぬすんでも、ぬすまなくても、あたしの こと おいかけて くるし、いじわる する」


人狼「…………」〈まるで絶望したような表情で〉


奴隷少女「なのに……、じんろーは、なんでなんにも しないの?  もう ケガも なおったし、『つぎ あったら おしおきする』って いってたから、だからね、あたし――」


人狼「……奴隷少女、もういい」スッ〈しゃがむ〉

奴隷少女 「う……?!」ビックン〈人狼の挙動に怯えて〉


人狼「……もういい。もうわかったから黙れ」ギュッ 頭ポンポン


奴隷少女〈人狼に抱き締められながら〉「じ、じんろー……?」ビクビク


人狼「……気にはなってたんだ。お前が、俺に触られるたび必要以上にビクついてるからな」


人狼「最初はただ俺が怖いのかと、思ってたんだが……。俺、目付き悪ぃし。だが、違ったみたいだな」


人狼スッ〈視線を合わせて〉「……奴隷少女お前。人に触られるの、怖いんだろ……?」

奴隷少女「? よくわかんな……」


人狼 サッ

〈再度頭にポンと手を置く〉

奴隷少女「ひ!」ビクッ

人狼「悪ぃ。……怖いか?」

奴隷少女「……。」 コクリ


人狼「だよな、怖がらせた。すまん」

奴隷少女「?」

人狼「……だがな、覚えとけよ、そう思うのは『普通』じゃない。お前もそうだが、回りの、奴らの行動もだ」

奴隷少女「……え?」


人狼「……いいか、お前十年も生きてなさそうだし……、見てきたものだけが全てだと思うなよ……? 生きてれば、お前にひどいことしない奴もいるってことだ。誰に対しても、いちいち怖がる必要もないってことだ」


奴隷少女「……」〈男をジッと見て〉


人狼「それに、奴隷少女には、本当は誰かに優しくされる権利があるだぞ? 幸せになる権利もだ。……本当はそれが普通なんだ」


奴隷少女「…………。むずかしい」


人狼「……そうか?」


奴隷少女〈一語一語噛み締めるように〉「……よく、わかんない、けど。じゃあじんろーは、あたしに『やさしいひと』、なの……?」


人狼「……まあ、そうなるのかもな」



奴隷少女「……」

人狼「」頭ナデナデ


奴隷少女 ビクッ「う……」ジワッ


人狼 ギョッ「……わ、わりい。そんな、そこまで怖がるとは思わなくて……!」アセアセ


奴隷少女「ち、ちがう、の、よく、わかんな……」グスッ


奴隷少女「だって、こ、ごわがっだら、ないぢゃ、ダメなの。ないだら、なぐられるの。わらっでもっ、ダメなの。だから なぐの、ずっど、しでなぐっ」ヒグッ


奴隷少女「グズッ……ないぢゃ……。う、ダメなのに……」エッグ…


人狼「……奴隷……少女……」


人狼(もしかしてコイツの中では、感情を殺すのが処世術だったのか…… ?)


人狼 グッ… 「……いや、良いんだ。泣きたいなら泣けばいいし、笑いたい時は笑えよ。俺はお前を自分の勝手で殴るような奴じゃないから、それは約束してやる。……だから、もしお前が今泣きたいなら、安心して泣け」(`・ω・´)


奴隷少女「……ひ、っぐ……『あん、じん』……?」グスッ

人狼「……ああ、あんしんだ」ニマ


奴隷少女(――そう、か)


奴隷少女(――このきもち……。… … あ、たし、あんしん、してる、の)


奴隷少女(――この、ひとが、やさしいから)


奴隷少女(――あんしん、で……。こころが、なんか、あった、かくて)


奴隷少女(――ホッと、して…………)

奴隷少女「――ひっぐ、っ、うああぁぁ~~~~ん!」


人狼「……」ナデナデ


人狼(こいつがどんな生活してたか、なんとなくわかったぞ……)

人狼「……誰も頼れない、信じられないのは……、辛いよな……」ナデナデ


奴隷少女「っ、うああああ~~~~!! うああぁぁっ、あぁ~~~~~~ん!」グズッ、グズッ


――――ミドロ橋の周辺は廃墟ばかりで、ずっと以前から、人気のない場所だった。


――――そこへ、張りつめた糸が切れたように泣き出した奴隷少女の嗚咽が響く。


――――人狼は黙って、そんな彼女の頭をずっと撫で、疲れて眠ってしまうまで、小さな体をず抱きしめているのだった。



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